説明

照明装置、撮像装置、及び、カメラシステム

【課題】正しい調光可能範囲を撮影者に示すことが可能な照明装置等を提供する。
【解決手段】撮像部11の撮像感度を、撮影条件に応じて所定の設定範囲内で自動調整する感度制御部19bを備える撮像装置10を用いた撮影時に使用され、照明光を照射する照明装置30を、表示部34と、感度制御部19bの所定の設定範囲に関する感度範囲情報に基づいて、調光可能範囲の上限値及び下限値の少なくとも一方を演算して表示部34に表示させる制御部36とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置、撮像装置、及び、カメラシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラは、照明装置の調光可能範囲を表示するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−262550号公報
【0003】
また近年、デジタルカメラに接続される撮影用の照明装置(例えばフラッシュ装置やストロボ装置と称されるもの)において、装着されているデジタルカメラから撮像素子の撮像感度(ISO値)の情報を入力し、そのISO値に基づいてその照明装置の調光可能範囲を演算し、その演算結果(調光可能範囲の距離表示)を照明装置に設けられた表示部に表示するものが知られている。
また近年のデジタルカメラは、撮影条件に応じて撮像素子の撮像感度(ISO値)を自動的に調節するオートISOと称する機能を備えたものが普及している。
このようなデジタルカメラと照明装置とで構成されるカメラシステムにおいては、ISO値が固定されている場合はその固定ISO値に基づく調光可能範囲が照明装置の表示部に表示され、一方オートISOの場合には所定の測光タイミング毎の測光結果(輝度値)に応じてその都度決定されるISO値(1つのISO値)に基づく調光可能範囲がその表示部に表示される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オートISOの場合は、特に制約がなければそのカメラで設定可能な範囲内のISO値を、測光結果(輝度値)に応じて任意に設定することができる。つまり設定できるISO値には幅がある(一例として、ISO値100〜1600)。このため調光可能範囲もその設定可能なISO値の幅に応じて決定されることが望ましい。しかしながら従来のカメラシステムでは、上述の如く、オートISOの場合であっても、所定タイミング毎になされるその時々の測光結果に基づいて決定された調光可能範囲が表示される。このため、例えば被写体輝度の変化のタイミングと測光タイミングとがずれた場合に、実際とは異なる被写体輝度(ひいてはそれにしたがって決定される撮影感度)に応じた調光可能範囲が表示されてしまうという不都合が生じるおそれがある。
また、カメラをオートISOに設定しておき、かつレリーズボタンの全押し操作(撮影指示)に応じて、カメラでの本撮影の直前に照明装置が被写体測光のために行う、いわゆるプリ発光を行った上で本発光及び本撮影を行う場合には、そのプリ発光時の測光結果(ひいてはそれに基づく撮像感度)を反映した調光可能範囲が、撮影時の正しい調光可能範囲ということになる。しかしながら調光可能範囲の表示は、この全押し操作が行われる前に得られた測光結果(ひいては撮像感度)に基づいて算出された調光可能範囲を表示しているものであり、もしこのプリ発光時の測光結果と全押し操作前の測光結果とが異なっていると、その調光可能範囲の表示は正しい調光可能範囲を表示できないという不都合がある。
またプリ発光から本発光(本撮影)までの間隔は非常に短いため、たとえこの短い期間に、プリ発光時の測光結果(ひいては撮像感度)に基づく調光可能範囲を表示したとしても、撮影前に予め撮影者に正しい調光可能範囲を示す、という目的が実現できない。
本発明は上記問題点を解決して、正しい調光可能範囲を撮影者に示すことが可能な照明装置、撮像装置、及び、カメラシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。ここでは理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
請求項1に記載の発明は、撮像部(11)の撮像感度を撮影条件に応じて所定の設定範囲内で自動調整する感度制御部(19b)を備える撮像装置(10)を用いた撮影時に使用され、照明光を照射する照明装置であって、表示部(33)と、前記感度制御部の前記所定の設定範囲に関する感度範囲情報に基づいて、調光可能範囲の上限値及び下限値の少なくとも一方を演算して前記表示部に表示させる制御部(36)とを備えることを特徴とする照明装置(30)である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の照明装置において、前記撮像装置(10)と通信を行うことによって前記感度範囲情報をこの撮像装置から取得する通信部(32)を備えることを特徴とする照明装置(10)である。
請求項3の発明は、請求項1に記載の照明装置において、前記制御部(36)は、前記撮像装置(10)に備えられるとともに前記撮像部(11)の出力に基づいて生成された画像データの輝度値を補正する画像処理部の補正能力に関する補正能力情報に基づいて、前記調光可能範囲を補正して表示することを特徴とする照明装置(36)である。
請求項4の発明は、請求項3に記載の照明装置において、前記撮像装置(10)と通信を行うことによって前記感度範囲情報及び前記補正能力情報をこの撮像装置から取得する通信部(32)を備えることを特徴とする照明装置(10)である。
【0007】
請求項5の発明は、撮像部(11)と、撮影条件に応じて前記撮像部の撮像感度を所定の設定範囲内で自動調整する感度制御部(19b)と、前記撮像部の出力に基づいて生成された画像データの輝度値を補正する画像処理部(19c)とを備える撮像装置(10)に対して接続可能に設けられた照明装置であって、表示部(34)と、前記感度制御部の前記所定の設定範囲に関する感度範囲情報、及び、画像処理部の補正能力に関する補正能力情報の少なくとも一方に基づいて、調光可能範囲の上限値及び下限値の少なくとも一方を演算して前記表示部に表示させる制御部(36)とを備えることを特徴とする照明装置(30)である。
請求項6の発明は、請求項5に記載の照明装置において、前記撮像装置と通信を行うことによって前記感度範囲情報又は前記補正能力情報をこの撮像装置から取得する通信部(32)を備えることを特徴とする照明装置(10)である。
【0008】
請求項7の発明は、撮影用の照明光を照射する外付型照明装置(30)を使用することができる撮像装置(10)であって、撮影条件に応じて撮像部の撮像感度を所定の設定範囲内で自動調整する感度制御部(19b)と、表示部(12)と、前外付型照明装置と通信を行って前記外付型照明装置からガイドナンバー情報を含む照明装置情報を取得する通信部(14)と、前記感度制御部の前記所定の設定範囲に関する感度範囲情報及び前記照明装置情報に基づいて、前記外付型照明装置の調光可能範囲の上限値及び下限値の少なくとも一方を演算して前記表示部(12)に表示させる制御部(19)とを備える撮像装置(10)である。
【0009】
請求項8の発明は、撮影条件に応じて撮像部の撮像感度を所定の設定範囲内で調整する感度制御部(19b)と、表示部(12)と、内蔵型照明光照射部(18)と、前記感度制御部の前記設定範囲に関する感度範囲情報に基づいて、前記内蔵型照明光照射部の調光可能範囲の上限値及び下限値の少なくとも一方を演算して前記表示部に表示させる制御部(19)とを備える撮像装置(10)である。
請求項9の発明は、請求項8に記載の撮像装置であって、該撮像装置に使用可能な外付型照明装置(30)に関する情報を記録する記録部(17)を備え、前記制御部は、前記記録部に記録された情報に基づいて前記外付型照明装置の調光可能範囲を演算し、この演算結果と前記内蔵型照明光照射部(18)の調光可能範囲とを比較可能に前記表示部(12)に表示させることを備える撮像装置(10)である。
請求項10の発明は請求項5から請求項9までのいずれか1項に記載の撮像装置において、前記撮像部(11)の出力に基づいて生成された画像データの輝度値を補正する画像処理部(19c)を備え、前記制御部(19)は、前記画像処理部の補正能力に応じて前記調光可能範囲を補正して表示することを特徴とする撮像装置(10)である。
【0010】
請求項11の発明は、カメラ本体(10)と、該カメラ本体を用いた撮影時に撮影用の照明光を照射する照明装置(30)とからなるカメラシステムであって、前記カメラ本体に備えられ、撮影条件に応じて撮像部(11)の撮像感度を所定の設定範囲内で自動設定する感度制御部(19b)と、表示部(12)と、前記感度制御部の前記所定の設定範囲に関する感度範囲情報に基づいて前記照明装置の調光可能範囲の上限値及び下限値の少なくとも一方を演算して前記表示部に表示させる制御部(19)とを備えるカメラシステム(1)である。
請求項12の発明は、請求項11に記載のカメラシステムにおいて、前記照明装置(30)は、前記カメラ本体(10)と通信を行うことによって前記感度範囲情報を前記カメラ本体から取得する通信部(32)を備え、前記制御部(36)及び前記表示部(34)は、前記照明装置に設けられることを特徴とするカメラシステム(1)である。
請求項13の発明は、請求項12に記載のカメラシステムにおいて、前記カメラ本体(10)は、前記撮像部(11)の出力に基づいて生成された画像データの輝度値を補正する画像処理部(19c)を備え、前記通信部(32)は、前記カメラ本体と通信を行うことによって前記画像処理部の補正能力情報を前記カメラ本体から取得し、前記制御部(19)は、前記補正能力情報に基づいて前記調光可能範囲を補正して表示することを特徴とするカメラシステム(1)である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、正しい調光可能範囲を撮影者に示すことが可能な照明装置、撮像装置、及び、カメラシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を適用した照明装置の実施形態について説明する。
図1は、実施形態のカメラシステムの構成を示すブロック図である。
【0013】
カメラシステム1は、図1に示すように、カメラ本体10と交換レンズ20とを備える一眼レフ方式のデジタルカメラ2に対して照明装置30が着脱可能に装着されたものである。
照明装置30は、デジタルカメラ2を用いて撮影を行う際に使用されるものであり、一般にフラッシュ装置、スピードライト等と称されている。
【0014】
カメラ本体10は、撮像部11、表示部12、アクセサリーシュー13、通信部14、測光部15、操作部16、記録部17、照明光照射部18、制御部19、及び、撮影情報表示部41(ファインダー内表示部41)を備えた光学ファインダー40を備えた撮像装置である。
【0015】
撮像部11は、交換レンズ20に備えられた撮影レンズ21を通過した被写体光を電気信号に変換するイメージセンサーである。撮像部11には、例えば、CCD(Charge Coupled Device)等を使用することができる。
表示部12は、撮影済みの画像やメニュー画面を表示する部分である。
【0016】
アクセサリーシュー13は、照明装置30等の外部機器が接続される部分である。アクセサリーシュー13は、照明装置30がカメラ本体10に装着された状態で、照明装置30に備えられた取付脚31と機械的に係合するようになっている。
アクセサリーシュー13は、複数の(図示しない)電気接点を備えている。照明装置30の取付脚31にも、これらの電気接点に対応した複数の(図示しない)電気接点が設けられており、照明装置30とカメラ本体10とは、電気的に接続される。
【0017】
通信部14は、上述した複数の電気接点を介して照明装置30に備えられた通信部32と通信を行う部分である。カメラ本体10は、これによって、照明装置30に対して各種情報を伝達することができる。
カメラ本体10に備えられた通信部14は、交換レンズ20に備えられた通信部22とも通信を行うことができ、交換レンズ20に備えられた絞り装置23の絞り値(F値)情報や、撮影レンズ21の焦点距離情報等を交換レンズ20から取得できるようになっている。
【0018】
測光部15は、撮影レンズ21を通過した被写体光を受光する測光センサを備えており、被写体輝度を測定するようになっている。
操作部16は、カメラ本体10の筐体に備えられた複数の押しボタンを含み、撮影者等のユーザは、これらの押しボタンを操作することによって、各種入力操作を行うようになっている。
【0019】
記録部17は、カメラ本体10に対して使用可能な外付け型照明装置(照明装置30を含む)の、例えば、ガイドナンバー情報等の情報が記録された記録媒体である。
照明光照射部18は、カメラ本体10を用いた撮影時に照明光を照射する内蔵型の照明装置である。
【0020】
制御部19は、カメラ本体10に備えられた電気要素を統括的に制御する部分であり、画像データ生成部19a、感度制御部19b、及び、画像処理部19cを備えている。
画像データ生成部19aは、撮像部11から出力される電気信号に基づいて画像データを生成する部分である。
感度制御部19bは、撮影条件等に関わらず適正露出が得られるように、測光部15の出力に応じて撮像部11の撮像感度(ISO値)を自動的に制御する公知の感度自動制御を行う部分である。
【0021】
具体的に説明すると、感度制御部19bは、例えば、撮影者が指定した絞り値やシャッタスピード等を優先する撮影モードや、露出条件を測光部15の出力に応じてカメラ本体10がフルオートで設定する撮影モードにおいて、適正露出が得られるように撮像部11の撮像感度を自動的に設定する。以下、感度制御部19bが、撮像部11の撮像感度を自動設定する撮影モードをオートISO撮影モードと称して説明する。
【0022】
ここで、本実施形態のカメラ本体10に備えられた撮像部11は、例えば、ISO200からISO1600までの間でISO値を設定できるようになっている。
これに対し、感度制御部19bは、オートISO撮影モードにおいて、ISO200からISO800までの範囲を使用するようになっており、ISO値に上限を設定することによって撮像感度上昇に起因するノイズ量の増加を防止している。
【0023】
画像処理部19cは、例えば、カメラシステム1のユーザからの入力操作に応じて、撮影済み画像を形成する画像データに含まれる輝度情報を自動的に調整する部分である。
この画像処理部19cの行う画像処理機能の一例を説明すると、画像処理部19cは、例えば、撮影済み画像を形成する画像データの一部の輝度値が低い(暗い)場合、この輝度値の低い領域を検出して当該領域のみの輝度値を上昇させる画像処理を行うようになっている。
【0024】
照明装置30は、照射部33、表示部34、操作部35、及び、制御部36を備えている。
照射部33は、撮影時に照明光を発光する部分であり、例えば、キセノンランプ等の光源を備えている。
表示部34は、照明装置30に関する各種ステータスを表示する部分であり、例えば、液晶表示パネル等を備えている。
操作部35は、照明装置30の筐体に備えられた複数の押しボタンを含み、ユーザは、これらの押しボタンを操作することによって、各種入力操作を行うようになっている。
【0025】
制御部36は、照明装置30に備えられた電気要素を統括的に制御する部分であり、演算部36aを備えている。
演算部36aは、絞り装置23の絞り値情報、撮影レンズ21の焦点距離情報、照明装置30のガイドナンバー情報(GN情報)、撮像部11の撮像感度情報等に基づいて、照明装置30の調光可能範囲を演算する部分である。絞り値情報、焦点距離情報、及び、焦点距離情報は、カメラ本体10の通信部14から伝達される。
照明装置30は、TTL(自動調光モード)設定時には、シャッターとほぼ同時に発光するモニタ発光を行い、演算部36aは、このモニタ発光時の測光部15の出力に基づいて、絞り値情報、焦点距離情報、及び、撮像感度情報等をカメラ本体10から取得して、調光可能範囲を演算するようになっている。
【0026】
そして、制御部36は、演算部36aの演算結果に基づいて、調光可能範囲の上限値及び下限値を表示部34に表示させる。
図2は、図1に示す照明装置に備えられた表示部の表示画面の一例を示す図である。
制御部36は、ISO値が固定された状態で撮影が行われる場合には、図2(a)に示すように、このISO値(例えば、「ISO200」等)と、このISO値に基づいた調光可能範囲をそれぞれの表示領域34a、34bに表示させるようになっている。
【0027】
これに対し、オートISO撮影モードで撮影を行う場合、演算部36aは、測光時(モニタ発光時)のISO感度に関わらず、感度制御部19bがオートISO撮影モードで設定する撮像感度の上限値及び下限値(本実施形態ではISO200〜800)に対応した調光可能範囲を演算する。そして、制御部36は、図2(b)に示すように、この演算部36aの演算結果と、オートISO撮影モードである旨の表示(例えば、「ISO AUTO」等)をそれぞれの表示領域34b、34aに表示させるようになっている。
【0028】
一例をあげて具体的に説明すると、本実施形態の照明装置30は、例えば、測光時における絞り装置23の絞り値が5.6であり、かつ、撮影レンズ21の焦点距離が60mmの場合、ISO値が200であれば、その調光可能範囲は、例えば、0.9m〜11mとなり(図2(a)参照)、ISO値が800であれば、その調光可能範囲は、例えば、0.9m〜20mとなる性能を備えている。
前述のように、感度制御部19bがオートISO撮影モード時に設定するISO値の範囲は、ISO200〜800なので、撮影モードがオートISO撮影モードである場合、制御部36は、表示部34に対して図2(b)に示すように、例えば、表示領域34aに「ISO AUTO」と表示させるとともに、例えば、表示領域34bに「0.9〜20m」等と表示させる。
【0029】
ここで、この照明装置30は、光源の大きさや、電源(例えば、コンデンサ)の容量によって最大発光量、すなわち、照明光の最長到達距離が決定される。これに対し、本実施形態のカメラ本体10は、画像処理部19cを備えているので、仮に被写体が照明装置30に対して、照射光の最長到達距離よりも離れており、撮影時に光量不足となったとしても、画像処理を行うことによって適正露出で撮影した画像と同等の画像を得ることができる。
【0030】
したがって、本実施形態のカメラシステム1は、画像処理部19cを備えていないカメラシステム(図示省略)に比べ、被写体を適正露出で撮影できる距離が実質的に延長されることになる。本明細書において、照明装置30の調光可能範囲とは、照明装置30が照射する照射光が届く範囲を意味し、上述のように画像処理部19cによる画像処理によって延長される分の距離を加えたものも、調光可能範囲に含まれるものとする。
【0031】
そして、制御部36は、ユーザからの入力操作に応じて、画像処理部19cによる画像処理を行った場合の調光可能範囲を画像処理部19cの処理能力に基づいて演算し、この延長された調光可能範囲を表示部34に表示させるようになっている。
図2(c)は、画像処理部19cの処理を行った場合に得られる(延長される)調光可能範囲の増加分(+αの延長距離)を表示部34に表示した例である。表示領域34cに画像処理部19cにて画像処理(輝度処理)を行った場合であることと、その処理の強度(本実施形態では、強、並、低の3段階のうちの「並」)を示す表示を行い、同時に表示領域34dに、その画像処理を行った場合に稼げる距離(調光範囲の延長できる距離)を表示する。
【0032】
また、カメラ本体10の制御部19は、照明装置30が装着されていない状態において、撮像部11の撮像感度、及び、交換レンズ20から伝達される情報に基づいてカメラ本体10の表示部12に照明光照射部(カメラ内蔵の照射部)18の調光可能範囲を表示するようになっている。この照明光照射部18の調光可能範囲も、撮影モードがオートISO撮影モードである場合には、感度制御部19bがオートISO撮影モードで設定する撮像感度の上限値及び下限値に対応した数値で表示される。
そして、この状態でカメラ本体10の操作部16に含まれる所定の押しボタン(例えば、HELPボタン)が操作されると、制御部19は、撮像部11の撮像感度、前述の記録部17に記録された情報(外付け型照明装置のガイドナンバー情報)、及び、交換レンズ20から伝達される情報に基づいて、外付け型の照明装置(照明装置30を含む)を使用した場合の調光可能範囲をカメラ側の表示部12に表示させるようになっている。
これによって、撮影者は、内蔵型の照明光照射部18を使用した場合の調光可能範囲と、外付け型の照明装置を使用した場合の調光可能範囲とを比較することができる。
【0033】
次に、本実施形態のカメラシステム1を用いて撮影を行う場合における照明装置30の制御部36が行う表示制御について、フローチャートを用いてステップ毎に説明する。
図3は、図1に示す照明装置に備えられた制御部が行う表示制御を示すフローチャートである。
【0034】
(ステップS01:撮影モード判定)
制御部36は、通信部14及び通信部32を介して、カメラ側から受信した情報に基づいて、撮影者が設定したISO値に関する撮影モードを判定する。ISO値が固定された撮影モードが指定されている場合、制御部36は、ステップS02に進み、撮影モードがオートISO撮影モードである場合には、ステップS04に進む。
【0035】
(ステップS02:ISO値判定)
制御部36は、カメラ本体10から伝達される信号に基づいてISO値(例えば、ISO200)を判定し、ステップS03に進む。
(ステップS03:調光可能範囲演算)
制御部36は、ステップS02において判定したISO値に基づいて演算部36aに調光可能範囲を演算させ、ステップS05に進む。
【0036】
(ステップS04:調光可能範囲演算)
制御部36は、感度制御部19bがオートISO撮影モード時に設定するISO値の範囲(例えば、ISO200〜800)に対応した調光可能範囲を演算部36aに演算させ、ステップS05に進む。
【0037】
(ステップS05:調光可能範囲表示)
制御部36は、ステップS03又はステップS04による演算結果に応じた調光可能範囲をISO値と併せて表示部34に表示させる。
撮影モードがオートISO撮影モードである場合、制御部36は、表示部34に対して、図2(b)に示すように、例えば、「ISO AUTO」と表示領域34aに表示させるとともに、例えば、「0.9〜20m」等と表示領域34bに表示させる(ステップS06に進む)。
ISO値が固定で設定されている場合(ステップS2)、制御部36は、このISO値と、このISO値に基づいて演算された調光可能範囲を表示部34に表示させる(図2(a)参照)。
【0038】
(ステップS06:画像処理考慮判定)
制御部36は、ユーザによって、操作部35の所定の操作ボタンが操作されると、これを検出してステップS07に進む。これに対し、ユーザによる上記入力操作が検出されない場合には、処理を終了する。
(ステップS07:調光可能範囲演算・表示)
制御部36は、画像処理部19cによる画像処理能力を考慮して、ステップS05で表示した調光可能範囲(例えば、「0.9m〜20m」等)を補正する演算を行い、この補正後の調光可能範囲を表示部34に表示させる。
前述のように、カメラシステム1は、画像処理部19cの機能によって、この画像処理部19cを備えていないカメラシステムに比べ、調光可能範囲の上限値を大きくすることができる。本実施形態のカメラシステム1では、画像処理部19cの機能によって、調光可能範囲の上限が、例えば、20mから20.5mに、+0.5mだけ延長されるようになっている。
したがって、制御部36は、ステップS06でユーザによって所定の押しボタンが操作されると、表示部34の表示を、前述の図2(c)に示したような表示状態に変更して処理を終了する。なお、表示形態としては、図2(c)に示す形態に限られず、例えば、表示領域34dの表示を行わない代わりに、表示領域34bに表示される調光可能範囲を、「0.9m〜20.5m」と変更して表示するようにしてもよい。この際にも、この表示された調光可能範囲が画像処理部19cによる画像処理能力を考慮したものである旨の表示である表示領域34cの表示を併せて表示してもよい。
【0039】
なお、本実施形態では、画像処理部19cによる画像処理(輝度処理)び強度を、複数(例えば、「強」、「並」、「低」の3つ)設けておき、その強度をも任意に選択できるようにしており、その選択された強度に応じて調光可能範囲の上限値(+αの延長距離)も異なるものとなる。本実施形態では、どの程度の強度が選択されたかということも表示領域34cに表示できるようになっており、撮影者は、画像処理の強度の違いによる+αの延長距離の違いを容易に知ることができる。
【0040】
以上説明した本実施形態の照明装置30を備えたカメラシステム1によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)感度制御部19bがオートISO撮影モードにおいて設定するISO値の設定範囲に対応した調光可能範囲を表示するので、撮影時の調光可能範囲は、必ず表示部34で表示された数値の範囲内に含まれる。したがって、撮影者は、オートISO撮影モードで撮影を行う場合であっても、撮影前に調光可能範囲がどの程度の範囲となるのかを知ることができる。
(2)画像処理部19cの能力を考慮した調光可能範囲を表示できるので、撮影者は、例えば、補正前の調光可能範囲では光量不足となる場合であっても、画像処理によって適正露出の画像を得ることができることが分かる。画像処理を行うことで適正露出の画像が得られることが分かれば、撮影時に、例えば、シャッタスピードを遅くする等の設定変更することなく撮影を行うことができる。
(3)内蔵型の照明光照射部18を使用した場合の調光可能範囲と、外付け型の照明装置を使用した場合の調光可能範囲とを比較できるので、例えば、照明光照射部18を使用した場合に光量不足となるときでも、撮影者は、外付け型の照明装置を使用すれば、適正露出で撮影することができることが分かる。したがって、撮影者は、ISO感度や、シャッタスピードを変更することなく撮影を行うことができる。
【0041】
[変形形態]
本発明の構成は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が適宜可能であって、それらも本発明の技術的範囲内に含まれる。
(1)実施形態の照明装置は、調光可能範囲の上限値、及び、下限値を表示したが、これに限らず、例えば、上限値のみを表示してもよい。
(2)実施形態のカメラシステムは、照明装置の表示部に調光可能範囲を表示したが、これに限らず、例えば、カメラ本体側の表示部(表示部12及び/又は光学ファインダー40内のファインダー内表示部41)に上記実施形態(照明装置側の表示部に表示した内容)と同様の表示を行ってもよい。また、調光可能範囲の演算は、照明装置の演算部が行ったが、これに限らず、例えば、カメラ本体側の制御部が行ってもよい。
(3)実施形態の照明装置は、撮像装置から感度範囲情報を通信によって取得したが、これに限らず、例えば、照明装置に対して感度範囲情報を手動で入力してもよい。
(4)実施形態の照明装置は、カメラ本体に機械的に接続されたが、照明装置とカメラ本体とは、例えば、無線によって接続されるものでもよい。
(5)画像処理部が行う画像処理効果の程度(画像処理の効き具合)をいくつかの段階(例えば、高、低の二段階)に設定できる場合、これらの段階に応じた調光可能範囲を表示できるようにしてもよい。
(6)表示部に、所望の被写体までの距離も、上述の調光可能範囲の表示とともに表示するようにしておけば、その調光可能範囲内にその所望の被写体が存在するか否かが容易に確認できて使い勝手がよい。なお、所望の被写体の距離情報は、AFセンサーのうち選択されているオートフォーカスエリアから得られるセンサー情報、あるいは主要被写体と自動認識した被写体位置に対応するフォーカスエリアから得られるセンサー情報に基づいて得るようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態の照明装置を備えたカメラシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す照明装置に備えられた表示部の表示画面の一例を示す図である。
【図3】図1に示す照明装置に備えられた制御部が行う表示制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1 カメラシステム : 10 カメラ本体 : 30 照明装置 : 33 表示部 : 36 制御部 : 36a 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部の撮像感度を、撮影条件に応じて所定の設定範囲内で自動調整する感度制御部を備える撮像装置を用いた撮影時に使用され、照明光を照射する照明装置であって、
表示部と、
前記感度制御部の前記所定の設定範囲に関する感度範囲情報に基づいて、調光可能範囲の上限値及び下限値の少なくとも一方を演算して前記表示部に表示させる制御部とを備えること
を特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置において、
前記撮像装置と通信を行うことによって前記感度範囲情報をこの撮像装置から取得する通信部を備えること
を特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項1に記載の照明装置において、
前記制御部は、前記撮像装置に備えられるとともに前記撮像部の出力に基づいて生成された画像データの輝度値を補正する画像処理部の補正能力に関する補正能力情報に基づいて、前記調光可能範囲を補正して表示すること
を特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項3に記載の照明装置において、
前記撮像装置と通信を行うことによって前記感度範囲情報及び前記補正能力情報をこの撮像装置から取得する通信部を備えること
を特徴とする照明装置。
【請求項5】
撮像部と、撮影条件に応じて前記撮像部の撮像感度を所定の設定範囲内で自動調整する感度制御部と、前記撮像部の出力に基づいて生成された画像データの輝度値を補正する画像処理部とを備える撮像装置に対して接続可能に設けられた照明装置であって、
表示部と、
前記感度制御部の前記所定の設定範囲に関する感度範囲情報、及び、画像処理部の補正能力に関する補正能力情報の少なくとも一方に基づいて、調光可能範囲の上限値及び下限値の少なくとも一方を演算して前記表示部に表示させる制御部とを備えること
を特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項5に記載の照明装置において、
前記撮像装置と通信を行うことによって前記感度範囲情報又は前記補正能力情報をこの撮像装置から取得する通信部を備えること
を特徴とする照明装置。
【請求項7】
撮影用の照明光を照射する外付型照明装置を使用することができる撮像装置であって、
撮影条件に応じて撮像部の撮像感度を所定の設定範囲内で自動調整する感度制御部と、
表示部と、
前外付型照明装置と通信を行って前記外付型照明装置からガイドナンバー情報を含む照明装置情報を取得する通信部と、
前記感度制御部の前記所定の設定範囲に関する感度範囲情報及び前記照明装置情報に基づいて、前記外付型照明装置の調光可能範囲の上限値及び下限値の少なくとも一方を演算して前記表示部に表示させる制御部と
を備える撮像装置。
【請求項8】
撮影条件に応じて撮像部の撮像感度を所定の設定範囲内で調整する感度制御部と、
表示部と、
内蔵型照明光照射部と、
前記感度制御部の前記設定範囲に関する感度範囲情報に基づいて、前記内蔵型照明光照射部の調光可能範囲の上限値及び下限値の少なくとも一方を演算して前記表示部に表示させる制御部と
を備える撮像装置。
【請求項9】
請求項8に記載の撮像装置であって、
該撮像装置に使用可能な外付型照明装置に関する情報を記録する記録部を備え、
前記制御部は、前記記録部に記録された情報に基づいて前記外付型照明装置の調光可能範囲を演算し、この演算結果と前記内蔵型照明光照射部の調光可能範囲とを比較可能に前記表示部に表示させること
を備える撮像装置。
【請求項10】
請求項5から請求項9までのいずれか1項に記載の撮像装置において、
前記撮像部の出力に基づいて生成された画像データの輝度値を補正する画像処理部を備え、
前記制御部は、前記画像処理部の補正能力に応じて前記調光可能範囲を補正して表示すること
を特徴とする撮像装置。
【請求項11】
カメラ本体と、該カメラ本体を用いた撮影時に撮影用の照明光を照射する照明装置とからなるカメラシステムであって、
前記カメラ本体に備えられ、撮影条件に応じて撮像部の撮像感度を所定の設定範囲内で自動設定する感度制御部と、
表示部と、
前記感度制御部の前記所定の設定範囲に関する感度範囲情報に基づいて前記照明装置の調光可能範囲の上限値及び下限値の少なくとも一方を演算して前記表示部に表示させる制御部と
を備えるカメラシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のカメラシステムにおいて、
前記照明装置は、前記カメラ本体と通信を行うことによって前記感度範囲情報を前記カメラ本体から取得する通信部を備え、
前記制御部及び前記表示部は、前記照明装置に設けられること
を特徴とするカメラシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のカメラシステムにおいて、
前記カメラ本体は、前記撮像部の出力に基づいて生成された画像データの輝度値を補正する画像処理部を備え、
前記通信部は、前記カメラ本体と通信を行うことによって前記画像処理部の補正能力情報を前記カメラ本体から取得し、
前記制御部は、前記補正能力情報に基づいて前記調光可能範囲を補正して表示すること
を特徴とするカメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−42273(P2009−42273A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204033(P2007−204033)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】