説明

照明装置及び投射型表示装置

【課題】従来の照明装置に比べて光の損失を低減することで、高い照明効率を有し明るい照明装置を実現する。
【解決手段】本発明は、光源4と該光源4から出射した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系3とで構成される光源部5と、光束の偏光方向を変換する位相変調部2と、偏光方向の異なる光束を透過光と反射光に分離する偏光分離部1とを備えた照明装置であって、前記位相変調部2は、光源部5の反射光学系で反射された全光束の断面積6の略半分の部分6Aを覆うように配置されており、光源部5から発した光束が位相変調部2と偏光分離部1の両方を通って照明光として出射される光路A1〜A10と、光源部5から発した光束が位相変調部2を通らずに偏光分離部1のみを通って照明光として出射される光路B1〜B3とを有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高出力な照明を必要とする投射型表示装置や露光装置の照明系などに応用される照明装置に関し、特に液晶パネルなどの矩形状の被投射体を照明するのに適した照明装置、及びこの照明装置を用いた液晶プロジェクタ等の投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高出力な照明を必要とする投射型表示装置や露光装置の照明系などに応用される照明装置(光源装置)としては、従来より種々のものが提案されている。
例えば特許文献1(特許第2720730号公報)には、液晶表示パネルと、光源ランプおよびこの光源ランプからの放射光を液晶表示パネルに向けて反射させるリフレクタとからなる光源とを備えた液晶表示装置において、前記光源と液晶表示パネルとの間に、前記光源からの照射光のうちP偏光成分の光を透過させ、S偏光成分の光は前記光源側に反射させる偏光ビームスプリッタを配置するとともに、この偏光ビームスプリッタと前記光源との間に、透過光を旋光させる旋光体を設けたことを特徴とする液晶表示装置が記載されている。
より具体的に述べると、この従来技術では、図14(公報から転載した図面)に示すように、液晶表示パネル1と、光源ランプ4およびこの光源ランプ4からの放射光を液晶表示パネル1に向けて反射させるリフレクタ5とからなる光源3を備え、液晶表示パネル1との間に、光源3からの照射光のうちP偏光成分の光を透過させ、S偏光成分の光は光源側に反射させる偏光ビームスプリッタ8(8a,8b,8c)を配置するとともに、この偏光ビームスプリッタ8と前記光源3との間に、透過光を旋光させる旋光体9を設けた技術が開示されている。また、特許文献1の明細書中には、旋光体9は1/4波長板(1/4λ板)であることが開示されており、1/4λ板9を往復2回通過することにより、偏光が90度回転されて、偏光ビームスプリッタ8を通過していく。また、この1/4λ板9は光源3の前面を覆っており、光源ランプ4から発してリフレクタ5で反射され、光源3から出射する光束の全てが通過するようになっており、光源3を出射した光束の全てが1/4λ板9と偏光ビームスプリッタ8の両方を通過するようになっている。
【0003】
次に、特許文献2(特許第3986136号公報)には、第1および第2の光源ランプと、これら第1および第2の光源ランプからの出射光束の偏光方向を揃えて偏光光束として出射する偏光変換光学系とを有する偏光光源装置が記載されている。
この偏光光源装置では、図15(公報から転載した図面)に示すように、光源2eから発した光束はランプ反射鏡2f(またはランプ反射鏡2fと反射板2b)で反射されて射出開口2cから出射し、1/4λ板5を通過した後、偏光分離膜7で透過光(P偏光)と反射光(S偏光)に分離される。反射光(S偏光)はコンデンサーレンズ15に向かい、照明光となる。また、透過光は、もう一対の偏光分離膜8を透過し、1/4λ板6を通過し、もう一つのランプ反射鏡3fと反射板3bで反射され、再び、ランプ反射鏡3fで反射し、再び1/4λ板6を通過して90度偏光を回転されて偏光分離膜8で反射し、コンデンサーレンズ15に向かい、照明光として利用される。
【0004】
【特許文献1】特許第2720730号公報
【特許文献2】特許第3986136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の従来技術では、1/4λ板9は光源3の前面を覆っているため、光源ランプ4から発してリフレクタ5で反射され、光源3から出射する光束の全てが1/4λ板9を1回通過してから偏光ビームスプリッタ8に入射するようになっており、偏光ビームスプリッタ8を透過する光束も1/4λ板9と偏光ビームスプリッタ8を通過してから照明光として出射するので、1/4λ板9と偏光ビームスプリッタ8の2つの界面を透過して出射することになり、少なからず光の損失がある。また、偏光ビームスプリッタ8で反射される光は、さらに1/4λ板を2回通過して偏光ビームスプリッタ8に再度入射することになる。すなわち、1/4λ板9を3回通過し、偏光ビームスプリッタ8の界面を3回通過することになり、6つの界面を通過するので、偏光変換された光束は界面ロスにより、光量低下を起している。
また、リフレクター5に入射する光線のうち、紙面に水平、あるいは垂直でない角度からの入射光の偏光は回転してしまうので、1/4λ板9による偏光状態が変わらない光線があり、偏光ビームスプリッタ8を透過して得られる直線偏光を得る効率を落とすこともあった。
【0006】
特許文献2に記載の従来技術では、第1の光源ランプ2の光源2eから発した光束はランプ反射鏡2f(またはランプ反射鏡2fと反射板2b)で反射されて射出開口2cから出射し、1/4λ板5を通過した後、偏光分離膜7で透過光(P偏光)と反射光(S偏光)に分離される。従って、第1の光源ランプ2から出射する光束の全てが1度は1/4λ板5と偏光分離膜7を通過するので、偏光分離膜7で反射されて照明光として出射する光束も少なからず光の損失がある(他方側の第2の光源ランプ3から出射した光束も同様)。
また、偏光分離膜7を透過した光束が、他方の光源ランプ3のリフレクタ3fを往復し、リフレクタ前面に配置された1/4λ板6を往復2回通過することで偏光を回転している。従って、第1の光源ランプ2から出射され偏光変換される光束は、1/4λ板5を1回,1/4λ板6を2回、リフレクタ3fを2回(反射回数は反射板3bでの反射を含むと5回)、偏光分離膜7を1回、偏光分離膜8を2回通過してくるので、偏光変換された光束は界面ロスにより、光量低下を起している(他方側の第2の光源ランプ3から出射した光束も同様)。
また、1/4λ板を2回往復して偏光を90度回転させているが、1/4λ板の往路と復路の間に、リフレクターを2回通過(反射回数は反射板3bでの反射を含むと5回)しているので、光量ロスや、偏光の乱れが多少なりとも存在し、照明効率を低下させる要因となっている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来の照明装置に比べて光の損失を低減することで、高い照明効率を有し明るい照明装置を提供すること、その照明装置を用いて明るい表示画像を得ることができる投射型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明では以下のような解決手段を採っている。
本発明の第1の手段は、光源と該光源から出射した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系とで構成される光源部と、光束の偏光方向を変換する位相変調部と、偏光方向の異なる光束を透過光と反射光に分離する偏光分離部と、を備えた照明装置であって、前記位相変調部は、前記光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、前記光源部から発した光束が前記位相変調部と前記偏光分離部の両方を通って照明光として出射される光路と、前記光源部から発した光束が前記位相変調部を通らずに前記偏光分離部のみを通って照明光として出射される光路とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の手段は、第1の手段の照明装置において、前記位相変調部は、略90度偏光方向を変換する位相変調素子からなり、前記偏光分離部は、偏光方向が互いに直交する2つの偏光を透過光と反射光に分離する偏光分離素子であり、前記光源部から発した光束の略半分は、前記位相変調素子に達してから前記偏光分離素子に達して透過光と反射光に偏光分離され、他方の略半分の光束は前記偏光分離素子に達して透過光と反射光に偏光分離され、前記偏光分離素子によって偏光分離された光束のうち、一方の偏光成分の光束は照明光として出射し、他方の偏光成分の光束は前記光源部に戻して前記反射光学系により再帰反射した後、照明光として利用することを特徴とする。
また、本発明の第3の手段は、第2の手段の照明装置において、前記偏光分離素子は、2つの偏光分離面が互いに90度の角度になした偏光分離素子対であることを特徴とする。
さらに本発明の第4の手段は、第2または第3の手段の照明装置において、前記偏光分離素子として、金線格子型偏光分離素子を用いたことを特徴とする。
【0010】
本発明の第5の手段は、第1の手段の照明装置において、光源と該光源から出射した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系とで構成される2つの光源部を有し、2つの光源部は互いに対向して配置されており、前記位相変調部は、略90度偏光方向を変換する位相変調素子からなり、一方の光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、前記偏光分離部は、偏光方向が互いに直交する2つの偏光を透過光と反射光に分離する偏光分離素子であり、前記2つの光源部の間に設けられ、該2つの光源部間の全光束の略半分が通過する位置に配置され、前記一方の光源部から発する光束は、前記位相変調素子を通って前記偏光分離素子に達する光束と、前記位相変調素子を通らずに前記偏光分離素子に達する光束とを有するとともに、前記偏光分離素子によって偏光分離された光束のうち、一方の偏光成分の光束は、照明光として出射し、他方の偏光成分の光束は、前記2つの光源部の反射光学系により再帰反射して照明光として利用することを特徴とする。
また、本発明の第6の手段は、第5の手段の照明装置において、前記2つの光源部の反射光学系は、同種の反射光学系であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第7の手段は、第1の手段の照明装置において、前記光源部に対向する位置に配置された反射光学素子を有し、前記位相変調部は、略90度偏光方向を変換する位相変調素子からなり、前記光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、前記偏光分離部は、偏光方向が互いに直交する2つの偏光を透過光と反射光に分離する偏光分離素子であり、前記光源部と前記反射光学素子の間に設けられ、該光源部からの全光束の略半分が通過する位置に配置され、前記光源部から発する光束は、前記位相変調素子を通って前記偏光分離素子に達する光束と、前記位相変調素子を通らずに前記偏光分離素子に達する光束とを有するとともに、前記偏光分離素子によって偏光分離された光束のうち、一方の偏光成分の光束は、照明光として出射し、他方の偏光成分の光束は、前記反射光学素子と前記光源部の反射光学系により再帰反射して照明光として利用することを特徴とする。
【0012】
本発明の第8の手段は、第5または第6の手段の照明装置において、前記2つの光源部(以下、第1、第2の光源部と言う)に加えて、光源と該光源から出射した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系とで構成される第3の光源部と、略90度偏光方向を変換する第2の位相変調素子を有し、前記第3の光源部は前記第1、第2の光源部間の光路に直交する方向で前記偏光分離素子に対向する位置に設けられ、該第3の光源部から発する光束は前記偏光分離素子に入射されるように配置され、前記第2の位相変調素子は、前記第3の光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように前記偏光分離素子との間に配置されていることを特徴とする。
また、本発明の第9の手段は、第8の手段の照明装置において、前記第3の光源部から発する光束は、前記第2の位相変調素子を通過してから前記偏光分離素子に達する光束と、前記第2の位相変調素子を通過せずに前記偏光分離素子に達する光束とを有しており、前記偏光分離素子によって偏光分離された光束のうち、一方の偏光成分の光束は照明光として前記第1、第2の光源部からの光束と合せて出射し、他方の偏光成分の光束は第3の光源部に直接または前記第2の位相変調素子を介して戻し、第3の光源部の反射光学系により再帰反射して照明光として利用することを特徴とする。
【0013】
本発明の第10の手段は、第5〜第9のいずれか1つの手段の照明装置において、前記偏光分離素子は、2つの偏光分離面が互いに90度の角度になした偏光分離素子対であることを特徴とする。
また、本発明の第11の手段は、第5〜第9のいずれか1つの手段の照明装置において、前記偏光分離素子として、2つの偏光分離面を互いに90度の角度になした金線格子型偏光分離素子を用いたことを特徴とする。
【0014】
本発明の第12の手段は、第1の手段の照明装置において、前記位相変調部は、略45度偏光方向を変換する位相変調素子と、該位相変調素子の光源部側に配置された第1および第2の平面反射部とを有し、該第1および第2の平面反射部と前記位相変調素子は、前記光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、前記偏光分離部は、互いに90度の角度になした2つの偏光分離面を有し、偏光方向が互いに直交する2つの偏光を透過光と反射光に分離する偏光分離素子対であり、前記偏光分離素子対は、前記光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積を覆うようにして、前記第1の平面反射部と第2の平面反射部と位相変調素子を間に介して前記光源部の出射前面に配置されていることを特徴とする。
また、本発明の第13の手段は、第12の手段の照明装置において、前記光源部の光源から発した光束の略半分の光束は、前記第1の平面反射部で反射されて光源部に戻され、他方の略半分の光束と重ね合わせられて出射され、該光源部から出射された光束は前記偏光分離素子対に達して一方の偏光分離面で透過光と反射光に偏光分離され、偏光分離面を透過した偏光成分の光束は照明光として出射し、偏光分離面で反射された偏光成分の光束は前記偏光分離素子対内の他方の偏光分離面で反射されて前記位相変調素子に達し、該位相変調素子を透過して前記第2の平面反射部で反射されて再度位相変調素子を透過し、偏光方向が略90度回転されて前記偏光分離素子に戻され、前記偏光分離面を透過して照明光として出射されることを特徴とする。
【0015】
本発明の第14の手段は、第5または第6の手段の照明装置において、前記2つの光源部(以下、第1、第2の光源部と言う)に加えて、光源と該光源から出射した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系とで構成される第3の光源部と、第2の位相変調部を有し、前記第2の位相変調部は、略45度偏光方向を変換する位相変調素子と、該位相変調素子の光源部側に配置された第1および第2の平面反射部とを有し、該第1および第2の平面反射部と前記位相変調素子は、前記光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、前記第3の光源部は前記第1、第2の光源部間の光路に直交する方向で前記偏光分離素子に対向する位置に設けられ、該第3の光源部から発する光束は前記偏光分離素子に入射されるように配置され、前記偏光分離素子は、互いに90度の角度になした2つの偏光分離面を有し、偏光方向が互いに直交する2つの偏光を透過光と反射光に分離する偏光分離素子対であり、前記偏光分離素子対は、前記第3の光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積を覆うようにして、前記第1の平面反射部と第2の平面反射部と位相変調素子を間に介して前記第3の光源部の出射前面に配置されていることを特徴とする。
また、本発明の第15の手段は、第14の手段の照明装置において、前記第3の光源部の光源から発した光束の略半分の光束は、前記第1の平面反射部で反射されて第3の光源部に戻され、他方の略半分の光束と重ね合わせられて出射され、該第3の光源部から出射された光束は前記偏光分離素子対に達して一方の偏光分離面で透過光と反射光に偏光分離され、偏光分離面を透過した偏光成分の光束は照明光として前記第1、第2の光源部からの光束と合せて出射し、前記偏光分離面で反射された偏光成分の光束は前記偏光分離素子対内の他方の偏光分離面で反射されて前記位相変調素子に達し、該位相変調素子を透過して前記第2の平面反射部で反射されて再度位相変調素子を透過し、偏光方向が略90度回転されて前記偏光分離素子対に戻され、前記偏光分離面を透過して照明光として出射されることを特徴とする。
【0016】
本発明の第16の手段は、第12〜第15のいずれか1つの手段の照明装置において、前記第1および第2の反射部は、同一部材の両面に形成したことを特徴とする。
また、本発明の第17の手段は、第12〜第15のいずれか1つの手段の照明装置において、前記偏光分離素子対は、2つの偏光分離面を互いに90度の角度になした、金線格子型偏光分離素子であることを特徴とする。
【0017】
本発明の第18の手段は、投射型表示装置であって、第1〜第17のいずれか1つの手段の照明装置と、表示画像を形成する画像形成装置と、該画像形成装置で形成された画像を投射して表示するための光学系とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の手段の照明装置では、位相変調部は、光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、光源部から発した光束が位相変調部と偏光分離部の両方を通って照明光として出射される光路と、光源部から発した光束が位相変調部を通らずに偏光分離部のみを通って照明光として出射される光路とを有することにより、簡易な構成で偏光変換を実現し、従来の照明装置に比べて光の損失を低減することで、高い照明効率を有する明るい照明装置を実現することができる。
【0019】
本発明の第2〜第4、第7の手段の照明装置では、簡易な構成により偏光変換を実現し、偏光方向の揃った直線偏光を有する照明光が得られる、より低コストな照明装置を得ることができる。また、通過界面、反射面の通過回数を従来技術より少なくすることができ、界面での反射、透過の際の光量ロスを抑え、明るく、高い照明効率を有する照明光を得ることができる。
【0020】
本発明の第5、第6の手段の照明装置では、2つの光源部を用いて2灯合成と偏光変換を両立した照明光学系を実現し、偏光方向の揃ったより明るい照明光を得ることができる照明装置を提供することができる。
また、本発明の第8〜11の手段の照明装置では、3つの光源部を用いて3灯合成を行い、より明るい照明光を得ることができる照明装置を提供することができる。
【0021】
本発明の第12、第13の手段の照明装置では、簡易な構成により偏光変換を実現し、偏光方向の揃った直線偏光を有する照明光が得られる、より低コストな照明装置を得ることができる。また、通過界面、反射面の通過回数を従来技術より少なくすることができ、界面での反射、透過の際の光量ロスを抑え、明るく、高い照明効率を有する照明光を得ることができる。
また、本発明の第14、第15の手段の照明装置では、3つの光源部を用いて3灯合成を行い、より明るい照明光を得ることができる照明装置を提供することができる。
さらに本発明の第16の手段の照明装置では、第12〜第15のいずれか1つの手段の効果に加え、低コスト化を図ることができる。
【0022】
本発明の第18の手段の投射型表示装置では、第1〜第17のいずれか1つの手段の照明装置を用いているので、照明効率が高く、明るい表示画像を得ることができる投射型表示装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、光源と該光源から出射した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系とで構成される光源部と、光束の偏光方向を変換する位相変調部と、偏光方向の異なる光束を透過光と反射光に分離する偏光分離部とを備えた照明装置であって、位相変調部は、光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、光源部から発した光束が位相変調部と偏光分離部の両方を通って照明光として出射される光路と、光源部から発した光束が位相変調部を通らずに偏光分離部のみを通って照明光として出射される光路とを有する構成である。以下、本発明を図示の実施例に基いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明に係る照明装置の一例として、図1を用いて本発明の基本的な特徴部分について説明する。
図1の照明装置は、光源4と該光源4から出射した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系(例えばリフレクタ)3とで構成される光源部5と、光束の偏光方向を変換する位相変調部(例えば略90度偏光方向を変換する位相変調素子(1/2λ板に相当))2と、偏光方向の異なる光束を透過光と反射光に分離する偏光分離部(例えば90度の角度になした2つの偏光分離面1a,1bを有する偏光分離素子対)1とを備えた構成であり、図1(c)に示すように、位相変調素子2が、反射光学系(リフレクタ)3から発する全光束6の断面積の約半分(6A)を覆う構成になっている点である。
【0025】
この位相変調素子2が全光束断面積の約半分になることで、光源部5から発する光束は、図1(a)に示すように、偏光分離素子対1に達する前に位相変調素子2に達する光束Aと、図1(b)に示すように、位相変調素子2に達する前に偏光分離素子対1に達する光束Bとに分けられる。
すなわち図1(a)において、光源4から出射した光束A1は、反射光学系(リフレクタ)3で反射され、反射光束A2は位相変調素子2に達し、位相変調素子2を通過した光束A3は偏光分離素子対1の偏光分離面1aにより、透過光(P偏光)と反射光(S偏光)に分離され、透過光(P偏光)A4は照明光として出射し、反射光(S偏光)A5は他方の偏光分離面1bで反射されて光源側に戻る光束A6となり、反射光学系3で反射され、反射光束A7,A8は再び位相変調素子2に達する。そして再度位相変調素子2に達するS偏光光束は、位相変調素子(1/2λ板に相当)2を通過して90度偏光が回転し、P偏光となり、このP偏光の光束A9は偏光分離素子対1の偏光分離面1aを透過し、透過光(P偏光)A10は照明光として出射する。
【0026】
また、図1(b)において、光源4から出射した光束B1は、反射光学系(リフレクタ)3で反射され、反射光束B2は位相変調素子を通過せずに偏光分離素子対1に達し、偏光分離面1bにより、透過光(P偏光)と反射光(S偏光)に分離され、透過光(P偏光)B3は照明光として出射し、反射光(S偏光)B4は、他方の偏光分離面1aで反射されて光源側に戻る光束B5となり、位相変調素子2を透過してP偏光に変換された後、このP偏光の光束B6は、反射光学系3で反射され、反射光束B7,B8は再び偏光分離素子対1に達し、偏光分離面1bを透過して、透過光(P偏光)B9は照明光として出射する。
【0027】
本発明に係る照明装置は、図1に示したような構成、動作を有するので、次のような優れた効果が得られる。
(1)反射光学系(リフレクタに相当)から発する光線の大部分は、位相変調素子の通過回数が0回あるいは1回、多くても2回の通過だけで、直線偏光となり、照明光として得られる光量が多く得られる。また、位相変調素子の表面反射の損失を考慮すると、1割、あるいはそれ以上の向上が見込める。
(2)しかも、有効な照明光は偏光を揃えられているので、特に液晶を利用して光の出射の制御を行うライトバルブの照明光には効率の高い照明光を得ることができる。
(3)従来技術の構成より、位相変調素子の通過回数が減るために、界面ロスが低減することに加え、位相変調素子の光損傷による波長板の機能低下を抑えることができる。
(4)つまり、光量の損失をできるだけなくしつつ、偏光変換の効率も高くなることと、高い信頼性を得ることができる。
【0028】
このような本発明の照明装置と、前述の特許文献1に記載の従来技術の照明装置との構成の相違点は、従来技術(図14)では、1/4波長板(9)の光路面積の大きさが、放物面リフレクタ(5)から発する全光束の断面積と同一である点(偏光ビームスプリッタ(8)の光路面積と同一である点)に対して、本発明では、位相変調素子2が、反射光学系(リフレクタに相当)3から発する全光束の断面積の約半分になっている点が異なる。このため、特許文献1に記載の従来技術では、光源ランプ(4)から発してリフレクタ(5)で反射され、光源(3)から出射する光束の全てが1/4波長板(9)を1回通過してから偏光ビームスプリッタ(8)に入射するようになっており、偏光ビームスプリッタ(8)を透過する光束も1/4λ板9と偏光ビームスプリッタ8を通過してから照明光として出射するので、1/4λ板9と偏光ビームスプリッタ8の2つの界面を透過して出射することになり、少なからず光の損失がある。また、偏光ビームスプリッタ(8)で反射される光は、さらに1/4波長板を2回通過して偏光ビームスプリッタに再度入射することになる。すなわち1/4波長板を3回通過し、偏光ビームスプリッタの界面を3回通過することになり、6つの界面を通過するので、偏光変換された光束は界面ロスにより、光量低下を起している。
【0029】
これに対して、本発明の図1に示した構成の照明装置では、上記のように、位相変調素子2の通過回数が0回あるいは1回、多くても2回の通過だけで、直線偏光となり、光量損失が少なく、照明光として得られる光量が多くなる。これらの違いにより、上記のような優れた効果を生じます。
【0030】
[実施例1−1]
次に図1を参照して本実施例の照明装置の具体的な構成を説明する。
図1(a),(b)は照明装置の光軸に沿った断面図であり、(a)は光源左側の出射光束、(c)は光源右側の出射光束を図示してある。図1(c)は図1(a)の上方から見た場合の光源部に対する位相変調素子の配置位置を示す図であり(説明のため偏光分離素子対は図示を省略している)、符号6は光源部から発する全光束の断面、6Aは位相変調素子側の半分の光束の断面、6Bは位相変調素子が無い側の半分の光束の断面である。
本実施例の照明装置の構成は、光源4と該光源から発した光束(A1、B1など)を一方向に取り出す反射光学系3とで構成される光源部5と、偏光分離素子対1と、略90度偏光方向を変換する位相変調素子2とで構成される照明装置であって、位相変調素子2が、反射光学系3から発する全光束の断面6の略半分6Aだけ覆うように偏光分離素子対1と反射光学系3の間に配置されている。
【0031】
本実施例の位相変調素子2は、常光線と異常光線とで屈折率が異なり、位相遅延が生じる副屈折を生じさせる材料が用いられる。一般には位相差板といわれている。
常光線と異常光線の屈折率の差や、光の伝播速度の差により、光の振動方向を回転できる。
位相変調素子2としては、いわゆる1/2波長板(1/2λ板)が好適である。1/2λ板は、雲母や、水晶波長板、高分子フィルムで作成されている。
【0032】
本実施例で使用される光源4は、特に限定されることなく、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプなどが用いられる。あるいは、LED光源、LD光源などの光源も特に限定されることなく使用できる。
光源4から発した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系3においては、例えば、回転放物面鏡や、回転楕円鏡などのリフレクタ(反射光学系)などが使用できる。特に回転放物面鏡などを使用する場合は、その焦点位置に光源4を配置すると、ほぼ平行光となって照明光束を得られるという特性がある。
また、回転楕円鏡を使用する場合は、2つの焦点を有することとなるが、第一の焦点位置に光源を配置すると、第二の焦点位置に集光する特性があり、集光レンズなどを用いて、ほぼ平行光束を得ることができる(図示せず)。
【0033】
本実施例で使用される偏光分離素子1は、図1に示されるように、複数の偏光分離面1a、1bで構成される事が望ましい。
偏光分離特性が所望の特性を有する範囲であれば、入射光が45度とならなくてもよい(互いに90度出なくてもよい)。2回反射することで、照明装置の反射光学系へと戻るような角度で対峙配置される。
【0034】
さらに正確に再帰反射させることを目的として、特に互いに90度の反射面をなすような2つの偏光分離面1a,1bからなることで、より高い効率で戻り光を得ることができる。以下、2つの偏光分離面で構成される偏光分離素子対1として説明する。
偏光分離素子対1の偏光分離部(偏光分離面)1a,1bは、いわゆる偏光ビームスプリッタを適用できる。偏光ビームスプリッタの機能としては、電界成分が、入射面に平行な振動成分である(P偏光)と垂直な振動成分である(S偏光)成分を分離する機能を有している。具体的には三角柱状のプリズムの斜面に、偏光分離膜となる多層膜を形成し、同様な三角柱状のプリズムを張り合わせてキューブ状になしたいわゆる偏光ビームプリズムなどが用いられる。偏光分離膜は、誘電膜を真空プロセスにより成膜して作成されるのが一般的である。
【0035】
次に図1に示す照明装置の動作を説明する。
ここでは、図1(a)に記載した左側の光束(A1〜A10の光路で示した光束)と、図1(b)に示す右側の光束(B1〜B9の光路で示した光束)を代表して光学的な作用動作について説明する。
図1(a)において、光源4から発した左側の光束A1は、反射光学系3で反射され位相変調素子2に向かう(A2)。A2はランダムな偏光を有している。位相変調素子2を通過後のA3の光束は、依然ランダムな偏光のままであるが、この光束が偏光分離素子対1の偏光分離面1aに達し、この偏光分離面1aにより、透過光(P偏光)A4と反射光(S偏光)A5に分離される。透過光(P偏光)A4は照明光として出射され利用される。反射光(S偏光)A5はもう一方の偏光分離面1bに到達する。この反射光A5は、S偏光となっているので、大部分は偏光分離面1bで反射光束A6となり、再び反射光学系3に到達する。そして反射光学系3で反射された光束A7、A8は再び位相変調素子2を通過する。このとき、A8の光束はS偏光であるので、位相変調素子2を通過した光束A9はP偏光に回転している。この光束A9は再び、偏光分離面1aに到達するが、P偏光となっているので大部分が透過光となり、有効な照明光として利用される。
【0036】
次に、図1(b)において、光源4から発した右側の光束B1について説明する。光束B1は反射光学系3により反射されて位相変調素子を介さずに偏光分離素子1の偏光分離面1bに向かう光束B2となる。B2の光束は無偏光であるが、偏光分離面1bで透過光(P偏光)B3と、反射光(S偏光)B4となる。反射光B4は、もう一方の偏光分離面1aで反射し、位相変調素子2に向かい、それを通過したB6の光束は、S偏光からP偏光に回転される。P偏光に変換された光束B6は反射光学系3で反射され、B7,B8を経て、偏光分離面1bをP偏光のまま通過し、B9の光束となって照明光として利用される。
【0037】
前述の特許文献1に記載の従来技術においては、光源から発する全光束が1/4λ板を透過していたが、本実施例では、1/2λを採用する点で異なることと、光源部5の半分の光束が位相変調素子2を通過して偏光分離素子対1に至り、残りの半分は、位相変調素子を介さないで偏光分離素子対1に進む点で大きく異なる。
特許文献1では、おおくて波長板を3回通過する光線が発生するが、本実施では、0回あるいは1回、多くても2回の通過だけで、直線偏光に変換された照明光となる。つまり、上記のような構成を採用することにより、位相変調素子の通過回数を極力少なくすることが可能となった。
【0038】
ここで、本実施例の照明装置の効果の定量化を試みる。
説明を簡単にするため、最も損失が大きい位相変調素子の表面反射による光の損失量を見積もってみる。位相変調素子自体の透過率は、反射防止コートなしでは、概略4%の反射(両面で8%)であるので、92%の透過率を有していると仮定する。また、比較のため偏光分離面のP偏光、S偏光の分離は50:50とする。また、反射光学系での損失は割愛する。
光源4からの光束のうち半分の50%が光束Aで、これが1回だけ位相変調素子2を通過する(A2、A3の軌跡)ので、50%×0.92が偏光分離面1aに到達する。ここで、透過光と反射光に2分割され、一方は照明光とし、残り半分(50%×0.92)/2は、再帰光として位相変調素子2を2回目通過し、A8〜A10の軌跡をとるので、(50%×0.92)/2×0.92であり、その合計、
50%×0.92/2+(50%×0.92)/2×0.92=IA
が左側のAの光量比である。
【0039】
Bの光量比IBは、光源4からの光束の半分は、位相変調素子を通過しないので、B3に相当する光量比は50%/2となる。
残りの50%−50%/2=50%/2は、一回だけ位相変調素子2を通過するので、50%/2×0.92となる。これがB9となって照明光となる。
すなわちBの光量比は、
50%/2+50%/2×0.92=IB
となる
そして、照明光の全光量は、IAとIBを合算し、IA+IB=92.16%となる。
【0040】
対して、特許文献1に記載の従来技術だと、
100%×0.92×1/2+(100%×0.92×1/2)×0.92×0.92
=84.93%
となり、本実施例の構成の92.16%と比べると、明らかに損失が大きいことがわかる。
偏光分離面となる偏光分離膜の特性としては、一般にはP偏光透過特性より、S偏光反射特性のほうが高く、つまり、波長板を通過するのは、S偏光が多いため、実際上、さらにこの値は開く。すなわち、本実施例においては、従来技術の1.1倍以上の光量アップ効果が期待される。また、後述する2灯の場合、1.7倍程度の光量アップ効果が期待される。
【0041】
以上の構成、作用により、以下に掲げた優れた効果を奏することができる。
反射射光学系(リフレクタに相当)3から発する光束の大部分は、位相変調素子2の通過回数が0回あるいは1回、多くても2回の通過だけで、直線偏光となり、照明光として得られる光量が多く得られる。また、位相変調素子の表面反射の損失を考慮すると、1割、あるいはそれ以上の向上が見込める。
しかも、有効な照明光は偏光を揃えられているので、特に液晶を利用して光の出射の制御を行うライトバルブの照明光には効率の高い照明光を得ることができる。
また、従来構成より、位相変調素子の通過回数が減るために、界面ロスが低減することに加え、位相変調素子の光損傷による波長板の機能低下を抑えることができる。つまり、光量の損失をできるだけなくしつつ、偏光変換の効率も高くなることと、高い信頼性を得ることができる。
【0042】
なお、図1に示した実施例1の構成では、特に偏光分離素子1の偏光分離面1a、1bの角度が互いに90度となるようにしたほうがよい。
つまり、図1の構成で、さらに正確に再帰反射させることを目的として、偏光分離素子対1が、互いに90度の反射面をなすような2つの偏光分離面1a、1bからなることで、より高い効率で戻り光を得ることができる。つまり光源部5から発する光束の平行度を保ったまま偏光分離素子1の偏光分離面1a、1bで反射した光束を光源部5の反射光学系3へと戻すことができる。
このような構成にすることで、光源部5から発する光束の平行度を保ったまま光源部5の反射光学系3へと戻すことが可能となるので、偏光分離素子1が多少回転しても、照明光束の平行度は保たれる。したがって、表示装置などに、本照明装置を適用したときに、効率のより照明光学系を構築できる。
また、図示はしないが、偏光分離面1aで反射して偏光分離素子対1からの出射面1cに位相変調素子8を密着させても良い。このような構成を採用することで、界面での光量ロスをより低減することが可能となる。密着とは、偏光分離素子対1の屈折率と位相変調素子2の屈折率に近い屈折率を有するバッファ層を設けることにより実現できる。少なくとも空気の屈折率1の時よりも界面の光量ロスは低減できる。
【0043】
[実施例1−2]
第1の実施例の別の構成例としては、実施例1−1で説明した偏光分離素子1を、金線格子型偏光分離素子(ワイヤーグリッドタイプの平板偏光分離素子)とするものである。
図2はその一例を示す構成、動作の説明図であり、偏光分離素子1’は金線格子型偏光分離素子(ワイヤーグリッド(WG)タイプの平板偏光分離素子)である。
作用動作としては、図2に4パターンあり、光源4から発した左側の光束のうち、(a1)の1’(WG)で透過する光束(P偏光)と、(a2)の反射する光束(S偏光)、光源4から発した右側の光束のうち、(b1)の1’(WG)で透過する光束(P偏光)と、(b2)の反射する光束(S偏光)について説明する。
【0044】
図2(a1)に示すように、光源4から出射した左側の光束C1は反射光学系3で反射され、位相変調素子2に向かう光束C2となる。C2は無偏光であるので、位相変調素子2を通過した光束C3は無偏光のままである。C3は、金線格子型偏光分離素子1’(WG)によって、P偏光成分が透過光(C4)として得られる。
図2(a2)に示すように、金線格子型偏光分離素子1’(WG)で反射したS偏光の反射光C5は、再び位相変調素子2を通過し、P偏光に変換されて(C6)、再び反射光学系3で反射され、C7,C8を経て、金線格子型偏光分離素子1’(WG)をP偏光(C9)で透過する。
【0045】
同様に、図2(b1)に示すように、光源4から発した右側の光束D1は反射光学系3で反射され、金線格子型偏光分離素子1’(WG)に向かう光束D2となる。D2は無偏光であるので、金線格子型偏光分離素子1’(WG)でP偏光成分が透過光D3、S偏光成分が反射光D4となる。反射光D4は、再び反射光学系3で反射され、D5,D6を経て、位相変調素子2を通過してP偏光に変換され(D7)、金線格子型偏光分離素子1’(WG)を透過する(D8)。
【0046】
このように、偏光変換素子が平坦な構造の金線格子型偏光分離素子であっても、偏光方向を揃えた照明光を得ることが可能となる。
これは、誘電体多層膜で形成する偏光ビームスプリッタでは成しえず、ワイヤーグリットタイプの偏光分離素子でしか成し得ない。つまり、偏光分離面の法線方向に対して光束の入射角が0度であっても、所望の偏光分離特性を有しているので、本発明の作用が発揮される。
また、このような構成を採用することで、偏光分離素子として、非常に単純な構成を採用することができる。
【0047】
図2に示す構成の照明装置では、反射射光学系(リフレクタに相当)3から発する光束の大部分は、位相変調素子2の通過回数が0回あるいは1回、多くても2回の通過だけで、直線偏光となり照明光として得られる光量が多く得られる。また、位相変調素子2の表面反射の損失を考慮すると、1割、あるいはそれ以上の向上が見込める。
しかも、有効な照明光は偏光を揃えられているので、特に液晶を利用して光の出射の制御を行うライトバルブの照明光として、効率の高い照明光を得ることができる。
従来構成より、位相変調素子の通過回数が減るために、界面ロスが低減することに加え、位相変調素子の光損傷による波長板の機能低下を抑えることができる。つまり、光量の損失をできるだけなくしつつ、偏光変換の効率も高くなることと、高い信頼性を得ることができる。
【0048】
[実施例1−3]
次に変形実施例として、図3に示すように、微小な偏光分離素子を複数並べた構成の偏光分離部1”も採用することができる。
これは、実施例1−1の偏光分離素子1と同様に、偏光分離面が互いに90度の角度をなして配置された偏光分離素子を6個並べた構成の偏光分離部1”とし、うち3個分を覆うように、位相変調素子2が配置されている構成である。この3個分は、光源部の反射光学系3からの全光束の概略半分の光束を通過させる大きさである。このような構成で、実施例1−2と同様な効果が得られる。
【実施例2】
【0049】
次に図4は、本発明の第2の実施例の照明装置の構成、動作の説明図である。
図4に示す照明装置は、光源(4−1,4−2)と該光源から出射した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系(3−1,3−2)とで構成される2つの光源部(5−1,5−2)を有し、2つの光源部(5−1,5−2)は互いに対向して配置されており、位相変調部は、略90度偏光方向を変換する位相変調素子2からなり、一方の光源部(5−1)の反射光学系(3−1)で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、偏光分離部は、偏光方向が互いに直交する2つの偏光を透過光と反射光に分離する偏光分離素子(1)であり、2つの光源部(5−1,5−2)の間に設けられ、該2つの光源部間の全光束の略半分が通過する位置に配置され、一方の光源部(5−1または5−2)から発する光束は、位相変調素子2を通って偏光分離素子1に達する光束と、位相変調素子2を通らずに偏光分離素子1に達する光束とを有するとともに、偏光分離素子1によって偏光分離された光束のうち、一方の偏光成分の光束は、照明光として出射し、他方の偏光成分の光束は、2つの光源部(5−1,5−2)の反射光学系により再帰反射して照明光として利用する構成である。
【0050】
以下、図4(a)(b)を用いて本発明の特徴部分について説明する。
図4の照明装置は、光源4−1,4−2と、それぞれの光源から発した光束を一方向に取り出す対応するそれぞれの反射光学系3−1,3−2とで構成される2つの光源部5−1,5−2が対向して配置され、さらに偏光分離素子1と、略90度偏光方向を変換する位相変調素子2(1/2λ板に相当)とにより構成されている。
その中でも、特徴となる箇所は、位相変調素子2が、反射光学系3−1、3−2から出る全光束の断面積の約半分の大きさになっていている点である。
この位相変調素子2の大きさが、全光束断面積の約半分になることで、それぞれの光源部5−1,5−2から発する光束は、偏光分離素子1に達する前に位相変調素子2に達する光束(E)と、位相変調素子2に達する前に、(対向する光源部の反射光学系を介して)偏光分離素子1に達する光束(F)とに分けられる。
【0051】
これにより、図4(a)に示すように、一方の光源部5−1の光源4−1から右側に出射された光束Eは、反射光学系3−1で反射され、位相変調素子2を通過後、偏光分離素子1の偏光分離面1aにより、透過光(P偏光)と反射光(S偏光)に分離され、反射光(S偏光)は、有効照明光となり、透過光(P偏光)は、対向する光源部5−2の反射光学系3−2で反射され、元の光源部5−1の反射光学系3−1を介して、再び位相変調素子2に達する。そして、再度、位相変調素子2に達するP偏光光束は、位相変調素子2を通過して90度偏光が回転し、S偏光となり、偏光分離素子1の偏光分離面1aで反射して有効照明光となる。
【0052】
同様に、図4(b)に示すように、一方の光源部5−1の光源4−1から左側に出射された光束Fは、反射光学系3−1で反射され、位相変調素子を通過せずに、対向する光源部5−2の反射光学系3−2を介して、偏光分離素子1に達する。そして、偏光分離素子1の偏光分離面1bにより、透過光(P偏光)と反射光(S偏光)に分離され、反射光(S偏光)は、有効照明光となる。また、透過光(P偏光)は、位相変調素子2を透過してS偏光に変換される。このS偏光の光束は、元の光源部5−1の反射光学系3−1で反射され、対向する光源部5−2の反射光学系3−2を介して、再び偏光分離素子1へと向かい、偏光分離面1bで反射されて有効照明光となる。
【0053】
このような構成及び作用により、次のような優れた効果を奏することができる。
(1)反射光学系(リフレクタに相当)から発する光線の大部分は、位相変調素子の通過回数が0回あるいは1回、多くても2回の通過だけで、直線偏光となり照明光として得られる光量が多く得られる。また、位相変調素子の表面反射の損失を考慮すると、1割、あるいはそれ以上の向上が見込める。
(2)しかも、有効な照明光は偏光を揃えられているので、特に液晶を利用して光の出射の制御を行うライトバルブの照明光として、効率の高い照明光を得ることができる。
(3)従来構成より、位相変調素子の通過回数が減るために、界面ロスが低減することに加え、位相変調素子の光損傷による波長板の機能低下を抑えることができる。
(4)つまり、光量の損失をできるだけなくしつつ、偏光変換の効率も高くなることと、高い信頼性を得ることができる。
【0054】
なお、2つの光源部を用いた従来の照明装置としては、前述の特許文献2に記載の従来技術がある。
本実施例の構成の照明装置との相違点は、特許文献2に記載の従来技術(図15)では、第1の光源ランプ(2)から出射する光束の全てが1度は1/4λ板(5)と偏光分離膜(7)を通過するので、偏光分離膜(7)で反射されて照明光として出射する光束も少なからず光の損失がある(他方側の第2の光源ランプ(3)から出射した光束も同様)。
また、偏光分離膜(7)を透過した光束が、他方の光源ランプ(3)のリフレクタ(3f)を往復し、リフレクタ前面に配置された1/4λ板(6)を往復2回通過することで偏光を回転している。従って、第1の光源ランプ(2)から出射され偏光変換される光束は、1/4λ板(5)を1回,1/4λ板(6)を2回、リフレクタ(3f)を2回(反射回数は反射板(3b)での反射を含むと5回)、偏光分離膜(7)を1回、偏光分離膜(8)を2回通過してくるので、偏光変換された光束は界面ロスにより、光量低下を起している(他方側の第2の光源ランプ(3)から出射した光束も同様)。
また、1/4λ板を2回往復して偏光を90度回転させているが、1/4λ板の往路と復路の間に、リフレクターを2回通過(反射回数は反射板(3b)での反射を含むと5回)しているので、光量ロスや、偏光の乱れが多少なりとも存在し、照明効率を低下させる要因となっている。
【0055】
これに対して、図4に示す本実施例の照明装置では、位相変調素子2を1/2λ板で構成しているため、一度の通過で偏光を90度回転できる。
また、従来技術の構成(図15)では、反射光学系(リフレクタ(2f)と反射板(2b)など)を介して光源部から出射される光束は、リフレクタ(2f)の開口径の約半分の大きさの開口部(2c)から出射されるので、1/4λ板はこの光束幅と同じ幅となっているが、本実施例では、位相変調素子2は、反射光学系3から発する全光束の断面の約半分の大きさにしている点も異なる。
また、従来技術では、2つの光源ランプ部の開口部にそれぞれ1/4λ板を配置するとともに、光源ランプ部内にリフレクタとは別の反射板(2b、3b)をそれぞれ配置しているため、反射面や透過する界面数が多く、かなりの光量ロスが生じますが、本実施例では、位相変調素子2は1枚のみであり、光源部内には、リフレクタに相当する反射光学系とは別の反射板を用いていない。また、従来技術では、光源部から出射される全光束の断面積がリフレクタの開口径の約半分になっているために、エネルギー密度が上がり、この光束の全てが1/4λ板を通過するので、波長板の損傷を与えやすい構成だが、本実施例では、上述したように、位相変調素子2を反射光学系3から発する全光束の断面積の半分の大きさにしているため、波長板に損傷を与えにくい構成となっている。
【0056】
[実施例2−1]
次に図4を参照して本実施例の照明装置のさらに具体的な構成を説明する。
図4に示す構成の照明装置は、光源4−1,4−2と該光源から出射した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系3−1,3−2とで構成される2つの光源部5−1,5−2を有し、2つの光源部5−1,5−2は互いに対向して配置されており、位相変調部は、略90度偏光方向を変換する位相変調素子2からなり、一方の光源部5−1の反射光学系3−1で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、偏光分離部は、偏光方向が互いに直交する2つの偏光を透過光と反射光に分離する偏光分離素子1であり、2つの光源部5−1,5−2の間に設けられ、該2つの光源部間の全光束の略半分が通過する位置に配置され、一方の光源部5−1(または5−2)から発する光束は、位相変調素子2を通って偏光分離素子1に達する光束と、位相変調素子2を通らずに偏光分離素子1に達する光束とを有するとともに、偏光分離素子1によって偏光分離された光束のうち、一方の偏光成分の光束は、照明光として出射し、他方の偏光成分の光束は、2つの光源部5−1,5−2の反射光学系により再帰反射して照明光として利用する構成である。
【0057】
本実施例で使用される光源4−1,4−2は、特に限定されることはなく、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプなどが用いられる。あるいは、LED光源、LD光源などの光源も特に限定されることなく使用できる。
光源部5−1,5−2の光源4−1,4−2から発した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系3−1,3−2としては、例えば、回転放物面鏡や、回転楕円鏡などのリフレクタ(反射光学系)などが使用できる。特に回転放物面鏡などを使用する場合は、その焦点位置に光源4を配置すると、ほぼ平行光となって照明光束を得られる特性がある。
また、反射光学系3−1,3−2に回転楕円鏡を使用する場合、2つの焦点を有することとなるが、第一の焦点位置に光源を配置すると、第二の焦点位置に集光する特性があり、集光レンズなどを用いて、ほぼ平行光束を得ることができる(図示せず)。
さらに、光源4−1,4−2と反射光学系3−1,3−2とからなる光源部5−1,5−2は互いに、出射光が向き合う形に対向して配置されている。そして、互いの反射光学系(例えば3−1)から発する光束が、対向する反射光学系(例えば3−2)へと向かうように配置されている。なお、2つの光源部5−1,5−2は、出射光束の光軸が一致するように配置するのが望ましい。
【0058】
本実施例で使用される偏光分離素子1は、図4に示されるように、2つの偏光分離面1a,1bで構成され、この2つの偏光分離面が互いに略90度の角度をなした偏光分離素子対で構成される事が望ましい。
また、偏光分離特性が所望の特性を有する範囲であれば、入射光が45度とならなくてもよい(互いに90度でなくてもよい)。
すなわち、偏光分離面1a,1bで2回反射することで、照明装置の反射光学系へと戻るような角度で配置されていればよい。
さらに正確に、再帰反射させることを目的として、特に互いに90度の反射面をなすような2つの偏光分離面1a,1bからなることで、より高い効率で戻り光を得ることができる。以下、2つの偏光分離面で構成される偏光分離素子1として説明する。
【0059】
偏光分離素子対1の各偏光分離部(偏光分離面)1a,1bには、いわゆる偏光ビームスプリッタを適用できる。偏光ビームスプリッタの機能としては、電界成分が、入射面に平行な振動成分である(P偏光)と垂直な振動成分である(S偏光)成分を分離する機能を有している。具体的には、三角柱状のプリズムの斜面に多層膜を形成し、同様な三角柱状のプリズムを張り合わせてキューブ状になしたいわゆる偏光ビームプリズムなどが用いられる。偏光分離膜は、誘電体膜を真空プロセスにより成膜して作成されるのが一般的である。
【0060】
本実施例の位相変調素子2は、常光線と異常光線とで屈折率が異なり、位相遅延が生じる副屈折材料が用いられる。一般には位相差板といわれている。
常光線と異常光線の屈折率の差や、光の伝播速度の差により、光の振動方向を回転できる。
位相変調素子2としては、いわゆる1/2λ板が好適である。1/2λ板は、雲母や、水晶波長板、高分子フィルムで作成されている。
位相変調素子2の位置は、偏光分離素子1の入射面近傍に配置され、図4(a)においては、光源部5−1の出射開口5011と偏光分離素子対1との間に設けられ、光源部5−1の出射開口5011から発する全光束の断面積の略半分2011を覆うような配置が望ましい。なお、位相変調素子2の位置は、光源部5−1の出射開口5011から発する光束の断面の略半分を覆うように配置されるとよいので、F2(またはF3)の光路中にあってもよい。
【0061】
次に、図4(a)に示す光源部5−1の光源4−1から出る右側の光束(E1〜E7、Eout1,Eout2の光路で示した光束)と、図4(b)に示す光源部5−1の光源4−1から出でる左側の光束(F1〜F7、Fout1,Fout2の光路で示した光束)を代表して光学的な作用動作について説明する。
光源4−1から発した右側の光束E1は、反射光学系3−1で反射され位相変調素子2に向かう(E2)。この位相変調素子2に向かう光束E2は無偏光な光である。位相変調素子2を通過後のE3の光束は、依然無偏光のままであるが、この光束が偏光分離素子対1の偏光分離面1aに達し、この偏光分離面1aにより、透過光(P偏光)E4と反射光(S偏光)Eout1に分離される。反射光(S偏光)Eout1は照明光として利用される。E4は、もう一方の光源部5−2の反射光学系3−2で反射し、E5となって出射する。E5の光束は、偏光分離素子1の背後を通過し、光源部5−1の開口5011に達し、反射光学系3−1で反射し、元の光源4−1近傍を通過して、再び開口部5011から出射される(E6)。この光束E6は、偏光分離素子対1の偏光分離面1a,1bを通過してきているためにP偏光となっているが、位相変調素子2を再度通過することで、S偏光となる(E7)。このS偏光に変換された光束E7は、偏光分離面1aで反射し、照明光Eout2となる。このEout2は、Eout1とともにS偏光の照明光として利用できる。
【0062】
次に、光源4−1から発した左側の光束F1について説明する。
光源4−1から発した左側の光束F1は反射光学系3−1により反射され、反射された光束F2は、対向する光源部5−2の反射光学系3−2へと向かう。反射光学系3−2で反射した光束F3は、位相変調素子を介さずに、偏光分離素子対1に向かい、偏光分離面1bに達する。偏光分離面1bに達した光束F3は無偏光であるが、偏光分離面1bで透過光(P偏光)F4と、反射光Fout1(S偏光)となる。偏光分離面1bを透過した透過光(P偏光)F4は、もう一方の偏光分離面1aを透過し、位相変調素子2を通過する(F5)。位相変調素子2を通過した光束F5は、P偏光からS偏光に変換され、再び反射光学系3−1で反射され(F6)、偏光分離素子対1の背後を通過して、対向する光源部5−2の反射光学系3−2で反射される(F7)。この反射された光束F7はS偏光であるので、偏光分離面1bで反射され、照明光Fout2となる。このFout2は、Fout1とともにS偏光の照明光として利用できる。
【0063】
次に、光源部5−2の光源4−2から発した光束の場合は図示を省略しているが、光源4−2から右側に発した光束は反射光学系3−2で反射されて偏光分離素子対1に向かい、偏光分離面1bに達する。偏光分離面1bに達した光束は無偏光であるが、偏光分離面1bで透過光(P偏光)と、反射光(S偏光)となる。偏光分離面1bを透過した透過光(P偏光)は、もう一方の偏光分離面1aを透過し、位相変調素子2を通過する。位相変調素子2を通過した光束は、P偏光からS偏光に変換され、反射光学系3−1で反射され、偏光分離素子対1の背後を通過して、光源部5−2の反射光学系3−2で反射される。この反射された光束はS偏光であるので、偏光分離面1bで反射され、照明光となる。また、光源4−2から左側に発した光束は反射光学系3−2により反射され、対向する光源部5−1の反射光学系3−1へと向かい、反射光学系3−1で反射されて位相変調素子2に向かう。この光束は無偏光な光であり、位相変調素子2を通過後の光束は依然無偏光のままであるが、この光束が偏光分離素子対1の偏光分離面1aに達し、この偏光分離面1aにより、透過光(P偏光)と反射光(S偏光)に分離される。反射光(S偏光)は照明光として利用される。透過光(P偏光)はもう一方の偏光分離面1bを透過し、光源部5−2の反射光学系3−2で反射される。反射された光束は、偏光分離素子1の背後を通過し、光源部5−1の反射光学系3−1で反射されて位相変調素子2に向かう。そして位相変調素子2を再度通過することで、S偏光となり、このS偏光に変換された光束は、偏光分離面1aで反射し、照明光となる。
【0064】
なお、変形実施例として、位相変調素子2は、図5に示すように、光源部5−2の側に配置してもよく、この場合には動作は図4と同様である。また、図6に示すように、光源4−1から発して反射光学系3−1を介して出射される光束の光路のうち、偏光分離素子1を配置した光路側とは逆の光路側の位置に位相変調素子2を配置してもよく、この場合にも、図4と同様の照明光が得られる。
【0065】
前述したように、特許文献2に記載の従来技術においては、2つの光源部のそれぞれに1/4λ板を配置しており、2つの光源部から発する全光束が1/4λ板を通過していたが、本実施例では、1/2λに相当する90度回転する位相変調素子2を1つのみ用いるので、構成が全く相違している。また、光源部からの全光束のうち、半分の光束が位相変調素子2を通過して偏光分離素子対1に至り、残りの半分は、位相変調素子を介さないで偏光分離素子対1に達する点で大きく異なる。すなわち、特許文献2に記載の従来技術では、全部の光束が1/4λ板を通過してから偏光分離部に達するので、多くて1/4λ板を3回通過する光束が発生するが、本実施例では、0回あるいは1回、多くても2回の通過だけで、直線偏光に変換された照明光となる。
つまり、上記のような実施例の構成を採用することにより、位相変調素子の通過回数を極力少なくすることが可能となり、照明光の光量損失を抑えることができる。
【0066】
ここで、効果の定量化を試みる。説明を簡単にするため、最も損失が大きい位相変調素子2の表面反射による光の損失量を見積ってみる。
位相変調素子自体の透過率は、反射防止コートなしでは、概略4%の反射(両面で8%)であるので、つまり92%の透過率を有していると仮定する。 また、比較のため偏光分離面のP偏光、S偏光の分離は50:50とする。また、反射光学系での損失は割愛する。
図4において、光源からの光束のうち半分の50%が光束Eで、これが1回だけ位相変調素子2を(E2→E3)通過するので、50%×0.92が偏光分離素子対1に到達する。ここで、2分割され、一方は照明光とし、残り半分(50%×0.92)/2は、反射光学系3−2、3−1を介して、位相変調素子2を2回目通過する(E6→E7)。このときは、(50%×0.92)/2×0.92となり、Eout1とEout2の合計は、
50%×0.92/2+(50%×0.92)/2×0.92=IE
となり、これが、右側のEの光量比である。
【0067】
Fの光量比IFは、位相変調素子2を通過せず、偏光分離面1bに達するので、Fout1に相当する光量比は50%/2となる。
残りの50%−50%/2=50%/2は、一回だけ(F4→F5)位相変調素子2を通過するので、50%/2×0.92となる。これがF5、F6,F7となって偏光分離面1bで反射し、照明光(Fout2)となる。
すなわちF側の光量比は、
50%/2+50%/2×0.92=IF
となる。
全光量はIEとIFを合算し、IE+IF=92.16%となる。
【0068】
これに対して従来技術だと、
100%×0.92×1/2+(100%×0.92×1/2)×0.92×0.92
=84.93%
となり、本実施例の構成の92.16%と比べると、明らかに損失が大きいことがわかる。偏光分離素子の特性としては、一般にはP偏光透過特性よりS偏光反射特性が高く、つまり、波長板を通過するのは、S偏光が多いため、実際上、さらにこの値は開く。すなわち、本実施例においては、従来技術の1.1倍以上の光量アップ効果が期待される。
【0069】
以上の本実施例の構成、動作、作用により、以下に掲げた優れた効果を奏することができる。
(1)光学系(リフレクタに相当)から発する光線の大部分は、位相変調素子の通過回数が0回あるいは1回、多くても2回の通過だけで、直線偏光となり照明光として得られる光量が多く得られる。また、位相変調素子の表面反射の損失を考慮すると、1割、あるいはそれ以上の向上が見込める。
(2)しかも、有効な照明光は偏光を揃えられているので、特に液晶を利用して光の出射の制御を行うライトバルブの照明光として、効率の高い照明光を得ることができる。
(3)従来構成より、位相変調素子の通過回数が減るために、界面ロスが低減することに加え、位相変調素子の光損傷による波長板の機能低下を抑えることができる。
(4)つまり、光量の損失をできるだけなくしつつ、偏光変換の効率も高くなることと、高い信頼性を得ることができる。
(5)また、2つの光源部を有しているので、より明るい照明装置を実現できる。
【実施例3】
【0070】
図7は本発明の第3の実施例を示す照明装置の構成、動作の説明図である。。
本実施例では、図7に示すように、光源部5に対向する位置に配置された反射光学素子3−3を有し、位相変調部は、略90度偏光方向を変換する位相変調素子2からなり、光源部5の反射光学系3で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、偏光分離部は、偏光方向が互いに直交する2つの偏光を透過光と反射光に分離する偏光分離素子1であり、光源部5と反射光学素子3−3の間に設けられ、該光源部5からの全光束の略半分が通過する位置に配置され、光源部5から発する光束は、位相変調素子2を通って偏光分離素子1に達する光束と、位相変調素子2を通らずに偏光分離素子1に達する光束とを有するとともに、偏光分離素子1によって偏光分離された光束のうち、一方の偏光成分の光束は、照明光として出射し、他方の偏光成分の光束は、反射光学素子3−3と光源部5の反射光学系3により再帰反射して照明光として利用する構成である。
【0071】
より具体的に説明すると、光源部5の光源4から発した光は反射光学系3でほぼ平行光になり、光源部5の開口5001からほぼ平行光となって出射される。この開口5001の半分を覆うように、位相変調素子2が配置されており、その位相変調素子2の有効開口は2001のようになっている。
また、光源部5に対向して、反射面3−3a、3−3bからなる反射光学素子3−3が配置されている。この反射光学素子3−3の反射面3−3a、3−3bは、互いに90度の角度をなす関係であることが最も好適である。90度の関係を保つことで、入射光と同じ方向に光束を反射するようになり、光源部5を構成している反射光学系3に効率よく光束を反射させることができる。
【0072】
光学的な動作、作用は、図4に示した実施例2の動作や作用と略同様であり、図4の光源部5−2の反射光学系3−2を上記の反射光学素子3−3に置き換え、光源4−2は無い構成とすれば、図7の構成となる。
【0073】
さらに、別の変形実施例として、図示しないが、図4の構成において一方の光源を無いものとし、単一の光源にしてもよい。すなわち、図4の構成において、光源部5−2を構成している光源4−2を無くして、反射光学系3−2だけを反射光学素子として使った構成としてもよい。
【実施例4】
【0074】
図8は本発明の第4の実施例を示す照明装置の構成、動作の説明図である。
この照明装置は、実施例2の図4の照明装置と同様の構成の、2つの光源部(以下、第1、第2の光源部と言う)5−1,5−2と、位相変調素子2−1と、偏光分離素子1からなる構成部に加えて、光源4−3と該光源から出射した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系3−3とで構成される第3の光源部5−3と、略90度偏光方向を変換する第2の位相変調素子2−2を有し、第3の光源部5−3は第1、第2の光源部間の光路に直交する方向で偏光分離素子1に対向する位置に設けられ、該第3の光源部5−3から発する光束は偏光分離素子1に入射されるように配置され、第2の位相変調素子2−2は、第3の光源部5−3の反射光学系3−3で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように偏光分離素子1との間に配置されている構成である。
【0075】
この図8に示す構成の照明装置では、実施例2の図4と同様の構成部分の動作、作用は、前述した通りであるので、ここでは、第3の光源部5−3と、第2の位相変調素子2−1の動作、作用を説明する。
第3の光源部5−3から発する光束は、第2の位相変調素子2−2を通過してから偏光分離素子1に達する光束と、第2の位相変調素子2−2を通過せずに偏光分離素子1に達する光束とを有しており、偏光分離素子1によって偏光分離された光束のうち、一方の偏光成分の光束は照明光として第1、第2の光源部5−1,5−2からの光束と合せて出射し、他方の偏光成分の光束は第3の光源部5−3に直接または第2の位相変調素子2−2を介して戻し、第3の光源部5−3の反射光学系3−3により再帰反射して照明光として利用する。
【0076】
より具体的に説明すると、図8に示す構成の照明装置は、実施例2の図4と同様の構成の照明装置に、実施例1の図1と同様の構成の照明装置を、偏光分離素子1を共通に用いて組合わせた構成である。従って、第3の光源部5−3に関しては、その照明光が得られる動作としては、実施例1の動作と同じである。
一方、第1の光源部5−1と第2の光源部5−2に関しては、実施例2の図4と構成、動作が同じである。
従って、第1、第2の光源部5−1,5−2から得られる照明光はS偏光であり、第3の光源部5−3から得られる照明光はP偏光であり、3灯が合成されて照明光となる。なお、光源5−2を省略して2灯対応にすることも可能である。
【0077】
本実施例では、位相変調素子と偏光分離素子対の側面に光源部を配置することにより、簡単に2灯、あるいは3灯の合成が可能となる。従って、より明るい照明装置を得ることができる。
なお、図8の構成では、P偏光とS偏光が合成された照明光となるので、偏光方向を揃えて出射するには、照明光の出射側にさらに偏光変換素子等を配置した構成となる。
【実施例5】
【0078】
図9は本発明の第5の実施例を示す照明装置の構成、動作の説明図である。
この照明装置では、位相変調部は、略45度偏光方向を変換する位相変調素子8と、該位相変調素子8の光源部側に配置された第1および第2の平面反射部M1,M2とを有し、第1および第2の平面反射部M1,M2と位相変調素子8は、光源部5の反射光学系3で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、偏光分離部は、互いに90度の角度になした2つの偏光分離面1a,1bを有し、偏光方向が互いに直交する2つの偏光を透過光と反射光に分離する偏光分離素子対1であり、偏光分離素子対1は、光源部5の反射光学系3で反射された全光束の断面積を覆うようにして、第1の平面反射部M1と第2の平面反射部M2と位相変調素子8を間に介して光源部5の出射前面に配置されている構成である。
【0079】
図9に示す構成の照明装置では、光源部5の光源4から発した光束の略半分の光束は、第1の平面反射部M1で反射されて光源部に戻され、他方の略半分の光束と重ね合わせられて出射され、該光源部5から出射された光束は偏光分離素子対1に達して一方の偏光分離面1bで透過光と反射光に偏光分離され、偏光分離面を透過した偏光成分の光束は照明光として出射し、偏光分離面で反射された偏光成分の光束は偏光分離素子対内の他方の偏光分離面1aで反射されて位相変調素子8に達し、該位相変調素子8を透過して第2の平面反射部M2で反射されて再度位相変調素子8を透過し、偏光方向が略90度回転されて偏光分離素子対1に戻され、偏光分離面1aを透過して照明光として出射される。
【0080】
より詳しく述べると、この照明装置は、図1に示した構成の照明装置の位相変調素子(例えば1/2波長板)1に代えて別の構成の位相変調素子(例えば1/4波長板)8を配置し、この位相変調素子(1/4波長板)8よりも光源部側に第1および第2の平面反射部M1,M2を配置したものである。
このため、図9において、光源4から発した上側の光束Eは、反射光学系(回転放物面鏡など)3で反射されほぼ平行光となって第1の平面反射部1に達する。そして第1の平面反射部M1で反射され、同一光路を戻り、反射光学系3で再度反射されて光源部より出射し、偏光分離素子対1に入射する。偏光分離素子対1は、2つの偏光分離素子の偏光分離面1a,1bが互いに90度を成す角度に配置された構成であり、光源部5から出射される光束の前面に配置される。
【0081】
図中の第1の平面反射部M1で反射された光束Eと、第1の平面反射部M1で反射されないで光源部5から出た光束Jは、共に偏光分離素子対1の、偏光分離面1bに達し、偏光分離面1bで透過光(P偏光)と反射光(S偏光)に偏光分離され、偏光分離面1bを透過した偏光成分の光束(P偏光)は照明光として出射する。
また、反射光(S偏光)はもう一方の偏光分離面1aによって反射され、光源部5と偏光分離素子対1の間に配置した位相変調素子(1/4λ板)8を通過し、第2の平面反射部M2で折り返されて再び位相変調素子(1/4λ板)8を通過し(位相変調素子(1/4λ板)の往復の通過で、偏光方向が90度回転される)、P偏光に変換されて、偏光分離面1aを透過し、照明光として出射する。
【0082】
本実施例の照明装置では、光源部5の光束幅を変えることなく、偏光変換が行うことが可能となる。特に、偏光分離素子対1で偏光分離された直後に、位相変調素子(1/4λ板)8を往復通過させることにより、偏光方向を正しく90度回転することができるようになり、偏光変換が非常に高い効率で行えることができるようになる。
【0083】
次に、図10は本実施例の別の構成例を示しており、第1および第2の平面反射部M1,M2を、同一部材の両面に形成した構成としたものである。
すなわち、図10に示す例では、図9に示した第1の平面反射部M1と第2の平面反射部M2とを、同一部材の両面に形成したものであり、具体的には、金属平板の両面を鏡面加工した構成でもよいし、ガラス基板の両面に金属反射膜を形成した構成でもよい。
このような構成とすることにより、部品点数が削減でき、コストパフォーマンスが向上する。また、位置合わせの手間が削減され、調整コストが削減できる。
なお、図示はしないが、偏光分離面1aで反射した光束の偏光分離素子対1からの出射面1Dに位相変調素子8を密着させても良い。このような構成を採用することで、界面での光量ロスをより低減することが可能となる。
また、位相変調素子8の出射面8aと第2の平面反射部M2を密着させても良い。このような構成を採用することで、先述と同様、位相変調素子8の出射面8aでの界面での光量ロスを低減することが可能となる。
さらにまた、位相変調素子8の出射面8aに高反射部材を形成することで、第2の平面反射部M2の機能を設けてもよい。
前記高反射部材としては、金属反射膜が好適である。具体的にはアルミニウム(Al)や、銀(Ag)などの高反射部材であり、真空蒸着技術などの既存の技術によって作成できる。
また、このように形成された金属反射膜は、同時に第1の平面反射部M1の機能を形成可能となる。偏光分離素子対1からの出射面1Dに位相変調素子8、高反射部材を一体的に構成することにより、さらに界面での光量ロスを極限まで低減でき、高高率な照明系が実現する。位相変調素子8は、いわゆる位相差板が好適であるが、1/2波長板の機能を有しているものであればいずれでもよく、位相差を有したフィルム状の1/2λ板、雲母、また構造複屈折により1/2λ作用を持たせてもよい。
【0084】
次に、図11は本実施例のさらに別の構成例を示しており、図10の偏光分離素子対1を、2つの偏光分離面1a1,1b1を互いに90度の角度になした、金線格子型偏光分離素子対11に代えた構成としたものである。
特に、偏光分離素子として、角度依存性が非常に小さい金線格子型偏光分離素子(ワイヤーグリッド型の偏光分離素子)を使うことにより、格段の偏光分離特性を得ることができ、明るい照明装置を得ることができる。
【実施例6】
【0085】
図12は本発明の第6の実施例を示す照明装置の構成、動作の説明図である。
この照明装置は、実施例2の図4の照明装置と同様の構成の、2つの光源部(以下、第1、第2の光源部と言う)5−1,5−2と、位相変調素子2と、偏光分離素子1からなる構成部に加えて、光源4−3と該光源から出射した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系3−3とで構成される第3の光源部5−3と、第2の位相変調部(8、M3)を有し、第2の位相変調部は、略45度偏光方向を変換する位相変調素子8と、該位相変調素子8の光源部側に配置され、第1および第2の平面反射部を両面に設けた反射部材M3とを有し、該反射部材(第1および第2の平面反射部)M3と位相変調素子8は、第3の光源部5−3の反射光学系3−3で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、第3の光源部5−3は、第1、第2の光源部間の光路に直交する方向で偏光分離素子1に対向する位置に設けられ、該第3の光源部5−3から発する光束は偏光分離素子1に入射されるように配置され、偏光分離素子1は、互いに90度の角度になした2つの偏光分離面1a,1bを有し、偏光方向が互いに直交する2つの偏光を透過光と反射光に分離する偏光分離素子対であり、該偏光分離素子対1は、第3の光源部5−3の反射光学系3−3で反射された全光束の断面積を覆うようにして、反射部材(第1の平面反射部と第2の平面反射部)M3と位相変調素子8を間に介して第3の光源部5−3の出射前面に配置されている構成としたものである。
【0086】
この図12に示す構成の照明装置は、実施例2の図4の照明装置の構成と、実施例5の図10の照明装置の構成とを、偏光分離素子対1を共用して組合わせた構成であり、第3の光源部5−3の光源4−3から発した光束の略半分の光束は、反射部材M3の第1の平面反射部で反射されて第3の光源部に戻され、他方の略半分の光束と重ね合わせられて出射され、該第3の光源部から出射された光束は偏光分離素子対1に達して一方の偏光分離面で透過光と反射光に偏光分離され、偏光分離面を透過した偏光成分の光束は照明光として第1、第2の光源部5−1,5−2からの光束と合せて出射し、偏光分離面で反射された偏光成分の光束は偏光分離素子対内の他方の偏光分離面で反射されて位相変調素子8に達し、該位相変調素子8を透過して反射部材M3の第2の平面反射部で反射されて再度位相変調素子8を透過し、偏光方向が略90度回転されて偏光分離素子対1に戻され、偏光分離面を透過して照明光として出射される。
【0087】
以上のように、本実施例の照明装置は、実施例2の図4の照明装置の構成と、実施例5の図10の照明装置の構成とを、偏光分離素子部1を共通にして組合わせた構成であり、このような構成を採用することで、3灯(または2灯)の合成光学系を非常に簡易に組むことができる。しかも、光束幅を光源部の開口より大きくすること無く実現することができ、非常に明るい照明装置を実現できるとともに、照明効率の高い照明装置を得ることができる。
【実施例7】
【0088】
図13は本発明の第7の実施例を示す投射型表示装置の構成、動作の説明図である。
この投射型表示装置100は、実施例1〜6のいずれかで説明した構成の照明装置と、表示画像を形成する画像形成装置と、該画像形成装置で形成された画像を投射して表示するための光学系とを備えている。
ここで、図13は、図12に示した構成の3灯の光源部5−1,5−2,5−3を有する照明装置を用いた投射型表示装置の構成例であり、この照明装置101からの照明光を照明光学系107を介して画像形成装置であるライトバルブ108に照明し、ライトバルブ上に形成される画像情報を投射光学系109により図示しないスクリーン等に投射表示する構成である。
【0089】
より詳しく述べると、図13において、図12に示した構成の照明装置101の互いに対向している第1、第2の光源部(5−1,5−2))からはS偏光が得られるが、水平配置の第3の光源部5−3からはP偏光の照明光が得られている。したがって、3つの光源部からの光束は合成後、照明光学系107へと達する。図13では、照明光学系107は、第一フライアイレンズ102、第二フライアイレンズ103、偏光変換素子104、メインコンデンサレンズ105、コンデンサレンズ106などから構成されており、フライアイレンズ102,103により照明光束を分割し、偏光変換素子104、メインコンデンサレンズ105、コンデンサレンズ106を介して重畳してライトバルブ108上に均一化照明を行なう、いわゆるインテグレータ光学系の実施例を図示している。
【0090】
ライトバルブ108への照明光学系107としては、上述したインテグレータ光学系に限ったのものではない。図示はしないが、集光して角柱の内面反射を利用したいわゆるロッドインテグレータ光学系を採用しても良い。もちろん、装置の仕様によってはインテグレータ光学系は不要である。必要に応じて適用すればよい。
【0091】
ライトバルブ108は、透過型液晶パネルを想定して図示しているが、この限りではなく、偏光分離素子などと組み合わせた反射型液晶パネルであってもよい。また、図示したのは単板方式であるが、赤、緑、青に照明光を分離し、それぞれの色に対応した3枚のライトバルブを照明して赤、緑、青の画像を形成し、その後、3つの画像を合成する作像系も適用可能である。
【0092】
ライトバルブ108が液晶パネルの場合は、偏光を揃えた照明光が必要であり、偏光の揃った照明光が得られる1灯、2灯合成の照明装置の場合は必ずしも必要ないが、図8や図12に示した3灯合成の場合はP偏光とS偏光が混在しているので、偏光変換素子104を設ける。また、画素に応じた微小ミラーが駆動してその反射光を投射光とするデジタル・マイクロミラー・デバイスも、ライトバルブとして好適であるが、この場合は、偏光変換は不要である。
以上のような、ライトバルブ108で形成された画像は、投射光学系109により、図示しないスクリーン等に拡大投射される。
【0093】
本発明の構成の照明装置101を用いた構成の投射型表示装置においては、従来1灯用に設計された照明光学系107や投射光学系109に、そのまま明るさをアップした2灯照明や、3灯照明を用いることができ、より明るい投射型表示装置100を実現することができる。また、この場合には、複数の光源を用いているので、不意な光源切れに対しても、投射画像がブラックアウトすることがなくなる。また、通常は、1灯または2灯を点灯させ、残りの1灯(2灯目または3灯目)は通常は点灯させず、光源切れにだけ対応するような利用の仕方でも構わない。また、光源の種類も、同一の形状であれば良く、出力数を変えて、他段階の明るさを得ることも可能であり、投射型表示装置に展開した場合に、様々な効果(明るさ調整機能、視覚効果機能等)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施例を示す照明装置の構成、動作の説明図である。
【図2】本発明の別の実施例を示す照明装置の構成、動作の説明図である。
【図3】本発明の別の実施例を示す照明装置の構成説明図である。
【図4】本発明の別の実施例を示す照明装置の構成、動作の説明図である。
【図5】本発明の別の実施例を示す照明装置の構成説明図である。
【図6】本発明の別の実施例を示す照明装置の構成説明図である。
【図7】本発明の別の実施例を示す照明装置の構成説明図である。
【図8】本発明の別の実施例を示す照明装置の構成説明図である。
【図9】本発明の別の実施例を示す照明装置の構成説明図である。
【図10】本発明の別の実施例を示す照明装置の構成説明図である。
【図11】本発明の別の実施例を示す照明装置の構成説明図である。
【図12】本発明の別の実施例を示す照明装置の構成説明図である。
【図13】本発明の別の実施例を示す投射型表示装置の構成説明図である。
【図14】特許文献1に記載の照明装置を示す図である。
【図15】特許文献2に記載の照明装置を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1:偏光分離素子対(偏光分離部)
1a,1b:偏光分離面
1’:金線格子型偏光分離素子
1”:複数の偏光分離素子対からなる偏光分離素子
2:位相変調素子(例えば1/2波長板)
2−1:第1の位相変調素子
2−2:第2の位相変調素子
3(3−1,3−2,3−3):反射光学系(例えばリフレクタ)
3−3a,3−3b:反射光学素子
4(4−1,4−2,4−3):光源
5(5−1,5−2,5−3):光源部
6:光源部から発する全光束の断面
6A:位相変調素子側の光束の断面
6B:位相変調素子が無い側の光束の断面
8:位相変調素子(例えば1/4波長板)
11:金線格子型偏光分離素子対
100:投射型表示装置
101:照明装置
102:第一フライアイレンズ
103:第二フライアイレンズ
104:偏光変換素子
105:メインコンデンサレンズ
106:コンデンサレンズ
107:インテグレータ光学系
108:ライトバルブ
109:投射光学系
M1:第1の平面反射部
M2:第2の偏面反射部
M3:第1の平面反射部と第2の偏面反射部を両面に形成した反射部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と該光源から出射した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系とで構成される光源部と、
光束の偏光方向を変換する位相変調部と、
偏光方向の異なる光束を透過光と反射光に分離する偏光分離部と、
を備えた照明装置であって、
前記位相変調部は、前記光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、
前記光源部から発した光束が前記位相変調部と前記偏光分離部の両方を通って照明光として出射される光路と、前記光源部から発した光束が前記位相変調部を通らずに前記偏光分離部のみを通って照明光として出射される光路とを有することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1記載の照明装置において、
前記位相変調部は、略90度偏光方向を変換する位相変調素子からなり、
前記偏光分離部は、偏光方向が互いに直交する2つの偏光を透過光と反射光に分離する偏光分離素子であり、
前記光源部から発した光束の略半分は、前記位相変調素子に達してから前記偏光分離素子に達して透過光と反射光に偏光分離され、他方の略半分の光束は前記偏光分離素子に達して透過光と反射光に偏光分離され、
前記偏光分離素子によって偏光分離された光束のうち、一方の偏光成分の光束は照明光として出射し、他方の偏光成分の光束は前記光源部に戻して前記反射光学系により再帰反射した後、照明光として利用することを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項2記載の照明装置において、
前記偏光分離素子は、2つの偏光分離面が互いに90度の角度になした偏光分離素子対であることを特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の照明装置において、
前記偏光分離素子として、金線格子型偏光分離素子を用いたことを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項1記載の照明装置において、
光源と該光源から出射した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系とで構成される2つの光源部を有し、2つの光源部は互いに対向して配置されており、
前記位相変調部は、略90度偏光方向を変換する位相変調素子からなり、一方の光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、
前記偏光分離部は、偏光方向が互いに直交する2つの偏光を透過光と反射光に分離する偏光分離素子であり、前記2つの光源部の間に設けられ、該2つの光源部間の全光束の略半分が通過する位置に配置され、
前記一方の光源部から発する光束は、前記位相変調素子を通って前記偏光分離素子に達する光束と、前記位相変調素子を通らずに前記偏光分離素子に達する光束とを有するとともに、
前記偏光分離素子によって偏光分離された光束のうち、一方の偏光成分の光束は、照明光として出射し、
他方の偏光成分の光束は、前記2つの光源部の反射光学系により再帰反射して照明光として利用することを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項5記載の照明装置において、
前記2つの光源部の反射光学系は、同種の反射光学系であることを特徴とする照明装置。
【請求項7】
請求項1記載の照明装置において、
前記光源部に対向する位置に配置された反射光学素子を有し、
前記位相変調部は、略90度偏光方向を変換する位相変調素子からなり、前記光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、
前記偏光分離部は、偏光方向が互いに直交する2つの偏光を透過光と反射光に分離する偏光分離素子であり、前記光源部と前記反射光学素子の間に設けられ、該光源部からの全光束の略半分が通過する位置に配置され、
前記光源部から発する光束は、前記位相変調素子を通って前記偏光分離素子に達する光束と、前記位相変調素子を通らずに前記偏光分離素子に達する光束とを有するとともに、
前記偏光分離素子によって偏光分離された光束のうち、一方の偏光成分の光束は、照明光として出射し、
他方の偏光成分の光束は、前記反射光学素子と前記光源部の反射光学系により再帰反射して照明光として利用することを特徴とする照明装置。
【請求項8】
請求項5または6記載の照明装置において、
前記2つの光源部(以下、第1、第2の光源部と言う)に加えて、光源と該光源から出射した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系とで構成される第3の光源部と、略90度偏光方向を変換する第2の位相変調素子を有し、
前記第3の光源部は前記第1、第2の光源部間の光路に直交する方向で前記偏光分離素子に対向する位置に設けられ、該第3の光源部から発する光束は前記偏光分離素子に入射されるように配置され、前記第2の位相変調素子は、前記第3の光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように前記偏光分離素子との間に配置されていることを特徴とする照明装置。
【請求項9】
請求項8記載の照明装置において、
前記第3の光源部から発する光束は、前記第2の位相変調素子を通過してから前記偏光分離素子に達する光束と、前記第2の位相変調素子を通過せずに前記偏光分離素子に達する光束とを有しており、前記偏光分離素子によって偏光分離された光束のうち、一方の偏光成分の光束は照明光として前記第1、第2の光源部からの光束と合せて出射し、他方の偏光成分の光束は第3の光源部に直接または前記第2の位相変調素子を介して戻し、第3の光源部の反射光学系により再帰反射して照明光として利用することを特徴とする照明装置。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか1項に記載の照明装置において、
前記偏光分離素子は、2つの偏光分離面が互いに90度の角度になした偏光分離素子対であることを特徴とする照明装置。
【請求項11】
請求項5〜9のいずれか1項に記載の照明装置において、
前記偏光分離素子として、2つの偏光分離面を互いに90度の角度になした金線格子型偏光分離素子を用いたことを特徴とする照明装置。
【請求項12】
請求項1記載の照明装置において、
前記位相変調部は、略45度偏光方向を変換する位相変調素子と、該位相変調素子の光源部側に配置された第1および第2の平面反射部とを有し、該第1および第2の平面反射部と前記位相変調素子は、前記光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、
前記偏光分離部は、互いに90度の角度になした2つの偏光分離面を有し、偏光方向が互いに直交する2つの偏光を透過光と反射光に分離する偏光分離素子対であり、
前記偏光分離素子対は、前記光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積を覆うようにして、前記第1の平面反射部と第2の平面反射部と位相変調素子を間に介して前記光源部の出射前面に配置されていることを特徴とする照明装置。
【請求項13】
請求項12記載の照明装置において、
前記光源部の光源から発した光束の略半分の光束は、前記第1の平面反射部で反射されて光源部に戻され、他方の略半分の光束と重ね合わせられて出射され、該光源部から出射された光束は前記偏光分離素子対に達して一方の偏光分離面で透過光と反射光に偏光分離され、偏光分離面を透過した偏光成分の光束は照明光として出射し、偏光分離面で反射された偏光成分の光束は前記偏光分離素子対内の他方の偏光分離面で反射されて前記位相変調素子に達し、該位相変調素子を透過して前記第2の平面反射部で反射されて再度位相変調素子を透過し、偏光方向が略90度回転されて前記偏光分離素子に戻され、前記偏光分離面を透過して照明光として出射されることを特徴とする照明装置。
【請求項14】
請求項5または6記載の照明装置において、
前記2つの光源部(以下、第1、第2の光源部と言う)に加えて、光源と該光源から出射した光束を反射して一方向に取り出す反射光学系とで構成される第3の光源部と、第2の位相変調部を有し、
前記第2の位相変調部は、略45度偏光方向を変換する位相変調素子と、該位相変調素子の光源部側に配置された第1および第2の平面反射部とを有し、該第1および第2の平面反射部と前記位相変調素子は、前記光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積の略半分を覆うように配置されており、
前記第3の光源部は前記第1、第2の光源部間の光路に直交する方向で前記偏光分離素子に対向する位置に設けられ、該第3の光源部から発する光束は前記偏光分離素子に入射されるように配置され、
前記偏光分離素子は、互いに90度の角度になした2つの偏光分離面を有し、偏光方向が互いに直交する2つの偏光を透過光と反射光に分離する偏光分離素子対であり、
前記偏光分離素子対は、前記第3の光源部の反射光学系で反射された全光束の断面積を覆うようにして、前記第1の平面反射部と第2の平面反射部と位相変調素子を間に介して前記第3の光源部の出射前面に配置されていることを特徴とする照明装置。
【請求項15】
請求項14記載の照明装置において、
前記第3の光源部の光源から発した光束の略半分の光束は、前記第1の平面反射部で反射されて第3の光源部に戻され、他方の略半分の光束と重ね合わせられて出射され、該第3の光源部から出射された光束は前記偏光分離素子対に達して一方の偏光分離面で透過光と反射光に偏光分離され、偏光分離面を透過した偏光成分の光束は照明光として前記第1、第2の光源部からの光束と合せて出射し、前記偏光分離面で反射された偏光成分の光束は前記偏光分離素子対内の他方の偏光分離面で反射されて前記位相変調素子に達し、該位相変調素子を透過して前記第2の平面反射部で反射されて再度位相変調素子を透過し、偏光方向が略90度回転されて前記偏光分離素子対に戻され、前記偏光分離面を透過して照明光として出射されることを特徴とする照明装置。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか1項に記載の照明装置において、
前記第1および第2の反射部は、同一部材の両面に形成したことを特徴とする照明装置。
【請求項17】
請求項12〜15のいずれか1項に記載の照明装置において、
前記偏光分離素子対は、2つの偏光分離面を互いに90度の角度になした、金線格子型偏光分離素子であることを特徴とする照明装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の照明装置と、表示画像を形成する画像形成装置と、該画像形成装置で形成された画像を投射して表示するための光学系とを備えたことを特徴とする投射型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−216754(P2009−216754A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57340(P2008−57340)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(000115728)リコー光学株式会社 (134)
【Fターム(参考)】