説明

焼結助剤を添加した金属酸化物粒子等の高周波電磁波照射による還元・相互融着方法及びそれを用いた各種電子部品と金属酸化物粒子等の焼成用材料

【課題】高周波電磁波を吸収する電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した酸化物粒子を用いた直接回路描画法において、耐熱性の低い基板材料上においても低抵抗の実装部品を短時間に作成することが可能な新しい技術手法及びこの方法を用いて製造した製品、さらにこれに用いる金属酸化物粒子を還元および相互融着するための粒子焼成用材料を提供する。
【解決手段】高周波電磁波を吸収する電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した金属酸化物粒子を、各種基板上に表面塗布又は回路パターンニングを行った後に、不活性雰囲気中で高周波電磁波照射を行うことで、上記金属酸化物粒子を選択的に加熱還元・相互融着する方法と、この方法を用いて形成した導電材、導電路、導電路と導電路の接続部、多層配線基板、バンプ、パッド、ビア、立体配線、熱伝導路、アンテナ、電磁シールド材、その他の電子実装部品及び触媒電極等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント配線基板や基板等の電子実装部品製造における、導電部品(導電路、バンプ等)立体金属配線パターン、アンテナパターン、熱伝導路及び触媒電極及びその形成方法、及び前記製品を製造する時に用いる金属酸化物粒子還元・相互融着するための金属酸化物粒子の焼成用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
金属(金属酸化物)微細粒子の製造技術、独立分散技術、さらには、超微量インクジェット、精密スクリーン印刷、ナノプリンティング、ナノインプリンティングによる微細配線パターニング技術の近年の著しい発展に伴い、それら技術を応用した直接回路描画法が次世代の電子実装部品形成技術として大いに注目されている。
【0003】
この直接回路描画法は、それまでリゾグラフィーやエッチングといった複雑な工程を経て製造されていた電子実装部品を、金属(金属酸化物)粒子の直接描画→焼成→相互融着→導電化によって製造するという手法であり、その詳細については非特許文献1第71頁に記載されている。この手法の確立により、導電回路パターン、バンプ、パッド、ビア、アンテナパターンやその他の電子実装部品を、安価かつ簡便に製造することが可能となると期待される。さらに、電子実装部品の熱伝導路としての利用も検討されている。
【0004】
この直接回路描画法の重要な工程の一つに、金属(金属酸化物)粒子をパターニングした回路基板を熱処理し、金属粒子を相互融着(金属酸化物粒子を還元後に相互融着)させ、それら粒子によって構成された回路パターンを導電化する工程がある。
【0005】
これまでに提案されている直接回路描画法においては、この粒子を相互融着させる熱処理工程に、熱風やスチームもしくは電熱線を用いた抵抗加熱炉によって、金属(金属酸化物)粒子によって構成された回路パターン部分と下地基板部分の実装部品全体を、150℃から210℃で加熱処理することが特許文献1に、また同じく実装部品全体を150℃で加熱処理することが特許文献2に記載されている。
【0006】
しかしながら、この従来提案されていた熱処理方法では、粒子によって構成された回路パターンと共に下地基板部分も同等に等しく加熱されるため、使用可能な下地基板がこの熱処理時の保持温度よりも耐熱温度の高い材料に限定されるという問題があった。特に次世代の超高速電子デバイスにおいて不可欠な低抵抗の電子実装部品を作成する場合、この熱処理条件を高温・長時間に設定する必要があり、その意味で使用可能な基板材料は大きく限定されるものであった。
さらに、この従来提案されていた熱処理方法では、加熱に少なくとも数十分の時間を要し、生産性も低いことなどが特許文献1の実施例に記載されている。
【0007】
また特に酸化物粒子の還元・相互融着方法に関しては、特許文献4に還元性気体中でプラズマ照射する方法等が記載されているが、この場合には、高価なプラズマ発生装置が必要であり、また基板上に塗布した酸化物粒子に対して使用した場合には、そのプラズマによって基板材料が劣化する恐れがあることが分かっている。
【0008】
また同じく酸化物粒子の還元・相互融着方法としては、特許文献3の技術背景に水素化ホウ素誘導体等の還元剤を酸化銅に添加し熱処理する方法が紹介されているが、この方法で良好な導電性を示す焼結体を構成するためには、400℃以上の高温加熱が必要であることが言及されている。
【0009】
さらに特許文献4には、酸化クロム含有酸化物の還元方法等が記載され、酸化クロムにカーボンを添加しマイクロ波照射することで1400℃以上の高温に加熱し、酸化クロムを還元する方法が記載されている。
【0010】
【非特許文献1】Nikkei Electronics、Vol.67、No824(2002)、p67−78
【特許文献1】特開2002−2999833号公報
【特許文献2】特開2004−39956号公報
【特許文献3】特開2004−119686号公報
【特許文献4】特開2001−348631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属粒子又は両者の混合物を含む粒子を用いた直接回路描画法においては、使用可能な下地基板が耐熱温度の高い材料に限定されるとともに、基板の加熱処理に時間がかかり生産性が低いという問題があった。本発明は上記に鑑みてなされたものであり、ガラスエポキシ等の耐熱温度の低い基板上においても、基板を溶融することなくパターンニングされた前記粒子や前記粒子の混合物を還元焼成し、導電性の配線パターンもしくは低抵抗の実装部品を形成することが可能な新しい技術手法を提供するものである。さらに、前記粒子や前記粒子の混合物の還元焼成温度をより低温化する技術をも提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、金属酸化物粒子と表面酸化金属粒子の少なくとも一方と電磁波吸収性の優れた焼結助剤の混合物を、基板上に塗布もしくは表面パターンニングした後、不活性雰囲気にて高周波電磁波を照射することでこれら粒子を選択的に加熱還元することを特徴とする、金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属粒子もしくは前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物の還元焼成方法である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属粒子又は両者の混合物を含む粒子の選択的な還元焼成方法を利用することを特徴とした、金属配線パターンの形成方法である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属粒子又は両者の混合物を含む粒子に照射する高周波電磁波の周波数が1MHz<f<300GHzであることを特徴とする、請求項1から請求項2のいずれかに記載の還元焼成方法及び金属配線パターンの形成方法である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属粒子又は両者の混合物を含む粒子に照射する高周波電磁波の周波数が10GHz<f<300GHzであることを特徴とする、請求項1から請求項2のいずれかに記載の還元焼成方法及び金属配線パターンの形成方法である。
【0016】
請求項5に記載の発明は、金属酸化物粒子が酸化銅、酸化銀粒子、酸化ニッケルであることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の還元焼成方法及び金属配線パターンの形成方法である。
【0017】
請求項6に記載の発明は、表面酸化金属粒子が、銅、銀、ニッケルであることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の還元焼成方法及び金属配線パターンの形成方法である。
【0018】
請求項7に記載の発明は、金属酸化物粒子もしくは表面に酸化物被覆を形成した金属粒子又は両者の混合物を含む粒子の平均粒径が1nm〜100nmのナノ粒子であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の還元焼成方法及び金属配線パターンの形成方法である。
【0019】
請求項8に記載の発明は、電磁波吸収性の優れた焼結助剤の高周波電磁波吸収性が基板の高周波電磁波吸収性よりも高いことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の還元焼成方法および金属配線パターンの形成方法である。
【0020】
請求項9に記載の発明は、電磁波吸収性の優れた焼結助剤の第1群の材料が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンフラーレン、VGCF(気相成長カーボンファイバー)等のカーボン材料を含む酸化物の還元剤として機能する材料であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の還元焼成方法および金属パターンの形成方法である。
【0021】
請求項10に記載の発明は、電磁波吸収性の優れた焼結助剤の第2群の材料が、Cr、TiO、CuO、NiO、Co、MnO、α―Fe、V等の遷移金属酸化物、ITO(インジウム-スズ酸化物)を始めとするn型半導性を示すSnO、In、GeO、ZnO、MgO、SiO等の典型金属酸化物であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の還元焼成方法および金属配線パターンの形成方法である。
【0022】
請求項11に記載の発明は、基板が酸化物、ガラス、セラミックス、金属、半導体、プラスチックのいずれかからなることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の還元焼成方法及び金属配線パターンの形成方法である。
【0023】
請求項12に記載の発明は、請求項1から請求項11のいずれかに記載の方法によって各種基板上に作成されたことを特徴とする金属配線パターンである。
【0024】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の金属配線パターンを利用し形成した導電路、導電路と導電路を接続する接続部および導電路を形成した基板を多数積層した多層配線基板及び立体配線である。
【0025】
請求項14に記載の発明は、請求項12に記載の金属配線パターンを利用し形成したバンプ、パッド、ビアである。
【0026】
請求項15に記載の発明は、請求項12に記載の金属配線パターンを利用し形成した熱伝導路である。
【0027】
請求項16に記載の発明は、請求項12に記載の金属配線パターンを利用し形成したアンテナである。
【0028】
請求項17に記載の発明は、請求項12に記載の金属配線パターンを利用し形成した電磁シールド材である。
【0029】
請求項18に記載の発明は、請求項12に記載の金属配線パターンと、基板の両者を含む電子実装部品である。
【0030】
請求項19に記載の発明は、請求項12に記載の金属配線パターンを利用し形成した触媒電極である。
【0031】
請求項20に記載の発明は、スズ、鉛、ビスマス、亜鉛等の低融点金属、もしくはこれら金属からなる合金を主成分とするハンダ材料をはんだ接合部に使用した請求項12に記載の金属配線パターンである。
【0032】
請求項21に記載の発明は、基板が酸化物、ガラス、セラミックス、金属、半導体、プラスチックのいずれかからなる請求項12から請求項20のいずれかに記載の金属配線パターン、導電路、導電路と導電路を結ぶ接続部、多層配線基板、アンテナ、熱伝導路、電磁シールド材、バンプ、パッド、ビア、電子実装部品、触媒電極、ハンダ接合部である。
【0033】
請求項22に記載の発明は、焼結助剤として請求項9に記載のカーボン材料を用いた高周波電磁波照射による還元焼成方法で、その加熱温度の下限値が抵抗炉を用いた還元焼成方法における加熱温度の下限値より低温であることを特徴とする、高周波電磁波照射による金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属粒子の還元焼成方法である。
【0034】
請求項23に記載の発明は、焼結助剤として請求項9に記載のカーボン材料を用いた高周波電磁波照射による酸化銅粒子もしくは表面酸化銅粒子の還元焼成方法で、酸化銅粒子もしくは表面酸化銅粒子の加熱温度の下限値が300℃であることを特徴とする還元焼成方法である。
【0035】
請求項24に記載の発明は、焼結助剤として請求項9に記載のカーボン材料を用いた高周波電磁波照射による酸化銀粒子もしくは表面酸化銀粒子の還元焼成方法で、酸化銀粒子もしくは表面酸化銀粒子の加熱温度の下限値が180℃であることを特徴とする還元焼成方法である。
【0036】
請求項25に記載の発明は、焼結助剤として請求項9に記載のカーボン材料を混合した酸化銅粒子、表面酸化銅粒子、酸化銀粒子もしくは表面酸化銀粒子を、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ガラスエポキシ、ポリフッ化エチレン、ガラスエポキシなどを主成分とするプラスチック基板上で還元焼成することを特徴とする請求項23又は請求項24に記載の還元焼成方法である。
【0037】
請求項26に記載の発明は、電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した金属酸化物粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した表面酸化金属粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物を含む加熱還元焼成用材料である。
【0038】
請求項27に記載の発明は、請求項26に記載の加熱還元焼成用材料に、さらに有機系分散媒及び/又は有機系バインダーとして機能する樹脂成分、もしくは必要に応じて有機溶媒を加えたことを特徴とする加熱還元焼成用材料である。
【0039】
請求項28に記載の発明は、請求項26から請求項27のいずれかに記載の加熱還元焼成用材料において、金属酸化物粒子、表面酸化金属粒子、もしくは前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物が、銀酸化物、金酸化物、銅酸化物、表面酸化銀、表面酸化金、表面酸化銅、もしくはこれらの混合物のいずれかであることを特徴とする加熱還元焼成用材料である。
【0040】
請求項29に記載の発明は、請求項26から請求項28のいずれかに記載の金属酸化物粒子、表面酸化金属粒子、もしくは前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物が、粒径1nm以上、100nm以下のナノ粒子であることを特徴とする加熱還元焼成用材料である。
【0041】
請求項30に記載の発明は、請求項26から請求項29のいずれかに記載の加熱還元焼成用材料において、電磁波吸収性の優れた焼結助剤がカーボンブラック、カーボーンチューブ、カーボンフラーレン、VGCF(気相成長カーボンファイバー)を始めとするカーボン材料、又はCr、TiO、CuO、NiO、Co、MnO、α―Fe、V等の遷移金属酸化物、ITO(インジウム-スズ酸化物)を始めとするn型半導性を示すSnO、In、GeO、ZnO、MgO、SiO等の典型金属酸化物であることを特徴とする加熱還元焼成用材料である。
【0042】
請求項31に記載の発明は、請求項26から請求項30のいずれかに記載の加熱還元焼成用材料において、有機系分散媒が金属酸化物の金属成分と配位可能なアミン、アルコール、チオール等の少なくとも1種を含み、さらに有機バインダー樹脂がブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂から選ばれた少なくとも1種以上を含むことを特徴とする加熱還元焼成用材料である。
【発明の効果】
【0043】
本発明の方法を用いて、電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した金属酸化物粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した表面酸化金属粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物を含む粒子を、基板上に表面塗布又はパターニング後所定の周波数の高周波電磁波を照射して選択加熱することにより、還元・相互融着させて、複雑な電子実装部品を形成することができる。またこの方法を用いることにより、各種基板上に導電路、導電路と導電路の接続部、導電路を形成した基板を多数積層した配線基板、バンプ、パッド、ビア、熱伝導路、アンテナ、電磁シールド材やその他の電子実装部品、触媒電極等を形成した電子基板やアンテナを形成した電子筐体等を形成することができる。このとき、電子部品形成部を選択的に加熱することから、電子部品実装基板には耐熱性を有する基板のみでなく、耐熱性の低い樹脂基板等を用いることが可能となる。尚、本発明における基板とは、必ずしも平板上のもののみではなく、その形状が段差を有するものや曲面を有するものを含むものとすることから、電子筐体なども基板に含むものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に本発明の高周波電磁波照射を利用した、電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した金属酸化物粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した表面酸化金属粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物を含む粒子の還元・相互融着方法の詳細について説明する。
【0045】
導電路もしくはバンプ等の実装部品を構成する粒子材料として、電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した金属酸化物粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した表面酸化金属粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物を含む粒子を各種基板上に表面塗布もしくは表面パターニングする。基板上の表面塗布又はパターンニング法としては、インクジェット法、ナノプリンティング法、ナノインプリンティング法等の各種回路パターニング方法がある。
ここで、導電路とは、そこに電流が流れるもの、電磁誘導により電流が誘起されるもの等も含むものとし、電磁誘導により電流が誘起されるものとしては電磁シールド用の回路、アンテナなどがある。導電路には、閉回路も開回路も含み、さらに回路の形状やパターニングによる制約を受けないものとする。本願における回路も同様の意味で使用しているので、必ずしも閉回路に限らない。パターニングした回路を電気導電路に限らず、熱伝導路として用いることも可能である。さらには、触媒電極として使用することも可能である。
【0046】
基板上に表面塗布もしくは表面パターニングを行う電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した金属酸化物粒子、もしくは同じく電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した表面酸化金属粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物を含む粒子は、少なくとも基板よりも高周波電磁波吸収性の優れたものを選択する。ただし、金属酸化物粒子自体もしくは表面酸化金属粒子自体の高周波電磁波吸収性が基板の高周波電磁波吸収性よりも低い場合でも、電磁波吸収性の優れた焼結助剤の混合により高周波電磁波吸収性が基板の高周波電磁波吸収性よりも高くなれば、そのような混合物も使用することができる。
【0047】
また、電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した金属酸化物粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した表面酸化金属粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物を含む粒子をペースト状にして塗布する時には、目的とする電子部品や導電路の形成部に応じて、ペーストの組成を選択できる。ペーストには、少なくとも電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した金属酸化物粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した表面酸化金属粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物を含む粒子が含まれることを必須要件とするが、この他に導電性樹脂又は有機溶媒、導電性樹脂及び有機溶媒などを必要に応じて混合してもよい。混合する目的は、上記粒子の分散状態の改善や基板との密着性の改善などのためである。
【0048】
高周波電磁波を吸収する金属酸化物粒子としては、金属−酸素結合を持つ無機及び有機金属化合物ならばいずれの化合物でも用いることができる。ただし、導電性の高い金属配線パターンを形成するためには、酸化銀、酸化銅などの高導電性金属の酸化物を用いることが望ましく、また、触媒活性の高い金属配線パターンを形成するためには、酸化ニッケルなどの触媒活性の高い金属の酸化物を用いることが望ましい。
【0049】
また、金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属もしくは両者の混合物に混合する、電磁波吸収性の優れた焼結助剤としては、高周波電磁波吸収性を高めると同時に、酸化物の還元剤として、作用する第1群の材料として、カーボンブラック、カーボーンチューブ、カーボンフラーレン、VGCF(気相成長カーボンファイバー)等のカーボン材料等があり、酸化物の還元剤としては作用しないが高周波電磁波吸収性を高める第2群の材料として、Cr、TiO、CuO、NiO、Co、MnO、α―Fe、V等の遷移金属酸化物、n型半導性を示すSnO、In、GeO、ZnO、MgO、SiO等の典型金属酸化物、ITO(インジウム-スズ酸化物)などがある。
【0050】
これらの焼結助剤のなかで、高周波電磁波吸収性を高めると同時に酸化物の還元剤として作用する第1群の材料であるカーボンブラック、カーボーンチューブ、カーボンフラーレン、VGCF(気相成長カーボンファイバー)等のカーボン材料は、電磁波吸収剤としてのみならず、酸化物の還元剤としての機能を有することから、上記金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属もしくは両者の混合物の加熱還元反応を促進する焼結助剤として特に望ましい。
【0051】
また同じく焼結助剤として挙げられる第2群の材料であるCr、TiO、CuO、NiO、Co、MnO、α―Fe、V等の遷移金属酸化物、n型半導性を示すSnO、In、GeO、ZnO、MgO、SiO等の典型金属酸化物、ITO(インジウム-スズ酸化物)などの物質は、酸化物の還元剤としては機能しないが、電磁波の吸収剤として機能し金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属もしくは両者の混合物の選択的な加熱を大いに促進することから、焼結助剤としてこれらの材料も有効である。
【0052】
次に、上記方法により、電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した金属酸化物粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した表面酸化金属粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物を含む粒子を、塗布もしくは回路パターニングした実装基板に対し、不活性雰囲気中で高周波電磁波の照射を行うことで、電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した金属酸化物粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した表面酸化金属粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物を含む粒子を選択的に加熱し、これら金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属粒子を還元・相互融着させる。これにより各種基板上に導電性部品を形成する。
【0053】
上記方法により形成された導電性部品は、完全に還元された金属粒子のみからなる焼成体によって構成されている場合もあれば、未還元の酸化物成分もしくは未反応の焼結助剤を少量含有している場合もある。この差異は、金属酸化物もしくは表面酸化金属酸化物の還元反応の進行度合い、酸化物の還元剤として機能する焼結助剤との化学当量バランス等によって生じるものである。しかしながら、これら未還元の酸化物成分もしくは未反応の焼結助剤が少量残留した場合でも、全体に占める導電性の金属粒子の割合が、3次元パーコレーション閾値である20%を上回っていれば、焼成体全体として導電性を示し、導電性部品として使用することが可能であると考えられる。
【0054】
本発明の最も特記すべき特徴は次の二つである。一つは、金属酸化物微細粒子を用いた直接回路描画法において、その熱処理(還元・相互融着)工程に、抵抗炉ではなく、高周波電磁波照射装置を用いた点であり、もう一つは、それに使用する粒子として、電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した金属酸化物粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した表面酸化金属粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物を含む粒子を用いた点である。
【0055】
高周波電磁波照射による物質加熱は、高周波電磁波の物質内部での誘電現象に起因する。すなわち、誘電損失の大きい(高周波電磁波吸収性の優れた)材料に照射された高周波電磁波は、材料を構成する分子を回転・衝突・振動・摩擦させ、エネルギーを失いながら物質内部を伝搬する。この時生じた分子の運動により材料が加熱される。ここで、電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した金属酸化物粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した表面酸化金属粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物を含む粒子は、加熱により熱分解もしくは共存する還元剤によって還元されて非酸化状態の金属粒子が表出し、その後それら非酸化状態の金属粒子が相互融着する。
【0056】
従来提案されていた熱風やスチームもしくは電熱線を用いた抵抗炉による熱処理とこの高周波電磁波加熱との最も大きな相違点は、前者では外部から熱伝導によって材料によらず均一に熱が伝えられるのに対し、後者では、目的とする物質が直接かつ選択的に加熱されるということである。
【0057】
ここで高周波電磁波による加熱特性の物質による相違について説明する。高周波電磁波が誘電性物質の中で単位面積あたり熱となって消費されるエネルギー(P)は次式で表される。
【0058】
【数1】

(f: 照射電磁波の周波数 [Hz]、E: 照射電磁波の電界強さ [V/cm]、εr:物質の誘電率、tanδ:物質の誘電損失角)。
【0059】
従って、高周波電磁波による物質の加熱され易さは、それぞれ物質固有の誘電率と誘電損失角の積(誘電損失係数)によって決まる。つまり、誘電損失係数が高い物質では、高周波電磁波によって物質が高効率に加熱されるのに対し、誘電損失係数が低い物質では、ほとんど加熱されない。この誘電損失係数の値は、温度、周波数によって変化するが、一般に誘電損失係数の高い材料としては、水、エチレングリコール、カーボン、遷移金属酸化物、n型半導性を示す典型金属酸化物などが知られ、また誘電損失係数の低い材料としては、石英ガラス、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフッ化エチレンなどが知られている。酸化物の還元剤として機能する材料としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンフラーレンを始めとするカーボン材料などが用いられるが、これらカーボン材料は、一般に誘電損失係数も高く、混合物粒子の選択加熱性を高めるという観点からも適当であると言える。
【0060】
本発明では、使用する粒子材料として、金属酸化物もしくは表面が酸化された金属酸化物もしくは前記両者の混合物と、誘電損失係数の高いカーボンや遷移金属酸化物などの焼結助剤との混合物を用いることで粒子材料全体としての誘電損失係数を高め、さらに下地基板として誘電損失係数の低いポリイミドなどの材料を選択することで、粒子材料に対する選択的加熱を実現している。
【0061】
次に、本発明に使用する高周波電磁波の周波数fの影響について説明する。本発明で使用する高周波電磁波としては、周波数が1MHz≦f≦300GHzの範囲の高周波電磁波を用いる。これは電磁波照射により物質内部に誘電損失現象が顕著に生じると考えられる範囲である。適用周波数を1MHz≦f≦300GHzとするのは、周波数1MHz以下では、誘電損失効果自体がほとんど生じないからであり、また周波数300GHz以上では、照射された電磁波は極表面で減衰し、物質内部まで侵入しないためである。なお、この周波数範囲の高周波電磁波の中で、周波数範囲が10GHz≦f≦300GHzの範囲のものは、電界の均一性が得られ易く、電場不均一により発生する放電現象が起こりにくいという観点から、使用する電磁波としてより適していると考えられる。
【0062】
さらに式(1)より、高周波電磁波が誘電性物質の中で単位面積あたり熱となって消費されるエネルギー(P)は、照射する周波数(f)に比例することが分かる。その意味からは、周波数が高いほど、物質表面の急速加熱には適していると言える。しかしながら、その一方で、高周波電磁波は物質内部では減衰する。入射電磁波が物質内で半減する深さ(D)は次式で表される。
【0063】
【数2】

【0064】
この式から、照射電磁波の周波数が高くなるにつれて、物質内部への高周波電磁波の減衰距離は短くなることが分かる。従って、本発明では、作成する実装部品のサイズ(厚み)に応じて、照射する電磁波の周波数を調整すればよい。
【0065】
次に、本発明に用いる粒子材料について説明する。本発明に使用する粒子の必要要件は、高周波電磁波吸収特性があり、且つ加熱分解もしくは還元剤との共存下での加熱還元性を持つことであり、その要件を満たすものであれば、粒子の種類を問わない。具体的には、酸化銀、酸化銅、酸化ニッケル等を用いることができる。
【0066】
ここで、熱分解特性を有する粒子のサイズに関しては特に制限は設けない。本発明の目的とする電子実装部品の作成、特に次世代高密度電子デバイスに対応した微細実装部品の作成という観点からは、粒子径が大きいと粒子充点率が低下し、その結果抵抗率が増加する。さらに、粒子の界面エネルギー、粒径減少による融点の低下、さらには高周波電磁波の浸透深さを考慮すると、粒子サイズはより小さい方が好ましく、例えば、平均粒径1nm〜100nmが好ましいと考えられる。
【0067】
次に、本発明において高周波電磁波の照射を行う場合の雰囲気について説明する。本発明において高周波電磁波照射は不活性雰囲気で行うが、その理由は、一度加熱還元され導電性の金属となった粒子が、再び酸化されることを防止するためである。具体的な不活性雰囲気の例としては、減圧大気中、真空中、希ガス(窒素、アルゴン等)中などが挙げられる。
【実施例1】
【0068】
以下に本発明の実施例について説明する。各種基板上に塗布した電磁波吸収性の優れた焼結助剤を添加した金属酸化物粒子の選択加熱性について以下の実験により確認した。まず加熱分解もしくは還元剤との共存下での加熱還元性を示す物質の一例として酸化銅ナノ粒子(CuO、平均粒径50nm、福田金属箔工業株式会社製)を選択し、それに酸化物の還元剤として機能する焼結助剤である気相成長カーボンファイバー(VGCF)を混合したものを準備した。ただし、酸化銅ナノ粒子と気相成長カーボンファイバーの混合割合は、次の還元反応、

2CuO + C → 2Cu + CO

が過不足なく進行するよう、モル比でCuO:VGCF = 2:1とした。次にこの混合物を石英基板、ポリイミド、ガラスエポキシの各基板上に部分的に塗布した(図1参照)。なお塗布部分の膜厚は約50μmであった。
【0069】
次に、このVGCF混合CuOナノ粒子を部分的に塗布した各種基板に対し、図2に示す低周波電磁波照射装置により、出力500W、周波数(f)=1kHzの低周波電磁波の照射を行った。またこれとは別に、同じくVGCF混合CuOナノ粒子を部分的に塗布した各種基板に対し、図3に示す高周波電磁波照射装置により、出力500W、周波数(f)=28GHzの高周波電磁波の照射も行った。なおこれら電磁波照射実験はすべて不活性アルゴン雰囲気中で行った。それぞれの電磁波照射において、VGCF混合CuOナノ粒子を塗布した部分と塗布していない基板部分の温度変化を、熱電対を用いて測定した結果を、低周波(f = 1kHz)照射について表1に、高周波(f = 28G Hz)照射について表2に示す。但し、ここでVGCF混合CuOナノ粒子を塗布した部分の温度変化は、特に石英基板上に塗布したものに関する測定結果であるが、この塗布部分の温度変化は基板の種類にほとんど影響されなかった。
【0070】
【表1】

【0071】
先ず、表1から、周波数(f)=1kHzの電磁波を照射した場合、120sec照射後においても、VGCF混合CuOナノ粒子塗布部分の温度上昇は2℃以下であり、この周波数の電磁波照射においてVGCF混合CuOナノ粒子がほとんど加熱されないことが確認された。この結果は、低周波の電磁波照射は、本発明の目的とする金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属粒子もしくは両者の化合物の選択加熱および還元相互融着には不適であることを示唆するものである。
【0072】
【表2】

【0073】
一方で、表2より、周波数(f)=28GHzの高周波電磁波を照射した場合、VGCF混合CuOナノ粒子塗布部分の顕著な温度上昇が確認された。一方で、この混合ナノ粒子の塗布を行っていない基板部分では、基板の種類によらずその温度上昇はわずかであった。この結果は、VGCF混合CuOナノ粒子の顕著な選択的加熱性を示唆するものである。
【0074】
このように、この塗布もしくは表面パターニングする粒子として、VGCF混合CuOナノ粒子をはじめとする、電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した金属酸化物粒子を用い、さらに基板材料として石英基板、ポリイミド、ガラスエポキシをはじめとする電磁波吸収性の低い基板を用いることにより、粒子塗布部分のみを選択的に加熱できることを確認した。
【実施例2】
【0075】
高周波電磁波の照射による金属酸化物粒子(Cu0)の還元・焼成に関する、焼結助剤混合の効果について調べることを目的に、焼結助剤としてVGCFを混合した酸化銅ナノ粒子(モル混合比、CuO:VGCF=2:1)と、焼結助剤を混合していない酸化銅ナノ粒子のそれぞれに対する高周波電磁波照射時の還元・焼成効果の比較実験を次のように行った。
【0076】
まず、VGCFを混合した酸化銅ナノ粒子と、VGCFを未混合の酸化銅ナノ粒子を、それぞれ石英基板上に塗布した後に、周波数(f)=28GHzの高周波電磁波を照射した。この時、高周波電磁波の出力値は、50℃/minで300℃まで昇温して、その後300℃で5分間保持するようにPID制御により調節した。また高周波電磁波の照射は不活性アルゴン雰囲気中で行い、照射終了後、サンプルの温度が室温まで冷却した後、大気中に取り出した。最後に、取り出したサンプルの粒子塗布部分について、粉末X線回折装置(XRD、株式会社リガク製)を用いてその結晶構造を同定した。その同定結果を表3に示す。
【0077】
【表3】

【0078】
この同定結果から、焼結助剤としてVGCFを混合した酸化銅ナノ粒子は、高周波電磁波照射後、完全にCuに還元されているのに対し、焼結助剤を混合していない酸化銅粒子は、高周波電磁波照射後もCuOのままであることが分かった。以上から、本発明において、金属酸化物粒子、もしくは表面酸化金属粒子、もしくは前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物を含む粒子を、高周波電磁波照射により各種基板上で選択的に加熱還元する場合には、VGCFをはじめとする各種焼結助剤を前記粒子に混合することが重要な要件であることが確認された。
【0079】
ただし、前記照射実験後サンプルの粒子塗布部分の構成元素について、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX、株式会社島津製作所製)を用いて調べたところ、焼結助剤としてVGCFを添加したサンプルについては、Cu以外に微量のカーボンが検出された。この結果は、高周波電磁波照射後も未反応のVGCFがサンプル中に少量残存していることを示唆するものである。
【実施例3】
【0080】
次に、焼結助剤を添加した金属酸化物粒子の還元・焼成効果に関して、熱処理方法の影響を調べることを目的に、高周波電磁波照射と抵抗炉加熱のそれぞれについて、酸化銅ナノ粒子(CuO)に対する熱処理温度と還元・焼成効果の関係について調べた。
【0081】
ただし抵抗炉加熱については、焼結助剤としてVGCFを混合したサンプルと焼結助剤未混合のサンプルを準備し、それぞれ熱処理実験を行った。ここで、高周波電磁波の照射は、上記実験と同様、設定熱処理温度まで50℃/minで昇温し、その設定温度で5分間保持するように、PID制御で出力を調整した。また抵抗炉加熱の熱処理条件は、昇温速度:50℃/min、設定温度保持時間:60minとした。上記熱処理はすべて不活性アルゴン雰囲気中で行い、熱処理終了後、サンプルの温度が室温まで冷却した後、大気中に取り出した。最後に、取り出したサンプルの粒子塗布部分について、粉末X線回折装置(XRD、株式会社リガク製)を用いてその結晶構造を同定した。この結晶構造の同定結果を表4に示す。
【0082】
【表4】

【0083】
表4より、抵抗炉加熱では、酸化銅ナノ粒子を還元するためには、焼結助剤としてVGCFを添加した場合でも、少なくとも450℃以上の温度で熱処理しなければならないのに対し、28GHz高周波電磁波照射では、300℃の熱処理温度で還元反応が進行することが分かる。この結果から、高周波電磁波照射では、従来の抵抗加熱と比べて遙かに低温でかつ短時間に酸化銅の還元反応が進行することが確認された。さらに同様の28GHz高周波電磁波照射実験を酸化銀(AgO)ナノ粒子について行ったところ、焼結助剤としてVGCFを添加した酸化銀ナノ粒子では、180℃の熱処理温度で還元反応が進行することが分かった。
【実施例4】
【0084】
さらに、還元剤添加酸化物粒子に対する高周波電磁波照射にともなう粒子焼成効果を確認することを目的に、周波数(f)=28GHzの高周波電磁波を照射したサンプル(50℃/minで300℃まで昇温、300℃で5分間保持するように高周波電磁波出力を制御)の電気抵抗測定を行った。測定は、デジタルマルチメータ(Keithley社製、型式:DMM2000)、直流安定化電源(ケンウッド社製、形式:PAR20−4H)を用いて、直流四端子法によって行った。
【0085】
その結果、この周波数(f)=28GHzの電磁波を10min照射したサンプルに対しては、ρ=8.0μΩ・cmという高い導電性が確認された。この結果は、高周波電磁波の照射によりCuO粒子がCuへ還元し、さらにその還元されたCu粒子が相互融着して、低抵抗の銅導電膜が形成されるという事実を示唆するものである。
【0086】
なお、同様の効果は同じくポリイミド基板上にバンプ状に形成した円柱突起(円柱状、高さ約1mm、直径2mm)においても確認され、形状によらず本方法が適用出来ることが分かった。
【0087】
さらに、このCu0ナノ粒子をペースト上にしてポリイミド基板上に塗布することで形成したパッド、ビア等においても同様の効果が確認され、ペースト化した還元剤添加金属酸化物粒子においても、本方法が適用出来ることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】熱分解性物質(Cu0ナノ粒子)を部分的に塗布した基板
【図2】低周波電磁波照射装置
【図3】高周波電磁波照射装置
【符号の説明】
【0089】
1.各種基板(石英ガラス、ポリイミド、ガラスエポキシ)
2.Cu2O粒子を塗布した領域
3.電磁波照射容器
4.導線
5.加熱電極
6.ターンテーブル
7.電磁波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物粒子と表面酸化金属粒子の少なくとも一方と電磁波吸収性の優れた焼結助剤の混合物を、基板上に塗布もしくは表面パターンニングした後、不活性雰囲気にて高周波電磁波を照射することでこれら粒子を選択的に加熱還元することを特徴とする、金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属粒子もしくは前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物の還元焼成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属粒子又は両者の混合物を含む粒子の選択的な還元焼成方法を利用することを特徴とした、金属配線パターンの形成方法。
【請求項3】
金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属粒子又は両者の混合物を含む粒子に照射する高周波電磁波の周波数が1MHz<f<300GHzであることを特徴とする、請求項1から請求項2のいずれかに記載の還元焼成方法及び金属配線パターンの形成方法。
【請求項4】
金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属粒子又は両者の混合物を含む粒子に照射する高周波電磁波の周波数が10GHz<f<300GHzであることを特徴とする、請求項1から請求項2のいずれかに記載の還元焼成方法及び金属配線パターンの形成方法。
【請求項5】
金属酸化物粒子が酸化銅、酸化銀粒子、酸化ニッケルであることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の還元焼成方法及び金属配線パターンの形成方法。
【請求項6】
表面酸化金属粒子が、銅、銀、ニッケルであることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の還元焼成方法及び金属配線パターンの形成方法。
【請求項7】
金属酸化物粒子もしくは表面に酸化物被覆を形成した金属粒子又は両者の混合物を含む粒子の平均粒径が1nm〜100nmのナノ粒子であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の還元焼成方法及び金属配線パターンの形成方法。
【請求項8】
電磁波吸収性の優れた焼結助剤の高周波電磁波吸収性が基板の高周波電磁波吸収性よりも高いことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の還元焼成方法および金属配線パターンの形成方法。
【請求項9】
電磁波吸収性の優れた焼結助剤の第1群の材料が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンフラーレン、VGCF(気相成長カーボンファイバー)等のカーボン材料を含む酸化物の還元剤として機能する材料であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の還元焼成方法および金属パターンの形成方法。
【請求項10】
電磁波吸収性の優れた焼結助剤の第2群の材料が、Cr、TiO、CuO、NiO、Co、MnO、α―Fe、V等の遷移金属酸化物、ITO(インジウム-スズ酸化物)を始めとするn型半導性を示すSnO、In、GeO、ZnO、MgO、SiO等の典型金属酸化物であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の還元焼成方法および金属配線パターンの形成方法。
【請求項11】
基板が酸化物、ガラス、セラミックス、金属、半導体、プラスチックのいずれかからなることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の還元焼成方法及び金属配線パターンの形成方法。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の方法によって各種基板上に作成されたことを特徴とする金属配線パターン。
【請求項13】
請求項12に記載の金属配線パターンを利用し形成した導電路、導電路と導電路を接続する接続部および導電路を形成した基板を多数積層した多層配線基板及び立体配線。
【請求項14】
請求項12に記載の金属配線パターンを利用し形成したバンプ、パッド、ビア。
【請求項15】
請求項12に記載の金属配線パターンを利用し形成した熱伝導路。
【請求項16】
請求項12に記載の金属配線パターンを利用し形成したアンテナ。
【請求項17】
請求項12に記載の金属配線パターンを利用し形成した電磁シールド材。
【請求項18】
請求項12に記載の金属配線パターンと、基板の両者を含む電子実装部品。
【請求項19】
請求項12に記載の金属配線パターンを利用し形成した触媒電極。
【請求項20】
スズ、鉛、ビスマス、亜鉛等の低融点金属、もしくはこれら金属からなる合金を主成分とするハンダ材料をはんだ接合部に使用した請求項12に記載の金属配線パターン。
【請求項21】
基板が酸化物、ガラス、セラミックス、金属、半導体、プラスチックのいずれかからなる請求項12から請求項20のいずれかに記載の金属配線パターン、導電路、導電路と導電路を結ぶ接続部、多層配線基板、アンテナ、熱伝導路、電磁シールド材、バンプ、パッド、ビア、電子実装部品、触媒電極、ハンダ接合部。
【請求項22】
焼結助剤として請求項9に記載のカーボン材料を用いた高周波電磁波照射による還元焼成方法で、その加熱温度の下限値が抵抗炉を用いた還元焼成方法における加熱温度の下限値より低温であることを特徴とする、高周波電磁波照射による金属酸化物粒子もしくは表面酸化金属粒子の還元焼成方法。
【請求項23】
焼結助剤として請求項9に記載のカーボン材料を用いた高周波電磁波照射による酸化銅粒子もしくは表面酸化銅粒子の還元焼成方法で、酸化銅粒子もしくは表面酸化銅粒子の加熱温度の下限値が300℃であることを特徴とする還元焼成方法。
【請求項24】
焼結助剤として請求項9に記載のカーボン材料を用いた高周波電磁波照射による酸化銀粒子もしくは表面酸化銀粒子の還元焼成方法で、酸化銀粒子もしくは表面酸化銀粒子の加熱温度の下限値が180℃であることを特徴とする還元焼成方法。
【請求項25】
焼結助剤として請求項9に記載のカーボン材料を混合した酸化銅粒子、表面酸化銅粒子、酸化銀もしくは表面酸化銀粒子を、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ガラスエポキシ、ポリフッ化エチレン、ガラスエポキシなどを主成分とするプラスチック基板上で還元焼成することを特徴とする請求項23又は請求項24に記載の還元焼成方法。
【請求項26】
電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した金属酸化物粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した表面酸化金属粒子、もしくは電磁波吸収性の優れた焼結助剤を混合した前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物を含む加熱還元焼成用材料。
【請求項27】
請求項26に記載の加熱還元焼成用材料に、さらに有機系分散媒及び/又は有機系バインダーとして機能する樹脂成分、もしくは必要に応じて有機溶媒を加えたことを特徴とする加熱還元焼成用材料。
【請求項28】
請求項26から請求項27のいずれかに記載の加熱還元焼成用材料において、金属酸化物粒子、表面酸化金属粒子、もしくは前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物が、銀酸化物、金酸化物、銅酸化物、表面酸化銀、表面酸化金、表面酸化銅、もしくはこれらの混合物のいずれかであることを特徴とする加熱還元焼成用材料。
【請求項29】
請求項26から請求項28のいずれかに記載の金属酸化物粒子、表面酸化金属粒子、もしくは前記金属酸化物粒子と前記表面酸化金属粒子の混合物が、粒径1nm以上、100nm以下のナノ粒子であることを特徴とする加熱還元焼成用材料。
【請求項30】
請求項26から請求項29のいずれかに記載の加熱還元焼成用材料において、電磁波吸収性の優れた焼結助剤がカーボンブラック、カーボーンチューブ、カーボンフラーレン、VGCF(気相成長カーボンファイバー)を始めとするカーボン材料、又はCr、TiO、CuO、NiO、Co、MnO、α―Fe、V等の遷移金属酸化物、ITO(インジウム-スズ酸化物)を始めとするn型半導性を示すSnO、In、GeO、ZnO、MgO、SiO等の典型金属酸化物であることを特徴とする加熱還元焼成用材料。
【請求項31】
請求項26から請求項30のいずれかに記載の加熱還元焼成用材料において、有機系分散媒が金属酸化物の金属成分と配位可能なアミン、アルコール、チオール等の少なくとも1種を含み、さらに有機バインダー樹脂がブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂から選ばれた少なくとも1種以上を含むことを特徴とする加熱還元焼成用材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−269119(P2006−269119A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82082(P2005−82082)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】