説明

熱処理方法

【課題】シリサイドの横方向への異常成長を防止しつつ、シリサイド形成を行うことができる熱処理方法を提供する。
【解決手段】半導体ウェハーWのソース・ドレイン領域にシリコンなどのイオンを注入し、そのイオン注入領域150を非晶質化する。非晶質化されたイオン注入領域150にニッケル膜158を成膜する。ニッケル膜158が成膜された半導体ウェハーWにフラッシュランプから第1照射を行ってその表面温度を予備加熱温度T1から目標温度T2にまで1ミリ秒以上20ミリ秒以下にて昇温する。続いて、フラッシュランプから第2照射を行って半導体ウェハーWの表面温度を目標温度T2から±25℃以内の範囲内に1ミリ秒以上100ミリ秒以下維持する。これにより、ニッケルシリサイドが縦方向に優先的に成長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハーなどのシリコンの基板に光を照射することによって該基板を加熱してシリサイドを成長させる熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果トランジスタ(FET)の高性能化のために、金属とシリコンとの化合物(シリサイド)を形成するシリサイド技術が知られている。シリサイドを形成することによって、ゲートおよびソース・ドレイン領域の抵抗が低減されて電界効果トランジスタの高速動作が実現される。シリサイドを形成するための金属としては、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、チタン(Ti)などが検討されているが、ニッケルが最も微細化に適した材料として有望である。特許文献1には、シリコン層の上にニッケル膜を成膜し、電気炉またはランプアニール装置によって熱処理を行うことにより、ニッケルシリサイドを形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−14567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来においては、ニッケルシリサイド形成のための熱処理に数10秒から100分以上の処理時間を要していた。例えば、特許文献1に開示されるシリサイド技術では、電気炉を用いたときの熱処理時間は15分以上120分未満であり、ランプアニール装置を用いたときの熱処理時間は15秒以上5分以下とされている。
【0005】
しかしながら、このような長時間の熱処理を行うと、ニッケルシリサイドが横方向(ソース・ドレイン領域からゲートへと向かう方向)に異常成長してソース・ドレインの接合を突き破り、リーク電流が急速に増大するという問題が発生する。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、シリサイドの横方向への異常成長を防止しつつ、シリサイド形成を行うことができる熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、シリコンの基板を加熱してシリサイドを成長させる熱処理方法において、前記基板にイオンを注入してそのイオン注入領域を非晶質化させる注入工程と、非晶質化された前記イオン注入領域に金属膜を成膜する成膜工程と、前記金属膜が成膜された前記基板を所定の予備加熱温度にて加熱する予備加熱工程と、前記基板に光を照射することによって前記基板の表面温度を前記予備加熱温度から目標温度にまで1ミリ秒以上20ミリ秒以下にて昇温する昇温工程と、前記昇温工程の後、前記基板に光を照射することによって前記基板の表面温度を前記目標温度から±25℃以内の範囲内に1ミリ秒以上100ミリ秒以下維持する温度維持工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理方法において、前記成膜工程では、ニッケルを成膜し、前記予備加熱温度は300℃以下であり、前記目標温度は600℃以上1100℃以下であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明に係る熱処理方法において、前記成膜工程では、チタンを成膜し、前記予備加熱温度は500℃以下であり、前記目標温度は600℃以上1100℃以下であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項1の発明に係る熱処理方法において、前記成膜工程では、コバルトを成膜し、前記予備加熱温度は500℃以下であり、前記目標温度は600℃以上1100℃以下であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項1の発明に係る熱処理方法において、前記成膜工程では、タングステンを成膜し、前記予備加熱温度は700℃以下であり、前記目標温度は900℃以上1100℃以下であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る熱処理方法において、前記昇温工程および前記温度維持工程では、フラッシュランプから前記基板にフラッシュ光を照射することを特徴とする。
【0013】
また、請求項7の発明は、請求項6の発明に係る熱処理方法において、前記昇温工程および前記温度維持工程では、コンデンサから前記フラッシュランプへの電荷の供給をスイッチング素子によって断続することにより前記フラッシュランプの発光出力を制御することを特徴とする。
【0014】
また、請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれかの発明に係る熱処理方法において、前記注入工程では、窒素、アルゴン、シリコン、および、ゲルマニウムからなる群から選択された1のイオンを注入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1から請求項8の発明によれば、非晶質化されたイオン注入領域に金属膜が成膜された基板に光を照射することによって基板の表面温度を予備加熱温度から目標温度にまで1ミリ秒以上20ミリ秒以下にて昇温した後、その基板に光を照射することによって基板の表面温度を目標温度から±25℃以内の範囲内に1ミリ秒以上100ミリ秒以下維持するため、シリサイドが縦方向に優先的に成長し、シリサイドの横方向への異常成長を防止しつつ、シリサイド形成を行うことができる。また、注入工程で導入された点欠陥を軽減することができる。
【0016】
特に、請求項7の発明によれば、コンデンサからフラッシュランプへの電荷の供給をスイッチング素子によって断続することによりフラッシュランプの発光出力を制御するため、基板の表面温度を目標温度近傍に安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】保持部の全体外観を示す斜視図である。
【図3】保持部を上面から見た平面図である。
【図4】保持部を側方から見た側面図である。
【図5】移載機構の平面図である。
【図6】移載機構の側面図である。
【図7】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
【図8】フラッシュランプの駆動回路を示す図である。
【図9】半導体ウェハーにニッケルシリサイドを形成する処理手順を示すフローチャートである。
【図10】イオン注入による非晶質化プロセスを説明する図である。
【図11】イオン注入領域にニッケル膜が成膜された状態を示す図である。
【図12】ニッケルシリサイドが成長する状態を示す図である。
【図13】半導体ウェハーの表面温度の変化を示す図である。
【図14】パルス信号の波形とフラッシュランプに流れる電流との相関の一例を示す図である。
【図15】フラッシュランプの発光出力プロファイルの一例を示す図である。
【図16】半導体ウェハーの表面温度プロファイルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る熱処理方法を実施するための熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。本実施形態の熱処理装置1は、基板としてφ300mmの円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。詳細は後述するが、熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWにはニッケル膜が成膜されており、熱処理装置1による加熱処理によってニッケルシリサイドが形成される。
【0020】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、シャッター機構2と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、シャッター機構2、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0021】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0022】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0023】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。
【0024】
チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。また、反射リング68,69の内周面は電解ニッケルメッキによって鏡面とされている。
【0025】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0026】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガス(本実施形態では窒素ガス(N))を供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は窒素ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、窒素ガス供給源85から緩衝空間82に窒素ガスが送給される。緩衝空間82に流入した窒素ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。
【0027】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、窒素ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0028】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
【0029】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。また、図3は保持部7を上面から見た平面図であり、図4は保持部7を側方から見た側面図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプター74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプター74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0030】
基台リング71は円環形状の石英部材である。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(図1参照)。円環形状を有する基台リング71の上面に、その周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。なお、基台リング71の形状は、円環形状から一部が欠落した円弧状であっても良い。
【0031】
平板状のサセプター74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。サセプター74は石英にて形成された略円形の平板状部材である。サセプター74の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、サセプター74は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。サセプター74の上面には複数個(本実施形態では5個)のガイドピン76が立設されている。5個のガイドピン76はサセプター74の外周円と同心円の周上に沿って設けられている。5個のガイドピン76を配置した円の径は半導体ウェハーWの径よりも若干大きい。各ガイドピン76も石英にて形成されている。なお、ガイドピン76は、サセプター74と一体に石英のインゴットから加工するようにしても良いし、別途に加工したものをサセプター74に溶接等によって取り付けるようにしても良い。
【0032】
基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプター74の周縁部の下面とが溶接によって固着される。すなわち、サセプター74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されており、保持部7は石英の一体成形部材となる。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、略円板形状のサセプター74は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプター74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。半導体ウェハーWは、5個のガイドピン76によって形成される円の内側に載置されることにより、水平方向の位置ずれが防止される。なお、ガイドピン76の個数は5個に限定されるものではなく、半導体ウェハーWの位置ずれを防止できる数であれば良い。
【0033】
また、図2および図3に示すように、サセプター74には、上下に貫通して開口部78および切り欠き部77が形成されている。切り欠き部77は、熱電対を使用した接触式温度計130のプローブ先端部を通すために設けられている。一方、開口部78は、放射温度計120がサセプター74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。さらに、サセプター74には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0034】
図5は、移載機構10の平面図である。また、図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0035】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプター74に穿設された貫通孔79(図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプター74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0036】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0037】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0038】
図8は、フラッシュランプFLの駆動回路を示す図である。同図に示すように、コンデンサ93と、コイル94と、フラッシュランプFLと、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)96とが直列に接続されている。また、図8に示すように、制御部3は、パルス発生器31および波形設定部32を備えるとともに、入力部33に接続されている。入力部33としては、キーボード、マウス、タッチパネル等の種々の公知の入力機器を採用することができる。入力部33からの入力内容に基づいて波形設定部32がパルス信号の波形を設定し、その波形に従ってパルス発生器31がパルス信号を発生する。
【0039】
フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部に陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)92と、該ガラス管92の外周面上に付設されたトリガー電極91とを備える。コンデンサ93には、電源ユニット95によって所定の電圧が印加され、その印加電圧(充電電圧)に応じた電荷が充電される。また、トリガー電極91にはトリガー回路97から高電圧を印加することができる。トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加するタイミングは制御部3によって制御される。
【0040】
IGBT96は、ゲート部にMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)を組み込んだバイポーラトランジスタであり、大電力を取り扱うのに適したスイッチング素子である。IGBT96のゲートには制御部3のパルス発生器31からパルス信号が印加される。IGBT96のゲートに所定値以上の電圧(Highの電圧)が印加されるとIGBT96がオン状態となり、所定値未満の電圧(Lowの電圧)が印加されるとIGBT96がオフ状態となる。このようにして、フラッシュランプFLを含む駆動回路はIGBT96によってオンオフされる。IGBT96がオンオフすることによってフラッシュランプFLと対応するコンデンサ93との接続が断続される。
【0041】
コンデンサ93が充電された状態でIGBT96がオン状態となってガラス管92の両端電極に高電圧が印加されたとしても、キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、通常の状態ではガラス管92内に電気は流れない。しかしながら、トリガー回路97がトリガー電極91に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には両端電極間の放電によってガラス管92内に電流が瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
【0042】
また、図1のリフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射された光を保持部7の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されて梨地模様を呈する。
【0043】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4の内部には複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLが内蔵されている。複数のハロゲンランプHLはチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行う。図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。本実施形態では、上下2段に各20本ずつのハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0044】
また、図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0045】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段の各ハロゲンランプHLの長手方向と下段の各ハロゲンランプHLの長手方向とが直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0046】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0047】
また、図1に示すように、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4およびチャンバー6の側方にシャッター機構2を備える。シャッター機構2は、シャッター板21およびスライド駆動機構22を備える。シャッター板21は、ハロゲン光に対して不透明な板であり、例えばチタン(Ti)にて形成されている。スライド駆動機構22は、シャッター板21を水平方向に沿ってスライド移動させ、ハロゲン加熱部4と保持部7との間の遮光位置にシャッター板21を挿脱する。スライド駆動機構22がシャッター板21を前進させると、チャンバー6とハロゲン加熱部4との間の遮光位置(図1の二点鎖線位置)にシャッター板21が挿入され、下側チャンバー窓64と複数のハロゲンランプHLとが遮断される。これによって、複数のハロゲンランプHLから熱処理空間65の保持部7へと向かう光は遮光される。逆に、スライド駆動機構22がシャッター板21を後退させると、チャンバー6とハロゲン加熱部4との間の遮光位置からシャッター板21が退出して下側チャンバー窓64の下方が開放される。
【0048】
また、制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えて構成される。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。また、図8に示したように、制御部3は、パルス発生器31および波形設定部32を備える。上述のように、入力部33からの入力内容に基づいて、波形設定部32がパルス信号の波形を設定し、それに従ってパルス発生器31がIGBT96のゲートにパルス信号を出力する。この制御部3およびIGBT96によってフラッシュランプFLの発光出力を制御する発光制御手段が構成される。
【0049】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0050】
次に、半導体ウェハーWにニッケルシリサイドを形成する処理手順について説明する。図9は、半導体ウェハーWにニッケルシリサイドを形成する処理手順を示すフローチャートである。ステップS3以降が熱処理装置1によって実行される処理である。まず、半導体ウェハーWにイオンを注入してそのイオン注入領域を非晶質化させる(ステップS1)。
【0051】
図10は、イオン注入による非晶質化プロセスを説明する図である。非晶質化プロセスが行われる前の半導体ウェハーWは、単結晶シリコンの基材111の上面にゲート電極115を設けて構成されている。金属のゲート電極115はゲート絶縁膜114を介してシリコンの基材111上に設けられており、その測方にはSiNのサイドウォール116が形成されている。シリコンの基材111の上面のうちゲート電極115の両側方がソース・ドレイン領域となる。ステップS1では、図中矢印AR10に示すように、このソース・ドレイン領域に窒素(N)、アルゴン(Ar)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)からなる群から選択された1種のイオンが打ち込まれる。なお、イオンの打ち込みは、公知のイオン注入装置によって行えば良い。
【0052】
イオンが注入されることによって、結晶質であったイオン注入領域150が非晶質化されてアモルファスのシリコンとなる。図10中、点線にて示すのは、非晶質のシリコンと結晶質のシリコンとの境界である。また、図10に示すように、イオン注入によって、非晶質と結晶質との境界近傍(非晶質層の直下)にEOR(End-of-Range)欠陥と称される点欠陥155が形成されることもある。
【0053】
次に、非晶質化されたイオン注入領域150にニッケル膜を成膜する(ステップS2)。図11は、イオン注入領域150にニッケル膜158が成膜された状態を示す図である。成膜されるニッケル膜158は、ニッケル(Ni)に白金(Pt)、コバルト(Co)、チタン(Ti)を含有させた合金である。このニッケル膜158の成膜は、例えば公知のスパッタリング装置を用いたスパッタリングによって行うことができる。また、例えば真空蒸着によってニッケル膜158の成膜を行うようにしても良い。なお、同図においては、理解容易のためにニッケル膜158の厚さを誇張して描いているが、このニッケル膜158の膜厚は数nmから十数nm程度である。
【0054】
ステップS2までの成膜工程が終了した後、非晶質化されたイオン注入領域150の上にニッケル膜158が成膜された半導体ウェハーWが上記の熱処理装置1に搬入される(ステップS3)。以下に説明する熱処理装置1での動作手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0055】
熱処理装置1においては、半導体ウェハーWの搬入に先立って、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始されている。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0056】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理ステップに応じて適宜変更される。
【0057】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介してニッケル膜158が形成された半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプター74の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。
【0058】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプター74に受け渡されて水平姿勢に保持される。半導体ウェハーWは、ニッケル膜158が成膜された表面を上面としてサセプター74に保持される。また、半導体ウェハーWは、サセプター74の上面にて5個のガイドピン76の内側に保持される。サセプター74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0059】
半導体ウェハーWが保持部7のサセプター74に載置されて保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される(ステップS4)。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプター74を透過して半導体ウェハーWの裏面から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWの温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0060】
図13は、半導体ウェハーWの表面温度の変化を示す図である。半導体ウェハーWが搬入されてサセプター74に載置された後、制御部3が時刻t0に40本のハロゲンランプHLを点灯させてハロゲン光照射によって半導体ウェハーWを予備加熱温度T1にまで昇温している。予備加熱温度T1は室温以上300℃以下であり、本実施形態では200℃としている。予備加熱温度T1を300℃以下としているのは、これが300℃を超えると、ニッケル膜158とイオン注入領域150のシリコンとが反応してニッケルシリサイドが横方向への異常成長を開始するためである。
【0061】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が接触式温度計130によって測定されている。すなわち、熱電対を内蔵する接触式温度計130がサセプター74に保持された半導体ウェハーWの下面に切り欠き部77を介して接触して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、接触式温度計130による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御している。なお、ハロゲンランプHLからの光照射によって半導体ウェハーWを昇温するときには、放射温度計120による温度測定は行わない。これは、ハロゲンランプHLから照射されるハロゲン光が放射温度計120に外乱光として入射し、正確な温度測定ができないためである。
【0062】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、接触式温度計130によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時刻t1にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を制御して半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0063】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。さらに、チャンバー側部61に装着された反射リング69の内周面は鏡面とされているため、この反射リング69の内周面によって半導体ウェハーWの周縁部に向けて反射する光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布をより均一なものとすることができる。
【0064】
次に、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時刻t2にフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射することによる加熱処理を実行する。なお、半導体ウェハーWの温度が室温から予備加熱温度T1に到達するまでの時間(時刻t0から時刻t1までの時間)および予備加熱温度T1に到達してからフラッシュランプFLが発光するまでの時間(時刻t1から時刻t2までの時間)はいずれも数秒程度である。フラッシュランプFLがフラッシュ光照射を行うに際しては、予め電源ユニット95によってコンデンサ93に電荷を蓄積しておく。そして、コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にて、制御部3のパルス発生器31からIGBT96にパルス信号を出力してIGBT96をオンオフ駆動する。
【0065】
図14は、パルス信号の波形とフラッシュランプFLに流れる電流との相関の一例を示す図である。ここでは、図14(a)に示すような波形のパルス信号がパルス発生器31から出力される。パルス信号の波形は、パルス幅の時間(オン時間)とパルス間隔の時間(オフ時間)とをパラメータとして順次設定したレシピを入力部33から入力することによって規定することができる。このようなレシピをオペレータが入力部33から制御部3に入力すると、それに従って制御部3の波形設定部32は図14(a)に示すようなオンオフを繰り返すパルス波形を設定する。図14(a)に示すパルス波形においては、前段に比較的パルス幅が長くて間隔が短い複数のパルスPAが設定され、後段に比較的パルス幅が短くて間隔が長い複数のパルスPBが設定されている。そして、波形設定部32によって設定されたパルス波形に従ってパルス発生器31がパルス信号を出力する。その結果、IGBT96のゲートには図14(a)のような波形のパルス信号が印加され、IGBT96のオンオフ駆動が制御されることとなる。具体的には、IGBT96のゲートに入力されるパルス信号がオンのときにはIGBT96がオン状態となり、パルス信号がオフのときにはIGBT96がオフ状態となる。
【0066】
また、パルス発生器31から出力するパルス信号がオンになるタイミングと同期して制御部3がトリガー回路97を制御してトリガー電極91に高電圧(トリガー電圧)を印加する。コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にてIGBT96のゲートにパルス信号が入力され、かつ、そのパルス信号がオンになるタイミングと同期してトリガー電極91に高電圧が印加されることにより、パルス信号がオンのときにはガラス管92内の両端電極間で必ず電流が流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
【0067】
制御部3からIGBT96のゲートに図14(a)の波形のパルス信号を出力するとともに、該パルス信号がオンになるタイミングと同期してトリガー電極91に高電圧を印加することにより、フラッシュランプFLを含む回路中に図14(b)に示すような波形の電流が流れる。すなわち、IGBT96のゲートに入力されるパルス信号がオンのときにはフラッシュランプFLのガラス管92内に流れる電流値が増加し、オフのときには電流値が減少する。なお、各パルスに対応する個々の電流波形はコイル94の定数によって規定される。
【0068】
図14(b)に示すような波形の電流が流れてフラッシュランプFLが発光する。フラッシュランプFLの発光出力は、フラッシュランプFLに流れる電流にほぼ比例する。従って、フラッシュランプFLの発光出力の出力波形(プロファイル)は図15に示すようなパターンとなる。図15に示す如きフラッシュランプFLからの出力波形にて、保持部7に保持された半導体ウェハーWに光照射が行われる。
【0069】
IGBT96を使用することなくフラッシュランプFLを発光させた場合には、コンデンサ93に蓄積されていた電荷が1回の発光で消費され、フラッシュランプFLからの出力波形は幅が0.1ミリセカンドないし10ミリセカンド程度のシングルパルスとなる。これに対して、本実施の形態では、回路中にスイッチング素子たるIGBT96を接続してそのゲートに図14(a)のようなパルス信号を出力することにより、コンデンサ93からフラッシュランプFLへの電荷の供給をIGBT96によって断続してフラッシュランプFLに流れる電流を制御している。その結果、いわばフラッシュランプFLの発光がチョッパ制御されることとなり、コンデンサ93に蓄積された電荷が分割して消費され、極めて短い時間の間にフラッシュランプFLが点滅を繰り返す。なお、図14(b)に示すように、電流値が完全に”0”になる前に次のパルスがIGBT96のゲートに印加されて電流値が再度増加するため、フラッシュランプFLが点滅を繰り返している間も発光出力が完全に”0”になるものではない。
【0070】
図15に示す光の出力波形は、2段階の光照射を行っているものとみなすことができる。すなわち、フラッシュランプFLが発光を開始した時刻t21から発光出力が最大となる時刻t22までの第1照射と、時刻22から時刻t23にかけて発光出力が徐々に低下する第2照射と、によって構成される2段照射を行っている。
【0071】
より詳細に述べれば、まずパルス発生器31がIGBT96のゲートに比較的パルス幅が長くて間隔が短い複数のパルスPAを断続的に印加することによって、IGBT96がオンオフを繰り返してフラッシュランプFLを含む回路に電流が流れる。この段階では、パルス幅が長くて間隔が短い複数のパルスPAがIGBT96のゲートに印加されるため、IGBT96のオン時間がオフ時間よりも長くなり、フラッシュランプFLに流れる電流は全体概観としては増大するようなのこぎり波形となる(図14(b)の前段)。このような波形の電流が流れてフラッシュランプFLは、時刻t21から時刻t22に向けて発光出力が増大する第1照射を行う。
【0072】
次に、パルス発生器31がIGBT96のゲートにパルス幅が短くて間隔が長い複数のパルスPBを断続的に印加する。この段階では、パルス幅が短くて間隔が長い複数のパルスPBがIGBT96のゲートに印加されるため、上記とは逆にIGBT96のオン時間がオフ時間よりも短くなり、フラッシュランプFLに流れる電流は全体概観としては徐々に減少するようなのこぎり波形となる(図14(b)の後段)。このような波形の電流が流れてフラッシュランプFLは、時刻t22から時刻t23に向けて発光出力が徐々に低下するような第2照射を行う。
【0073】
図15に示すような2段階の光照射を半導体ウェハーWに対して行うことによって、半導体ウェハーWの表面温度は予備加熱温度T1から目標温度T2にまで昇温し、その温度プロファイルは図16に示すようなパターンとなる。より詳細には、時刻t21から時刻t22までの第1照射によって半導体ウェハーWの表面温度が予備加熱温度T1から目標温度T2にまで昇温する(ステップS5)。目標温度T2はシリコンの基材111とニッケル膜158とが反応してニッケルシリサイドが形成される600℃以上1100℃以下であり、本実施形態では900℃としている。第1照射によって半導体ウェハーWの表面温度が昇温する時刻t21から時刻t22までの時間は1ミリ秒以上20ミリ秒以下である。
【0074】
また、時刻t22から時刻t23までの第2照射によって半導体ウェハーWの表面温度が目標温度T2から±25℃以内の範囲内に維持される(ステップS6)。半導体ウェハーWの表面温度が目標温度T2から±25℃以内の範囲内に維持される時刻t22から時刻t23までの時間は1ミリ秒以上100ミリ秒以下である。なお、図13の時刻スケールは秒であるのに対して、図16の時刻スケールはミリ秒であるため、図16のt21からt23はいずれも図13ではt2に実質的に重ねて表示されるものである。
【0075】
フラッシュランプFLによる第2照射が終了すると、IGBT96がオフ状態となってフラッシュランプFLの発光が停止し(ステップS7)、半導体ウェハーWの表面温度は目標温度T2から急速に降温する。図13に戻り、第2照射が終了した後、所定時間が経過した時刻t3にハロゲンランプHLが消灯する(ステップS8)。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1からの降温を開始する。また、ハロゲンランプHLが消灯するのと同時に、シャッター機構2がシャッター板21をハロゲン加熱部4とチャンバー6との間の遮光位置に挿入する。ハロゲンランプHLが消灯しても、すぐにフィラメントや管壁の温度が低下するものではなく、暫時高温のフィラメントおよび管壁から輻射熱が放射され続け、これが半導体ウェハーWの降温を妨げる。シャッター板21が挿入されることによって、消灯直後のハロゲンランプHLから熱処理空間65に放射される輻射熱が遮断されることとなり、半導体ウェハーWの降温速度を高めることができる。
【0076】
制御部3は、接触式温度計130によって測定される半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプター74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプター74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され(ステップS9)、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0077】
本実施形態においては、半導体ウェハーWのソース・ドレイン領域に窒素、アルゴン、シリコン、ゲルマニウムなどのイオンを注入し、そのイオン注入領域150を非晶質化している。そして、非晶質化されたイオン注入領域150にニッケル膜158を成膜している。こうしてニッケル膜158が成膜された半導体ウェハーWが熱処理装置1に搬入され、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によって加熱される。
【0078】
フラッシュ光照射に際しては、まず、IGBT96のゲートにパルス幅が長くて間隔が短い複数のパルスPAを断続的に印加することにより、フラッシュランプFLの発光出力を1ミリ秒以上20ミリ秒以下の時間をかけてゼロから最大値にまで到達させる第1照射を行っている。そして、このような第1照射によって半導体ウェハーWの表面温度を予備加熱温度T1から目標温度T2にまで1ミリ秒以上20ミリ秒以下にて昇温している(本実施形態では700℃昇温している)。
【0079】
半導体ウェハーWの表面温度が目標温度T2にまで昇温されることによって、非晶質化されたイオン注入領域150のアモルファスシリコンとニッケル膜158とが反応してニッケルシリサイドが形成される。また、1ミリ秒以上の時間をかけて半導体ウェハーWの表面温度を予備加熱温度T1から目標温度T2まで昇温するため、半導体ウェハーWの表面に形成されているデバイス(ゲート電極115等)にプロセスダメージが生じるのを防止することができる。半導体ウェハーWの表面温度が予備加熱温度T1から目標温度T2にまで昇温する時間が1ミリ秒未満であると、ニッケルシリサイドの形成が均一になされないおそれがある。また、この昇温時間が1ミリ秒未満であると、急激な熱膨張によって半導体ウェハーWに反りが発生してゲートおよびソース・ドレイン領域に与えられていた歪みが変化する。その結果、半導体ウェハーWから生産されるデバイスの特性が劣化するおそれがある。一方、半導体ウェハーWの表面温度が予備加熱温度T1から目標温度T2にまで昇温する時間が20ミリ秒より長いと、ニッケル膜158からニッケルが過度に拡散してニッケルシリサイドの膜厚が厚くなり過ぎる懸念がある。また、ソース・ドレイン領域に注入された不純物が深く拡散して接合が深くなり過ぎるおそれがある。このため、半導体ウェハーWの表面温度が予備加熱温度T1から目標温度T2にまで昇温する時間は1ミリ秒以上20ミリ秒以下としている。
【0080】
続いて、半導体ウェハーWの表面が予備加熱温度T1から目標温度T2にまで昇温した後、IGBT96のゲートにパルス幅が短くて間隔が長い複数のパルスPBを断続的に印加することにより、フラッシュランプFLの発光出力を1ミリ秒以上100ミリ秒以下の時間をかけて最大値から徐々に低下させる第2照射を行っている。そして、このような第2照射によって半導体ウェハーWの表面温度を目標温度T2から±25℃以内の範囲内に1ミリ秒以上100ミリ秒以下維持している。
【0081】
半導体ウェハーWの表面温度を目標温度T2の近傍に1ミリ秒以上100ミリ秒以下維持することによって、ニッケルシリサイドが成長する。図12は、ニッケルシリサイドが成長する状態を示す図である。半導体ウェハーWの表面が目標温度T2の近傍に加熱されることによって、図中矢印AR12にて示すように、ニッケルシリサイド159が半導体ウェハーWの縦方向(半導体ウェハーWに厚さ方向)に優先的に成長する。すなわち、ニッケルシリサイド159は縦方向に比較して横方向(ゲート電極115へと向かう方向)にはほとんど成長しない。これは、ステップS1の非晶質化プロセスによってニッケル膜158の直下のイオン注入領域150がアモルファスとされ、イオン注入領域150の結晶性が乱れたことに起因するものである。
【0082】
また、半導体ウェハーWの表面温度を目標温度T2の近傍に1ミリ秒以上100ミリ秒以下維持することによって、非晶質と結晶質との境界近傍に生じていた点欠陥155(図10,11参照)を軽減することができる。半導体ウェハーWの表面温度を目標温度T2から±25℃以内の範囲内に維持する時間が1ミリ秒未満であると、点欠陥155が十分に軽減されないおそれがある。また、この維持時間が100ミリ秒を超えると、ニッケルシリサイド159が横方向にも異常成長するおそれがある。すなわち、半導体ウェハーWの表面温度を目標温度T2から±25℃以内の範囲内に維持する時間を1ミリ秒以上100ミリ秒以下とすることによって、ニッケルシリサイド159の横方向への異常成長を防止しつつ、半導体ウェハーWの表面にニッケルシリサイド159を形成することができ、さらにイオン注入工程(ステップS1)で導入された点欠陥155を軽減することができる。その結果、リーク電流の増大を抑制することができるのである。このため、半導体ウェハーWの表面温度を目標温度T2から±25℃以内の範囲内に維持する時間は1ミリ秒以上100ミリ秒以下としている。
【0083】
また、半導体ウェハーWの表面温度を目標温度T2から±25℃以内の範囲内に1ミリ秒以上100ミリ秒以下維持する温度維持工程を設けることにより、目標温度T2に到達した後に直ちに表面温度が降温する場合に比較して、半導体ウェハーWにおける熱伝導等のシミュレーションが容易となる。その結果、加熱処理によって生じる諸現象をより正確に解析することができる。
【0084】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、第1照射によって半導体ウェハーWの表面温度を予備加熱温度T1から目標温度T2にまで昇温し、続く第2照射によって表面温度を目標温度T2の近傍に維持するようにしていたが、この第2照射による維持温度は目標温度T2に限定されるものではない。例えば、半導体ウェハーWの表面温度が目標温度T2に到達した後、若干の間隔を空けて表面温度が目標温度T2から50℃〜200℃低下した時点で第2照射を開始し、その低下した温度(第2の目標温度)から±25℃以内の範囲内に半導体ウェハーWの表面温度を維持するようにしても良い。
【0085】
また、ステップS2にてニッケル膜158を成膜していたが、ニッケル膜158に代えてシリサイド技術に用いられる他の金属、例えばコバルト(Co)、チタン(Ti)、タングステン(W)などの金属膜を非晶質化されたイオン注入領域150に成膜するようにしても良い。
【0086】
イオン注入領域150にニッケル膜158に代えてコバルト膜を形成した場合には、予備加熱温度T1は室温以上500℃以下である。すなわち、ニッケルと比較して比較的高温まで予備加熱しても、シリサイドの異常成長を抑制することができる。そして、コバルト膜の場合における目標温度T2はニッケルと同様の600℃以上1100℃以下である。
【0087】
また、イオン注入領域150にニッケル膜158に代えてチタンの膜を形成した場合には、コバルトと同様に、予備加熱温度T1は室温以上500℃以下である。そして、この場合における目標温度T2はニッケルと同様の600℃以上1100℃以下である。
【0088】
さらに、イオン注入領域150にニッケル膜158に代えてタングステンの膜を形成した場合には、予備加熱温度T1は室温以上700℃以下である。これは、タングステンの場合は、相当高温までシリサイドの異常成長が生じないためである。そして、タングステンの場合における目標温度T2は900℃以上1100℃以下である。
【0089】
また、パルス信号の波形の設定は、入力部33から逐一パルス幅等のパラメータを入力することに限定されるものではなく、例えば、オペレータが入力部33から波形を直接グラフィカルに入力するようにしても良いし、以前に設定されて磁気ディスク等の記憶部に記憶されていた波形を読み出すようにしても良いし、或いは熱処理装置1の外部からダウンロードするようにしても良い。
【0090】
また、上記実施形態においては、パルス信号がオンになるタイミングと同期してトリガー電極91に電圧を印加するようにしていたが、トリガー電圧を印加するタイミングはこれに限定されるものではなく、パルス信号の波形とは無関係に一定間隔で印加するようにしても良い。また、パルス信号の間隔が短く、あるパルスによってフラッシュランプFLを流れた電流の電流値が所定値以上残っている状態で次のパルスによって通電を開始されるような場合であれば、そのままフラッシュランプFLに電流が流れ続けるため、パルス毎にトリガー電圧を印加する必要はない。上記実施形態の図14(a)のように、パルス信号の全てのパルス間隔が所定値より短い場合には、最初のパルスが印加されたときのみにトリガー電圧を印加するようにしても良く、その後はトリガー電圧を印加せずともIGBT96のゲートに図14(a)のパルス信号を出力するだけで図14(b)のような電流波形を形成することができる。つまり、パルス信号がオンになるときに、フラッシュランプFLに電流が流れるタイミングであれば、トリガー電圧の印加タイミングは任意である。
【0091】
また、上記実施形態においては、スイッチング素子としてIGBT96を用いていたが、これに代えてゲートに入力された信号レベルに応じて回路をオンオフできる他のトランジスタを用いるようにしても良い。もっとも、フラッシュランプFLの発光には相当に大きな電力が消費されるため、大電力の取り扱いに適したIGBTやGTO(Gate Turn Off)サイリスタをスイッチング素子として採用するのが好ましい。
【0092】
また、フラッシュランプFLからの多段階の光照射を行うことができれば、図8とは異なる回路構成であっても良い。例えば、コイル定数の異なる複数の電力供給回路を1つのフラッシュランプFLに接続するようにしても良い。さらに、多段階の光照射を行うことができれば、光源としてはフラッシュランプFLに限定されるものではなく、照射時間が1秒以下の光照射が可能なものであれば良く、例えばレーザであっても良い。
【0093】
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【0094】
また、上記実施形態においては、ハロゲンランプHLからのハロゲン光照射によって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしていたが、予備加熱の手法はこれに限定されるものではなく、ホットプレートに載置することによって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしても良い。
【0095】
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。
【符号の説明】
【0096】
1 熱処理装置
2 シャッター機構
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
10 移載機構
21 シャッター板
22 スライド駆動機構
31 パルス発生器
32 波形設定部
33 入力部
61 チャンバー側部
62 凹部
63 上側チャンバー窓
64 下側チャンバー窓
65 熱処理空間
74 サセプター
91 トリガー電極
92 ガラス管
93 コンデンサ
94 コイル
96 IGBT
97 トリガー回路
111 基材
150 イオン注入領域
155 点欠陥
158 ニッケル膜
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンの基板を加熱してシリサイドを成長させる熱処理方法であって、
前記基板にイオンを注入してそのイオン注入領域を非晶質化させる注入工程と、
非晶質化された前記イオン注入領域に金属膜を成膜する成膜工程と、
前記金属膜が成膜された前記基板を所定の予備加熱温度にて加熱する予備加熱工程と、
前記基板に光を照射することによって前記基板の表面温度を前記予備加熱温度から目標温度にまで1ミリ秒以上20ミリ秒以下にて昇温する昇温工程と、
前記昇温工程の後、前記基板に光を照射することによって前記基板の表面温度を前記目標温度から±25℃以内の範囲内に1ミリ秒以上100ミリ秒以下維持する温度維持工程と、
を備えることを特徴とする熱処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理方法において、
前記成膜工程では、ニッケルを成膜し、
前記予備加熱温度は300℃以下であり、
前記目標温度は600℃以上1100℃以下であることを特徴とする熱処理方法。
【請求項3】
請求項1記載の熱処理方法において、
前記成膜工程では、チタンを成膜し、
前記予備加熱温度は500℃以下であり、
前記目標温度は600℃以上1100℃以下であることを特徴とする熱処理方法。
【請求項4】
請求項1記載の熱処理方法において、
前記成膜工程では、コバルトを成膜し、
前記予備加熱温度は500℃以下であり、
前記目標温度は600℃以上1100℃以下であることを特徴とする熱処理方法。
【請求項5】
前記成膜工程では、タングステンを成膜し、
前記予備加熱温度は700℃以下であり、
前記目標温度は900℃以上1100℃以下であることを特徴とする熱処理方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の熱処理方法において、
前記昇温工程および前記温度維持工程では、フラッシュランプから前記基板にフラッシュ光を照射することを特徴とする熱処理方法。
【請求項7】
請求項6記載の熱処理方法において、
前記昇温工程および前記温度維持工程では、コンデンサから前記フラッシュランプへの電荷の供給をスイッチング素子によって断続することにより前記フラッシュランプの発光出力を制御することを特徴とする熱処理方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の熱処理方法において、
前記注入工程では、窒素、アルゴン、シリコン、および、ゲルマニウムからなる群から選択された1のイオンを注入することを特徴とする熱処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−84901(P2013−84901A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153158(P2012−153158)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】