説明

熱交換器装着構造

【課題】 支持フレームに熱交換器を着脱自在に取り付ける熱交換器装着構造において、該熱交換器を支持フレームに安定して取り付けることのできる装着構造を得る。
【解決手段】 マウント部材35において、その回動中心で交差するように第1支持部36a及び第2支持部36bを設けるとともに、それらの上下端にそれぞれ蓋部37及び筒状部38を設ける。そして、上記第1及び第2支持部36a,36bからなる本体部36に上側スリット39及び下側スリット40を設ける。上記シュラウドパネル1の上壁部11aから車両後方側に延びる第1ブラケット30及び第2ブラケット31に、上記マウント部材35の本体部36が挿通可能な挿入孔30a,31a及び切欠部30b,30c,31b,31cを形成し、該マウント部材35を挿入した状態で回動させて、上記スリット39,40で該ブラケット30,31をそれぞれ挟み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に一体的に取り付けられた枠状の支持フレームに熱交換器を着脱可能に取り付けるための熱交換器装着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体に一体的に取り付けられた枠状の支持フレームに熱交換器を着脱可能に取り付ける構造として、例えば特許文献1に示すようなものが知られている。このものでは、熱交換器の上面及び下面の車幅方向両端にそれぞれ設けられた上装着ロッド(上側取付部)及び下装着ロッドを、支持フレームの上装着孔(挿入孔)に取り付けられた上マウント部材(マウント部材)及び該支持フレームに取り付けられた下マウント部材にそれぞれ挿通させて係止することで、熱交換器が支持フレームに着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0003】
より詳しくは、上記上装着孔は、上記支持フレームの上支持部材(上枠)から車幅方向両端で車両後方側に延びる上ブラケットに形成されていて、略円形の中央開口部と、この中央開口部の周縁部の車両前後方向両端をそれぞれ切り欠いた延出開口部とによって構成されている。そして、この上装着孔には、該上装着孔とほぼ同じ形状の下部を有する上記マウント部材が装着されるようになっていて、該上マウント部材の下部には、上記熱交換器の上装着ロッドが挿入される挿入穴が設けられている。また、上記上マウント部材の下部とその上側に形成されたディスク部との間には、該上マウント部材が上装着孔に装着された際に、該上装着孔の周縁部と嵌合するスリットが設けられている。
【0004】
上述のような構成において、上記熱交換器は以下のように支持フレームに取り付けられる。
【0005】
まず、上記上装着孔に熱交換器の上装着ロッドを下方から挿入した状態で、上記上マウント部材の下部を該上装着孔内に上方から挿入して嵌め込むとともに、その上マウント部材の下部の挿入穴に上記上装着ロッドを嵌入させる。なお、上記熱交換器の下装着ロッドは、該熱交換器の上装着ロッドが支持フレームの上装着孔に挿入された後に、該支持フレームに取り付けられた下マウント部材の貫通孔内に挿入される。
【0006】
そして、上記上マウント部材を支持フレームの上装着孔に装着した後、該上マウント部材をその軸心回りに90度回転させて、該上マウント部材の下部とディスク部との間のスリットに上記上装着孔の周縁部、すなわち支持フレームの上ブラケットを挟み込む。これにより、熱交換器は上マウント部材を介して支持フレームに着脱可能に取り付けられる。
【特許文献1】特開2002−127940号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のように、支持フレームの車幅方向両端に1つずつ設けられたブラケットをマウント部材によって挟み込む構造では、該マウント部材はそのブラケットに対して1箇所で嵌合しているだけなので、重量の大きい熱交換器が上記支持フレームに取り付けられると、該ブラケットとマウント部材との嵌合状態が不安定になり、熱交換器に振動やモーメント等が生じる可能性があった。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、支持フレームに熱交換器を着脱自在に取り付ける熱交換器装着構造において、該支持フレームと熱交換器とを連結するためのマウント部材の構造に工夫を凝らして、該熱交換器を支持フレームに安定して取り付けることのできる装着構造を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る熱交換器装着構造では、マウント部材にその回動中心で交差するように上下方向に延びる2つの支持部を設けるとともに、支持フレームの車両後方側に上下方向に並行して延びる2つのブラケットを設けて、それぞれのブラケットに対応するようにマウント部材の上記支持部の上下部分に2つのスリットを形成する。そして、上記ブラケットにそれぞれ形成され、上記支持部のみが挿通可能な切欠部を備えた挿入孔に上記マウント部材を挿通させて回動させることによって、上記2つのスリットにブラケットをそれぞれ嵌合させる。
【0010】
すなわち、請求項1の発明では、車体に一体的に取り付けられた枠状の支持フレームに熱交換器をマウント部材により着脱可能に取り付けるようにした熱交換器装着構造を前提とする。
【0011】
そして、上記マウント部材には、それぞれ上下方向に延び且つ該マウント部材の回動中心で互いに交差する方向に延びる第1支持部と第2支持部とが一体に形成されているとともに、上記第1及び第2支持部の上端には、回動操作部を備えた蓋部が一体に形成されている一方、上記第1及び第2支持部の下端には、外径が上記蓋部の外周より小径であって、熱交換器から上方に延びる略円柱状の上側取付部が内部に嵌入される筒状部が一体に形成されていて、上記第1及び第2支持部の半径方向の長さは、上記筒状部の外径より長く設定され、上記第1及び第2支持部の上記蓋部側並びに上記筒状部側には、それぞれ、第1及び第2支持部の外端から内側に延びる上側スリット及び下側スリットが形成されているものとする。
【0012】
また、上記支持フレームは、該支持フレームの上枠から車両後方側に延出し、上記マウント部材の上側スリット及び下側スリットにそれぞれ対応するように上下方向に離間して形成された第1ブラケット及び第2ブラケットを備え、上記第1及び第2ブラケットには、上記筒状部を挿入可能な略円形状の挿入孔が設けられていて、該挿入孔には、上記第1及び第2支持部がそれぞれ挿入可能なように一対の第1切欠部及び第2切欠部が形成され、上記第1及び第2ブラケットのそれぞれの上下面のうち少なくとも一つの面における上記第1切欠部と第2切欠部との間には、上記マウント部材を回動させて上記上側スリット及び下側スリットに上記第1及び第2ブラケットを嵌合させて当該マウント部材を支持フレームに取り付ける際に、上記上側スリット及び下側スリットをそれぞれ構成する上下壁部のうち少なくとも一つの壁部が乗り越えた後、上記マウント部材の回動を阻止するための突状のロック部が形成されているものとする。
【0013】
この構成により、マウント部材を介して熱交換器を支持フレームに取り付けるときには、該マウント部材の回動中心で交差するように配設された第1支持部及び第2支持部が、支持フレームから車両後方側に延出する第1ブラケット及び第2ブラケットに形成された挿入孔に対して、上記第1支持部及び第2支持部を上下方向に挿通可能なように形成された第1切欠部及び第2切欠部を挿通する一方、該マウント部材の第1支持部及び第2支持部の上側に形成された蓋部は、その外径が上記挿入孔より大きく形成されているため、上記支持フレームの第1ブラケットに当接する。
【0014】
そして、上述のようにマウント部材を第1ブラケット及び第2ブラケットの挿入孔に挿通させると、該挿入孔の下方に上側取付部が位置するように熱交換器が配置されているため、該マウント部材の下部に形成された筒状部内に該上側取付部が嵌入される。その状態で該マウント部材を回動させることによって、該第1ブラケット及び第2ブラケットが、それぞれ、第1及び第2支持部の蓋部側及び筒状部側に形成された上側スリット及び下側スリットに嵌合し、上記マウント部材が第1及び第2ブラケットに係止された状態になる。
【0015】
ここで、上記マウント部材の回動は、該マウント部材の上側及び下側スリットをそれぞれ構成する上下壁部のうち少なくとも一つの壁部が、上記第1ブラケット及び第2ブラケットの少なくとも一つの面に設けられた突状のロック部を乗り越えた後、該ロック部によって制限されるため、上記マウント部材は、支持フレームに対して回転方向にも所定の位置で係止される。
【0016】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、第1支持部の半径方向の長さは、第2支持部の半径方向の長さよりも短いものとする。
【0017】
請求項3の発明では、第1支持部及び第2支持部は、互いに略直交するように設けられているものとする。
【0018】
請求項4の発明では、マウント部材の筒状部内には、熱交換器の上側取付部を覆うように設けられた弾性体が嵌入されるものとする。
【0019】
請求項5の発明では、下側スリット及び上側スリットの少なくとも一方には、その下壁部を構成し且つ略水平方向に延びるように第1支持部材及び第2支持部材よりも幅広のリブが形成されているものとする。
【0020】
請求項6の発明では、第1支持部と第2支持部との間には、それらを連結するように略水平方向に延びるリブが形成されているものとする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明に係る熱交換器装着構造によれば、支持フレームに熱交換器を取り付けるためのマウント部材において、支持フレームから車両後方側へ延びる第1ブラケット及び第2ブラケットにそれぞれ設けられた挿入孔に上記マウント部材を上方から挿入して、熱交換器の上側取付部を該マウント部材の下部に設けられた筒状部内に嵌入させた後、該マウント部材を回動させて、そのマウント部材に形成された上側スリット及び下側スリットに上記第1及び第2ブラケットをそれぞれ嵌合させるようにしたため、マウント部材に対して1つのブラケットが嵌合される従来構造に比べて、重量の大きい熱交換器を支持フレームに安定した状態で着脱可能に取り付けることができる。
【0022】
また、上記支持フレームの2つブラケットのそれぞれの上下面のうち少なくとも一つの面に突状のロック部を設けたため、常に所定の位置でマウント部材をロックすることが可能になるとともに、作業者に節度感を与えることができ、組み立て時の作業性を良くすることができる。
【0023】
請求項2の発明によれば、マウント部材の第1支持部の半径方向長さを第2支持部よりも短くしたので、支持フレームの第1ブラケット及び第2ブラケットにマウント部材を挿入する際に、マウント部材の挿入違いを防止することができ、組み立て時の作業効率を向上することができる。
【0024】
請求項3の発明によれば、第1支持部と第2支持部とを、互いに略直交するように設けたので、マウント部材の上側及び下側スリットに支持フレームの第1ブラケット及び第2ブラケットがそれぞれ嵌合された状態において、該マウント部材の第1支持部及び第2支持部で上記第1及び第2ブラケットを略均等に支持することができ、該マウント部材は倒れ等を生じることなく安定した状態で支持フレームに装着される。
【0025】
請求項4の発明によれば、マウント部材の筒状部内に、熱交換器の上側取付部を覆うように設けられた弾性体も嵌入されるようにしたため、熱交換器から支持フレームを介して車体側に伝達される振動を効果的に低減することができる。
【0026】
請求項5の発明によれば、マウント部材の下側スリット及び上側スリットの少なくとも一方に、その下壁部を構成し且つ略水平方向に延びるように第1支持部材及び第2支持部材よりも幅広のリブを設けたため、第1及び第2ブラケットに対するマウント部材の接触面積が上記リブを設けない場合に比べて増大し、マウント部材の上側及び下側スリットに上記第1及び第2ブラケットをより安定した状態で嵌合させることができる。これにより、マウント部材を支持フレームに対してより安定した状態で装着することができる。
【0027】
請求項6の発明によれば、第1支持部と第2支持部との間に、それらを連結するように略水平方向に延びるリブを設けたため、マウント部材のねじり剛性を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る熱交換器装着構造が適用された自動車のフロントエンドモジュールMを分解した状態で示す。このモジュールMは、主として、概略矩形枠状をなす樹脂製シュラウドパネル1(支持フレーム)と、図示しないエンジンの冷却水を走行風によって冷却する熱交換器としてのラジエータ2と、該ラジエータ2の前方に配置される空調装置用熱交換器としてのコンデンサ3と、上記ラジエータ2の後側に取り付けられる冷却用ファン(図示せず)とによって構成されている。
【0030】
そして、上記モジュールMは、図2に一例を示すような自動車V(車両)の前部においてラジエータグリルGやフロントバンパーB等の裏側に、図1に示すように、シュラウドパネル1が左右フロントサイドフレーム4,4(図には先端側のみ示す)の前端部を連結するように配置される。
【0031】
上記シュラウドパネル1は、例えばガラス繊維で強化したポリプロピレン等の樹脂からなり、図3にも示すように、上記ラジエータ2(及びコンデンサ3)を保持するラジエータ保持部11と、該ラジエータ保持部11の左右(車幅方向)両側にそれぞれ設けられ、車体の左右フロントサイドフレーム4,4の前端フランジ部4a,4aにそれぞれ締結される車体締結部12,12とを有している。
【0032】
上記ラジエータ保持部11は、上下に相対向して車幅方向に延びる上壁部11a及び下壁部11bと、該上壁部11a及び下壁部11bの左側端部同士及び右側端部同士をそれぞれ連結する左右側壁部11c,11cとを有していて、上記ラジエータ2の外形形状に対応して略矩形枠状をなしている。そして、それらの各壁部11a〜11cにより囲まれた開口部11dにコアの前面を臨ませて、コンデンサ3及びラジエータ2が配置されるようになっている。このラジエータ2には、その上面及び下面の車幅方向両端に、それぞれ上方及び下方に突出する上側取付部2a,2a及び下側取付部2b,2bが設けられていて、後述するように、これらの上下取付部2a,2bを介して該ラジエータ2がシュラウドパネル1に装着されるようになっている。
【0033】
また、上記左右の車体締結部12,12は、それぞれ、上記ラジエータ保持部11の左右側壁部11c,11cから車幅方向外側に向かって延出した板状のものであり、特に図示しないが、バンパーレインフォースメントの左右両端部に配設されたクラッシュ管の後端部にそれぞれ設けられたフランジ部と、上記左右フロントサイドフレーム4,4のフランジ部4a,4aとの間にそれぞれ介装されて、該バンパーレインフォースメントの左右フランジ部と共に左右フロントサイドフレーム4,4のフランジ部4a,4aにボルトにより締結されるようになっている。
【0034】
上記左右の車体締結部12,12の車幅方向外側には、図1及び図3に示すように、それぞれ、該車体締結部12,12に近接させて液体貯留用タンク及び吸気レゾネータのケーシング15,16を配設するためのケーシング配設部15a,16aが一体成形されている。これらのケーシング配設部15a,16aの後側には、それぞれ、車体前方に向かって開口する概略矩形断面の容器状に形成された樹脂製のケーシング本体部15b,16bが組み合わされることで、液体貯留用タンク及び吸気レゾネータのケーシング15,16が構成される。
【0035】
さらに、上記シュラウドパネル1の下壁部11bには、図5に示すように、車両後方側に延びる下側ブラケット20が形成されていて、該下側ブラケット20には、挿入孔20aが形成されている。この挿入孔20aには、概略円筒形状の弾性部材21が挿入されていて、該弾性部材21内に上記ラジエータ2の下側取付部2bが嵌入されるようになっている。このように、上記ラジエータ2とシュラウドパネル1との間に弾性部材21を介設することで、該ラジエータ2で生じた振動等が車体側(シュラウドパネル)に伝達するのを効果的に低減することができる。なお、上記弾性部材21には、上下方向の中央付近外周にフランジ部21aが一体形成されており、このフランジ部21aが上記下側ブラケット20に上方から当接することで、上記ラジエータ2を弾性的に支持している。
【0036】
そして、本発明の特徴部分であるが、上記シュラウドパネル1の上壁部11aには、図4に示すように、車両後方側に延びる第1ブラケット30及び第2ブラケット31が上下方向に離間して形成されていて、この第1及び第2ブラケット30,31にそれぞれ形成された略円形状の挿入孔30a,31aにマウント部材35を挿入して取り付けるとともに、該マウント部材35の下部に上記ラジエータ2の上側取付部2aを連結することで、該ラジエータ2の上部がシュラウドパネル1に固定されるようになっている。
【0037】
具体的には、上記マウント部材35は、図8にも示すように、上下方向に延びる概略板状の第1支持部36a及び第2支持部36bが略直交するように配設された本体部36と、該本体部36の上端に形成された略円盤状の蓋部37と、上記本体部36の下端に形成され、該蓋部37より小径の有底円筒状の筒状部38とを備えている。
【0038】
そして、上記第1支持部36aは、図8及び図9に示すように、その幅方向(半径方向、図中で左右方向)の長さが上記蓋部37の外径よりも小さく形成される一方、上記第2支持部36bは、蓋部37の外径よりも大きく形成されていて、上記第1支持部36aと第2支持部36bとの間には、それらを連結するように上記筒状部38の外径とほぼ同じかそれよりも小径の円弧状リブ41,41,…が上下方向に離間して複数(本実施形態では4つ)、形成されている。このように第1支持部36aと第2支持部36bとの間にリブ41,41,…を設けることにより、マウント部材35の本体部36のねじり剛性を大きくすることができる。
【0039】
また、本体部36と蓋部37との間、すなわち本体部36の蓋部37側、及び該本体部36の筒状部38側には、それぞれ、該本体部36の水平方向の外端から筒状部38の外周に至る上側スリット39及び下側スリット40が形成されており、これらのスリット39,40は、マウント部材35をシュラウドパネル1に装着した状態で、該シュラウドパネル1の第1ブラケット30及び第2ブラケット31に対応した位置に位置付けられるようになっている。
【0040】
すなわち、上記マウント部材35の第1支持部36aは、上記下側スリット40によって、上側第1支持部36cと下側第1支持部36dとに分けられ、また、第2支持部36bも同様に、上側第2支持部36eと下側第2支持部36fとに分けられる。そして、上側スリット39及び下側スリット40にそれぞれ面し且つそれらのスリット39,40の下壁を構成する、上側第1支持部36c及び上側第2支持部36eの上端と下側第1支持部36d及び下側第2支持部36fの上端とには、それぞれ、上記支持部36a,36bの板厚よりも幅広のリブ36g,36g,…,36h,36h,…が形成されている。
【0041】
このように、上記マウント部材35におけるスリット39,40に面する部分(下壁を構成する部分)に支持部36a,36bの板厚よりも幅広のリブ36g,36hを設けることで、詳しくは後述するように、上記スリット39,40内でシュラウドパネル1のブラケット30,31を安定して挟持することができる。
【0042】
なお、この実施形態では、図8に示すように、上記マウント部材35の上側スリット39に、上記蓋部37及び第1支持部36aからそれぞれ対向して突出する突出部37b,36iを設けて、この突出部37b,36i間の間隔を上記シュラウドパネル1の第1ブラケット30の厚みに応じて調整できるようにしているが、これに限らず、上記突出部37b,36iは設けなくても良い。
【0043】
上記筒状部38は、下方に向かって開口するように釣り鐘状に形成されていて、マウント部材35がシュラウドパネル1に装着された際には、後述するように、該筒状部38の内部に、略筒状の弾性部材45によって覆われたラジエータ2の上側取付部2aが挿入されるようになっている。
【0044】
また、図8及び図9に示すように、上記蓋部37の上面には、上方に突出し且つ第2支持部36bと同一方向に延びるように縦壁部37aが一体に設けられていて、この縦壁部37aがマウント部材35を回動させる際のツマミ部(回動操作部)として機能する。
【0045】
一方、上記シュラウドパネル1の第1ブラケット30及び第2ブラケット31にそれぞれ形成された挿入孔30a,31aは、上面視で図6に示すような切欠部を有する形状になっている。なお、挿入孔30a,31aは同一形状であるため、以下の説明では、第2ブラケット31の挿入孔31aについてのみ説明する。
【0046】
すなわち、上記挿入孔31aは、図4にも示すように、上記マウント部材35の蓋部37の外径よりも小さく且つ筒状部38が挿入可能な大きさに形成されていて、該挿入孔31aの外周には、上記マウント部材35の第1支持部36a及び第2支持部36bがそれぞれ挿通可能なように、第1切欠部31b,31b及び第2切欠部31c,31cがそれぞれ対向して形成されている。すなわち、上記マウント部材35の第1支持部36aが第2支持部36bよりも幅方向(マウント部材35の直径方向)に短く形成されているのに対応して、図6に示すように、上記挿入孔31aの第1切欠部31bは、その切欠長さが第2切欠部31cよりも短くなっている。なお、図6に示す11eは、シュラウドパネル1の第1ブラケット30と第2ブラケット31とを連結する縦リブである。
【0047】
上述の構成により、上記第1支持部36aを第1切欠部30b,31bに、上記第2支持部36bを第2切欠部30c,31cに、それぞれ対応させて、マウント部材35を挿入孔30a,31aにシュラウドパネル1の上方から挿通させると、該マウント部材35の筒状部38は挿入孔30a,31aを通過する。一方、蓋部37は上記挿入孔30aを通過できず、その下面が上記第1ブラケット30の上面に当接する。なお、上述のように、上記本体部36における第1支持部36aの幅方向の長さを第2支持部36bよりも短くすることで、マウント部材35を挿入する際の挿入違いをなくすことができ、作業効率を向上することができる。
【0048】
そして、上記マウント部材35を第1ブラケット30及び第2ブラケット31の挿入孔30a,31aに挿通させると、該マウント部材35の筒状部38の内部に、上記挿入孔31aの下方に配置されたラジエータ2の上側取付部2aが弾性部材45とともに嵌入される。この弾性部材45は略円筒状の部材であり、その内部に上記上側取付部2aが嵌入される一方、上下方向の中央付近外周にはフランジ部45aが形成されていて、このフランジ部45aに上記マウント部材35の筒状部38の下端が当接する。
【0049】
このように、ラジエータ2の上側取付部2aとマウント部材35の筒状部38との間に弾性部材45を設けることで、ラジエータ2で生じた振動等が車体(シュラウドパネル1)側に直接、伝わるのを効果的に防止することができる。さらに、上記弾性部材45によってマウント部材35に上方への付勢力(反力)が与えられるため、該マウント部材35を上記シュラウドパネル1の第1及び第2ブラケット30,31の下面に押し付けることができ、安定した状態で該マウント部材35を装着することができる。
【0050】
さらに、このように上記マウント部材35をシュラウドパネル1に装着した状態では、上記弾性部材45の上方への付勢力によって、該マウント部材35のスリット39,40の下壁を構成する幅広の上記リブ36g,36g,…36h,36h,…が、シュラウドパネル1の第1及び第2ブラケット30,31の下面にそれぞれ当接するため、該ブラケット30,31とマウント部材35との接触面積が上記リブ36g,36hのない場合に比べて増大し、該マウント部材35をシュラウドパネル1に対してより安定した状態で装着することができる。
【0051】
上述のように、上記マウント部材35をシュラウドパネル1の第1ブラケット30及び第2ブラケット31に設けられた挿入孔30a,31aに挿入した後、該マウント部材35を弾性部材45の弾性復元力(反力)に抗して下方に押し付けながら回動させることで、該マウント部材35の上側スリット39及び下側スリット40内を上記シュラウドパネル1の第1ブラケット30及び第2ブラケット31がそれぞれ相対移動して、該ブラケット30,31が上側スリット39及び下側スリット40に挟み込まれた状態になる。
【0052】
ここで、上記第2ブラケット31の上面には、図6及び図7に示すように、上記第1切欠部31bと第2切欠部31cとの間で、挿入孔31aに対して車両前後方向の位置に、それぞれ、該挿入孔31aから車両前後方向に略平行に延びる一対の突部31d,31dが形成されている。この突部31d,31dは、上記マウント部材35が上方から第1ブラケット30及び第2ブラケット31の挿入孔30a,31a内に挿入され、該マウント部材35が例えば上方から見て時計回りに回動された後に、該マウント部材35を所定の位置で係止させるためのロック部であり、該マウント部材35の本体部36の第1支持部36aの下端が第1切欠部31bに近い一方の突部31dを乗り越えた後、該突部31d,31d間に係止され、マウント部材35の回動が阻止されるようになっている。
【0053】
一方、上記マウント部材35を第1ブラケット30及び第2ブラケット31の挿入孔30a,30bに上方から挿入した状態で、該マウント部材35を上方から見て反時計回りに回動させた場合にも、上記突部31d,31dはロック部として機能し、マウント部材35の第2支持部36bの下端が上記第2切欠部31cに近い他方の突部31dを乗り越えた後、突部31d,31d間に係止され、上記マウント部材35の回動が阻止される。
【0054】
このようにロック部を突部31d,31dによって構成することで、上述のように、第1支持部36aの下端が一方の突部31dを乗り越える際若しくは第2支持部36bの下端が他方の突部31dを乗り越える際に、作業者に節度感を与えることができる。
【0055】
なお、この実施形態では、図7に示すように、上記突部31d,31dは、それぞれの稜線を中心として左右対称に形成されているが、この限りではなく、上記突部31d,31d間に臨む側の斜面(内側の斜面)を急な斜面として、上記突部31d,31dの稜線を挟んで外方側の斜面(外側の斜面)を上記内側の斜面よりも緩やかに形成して、突部31d,31d間に該第2支持部36bが入り込みやすいようにしてもよい。
【0056】
以上より、本実施形態によれば、上記マウント部材35は、その筒状部38内にラジエータ2の上側取付部2aが嵌入された状態でシュラウドパネル1に係止されるため、ラジエータ2をシュラウドパネル1に着脱可能に取り付けることができる。しかも、上記マウント部材35は、その本体部36に形成されたスリット39,40によってシュラウドパネル1に設けられた2つのブラケット30,31にそれぞれ係止されるため、重量の大きいラジエータ2を安定した状態でシュラウドパネル1に取り付けることができる。
【0057】
また、上記マウント部材35の第1及び第2支持部36a,36bを互いに直交するように設けることにより、該マウント部材35のスリット39,40内にシュラウドパネル1のブラケット30,31がそれぞれ嵌合した状態において、該ブラケット30,31を上記支持部36a,36bでバランス良く支持することができるため、上記マウント部材35が倒れ等を生じることなく安定した状態でラジエータ2をシュラウドパネル1に装着することができる。
【0058】
(その他の実施形態)
本発明の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、マウント部材35の本体部36を構成する第1支持部36a及び第2支持部36bは、それぞれ、直交するように配設されているが、この限りではなく、両者が交差していればよい。また、上記第1支持部36a及び第2支持部36bは、上面視で直線状に形成された板状部材としているが、途中で折れ曲がっているような形状でもよいし、上面視で略円弧状に形成されているなどの形状でもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、マウント部材35の第1支持部36aの幅方向長さ(直径方向の長さ)を蓋部37の外径よりも小さくする一方、第2支持部材36bの幅方向長さを該蓋部37の外径よりも大きくしているが、この限りではなく、第1支持部36a及び第2支持部36bの幅方向長さを同じにしてもよい。ただし、上記マウント部材35のスリット39,40によってシュラウドパネル1の第1ブラケット30及び第2ブラケット31をそれぞれ挟み込む必要があるため、上記第1支持部36a及び第2支持部36bの幅方向長さは、該第1及び第2ブラケット30,31に形成される挿入孔30a,31aの外径よりも大きくする必要がある。
【0060】
また、上記実施形態では、マウント部材35のスリット39,40を本体部36の外端から筒状部38の外周まで形成するようにしているが、これに限らず、マウント部材35を回動してシュラウドパネル1のブラケット30,31がそれぞれ嵌合できる長さであればどのような長さでもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、図9に示すように、マウント部材35の蓋部37に形成される縦壁部37aが第2支持部36bと同じ方向に延びるように形成されているが、この限りではなく、該第2支持部36bと交差するように形成してもよいし、第1支持部36aと同じ方向に延びるように形成してもよい。また、上面視で十字状に形成してもよい。
【0062】
さらに、上記実施形態では、シュラウドパネル1の第2ブラケット31の上面にロック部を設けているが、これに限らず、該第2ブラケット31の下面に設けるようにしてもよいし、第1ブラケット30の上面及び下面の少なくとも一方に設けるようにしてもよい。すなわち、このロック部は、第1ブラケット30及び第2ブラケット31のそれぞれの上下面のうち少なくとも一つの面に形成されていればよい。ただし、マウント部材35をシュラウドパネル1に装着する際には、該マウント部材35を下方に押し付けた状態で回動させるため、上記ロック部は第1ブラケット30及び第2ブラケット31の上面に設けるのが好ましい。
【0063】
なお、当然のことながら、上述のように、第1ブラケット30及び第2ブラケット31のそれぞれの上下面のうち少なくとも一つの面にロック部を形成する場合には、そのロック部に対応して上記マウント部材35に係止部としての突出部を設ける必要がある。
【0064】
さらにまた、シュラウドパネル1の車体締結部12,12の車幅方向外側に液体貯留用タンク及び吸気レゾネータのケーシング15,16を設けているが、この限りではなく、これらのケーシング15,16をシュラウドパネル1とは別に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施形態に係る熱交換器装着構造が適用された自動車のフロントエンドモジュールを示す分解斜視図である。
【図2】自動車の前部の一例を示す図である。
【図3】シュラウドパネルの正面図である。
【図4】シュラウドパネルに熱交換器の上側取付部を取り付けた状態を示す図3のI−I線断面図である。
【図5】シュラウドパネルに熱交換器の下側取付部を取り付けた状態を示す図3のII−II線断面図である。
【図6】マウント部材が装着されていない状態のシュラウドパネルの第2ブラケットを示す図4のIII−III線断面図である。
【図7】ロック部を示す図6のIV−IV線断面図である。
【図8】マウント部材の全体構成を示す斜視図である。
【図9】マウント部材の上面図である。
【符号の説明】
【0066】
B フロントバンパ
M フロントエンドモジュール
1 シュラウドパネル(支持フレーム)
2 ラジエータ(熱交換器)
2a 上側取付部
2b 下側取付部
3 コンデンサ(熱交換器)
11 ラジエータ保持部
11a 上壁部
11d 開口部
30 第1ブラケット
30a 挿入孔
30b 第1切欠部
30c 第2切欠部
31 第2ブラケット
31a 挿入孔
31b 第1切欠部
31c 第2切欠部
31d 突部(ロック部)
35 マウント部材
36 本体部
36a 第1支持部
36b 第2支持部
36g、36h リブ
37 蓋部
37a 縦壁部(回動操作部)
38 筒状部
39 上側スリット
40 下側スリット
41 リブ
45 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に一体的に取り付けられた枠状の支持フレームに熱交換器をマウント部材により着脱可能に取り付けるようにした熱交換器装着構造であって、
上記マウント部材には、それぞれ上下方向に延び且つ該マウント部材の回動中心で互いに交差する方向に延びる第1支持部と第2支持部とが一体に形成されているとともに、
上記第1及び第2支持部の上端には、回動操作部を備えた蓋部が一体に形成されている一方、上記第1及び第2支持部の下端には、外径が上記蓋部の外周より小径であって、熱交換器から上方に延びる略円柱状の上側取付部が内部に嵌入される筒状部が一体に形成されていて、
上記第1及び第2支持部の半径方向の長さは、上記筒状部の外径より長く設定され、
上記第1及び第2支持部の上記蓋部側並びに上記筒状部側には、それぞれ、第1及び第2支持部の外端から内側に延びる上側スリット及び下側スリットが形成されており、
上記支持フレームは、該支持フレームの上枠から車両後方側に延出し、上記マウント部材の上側スリット及び下側スリットにそれぞれ対応するように上下方向に離間して形成された第1ブラケット及び第2ブラケットを備え、
上記第1及び第2ブラケットには、上記筒状部を挿入可能な略円形状の挿入孔が設けられていて、該挿入孔には、上記第1及び第2支持部がそれぞれ挿入可能なように一対の第1切欠部及び第2切欠部が形成され、
上記第1及び第2ブラケットのそれぞれの上下面のうち少なくとも一つの面における上記第1切欠部と第2切欠部との間には、上記マウント部材を回動させて上記上側スリット及び下側スリットに上記第1及び第2ブラケットを嵌合させて当該マウント部材を支持フレームに取り付ける際に、上記上側スリット及び下側スリットをそれぞれ構成する上下壁部のうち少なくとも一つの壁部が乗り越えた後、上記マウント部材の回動を阻止するための突状のロック部が形成されていることを特徴とする熱交換器装着構造。
【請求項2】
請求項1において、
第1支持部の半径方向の長さは、第2支持部の半径方向の長さよりも短いことを特徴とする熱交換器装着構造。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一つにおいて、
第1支持部及び第2支持部は、互いに略直交するように設けられていることを特徴とする熱交換器装着構造。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つにおいて、
筒状部の内部には、熱交換器の上側取付部を覆うように配設された弾性体が嵌入されていることを特徴とする熱交換器装着構造。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つにおいて、
下側スリット及び上側スリットの少なくとも一方には、その下壁部を構成し且つ略水平方向に延びるように第1支持部材及び第2支持部材よりも幅広のリブが形成されていることを特徴とする熱交換器装着構造。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つにおいて、
第1支持部と第2支持部との間には、それらを連結するように略水平方向に延びるリブが形成されていることを特徴とする熱交換器装着構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−1359(P2006−1359A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178270(P2004−178270)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(300084421)ジー・ピー・ダイキョー株式会社 (50)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】