説明

無電極放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具

【課題】暗所や低温時等の始動困難な状況で良好な始動性を確保するとともに、回路を構成する部品へのストレスを低減し且つ点灯までに要する時間を短縮することのできる無電極放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具を提供する。
【解決手段】無電極放電灯4が始動しない程度の大きさの高周波電圧を誘導コイル3に印加する始動準備期間T1、及び無電極放電灯4が始動可能な大きさの高周波電圧を誘導コイル3に印加する始動期間T2を経て無電極放電灯4を始動させる始動回路5と、高周波電源回路2から誘導コイル3への電力供給の異常を検出すると直流電源回路1及び高周波電源回路2の動作を停止させる保護期間T3に移行させ、始動準備期間T1、始動期間T2、保護期間T3を順番に繰り返させる保護回路9とを備え、始動回路5は、商用電源AC投入後の始動準備期間T1がそれ以外の始動準備期間T1よりも短くなるように駆動回路20を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電極放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、透明な球状のガラスバルブ又は内壁面に蛍光体が塗布された球状のガラスバルブ内に不活性ガス、金属蒸気などの放電ガス(例えば、水銀蒸気及び希ガス)が封入された無電極放電灯の近傍に誘導コイルを配置し、この誘導コイルに数十kHzから数百MHzの高周波電流を流すことにより、誘導コイルに高周波電磁界を発生させて無電極放電灯に高周波電力を供給し、無電極放電灯のガラスバルブ内に高周波プラズマ電流を発生させて紫外線若しくは可視光を発生させる無電極放電灯点灯装置が知られている。このような無電極放電灯点灯装置として、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。
【0003】
この無電極放電灯点灯装置は、交流電源から供給される交流出力から所定の直流出力を作成する直流電源回路と、直流電源回路の直流出力を高周波出力に変換して無電極放電灯の近傍に配置された誘導コイルに供給する高周波電源回路とを備え、始動時における始動電圧を検出回路が検出し、制御回路によってフィードバックを行うことで所望の始動電圧が誘導コイルに印加されるように制御するもので、高周波電源回路の駆動回路は、始動回路が出力する第1の制御出力と、制御回路が出力する第2の制御出力とを加算した制御出力に応じて動作周波数を変化させる。これにより、始動回路によって無電極放電灯を安定して始動・点灯させることができるとともに、点灯後においては制御回路によってフィードバック制御が行われることで誘導コイルに印加される高周波電力が過度に増加又は減少するのを防ぐことができる。
【0004】
ところで、無電極放電灯は内部に電極を有しないので、無電極放電灯の始動時には蛍光灯等よりも高い始動電圧を誘導コイルに印加する必要がある。このため、無電極放電灯の始動時における共振の鋭さを鋭くして(即ち、共振回路のQ値を高く設定する)高い始動電圧を低損失で印加することのできる無電極放電灯点灯装置を設計する必要がある。ここで共振が鋭いとは、微小な周波数や回路を構成する素子のパラメータ等の変動に対して始動電圧が大きく変動する状態にあることを意味する。
【0005】
また、始動時における無電極放電灯がインダクタ負荷であり、蛍光灯等の電極を有する他の放電灯に比較して、特に点灯していない状態(始動時や無負荷時等)に大きな電力を必要とするという問題がある。例えば、直流電源回路の出力を受けて高周波出力を出力する高周波電源回路の無負荷時における消費電力は通常点灯時の消費電力の2倍以上に達することもある。しかしながら、無電極放電灯点灯装置における直流電源回路は、装置のサイズやコストを考慮して通常点灯時の負荷状態を基準にして設計されるのが一般的である。したがって、始動時、特に暗所での点灯時や無負荷時では、重負荷のために直流電源回路の電圧レギュレーションが十分でなく直流電源回路の出力電圧が低下してしまう。その結果、十分な始動電圧を確保することができずに無電極放電灯が点灯しない等の不具合が発生する虞がある。
【0006】
上記の不具合を解決するために、始動時に誘導コイルに高周波電圧を急峻に印加させるのではなく、始動前に所定出力の高周波電圧を予備出力として一定期間(以下、この期間を「始動準備期間」と呼ぶ)誘導コイルに印加させる構成が特許文献2に開示されている。この構成は、高周波電源回路に適度な負荷を与えることで始動時の急峻な負荷変動を抑え、始動時において誘導コイルに印加される高周波電圧のオーバーシュートを防止する効果を得るものであるが、同時に直流電源回路の制御も負荷変動についていき易いことから、直流電源回路の出力電圧の低下を抑えて高周波電源回路に安定して直流電圧を供給する効果も得ることができる。
【特許文献1】特開2005−158464号公報
【特許文献2】特開2005−158459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記後者の従来例では、始動準備期間において高い高周波電圧を誘導コイルに印加するために、回路を構成する部品に多大なストレスを与える虞があった。例えば図9に示すように、始動準備期間、誘導コイルに無電極放電灯が始動可能な大きさの高周波電圧を印加する始動期間、始動期間において無電極放電灯が点灯しない場合に直流電源回路及び高周波電源回路の動作を停止する保護期間を繰り返すことで無電極放電灯を点灯させる場合、暗所や低温時などの始動困難な状況では始動準備期間を必要とするが、停電後の再点灯時などの比較的始動させ易い状況では交流電源投入後の最初の始動準備期間を必要としない。このため、始動準備期間を設けることで回路を構成する部品に多大なストレスを与えてしまう。また、余分な始動準備期間を設けることで点灯までに要する時間が増大してしまうという問題もあった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、暗所や低温時等の始動困難な状況で良好な始動性を確保するとともに、回路を構成する部品へのストレスを低減し且つ点灯までに要する時間を短縮することのできる無電極放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換して出力する直流電源回路と、高周波でスイッチングされる1乃至複数のスイッチング素子並びに共振回路を具備し直流電源回路の出力電圧を高周波電圧に変換して無電極放電灯に近接配置された誘導コイルに供給する高周波電源回路と、スイッチング素子をスイッチングさせる駆動信号を出力する駆動回路と、駆動回路を制御して駆動信号の周波数を変化させることにより誘導コイルへの印加電圧を漸増させ、無電極放電灯が始動せず且つ高周波電界放電を発生させる大きさの高周波電圧を誘導コイルに印加する始動準備期間、及び無電極放電灯が始動可能で且つ高周波電磁界放電を発生させる大きさの高周波電圧を誘導コイルに印加する始動期間を経て無電極放電灯を始動させる始動回路と、高周波電源回路から誘導コイルへの電力供給の異常を検出すると直流電源回路及び高周波電源回路の動作を停止させる保護期間に移行させ、少なくとも始動準備期間、始動期間、保護期間を順番に繰り返させる保護回路とを備え、始動回路は、交流電源投入後の最初の始動準備期間が最初の始動準備期間を除いた他の始動準備期間よりも短くなるように駆動回路を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、少なくとも無電極放電灯を保持する器具本体と、無電極放電灯に近接配置される誘導コイルと、誘導コイルに高周波電力を供給する請求項1記載の無電極放電灯点灯装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、停電後の復帰時など比較的点灯させ易い状況において必要の無い始動準備期間を短縮できるので、回路を構成する部品へのストレスを低減するとともに点灯までに要する時間を短縮することができる。また、暗所や低温時などの点灯が困難な状況においても、交流電源投入後の始動準備期間のみを短くしているので、良好な始動性を確保することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果を奏する照明器具を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施形態1)
以下、本発明に係る無電極放電灯点灯装置の実施形態1について図面を用いて説明する。本実施形態は、図1に示すように、交流電源である商用電源ACの交流出力から所望の直流出力を作成する直流電源回路1と、直流電源回路1の直流出力を高周波出力に変換して無電極放電灯4の近傍に配置された誘導コイル3に供給する高周波電源回路2と、無電極放電灯4の始動時に高周波電源回路2の出力電圧(誘導コイル3への印加電圧)である高周波電圧Vxを漸増させて無電極放電灯4を始動する始動回路5と、高周波電圧Vxを検出する電圧検出回路7と、後述する共振回路21に流れる共振電流を検出する電流検出回路と、電流検出回路の検出電流を参照して高周波電圧Vxが所望のレベルとなるように後述する駆動回路20を制御して駆動信号VDH,VDLの周波数(動作周波数)finvを変化させる制御回路6とを備える。
【0014】
直流電源回路1は、商用電源ACの交流出力を整流する整流回路10と、インダクタL1、ダイオードD1、スイッチング素子Q1、平滑コンデンサC1並びにスイッチング素子Q1を駆動する駆動回路11を具備した従来周知の昇圧チョッパ回路から成り、直流電圧Vdcを出力する。
【0015】
高周波電源回路2は、直流電源回路1の出力端間に直列接続された一対のスイッチング素子Q2,Q3を具備し、ローサイドのスイッチング素子Q3にインダクタLs、コンデンサCp,Csから成る共振回路21が接続された所謂ハーフブリッジ型のインバータ回路で構成され、電界効果トランジスタからなる一対のスイッチング素子Q2,Q3を、駆動回路20から出力される矩形波パルスの駆動信号VDH,VDLにより交互にスイッチングすることで共振回路21を介して誘導コイル3に高周波出力を供給する。尚、スイッチング素子Q2を駆動する駆動信号VDHとスイッチング素子Q3を駆動する駆動信号VDLは略180度の位相差を有している。
【0016】
尚、直流電源回路1及び高周波電源回路2の各駆動回路11,20と回路のグランドとの間には、それぞれコンデンサCcp,Cinvが挿入されており、これらコンデンサCcp,Cinvによって商用電源ACからの電源供給が開始されてから各駆動回路11,20が開始するまでの時間を設定している。
【0017】
共振回路21の出力端には導電性を有する線材を複数ターン巻回して成る誘導コイル3が接続され、当該誘導コイル3に無電極放電灯4が近接配置される。無電極放電灯4は、図6(a)に示すように、不活性ガス・金属蒸気等の放電ガス(例えば、水銀及び希ガス)が封入された透明な略球状のバルブ40と、バルブ40に封止されてバルブ40の内方に突出した略円筒状のキャビティ41とから成り、キャビティ41には、バルブ40を保持するとともにバルブ40に対する誘導コイル3の位置決めをするカプラ8が挿入される。
【0018】
カプラ8は、図6(b)に示すように、誘導コイル3を保持するボビン80と、ボビン80内部に収納された略筒状のコア81とを備えている。コア81は、例えば高周波磁気特性の良好な、Mn−Znのフェライトから成り、アルミ等の金属材料で形成された放熱体(図示せず)によって保持される。コア81の発熱は、放熱体を介して台座部82に捨てられる。尚、同図に示すように、本実施形態及び後述の実施形態2は何れもケース83に収納され、誘導コイル3と出力線84を介して電気的に接続されることで高周波出力を誘導コイル3に供給するようになっている。
【0019】
電圧検出回路7は、整流用のダイオード、分圧用の抵抗、平滑用のコンデンサ等から成り、高周波電圧Vxに応じた直流電圧である検出電圧Vxsを始動回路5に出力する。電流検出回路は、高周波電源回路2を構成するローサイドのスイッチング素子Q3と回路のグランドとの間に接続された検出抵抗Rdから成り、スイッチング素子Q3に流れる高周波電流(共振回路21に流れる共振電流)に応じた検出電圧VRdを制御回路6に出力している。
【0020】
始動回路5は、直流電源回路1の出力電圧Vdcを降圧・安定化して得られる動作電圧Vdにより感温抵抗R1を介して充電されるコンデンサC2と、オペアンプOP1に入力抵抗及び帰還抵抗を接続して成り、コンデンサC2の両端電圧Vcと電圧検出回路7の検出電圧Vxsの差分を増幅する誤差増幅器と、コンデンサC2と並列に接続された分圧抵抗R2と、コンデンサC2と並列に接続された抵抗R3及び放電用のスイッチSWの直列回路とを具備し、抵抗R1及びコンデンサC2から成る充電回路の時定数に応じて出力電圧Vfが徐々に上昇するものである。そして、始動回路5の出力電圧Vfは駆動回路20に入力されている。尚、本実施形態では、スイッチSWのオン/オフの切替は例えばマイコン等から成るスイッチ制御回路(図示せず)により制御され、装置が起動してから所定時間毎にオン/オフを切り替えるように予め設定されている。
【0021】
制御回路6は、オペアンプOP2に入力抵抗等を接続して成り、基準電圧Vrefと電流検出回路の検出電圧VRdの差分を増幅する誤差増幅器(差動増幅器)と、抵抗を介してオペアンプOP2の出力端子にカソードが接続されたダイオードD3とを具備する。オペアンプOP2は、基準電圧Vrefが非反転入力端子に入力されるとともに、反転入力端子と出力端子の間に抵抗R4とコンデンサC3の並列回路から成る遅延回路が接続されている。また、始動回路5の誤差増幅器を構成するオペアンプOP1の出力端子にも抵抗を介してダイオードD2のカソードが接続されており、これら2つのダイオードD2,D3のアノードが駆動回路20の入力端子に並列接続されている。ここで、駆動回路20の入力端子には定電圧(入力端子電圧)が印加されており、始動回路5の誤差増幅器の出力電圧(オペアンプOP1の出力電圧Vf)が駆動回路20の入力端子電圧よりも小さいときにダイオードD2が導通してその電位差に応じた第1の制御電流Iswが流れるとともに、制御回路6の誤差増幅器の出力電圧(オペアンプOP2の出力電圧Vn)が駆動回路20の入力端子電圧よりも小さいときにダイオードD3が導通してその電位差に応じた第2の制御電流Ifbが流れる。故に、駆動回路20の入力端子から流れ出る制御電流Ioの大きさは第1及び第2の制御電流Isw,Ifbの和となる。
【0022】
一方、駆動回路20は発振器を具備しており、入力端子から始動回路5並びに制御回路6の出力端子へ流れる制御電流Ioに応じて発振器の発振周波数を変化させ、制御電流Ioに比例して駆動信号VDH,VDLの周波数(動作周波数)finvを増減している。したがって、始動回路5並びに制御回路6の誤差増幅器の出力電圧Vf,Vnが大きくなるほど駆動回路20の動作周波数finvは減少することになる。
【0023】
保護回路9は、非反転入力端子に電圧検出回路7の検出電圧Vxsが入力されるとともに、反転入力端子に基準電圧Vbが入力されるオペアンプOP3と、オペアンプOP3の出力端子に接続される抵抗R5及びコンデンサC4から成る遅延回路と、コンデンサC4の両端電圧が入力されて当該電圧に応じて直流電源回路1及び高周波電源回路2の動作を停止させる停止回路90とから構成される。基準電圧Vbは、始動期間T2における高周波電圧Vxに応じて設定され、始動期間T2に移行するとオペアンプOP3の出力電圧がハイレベルとなるように設定されている。停止回路90は、入力されるコンデンサC4の両端電圧が所定電圧を超えると直流電源回路1の駆動回路11、及び高周波電源回路2の駆動回路20に制御信号を与えて各回路の動作を一定期間停止させる。
【0024】
ところで、無電極放電灯4の始動は、一般の有電極放電灯と違いバルブ40と誘導コイル3とを一体として考慮する必要があり、以下の2つのモードの放電がある。その放電の順序として、誘導コイル3に高周波電圧Vxが印加されると、誘導コイル3と無電極放電灯4のランプ管壁を介してバルブ40内のガスが励起し、高周波電界放電(以下、「E放電」と呼ぶ)が発生して放電の種火が作られ、グロー放電状態となる。その後、更に誘導コイル3に高い高周波電圧Vxが印加されると高周波電磁界放電(以下、「H放電」と呼ぶ)が発生し、無電極放電灯4が点灯して安定なアーク放電状態となる。
【0025】
先ず、E放電について説明する。E放電とは、無電極放電灯4のランプ管壁の静電容量を介して放電電流が流れるものであり、誘導コイル3に高周波電圧Vxを印加していくと、誘導コイル3と無電極放電灯4のランプ管壁の静電容量を介してバルブ40内のガスが励起されて発光する。この放電は微放電(グロー放電状態)となり、誘導コイル3に印加する高周波電圧Vxを高くしていくと主放電に移行する。
【0026】
次に、H放電について説明する。H放電とは、誘導コイル3の電磁誘導で誘導電流を流すものであり、誘導コイル3を複数ターンの1次巻線とし、バルブ40内に発生するプラズマリングを1ターンの2次巻線とするトランスとして理解できる。ここで、H放電は無電極放電灯4の発光に寄与する主放電(アーク放電状態)である。
【0027】
本実施形態では、後述するように始動準備期間T1において誘導コイル3にE放電が発生し且つH放電が発生しない程度の大きさの高周波電圧Vxを印加することでE放電を発生させ、始動期間T2において誘導コイル3にH放電が発生する程度の大きさの高周波電圧Vxを印加することでH放電を発生させて無電極放電灯4を点灯させている。このため、始動準備期間T1において暗所や低温等周囲の状況によって多少ばらつきがあってもE放電を発生させることができる。また、E放電を発生させた後に始動期間T2に移行することから、直ぐにH放電を発生させることができて高電圧を誘導コイル3に印加する始動期間T2を短縮することができる。而して、始動準備期間T1を設けずに無電極放電灯4を始動させる場合と比較して無電極放電灯4の始動性を高めることができるとともに、回路を構成する部品へのストレスを低減することができる。
【0028】
以下、本実施形態の動作について図2,図3を用いて説明する。図2は、横軸を駆動回路20の動作周波数finv、縦軸を高周波電圧Vxとする高周波電源回路2の出力特性を示し、曲線イが無電極放電灯4が消灯している状態(無負荷時)、曲線ロが無電極放電灯4が点灯した状態(点灯時)の特性を表している。また、図3は、横軸を時間t、縦軸をそれぞれ上から駆動回路20の動作周波数finv、高周波電圧Vx、直流電源回路1の出力電圧Vdcとしたタイムチャートを示している。
【0029】
先ず、商用電源ACから直流電源回路1への電源供給が開始されると、時刻t1で直流電源回路1の出力電圧Vdcが立ち上がり始めるとともに始動回路5が動作を開始する。ここで、スイッチSWはオンとなっており、始動回路5の出力電圧Vfが動作電圧Vdを抵抗R1,R2,R3で分圧した電圧値となる。この時の駆動回路20から出力される駆動信号VDH,VDLの周波数(高周波電源回路2の動作周波数)finvは初期値(始動開始周波数)f1で(図3参照)、始動開始周波数f1は、図2に示すように無負荷時の共振周波数f0よりも十分に高い周波数に設定されており、動作周波数finv=f1のときの高周波電圧Vxは直流電源回路1の出力電圧Vdcが所定電圧に達する時刻t2まで漸増する(図3参照)。このスイッチSWがオンの期間は時刻t2を経て時刻t3まで続き、高周波電圧VxがE放電を発生させる電圧となる時刻t2から時刻t3までの期間が始動準備期間T1となる。
【0030】
次に、時刻t3になるとスイッチSWがオフに切り替わり、出力電圧Vfが動作電圧Vdを抵抗R1,R2で分圧した電圧値となる。この時の出力電圧Vfは始動準備期間T1における出力電圧Vfよりも大きくなるため、動作周波数finvは、図2に示すように出力電圧Vfの上昇に伴って始動開始周波数f1よりも小さいf2となり、高周波電圧Vxは始動準備期間T1における出力電圧Vxよりも大きく且つH放電を発生させる電圧となる(図3参照)。このスイッチSWがオフの期間は時刻t4まで続き、この期間が始動期間T2となる。この期間において高周波電圧Vxが始動電圧に達して無電極放電灯4が点灯し、特性が曲線イから曲線ロへ変化することで出力電圧Vxが下降し、点灯期間に移行する。尚、この始動期間T2で無電極放電灯4が点灯しない場合には、時刻t4で保護回路9によって後述する保護期間T3に移行する。
【0031】
一方、制御回路6では、時刻t1の時点では高周波電源回路2の出力電流(共振電流)は略ゼロであるからその検出電圧VRdも略ゼロとなり、制御回路6の誤差増幅器を構成するオペアンプOP2の出力電圧Vnは基準電圧Vrefに応じた初期値(最大値)となる。そして、時間の経過とともに高周波電源回路2の出力電流が増加して検出電圧VRdも増加するが、抵抗R4及びコンデンサC3からなる遅延回路のはたらきでオペアンプOP2の出力電圧Vnは初期値から減少せず、制御回路6の第2の制御電流Ifbもほぼゼロとなる。したがって、オペアンプOP2の出力電圧Vnが駆動回路20の入力端子電圧よりも高電圧である間は第2の制御電流Ifbが略ゼロとなり、制御出力Ioが第1の制御出力Iswとほぼ一致するため、制御回路6による動作周波数finvのフィードバック制御が行われず、始動回路5から出力される第1の制御電流Iswによって動作周波数finvを徐々に減少させる制御のみが行われる。
【0032】
ここで、制御回路6における遅延回路の遅延時間は、無電極放電灯4が始動点灯するまでに要する時間(時刻t1からt4までの経過時間)程度に設定されており、時刻t4以降はオペアンプOP2の出力電圧Vnと駆動回路20の入力端子電圧の電位差に応じて第2の制御電流Ifbが流れるため、制御電流Ioの増加とともに動作周波数finvも増加し、高周波電圧Vxが減少することになる。尚、駆動回路20の動作周波数finvは、共振電流が無電極放電灯4の定格点灯持における所望のレベルに一致するとき、すなわち、検出電圧VRdが基準電圧Vrefと一致するときの周波数(定格点灯周波数)に落ち着くことになる。これ以降、制御回路6は共振電流(高周波電源回路2の出力電流)を基準電圧Vrefで決まる所望のレベルに一致させるように駆動回路20の動作周波数finvをフィードバック制御して無電極放電灯4を安定点灯させる。
【0033】
ところで、無電極放電灯4が装着されていない無負荷等の異常があった場合には無電極放電灯4が点灯しないまま高い電圧が印加され続けて回路に悪影響を及ぼすため、始動期間T2が一定期間経過すると直流電源回路1及び高周波電源回路2の動作を停止させるのが望ましい。そこで、本実施形態では、始動期間T2に移行すると保護回路9のコンデンサC4の充電が開始され、一定期間を経てコンデンサC4の両端間電圧が所定電圧を超えると停止回路90が各駆動回路11,20に制御信号を与えて直流電源回路1及び高周波電源回路2の動作を停止させ、保護期間T3に移行する。保護期間T3に移行した後、停止回路90で定められた一定期間が経過すると再び直流電源回路1及び高周波電源回路2の動作が開始され、以下上述の一連の動作が繰り返される。尚、本実施形態では、上述の一連の動作が3回繰り返されると停止回路90の機能により無負荷と判定され、直流電源回路1及び高周波電源回路2の動作が完全に停止して回路が保護される。
【0034】
上述のように、商用電源AC投入後に直流電源回路1の出力電圧Vdcが所定電圧に達するまでに始動回路5を動作させることで、従来のように直流電源回路1の出力電圧Vdcが所定電圧に達した後に始動回路5を動作させる場合と比較して商用電源AC投入後の最初の始動準備期間T1を短縮することができ、点灯までに要する時間を短縮することができる。また、始動準備期間T1が短縮されることから回路を構成する部品へのストレスも低減することができる。更に、暗所や低温時などの点灯が困難な状況下においても、商用電源AC投入後の最初の始動準備期間T1のみを短くしているので、良好な始動性を確保することができる。
【0035】
(実施形態2)
以下、本発明に係る無電極放電灯点灯装置の実施形態2について図面を用いて説明する。但し、本実施形態の基本的な構成は実施形態1と共通であるので、共通する部位には同一の番号を付して説明を省略するものとする。本実施形態は、実施形態1と同様の回路構成であって、図5に示すように、商用電源AC投入後の最初の始動準備期間T1を極限まで短くして略零にする、即ち、商用電源AC投入後の最初の始動準備期間T1を省略したことに特徴がある。
【0036】
本実施形態では、上述のように商用電源AC投入後の最初の始動準備期間T1を省略するために、図4に示すように実施形態1の回路に新たな回路を追加している。この回路は、直流電源回路1の後段に設けられて直流電源回路1の出力電圧Vdcを分圧する抵抗R6,R7から成る回路と、当該分圧電圧が入力される抵抗R8及びコンデンサC5から成る遅延回路と、非反転入力端子に遅延回路の出力電圧が入力されるとともに、反転入力端子に基準電圧Vb’が入力されるオペアンプOP4とから構成される。オペアンプOP4の出力電圧はスイッチSWに与えられ、オペアンプOP4の出力電圧がローレベルの場合にスイッチSWを強制的にオフに切り替え、ハイレベルの場合にはスイッチSWの切替動作に関与しないようになっている。
【0037】
以下、本実施形態の動作について説明する。先ず、商用電源ACから直流電源回路1への電源供給が開始されると、直流電源回路1の出力電圧Vdcが立ち上がり始める。ここで、実施形態1では直流電源回路1の出力電圧Vdcが立ち上がり始めるとともに始動回路5を動作させていたが、本実施形態では、直流電源回路1の出力電圧Vdcが所定電圧に達して一定期間経過した時刻t3で始動回路5の動作を開始する。この時、コンデンサC5は充電されておらず、その両端間電圧が基準電圧Vb’よりも低いためにオペアンプOP4の出力電圧はローレベルとなる。このため、スイッチSWが強制的にオフに切り替えられることで動作周波数finvがf2となり、始動準備期間T1を設けずに始動期間T2から開始される。そして、時刻t4までに無電極放電灯4が点灯しなかった場合には、実施形態1と同様に保護回路9が直流電源回路1及び高周波電源回路2の動作を停止させて保護期間T3に移行する。ここで、1回目の保護期間T3が終了するまでの間にコンデンサC5が充電され、その両端間電圧が基準電圧Vb’を超えてオペアンプOP4の出力電圧がハイレベルとなるため、1回目の保護期間T3以降は、実施形態1と同様に始動準備期間T1、始動期間T2、保護期間T3が繰り返される。
【0038】
尚、商用電源ACがオフとなり一定期間が経過した場合には、コンデンサC5がダイオードD4を介して放電されるため、次回の商用電源AC投入時には再び始動準備期間T1を設けずに始動期間T2から開始される。
【0039】
上述のように、商用電源AC投入後の最初の始動準備期間T1が無いために回路を構成する部品へのストレスが小さく、1回目の保護期間T3を短縮することができるので、次回以降の始動準備期間T1、始動期間T2、保護期間T3を前倒しにすることができる。したがって、点灯までに要する時間を短縮することができる。また、停電後の再点灯時などの点灯し易い状況においては始動準備期間T1を経ずとも点灯が容易であるため、始動準備期間T1を省くことで回路を構成する部品へのストレスを低減するとともに、点灯までに要する時間を短縮することができる。更に、暗所や低温時などの点灯が困難な状況下においても、商用電源AC投入後の最初の始動準備期間T1のみを無くしているので、良好な始動性を確保することができる。尚、本実施形態では新たに回路を追加することで商用電源AC投入後の最初の始動準備期間T1を省略しているが、例えばマイコンを用いて間欠発振の保護期間T3の後のみ、他の始動期間T2の開始タイミングと区別するように構成しても構わない。
【0040】
尚、上記各実施形態は、無電極放電灯4とともに街路灯や防犯灯等の照明器具の器具本体に搭載されて用いられる。例えば、図7(a)に示すように、道路上に設けられた電柱等の支柱101に無電極放電灯4を収納した器具本体100を取り付けて成る防犯灯や、図7(b)に示すように、笠形の器具本体200、反射部を構成するプリズム201、プリズム201の基部に設けられたランプソケット部202、ランプソケット部202の下方に設けられた回路収納部203から成る防犯灯などに用いられる。
【0041】
また、図8(a)〜(c)に示すように、扁平な箱形の器具本体300と、無電極放電灯4からの光を反射する反射板301とを備えたトンネル灯に上記何れかの実施形態の無電極放電灯点灯装置Aを搭載してもよい。尚、無電極放電灯4は長寿命で且つメンテナンスの頻度が少なくて済むという利点があり、メンテナンスが面倒なトンネル灯に採用するメリットが大きい。また、トンネル灯はトンネル内の安全性を向上するために、停電後出来る限り早く復帰して再点灯することが望まれる。ここで、上記各実施形態の無電極放電灯点灯装置を採用すれば、停電後の再点灯時においても点灯までに要する時間を短縮することができるために、より信頼性の高いトンネル灯を提供することができる。
【0042】
勿論、上記各実施形態が搭載される照明器具は上記のものに限定される必要は無く、少なくとも無電極放電灯4を保持する器具本体(図示せず)と、無電極放電灯4に近接配置される誘導コイル3とを備えた照明器具であればよい。また、上記各実施形態は始動準備期間T1における回路を構成する部品へのストレスを低減できるものであるから、例えばセンサに人が接近すると点灯し、離れると消灯することで省エネを図る照明システム等、電源のオン/オフの頻度が高い照明装置に対しても好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る無電極放電灯点灯装置の実施形態1を示す回路図である。
【図2】同上の高周波電圧の周波数特性を示す動作特性図である。
【図3】同上の動作を示すタイムチャートである。
【図4】本発明に係る無電極放電灯点灯装置の実施形態2を示す回路図である。
【図5】同上の動作を示すタイムチャートである。
【図6】本発明の無電極放電灯点灯装置に関連する部位の説明図で、(a)は無電極放電灯の断面図で、(b)はカプラの斜視図である。
【図7】本発明の無電極放電灯点灯装置を用いる照明器具を示す図で、(a)は防犯灯の側面図で、(b)は(a)とは異なる防犯灯の一部破断した正面図である。
【図8】同上のトンネル灯を示す図で、(a)は正面図で、(b)は側面図で、(c)は(b)とは異なる方向から見た側面図である。
【図9】従来の無電極放電灯点灯装置の動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1 直流電源回路
2 高周波電源回路
20 駆動回路
21 共振回路
3 誘導コイル
4 無電極放電灯
5 始動回路
9 保護回路
AC 商用電源(交流電源)
Q2,Q3 スイッチング素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換して出力する直流電源回路と、高周波でスイッチングされる1乃至複数のスイッチング素子並びに共振回路を具備し直流電源回路の出力電圧を高周波電圧に変換して無電極放電灯に近接配置された誘導コイルに供給する高周波電源回路と、スイッチング素子をスイッチングさせる駆動信号を出力する駆動回路と、駆動回路を制御して駆動信号の周波数を変化させることにより誘導コイルへの印加電圧を漸増させ、無電極放電灯が始動せず且つ高周波電界放電を発生させる大きさの高周波電圧を誘導コイルに印加する始動準備期間、及び無電極放電灯が始動可能で且つ高周波電磁界放電を発生させる大きさの高周波電圧を誘導コイルに印加する始動期間を経て無電極放電灯を始動させる始動回路と、高周波電源回路から誘導コイルへの電力供給の異常を検出すると直流電源回路及び高周波電源回路の動作を停止させる保護期間に移行させ、少なくとも始動準備期間、始動期間、保護期間を順番に繰り返させる保護回路とを備え、始動回路は、交流電源投入後の最初の始動準備期間が最初の始動準備期間を除いた他の始動準備期間よりも短くなるように駆動回路を制御することを特徴とする無電極放電灯点灯装置。
【請求項2】
少なくとも無電極放電灯を保持する器具本体と、無電極放電灯に近接配置される誘導コイルと、誘導コイルに高周波電力を供給する請求項1記載の無電極放電灯点灯装置とを備えたことを特徴とする照明器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−73646(P2010−73646A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242922(P2008−242922)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】