説明

焼結結合した多孔質金属被覆

基体上にナノサイズの気孔の多孔質被覆を形成する方法は、(a)キャリヤー流体中の焼結可能粒子の懸濁物(10)を形成する工程;(b)前記懸濁物を前記キャリヤー流体を撹拌(12)することにより維持する工程;(c)前記懸濁物の第一被覆を前記基体に適用する工程(16);及び(d)前記焼結可能粒子を前記基体に焼結する工程(36);を含む。このナノポーラス被覆の薄層をマイクロポアーを有する基体上に堆積(16)する。基体は強度及び構造的支持を与えるのに対し、ナノ粉末層の性質は装置の流れ及び濾過状態を制御する。この複合体は工業的処理で取扱い及び使用するのに充分な強度を有する。ナノ粉末層は薄いので、その層を通る圧力低下は、一層厚い慣用的ナノ粉末構造体より実質的に小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、基体上に多孔質金属被覆を形成する方法に関する。特に、ナノサイズ(nanosize)粒子をキャリヤー流体に入れた懸濁物を基体上に堆積し、加熱してキャリヤー流体を蒸発させながら粒子を基体に焼結する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
濾過及びガス又は液体流動制御を含めた多孔質開口細胞状構造体を必要とする数多くの用途が存在する。これらの構造体は、金属又はセラミック粒子を成形して圧粉体を形成し、次に焼結して凝集多孔質構造体を形成することにより形成されるのが典型的である。粒径、成形力、及び焼結温度は、全て気孔孔径及び構造体強度に影響を与える。気孔孔径がマイクロサイズ(microsize)〔1μ(μm)以上の平均直径を有する〕のように比較的大きい場合、気孔孔径に対する構造体の厚さは、工業的用途で取扱われ、用いられるのに充分な強度のために適度なものである。気孔孔径がナノサイズ(nanosize)〔1μmより小さい平均直径を有する〕のように比較的小さい場合、構造体の厚さは、工業的用途で取扱われ、用いられるのに充分な強度のためには気孔孔径より遥かに大きい。その結果、構造体は長い長さの小さい直径の気孔をガス又は液体を通過させるのに大きな抵抗を有し、そのフィルターを通る大きな圧力低下が存在する。この用途については、直径を、粒子の中心通り、粒子の一方の側から他方の側へ通る最大の軸に沿って、測定しなければならないことに注意されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
多くの特許に、基体上に多孔質被覆を堆積させるための方法が記載されている。
【特許文献1】米国特許第6,544,472号明細書には、整形外科移植組織上に多孔質表面を堆積するための方法が記載されている。金属粒子をキャリヤー流体中に懸濁する。キャリヤー流体は水、ゼラチン(結合剤として)、及び場合によりグリセリン(粘度増加剤として)を含むことがある。水を蒸発させることにより、ゼラチン状結合剤の中に懸濁した金属粒子を与える結果になる。加熱は、そのゼラチンを炭素に転化し、金属粒子を基体に焼結する。
【特許文献2】米国特許第6,652,804号明細書には、薄い開口多孔質金属フイルムを製造するための方法が記載されている。1μ〜50μの平均粒子直径を有する金属粒子を、主要成分としてエタノール又はイソプロパノールのようなアルコール及び結合剤を含有するキャリヤー流体中に懸濁する。この懸濁物を基体に適用し、加熱してアルコール成分を蒸発させる。結合剤中に懸濁したマイクロ粒子のグリーンフイルム(green film)を、次に基体から取り外し、結合剤を分解して金属粒子を焼結するのに効果的な温度へ加熱する。
【特許文献3】米国特許第6,702,622号明細書には、次のようにして形成した多孔質構造体が記載されている。金属又はセラミック粒子をナノサイズまで機械的に摩砕し、それらナノサイズの粒子と、ポリエチレン及びパラフィンワックスの混合物のような結合剤とを一緒にしてグリーンパーツ(green part)を形成する。次にそのグリーンフイルム(green film)を、結合剤を分解し、粒子を焼結するのに効果的な温度へ加熱する。
【0004】
上で論じた厚さの制約の外に、結合剤及び場合による粘度増加剤の含有が、構造体を通る圧力低下を更に増大することがある。焼結中、結合剤及び粘度増加剤が分解し、典型的には炭素まで分解する。この炭素質の残留物が全体的に又は部分的にかなりの数の気孔を閉塞し、適切な流動を支えるためには、構造体を通る大きな圧力低下を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、先行技術の欠点を持たない、薄いナノ粉末層を基体上に堆積する方法が依然として要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明の一つの態様に従い、基体上に多孔質被覆を形成する方法を提供する。この方法は、(a)キャリヤー流体に入れた焼結可能な粒子の懸濁物を形成する工程;(b)前記懸濁物を前記キャリヤー流体を撹拌することにより維持する工程;(c)前記懸濁物の第一被覆を基体に適用する工程;及び(d)前記焼結可能な粒子を前記基体に焼結する工程;を含む。本発明の或る態様の特徴は、ナノ粉末材料の薄い被覆をマイクロポアー(micropore)を有する基体に堆積することができることである。この特徴の第一の利点は、マイクロポーラス(microporous)基体が強度及び構造体の支持を与え、ナノ粉末層を極めて薄くすることができることである。その結果、取扱い及び工業的処理のための充分な強度を有するナノポーラス材料が与えられる。ナノ粉末層は薄いので、その層を通る圧力低下が、それより厚い慣用的ナノ粉末構造体よりも実質的に小さい。
【0007】
本発明の一つ以上の態様の詳細を図面及び下の説明で記述する。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、その記述及び図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の一つの態様に従い多孔質被覆を堆積する方法を工程図で例示した図である。
【図2】図2は、本発明の一つの態様に従い形成された多孔質被覆を堆積するための装置を模式的に例示した図である。
【図3】図3は、本発明の一つの態様に従い多孔質被覆を有するガス流調節又は濾過に適した多孔質管を例示した図である。
【図4】図4は、本発明の一つの態様に従い形成された多孔質被覆の表面の走査電子顕微鏡写真の図である。
【図5】図5は、第4図の多孔質被覆の断面の走査電子顕微鏡写真の図である。
【図6】図6は、ガス流束に与える図4の多孔質被覆の連続層の効果を例示したグラフである。
【図7】図7は、本発明の一つの態様に従い多孔質被覆を有する燃料電池構成部品を例示した図である。
【図8】図8は、本発明の一つの態様に従い多孔質被覆を有する液体クロマトグラフィーカラム中に用いるフリットを例示した図である。
【図9】図9は、本発明の一つの態様に従い多孔質被覆を有する工業的触媒コンバーターに適した触媒表面を例示した図である。
【図10】図10は、本発明の一つの態様に従い接着性を向上させるのに効果的な多孔質被覆を有する接着結合した複合体を例示した図である。
【0009】
種々の図面中、同じ参照番号及び名称は、同様な部材を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願の目的から、「結合剤」とは、キャリヤー流体を液体から蒸発によるなどして転化した後に残るキャリヤー流体成分のことである。「粘度増加剤」とは、キャリヤー流体に添加した時、キャリヤー流体の主要成分の粘度を越えてキャリヤー流体の粘度を増大する液体のことである。「懸濁物」とは、粉末と溶媒との混合物のことである。「基体」とは、本発明の多孔質金属被覆が適用される装置又は装置の一部分のことである。基体は、典型的には多孔質であるが、或る態様では非孔質でもよい。「ナノ粉末被覆」とは、10μより小さい平均粒径を有する粉末を基体に適用した多孔質被覆のことである。
【0011】
図1の工程図で例示したように、本発明に従い多孔質被覆を形成するために用いられた焼結可能粒子を、キャリヤー流体中に懸濁(10)する。焼結可能粒子は、典型的にはナノサイズであり、結合剤又は粘度増加剤を添加する必要なく、撹拌の存在下でキャリヤー流体中に溶液状に留まるのに充分小さい平均最大直径を有する。焼結可能粒子は、好ましくは10nm〜10μの平均最大直径、一層好ましくは10nmから1μ未満の平均最大直径を有する。焼結可能粒子は、金属又は金属合金粉末であるのが好ましいが、互いに且つ/又は基体に焼結結合することができるそのような粉末である限り、金属酸化物及びセラミックのような他の材料でもよい。焼結可能粒子に好ましい材料には、ニッケル、コバルト、鉄、銅、アルミニウム、パラジウム、チタン、白金、銀、金、及びそれらの合金及び酸化物が含まれる。一つの特に適した合金は、ハステロイ(Hastelloy)C276であり、それは、重量%で、15.5%のクロム、2.5%のコバルト、16.0%のモリブデン、3.7%のタングステン、15.0%の鉄、1.0%のマンガン、1.0%の珪素、0.03%の炭素、2.0%の銅、及び残余のニッケルである公称組成を有する。
【0012】
焼結可能粒子は、材料の混合物でもよい。例えば、白金粉末を、316Lステンレス鋼、亜鉛、銀、及び錫粉末と混合し、一層低い温度で被覆の一層よい接着を促進するようにしてもよい。温度が低い程、焼結過程中に一層良くナノ構造を維持する。粉末混合物を含む懸濁物から混合被覆を堆積してもよく、同時に基体上に堆積することができる。材料の混合物を適用する他の利点には、被覆の機械的合金化、希釈及び分離した粒子分布、一層低い温度での基体への強い結合、及び調節された熱膨張係数(TCE)が含まれる。混合物の規則により、50%の成分Aと50%の成分Bとを一緒にし、焼結すると、被覆は、AとBの夫々のTCEの平均であるTCEを有するであろう。二種類より多い成分及び他の成分比を用いてもよく、その混合物のTCEを計算することができる。
【0013】
キャリヤー流体は、焼結可能粒子中に分散した残留物を残すことなく、本質的に完全に蒸発する液体である。そのようなものとして、キャリヤー流体は、結合剤及び粘度増加剤を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、結合剤が、焼結することなく成形体を形成するには不充分であることを意味し、公称0.05体積%より少ない。好ましいキャリヤー流体はアルコールである。キャリヤー流体として最も好ましいアルコールはイソプロパノール(イソプロピルアルコールとも呼ばれている)である。
【0014】
懸濁物は、ナノサイズの金属粒子は時々自然性であり、空気に触れると自然発火することがあるので、粒子の酸化を防ぐため不活性雰囲気中で形成する。被覆は異なった粉末の混合物でもよく、その場合、それらの粉末を先ずアルゴンのような不活性雰囲気中で混合する。粉末が混合されたならば、キャリヤー流体を添加して懸濁物を形成する。公称上、等体積のキャリヤー流体と焼結可能粒子とを用いる。しかし、主に堆積方法により、他の体積比を用いてもよい。ブラウン運動はナノサイズの焼結可能粒子を長い時間懸濁状態に維持させるであろうが、懸濁物コンシステンシーの期間を延ばすため撹拌12を用いる。撹拌12は、回転翼又は超音波振動のような、キャリヤー流体の運動を維持するのに有効などのような手段により行ってもよい。
【0015】
次に、噴霧、ロール掛け、浸漬、ドクターブレードの使用のようなどのような適当な手段でも、或は約5μの薄い均一な厚さの被覆を堆積することができる他の方法により、基体を懸濁物で被覆(14)する。下で説明するように、被覆と焼結の手順を何回か繰り返し、希望の全被覆厚さを達成することができる。基体は多孔質でも非孔質でもよく、粗面仕上げでも円滑面仕上げになっていてもよい。基体は、焼結可能粒子を焼結結合することができる材料から形成する。
【0016】
一つの好ましい基体は、2.5mm(0.1in)の程度の厚さ及び5μm程度の平均直径の気孔を有する多孔質金属である。この基体は、取扱うことができ、工業的処理の厳しさに耐えるのに充分な強度を有する。この基体の少なくとも一方の側を、本発明の方法により表面を連続的に被覆するのに有効な厚さまで、ナノポーラス(nanoporous)粒子で被覆する。この複合体構造は、遥かに粗い構造体の強度及び耐久性を持ちながら、ナノスケールで濾過及びガス又は液体の流れの制御を行うのに有効である。
【0017】
本発明の多孔質被覆を堆積させる一つの方法は、図2に模式的に例示した噴霧システム16を用いる。キャリヤー流体中に焼結可能粒子を入れた懸濁物18を加圧カップ20中に維持する。モーター24又は他の手段により駆動される回転翼22で、撹拌により懸濁物18を維持する。再循環ポンプ26により、矢印30で全体的に示した方向に、懸濁物18を加圧カップ20から噴霧ヘッド28へ引き、ナノ堆積済みの懸濁物を加圧カップ20へ戻す。システム16は、外部高圧源32、例えば、275.8×10Pa(40psi)に加圧した空気により加圧する。加圧カップ20内に約6.9×10Pa(1psi)の正圧を維持する。引き金34を押し下げることにより懸濁物の微細な噴霧を基体(図示されていない)に堆積する。
【0018】
図1に戻り、被覆14を行った後、被覆基体をキャリヤー流体を蒸発させるのに有効な温度及び時間加熱36に掛け、その基体を焼結可能粒子の焼結36に掛ける。酸化を防ぐため、焼結は中性又は還元性雰囲気中、又はある程度の真空中で行うのが典型的である。焼結温度は基体及び焼結可能粒子の組成に依存するが、鉄合金又はニッケル合金部品の場合、約649℃〜約982℃(約1,200°F〜約1,800°F)、好ましくは約760℃〜約871℃(約1,400°F〜約1,600°F)の温度で、約45分〜4時間、好ましくは約1時間〜2時間である。
【0019】
焼結過程中の収縮は、もし被覆工程14で約10μより大きな懸濁物層を堆積するならば、検出されることがある。1被覆サイクル中に堆積される最大被覆厚さは5μ程度であるのが好ましい。もし5〜10μより大きい被覆厚さが希望されるならば、被覆及び焼結工程38を繰り返すことにより多段被覆サイクルを用いてもよい。円滑な基体の場合、完全な掩蔽は、通常一回の被覆及び焼結サイクルで達成することができる。基体が粗く且つ/又は多孔質である場合、完全な掩蔽を達成するためには多段被覆サイクルが必要になるのが典型的である。中間等級(Media Grade)2の多孔質基体を被覆する場合、完全な掩蔽を達成するためには3回の被覆サイクルが必要であるのが典型的である。中間等級1の基体の場合、2回の被覆サイクルで通常充分であるが、2より大きい中間等級の場合、完全な掩蔽のためには数回の被覆サイクルが必要になるであろう。中間等級1の基体は、1μmの公称平均流通気孔孔径(nominal mean flow pore size)を特徴とし、中間等級2の基体は、2μmの公称平均流通気孔孔径を特徴とする。中間等級40又は中間等級100のような一層大きな気孔孔径の基体も、ここに記載する被覆で被覆することができるであろう。
【0020】
1又は多段サイクルで希望の厚さの被覆が適用され、焼結されたならば、被覆された表面を二次操作で被覆の外側部分を機械的に変形するように仕上げ40に掛けてもよい。二次操作には、希望の表面仕上げ及び/又は一層微細な気孔孔径制御を達成するためのプレス、ロール掛け、又は研磨が含まれる。
【0021】
本発明の方法は実質的に結合剤を含まないキャリヤー流体を含む懸濁物からナノ粉末被覆を堆積するが、ナノ粉末被覆を適用し、次に焼結前のその適用被覆を覆う上面被覆として結合剤を適用することは本発明の範囲内に入るものである。
【0022】
ここに記載した本発明は、次の実施例により一層良く理解されるであろう。
【実施例】
【0023】
[実施例1]
濾過を一般に横断流(cross flow)法又は閉鎖端(dead end)法を用いて行う。横断流の適用では、濾液の一部分だけが1回の通過で濾過されるのに対し、閉鎖端の適用では、濾過される流体の100%がフィルター媒体を通過する。図3に例示した処理管42は、横断流濾過及びガス又は液体の流れの制御に有用である。処理管42は、5μm程度の比較的大きな気孔を有する多孔質管状基体44を有する。約25μの全被覆厚さ及び直径が50nmの程度の気孔を有する多孔質被覆46が管状基体44を覆っている。処理ガス又は液体48は、多孔質管42中に流入する。濾過された媒体50は多孔質被覆46のマイクロポアーを通過するのに充分小さく、処理管42の壁を通って出るのに対し、廃棄物流52は処理管の出口側から出る。図3に描いた処理管42は、管の出口端53を閉塞し、それにより流体の全てが管状多孔質基体44及び適用した多孔質被覆46を通過するように強制することにより閉鎖端濾過として用いることもできる。
【0024】
処理管42は、316L SS(重量で、16〜18%のクロム、10%〜14%のニッケル、2.0〜3.0%のモリブデン、0.03%未満の炭素、及び残余の鉄の公称組成を有するステンレス鋼であり、同じ組成であるが、炭素含有量に限定的な限界のない316SSも同様に適している)、インコネル(Inconel)625(重量で、20%のクロム、3.5%のニオブ、及び残余のニッケルの公称組成を有する)、及びハスイテロイ(Hastelloy)C276の夫々一種類から形成した管状基体を用いて製造した。その管状基体は、中間等級2に一致する気孔孔径を持っていた。ハステロイC276ナノ粉末とイソプロピルアルコールとのスラリーを管状基体の外壁に約5〜10μの厚さに噴霧した。その被覆を真空炉中802℃(1,475°F)で60分間焼結することにより焼結した。この過程を更に2回繰り返し、約25μの全被覆厚さを達成した。
【0025】
図4は、40,000xの倍率のナノポーラス表面の走査電子顕微鏡写真であり、焼結したナノ粒子及び微細気孔を例示している。ナノ粒子は約100nmの平均直径を有し、ナノポアーは約50nmの平均気孔直径を有する。図5は、1,000xの倍率で管状基体44及び多孔質被覆46の断面を示す走査電子顕微鏡写真である。
【0026】
処理管42の性能を、管を通過する窒素ガスの流束を決定することにより測定した。流束は、室温(公称22℃)で管壁を通る20.7×10Pa(3psi)の圧力低下を用いて測定した。流束の単位はSLM/inである(ここでSLMは標準状態でのリットル/分であり、inは平方インチである)。表1及び図6は、0〜3つのナノ粉末被覆層を有する処理管についての流束値を例示する。約25μの全被覆厚さ及び約50nmの平均気孔孔径を有する中間等級2基体の平均流束は1.04SLM/cm(6.69SLM/in)であった。これは、20.7×10Paで0.29SLM/cm(3psiで1.87SLM/in)の流束を有する慣用的中間等級0.5(公称平均流動気孔孔径0.5μm)処理管と比較して、極めて好ましい。
【0027】
【表1】

【0028】
[実施例2]
図7は、燃料電池用の水素を製造するのに有用な膜54を例示する断面図である。マイクロポーラス基体56を、パラジウム又は白金又はそれらの合金のナノ被覆58で被覆する。基体の気孔孔径は1〜40μ、一層好ましくは1〜10μの程度である。被覆は50nm〜10μの直径を有する気孔を含む。そのナノ被覆の上に、メッキ又は層状堆積によるなどして続く層を堆積し、水素発生のための活性表面を形成することができる。
【0029】
[実施例3]
図8は、酸化アルミニウムビーズが液体クロマトグラフィーカラムを通過しないように止めるのに有効な粒子保持障壁60を例示する。粒子保持障壁60は、典型的にはステンレス鋼、ハステロイ、又はチタン粉末から形成される。マクロポーラスフリット(frit)62を含む。フリット62は、2.08mm(0.082in)(中間等級0.5〜2)の程度の直径を有する。通常フリットと同じ組成のナノ粉末層64が、フリット62の一方の側を被覆している。障壁60は、ナノ粉末の懸濁物を表面にマイクロピペットで移すか又は噴霧し、次に真空焼結することにより形成する。
【0030】
[実施例4]
図9は、改良された触媒性能のための構成部品66を例示する。白金又は他の触媒材料のナノ粉末層68が、工業的用途及び/又は自動車用途のための触媒コンバーターで用いられる金属又はセラミック支持体70の表面を被覆している。
【0031】
[実施例5]
図10は、表面積を増大し、重合体接着剤76のための固着気孔を与え、それにより接着剤結合強度を劇的に増大するために、基体74の表面に適用されたナノ粉末被覆72を例示している。
【0032】
[実施例6]
被覆中に個々の粒子の希薄な分布物を作る例は、ステンレス鋼粉末中、白金粒子の1:100混合物を作り、次にその混合物をステンレス鋼基体上に堆積し、焼結結合することであろう。燃料電池用途のための触媒被覆に適用されるこの例では、ステンレス鋼表面に個々の白金粒子が存在するものを得る結果になる。ここで被覆中のステンレス鋼粉末は、基体と区別できないものになり、最初の被覆からの希薄な白金粒子は、基体の表面を覆って分布する。
【0033】
[実施例7]
低い温度で基体にステンレス鋼を結合する例は、遥かに高い溶融温度を有するステンレス鋼316L SS粉末と、錫のような低い温度で溶融する粉末とを混合し、この混合物で基体を被覆し、次に焼結を行うことであろう。低温成分(錫)は、ステンレス鋼より遥かに低い温度で拡散し、それにより一層低い温度で焼結及び結合を起こすであろう。
【0034】
[実施例8]
バクテリア及びウイルスのような微生物を液体又はガス媒体から除去するのに有用な殺菌フィルターは、0.2μ未満の気孔孔径を必要とする。このフィルターは、ここに記載した方法により作ることができる。
【0035】
[実施例9]
ガス又は液体媒体から不純物を除去するための高効率フィルターは、深層濾過(depth filter)法を用いる。この例は、支持基体に200μの程度の比較的厚い被覆を適用することであろうが、それはこの種の濾過のため非常に微細な粒子/微生物を捕捉するため深層濾過技術を用いる。この厚さに蓄積するため、本願に記載したように数層の薄い層を適用し、焼結し、焼結過程中の収縮亀裂を最小限にすることであろう。
【0036】
本発明の一つ以上の態様について記述してきた。然しなから、本発明の本質及び範囲から離れることなく種々の修正を行うことができることは分かるであろう。従って、他の態様は、次の特許請求の範囲内に入るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に多孔質被覆を形成する方法において、
(a) キャリヤー流体中の焼結可能粒子の懸濁物(10)を形成する工程;
(b) 前記懸濁物を前記キャリヤー流体を撹拌(12)することにより維持する工程;
(c) 前記懸濁物の第一被覆(14)を前記基体に適用する工程;及び
(d) 前記焼結可能粒子を前記基体に焼結する工程(36);
を特徴とする、多孔質被覆形成方法。
【請求項2】
焼結可能粒子を、結合剤又は粘度増加剤を用いることなく、撹拌(12)の存在下で前記キャリヤー流体中に溶液状に維持するのに有効な平均最大直径を有するように選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
焼結可能粒子を10nm〜10μの平均最大直径を有するように選択する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
焼結可能粒子を10nm〜1μ未満の平均最大直径を有するように選択する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
キャリヤー流体を結合剤及び粘度増加剤を実質的に含まないように選択する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
キャリヤー流体を実質的にアルコールであるように選択する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アルコールをイソプロパノールを含むように選択する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
焼結可能粒子を、金属、金属合金、金属酸化物、セラミック、及びそれらの混合物からなる群から選択する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
焼結可能粒子及び基体を、ニッケル、コバルト、鉄、銅、アルミニウム、パラジウム、チタン、白金、銀、金、及びそれらの混合物から形成されるように独立に選択する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
焼結可能粒子を、鉄合金316Lであるように選択する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
焼結可能粒子を、ニッケル合金C276であるように選択する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
焼結工程(36)を、還元性雰囲気中で760℃(1400°F)〜925℃(1700°F)の温度で45分〜4時間行う、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
適用工程(14)及び焼結工程(36)を、少なくとも1回更に繰り返す(38)、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
基体を、粗い表面、多孔質表面、及び非多孔質表面からなる群から選択する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
基体を、多孔質基体を有するように選択し、多孔質被覆が流体の流れ又は濾過を与える、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
多孔質被覆の気孔孔径が、最後の焼結工程(36)に続く二次処理(40)により修正される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
二次処理(40)を、プレス、ロール掛け、及び研磨からなる群から選択する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
基体を円滑な表面を有するように選択する、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
焼結可能粒子が、パラジウム又はパラジウム合金であるように選択され、水素発生のための活性表面を形成する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
焼結可能粒子が、チタン又はチタン合金であるように選択され、酸化アルミニウムビーズの通過を防ぐのに有効な障壁を形成する、請求項8に記載の方法。
【請求項21】
焼結可能粒子が、白金又は白金合金であるように選択され、工業的又は自動車の触媒コンバーター構成部品を形成する、請求項8に記載の方法。
【請求項22】
焼結可能粒子が接着剤の結合強度を改良するのに有効である、請求項8に記載の方法。
【請求項23】
焼結可能粒子及び基体を、ニッケル、コバルト、鉄、銅、アルミニウム、パラジウム、チタン、白金、銀、金、それらの合金、及びそれらの酸化物から形成されるように独立に選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
焼結可能粒子を、結合剤又は粘度増加剤を用いることなく、撹拌(12)の存在下でキャリヤー流体中に溶液状に維持するのに有効な平均最大直径を有するように選択する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
焼結可能粒子を10nm〜10μの平均最大直径を有するように選択する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
焼結可能粒子を10nm〜1μ未満の平均最大直径を有するように選択する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
キャリヤー流体を結合剤及び粘度増加剤を実質的に含まないように選択する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
キャリヤー流体を実質的にアルコールであるように選択する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
アルコールをイソプロパノールを含むように選択する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
基体上に多孔質被覆を形成する方法において、
(a) キャリヤー流体中の焼結可能粒子の懸濁物(10)を形成する工程;
(b) 前記懸濁物を前記キャリヤー流体を撹拌(12)することにより維持する工程;
(c) 前記懸濁物の被覆を前記基体に適用する工程(14);
(d) 前記被覆の表面に結合剤を適用する工程;及び
(e) 前記焼結可能粒子を前記基体に焼結する工程(36);
を特徴とする、多孔質被覆形成方法。
【請求項31】
1μm〜10μmの基体気孔孔径を有する多孔質基体(44);及び
前記多孔質基体(44)の少なくとも一方の側に結合された多孔質被覆(46)で、50nm〜10μmの被覆気孔孔径を有する多孔質被覆(46);
を特徴とする、流体の流れ又は濾過のための多孔質構造体(42)。
【請求項32】
多孔質基体(44)が管である、請求項31に記載の多孔質構造体(42)。
【請求項33】
多孔質被覆(46)が15μ〜30μの全厚さを有する多層である、請求項32に記載の多孔質構造体(42)。
【請求項34】
多孔質被覆(46)が、ニッケル、コバルト、鉄、銅、アルミニウム、パラジウム、チタン、白金、銀、金、それらの合金、及びそれらの酸化物からなる群から選択された材料から形成されている、請求項33に記載の多孔質構造体(42)。
【請求項35】
約1μm〜40μmの基体気孔孔径を有する多孔質基体(56);及び
前記多孔質基体(56)の少なくとも一方の側に結合された被覆(58)で、パラジウム、白金、及びそれらの合金からなる群から選択され、50nm〜10μの被覆気孔直径を有する被覆(58);
を特徴とする、燃料電池(54)。
【請求項36】
カラム内に入れられた複数のフリット(62);及び
ニッケル、コバルト、鉄、銅、アルミニウム、パラジウム、チタン、白金、銀、金、それらの合金、及びそれらの酸化物からなる群から選択された粒子(64)で、1μ未満の平均直径を有する粒子(64)で被覆された前記フリット(62)の少なくとも一つの表面;
を特徴とする、粒子保持障壁(60)。
【請求項37】
酸化アルミニウムビーズが液体クロマトグラフィーカラムを通過するのを防ぐのに有効である、請求項36に記載の粒子保持障壁(60)。
【請求項38】
支持層(70);及び
白金又は白金合金の粒子(68)で、1μより小さい平均直径を有する粒子(68)で被覆された前記支持層(70)の少なくとも一つの表面;
を特徴とする、触媒コンバーター構成部品(66)。
【請求項39】
工業的用途又は自動車用途のための部品である、請求項38に記載の触媒コンバーター構成部品(66)。
【請求項40】
支持層(74);
金属、金属合金、金属酸化物、セラミック、又はそれらの混合物の粒子(72)で、重合体(76)の接着又は結合を強くするための粗面化表面を与えるのに有効な1μより小さい平均直径を有する粒子(72)で被覆された前記支持層(74)の少なくとも一つの表面;
を特徴とする、複合体構造体。
【請求項41】
第一公称平均流通気孔孔径の気孔を有する基体(44);及び
前記基体(44)の少なくとも一つの表面上の被覆(46)で、第二公称平均流通気孔孔径の気孔を有する被覆(46);
を有し、然も、
前記第一公称平均流通気孔孔径が、前記第二公称平均流通気孔孔径に等しいか又はそれより大きい;
ことを特徴とする、複合体構造体。
【請求項42】
基体(44)が、0.2〜100の中間等級を有する材料から選択されている、請求項41に記載の複合体構造体。
【請求項43】
基体(44)が、0.5〜2の中間等級を有する材料から選択されている、請求項42に記載の複合体構造体。
【請求項44】
被覆(46)が、10nm〜10μmの焼結前平均直径を有する焼結した粒子材料から形成されている、請求項41に記載の複合体構造体。
【請求項45】
被覆(46)が25μまでの厚さを有する、請求項44に記載の複合体構造体。
【請求項46】
被覆(46)が5〜15μの厚さを有する、請求項45に記載の複合体構造体。
【請求項47】
基体(44)が0.1inの公称厚さを有する、請求項45に記載の複合体構造体。
【請求項48】
基体(44)が、カップ、シリンダー、円盤、棒、板、及び中空管(42)からなる群から選択された形態を有するように選択されている、請求項45に記載の複合体構造体。
【請求項49】
基体(44)及び被覆(46)が、ニッケル、コバルト、鉄、銅、アルミニウム、パラジウム、チタン、白金、銀、金、それらの合金、及びそれらの酸化物の一種類以上からなる群から独立に選択されている、請求項48に記載の複合体構造体。
【請求項50】
被覆(46)が150μ〜250μの厚さを有する、請求項44に記載の複合体構造体。
【請求項51】
被覆(46)の外側部分が、機械的変形に見合う表面仕上げを有する、請求項45に記載の複合体構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−505043(P2010−505043A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530349(P2009−530349)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/019102
【国際公開番号】WO2008/042063
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(509087645)モット コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】