説明

熱伝導性電子回路基板およびそれを用いた電子機器ならびにその製造方法

【課題】 アルミニウムなどの金属からなる導電性基板を用いて絶縁性と熱伝導性という相反する2つの要求を満たす、金属をベースとする電子回路基板を提供する。
【解決手段】 熱伝導性電子回路基板100は、電子回路を形成する基板となるとともに、電子回路素子において発生した熱を拡散させる熱伝導体となる導電性基板110と、導電性基板110の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥して形成した絶縁性と熱伝導性を備えた熱伝導性絶縁膜120と、前記熱伝導性絶縁膜120の表面に形成した電子回路パターン130および電子回路素子140を備える。熱伝導性絶縁膜120は優れた絶縁性と熱伝導性を備えており、薄い膜厚でも電子回路パターン130に対して十分に絶縁性を与えることができ、熱伝導性が良く膜厚が薄いため熱抵抗体とはならず、電子回路素子で発生した熱を効率的に電子回路パターン130から導電性基板110に伝導して系外に放熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱伝導性と絶縁性を備えた電子回路基板およびその電子回路基板を組み込んだ電子機器ならびにその製造方法に関する。その応用範囲は広く、多様な電子機器や電子部品等がある。例えば、搭載する電子素子としてLED発光素子を搭載したLED蛍光灯がある。 また、半導体素子、半導体パッケージ、半導体封止ケース、半導体ダイボンディング、CPU、MPU、メモリ、パワートランジスタ、パワートランジスタケース等の半導体関連部品、リジッド配線板、フレキシブル配線板、セラミック配線板、ビルドアップ配線板、多層基板等の配線基板(以上左記の配線板とは、プリント配線板なども含む)等、さらには、それら電子回路基板を用いた各種の電子機器装置、システム装置など、その応用範囲は多様である。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント回路基板として、ガラスエポキシ樹脂からなる絶縁層に銅線などにより回路を形成した樹脂製電子回路基板が用いられてきた。しかし、このようなガラスエポキシ樹脂からなる絶縁層は熱伝導性が低いため、放熱対策が重要な課題となっており、電子部品の高集積化に伴い放熱性に優れたプリント回路用基板が望まれるようになってきた。
その解決策として、基板として軽量かつ熱伝導性の良いアルミニウム、銅或いは鉄等の金属を採用し、この金属の上に有機接着層やガラス層などの絶縁層を形成し、さらに、この絶縁層の上に金属メッキ層を形成した金属基板を用いた電子回路基板が開発されている。特に、金属基板としては、軽量でかつ熱伝導性が良く廉価で汎用性の高いアルミニウムが注目されている。例えばアルミニウム基板の表面に樹脂などの有機物、又はガラス等の無機物からなる電気絶縁層を公知の物理又は化学蒸着技術で付加し、その絶縁層上に回路を設けた熱伝導性電子回路基板の製造方法が知られている。
【0003】
図11は、上記した金属基板の上に絶縁層を形成してさらにこの絶縁層の上に回路を形成した金属基板を用いた従来の電子回路基板の構造を模式的に示した図である。
図11に示した金属基板を用いた電子回路基板1は、アルミニウムや銅の金属基板10の上に、エポキシ樹脂などの有機接着剤の絶縁層20を設け、その上に銅線の回路パターン30と電子回路素子40とを形成したものである。ここで、図11(a)に示した電子回路基板1では、十分な絶縁性を確保せしめるため、エポキシ樹脂などの有機接着剤の絶縁層20として例えば80〜120μm程度の厚さが必要とされる。つまり、図11(a)に示した金属基板を用いた電子回路基板1は、ベースとなる金属基板10自体は熱伝導性がきわめて大きいものの、電子回路パターンとの間の絶縁層20は、有機接着剤という熱抵抗の大きな素材を用い、さらにその厚みが80〜120μmと厚くする必要があった。
【0004】
そこで、ガラスエポキシ樹脂などの有機接着剤の中にセラミックなどの熱伝導性を備えた粒子を顔料として混ぜ込む工夫を施すことがある。図11(b)に示した金属基板を用いた電子回路基板2では、アルミニウムや銅の金属基板10の上に、エポキシ樹脂などの有機接着剤の絶縁層20を設け、その中にセラミック等の熱伝導性粒子21を混ぜ込み、
その上に銅線の回路パターン30と電子回路素子40とを形成したものである。
【0005】
【特許文献1】特開2006−100135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の技術には以下の問題があった。
まず、上記の図11(a)に示した金属基板を用いた電子回路基板1では、絶縁性をしっかりと確保するため絶縁層として熱抵抗の極めて大きい有機絶縁層20を形成させたものである為、アルミニウム基板10の高い熱伝導特性が反映され難くなり、結局、十分な熱伝導特性を有する基板が得られないという問題があった。また、絶縁性を確保するため、例えば、絶縁層20を80〜120μm程度まで厚くせざるを得ず、アルミニウム基板10に熱が伝導しづらく、十分な熱伝導特性を有する基板が得られなかった。
【0007】
上記の図11(b)に示したように、ガラスエポキシ樹脂などの有機絶縁層20の中にセラミックなどの熱伝導性を備えた粒子21を顔料として混ぜ込む工夫を施したものがあるが、熱伝導性については幾分か改善されるが、ベースが有機絶縁層20であるため、やはり熱伝導性を大きく阻害するものであることには変わりなかった。また、セラミック粒子21を多数入れすぎると脆くなり基板にひびが入りやすくなるという問題が発生するおそれがあった。また、セラミック粒子21を多数入れすぎるとセラミック粒子21間の空隙が増える場合があり熱伝導性が落ちてしまう。セラミック粒子21の混入量を調整したとしてもせいぜい2W/mK程度であるとされている。
【0008】
つまり、従来技術では、絶縁性と熱伝導性という相反する要求を満たす、金属をベースとする電子回路基板は達成されていない。一般に、絶縁性の高い物質は熱伝導性が低く、逆に熱伝導性の高い物質は導電性が高く絶縁性の低いものである。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、アルミニウムなどの金属からなる導電性基板基材の性質を十分に活かし、絶縁性と熱伝導性という相反する2つの要求を満たす、金属等の導電性基板をベースとする電子回路基板を提供することを目的とする。つまり、導電性基板と電子回路素子との間の絶縁性がしっかりと確保された状態で、電子回路素子で発生した熱が導電性基板を介して熱伝導してゆく経路に熱抵抗が極めて小さくなるような素材のみで形成された熱伝導性電子回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の熱伝導性電子回路基板の第1の構成は、電子回路を形成する基板となるとともに、前記電子回路素子において発生した熱を拡散させる熱伝導体となる導電性基板と、前記導電性基板の表面に形成した、絶縁性と熱伝導性を備えた熱伝導性絶縁膜と、前記熱伝導性絶縁膜の表面に形成した電子回路パターンおよび電子回路素子とを備えた熱伝導性電子回路基板である。
【0011】
また、本発明の熱伝導性電子回路基板の第2の構成は、電子回路を形成する基板となるとともに、前記電子回路素子において発生した熱を拡散させる熱伝導体となる導電性基板と、前記導電性基板の表面に形成した、絶縁性と熱伝導性を備えた熱伝導性絶縁膜と、前記熱伝導性絶縁膜の表面に形成した接着層と、前記接着層を介して前記熱伝導性絶縁膜の表面に形成した電子回路パターンおよび電子回路素子とを備えた熱伝導性電子回路基板である。
【0012】
上記熱伝導性絶縁膜は、優れた絶縁性と熱伝導性を備えており、以下の組成を備えた塗料により形成した熱伝導性絶縁膜であれば、10μm程度の厚みで電子回路基板として十分な絶縁性を確保することができ、また、熱伝導性も大きいという性質を持っている上に10μm程度という薄さであるので熱伝導の大きな阻害とはならず、金属からなる導電性基板基材の性質を十分に活かし、絶縁性と熱伝導性という相反する2つの要求を満たす、金属をベースとする電子回路基板を得ることができる。
なお、ここでは電子素子により発生した熱の除去として、熱伝導という現象面を中心に説明しているが、熱が熱源である電子素子から系外に移動するということであれば良いので、本発明では空気中に直接放出される放熱という現象面も含まれ得る。つまり、本発明の構成要素である熱伝導性絶縁膜は、放熱現象から見れば、放熱性絶縁膜とも言えるものである。
【0013】
ここで、各成分については以下のものとすることができる。
まず、前記熱伝導性絶縁膜は、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されたSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基の前記生成化合物を含有するバインダーと、第1の顔料と、ナノ粒子化合物である第2の顔料を備えたものであり、分散された前記第1の顔料の間隙を前記第2の顔料と前記バインダーで充填して密度を向上せしめたものである。
【0014】
第1の顔料および第2の顔料は、コロイダル金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のナノ粒子化合物であり、例えば、前記第1の顔料が、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化カルシウムの化合物のいずれかまたはそれらの混合物を含むものである。また、前記第2の顔料が、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化カルシウムの化合物のいずれかまたはそれらの混合物を含むものである。
【0015】
バインダーは、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されたSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基の前記生成化合物を含有するものである。アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応によりSiとOが連鎖して形成されるSi−Oネットワークが形成されるが、Si−Oネットワークの分子量が大きくなりすぎると脆くなり、塗料膜とした場合にひび割れて脆くなってしまうため、適度な分子量に制御するためにSi−OHのシラノール基を適量残すようにアルコキシド化合物の配合を調整しておく。
溶媒は特に限定されない。例えば、ダイアセトンアルコールなどでも良い。
上記構成により、形成された熱伝導性絶縁膜の熱伝導性と絶縁性を確保せしめることができる。その原理は以下のように説明できる。
【0016】
まず、熱伝導性については、第1の顔料および第2の顔料とも無機鉱物である無機顔料が含まれて固化されているので熱伝導率が高いものとなる。また、膜全体にはバインダーとしてSi−Oネットワークが存在しているので熱がSi−Oネットワークを伝わることにより効率よく運搬され、高い熱伝導率が得られる。熱源である電子素子で発生した熱が熱伝導性絶縁膜を介して基板である導電性基板に伝えられ、導電性基板は熱伝導率の良い素材であるので、熱が素早く熱伝導性電子回路基板全体に熱拡散された上で、系外に放出することができる。
【0017】
次に、絶縁性について説明する。上記構成によれば、熱伝導性絶縁膜は第1の顔料および第2の顔料ともコロイダル金属酸化物の無機化合物であり絶縁性は高い。また、バインダーは塗料使用前においてSi−Oネットワークを養生させつつ、Si−Oネットワーク十分に分散させておき、かつ熱伝導性絶縁膜の形成段階において溶媒をゆっくり蒸発させて乾燥することにより、Si−Oネットワークを緻密に形成することができる。その結果、(1)膜が無機化合物中心に形成される。(2)分散が大きく偏りが少なくなる。(3)膜内の空隙を少なくなり密度が高くなる。(4)膜内の粒子間を細かい絶縁性のあるナノ粒子で埋めることができる。これらの条件により高い絶縁性が得られる。
なお、密度を上げるため、塗料に占める溶媒の量を少なくしておくことが好ましい。通常の塗料では溶媒が30〜40%以上は入っているが、例えば20%以下とする。分散を十分に行い、ナノ粒子化した顔料を入れることで溶媒量を少なくしても液状に塗料化することができる。
【0018】
次に、本発明の第1の熱伝導性電子回路基板を製造する第1の方法は、
前記熱伝導性絶縁膜の形成工程が、前記導電性基板の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥することにより前記熱伝導性絶縁膜を形成する工程であり、前記電子回路パターンの形成工程が、前記電子回路パターンをフィルム体の表面にあらかじめ形成する電子回路転写フィルム形成工程と、前記電子回路転写フィルムから前記熱伝導性絶縁膜の表面に前記電子回路パターンを転写する転写工程を備えた工程により製造する方法である。
【0019】
また、本発明の第1の熱伝導性電子回路基板を製造する第2の方法は、
前記熱伝導性絶縁膜の形成工程が、前記導電性基板の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥することにより形成する工程であり、前記電子回路パターンの形成工程が、前記熱伝導性絶縁膜の表面に銅箔層を蒸着して形成する銅箔蒸着工程と、前記銅箔層の表面に前記電子回路パターンを作るマスキングを施す工程と、前記マスキングした前記銅箔層をエッチングすることにより前記熱伝導性絶縁膜の表面に前記電子回路パターンを形成する工程により製造する方法である。
【0020】
また、本発明の第1の熱伝導性電子回路基板を製造する第3の方法は、
前記熱伝導性絶縁膜の形成工程が、前記導電性基板の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥することにより形成する工程であり、前記電子回路パターンの形成工程が、前記熱伝導性絶縁膜の表面に銅箔層を蒸着して形成する銅箔蒸着工程と、前記熱伝導性絶縁膜の表面に無電解メッキ用の触媒を含有した感光性塗布液を塗布し、前記電子回路パターンに対応する触媒パターンを形成する触媒パターン形成工程と、前記触媒パターンが描かれた前記基板全体を無電解メッキ液に浸漬して無電解メッキし、前記熱伝導性絶縁膜の表面に電子回路パターンを形成する各工程により製造する方法である。
【0021】
次に、本発明の第2の熱伝導性電子回路基板を製造する第1の方法として、
前記熱伝導性絶縁膜の形成工程が、前記導電性基板の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥することにより前記熱伝導性絶縁膜を形成する工程であり、前記接着層の形成工程が、前記熱伝導性絶縁膜の表面に接着剤を塗布・乾燥する工程であり、前記電子回路パターンの形成工程が、前記電子回路パターンをフィルム体の表面にあらかじめ形成する電子回路転写フィルム形成工程と、前記電子回路転写フィルムから前記熱伝導性絶縁膜の表面に前記電子回路パターンを転写する転写工程により製造する方法である。
【0022】
また、本発明の第2の熱伝導性電子回路基板を製造する第2の方法として、
前記熱伝導性絶縁膜の形成工程が、前記導電性基板の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥することにより前記熱伝導性絶縁膜を形成する工程であり、前記接着層の形成工程が、前記熱伝導性絶縁膜の表面に接着剤を塗布・乾燥する工程であり、前記電子回路パターンの形成工程が、前記接着層の表面に銅箔を貼り付ける工程と、前記銅箔層の表面に前記電子回路パターンを作るマスキングを施す工程と、前記マスキングした前記銅箔層をエッチングすることにより前記熱伝導性絶縁膜の表面に前記電子回路パターンを形成する工程により製造する方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の熱伝導性電子回路基板によれば、熱伝導性絶縁膜は、優れた熱伝導性と絶縁性を備えており、ごく薄い厚みで電子回路基板として十分な絶縁性を確保することができ、また、ごく薄い厚みで熱伝導性も大きく熱伝導の阻害を極めて小さくすることができ、金属を含有する導電性基板基材の性質を十分に活かし、絶縁性と熱伝導性という相反する2つの要求を満たす、金属をベースとする電子回路基板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の熱伝導性電子回路基板の実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な用途、形状、個数などには限定されないことは言うまでもない。
以下、実施例1は、本発明の第1の構成の熱伝導性電子回路基板100の構成例を示す。
実施例2は、本発明の第2の構成の熱伝導性電子回路基板100aの構成例を示す。
実施例3は、本発明の熱伝導性電子回路基板において用いる熱伝導性絶縁膜が、高い絶縁性と熱伝導性を備えている点と熱伝導性絶縁膜120を形成する絶縁・熱伝導性塗料の組成について示す。
【実施例1】
【0025】
実施例1にかかる本発明の第1の構成の熱伝導性電子回路基板100の例を示す。
図1(a)は、本発明の第1の構成の熱伝導性電子回路基板100の横断面図の構成を模式的に示す図である。一方、図1(b)は金属基板を用いた従来例の電子回路基板1の横断面図の構成を模式的に示す図である。
【0026】
図2(a)は本発明の第1の構成の熱伝導性電子回路基板100における熱伝導について模式的に示した図である。一方、図2(b)は従来例の電子回路基板1における熱伝導について模式的に示した図である。
【0027】
まず、本発明の実施例1の構成例の熱伝導性電子回路基板100を説明する。
図1(a)に示すように、本発明の実施例1の構成例の熱伝導性電子回路基板100は、導電性基板110、熱伝導性絶縁膜層120、電子回路パターン130、電子回路素子140を備えている。
【0028】
導電性基板110は、電子回路を形成する基板となるとともに、電子回路において発生した熱を拡散させる熱伝導体となるものである。例えば、アルミニウム、銅などの高い熱伝導率を備えた金属であることが好ましい。形状は特に限定されず、いわゆる板状の矩形の板でも良く、放熱板を備えたヒートシンクの筐体の一部であっても良い。
【0029】
熱伝導性絶縁膜120は、導電性基板110の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥して形成した膜であり、絶縁性と熱伝導性を備えたものとなっている。優れた絶縁性と熱伝導性を兼ね備えた熱伝導性絶縁膜120であれば、後述するように10μm程度の厚さであっても電子回路に対する絶縁は十分にとれる。従来の有機樹脂性の接着剤に比べて高い絶縁性と熱伝導性を備えている。この絶縁性、熱伝導性については後述する。また、このように優れた絶縁性と熱伝導性を兼ね備えた熱伝導性絶縁膜120を形成する絶縁・熱伝導性塗料の組成については後述する。
【0030】
電子回路パターン130は、熱伝導性絶縁膜120の表面に銅等の導電体により形成した回路パターンである。回路パターンの形成方法は複数通り可能であるが、その形成方法については後述する。
【0031】
電子回路素子140は、特に限定されず、多様な素子の搭載が可能である。例えば、後述するように電子回路素子140をLEDとすれば、LED照明体を得ることができる。
【0032】
図1(a)に示すように、電子回路素子140は正常に駆動するためには電気的に正しい電気的接続と絶縁が確保されていなければならないが、正しい電気的接続は電子回路パターン130により確保されており、絶縁に関しては熱伝導性絶縁膜120の存在により、導電体である導電性基板110と電子回路パターン130の間の絶縁性が確保されており、本実施例1の構成例の熱伝導性電子回路基板100は正しく駆動することができる。
【0033】
次に、本発明の熱伝導性電子回路基板100における熱伝導について説明する。
図2(a)は本発明の熱伝導性電子回路基板100における熱伝導について模式的に示した図である。図2(a)に示すように電子回路素子140が稼働することにより生じる熱は、電子回路140から直接、または、銅線である電子回路パターン130を介して熱伝導性絶縁膜120に熱伝導する。ここで、熱伝導性絶縁膜120は後述するように高い熱伝導性を持っており、さらに厚さが10μm程度と極めて薄いので、熱の伝導を阻害することなく、スムーズに電子回路パターン130の熱が熱伝導性絶縁膜120を介して導電性基板110に伝導する。導電性基板110はアルミニウムなどの熱伝導性の高い材質であるので熱が系外に拡散してゆく。このように本発明の熱伝導性電子回路基板100では図2(a)に示すようにスムーズに電子回路素子140で発生した熱が熱伝導により系外に拡散してゆく。
【0034】
次に、比較のため、従来例の電子回路基板10の場合を説明し、本発明の熱伝導性電子回路基板100の優位性を分かりやすく説明しておく。
【0035】
図1(b)に示す金属基板を用いた従来例の電子回路基板1の構成は、図11(a)に示したものと同じである。すなわち、金属基板10、エポキシ樹脂接着剤などの有機接着剤の絶縁層20、銅線の回路パターン30、電子回路素子40により形成されている。ここで、絶縁層20は十分な絶縁性を確保するため、例えば80〜120μm程度の厚さが必要とされる。
【0036】
金属基板を用いた従来例の電子回路基板10の熱伝導は、図2(b)に示すように、電子回路素子40において発生した熱は、電子回路パターン30に熱伝導した後、絶縁層20を介して金属基板10にある程度は熱伝導するが、絶縁層20の熱伝導率は高くなくむしろ熱抵抗体として存在するため、電子回路パターン30から熱は金属基板10にはスムーズに流れず、本発明の熱伝導基板100に比べてより多くの熱が蓄積されてしまう。
【0037】
次に、本発明の熱伝導性電子回路基板100の製造方法について述べる。
まず、本発明の熱伝導性電子回路基板100の第1の製造方法について述べる。
図3は、本発明の熱伝導性電子回路基板100の第1の製造方法を模式的に示す図である。
まず、熱伝導性絶縁膜の形成工程S10により、導電性基板110の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥して熱伝導性絶縁膜120を形成する。絶縁・熱伝導性塗料の組成については後述する。
【0038】
次に、第1の製造方法による電子回路パターンの形成工程S20は、電子回路転写フィルム形成工程S211と、転写工程S221の各工程を備えている。
導電性基板110とは別体のポリイミドフィルムなどのフィルム体210の表面に銅ペーストの印刷や銅箔のエッチングなどにより電子回路パターン130を形成し、電子回路転写フィルム200を形成しておく。
【0039】
次に、電子回路転写フィルム200の表面に形成されている電子回路パターン130を熱伝導性絶縁膜120の表面に電子回路パターン130を転写する。
次に、電子回路素子搭載工程S30において、電子回路パターン130の上に電子回路素子140を搭載し、本発明の第1の熱伝導性電子回路基板100が完成する。
上記第1の製造工程により、本発明の第1の熱伝導性電子回路基板100を得ることができる。
【0040】
次に、本発明の熱伝導性電子回路基板100の第2の製造方法について述べる。
図4は、本発明の熱伝導性電子回路基板100の第2の製造方法を模式的に示す図である。
まず、熱伝導性絶縁膜の形成工程S10により、導電性基板110の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥して熱伝導性絶縁膜120を形成する。絶縁・熱伝導性塗料の組成については後述する。
【0041】
次に、電子回路パターンの形成工程S20aは、銅箔蒸着工程S221と、マスキング工程S222と、銅箔エッチング工程S223の3つの工程を備えている。
図4(b)から図4(c)に示すように、銅箔蒸着工程S221において、熱伝導性絶縁膜の表面に銅箔層131を蒸着して形成しておく。
【0042】
次に、マスキング工程S222において、銅箔層131の表面に電子回路パターン130を作るマスキング160を施す。
【0043】
次に、銅箔エッチング工程S33において、銅箔層131のうち、マスキングした部分の銅箔131のみを残し、マスキングされていない部分の銅箔を除去することにより、熱伝導性絶縁膜の表面に電子回路パターン130を形成する。最後にマスク160を除去しておく。
【0044】
次に、電子回路素子搭載工程S30において、電子回路パターン130の上に電子回路素子140を搭載し、本発明の第1の熱伝導性電子回路基板100が完成する。
上記第2の製造工程により、本発明の熱伝導性電子回路基板100を得ることができる。
【0045】
次に、本発明の熱伝導性電子回路基板100の第3の製造方法について述べる。
図5は、本発明の熱伝導性電子回路基板100の第3の製造方法を模式的に示す図である。
まず、熱伝導性絶縁膜の形成工程S10により、導電性基板110の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥して熱伝導性絶縁膜120を形成する。絶縁・熱伝導性塗料の組成については後述する。
【0046】
第3の製造方法による電子回路パターンの形成工程S40は、感光剤塗布工程S231と、触媒パターン工程S232と、無電解メッキ工程S233の各工程を備えている。
感光剤塗布工程S231において、熱伝導性絶縁膜120の表面に無電解メッキ用の触媒を含有した感光性塗布液を塗布する。
【0047】
次に、触媒パターン工程S232において、電子回路パターン130に対応するフォトマスクを介して紫外光露光し、露光部のみを硬化させる。水系の現像液により非露光部分を除去すれば、露光部分にのみ無電解メッキ用触媒が残り、触媒パターン170が形成される。
【0048】
次に、触媒パターン170が描かれた基板を無電解メッキ液に浸漬して無電解メッキすることにより、熱伝導性絶縁膜120の表面の触媒パターンに無電解メッキが進行し、触媒パターンがない領域にはメッキが進行せず、電子回路パターン130が形成される。
【0049】
次に、電子回路素子搭載工程S30において、電子回路パターン130の上に電子回路素子140を搭載し、本発明の第1の熱伝導性電子回路基板100が完成する。
上記第3の製造工程により、本発明の熱伝導性電子回路基板100を得ることができる。
【実施例2】
【0050】
次に、本発明の第2の構成の熱伝導性電子回路基板100aの例を示す。
図6(a)は、本発明の第2の構成の熱伝導性電子回路基板100aの横断面図の構成を模式的に示す図である。
【0051】
図6(a)に示すように、本発明の第2の構成の熱伝導性電子回路基板100aは、導電性基板110、熱伝導性絶縁膜層120、接着層150、電子回路パターン130、電子回路素子140を備えている。
【0052】
導電性基板110、熱伝導性絶縁膜層120、電子回路パターン130、電子回路素子140は実施例1に示した本発明の第1の構成の熱伝導性電子回路基板100と同様で良く、ここでの説明は省略する。
【0053】
接着層150は、熱伝導性絶縁膜層120と電子回路パターン130の間を接着するものであれば良い。導電性の接着剤が好ましい。エポキシ樹脂系の接着剤の場合は導電性が小さいため薄くする工夫を施すことが好ましい。
【0054】
なお、接着層150は、熱伝導性絶縁膜120と相まって、電子回路パターン130と熱伝導性絶縁膜120間の接着を行うが、熱伝導性絶縁膜120は、優れた絶縁性と熱伝導性を備えたものとなっているので、電子回路パターン130に対する絶縁は十分にとれており、接着層150は絶縁性を考慮することなく薄くても良く、接着層150は、接着用途を果たす厚みがあれば良い。
また、熱伝導性絶縁膜120は、ある程度租面化されており、接着剤が含浸しやすい。そのため、例えば、10μmから20μm程度でも十分、電子回路パターン130と熱伝導性絶縁膜120間の接着を行うことができる構造となっている。
【0055】
図7(a)は本発明の第2の熱伝導性電子回路基板100aにおける熱伝導について模式的に示した図である。図7(a)に示すように電子回路素子140が稼働することにより生じる熱は銅線である電子回路パターン130から熱伝導性絶縁膜120に熱伝導する。ここで、熱伝導性絶縁膜120は高い熱伝導性を持っており、さらに厚さが10μm程度と極めて薄いので、熱の伝導を阻害することなく、スムーズに電子回路パターン130の熱が熱伝導性絶縁膜120を介して接着層150に伝導する。この接着層150は厚さ20μm程度と薄いので、熱の伝導を大きく阻害することはなく、その結果、比較的にスムーズに電子回路パターン130の熱が熱伝導性絶縁膜120および接着層150を介して導電性基板110に伝導する。導電性基板110はアルミニウムなどの熱伝導性の高い材質であるので熱が系外に拡散してゆく。このように本発明の熱伝導性電子回路基板100では図7(a)に示すようにスムーズに電子回路素子140で発生した熱が熱伝導により系外に拡散してゆく。
【0056】
実施例1の図2(b)を用いて説明したように、金属基板を用いた従来例の電子回路基板10の熱伝導は、絶縁層20の熱伝導率が高くなく熱抵抗体として存在するため、電子回路パターン30から熱は金属基板10にはスムーズに流れず、本発明の熱伝導基板100に比べてより多くの熱が蓄積されてしまうという問題が発生する。
【0057】
次に、本発明の第2の熱伝導性電子回路基板100aの製造方法について述べる。
まず、本発明の第2の熱伝導性電子回路基板100の第1の製造方法について述べる。
図8は本発明の第2の熱伝導性電子回路基板100aの第1の製造方法を模式的に示す図である。
【0058】
まず、熱伝導性絶縁膜の形成工程S10により、導電性基板110の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥して熱伝導性絶縁膜120を形成する。絶縁・熱伝導性塗料の組成については後述する。
【0059】
次に、接着層形成工程S40により熱伝導性絶縁膜120の表面にエポキシ樹脂などの接着剤を塗布し、接着層150を形成する。
【0060】
次に、第1の製造方法による電子回路パターンの形成工程S20を示している。電子回路パターンの形成工程S20は、電子回路転写フィルム形成工程S241と、転写工程S242の2つの工程を備えている。
【0061】
金属基板10とは別体のポリイミドフィルムなどのフィルム体210の表面に銅ペーストの印刷や銅箔のエッチングなどにより電子回路パターン130を形成し、電子回路転写フィルム200を形成しておく。
【0062】
次に、電子回路転写フィルム200の表面に形成されている電子回路パターン130を接着層150の表面に電子回路パターン130を転写する。接着層150が存在するため、押圧が小さくても電子回路パターン130を転写することができる。
次に、電子回路素子搭載工程S30において、電子回路パターン130の上に電子回路素子140を搭載し、本発明の第1の熱伝導性電子回路基板100が完成する。
上記第1の製造工程により、本発明の第2の熱伝導性電子回路基板100aを得ることができる。
【0063】
次に、本発明の第2の熱伝導性電子回路基板100aの第2の製造方法について述べる。
図9は本発明の第2の熱伝導性電子回路基板100aの第2の製造方法を模式的に示す図である。
まず、熱伝導性絶縁膜の形成工程S10により、導電性基板110の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥して熱伝導性絶縁膜120を形成する。絶縁・熱伝導性塗料の組成については後述する。
【0064】
次に、接着層形成工程S50により熱伝導性絶縁膜120の表面にエポキシ樹脂などの接着剤を塗布し、接着層150を形成する。
【0065】
次に、電子回路パターンの形成工程S20は、銅箔貼付工程S251と、マスキング工程S252と、銅箔エッチング工程S253の各工程を備えている。
銅箔貼付工程S251において、接着層150の表面に銅箔層131を貼り付けて形成する。
【0066】
次に、マスキング工程S252において、銅箔層131の表面に電子回路パターン130を作るマスキング160を施す。
【0067】
次に、銅箔エッチング工程S253において、銅箔層131のうち、マスキングした部分の銅箔131のみを残し、マスキングされていない部分の銅箔をエッチングで除去することにより、熱伝導性絶縁膜の表面に電子回路パターン130を形成する。
次に、電子回路素子搭載工程S30において、電子回路パターン130の上に電子回路素子140を搭載し、本発明の第1の熱伝導性電子回路基板100が完成する。
上記第2の製造工程により、本発明の第2の熱伝導性電子回路基板100aを得ることができる。
【実施例3】
【0068】
実施例3において、熱伝導性絶縁膜120を形成する際に用いる絶縁・熱伝導性塗料の組成、熱伝導性絶縁膜120の絶縁性と熱伝導性について説明する。
熱伝導性絶縁膜塗料は、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されたSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基の生成化合物を含有するバインダーと、ナノ粒子化合物である顔料と、溶媒を備えたものであり、分散されたSi−Oネットワークの間を顔料と溶媒で充填して密度を向上せしめたものとなっている。
【0069】
熱伝導性絶縁膜塗料は、塗料の製造過程において、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応によりSi−Oネットワークを養生する。
バインダーの精製では、アルコキシド化合物の加水分解によりシラノール基が生成され、その後シラノール脱水縮合反応が進んでSi−Oネットワークが形成されて行く。シラノール脱水縮合の進展により形成されるSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基により構成される被膜により熱伝導性と放熱性と絶縁性とが発揮される。
【0070】
アルコキシドの加水分解は速やかに促進された方が良いが、その後にシラノールの脱水縮合が進みすぎるおそれに注意する必要がある。塗料の状態でシラノールの脱水縮合が進みすぎると塗布前にSi−Oネットワークが多数形成され、塗布後に乾燥して形成された塗布膜が脆くなったりクラックが入りやすくなったりして基材への付着力が小さくなってしまうという問題が発生するからである。
【0071】
一方、シラノールの脱水縮合反応が十分ではない場合、つまり、塗料状態においてシラノールリッチの状態では、塗布後に膜が形成されてゆく過程で多くの脱水縮合が進んで行くこととなり、脱水縮合が進むと膜が収縮して行くこととなり収縮率が大きくなってしまい、塗布した膜が剥がれ落ちるという不具合が起こる。
【0072】
以上から、熱伝導性絶縁膜塗料を形成する塗料は、アルコキシドの加水分解は完全に終了せしめ、シラノール脱水縮合反応は適切量進めた後に脱水縮合反応を抑止することにより、脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行ったものとすることが好ましい。これにより塗布前に適切量のSi−Oネットワーク素材を形成しておき、塗布後に新たに脱水縮合により形成されるSi−Oネットワーク量を少なくして収縮率が大きくなることを抑え、残存するSi−OH基により基材との付着力を確保せしめる。
【0073】
バインダーの組成の例について述べる。
本実施例1の熱伝導性絶縁膜120の好適例は、アルコキシド化合物の加水分解後、シラノール脱水縮合の進展により形成されるSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基により構成される第1の化合物と、ナノ粒子化されたコロイダル金属酸化物またはコロイダル金属窒化物群から選ばれた少なくとも1種以上の第2の化合物とを含み、第1の化合物と第2の化合物の重量比が、40〜100重量%:60〜0重量%であるバインダーと、顔料と、溶媒とを備えた塗料より形成された塗布被膜である。
【0074】
アルコキシド化合物の組み合わせとしては、第1の組み合わせとして、3官能のアルコキシド化合物と4官能のアルコキシド化合物の組み合わせがある。第2の組み合わせとして、2官能のアルコキシド化合物と3官能のアルコキシド化合物と4官能のアルコキシド化合物の組み合わせがある。
【0075】
以下、第1の熱伝導性絶縁膜塗料のバインダー組成として、第1のアルコキシド化合物の組み合わせ(3官能のアルコキシド化合物と4官能のアルコキシド化合物の組み合わせ)のものを説明し、第2の熱伝導性絶縁膜塗料のバインダー組成として、第2のアルコキシド化合物の組み合わせ(2官能のアルコキシド化合物と3官能のアルコキシド化合物の4官能のアルコキシド化合物の組み合わせ)のものを説明する。
【0076】
熱伝導性絶縁膜120のバインダーの第1の化合物として、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成される化合物が含まれる。バインダーの生成においてまずアルコキシド化合物の加水分解によりシラノール基が生成され、その後シラノール脱水縮合反応が進んでSi−Oネットワークが形成されて行く。このシラノール脱水縮合の進展により形成されるSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基により構成される被膜において絶縁性と熱伝導性が発揮される。また、バインダーに含まれる、ナノ粒子化されたコロイダル金属酸化物またはコロイダル金属窒化物群から選ばれた少なくとも1種以上の第2の化合物は、無機化合物であり熱伝導性の向上が期待できるものとなっている。また、ナノ粒子化することにより、上記バインダー構成においては光吸収をおこす素材を含まないように形成することができる。本発明の発明者は試作を重ね、実際に透明な熱伝導性絶縁膜120を得ることに成功している。
【0077】
熱伝導性絶縁膜塗料の第1の化合物の組成の例は、アルコキシド化合物として、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランを所定割合で混合したものとなっている。その混合割合は、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から0対10の割合が好ましい。
熱伝導性絶縁膜塗料の第1の化合物の組成の他の例は、アルコキシド化合物として、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランとジアルコキシシランを所定割合で混合したものとなっている。その混合割合は、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合が好ましい。
【0078】
第2の熱伝導性絶縁膜塗料用の塗料のバインダー組成は、ナノ粒子化合物の重量%:アルコキシド化合物の重量%が2対8から4対6の割合(20%対80%から40%対60%)で配合する点は同様であるが、アルコキシド化合物は、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランとジアルコキシシランを所定割合で混合したものとなっており、その混合割合は、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合が好ましい。
【0079】
Si−OH官能基を4つ備えたテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
Si−OH官能基を3つ備えたトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシランなどが挙げられる。
Si−OH官能基を2つ備えたジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0080】
アルコキシド化合物としてこれらを組み合わせて用いる。組み合わせで好ましいのはメチルトリメトキシシラン及びテトラメトキシシランの組合せ、またはメチルトリエトキシシラン及びテトラエトキシシランの組合せである。
【0081】
本発明では、アルコキシド化合物の加水分解後の脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行い、熱伝導性絶縁膜120の絶縁性と熱伝導性を確保する。
【0082】
Si−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御の原理は以下の通りである。アルコキシド化合物同士は加水分解によりシラノール基(Si−OH官能基)が生成され、Si−OH官能基の脱水縮合によりSi−Oネットワークの形成が進行してゆく。Si−OH官能基を4つ持つテトラアルコキシシランはSi−OH官能基を多く持つので、脱水縮合を促進させればSi−Oネットワークの形成進行が速く、早期にゲル化する。テトラアルコキシシランのみでバインダーを形成するとほぼ完全にSi−OH官能基が消費され、Si−Oネットワークが形成される。Si−OH官能基を3つ持つトリアルコキシシランもSi−OH官能基を持つので、脱水縮合を促進させればSi−Oネットワークの形成が進行し、ゲル化する。トリアルコキシシランのみでバインダーを形成すると粒子間のSi−OH官能基の存在が均等になるので、ほぼ完全にSi−OH官能基が消費された状態でSi−Oネットワークが形成される。
【0083】
Si−OH官能基を2つ持つジアルコキシシランもSi−OH官能基を持つので、脱水縮合を促進させればSi−Oネットワークの形成が進行する。ジアルコキシシランのみでバインダーを形成すると同様にほぼ完全にSi−OH官能基が消費された状態でSi−Oネットワークの形成が形成される。しかし、ジアルコキシシランはSi−OH官能基が2つしかなく、脱水縮合によって直鎖状にSi−Oネットワークが形成されてしまい、堅牢性が小さくなる。
【0084】
本発明では、Si−Oネットワークによる堅牢な膜形成を目指すだけではなく、Si−Oネットワークの形成を進行させつつもSi−OH官能基をすべては消費させずに残存させるように制御する。残存したSi−OH官能基により金属プレートなどの基材のOH基との間の結合エネルギーにより基材と強力な付着力をもたらす。
つまり、Si−OH官能基を2つ持つアルコキシド化合物、Si−OH官能基を3つ持つアルコキシド化合物、Si−OH官能基を4つ持つアルコキシド化合物を、所定割合で混ぜ合わせると、アルコキシド分子間でSi−OH官能基の数に不均衡があるため、反応する相手となるSi−OH官能基がなく、いわば浮いてしまうSi−OH官能基が多数出てくるので脱水縮合が一気には進まなくなる。
【0085】
ただし、長期間放置していると、浮いているSi−OH同士の脱水縮合反応が進んでくるので残存するSi−OH官能基の量は漸減して行くが、上記のように2官能のアルコキシド化合物、3官能のアルコキシド化合物、4官能のアルコキシド化合物の割合を調整すれば、当初、脱水縮合は早期に進むもののSi−OH官能基の数が不均衡状態に陥ってからは脱水縮合に急速にブレーキがかかることとなる。
【0086】
上記のように、塗料の状態でシラノールの脱水縮合が進みすぎると塗布前にSi−Oネットワークが多数形成され、塗布後に乾燥して形成された塗布膜が脆くなったりクラックが入りやすくなったりして基材への付着力が小さくなってしまうという問題が発生する一方、シラノールの脱水縮合反応が十分ではない場合、つまり、塗料状態においてシラノールリッチの状態では、塗布後に膜が形成されてゆく過程で多くの脱水縮合が進んで行くこととなり、脱水縮合が進むと膜が収縮して行くこととなり収縮率が大きくなってしまい、塗布した膜が剥がれ落ちるという不具合が起こる。
【0087】
以上から、熱伝導性絶縁膜120を形成する塗料は、アルコキシドの加水分解は完全に終了せしめ、シラノール脱水縮合反応は適切量進めた後に脱水縮合反応を抑止することにより、脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行ったものとすることが好ましく、塗布前に適切量のSi−Oネットワーク素材を形成しておき、塗布後に新たに脱水縮合により形成されるSi−Oネットワーク量を少なくして収縮率が大きくなることを抑え、残存するSi−OH基により基材との付着力を確保せしめる。
【0088】
次に、本発明の熱伝導性絶縁膜120により良好な熱伝導性と絶縁性が得られる原理を説明する。
図10は、本発明の熱伝導性絶縁膜塗料および熱伝導性絶縁膜120の断面構造を模式的に拡大した図である。
図10(a)は熱伝導性絶縁膜塗料がまだ乾燥して熱伝導性絶縁膜120として形成される前の状態を示している。図10(b)は熱伝導性絶縁膜塗料が十分に乾燥して熱伝導性絶縁膜120として形成された後の状態を示している。
【0089】
図10(a)に示すように、熱伝導性絶縁膜塗料の断面において、窒化アルミニウム等の通常サイズの第1の顔料の粒子121があり、その間隙にナノ粒子化された酸化マグネシウム等の第2の顔料の粒子122が充填されている。また、それらの間隙を埋めるようにバインダー123(Si−OネットワークとSi−OH基を備えた化合物)と溶媒124が存在している。
【0090】
第1の顔料121は、コロイダル金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化カルシウムの化合物のいずれかまたはそれらの混合物とする。
ナノ粒子化された第2の顔料2は、コロイダル金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のナノ粒子化合物、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化カルシウムの化合物のいずれかまたはそれらの混合物とする。ナノ粒子化されているので第1の顔料121の間隙を十分に緻密に充填することができ、熱伝導性絶縁膜120の密度をさらに上げることができる。
【0091】
ここで、熱伝導性絶縁膜塗料の分散を十分に確保しておくと、窒化アルミニウム等の通常サイズの第1の顔料の粒子121が偏ることなく図10(a)に示すように均一に分散され、その間隙にナノ粒子化された酸化マグネシウム等の第2の顔料の粒子122が充填された構造となる。この状態において熱伝導性絶縁膜塗料は密度の高い状態となっている。
【0092】
次に、バインダー123はバインダーは、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されたSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基の前記生成化合物を含有するものである。アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応によりSiとOが連鎖して形成されるSi−Oネットワークが形成されるが、Si−Oネットワークの分子量が大きくなりすぎると脆くなり、塗料膜とした場合にひび割れて脆くなってしまう。そこで、適度な分子量に制御するためにSi−OHのシラノール基を適量残すようにアルコキシド化合物の配合を調整しておくことにより後述するように溶媒が乾燥により抜け出た後も適度な靭性を保つことができる。
【0093】
溶媒124は、バインダー123のみでは塗料化できないため液状の塗料状態とするために必要な量が存在していれば良い。例えば、ダイアセトンアルコールなどで良い。
【0094】
次に、図10(b)に示すように、熱伝導性絶縁膜塗料を乾燥させ、溶媒124を除去すると熱伝導性絶縁膜120が形成される。ここで、溶媒124を蒸発させるときに急速に溶媒124を蒸発させると溶媒の抜け出た後に空隙が多く残ってしまう。そこで、溶媒124をゆっくりと蒸発させて膜全体を収縮させてゆくことにより溶媒124が抜け出た空隙ができないように工夫をする。このように溶媒をゆっくり抜くことにより熱伝導性絶縁膜120の密度をさらに上げることができる。
なお、溶媒123をゆっくりと蒸発させて膜全体を収縮させてゆくため、揮発性の高くない溶媒の方がコントロールしやすく、また、塗料に占める溶媒量も少なくしておくことが好ましい。
【0095】
図10(b)の状態では、第1の顔料121、第2の顔料122、バインダーであるSi−Oネットワークにより熱が効率的に伝導され、熱伝導性絶縁膜120全体の熱伝導性が高くなる。また、それらは絶縁性を持っているので熱伝導性絶縁膜120全体の絶縁性も高くなる。つまり、熱伝導性絶縁膜120において、十分な熱伝導性と絶縁性が確保されることとなる。
なお、従来技術においては、絶縁性を高めた基板シートを得るためには、高温化で熱硬化性樹脂を処理してプレスによる焼結を行うものであり、塗料により絶縁層を設けるという考え方は取っていない。また、従来の塗料は、第1の顔料121のようなものと有機系のバインダーと多量の溶媒(例えば40%以上)が入っており、それが乾燥して得られる膜では同時には十分な熱伝導性と絶縁性を得られないものとなっていた。
【0096】
次に、本発明で利用する熱伝導性絶縁膜120が実際に良好な付着性、熱伝導性、絶縁性、耐食性を備えた膜である実験結果を示す。本発明者は塗料の配合について実験を重ねて、本発明で用いる熱伝導性絶縁膜塗料の配合割合を見出した。
以下、順に、熱伝導性絶縁膜120の付着性、熱伝導性、絶縁性、耐食性を検証した。
【0097】
[付着性実験]
付着性実験に用いた実験に用いた熱伝導性絶縁膜用塗料のバインダー組成は、4官能基を備えたテトラアルコキシシランとしてモメンティブマテリアル社製のテトラメトキシシランを用いた。また、3官能基を備えたバインダーのトリアルコキシシランとしてモメンティブマテリアル社製のメチルトリメトキシシランを用いた。また、2官能基を備えたジアルコキシシランとしてモメンティブマテリアル社製のジメチルジメトキシシランを用いた。テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランの配合を変えてそれぞれ製作した。
【0098】
加水分解に用いた水の量は、アルコキシド化合物1モルに対して水0.8〜5.0モルとした。水が0.8モル以下ではSi−OH基の発生が十分でなく膜の硬度が上がらず、5.0モル以上ではSi−OH成分が少なく塗料化が困難となる。触媒としての酸の量は有機酸、無機酸何れの場合も、加水分解を起こすのに十分な量を用いた。
サンプルのそれぞれに含まれるジメチルジメトキシシラン(2官能)、メチルトリメトキシシラン(3官能)、テトラメトキシシラン(4官能)の配合を[表1]に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
熱伝導性絶縁膜を形成する基材としては、アルマイト処理アルミプレートを用いた。
付着性実験の手法としては、JIS−K5600−5−6の手法により碁盤目テストを行った。実験は3回行った。付着実験の結果を[表2]に示す。
【0101】
【表2】

【0102】
注1:その他のアルコキシドとしてエトキシ基もあるが、エトキシ基はメトキシ基と反応スピードの違いなので省略し、メチル基のみでテストを実施した。
注2:反応はアルコキシド1モルに対して水2.5〜4.5モル、望ましくは3.3モル、酸の量を十分入れ、顔料比率70%とし、膜厚を25μm±3μmにして実施。
注3:分散溶媒はエタノール、イソプロピルアルコールを配合した物を使用した。
注4:焼成条件は180℃で20分。基板はアルコール脱脂のみのアルミ板を使用した。試験片は7.5mmw×15.0mml×1.0mmtを各3枚。(評価は全数クリアー)
注5:塗布方法はスプレーコート。
注6:膜厚は15μm〜20μm、測定方法はマイクロメーター。
【0103】
上記付着性実験から、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランを混合したバインダーである配合1から配合3の実験結果より、混合割合は配合1から配合2の混合割合が良いことが実証できた。つまり、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から0対10の割合が好ましい。
【0104】
また、上記付着性実験から、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランとジアルコキシシランを混合したバインダーである配合4から配合9の実験結果より、混合割合は配合4から配合5の混合割合が良いことが実証できた。つまり配合6のように3官能基の割合が減ると付着性が劣り、また、配合7から配合9のように2官能基の割合が増えても付着性が劣る。つまり、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合が好ましい。
【0105】
以上、本発明の熱伝導性絶縁膜用の塗料のバインダーの組成を上記の割合となるように工夫すれば、熱伝導性絶縁膜120の付着性が大きくなるように、Si−Oネットワークと残存するSi−OH基の量を制御できる。
【0106】
[熱伝導試験]
熱伝導性絶縁膜120において、高い熱伝導率が得られていることを確認した。
熱伝導試験に用いた熱伝導性絶縁膜用の塗料のバインダー組成は、付着性実験に用いた塗料のバインダー組成と同じものとした。
熱伝導性絶縁膜120を形成する基板としては、脱脂処理を行ったアルミプレート(150mm×75mm×1.0mm)を用いた。
熱伝導性試験の手法としては、アルミプレートの半分に熱伝導性絶縁膜120を形成し、残り半分は熱伝導性絶縁膜120は形成せずアルミプレートが剥き出しのままとする。アルミプレートの裏面から加熱し、アルミプレートの表面の温度分布を測定した。
【0107】
(表3)
【0108】
本発明のLED照明構造体に用いる熱伝導性絶縁膜では、Si−Oネットワークが膜全体を全通しているので熱伝導率が高く、ナノ粒子の無機化合物が含まれて固化されているので熱伝導率が高い。実際に熱伝導性絶縁膜の試料片を用いて熱伝導率を計測したところ、2W/mK以上の熱伝導率が得られていた。
【0109】
上記の顔料としては、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、チタンの酸化物または窒化物のいずれか1種以上の化合物を含むものである。
なお、顔料の粒度は、膜の平滑性や綴密性、強度を考慮して、顔料の粒度は溶媒分散後で平均粒度で110nm以下が望ましい。
顔料の割合は、アルコキシドに対して、40体積%以下が妥当である。
【0110】
膜の厚みは、基材や発熱体と膜が強固に付着し、且つ、両者の熱膨張差が非常に近い場合でも、膜が厚くなりすぎると、クラックが発生する。それは、Si−OHが脱水縮合するときに起こる収縮現象が原因である。膜厚は、バインダーの含有量にもよるが、15μm以下が望ましい。特にアルコキシド化合物の脱水縮合物の全固形物(即ちSi−OHから生じるSiO2と混合したときの無機顔料成分の合計)にしめる割合が40体積%の場合、800℃でクラックの発生を防ぐ為には10μm前後が好ましい。
【0111】
[絶縁性試験]
本発明の熱伝導性電子回路基板に用いる熱伝導性絶縁膜の絶縁性を調べるために熱伝導性絶縁膜を用いて絶縁性が確保されている試験を行った。
(表4)
【0112】
[耐腐食性試験]
本発明の熱伝導性電子回路基板に用いる熱伝導性絶縁膜の耐腐食性も調べるために熱伝導性絶縁膜を用いて塩水噴霧試験と水浸試験も行った。
塩水噴霧試験の方法は、JIS−K5600−7−1に準じた。
測定はステンレスプレートのものを用いた。
塩水噴霧の放置時間は500時間とした。
塩水噴霧試験の結果を[表5]に示す。
【0113】
【表5】

【0114】
水浸試験の方法は、JIS−K5600−6−2に準じた。
測定はアルミプレートのものを用いた。
水浸の放置時間は500時間とした。
水浸試験の結果を[表6]に示す。
【0115】
【表6】

【0116】
以上、塩水噴霧試験と水浸試験の結果から、本発明の熱伝導性電子回路基板に用いる熱伝導性絶縁膜の耐腐食性が大きいことが実証できた。
【0117】
以上、熱伝導性絶縁膜塗料が良好な熱伝導性、放熱性、絶縁性を備えていることを検証できた。
【0118】
以上、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明は、熱エネルギーを遠赤外線エネルギーに変換する熱伝導性絶縁膜に広く適用することができる。
本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の第1の熱伝導性電子回路基板100の横断面図の構成を模式的に示す図
【図2】本発明の第1の熱伝導性電子回路基板100における熱伝導について模式的に示した図
【図3】本発明の熱伝導性電子回路基板100の第1の製造方法を模式的に示す図
【図4】本発明の熱伝導性電子回路基板100の第2の製造方法を模式的に示す図
【図5】本発明の熱伝導性電子回路基板100の第3の製造方法を模式的に示す図
【図6】本発明の第2の熱伝導性電子回路基板100aの横断面図の構成を模式的に示す図
【図7】本発明の第2の熱伝導性電子回路基板100aにおける熱伝導について模式的に示した図
【図8】本発明の第2の熱伝導性電子回路基板100aの第1の製造方法を模式的に示す図
【図9】本発明の第2の熱伝導性電子回路基板100aの第2の製造方法を模式的に示す図
【図10】本発明の熱伝導性絶縁膜塗料および熱伝導性絶縁膜120の断面構造を模式的に拡大した図
【図11】従来の電子回路基板の構造を模式的に示した図
【符号の説明】
【0120】
100 熱伝導性電子回路基板
110 金属基板
120 熱伝導性絶縁膜層
121 第1の顔料
122 第2の顔料
123 バインダー
124 溶媒
130 電子回路パターン
140 電子回路素子
150 接着層
160 マスク
170 触媒パターン
200 転写フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路を形成する基板となるとともに、前記電子回路素子において発生した熱を拡散させる熱伝導体となる導電性基板と、
前記導電性基板の表面に形成した、絶縁性と熱伝導性を備えた熱伝導性絶縁膜と、
前記熱伝導性絶縁膜の表面に形成した電子回路パターンおよび電子回路素子とを備えた熱伝導性電子回路基板。
【請求項2】
電子回路を形成する基板となるとともに、前記電子回路素子において発生した熱を拡散させる熱伝導体となる導電性基板と、
前記導電性基板の表面に形成した、絶縁性と熱伝導性を備えた熱伝導性絶縁膜と、
前記熱伝導性絶縁膜の表面に形成した接着層と、
前記接着層を介して前記熱伝導性絶縁膜の表面に形成した電子回路パターンおよび電子回路素子とを備えた熱伝導性電子回路基板。
【請求項3】
前記熱伝導性絶縁膜が、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されたSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基の前記生成化合物を含有するバインダーと、第1の顔料と、ナノ粒子化合物である第2の顔料を備えたものであり、分散された前記第1の顔料の間隙を前記第2の顔料と前記バインダーで充填して密度を向上せしめたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱伝導性電子回路基板。
【請求項4】
前記第1の顔料および第2の顔料が、コロイダル金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のナノ粒子化合物である請求項1から3のいずれか1項に記載の熱伝導性電子回路基板。
【請求項5】
前記第1の顔料が、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化カルシウムの化合物のいずれかまたはそれらの混合物を含むものである請求項1から4のいずれか1項に記載の熱伝導性電子回路基板。
【請求項6】
前記第2の顔料が、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化カルシウムの化合物のいずれかまたはそれらの混合物を含むものである請求項1から5のいずれか1項に記載の熱伝導性電子回路基板。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の熱伝導性電子回路基板を組み込んだ電子機器。
【請求項8】
電子回路を形成する基板となるとともに、前記電子回路素子において発生した熱を拡散させる熱伝導体となる導電性基板と、前記導電性基板の表面に形成した絶縁性と熱伝導性を備えた熱伝導性絶縁膜と、前記熱伝導性絶縁膜の表面に形成した電子回路パターンおよび電子回路素子とを備えた熱伝導性電子回路基板を製造する方法であって、
前記熱伝導性絶縁膜の形成工程が、前記導電性基板の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥することにより前記熱伝導性絶縁膜を形成する工程であり、
前記電子回路パターンの形成工程が、前記電子回路パターンをフィルム体の表面にあらかじめ形成する電子回路転写フィルム形成工程と、前記電子回路転写フィルムから前記熱伝導性絶縁膜の表面に前記電子回路パターンを転写する転写工程を備えた工程であることを特徴とする熱伝導性電子回路基板の製造方法。
【請求項9】
電子回路を形成する基板となるとともに、前記電子回路素子において発生した熱を拡散させる熱伝導体となる導電性基板と、前記導電性基板の表面に形成した絶縁性と熱伝導性を備えた熱伝導性絶縁膜と、前記熱伝導性絶縁膜の表面に形成した電子回路パターンおよび電子回路素子とを備えた熱伝導性電子回路基板を製造する方法であって、
前記熱伝導性絶縁膜の形成工程が、前記導電性基板の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥することにより形成する工程であり、
前記電子回路パターンの形成工程が、前記熱伝導性絶縁膜の表面に銅箔層を蒸着して形成する銅箔蒸着工程と、前記銅箔層の表面に前記電子回路パターンを作るマスキングを施す工程と、前記マスキングした前記銅箔層をエッチングすることにより前記熱伝導性絶縁膜の表面に前記電子回路パターンを形成する工程を備えたものであることを特徴とする熱伝導性電子回路基板の製造方法。
【請求項10】
電子回路を形成する基板となるとともに、前記電子回路素子において発生した熱を拡散させる熱伝導体となる導電性基板と、前記導電性基板の表面に形成した絶縁性と熱伝導性を備えた熱伝導性絶縁膜と、前記熱伝導性絶縁膜の表面に形成した電子回路パターンおよび電子回路素子とを備えた熱伝導性電子回路基板を製造する方法であって、
前記熱伝導性絶縁膜の形成工程が、前記導電性基板の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥することにより形成する工程であり、
前記電子回路パターンの形成工程が、前記熱伝導性絶縁膜の表面に銅箔層を蒸着して形成する銅箔蒸着工程と、前記熱伝導性絶縁膜の表面に無電解メッキ用の触媒を含有した感光性塗布液を塗布し、前記電子回路パターンに対応する触媒パターンを形成する触媒パターン形成工程と、前記触媒パターンが描かれた前記基板全体を無電解メッキ液に浸漬して無電解メッキし、前記熱伝導性絶縁膜の表面に電子回路パターンを形成する各工程を備えたことを特徴とする熱伝導性電子回路基板の製造方法。
【請求項11】
電子回路を形成する基板となるとともに、前記電子回路素子において発生した熱を拡散させる熱伝導体となる導電性基板と、前記導電性基板の表面に形成した絶縁性と熱伝導性を備えた熱伝導性絶縁膜と、前記熱伝導性絶縁膜の表面に形成した接着層と、前記接着層の表面に形成した電子回路パターンおよび電子回路素子とを備えた熱伝導性電子回路基板を製造する方法であって、
前記熱伝導性絶縁膜の形成工程が、前記導電性基板の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥することにより前記熱伝導性絶縁膜を形成する工程であり、
前記接着層の形成工程が、前記熱伝導性絶縁膜の表面に接着剤を塗布・乾燥する工程であり、
前記電子回路パターンの形成工程が、前記電子回路パターンをフィルム体の表面にあらかじめ形成する電子回路転写フィルム形成工程と、前記電子回路転写フィルムから前記熱伝導性絶縁膜の表面に前記電子回路パターンを転写する転写工程を備えたものであることを特徴とする熱伝導性電子回路基板の製造方法。
【請求項12】
電子回路を形成する基板となるとともに、前記電子回路素子において発生した熱を拡散させる熱伝導体となる導電性基板と、前記導電性基板の表面に形成した絶縁性と熱伝導性を備えた熱伝導性絶縁膜と、前記熱伝導性絶縁膜の表面に形成した接着層と、前記接着層の表面に形成した電子回路パターンおよび電子回路素子とを備えた熱伝導性電子回路基板を製造する方法であって、
前記熱伝導性絶縁膜の形成工程が、前記導電性基板の表面に絶縁・熱伝導性塗料を塗布・乾燥することにより前記熱伝導性絶縁膜を形成する工程であり、
前記接着層の形成工程が、前記熱伝導性絶縁膜の表面に接着剤を塗布・乾燥する工程であり、
前記電子回路パターンの形成工程が、前記接着層の表面に銅箔を貼り付ける工程と、前記銅箔層の表面に前記電子回路パターンを作るマスキングを施す工程と、前記マスキングした前記銅箔層をエッチングすることにより前記熱伝導性絶縁膜の表面に前記電子回路パターンを形成する工程を備えたものであることを特徴とする熱伝導性電子回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−205955(P2010−205955A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50158(P2009−50158)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(506160215)マイクロコーテック株式会社 (11)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】