説明

無線通信装置及び半導体装置

【課題】高速伝送を行うミリ波無線通信においても、信号処理を行う回路の消費電力を低減可能にする。
【解決手段】送信部103への電源供給を制御する送信電源制御部112と、受信部102への電源供給を制御する受信電源制御部110とを備え、送信電源制御部112は、送信部102における送信処理の開始時間より電源立ち上がり時間を考慮した所定時間前に送信部102の電源をオンし、送信処理が終了した場合に送信部103の電源をオフし、受信電源制御部110は、送信部103により送信するデータに対する受信側の無線通信装置からのACKが到来すると想定される時間より電源立ち上がり時間を考慮した所定時間前に、受信部102の電源をオンし、受信部102におけるACKの受信処理が終了した場合に受信部102の電源をオフする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、及び無線通信回路を含む半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高精細な画像(動画像、静止画像を含む)または音声を用いた種々の大容量コンテンツを含むデータを、無線通信を介してエンドユーザに提供するサービスが検討されている。数G(ギガ)ビットに及ぶ大容量のデータを高速に伝送するために、60GHz帯を含むミリ波帯を用いて数Gbpsの高速伝送を行う無線通信システムが検討されている。
【0003】
ミリ波無線通信システムは、IEEEにて無線PAN(Personal Area Network)として例えば、IEEE802.15.3cにより、無線LAN(Local Area Network)として例えば、IEEE802.11adにより、規格標準化作業がなされている。
【0004】
例えばIEEE802.11adにて検討されているミリ波帯を用いたシングルキャリア通信では、1.76Gシンボル/秒の伝送レートにてPSKまたはQAM変調された信号を伝送する。1パケットの時間は数μsec〜数十μsecと短く、また最小パケット間隔も3μsecと短い超高速度のデータ伝送が行われる。このため、変復調処理の許容レイテンシーも短く、高速演算処理が求められる。
【0005】
高速演算処理を行うLSIの半導体回路においては、動作周波数の向上に伴い、内部に形成されるトランジスタサイズの微細化が進められている。しかし、微細化に伴ってリーク電流が増大することが課題となっている。
【0006】
リーク電流の主な原因は量子トンネル効果であり、距離の近い導電体間の絶縁体を電子が通り抜けることによって生じる。高速演算が求められるデジタル半導体回路のプロセスルールが100nm以下になると、半導体回路において消費される電力の半分以上がリーク電流として消費されている。
【0007】
高速伝送を行うミリ波無線通信装置に用いられる信号処理用半導体回路において、低消費電力化を図るためには、使われていない回路の電源をオフにするパワーゲーティング制御が課題となる。
【0008】
無線通信装置の低消費電力化の技術として、特許文献1及び2が知られている。特許文献1には、上位層フレームのヘッダを受信した時点において自装置が宛先でないと判断すると、物理層フレームのヘッダから抽出された上位層フレームの長さに基づいて、省電力モードに移行する技術が記載されている。また、特許文献2には、半導体集積回路において演算ブロックごとに電源を分離し、各演算ブロックのバッファ部に有効な入力データが準備できた時点において、演算ブロックに電源供給するスイッチ部の制御を行うことにより、リーク電流を低減し、低消費電力化を実現する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3826893号公報
【特許文献2】特許第4551474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来の技術では、回路の電源をオフにする制御が主であった。電源に接続された負荷容量のため、電源をオンしてから電源電圧が安定するまでには立ち上がり時間が必要となり、数μsecは必要とされる。従来の無線通信では、パケット長が数百μsecから数msec、最小パケット間隔も十数μsecのオーダーであったため、電源立ち上がり時間の数μsecは無視できる範囲ではあった。
【0011】
しかしながら、ミリ波無線通信では、パケット長が十数μsec、最小パケット間隔が3μsec程度と短く、電源立ち上がり時間の数μsecが無視するのは困難であり、パケット毎に電源のオン/オフ制御をすることが難しい。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、高速伝送を行うミリ波無線通信においても、信号処理を行う回路の消費電力を低減可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の無線通信装置は、無線通信の送信処理を行う送信部と、前記送信部に電源を供給する送信電源供給部と、前記送信部への電源供給を制御する送信電源制御部と、無線通信の受信処理を行う受信部と、前記受信部に電源を供給する受信電源供給部と、前記受信部への電源供給を制御する受信電源制御部と、を備え、前記送信電源制御部は、前記送信部における送信処理の開始時間より電源立ち上がり時間を考慮した所定時間前に前記送信部の電源をオンし、前記送信処理が終了した場合に前記送信部の電源をオフし、前記受信電源制御部は、前記送信部により送信するデータに対する受信側の無線通信装置からのACKが到来すると想定される時間より電源立ち上がり時間を考慮した所定時間前に、前記受信部の電源をオンし、前記受信部におけるACKの受信処理が終了した場合に前記受信部の電源をオフする。
【0014】
本発明の無線通信装置は、無線通信の受信処理を行う受信部と、前記受信部に電源を供給する受信電源供給部と、前記受信部への電源供給を制御する受信電源制御部と、無線通信の送信処理を行う送信部と、前記送信部に電源を供給する送信電源供給部と、前記送信部への電源供給を制御する送信電源制御部と、を備え、前記受信電源制御部は、所定のタイミングに前記受信部の電源をオンし、前記受信部におけるデータの受信処理が終了した場合に前記受信部の電源をオフし、前記送信電源制御部は、前記受信部により受信したデータに基づき、自局宛のデータを誤りなく受信できた場合、前記受信データに対する送信側の無線通信装置へのACKの送信処理の開始時間より電源立ち上がり時間を考慮した所定時間前に、前記送信部の電源をオンし、前記ACKの送信処理が終了した場合に前記送信部の電源をオフする。
【0015】
本発明の半導体装置は、無線通信の送信処理を行う送信部と、前記送信部に電源を供給する送信電源供給部と、前記送信部への電源供給を制御する送信電源制御部と、無線通信の受信処理を行う受信部と、前記受信部に電源を供給する受信電源供給部と、前記受信部への電源供給を制御する受信電源制御部と、を備え、前記送信電源制御部は、前記送信部における送信処理の開始時間より電源立ち上がり時間を考慮した所定時間前に前記送信部の電源をオンし、前記送信処理が終了した場合に前記送信部の電源をオフし、前記受信電源制御部は、前記送信部により送信するデータに対する受信側の無線通信装置からのACKが到来すると想定される時間より電源立ち上がり時間を考慮した所定時間前に、前記受信部の電源をオンし、前記受信部におけるACKの受信処理が終了した場合に前記受信部の電源をオフする、信号処理部を含む回路を半導体基板に搭載して構成される。
【0016】
本発明の半導体装置は、無線通信の受信処理を行う受信部と、前記受信部に電源を供給する受信電源供給部と、前記受信部への電源供給を制御する受信電源制御部と、無線通信の送信処理を行う送信部と、前記送信部に電源を供給する送信電源供給部と、前記送信部への電源供給を制御する送信電源制御部と、を備え、前記受信電源制御部は、所定のタイミングに前記受信部の電源をオンし、前記受信部におけるデータの受信処理が終了した場合に前記受信部の電源をオフし、前記送信電源制御部は、前記受信部により受信したデータに基づき、自局宛のデータを誤りなく受信できた場合、前記受信データに対する送信側の無線通信装置へのACKの送信処理の開始時間より電源立ち上がり時間を考慮した所定時間前に、前記送信部の電源をオンし、前記ACKの送信処理が終了した場合に前記送信部の電源をオフする、信号処理部を含む回路を半導体基板に搭載して構成される。
【0017】
上記構成により、送信するデータ及び送信するデータに対するACKのタイミングに合わせて、送信部及び受信部の電源オンオフを制御できる。したがって、高速伝送を行うミリ波無線通信においても、信号処理を行う回路の消費電力を低減可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高速伝送を行うミリ波無線通信においても、信号処理を行う回路の消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図
【図2】本発明の実施形態に係る無線通信装置の構成例を示すブロック図
【図3】本発明の実施形態に係るベースバンド処理部の構成を示すブロック図
【図4】MACフレームの構成を示す図
【図5】ACKフレームの構成を示す図
【図6】ブロックACKフレームの構成を示す図
【図7】制御情報を伝送するモードにおけるPLCPフレームの構成を示す図
【図8】データを伝送するモードにおけるPLCPフレームの構成を示す図
【図9】PHYフレームの構成を示す図
【図10】ACKを送信する場合の動作を示すタイムチャート
【図11】受信誤りが発生した場合の動作を示すタイムチャート
【図12】自局宛のパケットでない場合の動作を示すタイムチャート
【図13】即時ACK送信の要求でない場合の動作を示すタイムチャート
【図14】ベースバンド処理部の電源制御時の動作を示すタイムチャート
【図15】データパケットを送信しACKパケットを受信する場合の電源制御の動作を示すタイムチャート
【図16】受信側で受信誤りが発生した場合の電源制御の動作を示すタイムチャート
【図17】即時ACK送信の要求がなされていない場合の電源制御の動作を示すタイムチャート
【図18】データパケットを受信しACKパケットを送信する場合の電源制御の動作を示すタイムチャート
【図19】受信したデータパケットのPHYヘッダにおいて誤りが検出された場合の電源制御の動作を示すタイムチャート
【図20】受信したデータパケットのFCSフィールドにおいて誤りが検出された場合の電源制御の動作を示すタイムチャート
【図21】即時ACK送信の要求がなされていない場合の電源制御の動作を示すタイムチャート
【図22】受信したデータパケットが短パケット長である場合の電源制御の動作を示すタイムチャート
【図23】本実施形態の無線通信端末においてデータパケットの送信及びACKパケットを受信する場合の処理手順を示すフローチャート
【図24】本実施形態の無線通信端末においてデータパケットの受信及びACKパケットを送信する場合の処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の実施形態では、無線通信装置及び半導体装置の例として、ミリ波帯を使用して高速伝送を行うミリ波無線通信システムに適用可能な無線通信装置及び半導体装置の構成例を示す。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図である。無線通信システムは、データ送信元の無線通信端末(STA1)301と、データ送信先の無線通信端末(STA2)302、無線通信端末(STA3)303を有する。本構成において、無線通信端末301より無線通信端末302または303、あるいは、無線通信端末302及び303にデータが送信される。
無線通信端末302、303においては、自局宛のデータを誤りなく受信できた場合、ACK(Acknowledgement)を送信元の無線通信端末301に返信する。各無線通信端末には個別のアドレスが割り振られており、割り振られたアドレスに基づいて送信元、宛先を判別する。
【0022】
図2は、各無線通信端末301〜302を構成する無線通信装置の構成例を示すブロック図である。無線通信装置は、アンテナ202、無線処理部201を有する。無線処理部201は、RF部203、ベースバンド処理部101、ホストプロセッサ204を含む。ベースバンド処理部101は、受信部102、送信部103、MAC(Media Access Control)制御部104を含む。
【0023】
RF部203は、送信部103から出力されるアナログベースバンド信号をアップコンバートして高周波信号に変換し、アンテナ202にて受信した高周波信号をダウンコンバートしてアナログベースバンド信号に変換し受信部102に入力する。
【0024】
送信部103は、送信信号に関する変調処理を含む各種処理を行う。受信部102は、受信信号に関する復調処理を含む各種処理を行う。送信部103及び受信部102は、ネットワークにおけるPHY層(物理層)の処理を行う。MAC制御部104は、ネットワークにおけるMAC層(データリンク層の一部)の処理を行い、無線通信のアクセス制御を行う。
【0025】
送信側の無線通信端末において、ホストプロセッサ204が他の無線通信端末とのデータ通信を要求すると、MAC制御部104は、無線通信のアクセス制御を行う。データを送信する場合、MAC制御部104は、送信すべきデータとアクセス制御用のヘッダをMACフレームとしてフレーム化し、送信部103に入力する。
【0026】
送信部103は、入力されたMACフレームに、変調方式及びパケット長を含むPHY(物理層)ヘッダを付加したPLCP(Physical Layer Convergence Protocol)フレームにフレーム化する。送信部103は、さらに、復調に必要な信号として、例えばプリアンブルをPLCPに付加して、PHYフレームとしてフレーム化する。そして、送信部103は、PHYフレームの変調処理を行ってアナログベースバンド信号に変換し、RF部203に入力する。
【0027】
RF部203は、入力されたアナログベースバンド信号をアップコンバートして高周波信号に変換し、アンテナ202から送信する。
【0028】
受信側の無線通信端末において、RF部203は、アンテナ202にて受信した高周波信号をダウンコンバートしてアナログベースバンド信号に変換し、受信部102に入力する。
【0029】
受信部102は、アナログベースバンド信号の受信信号のプリアンブルにて同期処理を行い、受信フレームの復調処理を行う。受信部102は、PHYヘッダが復調できた場合、変調方式及びパケット長の情報に従ってペイロード部分の復調処理を行い、復調結果をMAC制御部104に出力する。
【0030】
MAC制御部104は、入力された復調結果からMACフレームを解析してアクセス制御を行い、受信データをホストプロセッサ204に出力する。
【0031】
図3は、本実施形態の無線通信端末におけるベースバンド処理部の構成を示すブロック図である。ベースバンド処理部101は、例えばLSIの半導体集積回路によって構成され、無線通信回路を含む半導体装置として無線通信端末内に設けることができる。
【0032】
ベースバンド処理部101は、上記のように受信部102、送信部103、MAC制御部104を有し、受信電源供給部109、受信電源制御部110、送信電源供給部111、送信電源制御部112を有する。受信部102は、ADコンバータ(ADC)105、復調部106を有する。送信部103は、変調部107、DAコンバータ(DAC)108を有する。
【0033】
受信部102と送信部103の電源は独立しており、受信部102は受信電源供給部109から、送信部103は送信電源供給部111から、それぞれ電源供給がなされる。
【0034】
MAC制御部104は、ホストプロセッサ204から無線通信が要求されると、アクセス制御プロトコルに従って送信か受信かを決定する。受信である場合、MAC制御部104は受信電源制御部110に対して受信部102の電源をオンにする要求を出す。一方、送信である場合、MAC制御部104は送信電源制御部112に対して送信部103の電源をオンにする要求を出す。
【0035】
受信電源制御部110は、MAC制御部104からの電源オン要求に応じて、受信電源供給部109を制御して受信部102に電源を供給し、無線通信が行える状態にする。また、送信電源制御部112は、MAC制御部104からの電源オン要求に応じて、送信電源供給部111を制御して送信部103に電源を供給し、無線通信が行える状態にする。
【0036】
本実施形態では、送信部103と受信部102との電源を分離して、送信部103と受信部102において、それぞれ独立して電源の供給をオンオフするために、送信電源供給部111、受信電源制御部110において電源制御を行う。
【0037】
現在受信中のパケットに含まれるヘッダが復調できた時点において、直後に送信すると予測される場合、送信電源供給部111は、電源立ち上がり時間を考慮して送信部103の電源を予めオンにする。現在送信中のパケットに含まれるヘッダから、直後に受信すると予測される場合、受信電源制御部110は、電源立ち上がり時間を考慮して受信部102の電源を予めオンにする。次のパケット処理の予測には、MAC制御情報を用いることができる。
MAC制御情報には、送信中または受信中のパケットのヘッダ情報における宛先ID、ACKまたはブロックACK要求の有無、ヘッダ誤りの有無のうち、少なくとも1つ以上が含まれる。
【0038】
MAC制御部104は、アクセス制御プロトコルに従って無線通信を開始する。送信する場合は、MAC制御部104は送信すべきMACフレームを生成し、送信部103に入力する。送信部103は、入力されたMACフレームを変調部107にてPHYフレームにフレーム化して変調し、DAコンバータ108にてアナログベースバンド信号に変換して出力する。変調部107は、送信中のデータからヘッダ処理を行ってヘッダ情報を取得する送信ヘッダ処理部の機能を持つ。
【0039】
ここで、送信すべきMACフレームは受信電源制御部110にも入力される。受信電源制御部110は、現在送信しているMACフレームの制御情報から次に受信すべきタイミングを判定する。受信電源制御部110は、受信すべきタイミングにおいて受信部102の電源が安定した供給を行うため、数μsec程度の電源立ち上がり時間分を前にオフセットさせたタイミングにて受信電源供給部109に電源オンの制御を指示する。
【0040】
MAC制御部104は、現在のPHYフレームの送信が終了し、送信部103の電源をオフにできると判断すると、送信電源制御部112に対して送信部103の電源オフを要求する。送信電源制御部112は、MAC制御部104からの電源オフ要求に応じて、送信電源供給部111を制御して送信部103への電源供給を停止する。
【0041】
受信する場合は、ベースバンド処理部101に入力されたアナログベースバンド信号をADコンバータ105にてデジタル信号に変換し、復調部106にてPHYフレームを復調する。復調部106は、復調中のデータからヘッダ処理を行ってヘッダ情報を取得する受信ヘッダ処理部の機能を持つ。復調されたペイロードつまりMACフレームは、MAC制御部104に入力される。MAC制御部104は、アクセス制御プロトコルに従って受信処理を行う。
【0042】
現在の受信MACフレームに対してACK要求がある場合は、ACKフレームを送信する必要がある。MAC制御部104は、アクセス制御プロトコルに従ってACKフレームを送信するかを判定し、送信する場合はACKフレームを生成して送信動作を行う。
【0043】
ここで、受信MACフレームは送信電源制御部112にも入力される。送信電源制御部112は、現在受信しているPHYヘッダ及びMACフレームの制御情報から次に送信すべきタイミングを判定する。送信電源制御部112は、送信すべきタイミングにおいて送信部103の電源が安定して供給を行うために、数μsec程度の電源立ち上がり時間分を前にオフセットさせたタイミングにて送信電源供給部111に電源オンの制御を指示する。
【0044】
MAC制御部104は、現在のPHYフレームの受信が終了し、受信部102の電源をオフにできると判断すると、受信電源制御部110に対して受信部102の電源オフを要求する。受信電源制御部110は、MAC制御部104からの電源オフ要求に応じて、受信電源供給部109を制御して受信部102への電源供給を停止する。
【0045】
図4は、MACフレームの構成を示す図である。MACフレーム401は、MACヘッダ402と、データを格納するフレームボディ411と、誤り検出するためのFCS(Frame Check Sequence)412とを有する。FCS412は、フレームボディ411の末尾側に配置され、誤り検出用フィールドとして用いられる。
【0046】
MACヘッダ402は、種々の制御用フィールドを含み、フレーム種類を表すフレームコントロール(Frame Control)フィールド403、フレームの占有時間を示すデュレーション(Duration)フィールド404、宛先アドレスフィールド405、送信元アドレスフィールド406を有する。
また、MACヘッダ402は、BSSID(Basic Service Set Identifier)フィールド407、シーケンスコントロール(Sequence Control)フィールド408、アドレスフィールド409、ACK要求を示すQoS(Quality of Service)コントロールフィールド410を有する。
【0047】
QoSコントロールフィールド410には、ACK要求の種類を示す情報(QoS Control ACK Policy)として、「00」:IEEE802.11準拠の即時ACK送信、「10」:ACK送信無し、「11」:ブロックACK送信のいずれかが格納される。「01」は将来の拡張のための予約情報である。
【0048】
受信側の無線通信端末は、宛先アドレスフィールド405のアドレスが自局宛であれば、QoSコントロールフィールド410のACK要求に従って、送信元アドレスフィールド406のアドレス宛にACKを送信する。
【0049】
即時ACK送信は、パケット受信後、最小のパケット間隔(SIFS:Short Inter Frame Spacing)である3μsec後に、直ちにACKフレームを送信するためのACK要求である。ブロックACK送信は、過去に受信した複数のパケットのACKをまとめて送信するためのACK要求である。
ブロックACK送信には、さらに複数のACKをまとめて直ちに送信する即時ブロックACKと、現在は送信せずに以後のパケットにおいてまとめて送信する遅延ACKとがある。
【0050】
図5は、ACKフレームの構成を示す図である。ACKフレーム501は、ACKを示すフレームコントロールフィールド502と、宛先アドレスフィールド504とを主な情報として有する最小パケットである。また、ACKフレーム501は、デュレーションフィールド503、FCS505を含む。
【0051】
図6は、ブロックACKフレームの構成を示す図である。ブロックACKフレーム601は、ブロックACKを示すフレームコントロールフィールド602と、ブロックACKの種類を示すブロックACKコントロールフィールド606と、これまで受信した複数フレームのACK情報であるブロックACK情報フィールド607とを有する。また、ブロックACKフレーム601は、デュレーションフィールド603、宛先アドレスフィールド604、送信元アドレスフィールド605、FCS608を含む。ブロックACKコントロールフィールド606には、ブロックACKの種類を示す情報(Block ACK Control BA ACK Policy)として、「0」:即時ACK送信(通常のACK)、「1」:ACK送信無し(遅延ACK)のいずれかが格納される。
【0052】
MAC制御部104によって生成されるMACフレームは、送信部103の変調部107においてPLCPフレームにフレーム化される。PLCPフレームは、MACフレームにPHYヘッダが付加されている。PHYヘッダは、変調に用いるパラメータを格納しており、変調及び誤り訂正の符号化方式を示すMCS(Modulation and Coding Scheme)を含む。
【0053】
図7は、PLCPフレームの構成として、制御情報を伝送するモードにおけるControl PHYヘッダを含むPLCPフレームを示す図である。PLCPフレーム701のControl PHYヘッダ702は、ビットスクランブル用の初期値(スクランブル方式情報)を示すスクランブル初期値(Scrambler Init)フィールド704、フレーム全体のバイト長により表される長さ(Length)フィールド705、パケット情報フィールド706、ヘッダの誤りを検出するHCS(Header Check Sequence)フィールド707を含む。
また、将来の拡張のための予約(Reserved)フィールド703を有する。制御情報を伝送するモードでは、変調方式が1種類であるため、Control PHYヘッダ702においてMCSフィールドが省略されている。
【0054】
PLCPフレーム701は、Control PHYヘッダ702の後に、MACフレームとして、MACヘッダ708、フレームボディ709、FCS710を有する。
【0055】
図8は、PLCPフレームの構成として、データを伝送するモードにおけるSC PHYヘッダを含むPLCPフレームを示す図である。PLCPフレーム801のSC PHYヘッダ802は、スクランブル初期値フィールド803、MCSフィールド804、長さ(Length)フィールド805、パケット情報フィールド806、HCSフィールド807を含む。データを伝送するモードでは、伝送速度を可変にできるため、使用するMCSを指定するMCSフィールド804がSC PHYヘッダ802に設けられる。
【0056】
PLCPフレーム801は、SC PHYヘッダ802の後に、MACフレームとして、MACヘッダ808、フレームボディ809、FCS810を有する。
【0057】
上記いずれかの構成のPLCPフレームは、送信部103の変調部107により、PHYヘッダのMCSにより指定された符号化方式に基づいてブロック単位に分割されて誤り訂正符号化された後、MCSにより指定された変調方式に基づいてデジタル変調信号に変換される。そして、変調部107において、受信処理に必要なプリアンブルが付加され、PHYフレームとしてフレーム化される。PHYフレームが送信部103より出力され、RF部203により高周波信号に変換されて送信される。
【0058】
図9は、PHYフレームの構成を示す図である。PHYフレーム901は、プリアンブル902と、PLCPフレーム903とを有する。プリアンブル902は、STF(Short Training Field)フィールド904、CEFフィールド905を含む。PLCPフレーム903は、PHYヘッダ906と、複数のFEC(Forward Error Correction)ブロックフィールド(FEC BLK)907を含む。PLCPフレーム903の後には、サブフィールド908を含む。
【0059】
次に、本実施形態の無線通信システムにおける動作について説明する。図10〜図13は、本実施形態の無線通信システムにおいて、無線通信端末間のデータパケットとACKパケットの送受信動作の例を示している。ここでは、無線通信端末301(STA1)から無線通信端末302(STA2)に対してデータパケットを送信する場合を想定し、以下の4つの動作を説明する。
【0060】
図10は、ACKを送信する場合の動作を示すタイムチャートである。無線通信端末301(STA1)は、無線通信端末302(STA2)宛にデータパケット1001を送信し、無線通信端末302(STA2)にて受信する。無線通信端末302(STA2)は、データパケット1001のMACフレームの情報から、受信の成否、ACKの種類を判断する。ここで、自局宛のパケットを誤りなく受信でき、かつ即時ACK送信が要求されている場合、無線通信端末302(STA2)は、受信処理を終了して最小パケット間隔(SIFS、3μsec)1002の経過後、ACKパケット1003を無線通信端末301(STA1)宛に送信する。
【0061】
上記の即時ACK送信の条件が満たされない場合、無線通信端末302(STA2)は以下の動作を実行する。図11は、受信誤りが発生した場合の動作を示すタイムチャートである。無線通信端末302(STA2)は、データパケット1101の復調途中において受信誤りが発生した場合、ACKを送信しない。すなわち、受信処理を終了して最小パケット間隔1102経過後にACKパケット1103は送信されない。
【0062】
図12は、自局宛のパケットでない場合の動作を示すタイムチャートである。無線通信端末302(STA2)は、データパケット1201のMACヘッダの宛先アドレスフィールド405が自局アドレスと一致しない場合、ACKを送信しない。すなわち、受信処理を終了して最小パケット間隔1202経過後にACKパケット1203は送信されない。
【0063】
図13は、即時ACK送信の要求でない場合の動作を示すタイムチャートである。無線通信端末302(STA2)は、データパケット1301のMACヘッダのQoSコントロールフィールド410が即時ACK送信のACK要求ではない場合、即時にACKを送信しない。すなわち、受信処理を終了して最小パケット間隔1302経過後にACKパケット1303は送信されない。
【0064】
図14は、ベースバンド処理部101の電源制御時の動作を示すタイムチャートである。図14では、電源制御による電源電圧の立ち上がりの波形を模式的に示している。
【0065】
受信電源供給部109または送信電源制御部112が出力する電源制御信号1402がハイレベル(以下、Hと記載)では、対応する受信電源供給部109または送信電源供給部111は、受信部102または送信部103に、電源を供給する。
【0066】
電源制御信号1402がHでは、受信部102または送信部103の回路に供給される電源電圧は、例えば、回路の負荷容量によって、電圧が安定するまでの立ち上がり時間が必要となる。その後の電源電圧が安定した動作時間において、電源供給された回路が動作する。データパケット1401を処理するためには、立ち上がり時間分前にオフセットさせて予め電源制御信号1402をHにする必要がある。
【0067】
図15は、データパケットを送信しACKパケットを受信する場合の電源制御の動作を示すタイムチャートである。また、図23は、本実施形態の無線通信端末においてデータパケットの送信及びACKパケットを受信する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0068】
データパケット1501の送信に先立って、送信電源制御部112は、送信電源制御信号1502をHにし、送信部103に電源供給して起動する(ステップS101)。そして、送信部103は、送信開始を判断して送信処理を開始し(ステップS102)、データパケット1501のパケット長を取得する(ステップS103)。次に、送信部103は、データパケット1501の送信に対するACK要求が即時ACK送信の要求であるかを判断し(ステップS104)、即時ACK送信の要求である場合は、受信部起動タイマを設定する(ステップS105)。
【0069】
送信側の無線通信端末においては、図15に示すように、データパケット1501の送信終了後、最小パケット間隔(SIFS)をあけてACKパケット1504の受信に備えなければならない。このため、受信電源制御部110は、受信側の無線通信端末からのACKパケットが到来すると想定される時間から電源立ち上がり時間分前にオフセットさせて予め受信電源制御信号1503をHにする。
【0070】
ACKパケットが到来すると想定される時間は、データパケット1501のパケット長に基づいて算出できる。送信部103において、データパケット1501を送信する場合のPHYヘッダに設定されるバイト長とMCSとから、パケット長が計算できる。これにより、ステップS103におけるパケット長の取得を行う。そして、受信電源制御部110は、(パケット長+SIFS−電源立ち上がり時間)によって受信電源制御信号1503をHにするタイミングを算出する。算出したタイミングをステップS105における受信部起動タイマに設定する。
【0071】
受信電源制御部110は、受信部起動タイマが計時完了し、受信部起動タイミングになったかどうかを判断し(ステップS106)、受信部起動タイミングになった場合は、受信電源制御信号1503をHにし、受信部102に電源供給して起動する(ステップS107)。これにより、ACKパケット1504の受信時には直ちに受信動作が行える状態となる。
【0072】
その後、送信電源制御部112は、送信完了を判断し(ステップS108)、データパケット1501の送信処理が完了した場合は、送信電源制御信号1502をローレベル(以下、Lと記載)にし、送信部103への電源供給を停止して回路動作をオフする(ステップS109)。なお、ステップS104における判断にて即時ACK送信の要求でない場合は、ステップS105〜S107をスキップしてステップS108の送信完了の判断を行う。
【0073】
次に、受信電源制御部110は、データパケット1501の送信に対するACK要求が即時ACK送信の要求であるかを判断し(ステップS110)、即時ACK送信の要求である場合は、受信部102においてACKパケット1504の受信処理が完了したかを判断する(ステップS111)。
【0074】
ここで、ACKパケット1504の受信処理が完了した場合は、受信電源制御部110は、受信電源制御信号1503をLにし、受信部102への電源供給を停止して回路動作をオフする(ステップS113)。受信部102の電源オフは、無線伝送であるため、例えば、遅延を考慮し、レイテンシーを含めてACKパケットの終了時間に対して余裕を持たせて、長めに動作時間を設定する。
【0075】
また、ACKパケット1504の受信処理が完了していない場合、受信電源制御部110は、所定期間を計時するタイマがタイムアウトしたかを判断する(ステップS112)。ここで、タイムアウトした場合、受信電源制御部110は、受信電源制御信号1503をLにし、受信部102への電源供給を停止して回路動作をオフする(ステップS113)。
【0076】
なお、ステップS110における判断にて即時ACK送信の要求でない場合は、そのまま本処理を終了する。
【0077】
図15のように、ACKパケット1504が受信された場合、受信処理終了後、受信電源制御信号1503をLにして受信部102の電源をオフにできる。
【0078】
図16は、受信側において受信誤りが発生した場合の電源制御の動作を示すタイムチャートである。送信側の無線通信端末は、送信電源制御部112により、送信電源制御信号1602をHにして送信部103の電源をオンにし、データパケット1601を送信する。受信側の無線通信端末において、データパケット1601の受信誤りが発生した場合は、ACKパケット1604が送信されないため、受信電源制御部110は、所定期間のタイムアウト後に受信電源制御信号1603をLにし、受信部102の電源をオフにする。
【0079】
図17は、即時ACK送信の要求がなされていない場合の電源制御の動作を示すタイムチャートである。送信側の無線通信端末は、送信電源制御部112により、送信電源制御信号1702をHにして送信部103の電源をオンにし、データパケット1701を送信する。
【0080】
データパケット1701の送信時に、MACヘッダのQoSコントロールフィールド410において即時ACK送信の要求をしていない場合(ステップS104、S110にてNo)、ACK受信のための受信部電源制御は不要となる。受信電源制御部110は、受信電源制御信号1703をLのままとし、受信部102の電源オフを維持する。そして、受信電源制御部110は、次の通信動作、例えば受信待ち受けを行うために受信電源制御信号1703をHにするような動作とすればよい。
【0081】
図18は、データパケットを受信しACKパケットを送信する場合の電源制御の動作を示すタイムチャートである。また、図24は、本実施形態の無線通信端末においてデータパケットの受信及びACKパケットを送信する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0082】
データパケット1801の送信に先立って、受信電源制御部110は、受信電源制御信号1802をHにし、受信部102に電源供給して起動する(ステップS201)。これにより、無線通信端末は受信待ち受け状態となる。そして、データパケット1801が到来すると、受信部102は、受信開始を判断して受信処理を開始する(ステップS202)。
【0083】
続いて、受信部102は、受信したデータパケット1801のヘッダの復調において誤り(ヘッダエラー)があったかどうかを判断する(ステップS203)。ヘッダに誤りがない場合、受信部102は、パケット長を取得し、所定以下の短パケット長であるかどうかを判断する(ステップS204)。受信したデータパケット1801のPHYヘッダに設定されたバイト長とMCSとから、パケット長を算出できる。
【0084】
受信したデータパケット1801が短パケット長でない場合、受信部102は、MACヘッダの宛先アドレスフィールド405が自局アドレスと一致するかどうか、すなわち自局宛のパケットであるかどうかを判断する(ステップS205)。自局宛のパケットである場合、受信部102は、データパケット1801に対するACK要求が即時ACK送信の要求であるかを判断し(ステップS206)、即時ACK送信の要求である場合は、送信部起動タイマを設定する(ステップS207)。
【0085】
受信側の無線通信端末においては、図18に示すように、データパケット1801の受信終了後、最小パケット間隔(SIFS)をあけてACKパケット1804の送信に備えなければならない。しかし、MACフレームの最後に付加されているFCSフィールド412にて誤りがあったかどうかによってACK送信開始を判断していては、電源の立ち上がり時間がとれずにACK送信処理に間に合わない。
【0086】
このため、本実施形態では、受信処理の早い段階において判断可能なMACヘッダの宛先アドレスフィールド405を用いて、自局宛のパケットであると判断した時点において、送信電源制御部112は送信電源制御信号1803をHにする。例えばミリ波無線通信システムでは、データフレームの受信開始から、PHYヘッダは3μsec程度まで、MACヘッダは4μsec程度までで復調可能である。
【0087】
なお、受信したデータパケット1801のパケット長に基づいて送信電源制御信号1803をHにするタイミングをさらに調整することが望ましい。受信部102は、ステップS204において、データパケット1801のPHYヘッダに設定されたバイト長とMCSとからパケット長を取得し、パケット長に応じて、送信電源制御信号1803をHにするタイミングを算出する。算出したタイミングをステップS207における送信部起動タイマに設定する。
【0088】
送信電源制御部112は、送信部起動タイマが計時完了し、送信部起動タイミングになったかどうかを判断し(ステップS208)、送信部起動タイミングになった場合は、送信電源制御信号1803をHにし、送信部103に電源供給して起動する(ステップS209)。これにより、ACKパケット1804の送信時には直ちに送信動作が行える状態となる。
【0089】
その後、受信電源制御部110は、受信完了を判断し(ステップS210)、データパケット1801の受信処理が完了した場合は、受信電源制御信号1802をLにし、受信部102への電源供給を停止して回路動作をオフする(ステップS211)。受信部102の電源オフは、無線伝送であるため、例えば、遅延を考慮し、データパケットの終了時間に対して余裕を持たせて、長めに動作時間を設定する。
【0090】
なお、ステップS203における判断にてヘッダエラーがある場合、ステップS205における判断にて自局宛のパケットでない場合、及びステップS206における判断にて即時ACK送信の要求でない場合は、その後のステップをスキップしてステップS210の受信完了の判断を行う。
【0091】
次に、送信電源制御部112は、データパケット1801に対するACK要求が即時ACK送信の要求であるかを判断し(ステップS212)、即時ACK送信の要求である場合は、送信部103においてACKパケット1804の送信処理が完了したかを判断する(ステップS213)。受信部102における受信処理が完了し、MACフレームの最後に付加されているFCSフィールド412において誤りがないことが検出され、MACヘッダにて即時ACK送信が要求されている場合、送信部103は、ACKパケット1804を送信する。
【0092】
ACKパケット1804の送信処理が完了した場合は、送信電源制御部112は、送信電源制御信号1803をLにし、送信部103への電源供給を停止して回路動作をオフする(ステップS214)。
【0093】
なお、ステップS212における判断にて即時ACK送信の要求でない場合は、そのまま本処理を終了する。
【0094】
図18のように、データパケット1801を誤りなく受信でき、即時ACK送信の要求がなされた場合、MACヘッダの復調時点にて早めに送信電源制御信号1803をHにして送信部103を起動する。これにより、データパケット1801の受信処理を終了し、最小パケット間隔(SIFS)の経過後に直ちにACKパケット1804を送信できる。
【0095】
また、受信処理終了後、受信電源制御信号1802をLにして受信部102の電源をオフにでき、ACKパケット1804の送信処理終了後、送信電源制御信号1803をLにして送信部103の電源をオフにできる。
【0096】
なお、図18ではACKパケット1804の送信処理を終了して所定時間経過後に、受信電源制御信号1802をLにしているが、ACKパケット1804の送信処理を終了すると直ちに受信電源制御信号1802をLにしてもよい。
【0097】
図19は、受信したデータパケットのPHYヘッダにおいて誤りが検出された場合の電源制御の動作を示すタイムチャートである。受信側の無線通信端末は、受信電源制御部110により、受信電源制御信号1902をHにして受信部102の電源をオンにし、データパケット1901を受信する。
【0098】
受信処理において、PHYヘッダのHCSフィールド807にて誤りが検出された場合(ステップS203にてYes)、ACKパケットを送信しないので、送信電源制御部112は、送信電源制御信号をLのままとし、送信部103の電源オフを維持する。
【0099】
図20は、受信したデータパケットのFCSフィールドにおいて誤りが検出された場合の電源制御の動作を示すタイムチャートである。受信側の無線通信端末は、受信電源制御部110により、受信電源制御信号2002をHにして受信部102の電源をオンにし、データパケット2001を受信する。
【0100】
受信処理中に送信部起動タイミングになった場合は、送信電源制御信号2003をHにし、電源立ち上がり時間を考慮して前もって送信部103の電源をオンする。受信したデータパケット2001のFCSフィールド412にて誤りが検出された場合は、ACKパケットを送信しないので、送信電源制御部112は、誤りが検出された時点において送信電源制御信号2003をLにして送信部103の電源をオフにもできる。
【0101】
図21は、即時ACK送信の要求がなされていない場合の電源制御の動作を示すタイムチャートである。受信側の無線通信端末は、受信電源制御部110により、受信電源制御信号2102をHにして受信部102の電源をオンにし、データパケット2101を受信する。
【0102】
受信したデータパケット2101において、MACヘッダのQoSコントロールフィールド410において即時ACK送信の要求がなされていない場合(ステップS206、S212にてNo)、ACK送信のための送信部電源制御は不要となる。送信電源制御部112は、送信電源制御信号をLのままとし、送信部103の電源オフを維持する。
【0103】
図22は、受信したデータパケットが短パケット長である場合の電源制御の動作を示すタイムチャートである。受信側の無線通信端末は、受信電源制御部110により、受信電源制御信号2202をHにして受信部102の電源をオンにし、データパケット2201を受信する。
【0104】
受信したデータパケット2201のPHYヘッダからパケット長(Length)が所定値より短いと判定された場合(ステップS204にてYes)、送信電源制御部112は、短パケット長の判定時点において送信電源制御信号2203をHとし、送信部103の電源をオンしてもよい。短パケット長のデータパケット2201の受信にも対応して送信部電源制御が可能であり、受信処理を終了して最小パケット間隔の経過後に直ちにACKパケット2204を送信できる。
【0105】
上述したように、本実施形態では、送信部と受信部との電源を分離して制御するため、送信部と受信部において、それぞれ独立して電源の供給をオンオフできる。現在受信中のパケットに含まれるヘッダが復調できた時点において、直後に送信すると予測される場合は、電源立ち上がり時間を考慮して送信部の電源を予めオンにする。あるいは、現在送信中のパケットに含まれるヘッダから、直後に受信すると予測される場合は、電源立ち上がり時間を考慮して受信部の電源を予めオンにする。
【0106】
これにより、高速なパケット伝送を実行するミリ波無線通信においても、送信するデータパケット及び送信するデータパケットに対するACKパケットのタイミングに合わせて、送信部及び受信部の電源オンオフを制御できる。したがって、電源制御によって、パケット毎に送信部と受信部との電源がオフとなる時間を設けたため、リーク電流を低減し、消費電力を低減できる。
【0107】
よって、本実施形態は、無線通信装置においてベースバンド信号の処理を行う半導体集積回路の半導体装置に適用することにより、装置の省電力化を図り、リーク電流を低減できる。特に、高速な信号処理と低レイテンシーが要求される無線通信システムにおいて、低消費電力が要求されるモバイル通信機器を含む無線通信機器に適用することにより、大きな効果が得られる。
【0108】
なお、本発明は、本発明の趣旨ならびに範囲を逸脱することなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が様々な変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0109】
上記各実施形態では、ハードウェアを用いた構成を例にとって説明したが、本発明はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0110】
また、上記各実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0111】
また、集積回路化の手法はLSIに限らず、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、または、LSI内部の回路セルの接続及び設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0112】
また、各機能ブロックの演算は、例えばDSPまたはCPUを用いて演算できる。さらに、各機能の処理ステップは、プログラムとして記録媒体に記録して実行できる。
【0113】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、別技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適応が可能性としてありえる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、高速伝送を行うミリ波無線通信において、信号処理を行う回路の消費電力を低減可能となる効果を有し、例えば、高速な信号処理と低レイテンシーが要求される無線通信システムに適用される無線通信装置、及び無線通信回路を含む半導体装置等として有用であり、低消費電力が要求されるモバイル通信機器を含む無線通信機器全般に広く適用できる。
【符号の説明】
【0115】
101 ベースバンド処理部
102 受信部
103 送信部
104 MAC制御部
105 ADコンバータ
106 復調部
107 変調部
108 DAコンバータ
109 受信電源供給部
110 受信電源制御部
111 送信電源供給部
112 送信電源制御部
201 無線処理部
202 アンテナ
203 RF部
204 ホストプロセッサ
301、302、303 無線通信端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信の送信処理を行う送信部と、
前記送信部に電源を供給する送信電源供給部と、
前記送信部への電源供給を制御する送信電源制御部と、
無線通信の受信処理を行う受信部と、
前記受信部に電源を供給する受信電源供給部と、
前記受信部への電源供給を制御する受信電源制御部と、を備え、
前記送信電源制御部は、前記送信部における送信処理の開始時間より電源立ち上がり時間を考慮した所定時間前に前記送信部の電源をオンし、前記送信処理が終了した場合に前記送信部の電源をオフし、
前記受信電源制御部は、前記送信部により送信するデータに対する受信側の無線通信装置からのACKが到来すると想定される時間より電源立ち上がり時間を考慮した所定時間前に、前記受信部の電源をオンし、前記受信部におけるACKの受信処理が終了した場合に前記受信部の電源をオフする、無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
前記受信電源制御部は、前記受信部において前記受信側の無線通信装置からのACKが受信されない場合、前記電源のオンから所定時間経過後に前記受信部の電源をオフする、無線通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
前記受信電源制御部は、前記送信部により送信するデータのヘッダ情報に基づき、データに対するACK要求が、データの終了から最小パケット間隔経過後にACK送信を要求する即時ACK送信の要求ではない場合、前記受信部の電源をオフのままとする、無線通信装置。
【請求項4】
無線通信の受信処理を行う受信部と、
前記受信部に電源を供給する受信電源供給部と、
前記受信部への電源供給を制御する受信電源制御部と、
無線通信の送信処理を行う送信部と、
前記送信部に電源を供給する送信電源供給部と、
前記送信部への電源供給を制御する送信電源制御部と、を備え、
前記受信電源制御部は、所定のタイミングに前記受信部の電源をオンし、前記受信部におけるデータの受信処理が終了した場合に前記受信部の電源をオフし、
前記送信電源制御部は、前記受信部により受信したデータに基づき、自局宛のデータを誤りなく受信できた場合、前記受信データに対する送信側の無線通信装置へのACKの送信処理の開始時間より電源立ち上がり時間を考慮した所定時間前に、前記送信部の電源をオンし、前記ACKの送信処理が終了した場合に前記送信部の電源をオフする、無線通信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の無線通信装置であって、
前記送信電源制御部は、前記受信部により受信したデータのヘッダ情報に基づき、ヘッダにおいて受信誤りが検出された場合、前記送信部の電源をオフのままとする、無線通信装置。
【請求項6】
請求項4に記載の無線通信装置であって、
前記送信電源制御部は、前記受信部により受信したデータの末尾側に配置された誤り検出用フィールドにおいて受信誤りが検出された場合、受信誤り検出時点において前記送信部の電源をオフする、無線通信装置。
【請求項7】
請求項4に記載の無線通信装置であって、
前記送信電源制御部は、前記受信部により受信したデータのヘッダ情報に基づき、データに対するACK要求が、データの終了から最小パケット間隔経過後にACK送信を要求する即時ACK送信の要求ではない場合、前記送信部の電源をオフのままとする、無線通信装置。
【請求項8】
請求項4に記載の無線通信装置であって、
前記送信電源制御部は、前記受信部により受信したデータのヘッダ情報に基づき、データのパケット長が所定値より短いと判定された場合、短パケット長の判定時点において前記送信部の電源をオンする、無線通信装置。
【請求項9】
無線通信の送信処理を行う送信部と、
前記送信部に電源を供給する送信電源供給部と、
前記送信部への電源供給を制御する送信電源制御部と、
無線通信の受信処理を行う受信部と、
前記受信部に電源を供給する受信電源供給部と、
前記受信部への電源供給を制御する受信電源制御部と、を含む信号処理部を備え、
前記送信電源制御部は、前記送信部における送信処理の開始時間より電源立ち上がり時間を考慮した所定時間前に前記送信部の電源をオンし、前記送信処理が終了した場合に前記送信部の電源をオフし、
前記受信電源制御部は、前記送信部により送信するデータに対する受信側の無線通信装置からのACKが到来すると想定される時間より電源立ち上がり時間を考慮した所定時間前に、前記受信部の電源をオンし、前記受信部におけるACKの受信処理が終了した場合に前記受信部の電源をオフし、
前記信号処理部を含む回路は、半導体基板に搭載される
半導体装置。
【請求項10】
無線通信の受信処理を行う受信部と、
前記受信部に電源を供給する受信電源供給部と、
前記受信部への電源供給を制御する受信電源制御部と、
無線通信の送信処理を行う送信部と、
前記送信部に電源を供給する送信電源供給部と、
前記送信部への電源供給を制御する送信電源制御部と、を含む信号処理部を備え、
前記受信電源制御部は、所定のタイミングに前記受信部の電源をオンし、前記受信部におけるデータの受信処理が終了した場合に前記受信部の電源をオフし、
前記送信電源制御部は、前記受信部により受信したデータに基づき、自局宛のデータを誤りなく受信できた場合、前記受信データに対する送信側の無線通信装置へのACKの送信処理の開始時間より電源立ち上がり時間を考慮した所定時間前に、前記送信部の電源をオンし、前記ACKの送信処理が終了した場合に前記送信部の電源をオフし、
前記信号処理部を含む回路は、半導体基板に搭載される
半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−209888(P2012−209888A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75833(P2011−75833)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、超高速近距離無線伝送技術等の研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】