説明

熱制御システムを備えた直接駆動風車

【課題】軸受のための改良された冷却を提供する。
【解決手段】ロータ12及びステータ13を備える発電機11と、ロータ12とステータ13とを回転可能に結合する内側リング6及び外側リング7を備える軸受5とを有する、熱制御システムを備えた直接駆動風車において、熱制御システム15が、冷却システム16及び加熱システム17を有し、冷却システム16が、軸受5の内側リング6と熱を伝え合う少なくとも1つのヒートシンク18と、該ヒートシンク18と熱を伝え合う熱放散器24とを有し、加熱システム17が、軸受5の外側リング7と熱を伝え合う少なくとも1つの加熱エレメント25を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車の軸受の熱制御に関する。特に、本発明は、熱制御システムを備えた直接駆動風車、軸受アセンブリ、及び軸受の温度を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風車の軸受は、約−0.1〜0.2mmの間隙を有する。発電機の寿命及び空隙を制御するために、間隙を制御することが有利である。問題は、軸受の内側リングが加熱されて膨張し、これが軸受の寿命の短縮につながるということである。加熱の理由は、軸構造を合わせた軸受の内側リングが、外側リングの質量/構造と比較して小さな質量/剛性を有するということである。
【0003】
外側ロータ・内側ステータ型発電機の場合、外側リングに結合されたブレードハブ及びロータヨークの大きな質量により、熱の差がより大きくなる。さらに、ハブ及びヨーク構造体は周囲空気により冷却される。
【0004】
これは、内側リングの平均温度が、外側リング及び外側リングの周囲の構造体の平均温度よりも高いことを意味する。
【0005】
風車の軸受は通常、冷却されない。しかしながら、オイルが冷却されかつ軸受アセンブリの周囲に圧送されるような一体化されたオイル潤滑システムによって軸受を冷却することが一般的に知られている。オイルの交換は制限されており、直接駆動風車のための大きな主軸受を冷却するためには十分でない。さらに、一体化された冷却のためのオイル潤滑システムは複雑であり、常に、回避すべき風車におけるオイル漏れの危険性が存在する。
【0006】
グリース潤滑される軸受の場合、冷却システムは知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の課題は、軸受のための改良された冷却を提供することである。
【0008】
前記課題は、請求項1、10及び13のそれぞれの特徴によって解決される。従属請求項は、発明のその他の詳細及び利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様において、発明は、熱制御システムを備えた直接駆動風車に関する。風車は、ロータ及びステータを備えた発電機と、ロータとステータとを回転可能に結合した、内側リング及び外側リングを備えた軸受とを有する。熱制御システムは、冷却システム及び加熱システムを有する。冷却システムは、軸受の内側リングと熱を伝え合う少なくとも1つのヒートシンクと、ヒートシンクと熱を伝え合う熱放散器とを有する。加熱システムは、軸受の外側リングと熱を伝え合う少なくとも1つの加熱エレメントを有する。
【0010】
外側リングに冷却システムを提供しかつ/又は内側リングに加熱システムを提供することもできる。これは、軸受の温度を制御する可能性を拡大する。
【0011】
内側リングを冷却しかつ外側リングを加熱するおかげで、風車の運転中に軸受の内側リングと外側リングとの温度差を制御及び縮小又は排除することができる。これにより、内側リングの制御されない望ましくない熱膨張と、外側リングの望ましくない熱的圧縮が防止される。軸受の信頼性及び寿命が高められる。
【0012】
さらに、今や、発電機の寿命及び空隙を制御及び維持するために、軸受間隙(−0.1〜0.2mm)を制御することができる。
【0013】
冷却システムを、グリース及びオイルにより潤滑される軸受のために使用することもできる。
【0014】
直接駆動風車のヒートシンクは、水のような冷却媒体のための冷却貯蔵部を有してよい。これにより、既にナセルに取り付けられた水冷システムを、軸受の内側リングの十分な冷却を提供するために使用することができる。この解決手段は、軸受のための冷却を有さない既存の風車に容易に取り付けることができる。
【0015】
ヒートシンクは、内側リングの内周面に配置されてよい。内周面は、良好なサイズ及び表面特性により、ヒートシンクのための良好な接触領域を提供する。
【0016】
ヒートシンクは内側リングと一体に形成されてよい。ヒートシンクの少なくとも一部分は、内側リング内に配置されていてよく、これは、内側リングからヒートシンクへの伝熱を高めることができる。ヒートシンクは、一体に形成された部分と、内側リングの表面に配置された部分とを有してよい。
【0017】
冷却システムは、標準的な軸受のための、取付容易な増設ソリューションであることができるか、又は、例えば冷却チャネル又は冷却チャンバが軸受の内側リング及び/又は外側リングに一体化されるように内側又は外側リングの一体化された部分であることができる。
【0018】
ヒートシンクは、導管を介して熱放散器と接続されていてよい。ヒートシンク、好適には冷却貯蔵部は、発電機等を冷却するために既にナセルに取り付けられた風車の水冷システムに接続されてよい。水冷システムの熱放散器を、軸受を冷却するためにも使用することができる。導管には、軸受の冷却を制御するために、冷却貯蔵部への及び冷却貯蔵部からの冷却媒体の流れを制御するための弁を装備することができる。
【0019】
他方では、例えば冷却フィン又はペルチエ素子のように内側リングを局所的に冷却するヒートシンクを使用することができる。
【0020】
加熱エレメントは、電気加熱手段及び/又は高温流体加熱手段を含んでよい。1つ又は2つ以上の加熱手段、例えば電気ワイヤ加熱エレメント又は、例えば液圧ピッチシステムのような液圧流体システムから出発した管、ホース及び/又は通路における高温流体を利用することができる。制御可能な入口弁/出口弁を備えた電気ボイラのような水ヒータを備えた水加熱システムを利用することもできる。
【0021】
加熱エレメントは、外側リング、ロータヨーク及び/又はブレードハブに配置されてよい。加熱エレメントは、外側リングと熱を伝え合う必要がある。したがって、加熱エレメントを、ロータヨーク又はブレードハブのような、外側リングと熱を伝え合う部材に取り付けることができる。加熱エレメントを、前記構造体のうちの1つにおいて一箇所に、又は1つ又は2つ以上の構造体において様々な箇所に配置することができる。
【0022】
加熱エレメントは外側リングと一体に形成されてもよい。
【0023】
熱インターフェース材料は、軸受とヒートシンク及び/又は加熱エレメントとの間に配置されてよい。低い熱抵抗を提供するために、アルミニウムの薄板、温度伝導性ペースト、又はその他の適切な熱インターフェース材料を、リングの表面と、ヒートシンク又は加熱エレメントの表面との間に提供することができる。
【0024】
熱制御システムは、軸受の温度を制御するために冷却システム及び/又は加熱システムと通信する制御システムを含んでよい。制御装置は、例えばヒートシンクと熱放散器との間の導管に配置された弁を制御することによって内側リングの冷却を制御するために、及び/又は外側リングの加熱を制御するために、使用されてよい。
【0025】
熱制御システムは、少なくとも1つの温度測定装置を有してよい。温度測定装置は、内側リング及び軸受の正確で確実な温度測定を提供するために、内側リング及び/又は外側リングにおいて、さらには複数の測定箇所において取り付けられてよい。
【0026】
発電機は、外側ロータ・内側ステータ型発電機であってよい。軸受の内側リングは風車の固定部分に結合されていてよく、軸受の外側リングは風車のロータヨークに結合されていてよい。
【0027】
冷却システムは、実質的に軸受の内側リングの内径と同じ外径を有する複数の冷却貯蔵部を有してよい。貯蔵部の長さは、内側リングを冷却するように2つ以上の貯蔵部が配置されるように周縁部の一部分のみをカバーしていてよく、これは、既存の装置への冷却システムの取付けを容易にする。
【0028】
別の態様において、本発明は、内側リング及び外側リングを有する軸受アセンブリに関し、少なくとも1つの冷却貯蔵部が内側リング及び/又は外側リングに配置されており、冷却貯蔵部が、冷却媒体の交換のための少なくとも1つのポートを有する。少なくとも1つの加熱エレメントは、外側リング及び/又は内側リングに配置されている。軸受に直接に冷却貯蔵部及び加熱エレメントを提供することにより、迅速でかつ綿密な温度調節が可能となる。したがって、軸受の信頼性及び寿命が高められる。
【0029】
複数の冷却貯蔵部が、内側リングの内周に沿って均等に分配されていてよい。この配列は、既に存在する風車への取付けを容易にする。さらに、この配列は、局所的な温度変動を調節することができる。
【0030】
冷却貯蔵部は、内側リングの内周面に沿って延びていてよく、2つの冷却貯蔵部が並列に配置されていてよい。この配列は、より精密な温度修正を可能にする。例えばホットスポットを排除することができる。
【0031】
リング又は軸受の温度を測定するために少なくとも1つの温度測定装置が内側リング及び/又は外側リングに配置されていてよい。軸受の良好な温度調節を提供するために、測定値を制御装置に提供することができる。
【0032】
別の態様において、発明は、軸受の温度を制御するための方法に関する。軸受の温度が測定され、軸受のリングに取り付けられた少なくとも1つの冷却貯蔵部を通る水のような冷却媒体の流れが制御される。軸受のリングと熱を伝え合う加熱エレメントも制御される。この方法を採用することにより、軸受の温度を制御することができ、これにより、軸受の信頼性及び寿命が高められる。
【0033】
少なくとも1つの冷却貯蔵部が軸受の内側リングに取り付けられてよく、軸受の内側リングの少なくとも1つの箇所において温度が測定されてよい。多くの設計において、内側リングは軸受の最も高温の部分であり、この部分を直接に測定及び冷却することは有利である。
【0034】
軸受の内側リングと外側リングとの間の間隙は、発電機の寿命及び空隙を制御及び維持するために、例えば−0.1〜0.2mmの範囲に制御されてよい。
【0035】
軸受の内側リングと外側リングとの間の間隙は、ゼロよりも小さく又はゼロに等しく設定されてよい。例えば軸受又は軸受配列を備えた風車の輸送中、軸受の外側リング及び/又は内側リングの温度は、外側リングと内側リングとの間の間隙が、0.0mm又は0.0mm未満、特に−0.1mm以下、好適には−0.15〜−0.6mmであるように制御されてよい。これにより、軸受は輸送中にはロックされており、軸受を損傷する恐れがある振動が防止される。
【0036】
添付の図面は、実施形態のさらなる理解を提供するために提供されている。その他の実施形態及び意図された利点の多くは、以下の詳細な説明を参照することによりさらによく理解されることにより、容易に認められるであろう。図面の要素は必ずしも互いに対して縮尺どおりになっていない。同一の符号は、対応する類似の部分を示している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る軸受及び熱制御システムを有する風車の中央部分を示す概略図である。
【図2】本発明に係る冷却システムを備えた軸受を示す正面図である。
【図3】本発明に係る冷却システムを備えた軸受を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る加熱システムを有する風車の中央部分を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の詳細な説明において、添付の図面が参照される。添付の図面は、詳細な説明の一部を構成し、発明を実施するための特定の実施形態が例として示されている。これに関して、方向を示す用語、例えば「上」又は「下」等は、説明されている図面の向きに関して用いられる。実施形態の構成部材は、多くの異なる向きで位置決めすることができるので、方向を示す用語は、例示の目的で使用されており、限定的ではない。本発明の範囲から逸脱せずに、他の実施形態が用いられてもよく、構造的変更又は論理的変更が加えられてもよい。したがって、以下の詳細な説明は限定的な意味で捉えるべきではなく、本発明の範囲は、添付の請求項によって規定される。
【0039】
風車1は、地面に固定されかつ風車1の構造全体を支持するタワー2を有する。タワー2の上部にはタワーコネクタ3が取り付けられている。タワーコネクタ3は、風車1の主軸4を支持している。タワーコネクタ3とは反対側の主軸4の一方の端部には、しばしば主軸受と称呼される軸受5が固定されている。軸受5は、主軸4に固定された内側リング6と、外側リング7とを有する。外側リング7はロータヨーク8に結合されている。ロータヨーク8は、風車1のブレードを支持するブレードハブ9と結合されている。分かりやすくするためにブレードは示されていない。ナセル10は、主軸4を包囲し、主軸4に取り付けられている。
【0040】
風車1は直接駆動風車であり、つまり、発電機11は、直接に、主軸4及びロータヨーク8それぞれに接続されている。伝動装置は用いられていない。発電機11は、ロータヨーク8に取り付けられた外側ロータ12と、保持構造14を介して主軸4に固定された内側ステータ13とを有する。
【0041】
外側リング7が取り付けられたロータヨーク8は周囲空気と接している。したがって、外側リング7の冷却は周囲空気によって行われる。しかしながら、内側リング6は風車1の構造の内部に配置されており、冷却は周囲空気によって達成されない。これは、内側リング6と外側リング7との温度差につながる。
【0042】
主軸4を含んだ軸受5の内側リング6は、外側リング7、ロータヨーク8及びブレードハブ9と比較して、より小さな質量を有する。したがって、内側リング6は、外側リング7よりも急速に加熱される傾向がある。
【0043】
さらに、ロータ12からステータアセンブリ13への電気経路を防止するために内側リング6は通常は主軸4から電気的に絶縁されているが、電気的絶縁は内側リング6と主軸4との間の熱伝導率を減じ、内側リング6のさらなる加熱を生ぜしめる。
【0044】
風車1には、冷却システム16及び加熱システム17を備えた熱制御システム15が装備されている。
【0045】
冷却システム16は、軸受5、特に内側リング6から熱を除去する。冷却システム16は、内側リング6の内周面に取り付けられた1つ又は2つ以上のヒートシンク又は冷却貯蔵部18を有する。この場合、複数の冷却貯蔵部18が内側リング6に取り付けられている。冷却貯蔵部18の配列の詳細を図2及び図3を参照して説明する。
【0046】
それぞれの冷却貯蔵部18は、水のような冷却媒体を冷却貯蔵部18に循環させるために導管19と接続されている。冷却媒体は、内側リング6から熱を除去する。導管19は概略的に示されている。導管19の実際の経路は、例えば障害物又は急な曲がり角を回避するために、図示された経路とは異なってもよい。また、冷却媒体のための閉ループが好適である。理解を容易にするために、図1は、冷却貯蔵部18ごとに1つの導管19を示している。
【0047】
弁20は、導管19を通る冷却媒体の流れを制御する。弁20は、1つの弁20が全ての導管19を通る冷却媒体の流れを制御するように、分岐点21の前に配置されていてよい。「前」という用語は、ここでは冷却貯蔵部18に向かう冷却媒体の流れの方向におけるものを意味する。択一的に、それぞれの冷却貯蔵部18を個々に制御するために、それぞれの導管に1つの弁が用いられてもよい。さらに、両者の組合せも可能である。したがって、それぞれの弁は、冷却貯蔵部18のグループを制御してよい。
【0048】
さらに、弁20の前には、冷却システム16の中央装置22が配置されている。中央装置22は、例えば冷却媒体のためのポンプ及び制御ユニット23を有する。中央装置2には熱放散器若しくはラジエータ24が接続されている。熱放散器24は、冷却媒体の冷却に周囲空気を使用するためにナセル10の外側に配置されている。熱放散器24は、最適な熱伝達のためにナセル10の上部に配置されていてよい。弁20は、導管19の別の部分を介して中央装置22と接続されている。中央装置22は、導管19の別の部分を介して熱放散器24と接続されている。
【0049】
冷却媒体は、熱放散器24から、中央装置22を通り、さらに、冷却媒体の流れを制御する弁20を通って循環する。分岐点21において、導管19は分岐し、冷却媒体は冷却貯蔵部18へ流れる。冷却貯蔵部18を流過する間に、冷却媒体は内側リング6から熱を吸収する。冷却媒体は、熱放散器24へ流れて戻り、そこで冷却される。冷却媒体を熱放散器24へ送り戻すための1つ又は複数の導管は、分かりやすくするために示されていない。
【0050】
中央装置22及び熱放散器24のような冷却システム16の一部は、発電機11のようなその他の装置を冷却するために使用されてよい。冷却システム16が風車に後付けされるならば、中央装置22及び熱放散器24のような既存の部分が、軸受5の冷却のために使用されてもよい。
【0051】
加熱システム17は、軸受5の外側リング7と熱を伝え合う1つ又は2つ以上の加熱エレメント25を有する。加熱エレメント25はここでは外側リング7に直接に取り付けられている。1つ又は2つ以上又は全ての加熱エレメント25をロータヨーク8及び/又はブレードハブ9に取り付けることもできる。加熱システム17の細部を後で図4に関して説明する。
【0052】
1つ又は2つ以上の温度測定装置又は温度センサ26を使用することができる。温度センサ26を、温度測定のために内側リング6に配置することができる。測定の結果は、中央装置22、又は弁20を制御する制御ユニット23へ送られる。制御は、温度測定に基づくことができる。より小さな制御ループにおいては、温度センサ26は直接に弁20を制御する。複数の弁20及び冷却貯蔵部18に関連した複数の温度センサ26の組合せは、より精確な温度制御を可能にする。この場合、内側リング6及び/又は外側リング7を複数の制御ゾーンに分割することができる。それぞれのゾーンには、1つ又は2つ以上の冷却貯蔵部18、導管又は導管19の一部、弁20及び/又は1つ又は2つ以上の加熱エレメント25が割り当てられている。
【0053】
分かりやすくするために、温度センサ26と、中央装置22、制御ユニット23及び/又は弁20との間の接続は示されていない。
【0054】
この実施形態は、冷却貯蔵部18と、水のような冷却媒体を使用する導管19を用いる。ある意味で局限のヒートシンク及び放散器を使用することもできる。「局限」との用語は、軸受5又は内側リング6の近く又はそれらに直接に配置されたヒートシンク及び放散器を含む。この概念のための実施形態は、例えば、フィン又はペルチエ素子を備えたヒートシンクである。伝熱は、局所的なヒートシンク及び放散器に沿って周囲空気を流れさせる空気対流システムによって補助されてよい。
【0055】
図2は、内側リング6及び外側リング7を備えた軸受5を示している。それぞれのリング6,7は、軸受5を主軸4及びロータヨーク8のそれぞれに取り付けるためにフランジを有する。
【0056】
内側リング6の内周面6aに沿って、3つの冷却貯蔵部18が配置されている。冷却貯蔵部18の湾曲した形状は、内周面6aに合致するように適合されている。冷却貯蔵部18と内側リング6との高められた熱接触のために、アルミニウム薄板又は熱伝導性ペーストのような熱インターフェース材料を用いることができる。冷却貯蔵部18は、円周に沿って均等に分配することができるか、又は、例えばスペースの制約を補償するために、図示のように不均等に間隔を置いて配置することができる。1つ又は2つ以上のヒートシンク又は冷却貯蔵部を内側リング6の側面に取り付けることも可能である。ヒートシンクが、取付け装置、例えば内側リング6を主軸4に結合するボルトから自由なままであることに注意しなければならない。
【0057】
それぞれの冷却貯蔵部18は、中空の内部空間を有しており、この内部空間を、水又はガスのような冷却媒体が循環することができる。冷却媒体の流入及び流出のために、冷却貯蔵部18には少なくとも1つのポート(図示せず)が設けられている。2つのポートが使用されてよく、ポートは、冷却貯蔵部18全体を通って冷却媒体が流れるように、冷却貯蔵部18の両端部に配置することができる。これは、内側リング6から冷却貯蔵部18を介して冷却媒体への良好な伝熱を保証する。
【0058】
それぞれの冷却貯蔵部18は、それ自体の導管によって熱放散器24又は分岐点に接続されていてよい。これは、並列の構成である。択一的に、直列の構成も可能であり、この場合、1つの冷却貯蔵部18の出口ポートが次の冷却貯蔵部18の入口ポートに接続されている。内面6a全体又はそのほとんどを覆う1つの大きな冷却貯蔵部を用いてもよい。
【0059】
ヒートシンク又は冷却貯蔵部18を内側リング6の構造に一体化することができる。冷却媒体を内側リング6内に流過させるために、内部の穴若しくは管路を用いることができる。したがって、冷却媒体の循環のための1つ又は2つ以上のポートが、内側リング6に直接に配置されている。一体に形成されたヒートシンクと外部のヒートシンクとの組合せも可能である。例えば、内側リング6の面に溝が一体に形成されていてよく、これらの溝は、冷却貯蔵部を形成するために1つ又は2つ以上の外部ヒートシンクと連通している。
【0060】
図3は、内側リング6及び外側リング7を備えた軸受5を示している。内側リング6の内周面6aには、ヒートシンク又は冷却貯蔵部18が配置されている。この場合、6つの冷却貯蔵部18が内側リング6に取り付けられている。内側リング6の円周に沿って、2つの並列の冷却貯蔵部18の3つの対が配置されている。この配列は、内側リング6と、冷却貯蔵部16の内部の冷却媒体との間の良好な伝熱を可能にする。図2の詳細な説明が、図3に示された軸受4にも当てはまる。
【0061】
図4は、図1の熱制御システムをより詳細に示している。特に、加熱システム17が、図示及び説明される。
【0062】
加熱制御ユニット27は、中央装置22又は制御ユニット23と通信する。加熱制御ユニット27は電力ユニット28に接続されており、この電力ユニット28はさらに、軸受5の外側リング7においてハブ9に取り付けられた1つ又は2つ以上の電気加熱エレメント25に接続されている。加熱制御ユニット27は、中央装置22又は制御ユニット23の一部であることもできる。
【0063】
加熱エレメント25は複数のセグメントに分割されていてもよい。ハブ9と外側リング7との間において外側リング7に環状の加熱エレメント25が直接に取り付けられていてもよい。電力ユニット28には、風車、電池及び/又は外部電力ユニットから電力が供給される。電力ユニット28は、加熱制御ユニット27によって制御される。
【0064】
内側リング6及び/又は外側リング7における温度測定装置26が、制御ユニット23に接続されていてもよい。分かりやすくするために配線は示されていない。
【0065】
軸受5の温度を制御する方法によれば、温度は軸受5において測定される。内側リング6はほとんどの場合に軸受5の最も高温の部分となるので、測定を内側リング6において直接に行うことができる。温度測定のための一般的に公知の装置、例えば温度センサ26を用いることができる。
【0066】
測定に基づいて、1つ又は2つ以上の冷却貯蔵部18を通る冷却媒体の流れが制御される。例えば測定された温度が上限値に達すると、冷却媒体の流れを増大するか又は冷却媒体の温度を低下させることができる。これは、より大きな熱の除去につながる。例えば測定された温度が下限値に達すると、冷却媒体の流れを減じるか又は冷却媒体の温度を上昇させることができる。これは、より小さな熱の除去につながる。このスキームは、軸受5又は内側リング6の温度を所定の目標範囲に保つ。目標範囲は、例えばデフォルト設定を用いて風車の型式に適応させることができる。目標範囲を、例えば風速又は周囲温度に応じて実時間で適応させることもできる。目標範囲の代わりに、ある温度の目標点を用いることができる。
【0067】
冷却貯蔵部18に達する導管19に配置された1つ又は2つ以上の弁20によって冷却媒体の流れを制御することができる。弁20は、温度測定装置26によって直接に、又は熱制御システム15の中央装置22又は制御ユニット23によって制御することができる。
【0068】
さらに、軸受5の外側リング7と熱を伝え合う1つ又は2つ以上の加熱エレメント25の温度が制御される。この制御は、中央装置22、制御ユニット23及び/又は加熱制御ユニット27によって達成され、加熱制御ユニット27は、例えば水ヒータ、弁、電力源等の電力ユニット28を操作する。電力ユニット28は、1つ又は2つ以上の加熱エレメント25を直接に操作する。
【0069】
内側リング6の冷却と外側リング7の加熱の組合せは、軸受間隙又は空隙の良好な制御を可能にする。
【0070】
制御ユニット23は、冷却システム16及び加熱システム17を同時に又は一回の操作で作動させることができる。この決定は、例えば、周囲温度、軸受5の全体の温度、内側リングと外側リングとの温度差等に依存することができる。
【0071】
軸受5又は風車1の輸送の場合、軸受5の内側リング6と外側リング7との間の間隙をゼロよりも小さく又はゼロに等しく設定することができる。特に、冷却/加熱システムは、軸受の偽ブリネリングを防止するために輸送中に強くプレテンションをかけられ、これにより小さな振幅の振動を最小限に抑えるように制御されてよい。偽ブリネリングは、ブリネル窪みに似た、転がり部材と軌道との間の接触箇所において振動及び揺動によって生ぜしめられる摩耗による、中空の箇所の発生である。軸受の偽ブリネリングは、輸送中に、軸受が、軸受の内側リングと外側リングとの間の振動が防止されるように十分にプレテンションをかけられていないと生じる恐れがある。輸送中には、冷却媒体がヒータを通って循環させられてよく、この場合、冷却システムは加熱システムとして機能し、軸受の内側リングと外側リングとの間の間隙が0.0mm未満、特に−0.1mm以下、好適には−0.15〜−0.6mmであるような軸受の強いプレテンションを保証する。
【符号の説明】
【0072】
1 風車、 2 タワー、 3 タワーコネクタ、 4 主軸、 5 軸受、 6 内側リング、 7 外側リング、 8 ロータヨーク、 9 ブレードハブ、 10 ナセル、 11 発電機、 12 外側ロータ、 13 内側ステータ、 14 保持構造、 15 熱制御システム、 16 冷却システム、 17 加熱システム、 18 冷却貯蔵部、 19 導管、 20 弁、 21 弁、 22 中央装置、 23 制御ユニット、 24 熱放散器、 25 加熱エレメント、 26 温度センサ、 27 加熱制御ユニット、 28 電力ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ(12)及びステータ(13)を備える発電機(11)と、ロータ(12)とステータ(13)とを回転可能に結合する、内側リング(6)及び外側リング(7)を備える軸受(5)とを有する、熱制御システムを備えた直接駆動風車において、
熱制御システム(15)が、冷却システム(16)及び加熱システム(17)を有し、冷却システム(16)が、軸受(5)の内側リング(6)と熱を伝え合う少なくとも1つのヒートシンク(18)と、該ヒートシンク(18)と熱を伝え合う熱放散器(24)とを有し、加熱システム(17)が、軸受(5)の外側リング(7)と熱を伝え合う少なくとも1つの加熱エレメント(25)を有することを特徴とする、熱制御システムを備えた直接駆動風車。
【請求項2】
ヒートシンク(18)が、媒体を冷却するための冷却貯蔵部を含む、請求項1記載の直接駆動風車。
【請求項3】
ヒートシンク(18)が、内側リング(6)の内周面(6a)に配置されている、請求項1又は2記載の直接駆動風車。
【請求項4】
ヒートシンク(18)が、内側リング(6)と一体に形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の直接駆動風車。
【請求項5】
加熱エレメント(25)が、電気加熱手段及び/又は高温流体加熱手段を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の直接駆動風車。
【請求項6】
加熱エレメント(25)が、外側リング(7)、ロータヨーク(8)及び/又はブレードハブ(9)に配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の直接駆動風車。
【請求項7】
加熱エレメント(25)が、外側リング(7)と一体に形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の直接駆動風車。
【請求項8】
熱制御システム(15)が、軸受(5)の温度を制御するために、冷却システム(16)及び/又は加熱システム(17)と通信する制御装置(22,27)を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の直接駆動風車。
【請求項9】
熱制御システム(15)が、少なくとも1つの温度測定装置(26)を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の直接駆動風車。
【請求項10】
内側リング(6)及び外側リング(7)を有する軸受アセンブリにおいて、少なくとも1つの冷却貯蔵部(18)が、内側リング(6)及び/又は外側リング(7)に配置されており、前記冷却貯蔵部(18)が、冷却媒体の交換のための少なくとも1つのポートを有し、少なくとも1つの加熱エレメント(25)が外側リング(7)及び/又は内側リング(6)に配置されていることを特徴とする、軸受アセンブリ。
【請求項11】
前記冷却貯蔵部(18)が、内側リング(6)の内周面(6a)に沿って延びており、2つの冷却貯蔵部(18)が並列に配置されている、請求項10記載の軸受アセンブリ。
【請求項12】
少なくとも1つの温度測定装置(26)が、内側リング(6)及び/又は外側リング(7)に配置されている、請求項10又は11記載の軸受アセンブリ。
【請求項13】
内側リング(6)及び外側リング(7)を備える軸受(5)の温度を制御する方法において、
軸受(5)の温度を測定するステップと、
軸受(5)のリング(6,7)に取り付けられた少なくとも1つの冷却貯蔵部(18)を通る冷却媒体の流れを制御するステップと、
軸受(5)のリング(7,6)と熱を伝え合う加熱エレメント(25)を制御するステップとを有することを特徴とする、軸受(5)の温度を制御する方法。
【請求項14】
軸受(5)の内側リング(6)と外側リング(7)との間の間隙を制御する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
軸受(5)の内側リング(6)と外側リング(7)との間の間隙が、ゼロよりも小さくか又はゼロと等しくなるように設定される、請求項13又は14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−233576(P2012−233576A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−101612(P2012−101612)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】