説明

熱交換器の製造方法およびそれによって製造される熱交換器

【課題】製造工程を簡易化して量産できるとともに、信頼性を格段と向上させることができる熱交換器の製造方法およびそれによって製造される熱交換器を提供することを目的とする。
【解決手段】複数のチューブ2の両端に座板3が接合されてなるコア4を有する熱交換器1の製造方法において、多数の微細穴である冷媒通路2aが並列に穿設された偏平状の上記複数のチューブ2を押出成形する押出工程と、各上記冷媒通路2aにつぶれ防止部材13を挿入した状態で、各上記チューブ2を上記座板3の射出成形用金型20にセットする準備工程と、上記射出成形用金型20に樹脂材料を流し込み、上記座板3を射出成形する座板成形工程と、各上記冷媒通路2aから上記つぶれ防止部材13を抜き取る仕上げ工程とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の製造方法およびそれによって製造される熱交換器に関し、より詳細には、ラジエータ、インタークーラ、ヒーターコア、エバポレータ、コンデンサ等として使用される自動車用熱交換器の製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境汚染を軽減する観点から自動車の軽量化による省燃費ニーズが高まっている。その1つとして、自動車の冷却系においても、材料置換や形状の最適化によるラジエータ、インタークーラ、ヒーターコア、エバポレータ、コンデンサ等の熱交換器の小型化・軽量化が図られてきている。
【0003】
そして、熱交換器を軽量化する目的で、全ての構成部品を樹脂化したオール樹脂熱交換器も多く検討されており、この場合、構成部品を樹脂化することによって形状の自由度が広がり、熱交換媒体である冷却水などを流通するチューブ断面積(つまり、流路の断面積)を確保することができれば、従来の熱交換器と同様な性能を保ちつつ、装置全体として小型化・軽量化を図ることができるメリットが大きいとされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、熱可塑性の高分子ポリマーからなる樹脂チューブと装置(熱交換器)との接続方法が開示されており、樹脂チューブ外面に接着剤を塗布し、チューブの樹脂材料より低い融点で座板を射出成形する技術が記載されている。
【特許文献1】特許第3488470号公報(第7頁〜第10頁、第3図および第4図など参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる特許文献1においては以下のような問題があった。すなわち、かかる従来技術では熱交換性能上、数千本の樹脂チューブが必要となり、これら各樹脂チューブを1本ずつ座板に形成した微細穴に挿入することは非常に煩雑且つ困難な作業となる問題があった。
【0006】
また、このように数千本の樹脂チューブが必要となる場合、座板を射出成形する際に、これら樹脂チューブが潰れてしまうおそれがあった。従って、かかる従来技術は、量産工法として不適切であり、多大な工数とコストが必要となる問題があった。
【0007】
さらに、各樹脂チューブと座板との接合強度の点においても、座板の微細穴の精度によっては接着剤漏れが生じるおそれがあるため、数千本の樹脂チューブの接着部接合強度を保証することは困難であった。特に、長期に亘る接着強度の信頼性を向上させることは至難であった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、製造工程を簡易化して量産できるとともに、信頼性を格段と向上させることができる熱交換器の製造方法およびそれによって製造される熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、複数のチューブの両端に座板が接合されてなるコアを有する熱交換器の製造方法において、多数の微細穴が並列に穿設された偏平状の上記複数のチューブを押出成形する押出工程と、各上記微細穴につぶれ防止部材を挿入した状態で、各上記チューブを上記座板の射出成形用金型にセットする準備工程と、上記射出成形用金型に樹脂材料を流し込み、上記座板を射出成形する座板成形工程と、各上記微細穴から上記つぶれ防止部材を抜き取る仕上げ工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、複数のチューブの両端に座板が接合されてなるコアを有する熱交換器の製造方法において、微細穴を有し且つ外側面に長手方向に沿って形成される鍔部を有するチューブ単管を押出成形する押出工程と、各上記チューブ単管の上記鍔部を重ね合わせて接合することで、多数の微細穴が並列に穿設された複数のチューブ単管からなる偏平状のチューブを形成するチューブ形成工程と、各上記微細穴につぶれ防止部材を挿入した状態で、各上記チューブを上記座板の射出成形用金型にセットする準備工程と、上記射出成形用金型に樹脂材料を流し込み、上記座板を射出成形する座板成形工程と、各上記微細穴から上記つぶれ防止部材を抜き取る仕上げ工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の熱交換器の製造方法であって、上記押出工程時において、上記微細穴に上記つぶれ防止部材を挿入させた状態で押出成形することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3の何れか一つに記載の熱交換器の製造方法であって、各上記チューブにおける上記座板の形成部分に、当該座板と係合するための係合加工を予め施しておくことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、複数のチューブの両端に座板が接合されてなるコアを有する熱交換器であって、各上記チューブは、押出成形にて形成され、多数の微細穴を並列に穿設させた偏平状とされ、上記座板は、各上記微細穴につぶれ防止部材を挿入させた各上記チューブを、この座板の射出成形用金型にセットして射出成形されてなることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の熱交換器であって、上記チューブは、微細穴を有し且つ外側面に長手方向に沿って形成された鍔部を有した押出成形されてなるチューブ単管の複数個から構成され、各上記チューブ単管の上記鍔部を重ね合わせて接合一体化されてなることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載の熱交換器であって、上記押出成形時において、上記微細穴に上記つぶれ防止部材を挿入させた状態で押出成形されたことを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項5から請求項7の何れか一つに記載の熱交換器であって、各上記チューブにおける上記座板の形成部分に、当該座板と係合するための係合加工を予め施されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、多数の微細穴を並列に穿設させた偏平状からなる複数のチューブを押出成形した後、これらチューブの微細穴に、それぞれつぶれ防止部材を挿入させた状態で座板の射出成形用金型にセットして座板を射出成形するようにしたことにより、これらチューブを射出成形用金型に容易に配設することが可能となるため、多数のチューブと座板との接合作業を格段と簡易にすることができるとともに、これら多数のチューブと座板との接合強度を確保することができ、信頼性を向上させることができる。
【0018】
しかも、チューブの微細穴につぶれ防止部材を挿入させた状態で座板を射出成形するので、この射出成形時に微細穴がつぶれるのを未然に防止することができる。また、座板は各チューブを射出成形用金型にセットして射出成形するようにしたので、座板に対するチューブの位置決めの容易化を図ることができ、決まった形状に容易に樹脂加工することができる。
【0019】
かくして、製造工程を簡易化して量産できるとともに、信頼性を格段と向上させることができる熱交換器の製造方法を実現することができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、微細穴を有し且つ外側面に長手方向に沿って形成される鍔部を有するチューブ単管を押出成形により形成した後、そのチューブ単管の鍔部を重ね合わせてこれらチューブ単管を複数接合し、多数の微細穴が並列に穿設された複数のチューブ単管からなる扁平状のチューブとすることで、各微細穴を均一穴径とすることができ、微細穴へのつぶれ防止部材の挿入を容易なものとすることができる。また、このようにして得られたチューブは、反りやひけ等が無く均一な厚みとなるから、射出成形用金型へのチューブの設置を確実に行うことができると共に射出成形時のバリの発生も抑制できる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、押出工程時において各微細穴につぶれ防止部材を挿入させた状態で押出成形させたことにより、押出工程後に各微細穴につぶれ防止部材を挿入する手間を省くことが可能となる。従って、熱交換器の製造効率をより一層向上させることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、各チューブにおける座板の形成部分に、当該座板と係合するための係合加工を予め施しておくようにしたことにより、各チューブと座板との接合強度を向上させることができる。従って、これらチューブと座板との接合の信頼性をさらに向上させることが可能となる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、多数の微細穴を並列に穿設させた偏平状からなる複数のチューブを押出成形し、各微細穴につぶれ防止部材を挿入させた各チューブを、座板の射出成形用金型にセットして座板を射出成形するようにしたことにより、これらチューブを射出成形用金型に容易に配設することが可能となるため、多数のチューブと座板との接合作業を格段と簡易にすることができるとともに、これら多数のチューブと座板との接合強度を確保することができ、信頼性を向上させることができる。
【0024】
しかも、チューブの微細穴につぶれ防止部材を挿入させた状態で座板を射出成形するので、この射出成形時に微細穴がつぶれるのを未然に防止することができる。また、座板は各チューブを射出成形用金型にセットして射出成形するようにしたので、座板に対するチューブの位置決めの容易化を図ることができ、決まった形状に容易に樹脂加工することができる。
【0025】
かくして、製造工程を簡易化して量産できるとともに、信頼性を格段と向上させることができる熱交換器を実現することができる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、微細穴を有し且つ外側面に長手方向に沿って形成された鍔部を有した押出成形されてなるチューブ単管の複数個から構成し、各チューブ単管の鍔部を重ね合わせて接合一体化したチューブ構造としたことで、各微細穴を均一穴径とすることができると共に反りやひけ等が無く均一な厚みとすることができる。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、押出成形時において各微細穴につぶれ防止部材を挿入させた状態で押出成形されるようにしたことにより、押出工程後に各微細穴につぶれ防止部材を挿入させる手間を省くことが可能となる。従って、熱交換器の製造効率をより一層向上させることができる。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、各チューブにおける座板の形成部分に、当該座板と係合するための係合加工を予め施しておくようにしたことにより、各チューブと座板との接合強度を向上させることができる。従って、これらチューブと座板との接合の信頼性をさらに向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
なお、以下の実施の形態では、本発明の熱交換器の製造方法およびそれによって製造される熱交換器を、自動車に搭載される冷却系に用いられる熱交換器に適用した場合について述べる。
【0031】
図1は本発明における一実施の形態を示し、本実施の形態における熱交換器の製造方法によって製造される熱交換器の概略構成を示す分解斜視図である。
【0032】
図1に示すように、熱交換器1は、所定間隔を置いて配置された複数のチューブ2とこれらチューブ2における長手方向(紙面奥行き方向)の両端に設けられる座板3、3とからなるコア4を有している。
【0033】
この実施の形態の場合、チューブ2は、多数の微細穴(例えば円形穴)である冷媒通路2aが、それぞれ並列(一直線上に所定間隔を置いて配列)に穿設された偏平状からなり、このチューブ2が座板3に対して所定間隔を置いて複数個積層された状態で設けられている。
【0034】
また、コア4の前記長手方向の両端部には、タンク部材としての入口側ヘッダタンク5および出口側ヘッダタンク6が設けられるとともに、コア4の積層方向両側には、側板7、8が設けられている。
【0035】
さらに、これら各構成部品が組み立てられることによって形成される入口タンク部9および出口タンク部10には、それぞれ第1の熱交換媒体としての前記冷媒用の入口パイプ11、出口パイプ12が連通して設けられている。因みに、これら入口タンク部9および出口タンク部10の内部には、図示省略するタンク室が形成されている。
【0036】
そして、この熱交換器1では、入口パイプ11から入口タンク部9内に流入した冷媒が、各チューブ2の冷媒通路2a内を出口側へと流通し、出口タンク部10内にて合流した後、出口パイプ12から排出される。このとき、各チューブ2の冷媒通路2a内を冷媒が流通している際に、これらチューブ2の外側を流れる空気等の第2の熱交換媒体とチューブ2を介して熱交換するようになっている。
【0037】
さて、この実施の形態の場合、この熱交換器1は、以下のような製造工程により製造されている。すなわち、この製造方法は、まず、図2に示すように、押出工程において、直径0.48〔mm〕程度の微細穴からなる冷媒通路2aが多数並列に穿設された偏平状(すなわち、厚み約1〔mm〕以下(この場合、0.6〔mm〕程度)、幅(つまり、冷媒通路2aの積層方向)約15〔mm〕、肉厚約0.1〔mm〕からなるチューブ2を複数個、押出成形する。
【0038】
このとき、これらチューブ2の材質としては、前記冷媒としての水、ロングライフクーラント(LLC)、フロン等に耐え得る耐薬品性および使用環境温度に耐え得る耐熱性を有する合成樹脂材料であれば、例えば、ポリプロピレン(PP)やナイロン6(PA6:登録商標)、ナイロン66(PA66:登録商標)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマ(LCP)、フッ素系樹脂(テフロン(登録商標)を含む)など広く適用することができる。
【0039】
次に、図3に示すように、これらチューブ2の冷媒通路2aに、つぶれ防止部材である芯金13を挿入した状態で、準備工程において、図4に示すような座板の射出成形用金型20(以下、これを単に金型20と称する)にセットする。
【0040】
因みに、この芯金13は、前記押出工程時にチューブ2の冷媒通路2aに挿入された状態で押出成形するようにしても良く、この場合、押出工程後に各冷媒通路2aに芯金13を挿入する手間を省くことが可能となる分、熱交換器1の製造効率をより一層向上させることができる利点を得られる。
【0041】
この射出成形用金型20には、複数のチューブ2に対応したチューブ用溝21、21と、チューブ2における座板3の形成部分14(図3参照)に座板3に対応した座板成形用溝(座板成形用キャビティー)22が穿設されている。
【0042】
従って、これらチューブ用溝21に各チューブ2をセットすることのみで、必然的に座板3と各チューブ2との位置決めが可能となるようになされている。
【0043】
次いで、このように、各チューブ2を射出成形用金型20にセットした後、座板成形工程において、当該射出成形用金型20とほぼ同じ形状とされた図示を省略した金型とを、内側にチューブ2、2がセットされる状態で重ね合わせ、前記合成樹脂材料を流し込むことによって、図5に示すような座板3を射出成形する。
【0044】
そして、次の仕上げ工程において、チューブ2、2の各冷媒通路2aから芯金13を抜き取ることによって、チューブ2、2の両端に座板3、3を有するコア4(図1参照)を形成し、この後、これら座板3、3に対して入口側ヘッダタンク5および出口側ヘッダタンク6を取り付け、さらに側板7、8を取り付けることにより、熱交換器1が製造される。
【0045】
以上、説明したように、本実施の形態による熱交換器1の製造方法によれば、多数の冷媒通路2aを並列に穿設させた偏平状からなる複数のチューブ2、2を押出成形した後、これらチューブ2、2の冷媒通路2aに、それぞれ芯金13を挿入させた状態で射出成形用金型20にセットして座板3を射出成形するようにしたことにより、これらチューブ2、2を当該射出成形用金型20に容易に配設することが可能となる。そのため、多数のチューブ2、2と座板3との接合作業を格段と簡易にすることができるとともに、これら多数のチューブ2、2と座板3との接合強度を確保することができ、信頼性を向上させることができる。
【0046】
しかも、チューブ2の冷媒通路2aに芯金13を挿入させた状態で座板3を射出成形するので、この射出成形時に冷媒通路2aがつぶれるのを未然に防止することができる。また、座板3は各チューブ2、2を射出成形用金型20にセットして射出成形するようにしたので、座板3に対するチューブ2、2の位置決めの容易化を図ることができ、決まった形状に容易に樹脂加工することができる。
【0047】
かくして、製造工程を簡易化して量産できるとともに、信頼性を格段と向上させることができる熱交換器1の製造方法を実現することができる。
【0048】
また、本発明によれば、押出工程時において、各冷媒通路2aに芯金13を挿入させた状態で押出成形させたことにより、押出工程後に各冷媒通路2aに芯金13を挿入する手間を省くことが可能となる。従って、熱交換器1の製造効率をより一層向上させることができる。
【0049】
なお、上記した実施の形態の変形例としては、以下のような形態が考えられる。例えば、各チューブ2、2における座板3の形成部分14(図3参照)に、当該座板3と係合するための係合加工(例えば、接着剤の塗布や切り込み加工など)を予め施しておくようにすることにより、各チューブ2、2と座板3との接合強度の向上を図ることができる。従って、これらチューブ2、2と座板3との接合の信頼性をさらに向上させることが可能となる利点を得ることができる。
【0050】
また、チューブ2の形態としては、前記した形態の他に図6に示すような各種の形態が考えられる。
【0051】
図6(A)では、両端を円弧形状とした偏平状のチューブ30に、楕円形状の微細穴である冷媒通路30aを形成している。図6(B)では、両端を垂直とした偏平状のチューブ31に、略正方形状の冷媒通路31aを形成している。図6(C)では、両端を垂直とした偏平状のチューブ32に、略長方形状の冷媒通路32aを形成している。図6(D)では、両端を垂直とした偏平状のチューブ33に、略三角形状の冷媒通路33aをその向きを逆にして交互に形成している。図6(E)では、両面を鋸歯形状とした偏平状のチューブ34に、略ひし形状の冷媒通路34aを形成している。図6(F)では、両面を円弧状の波形形状とした偏平状のチューブ35に、円形状の冷媒通路35aを形成している。
【0052】
以上、本発明を適用した具体的な実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に制限されることなく種々の変更が可能である。
【0053】
上述した実施の形態では、チューブ2を、複数の微細穴である冷媒通路2aを並列に穿設した偏平状のチューブ構造としたが、冷媒通路を一つだけ有したチューブ単管の複数個を並べて接合一体化してなるチューブ構造としてもよい。
【0054】
図7から図10は、チューブ単管の複数個を並べて接合一体化したチューブを製造する工程図を示す。先ず、微細穴である冷媒通路2aを有し且つ外側面に長手方向に沿って形成される鍔部(ひれ部)40を有するチューブ単管41を押出成形によって形成する。かかるチューブ単管41は、軸芯に円形の冷媒通路2aを有した細長い(チューブ長さに相当)円筒体として形成されると共に、外側面の相対向する位置に、平坦面40aを上下に有した矩形状の鍔部40を有している。
【0055】
なお、チューブ単管41は、上記実施の形態と同様、ポリプロピレンなどの合成樹脂材料から形成され、上記したチューブ2の材質と同じものが何れも使用できる。
【0056】
次に、これらチューブ単管41を、図8に示すように、各チューブ単管41の鍔部40をそれぞれ重ね合わせて直線上に並列させる。そして、重ね合わされた鍔部40を、図9に示すように、熱圧着治具42で上下から挟み付けて加熱して接合する。或いは、接着剤を使用して各チューブ単管41の鍔部40同士を接合してもよい。
【0057】
このように、冷媒通路2a及び鍔部40を有したチューブ単管41の単体を並べて鍔部40同士を接合すれば、図10に示すように、冷媒通路2aの穴径が均一でしかも反りやひけなどの無いチューブが得られる。したがって、次工程で行う芯金13の各冷媒通路2aへの挿入が容易に行えると共にその挿入作業をスムーズに行うことが可能となる。また、その次の工程において、芯金13を冷媒通路2aに挿入し終えたチューブ2を射出成形用金型20に配置する場合も反りやひけなどが無いことから金型へのチューブ2の設置が容易となり、また座板を形成する射出成形時のバリの発生も無くなる。
【0058】
なお、座板の射出成形後の工程に関しては、上述した実施の形態と同様であるため、その説明は省略するものとする。
【0059】
図11は、矩形状のチューブ単管の鍔部を重ね合わせて接合してなるチューブを示す図である。図11では、冷媒通路2a及びその外形部を円形ではなく矩形状としている。この例のように、冷媒通路2a及びその外形部を円形とした場合には、芯金13もこれに合わせて矩形状とする。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施の形態における熱交換器の製造方法によって製造される熱交換器の概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1における熱交換器の製造工程を示し、チューブの一部を拡大して示す斜視図である。
【図3】図2におけるチューブにつぶれ防止部材が挿入された状態を示す断面図である。
【図4】チューブを射出成形用金型に配設した様子を示す斜視図である。
【図5】チューブの両端に座板が形成された様子を示す斜視図である。
【図6】チューブのバリエーションを示す図である。
【図7】微細穴を有し且つ外側面に長手方向に沿って形成される鍔部を有したチューブ単管を押出成形によって形成する工程を示す図である。
【図8】各チューブ単管の鍔部を重ね合わせ接合してチューブを形成する工程を示す図である。
【図9】チューブ単管の鍔部を熱圧着治具で熱融着して接合する工程を示す図である。
【図10】チューブ単管の複数個を接合してなるチューブの斜視図である。
【図11】矩形状のチューブ単管の鍔部を重ね合わせて接合してなるチューブを示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1…熱交換器
2…チューブ
2a…冷媒通路(微細穴)
3…座板
4…コア
5…入口側ヘッダタンク
6…出口側ヘッダタンク
7、8…側板
9…入口タンク部
10…出口タンク部
13…芯金(つぶれ防止部材)
20…金型(射出成形用金型)
21…チューブ用溝
22…座板成形用溝
40…鍔部
41…チューブ単管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチューブ(2)の両端に座板(3)が接合されてなるコア(4)を有する熱交換器(1)の製造方法において、
多数の微細穴(2a)が並列に穿設された偏平状の上記複数のチューブ(2)を押出成形する押出工程と、
各上記微細穴(2a)につぶれ防止部材(13)を挿入した状態で、各上記チューブ(2)を上記座板(3)の射出成形用金型(20)にセットする準備工程と、
上記射出成形用金型(20)に樹脂材料を流し込み、上記座板(3)を射出成形する座板成形工程と、
各上記微細穴(2a)から上記つぶれ防止部材(13)を抜き取る仕上げ工程とを備える
ことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項2】
複数のチューブ(2)の両端に座板(3)が接合されてなるコア(4)を有する熱交換器(1)の製造方法において、
微細穴(2a)を有し且つ外側面に長手方向に沿って形成される鍔部(40)を有するチューブ単管(41)を押出成形する押出工程と、
各上記チューブ単管(41)の上記鍔部(40)を重ね合わせて接合することで、多数の微細穴(2a)が並列に穿設された複数のチューブ単管(41)からなる偏平状のチューブ(2)を形成するチューブ形成工程と、
各上記微細穴(2a)につぶれ防止部材(13)を挿入した状態で、各上記チューブ(2)を上記座板(3)の射出成形用金型(20)にセットする準備工程と、
上記射出成形用金型(20)に樹脂材料を流し込み、上記座板(3)を射出成形する座板成形工程と、
各上記微細穴(2a)から上記つぶれ防止部材(13)を抜き取る仕上げ工程とを備える
ことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱交換器(1)の製造方法であって、
上記押出工程時において、上記微細穴(2a)に上記つぶれ防止部材(13)を挿入させた状態で押出成形する
ことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一つに記載の熱交換器(1)の製造方法であって、
各上記チューブ(2)における上記座板(3)の形成部分に、当該座板(3)と係合するための係合加工を予め施しておく
ことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項5】
複数のチューブ(2)の両端に座板(3)が接合されてなるコア(4)を有する熱交換器(1)であって、
各上記チューブ(2)は、押出成形にて形成され、多数の微細穴(2a)を並列に穿設させた偏平状とされ、
上記座板(3)は、各上記微細穴(2a)につぶれ防止部材(13)を挿入させた各上記チューブ(2)を、この座板(3)の射出成形用金型(20)にセットして射出成形されてなる
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項6】
請求項5に記載の熱交換器(1)であって、
上記チューブ(2)は、微細穴(2a)を有し且つ外側面に長手方向に沿って形成された鍔部(40)を有した押出成形されてなるチューブ単管(41)の複数個から構成され、各上記チューブ単管(41)の上記鍔部(40)を重ね合わせて接合一体化されてなる
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の熱交換器(1)であって、
上記押出成形時において、上記微細穴(2a)に上記つぶれ防止部材(13)を挿入させた状態で押出成形された
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項8】
請求項5から請求項7の何れか一つに記載の熱交換器(1)であって、
各上記チューブ(2)における上記座板(3)の形成部分に、当該座板(3)と係合するための係合加工を予め施された
ことを特徴とする熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−142811(P2006−142811A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297248(P2005−297248)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】