説明

熱収縮性ポリエステル系フィルム

【課題】収縮仕上がり性、ボトルとの密着性、ミシン目開封性の全てが優れるラベルに適した熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供する。
【解決手段】エチレンテレフタレートユニット、ダイマー酸とエチレングリコールからなるエステルユニットおよびその他のエステルユニットとからなるポリエステル樹脂成分Aと、エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットを含み、且つ、ポリエステル樹脂成分Aとはポリエステルの組成が異なるポリエステル樹脂成分Bとを、それぞれ別々の押出機A1およびB1に投入して溶融し、溶融状態のまま樹脂成分Aおよび樹脂成分Bをスタティックミキサに投入した後に、T−ダイから押出し、冷却して形成した未延伸シートを少なくとも一軸に延伸して得られる熱収縮性ポリエステル系フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルムに関し、特にペットボトル(ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトル)、ガラスボトル等のボトルのラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性フィルム、特にボトルの胴部のラベル用の熱収縮性フィルムとしては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等からなるフィルムが主として用いられている。しかし、ポリ塩化ビニルについては、近年、廃棄した塩化ビニル製品の焼却時の塩素系ガスの発生が問題となり、一方、ポリスチレンについては、ポリスチレンフィルム上への印刷が困難である等の問題がある。さらに、ペットボトル(PETボトル)の回収リサイクルにあたっては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の樹脂のラベルは、廃棄時に分別する必要がある。このため、これらの問題の無いポリエステル系の熱収縮性フィルムが注目を集めている。
【0003】
飲料用ボトルの場合、生産性向上のために、ラベル装着及び収縮を飲料充填ライン中で行う場合が増えている。充填ラインは高速であるため、ラベルの装着及び収縮が高速で行われる必要があり、収縮時間が短時間になる方向にある。そのような状況下では、ポリエステル系熱収縮性フィルムをラベルに用いた場合には、ボトルの肩部で、ラベルに収縮後のシワ、飛び上りおよび色ムラなどが発生し、収縮仕上がり性に問題が生じている。また、ボトルとの密着性が悪く、ラベルがボトルをすり抜けたりする等の問題も生じている。
【0004】
一方、分別廃棄の利便のために、ラベルを引き剥がしやすいようラベルにミシン目を設けたり、ボトルのキャップ部までフィルムでラベルする場合には、ラベルに開封用ミシン目を設けたりすることが一般的である。ポリエステルフィルムラベルには、ミシン目の開封性が悪いという問題が生じており、特に、ボトルが飲料用である場合には、冷蔵されるのが通常であり、低温においては、ミシン目の開封不良がより高い頻度で起こっている。
【0005】
ラベルをボトルに装着する際の、収縮仕上がり性および密着性の問題については、フィルムの収縮特性を制御することにより改善することが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかし、特定の収縮特性を有するフィルムによって、収縮仕上がり性および密着性の問題についてはいくらか改善されたものの、ミシン目開封性は十分なものではなかった。
【0006】
一方、ミシン目開封性を改善したフィルムとしては、製造時に延伸時の温度条件を工夫して得たフィルムがある(例えば特許文献4参照)。しかし、ミシン目開封性の改善度は見られているものの、それでもまだ十分ではなく、また、従来のポリエステル系収縮フィルムの特徴ともいえる速すぎる収縮速度および高すぎる最大収縮率が原因となって、500mLPETボトルへの高速ラベル装着の際、特にボトルの肩部において収縮ムラ、シワまたは色ムラが生じ、収縮仕上がり性にも問題があった。
【特許文献1】特開平6−320621号公報
【特許文献2】特開平8−27285号公報
【特許文献3】特開平8−25477号公報
【特許文献4】特開平11−207818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、収縮仕上がり性、ボトルとの密着性、ミシン目開封性の全てが優れる熱収縮性ポリエステル系フィルムラベルが得られていないのが現状であった。そこで、本発明は、収縮仕上がり性、ボトルとの密着性、ミシン目開封性の全てが優れるラベルに適した熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成し得た本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、エチレンテレフタレートユニット、ダイマー酸とエチレングリコールからなるエステルユニットおよびその他のエステルユニットとからなるポリエステル樹脂成分Aと、エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットを主として含み、且つ、ポリエステル樹脂成分Aとはポリエステルの組成が異なるポリエステル樹脂成分Bとを、それぞれ別々の押出機A1およびB1に投入して溶融し、溶融状態のまま樹脂成分Aおよび樹脂成分Bをスタティックミキサに投入した後に、T−ダイから押出し、冷却して形成した未延伸シートを少なくとも一軸に延伸することにより得られるところに要旨を有するものである。
【0009】
また、本発明のもう一つの態様として、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、
エチレンテレフタレートユニット、ダイマー酸とエチレングリコールから形成されるエステルユニットおよびその他のエステルユニットからなるポリエステル樹脂成分Aを含有するX層と、エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットを主として含み、且つ、ポリエステル樹脂成分Aとは組成が異なるポリエステル樹脂成分Bとを含有するY層とが、合わせて500層以上交互に積層された構造を有するところに要旨を有する。
【0010】
上記の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、フィルム中に、フィルム全体の全ポリエステルの構成ユニットを100モル%として、エチレンテレフタレートユニットが40〜93モル%、ダイマー酸とエチレングリコールとからなるエステルユニットが1〜9モル%、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットが6〜31モル%、その他のエステルユニットが0〜20モル%含まれていることが好ましい。なお、樹脂成分Aにおける他のエステルユニットが1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットである場合には、その他のエステルユニットは0モル%になり得る。
【0011】
また、上記の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、85℃±0.5℃の温水中に10秒間浸漬後の主収縮方向の熱収縮率が35%以上80%以下であり、かつ、70℃±0.5℃温水中に10秒間浸漬後の主収縮方向の熱収縮率が10%以上50%以下であることが好ましい。さらに、上記の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、前記樹脂成分Aが、DSCで測定されるガラス転移温度が−50℃以上60℃未満であって結晶融解熱量が5(J/g)以上100(J/g)以下の結晶性ポリエステルであり、前記樹脂成分Bが、DSCで測定されるガラス転移温度が60℃以上150℃以下であって結晶融解熱量が0(J/g)以上3(J/g)以下の実質的に非晶質のポリエステルであることが好ましい。さらにまた、上記の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、フィルム中に、アルカリ土類金属化合物をアルカリ土類金属原子M2を基準として20ppm(質量基準、以下同じ)以上400ppm以下、リン化合物をリン原子Pを基準にして5ppm以上500ppm以下含有していることが好ましい。
【0012】
上記の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いたボトル用ラベルも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、収縮仕上がり性、ボトルとの密着性、ミシン目開封性の全てが優れるラベルに適した熱収縮性ポリエステル系フィルムが提供される。すなわち本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いたラベルは、ボトルへのラベル装着及び収縮を飲料充填ライン中で行う場合、すなわち高速で行われる場合であっても、ラベルの収縮ムラ、シワまたは色ムラの発生が極めて抑制されており、また、低温においてさえ、ラベルに形成されたミシン目の開封性が良好である。従って、PETボトル、ガラスボトル等のボトル用途に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、エチレンテレフタレートユニット、ダイマー酸とエチレングリコールからなるエステルユニットおよびその他のエステルユニットとからなるポリエステル樹脂成分Aと、エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットを主として含み、且つ、ポリエステル樹脂成分Aとはポリエステルの組成が異なるポリエステル樹脂成分Bとを、それぞれ別々の押出機A1およびB1に投入して溶融し、溶融状態のまま樹脂成分Aおよび樹脂成分Bをスタティックミキサに投入した後に、T−ダイから押出し、冷却して形成した未延伸シートを少なくとも一軸に延伸することにより得られる熱収縮性ポリエステル系フィルムである。
【0015】
本発明において、エチレンテレフタレートユニットとは、下記式(1)で表わされるユニットのことをいい、例えば、エチレングリコールとテレフタル酸との反応により得られるユニットである。
【0016】
【化1】

【0017】
本発明において、ダイマー酸とは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の炭素数18の不飽和脂肪酸が二量化して生成する化合物のことをいう。ダイマー酸の例としては、下記式(2)〜(4)で表わされる化合物が挙げられる。これらのうち、好ましくは、式(2)で表わされる化合物である。使用するダイマー酸は、構造の異なる2種以上の化合物の混合物であってもよい。例えば、式(2)で表わされる化合物と式(3)で表わされる化合物の混合物であってよい。
【0018】
【化2】

【0019】
【化3】

【0020】
【化4】

【0021】
本発明において、ダイマー酸とエチレングリコールとからなるエステルユニット(ダイマー酸/エチレングリコールユニット)は、例えば、エチレングリコールとダイマー酸との反応により形成することができる。ダイマー酸/エチレングリコールユニットは、エチレングリコールとダイマー酸との反応により形成されるものである限り、その構造については特に制限はなく、2種以上の構造のものであってもよい。ダイマー酸/エチレングリコールユニットの例としては、下記式(5)〜(7)で表わされるユニットが挙げられる。これらのうち、得られるフィルムのガラス転移温度を低くし、熱収縮特性(特に70℃での熱収縮特性)を良好にすることから、式(5)で表わされるユニットが好ましい。
【0022】
【化5】

【0023】
【化6】

【0024】
【化7】

【0025】
樹脂成分Aにおけるその他のエステルユニットとは、エチレンテレフタレートユニットとダイマー酸/エチレングリコールユニット以外のエステルユニットである。具体的には、例えば、ブチレンテレフタレートユニット、トリメチレンテレフタレートユニット、ペンタメチレンテレフタレートユニット、ヘキサメチレンテレフタレートユニット、エチレン−2,6−ナフタレートユニット等の結晶性ユニットが挙げられる。また、上記以外のユニットであって、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、ダイマー酸等のジカルボン酸のいずれかと、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール;芳香族ジオール等のグリコールのいずれかとからなるユニットが挙げられる。その他のエステルユニットは1種のみならず、2種以上であっても良い。その他のエステルユニットは、トリメチレンテレフタレートユニットのような結晶性ユニット、およびネオペンチルテレフタレートユニットのような非晶性ユニットのいずれでも良い。
【0026】
なお、本発明においてエステルユニットとは、酸成分とグリコール成分が縮合してできるポリエステルの繰り返し構成単位に相当し、酸成分由来の単位とグリコール成分由来の単位を1つずつ有するユニットのことをいう。
【0027】
樹脂成分Aにおいては、ポリエチレンテレフタレート、ダイマー酸/エチレングリコールからなるホモポリエステル、その他のエステルユニットの(コ)ポリエステルの混合物であってもよいし、エチレンテレフタレートユニット、ダイマー酸/エチレングリコールユニットとその他のエステルユニットを有する共重合ポリエステルであってもよく、ホモポリエステルと共重合ポリエステルとの混合物であってもよい。
【0028】
例えば、上記その他のエステルユニットを有するポリエステルが、エチレンテレフタレートユニットまたはダイマー酸/エチレングリコールユニットを含むポリエステルとは別個のポリエステルとして含まれる場合には、その例としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリペンタメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等の結晶性ポリエステルが挙げられる。また、これらや、ポリエチレンテレフタレートをベースにして、下記のジカルボン酸成分かつ/またはグリコール成分を、酸成分かつ/またはグリコール成分100モル%中5モル%以上、好ましくは6モル%以上40モル%以下共重合したものであってもよい。ジカルボン酸成分の例としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。グリコール成分の例としては、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、芳香族ジオール等が挙げられる。
【0029】
樹脂成分Aにおいては、エチレンテレフタレートユニットとダイマー酸/エチレングリコールユニットが合計で60モル%以上含むことが好ましい。したがって、その他のエステルユニットは40モル%以下とすることが好ましい。より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。なお、その他のエステルユニットは10モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましい。
【0030】
エチレンテレフタレートユニットとダイマー酸/エチレングリコールユニットの比率は、両者の合計を100モル%とした時に、エチレンテレフタレートユニットが85〜95モル%、ダイマー酸/エチレングリコールユニットが5〜15モル%となるように調整することが好ましい。
【0031】
上記範囲に各ユニット量を調整した樹脂成分Aによれば、得られるフィルムのミシン目開封性が良好となる上に、60〜70℃の温度域での収縮特性が優れるため(70℃±0.5℃温水中に10秒間浸漬後の主収縮方向の熱収縮率が20%以上50%以下)、ラベル化してボトルに装着する際、スチームトンネル内での収縮ムラがほとんど起こらない。
【0032】
当該樹脂成分Aは、DSCで測定されるガラス転移温度が−50℃以上60℃未満であって、結晶融解熱量が5(J/g)以上100(J/g)以下の結晶性ポリエステル成分であることが好ましい。
【0033】
本発明において、樹脂成分Bに含まれる1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットとは、下記式(8)で表わされるユニットのことをいい、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸との反応により得られるユニットである。
【0034】
【化8】

【0035】
樹脂成分Bが、エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットとを含むとは、樹脂成分Bが、エチレンテレフタレートユニットおよび1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットを有する共重合ポリエステルを含むことをいう。あるいは、樹脂成分Bが、ポリエチレンテレフタレートを含むか、エチレンテレフタレートユニットを有する共重合ポリエステルを含み、かつ、繰り返し単位が1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットのみであるポリエステルを含むか、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットを有する共重合ポリエステルを含むことをいう。これらのうち、樹脂成分Bは、エチレンテレフタレートユニットおよび1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットを有する共重合体ポリエステルを含むことが好ましい。
【0036】
樹脂成分Bが、エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットとを主として含むとは、樹脂成分Bの全ポリエステル構成ユニットを100モル%とした場合に、エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットとを60モル%以上含むことをいう。樹脂成分Bは、エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットとを70モル%以上含むことが好ましく、80モル%以上含むことがより好ましい。
【0037】
エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットとを60モル%以上含む樹脂成分によれば、得られるフィルムの、85℃±0.5℃温水中に10秒間浸漬後の主収縮方向の熱収縮率が50%以上となりやすく、ラベル化した際、ボトルへの密着性が向上する。
【0038】
樹脂成分Bは、エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニット以外の成分を、全ポリエステル構成ユニット100モル%中40モル%以下で含んでいても良い。エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニット以外の成分が、エチレンテレフタレートユニットおよび/または1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットを含む樹脂とは別途の樹脂として含まれる場合には、その例としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリペンタメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等の結晶性ポリエステルであってもよい。例えば、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)にイソフタル酸を共重合したものであってもよい。また、これらやポリエチレンテレフタレートをベースにして、下記のジカルボン酸成分かつ/またはグリコール成分を、共重合したものであってもよい。例えば、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)にイソフタル酸を共重合したものであってもよい。ジカルボン酸成分の例としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。グリコール成分の例としては、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール以外の脂環式ジオール、芳香族ジオール等が挙げられる。
【0039】
樹脂成分Bがエチレンテレフタレートユニットおよび1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットを有する共重合ポリエステルを含む場合には、当該共重合ポリエステルは、エチレンテレフタレートユニットおよび1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニット以外のユニットを40モル%以下(全ポリエステル構成ユニット100モル%中)の範囲で含んでいてもよく、当該ユニットとしては、例えば、ブチレンテレフタレートユニット、トリメチレンテレフタレートユニット、ペンタメチレンテレフタレートユニット、ヘキサメチレンテレフタレートユニット、エチレン−2,6−ナフタレートユニット等が挙げられる。また、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、ダイマー酸等のジカルボン酸のいずれかと、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、芳香族ジオール等のグリコールのいずれかとからなるユニットが挙げられる。
【0040】
樹脂成分B中に含まれるエチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットの割合としては、エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットの合計を100モル%とした場合に、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットが7〜35モル%であることが好ましい。
【0041】
当該樹脂成分Bは、DSCで測定されるガラス転移温度が60℃以上150℃以下であって結晶融解熱量が0(J/g)以上3(J/g)以下の実質的に非晶質のポリエステル成分であることが好ましい。
【0042】
樹脂成分Bとして好ましくは、酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールからなるポリエステルをベースとして、グリコール成分100モル%中、7モル%以上35モル%以下の1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステルである。さらに、全ポリエステル構成ユニット100モル%中、エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニット以外のユニット(例えばネオペンチルグリコールとテレフタル酸からなるポリエステルユニット)を0〜40モル%有するものであってもよい。
【0043】
積層フィルムとしての好適な性質を発現させるためには、樹脂成分Aおよび樹脂成分Bはポリエステルとしての組成が異なっている必要がある。樹脂成分Aと樹脂成分Bとの組成を異ならせるためには、樹脂成分Aと樹脂成分Bとで、それぞれの成分のその他のエステルユニットの種類を異なるユニットとするか、樹脂成分Bには、ダイマー酸に由来するユニットを含ませない等、種々の方法を採用することができる。
【0044】
樹脂成分Aおよび樹脂成分Bとは、それらのガラス転移温度の差が3℃以上100℃以下であり、結晶融解熱量の差が5(J/g)以上100(J/g)以下であることが好ましい。
【0045】
樹脂成分Aおよび樹脂成分Bの割合としては、樹脂成分A/樹脂成分B(質量比)として、好ましくは10/90〜50/50、より好ましくは15/85〜45/55、さらに好ましくは20/80〜40/60である。この範囲を外れると、ラベルの装着性および収縮仕上がり性の向上効果が小さい。
【0046】
本発明のフィルムは、上記樹脂成分Aと、樹脂成分Bとを、それぞれ別々の押出機A1およびB1に投入して溶融し、溶融状態のまま樹脂成分Aおよび樹脂成分Bをスタティックミキサに投入した後に、T−ダイから押出し、冷却して形成した未延伸シートを少なくとも一軸に延伸して製造して得られる、フィルムの組成および構造を有することに特徴がある。以下、「樹脂成分Aと、樹脂成分Bとを、それぞれ別々の押出機A1およびB1に投入して溶融し、溶融状態のまま樹脂成分Aおよび樹脂成分Bをスタティックミキサに投入した後に、T−ダイから押出し、冷却して形成した未延伸シートを少なくとも一軸に延伸する」ことの具体的説明を含め、本発明のフィルムの製造方法について説明する。
【0047】
本発明に用いるポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥する。
【0048】
樹脂成分A、樹脂成分Bが、2種以上のポリエステル成分を含む場合には、それぞれそのブレンドは、チップブレンド法でブレンドしてもよく、マスターバッチ法でブレンドしてもよい。なお、2種以上のポリエステル成分をブレンドしても、溶融押出時の熱履歴によってエステル交換し、共重合化する傾向が強いことが知られている。
【0049】
樹脂成分Aおよび樹脂成分Bを、それぞれ異なる押出機A1およびB1に投入し、溶融する。溶融温度は、各樹脂成分にとって劣化や変質を起こさないものであれば構わない。ひとつの指標として、結晶性を示す樹脂成分の場合は、融点+(5℃〜30℃)、非晶性の樹脂成分の場合は軟化温度+(20℃〜150℃)である。
【0050】
溶融した樹脂成分Aおよび樹脂成分Bは、溶融状態のまま、スタティックミキサに導かれ、樹脂成分Aを含有するX層と樹脂成分Bを含有するY層の積層体が形成される。溶融した樹脂成分Aおよび樹脂成分Bのスタティックミキサへの投入を容易にするために、スタティックミキサの前にフィードブロックを設置し、フィードブロックで一度樹脂成分Aおよび樹脂成分Bを合流させてから、スタティックミキサに導いてもよい。
【0051】
本発明におけるスタティックミキサとは、配管内に、横長の長方形の板をその短辺同士のなす角(捩り角)が45度〜270度となるように捩じ曲げた形状のエレメントを、隣接するエレメントの短辺同士が交差するように交互に配列させた配管内混合装置のことである。1つのエレメントを溶融樹脂が通過する時、樹脂が2層に分割されると共に、各樹脂層に、エレメントの旋回方向とは逆方向への捩れが生じる。さらに、次のエレメントを通過すると、同様に樹脂の分割と捩れが生じ、4層に分割される。従って、樹脂成分Aと樹脂成分Bとを1層ずつ積層した状態で、スタティックミキサに導入すると、理論上は、最初のエレメントの短辺が積層面に水平であれば、n個のエレメントを通過すると2n層に、最初のエレメントの短辺が積層面に垂直であれば2n+1層になるが、実際には、流路径と長さ、エレメントの捩り角、捩り勾配、樹脂の吐出量、各樹脂の粘度や表面張力などの溶融特性の影響で変化することもある。
【0052】
スタティックミキサのエレメントのL/D(配管長/配管の内径)比は、1.0〜3.0の範囲が好ましく、1.4〜2.0の範囲がより好ましい。L/D比が1.0より小さいと樹脂の分割効率が悪くなり、3.0を超えるとミキサ内を通過する樹脂の滞留時間が長くなるため実用的ではない。
【0053】
スタティックミキサのエレメントの捩り角は、45度以上とする。捩り角が45度未満では樹脂層のねじりが不充分となるからである。捩り角は、90度以上がより好ましく、135度以上がさらに好ましい。捩り角の上限は315度がよい。315度を超えると過度のねじりによって、均一な積層構造が得られない。捩り角は270度以下が好ましく、215度以下がより好ましい。なお、均一な積層構造が得られないというのは、積層した各層が波打った状態となるなど、積層構造が乱れてしまうことをいう。
【0054】
また、スタティックミキサの配管側面を樹脂の進行方向に切断して展開した場合の、配管内壁とエレメントとのつなぎ目をたどる直線と、樹脂の進行方向とがなす角度、つまりエレメントの捩り勾配は、27度以上が好ましい。この捩り勾配が27度未満では樹脂層の捩り効果が少なく、樹脂に充分なねじりを与えるためにはL/D比を大きくしなければならないため、実用的ではない。捩り勾配は38度以上がより好ましく、42度以上がさらに好ましい。一方、捩り勾配が65度を超える場合は、樹脂の乱流が激しくなるため、積層構造が乱れるため好ましくない。捩り勾配は54度以下がより好ましく、50度以下がさらに好ましい。
【0055】
スタティックミキサのエレメントの好ましい形状は、樹脂の吐出量や溶融特性に応じて適宜選択することができ、また、スタティックミキサを通過する樹脂の溶融特性の変化に対応して、形状の異なる複数のエレメントを組み合わせて用いることもできる。最も好ましいエレメントは、L/D=1.5、捩り角180度、捩り勾配46度のものである。
【0056】
スタティックミキサのエレメントの配列は、エレメントの捩れ方向が、右旋回、左旋回、右旋回となるように、交互に方向を変えることが好ましい。均一な積層構造が得られるためである。また、隣接するエレメントを直角に交わるように配列することも、均一な積層構造が得られるためには好ましい。
【0057】
スタティックミキサのエレメント数は、4以上が好ましく、より好ましくは6以上であり、さらに好ましくは8以上である。本発明のフィルムは積層構造を有するものであり、その層数としては後述のように500層以上が特に好ましいものであり、当該エレメント数を8以上とすれば、500層以上の積層構造が確実に得られやすい。一方、当該エレメント数が大きくなりすぎると、積層構造の乱れが生じやすくなるため、当該エレメント数を24以下とすることが好ましく、18以下とすることがより好ましく、14以下とすることがさらに好ましい。
【0058】
上記で説明したスタティックミキサの構造は1つの典型であり、本発明の目的を逸脱しない範囲で形状や配置を変更したり、また、スタティックミキサの前後や、そのエレメント間に別の装置を配置することも、もちろん可能である。例えば、樹脂配管よりも小径のスタティックミキサを配管内に2列以上並列させてもよい。樹脂成分Aと樹脂成分Bとをスタティックミキサを通過させて積層した積層樹脂に、さらに、別の樹脂を合流させて積層させることもできる。
【0059】
また、フィードブロックを複数用いて、3層以上に積層した積層樹脂を、スタティックミキサに導いてさらに多層化することもできる。この場合には、フィードブロックでの積層数の分だけ、スタティックミキサのエレメント数を少なくすることができるが、スタティックミキサでの積層によって生じるフィルムの特異な効果(ミシン目開封性の向上等)が小さくなるため、フィードブロックによる積層数は100層以内とすることが好ましい。
【0060】
スタティックミキサの温度としては、樹脂成分が結晶性を示す場合には、融点+(5℃〜30℃)、非晶性を示す場合には、軟化温度+(20℃〜150℃)に設定するのがよく、最も好ましくは、溶融温度として採用した温度と同じ温度に設定する。
【0061】
この積層体をT−ダイより押出し、表面温度が10〜40℃の冷却ロールに密着させることにより、積層体の未延伸シートを得る。
【0062】
次に、得られた未延伸シートを、必要により50〜120℃、好ましくは60〜100℃で予熱した後、横方向(押し出し方向に対して直交する方向)にテンター等で3.0倍以上、好ましくは3.5倍以上15倍以下に延伸する。延伸温度は、60℃以上120℃以下、好ましくは70℃以上100℃以下である。横延伸の前後に縦延伸を行う必要は必ずしもないが、必要に応じて、縦延伸を行ってもよい。
【0063】
さらに、必要により、70〜100℃の温度で熱処理して、熱収縮性ポリエステル系フィルムを得る。当該フィルムは、常法に従い巻き取ることによって、フィルムロールとしてよい。
【0064】
なお、延伸の方法は、テンターでの横1軸延伸のみでなく、付加的に縦方向に延伸し2軸延伸することも可能である。このような2軸延伸は、逐次2軸延伸法、同時2軸延伸法のいずれの方法によってもよく、さらに必要に応じて、縦方向または横方向に再延伸を行ってもよい。
【0065】
また、フィルムを延伸するに際してフィルムの表面温度の変動幅を小さくする(均温化する)と、フィルム全長に亘って同一温度で延伸や熱処理することができ、厚み分布値や熱収縮挙動を均一化することができる。
【0066】
前記表面温度の変動幅は、任意のポイントにおいてフィルムの表面温度を測定したときの各ポイントの温度が、例えば、フィルムの平均温度±1℃以内程度であることが好ましく、平均温度±0.6℃以内であることがさらに好ましい。
【0067】
フィルムを延伸する際には、延伸前の予備加熱工程、延伸工程、延伸後の熱処理工程、緩和処理、再延伸処理工程などの種々の工程を経てフィルムを延伸するため、これらの工程の一部又は全部で、フィルムの表面温度の変動幅を小さくできる(均質化する)設備を用いるのが好ましい。特に、フィルム全長に亘って厚み分布値を均一化するためには、予備加熱工程及び延伸工程において(さらに、必要に応じて延伸後の熱処理工程において)、フィルムの表面温度の変動幅を小さくできる設備を用いるのが好ましい。なお熱収縮率挙動を均一化する場合には、延伸工程において、フィルムの表面温度の変動幅を小さくできる設備を用いるのが好ましい。
【0068】
前記フィルム表面温度の変動を小さくできる設備としては、例えば、フィルムを加熱するための熱風の供給速度を制御するための風速制御手段(インバーターなど)を備えた設備、空気を安定的に加熱して前記熱風を調製するための加熱手段[500kPa以下(5kgf/cm2以下)の低圧蒸気を熱源とする加熱手段など]を備えた設備などが挙げられる。
【0069】
なお、本発明の目的を達成するには、主収縮方向としては横方向が実用的であるので、以上では、主収縮方向が横方向である場合のフィルムの製造方法の例を示したが、主収縮方向を縦方向とする場合も、上記方法における延伸方向を90度変えるほかは、上記方法の操作に準じてフィルムを製造することができる。
【0070】
上記のようにして得られる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、エチレンテレフタレートユニット、ダイマー酸とエチレングリコールから形成されるエステルユニットおよびその他のエステルユニットからなるポリエステル樹脂成分Aを含有するX層と、エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットを主として含み、且つ、ポリエステル樹脂成分Aとは組成が異なるポリエステル樹脂成分Bとを含有するY層とが、合わせて500層以上交互に積層された構造を有する。
【0071】
フィルムがこのような積層構造をとった場合には、樹脂成分Aと樹脂成分Bがそれぞれ独立してフィルム中に存在することになる。従って、各層を構成する樹脂成分が個々の性質を有することになり、そのことが、フィルムをラベル化してボトル装着した際の収縮仕上がり性、ボトルとの密着性、ミシン目開封性の向上に寄与しているものと考えられる。
【0072】
当該積層構造において、最外層は、X層またはY層のいずれであってもよい。
【0073】
積層されるX層およびY層の数としては、X層とY層との合計で500層以上であることが好ましく、より好ましくは1000〜10万層であり、最も好ましくは2000〜2万層である。X層とY層との合計が500層以上の場合には、ミシン目開封性が特に優れたものとなる。
【0074】
フィルムの積層数を測定するには、基本的には、X層とY層を染め分けた後、フィルム断面をTEM観察することにより行う。ただし、層数が増えてくると、TEM画像の倍率を高めても、目視で数えることが困難となる。よって、その場合は、後に詳述するように、画像解析ソフトを用いて画像の濃淡度合いを明瞭化し、次いで数値化(2値化)して、層数を求める方法を採用した。
【0075】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの組成としては、フィルム中に、フィルム全体の全ポリエステルの構成ユニットを100モル%として、エチレンテレフタレートユニットが40〜93モル%、ダイマー酸とエチレングリコールとからなるエステルユニットが1〜9モル%、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットが6〜31モル%、その他のエステルユニットが0〜20モル%であることが好ましい。なお、樹脂成分Aがその他のエステルユニットとして1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットを有するポリエステルである場合には、フィルム中に、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニット以外の「その他のエステルユニット」は含まれないため、「その他のエステルユニット」は0モル%となる。上記のユニットの含有量の解析は、例えば、H−NMRを用いて行うことができる。
【0076】
上記のユニットの含有量の解析は、例えば、1H−NMRを用いて行うことができる。
【0077】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、85℃±0.5℃の温水に無荷重状態で10秒間浸漬して処理した際の温水熱収縮率が、主収縮方向において30%以上90%以下であることが好ましく、35%以上80%以下であることがより好ましい。該熱収縮率が30%未満では、熱収縮力の不足により、ラベルをボトルにうまく装着できない場合がでてくるおそれがある。一方、熱収縮率が90%を超えると、ボトルに被せて加熱収縮させる際に、ラベルの収縮力が大きすぎることによるラベルの飛び上がり現象が起こるおそれがある。
【0078】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、70℃±0.5℃の温水に無荷重状態で10秒間浸漬して処理した際の温水熱収縮率が、主収縮方向において10%以上50%以下であることが好ましい。該熱収縮率が10%未満の場合は、収縮性が不十分であり、収縮工程をより高温で行う必要がでてくる。該熱収縮率が50%を超えると、ボトルに被せて加熱収縮させる際に、ラベルの収縮力が大きすぎることによるラベルの飛び上がり現象が起こるおそれがある。
【0079】
なお、ここで温水熱収縮率は、浸漬処理前後でフィルムの長さを測定し、((収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ)×100(%)の式により求められる値である。また、主収縮方向とは、フィルムの縦方向(長手方向)および横方向(幅方向)のうち、温水熱収縮率の高い方向のことをいう。
【0080】
また、上記熱収縮率を測定する際には、当該フィルムに余計な熱履歴を与えないようにするために、所定温度の温水に所定時間浸漬後は、25℃±0.5℃の水にフィルムを浸漬してフィルムを冷却するようにすべきである。
【0081】
本発明で用いる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、温度275℃における溶融比抵抗値が0.70×108Ω・cm以下であることが好ましい。このようなフィルムを用いると、以下に詳細に説明するように、フィルム厚みの均一性を高めることができ、フィルムへの印刷性や、フィルムを容器に装着可能な形態に加工する際の加工性(安定加工性)を高めることができる。
【0082】
本発明においては、押出機から溶融押し出ししたフィルムを導電性冷却ロール(キャスティングロールなど)で冷却するに際して、前記押出機とキャスティングロールの間に電極を配設し、電極とキャスティングロールとの間に電圧を印加し(すなわち、前記電極からフィルムに電気を与え)、静電気的にフィルムをロールに密着させるのがよく、溶融比抵抗値を小さくすると、フィルムとロールとの密着性(静電密着性)を高めることができる。ロールへの静電密着性が低いと、キャスティングした未延伸フィルム原反の厚みが不均一化し、この未延伸フィルムを延伸した延伸フィルムにおいては厚みの不均一性がより拡大されてしまうのに対して、静電密着性が十分に高い場合には、延伸フィルムにおいても厚みを均一化できる。
【0083】
フィルム厚みの均一性を高めると、複数の色を重ね合わせる多色印刷をフィルムに施す際に、色ズレを防止でき印刷性を高めることができる。
【0084】
加えてフィルム厚みの均一性を高めると、溶剤接着によってフィルムをチューブ等に加工する際にも、接着部分の重ね合わせが容易である。しかもフィルムに多色印刷する際には、フィルムにシワが入り易くなるのを防止でき、また走行中にフィルムが蛇行するのを防止でき、加工性(安定加工性)を高めることができる。
【0085】
さらにフィルム厚みの均一性を高めると、フィルムをロール状に巻いた状態で部分的な巻き硬度の差が発生するのを防止でき、フィルムに弛みや皺が発生し、フィルムの外観を大きく損なうのを防止できる。
【0086】
なお溶融比抵抗値を下げて静電密着性を高めると、前記フィルム厚みの均一性を高めることができるだけでなく、フィルムの生産性を高めることができ、フィルムの外観も向上できる。すなわち静電密着性が高いと、フィルムの冷却固化の安定性を高めることができ、キャスティング速度(生産速度)を高めることができる。また静電密着性が高いと、フィルムの冷却固化が不完全となって、ロールとフィルムとの間に局部的にエアーが入り込み、フィルム表面にピンナーバブル(スジ状の欠陥)が発生するのを防止でき、フィルム外観を高めることができる。
【0087】
前記溶融比抵抗値は、好ましくは0.65×108Ω・cm以下、さらに好ましくは0.60×108Ω・cm以下である。
【0088】
溶融比抵抗値を上記範囲に制御するためには、フィルム中にアルカリ土類金属化合物と、リン含有化合物とを含有させるのが望ましい。アルカリ土類金属化合物だけでも溶融比抵抗値を下げることができるが、リン含有化合物を共存させると溶融比抵抗値を著しく下げることができる。アルカリ土類金属化合物とリン含有化合物とを組合わせることによって溶融比抵抗値を著しく下げることができる理由は明らかではないが、リン含有化合物を含有させることによって、異物の量を減少でき、電荷担体の量を増大できるためと推定される。
【0089】
フィルム中のアルカリ土類金属化合物の含有量は、アルカリ土類金属原子M2を基準にして、例えば、20ppm(質量基準)以上、好ましくは40ppm(質量基準)以上、さらに好ましくは50ppm(質量基準)以上、特に60ppm(質量基準)以上である。アルカリ土類金属化合物の量が少なすぎると溶融比抵抗値を下げることができない。なおアルカリ土類金属化合物の含有量を多くし過ぎても、溶融比抵抗値の低減効果が飽和してしまい、むしろ異物生成や着色などの弊害が大きくなる。そのためアルカリ土類金属化合物の含有量は、アルカリ土類金属原子M2を基準にして、例えば、400ppm(質量基準)以下、好ましくは350ppm(質量基準)以下、さらに好ましくは300ppm(質量基準)以下である。
【0090】
フィルム中のリン化合物の含有量は、リン原子Pを基準にして、例えば、5ppm(質量基準)以上、好ましくは20ppm(質量基準)以上、さらに好ましくは40ppm(質量基準)以上、特に60ppm(質量基準)以上である。リン化合物の量が少なすぎると、溶融比抵抗値を下げることが充分にできず、異物の生成量を低減することもできない。なおリン化合物の含有量を多くしすぎても、溶融比抵抗値の低減効果が飽和してしまう。さらにはジエチレングリコールの生成を促進してしまい、しかもその生成量をコントロールすることが困難であるため、フィルムの物性が予定していたものと異なる虞がある。そのためリン化合物の含有量は、リン原子Pを基準にして、例えば、500ppm(質量基準)以下、好ましくは450ppm(質量基準)以下、さらに好ましくは400ppm(質量基準)以下、特に350ppm(質量基準)以下である。
【0091】
アルカリ土類金属化合物及びリン化合物でフィルムの溶融比抵抗値を下げる場合、フィルム中のアルカリ土類金属原子M2とリン原子Pとの質量比(M2/P)は、1.2以上(好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.4以上)であることが望ましい。質量比(M2/P)を1.2以上にすることによって、溶融比抵抗値を著しく低減できる。なお質量比(M2/P)が5.0を超えると、異物の生成量が増大したり、フィルムが着色したりする。そのため質量比(M2/P)は、5.0以下、好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.0以下である。
【0092】
フィルムの溶融比抵抗値をさらに下げるためには、前記アルカリ土類金属化合物及びリン含有化合物に加えて、フィルム中にアルカリ金属化合物を含有させるのが望ましい。アルカリ金属化合物は、単独でフィルムに含有させても溶融比抵抗値を下げることはできないが、アルカリ土類金属化合物及びリン含有化合物の共存系に追加することで、溶融比抵抗値を著しく下げることができる。その理由については明確ではないが、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及びリン含有化合物の三者で錯体を形成することによって、溶融比抵抗値を下げているものと推定される。
【0093】
フィルム中のアルカリ金属化合物の含有量は、アルカリ金属原子M1を基準にして、例えば、0ppm(質量基準)以上、好ましくは5ppm(質量基準)以上、さらに好ましくは6ppm(質量基準)以上、特に7ppm(質量基準)以上である。なおアルカリ金属化合物の含有量を多くしすぎても、溶融比抵抗値の低減効果が飽和してしまい、さらには異物の生成量が増大する。そのためアルカリ金属化合物の含有量は、アルカリ金属原子M1を基準にして、例えば、100ppm(質量基準)以下、好ましくは90ppm(質量基準)以下、さらに好ましくは80ppm(質量基準)以下である。
【0094】
前記アルカリ土類金属化合物としては、アルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、脂肪族カルボン酸塩(酢酸塩、酪酸塩など、好ましくは酢酸塩)、芳香族カルボン酸塩(安息香酸塩)、フェノール性水酸基を有する化合物との塩(フェノールとの塩など)などが挙げられる。またアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど(好ましくはマグネシウム)が挙げられる。好ましいアルカリ土類金属化合物には、水酸化マグネシウム、マグネシウムメトキシド、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウムなど、特に酢酸マグネシウムが含まれる。前記アルカリ土類金属化合物は、単独で又は2種以上組合わせて使用できる。
【0095】
前記リン化合物としては、リン酸類(リン酸、亜リン酸、次亜リン酸など)、及びそのエステル(アルキルエステル、アリールエステルなど)、並びにアルキルホスホン酸、アリールホスホン酸及びそれらのエステル(アルキルエステル、アリールエステルなど)が挙げられる。好ましいリン化合物としては、リン酸、リン酸の脂肪族エステル(リン酸のアルキルエステルなど;例えば、リン酸モノメチルエステル、リン酸モノエチルエステル、リン酸モノブチルエステルなどのリン酸モノC1-6アルキルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジエチルエステル、リン酸ジブチルエステルなどのリン酸ジC1-6アルキルエステル、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステルなどのリン酸トリC1-6アルキルエステルなど)、リン酸の芳香族エステル(リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジルなどのリン酸のモノ、ジ、又はトリC6-9アリールエステルなど)、亜リン酸の脂肪族エステル(亜リン酸のアルキルエステルなど;例えば、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリブチルなどの亜リン酸のモノ、ジ、又はトリC1-6アルキルエステルなど)、アルキルホスホン酸(メチルホスホン酸、エチルホスホン酸などのC1-6アルキルホスホン酸)、アルキルホスホン酸アルキルエステル(メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジメチルなどのC1-6アルキルホスホン酸のモノ又はジC1-6アルキルエステルなど)、アリールホスホン酸アルキルエステル(フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチルなどのC6-9アリールホスホン酸のモノ又はジC1-6アルキルエステルなど)、アリールホスホン酸アリールエステル(フェニルホスホン酸ジフェニルなどのC6-9アリールホスホン酸のモノ又はジC6-9アリールエステルなど)などが例示できる。特に好ましいリン化合物には、リン酸、リン酸トリアルキル(リン酸トリメチルなど)が含まれる。これらリン化合物は単独で、又は2種以上組合わせて使用できる。
【0096】
前記アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、脂肪族カルボン酸塩(酢酸塩、酪酸塩など、好ましくは酢酸塩)、芳香族カルボン酸塩(安息香酸塩)、フェノール性水酸基を有する化合物との塩(フェノールとの塩など)などが挙げられる。またアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなど(好ましくはナトリウム)が挙げられる。好ましいアルカリ金属化合物には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど、特に酢酸ナトリウムが含まれる。
【0097】
X層およびY層には、必要に応じ、従来公知の添加剤、例えば、有機粒子(例、架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、シリコーン粒子等)、無機粒子(例、シリカ、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛等)、滑剤、安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、静電防止剤、紫外線吸収剤等が含有されていてもよい。
【0098】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みとしては、5〜100μmが好ましく、20〜50μmがより好ましい。
【0099】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、従来公知の方法によりラベル化することができる。一例としては、所望幅に裁断した熱収縮性ポリエステル系フィルムに適当な印刷を施し、溶剤接着等によりフィルムの左右端部を重ね合わせて接合してチューブフィルムを製造する。該チューブフィルムを適切な長さに裁断し、チューブ状ラベルとする。または、さらにこのチューブ状ラベルの一方の開口部を接合して袋状ラベルとする。
【0100】
そして、これらのラベルを、従来方法によりミシン目を形成した後、ペットボトルに被せ、当該ペットボトルをベルトコンベアー等にのせて、スチームを吹きつけるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)または、熱風を吹きつけるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を通過させる。これらのトンネル通過時にラベルが熱収縮することにより、ラベルがペットボトル等のボトル容器に装着される。
【0101】
当該ラベルは、ボトルへのラベル装着及び収縮を飲料充填ライン中で行う場合、すなわち高速で行われる場合であっても、ラベルの収縮ムラ、シワまたは色ムラの発生が極めて抑制されており、また、低温においてさえ、ラベルに形成されたミシン目の開封性が良好である。例えば、折径109mm、ラベル長さ90mmであり、長さ1mmの孔が1mm間隔で配設されたミシン目を10mm間隔で2本設けたチューブラベルを、80℃、2.5秒の条件で水蒸気により熱収縮させてラベルに装着させたボトルを用意し、ボトルに水を約500mL充填後5℃で12時間冷蔵し、冷蔵庫から取り出した直後のミシン目について指先で引き裂いてその開封性を評価した場合、20%以下の開封不良率を達成することができ、7%以下、さらには2%以下の開封不良率を達成することもできる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に何ら制限されるものではない。まず、実施例および比較例において作成したフィルムの評価方法について説明する。
【0103】
(1)熱収縮率
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、85℃±0.5℃または70℃±0.5℃の温水中において、無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた。フィルムを直ちに25℃±0.5℃の水中に10秒間浸漬させた後、フィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下記(1)式に従いそれぞれ熱収縮率を求めた。該熱収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
熱収縮率=((収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ)×100(%) (1)
【0104】
(2)フィルム内部の層数(その1)
フィルム内部の層数は、透過型電子顕微鏡を用いて観察して求めた。まず、フィルムをエポキシ樹脂中に包埋した。用いたエポキシ樹脂としては、ルアベック812、ルアベックNMA(以上ナカライテスク社製)、DMP30(TAAB社製)をそれぞれ100:89:3の割合で良く混合したものを用いた。次に、サンプルフィルムを上述の混合樹脂中に包埋後、温度60℃に調整したオーブン中で16時間放置し、樹脂を硬化せしめ包埋ブロックを得た。
【0105】
得られた包埋ブロックを、日製産業製ウルトラカットNに取り付け超薄切片を作成した。まず、ガラスナイフを用いてフィルムの観察に供したい部分の断面がレジン表面に現れるまでトリミングを実施した。次に、ダイアモンドナイフ(住友電工製スミナイフSK2045)を用いて超薄切片を切りだした。切りだした切片はメッシュ上に回収した後、室温で四酸化ルテニウム蒸気中に30分間静置して染色し、薄くカーボン蒸着を施した。
【0106】
電子顕微鏡観察は、日本電子製JEM−2010を加速電圧200kVの条件で実施した。得られた像はイメージングプレート(富士写真フイルム製FDL UR−V)上に記録した。イメージングプレート上に記録した信号をデジタルルミノグラフィー(日本電子製PixsysTEM)を用いて読み出し、ウインドウズ(登録商標)パソコン上にデジタルの画像情報として記録し、X層およびY層の染色度の差から確認される層の数を数えた。
【0107】
(2−2)フィルム内部の層数(その2)
フィルム内部の層数は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察して求めた。まず、フィルムをエポキシ樹脂中に包埋した。用いたエポキシ樹脂としては、ルアベック812、ルアベックNMA(以上ナカライテスク社製)、DMP30(TAAB社製)をそれぞれ100:89:3の割合(質量)で良く混合したものを用いた。次に、サンプルフィルムを上述の混合樹脂中に包埋後、温度60℃に調整したオーブン中で16時間放置し、樹脂を硬化せしめ包埋ブロックを得た。
【0108】
この包埋ブロックに対し、ガラスナイフを用いて、フィルム部分の断面がブロック表面に現れるまで樹脂を切削した(面出し)。この面出し後の包埋ブロックを、塩化ルテニウム蒸気を密閉した容器中に3日間入れて、ルテニウム染色を行った。塩化ルテニウム蒸気は1日毎に新しい蒸気と交換した。
【0109】
染色後の包埋ブロックから、ミクロトームで厚さおよそ700Åの超薄切片を、包埋ブロックの表面から1.5μm程度内部まで何枚も切り出した。最もコントラストの鮮明な超薄切片を選んで、カーボン蒸着を行い、TEM観察用試料とした。
【0110】
電子顕微鏡観察は、日本電子社製JEM−2010を用い、加速電圧200kVの条件で実施した。得られた像はイメージングプレート(富士写真フイルム社製「FDL UR−V」)上に記録した。イメージングプレート上に記録した信号をデジタルルミノグラフィー(日本電子社製「PixsysTEM」)を用いて読み出し、ウインドウズ(登録商標)パソコン上にデジタルの画像情報として記録した。倍率は5000〜20000倍の中から適宜選択した。
【0111】
上記画像情報を、画像解析ソフト(Scion Image Alpha 4.0.3.2 ; Scion Corporation製)を用いて解析した。まず、詳細な層数確認の前に、予備確認を行った。予備確認は、以下のようにして行った。
1.フィルム厚み方向の色の濃淡をラインプロファイルにより数値化した。具体的には、幅100ピクセル、長さ3000ピクセル(ピクセル数は任意に変更可能)の濃淡を読み取り、横軸を長さ方向のピクセル、縦軸を信号強度(濃淡)として曲線を描かせて、グラフ化した。
2.グラフ中の曲線にはピークが多数存在しているので、ある1個のピークについて、極大値がある位置のピクセル数と、極小値がある位置のピクセル数を読み取り、その差d(ピークの幅の約半分)を層の厚みと考えた。30個のピークについて、dを求め、平均値davを算出した。
3.上記平均値davをnm単位に換算し、換算後の値が100nm以上の場合は、イメージングプレート上のTEM像から、目視で層数を数えた。なお、換算の際には、TEM像が5000倍の場合は、1ピクセルを5nmとし、2万倍の場合は、1ピクセルを1.25nmとした。
4.上記換算後のdav(nm)が100nm未満の場合は、下記の詳細な層数確認法を採用して層数を求めた。
【0112】
詳細な層数確認法は、以下のようにして行った。
【0113】
1.上記TEM観察画像について、ノイズと画像の濃淡の斑との補正処理を行った。まず、画像解析ソフト(L Process ver.1.96;FUJIFILM Science Lab99製)を用いて、上記画像を取り込んだ(図1)。イメージセレクタツールの設定を2nにして、画像の最大範囲(2048×2048ピクセル:但し、任意に指定可能)でフーリエ変換(FFT)を行った(図2)。図1において、図の中心を決め、層方向(縞の方向)をX軸を、該方向に直交する方向をY軸とする。図2において、白い輝点の集合体がY軸に沿うように(図中、水平線と垂直線が見えるが、これはノイズである)、図1の中心と図2の中心(X=Y=ゼロピクセル)を合わせてから、(X,Y)=(100ピクセル,+2.5ピクセル)、(X,Y)=(−100ピクセル,+2.5ピクセル)、(X,Y)=(100ピクセル,+1020ピクセル)、(X,Y)=(−100ピクセル,+1020ピクセル)の4点を頂点とする長方形を描かせる。この画像解析ソフトでは、上記最初の長方形を描かせると、この長方形とX軸に対して線対称な長方形も、自動的に描かれる。すなわち、(X,Y)=(100ピクセル,−2.5ピクセル)、(X,Y)=(−100ピクセル,−2.5ピクセル)、(X,Y)=(100ピクセル,−1020ピクセル)、(X,Y)=(−100ピクセル,−1020ピクセル)の4点を頂点とする長方形である。この2つの長方形で囲んだところ以外の白い輝点は、ノイズとして扱う。なお、上記の長方形の位置および大きさは、ノイズを除去するため、経験的に導き出した数値である。2つの長方形で囲んだ部分のみを逆フーリエ変換(IFFT)し、得られた画像をTIFF形式(16bit)で保存した(図3)。
【0114】
2.逆フーリエ変換後の画像を、別の画像解析ソフト(Scion Image Alpha 4.0.3.2 ; Scion Corporation製)に読み込んで、Threshold機能で画像の濃淡を明瞭化し、BMP形式へと変更した(図4)。(補正処理終了)
【0115】
3.このBMP形式の画像において、Profile Plot機能を用い、Y軸に平行ななるべく長い(2000〜2500ピクセル程度)ラインプロファイルを、プロット幅1ピクセルで採ることにより、フィルム断面画像の濃淡を2値化して、Plot Value形式で保存した。
【0116】
4.このPlot Value形式のデータを、Microsoft Excel(登録商標)に読み込んで、Y軸に平行なラインの1ピクセルごとの全データの平均値(Av)を求めた。次いで、あるピクセルのデータが平均値(Av)より大きい時は、そのピクセルに判定値+1を与え、それ以外の場合は、そのピクセルには判定値−1を与えた。各ピクセルの判定値をピクセル(横軸)に対してプロットすると、得られるグラフは、+1と+1(または−1と−1)を結ぶ水平な直線と、+1と−1(またはその逆)とを結ぶ斜めの直線とからなる線となった。この斜めの直線の数を、層の数と判断した。
【0117】
なお、上記の方法で求められる層数は、スタティックミキサのエレメント数nから理論的に求まる2n層または2n+1層よりも小さくなることがある。X層を構成するポリエステル樹脂成分AとY層を構成するポリエステル樹脂成分Bとは異なる樹脂組成であるが、積層工程中に隣り合う層同士の界面でエステル交換反応が起こり、X層とY層の界面近傍に同じ組成のポリエステルが生成することがある。例えば、層数が多くなって一層の厚みが数nmレベルに薄くなると、X層とY層との一部が同じポリエステル組成の層であると同一視されてしまい、上記の染色法や層数確認法を採用したときに、理論値よりも小さくなるものと考えられる。
【0118】
(3)収縮仕上り性評価
熱収縮性フィルムに、あらかじめ東洋インキ製造(株)の草・金・白色のインキで3色印刷した。印刷したフィルムを1,3−ジオキソランで両端部を接着することにより、チューブ状のラベルを作成した。ラベルのサイズは、折径109mm、ラベル長さ90mmとした。
【0119】
Fuji Astec Inc製スチームトンネル(型式:SH−1500−L)を用い、通過時間2.5秒、ゾーン温度80℃(表示)で蒸気圧1kgf/cm2(圧力ゲージ表示:98kPa)の水蒸気を吹き付けて該ラベルを熱収縮させることにより、500mLのペットボトル(丸型、胴直径62mm、ネック部の最小直径25mm)に装着した。なお、このとき、直径が約40mmの部分(肩部)がラベルの一方の端になるようにした。評価は目視で行い、基準は下記の通りとした。
シワ、飛び上り、収縮不足の何れも未発生かつ色のムラも見られない : ◎
シワ、飛び上り、又は収縮不足が確認できないが、若干、色のムラが見られる:○
飛び上り、収縮不足の何れも未発生だが、ネック部のムラが見られる: △
シワ、飛び上り、収縮不足が発生:×
【0120】
(4)ラベル密着性評価
上記(3)の条件で装着したラベルとPETボトルとを軽くねじったときに、ラベルが動かなければ○、すり抜けたり、ラベルとボトルがずれるなら×とした。
【0121】
(5)ミシン目開封性テスト
熱収縮性フィルムに、あらかじめ東洋インキ製造(株)の草・金・白色のインキで3色印刷した。印刷したフィルムを1,3−ジオキソランで両端部を接着することにより、チューブ状のラベルを作成した。ラベルのサイズは、折径109mm、ラベル長さ90mmとした。
【0122】
上記ラベルに、ラベルの主収縮方向に対し直角方向にミシン目を入れた。2つ折りにしたラベルの下に厚さ1mmのボール紙を2枚重ねて敷き、テストシーラー(西部機械社製)にミシン刃(1mmピッチの刃が1mm間隔で付いている全長100mmの刃)を装着し、ゲージ圧2kgf/cm2でミシン刃をラベルに圧着して、2つ折りにしたラベルの端部より5mmの位置にラベル端部と平行にミシン目を入れた。ラベルには、長さ1mmの孔が1mm間隔で配設されたミシン目がラベル全長にわたり同時に2本設けられ、2本のミシン目の間隔は10mmであった。
【0123】
Fuji Astec Inc製スチームトンネル(型式:SH−1500−L)を用い、通過時間2.5秒、ゾーン温度80℃(表示)で蒸気圧1kgf/cm2(圧力ゲージ表示:98kPa)の水蒸気を吹き付けて該ラベルを熱収縮させることにより、500mLのペットボトル(丸型、胴直径62mm、ネック部の最小直径25mm)に装着した。なお、このとき、直径が約40mmの部分(肩部)がラベルの一方の端になるようにした。
【0124】
その後、このボトルに水を約500mL充填し、5℃で12時間冷蔵し、冷蔵庫から取り出した直後のボトルのラベルのミシン目を指先で引き裂き、縦方向にきれいに裂けてラベルをボトルから外すことができた本数を数えた。全サンプル50本に対するきれいにラベルを裂くことができなかったボトルの割合をミシン目開封不良率(%)として示した。
【0125】
(6)ポリエステル成分の熱分析
セイコー電子工業(株)製のDSC装置(型式:DSC220)を用い、ポリエステル成分の熱分析を行った。後述の合成例で合成したチップまたは得られたフィルムの各10±1mgを試料とし、この試料を300℃で2分間加熱し、直ちに液体窒素に入れて急冷した後、温度−40℃から300℃まで速度20℃/分で昇温し、熱流速曲線(DSC曲線)を測定した。前記DSC曲線における吸熱開始カーブの前後に引いた接線の交点をガラス転移温度(Tg)とした。前記DSC曲線における吸熱ピークの最大値を示す温度を融解温度(Tm)とした。前記DSC曲線の吸熱ピークの積分値を融解熱量(Hm)とした。結果を表1に示した。
【0126】
(7)ポリエステルフィルムのNMR解析
各試料を、クロロホルムD(ユーリソップ社製)とトリフルオロ酢酸D1(ユーリソップ社製)を10:1(体積比)で混合した溶媒に溶解させて、試料溶液を調製し、NMR(「GEMINI−200」;Varian社製)を用いて、温度23℃、積算回数64回の測定条件で試料溶液のH−NMRを測定した。NMR測定では、所定のプロトンのピーク強度を算出して、チップ組成およびフィルム組成をモル%として求めた。
【0127】
合成例1(ポリエステルの合成)
オートクレーブに、3830質量部のテレフタル酸(TPA)、2433質量部のエチレングリコール(EG)、997質量部の1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、安定剤としてのトリエチルアミン9.6mLと、2.5質量部の三酸化アンチモン(重合触媒)、5.7質量部の酢酸マグネシウム(アルカリ土類金属化合物)、0.36質量部の酢酸ナトリウム(アルカリ金属化合物)および2.9質量部のトリメチルホスフェート(リン化合物)を仕込み、容器内を窒素で0.25MPa(2.5kgf/cm2)に加圧した。撹拌下で加熱し、180分間で内温を240℃にした。この間、エステル化反応が進行し、水が流出していた。240℃に到達したのち、放圧した後、60分間かけて圧力1.33hPa(1mmHg)以下に減圧すると共に、275℃まで徐々に昇温し、重縮合を行った。275℃で180分間経過後、減圧下での重縮合反応を終了させ、窒素加圧下で得られたポリマーをストランド状で水中へ吐出した。吐出物をストランドカッターで切断することにより、ポリエステルチップBを得た。ポリエステルチップBを、80℃で減圧乾燥し、水分率0.005質量%以下にした。ポリエステルチップBの極限粘度は、0.72dl/gであった。
【0128】
合成例2
合成例1と同様な方法により、表1に示すチップ組成のポリエステル原料チップA,CおよびDを得た。表中、DiAはダイマー酸、NPGはネオペンチルグリコール、PDは1,3‐プロパンジオール、DEGはジエチレングリコールの略記である。ダイマー酸としては、ユニケマジャパン社製の「プリポール1098」を用いた。このダイマー酸は、上記式(2)で表わされる構造を有している。ポリエステルチップAの極限粘度は、0.90dl/g、ポリエステルチップCの極限粘度は、0.75dl/g、ポリエステルチップDの極限粘度は、0.92dl/gであった。
【0129】
なお、極限粘度は、チップ0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=3/2(質量比)の混合溶媒に溶解した後、オストワルド粘度計で30±0.1℃で測定した。極限粘度[η]は、下式(Huggins式)によって求められる。
【0130】
【数1】

【0131】
ここで、ηsp :比粘度、t0:オストワルド粘度計を用いた溶媒の落下時間、t:オストワルド粘度計を用いたチップ溶液の落下時間、C:チップ溶液の濃度である。なお、実際の測定では、Huggins式においてk=0.375とした下記近似式で極限粘度を算出した。
【0132】
【数2】

ここで、ηr:相対粘度である。
【0133】
【表1】

【0134】
実施例1
上記合成例で得られたポリエステルチップAとBを別個に予備乾燥した。ポリエステルチップAとポリエステルチップBとを押出機A1に、チップの比率がA/B=30/70(質量比)となるように投入し、255℃±2℃で溶融した。一方で、ポリエステルチップBのみを押出機B1に投入し、280℃±2℃で溶融した。両押出機で溶融した樹脂を、押出機A1と押出機B1の吐出量の比率がA1/B1=80/20(質量比)となるように、270℃±2℃のフィードブロックに導き、さらに、270℃±2℃のスタティックミキサ(ノリタケカンパニー製、12エレメント、内径38.4mm、1エレメントのL/D=1.5、1エレメントの板の捩り角180度、捩り勾配46度)にて積層化した。次いで270℃±2℃のT−ダイに導き、溶融押出しした。押出しした樹脂は、表面温度20℃±2℃の冷却ロール上に静電密着され、未延伸シートを得た。この未延伸シートのTgは49℃であった。
【0135】
上記未延伸シートを、テンター内で80℃で24秒間予熱した後に、横方向に75℃で4.8倍に延伸し、続いて70℃で24秒間熱処理を行って、厚み50μmの熱収縮性ポリエステルフィルムを得た。
【0136】
実施例2
押出機B1に、予備乾燥しておいたポリエステルチップBとポリエステルチップCとを、チップ比率がB/C=80/20(質量比)となるように投入した以外は実施例1と同様の方法で、厚み50μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。
【0137】
実施例3
押出機B1に、ポリエステルチップBとポリエステルチップCとを、チップ比率がB/C=60/40(質量比)となるように投入した以外は実施例1と同様の方法で、厚み50μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。
【0138】
比較例1
ポリエステルチップAとポリエステルチップBとを、単一の押出機C1に、樹脂比率がA/B=40/60(質量比)となるように投入して溶融し(温度280℃±2℃)、スタティックミキサを使用せず、T−ダイの温度を280℃±2℃として未延伸シートを得た以外は、実施例1と同様の方法で、厚み50μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。
【0139】
実施例1〜3及び比較例1で得られたフィルムの評価結果を表2および表3に示す。各実施例の層数は、上記(2−2)の詳細な層数確認法を採用して決定した(以下の実施例においても同様である)。
【0140】
【表2】

【0141】
【表3】

【0142】
(表3において、TPAはテレフタル酸由来の単位、DiAはダイマー酸由来の単位、EGはエチレングリコール由来の単位、NPGはネオペンチルグリコール由来の単位、CHDMは1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の単位、DEGはジエチレングリコール由来の単位を示す。また、DiA−Eはダイマー酸由来の単位とエチレングリコール由来の単位とからなるユニット、ETはエチレンテレフタレートユニット、NPG−Tはネオペンチルテレフタレートユニット、CHD−Tは1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートを示し、ET&CHD−Tはこれらの合計量を示す。)
【0143】
実施例4
上記合成例で得られたポリエステルチップA、BおよびDを別個に予備乾燥した。ポリエステルチップAとポリエステルチップDとを、押出機A1に、チップ比率がA/D=80/20(質量比)となるように投入し、投入し、255℃±2℃で溶融した。一方で、ポリエステルチップBのみを押出機B1に投入し、280℃±2℃で溶融した。両押出機で溶融した樹脂を、押出機A1と押出機B1の吐出量の比率がA/B=30/70(質量比)となるように、270℃±2℃のフィードブロックに導き、さらに、270℃±2℃のスタティックミキサ(ノリタケカンパニー製、12エレメント、内径38.4mm、1エレメントのL/D=1.5、1エレメントの板の捩り角180度、捩り勾配46度)にて積層化した。次いで270℃±2℃のT−ダイに導き、溶融押出しした。押出しした樹脂は、表面温度20℃±2℃の冷却ロール上に静電密着され、未延伸シートが得られた。この未延伸シートのTgは51℃であった。
【0144】
上記未延伸シートを、テンター内で80℃で24秒間予熱した後に、横方向に75℃で4.8倍に延伸し、続いて70℃で24秒間熱処理を行って、厚み50μmの熱収縮性ポリエステルフィルムを得た。
【0145】
実施例5
押出機A1の樹脂比率を、A/B=70/30(質量比)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、厚み50μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。
【0146】
実施例6
押出機A1の樹脂比率を、A/B=60/40(質量比)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、厚み50μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。
【0147】
実施例4〜6で得られたフィルムの評価結果を表4および5に示す。
【0148】
【表4】

【0149】
【表5】

【0150】
(表5において、TPA、DiA、EG、DiA−E、ET、NPG−T、CHD−Tは表3と同じ意味を示し、PDは1,3−プロパンジオール由来の単位、TTはトリメチレンテレフタレートユニットを示す。)
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、PETボトル、ガラスボトル等のボトル用ラベルに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】画像解析ソフトに取り込まれたフィルムのTEM写真である。
【図2】図1のフーリエ変換後の画像である。
【図3】図2の逆フーリエ変換後の画像である。
【図4】図3の濃淡を明瞭化した後の画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンテレフタレートユニット、ダイマー酸とエチレングリコールからなるエステルユニットおよびその他のエステルユニットとからなるポリエステル樹脂成分Aと、エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットを主として含み、且つ、ポリエステル樹脂成分Aとはポリエステルの組成が異なるポリエステル樹脂成分Bとを、それぞれ別々の押出機A1およびB1に投入して溶融し、溶融状態のまま樹脂成分Aおよび樹脂成分Bをスタティックミキサに投入した後に、T−ダイから押出し、冷却して形成した未延伸シートを少なくとも一軸に延伸することにより得られる熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
エチレンテレフタレートユニット、ダイマー酸とエチレングリコールから形成されるエステルユニットおよびその他のエステルユニットからなるポリエステル樹脂成分Aを含有するX層と、エチレンテレフタレートユニットと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットを主として含み、且つ、ポリエステル樹脂成分Aとは組成が異なるポリエステル樹脂成分Bとを含有するY層とが、合わせて500層以上交互に積層された構造を有する熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
フィルム中に、フィルム全体の全ポリエステルの構成ユニットを100モル%として、エチレンテレフタレートユニットが40〜93モル%、ダイマー酸とエチレングリコールとからなるエステルユニットが1〜9モル%、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットが6〜31モル%、その他のエステルユニットが0〜20モル%含まれている請求項1または2記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
85℃±0.5℃の温水中に10秒間浸漬後の主収縮方向の熱収縮率が35%以上80%以下であり、かつ、70℃±0.5℃温水中に10秒間浸漬後の主収縮方向の熱収縮率が10%以上50%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項5】
前記樹脂成分Aが、DSCで測定されるガラス転移温度が−50℃以上60℃未満であって結晶融解熱量が5(J/g)以上100(J/g)以下の結晶性ポリエステルであり、前記樹脂成分Bが、DSCで測定されるガラス転移温度が60℃以上150℃以下であって結晶融解熱量が0(J/g)以上3(J/g)以下の実質的に非晶質のポリエステルである請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項6】
フィルム中に、アルカリ土類金属化合物をアルカリ土類金属原子M2を基準として20ppm(質量基準、以下同じ)以上400ppm以下、リン化合物をリン原子Pを基準にして5ppm以上500ppm以下含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いたボトル用ラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−189780(P2008−189780A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24764(P2007−24764)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】