説明

熱可塑性樹脂フィルムの製造方法と熱可塑性樹脂フィルム

【課題】熱可塑性樹脂を溶融流涎する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、減粘効果と工程内汚染の改善とを両立させ、かつ再利用時の性能劣化を抑えた熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供する。更に、当該製造方法により位相差波長分散性を向上させ光学フィルムに適した熱可塑性樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】イオン性液体と熱可塑性樹脂を含む樹脂混合物を溶融流涎することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法及びその製造方法によって製造された、特に光学フィルムに適した熱可塑性樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルムは、多様な目的で広範な分野で使用されている。例えば、光学フィルムとしては、液晶ディスプレイの偏光板の保護フィルム、反射防止層、防眩層、ハードコート層を設けて、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の最表面に使用されている。
【0003】
光学フィルムは、高い透明性、平面性、透湿防止性、ブリードアウト耐性、寸法安定性(温湿度や経時で変動しない)、偏光板に使用されるポリビニルアルコール(PVA)偏光膜との密着性、などの各種性能が要求されている。
【0004】
光学用の熱可塑性樹脂フィルムは、特に偏光板に使用されるPVA偏光膜との密着性と適度な透湿防止性から、偏光板保護フィムルとして使用されている。熱可塑性樹脂フィルムは、一般にハロゲン系有機溶剤を使用した溶液流延製膜法によって製造されている。しかしながら、ハロゲン系有機溶剤は、環境面、安全面からその使用が制限されつつある。このため、有機溶剤を使用しない熱可塑性樹脂フィルムの製造方法が求められており、溶融流延法などの加熱溶融によりフィルムを得る方法が提案されている(例えば特許文献1、2参照。)。しかし、熱可塑性樹脂は、一般的に熱により劣化しやすい材料のため、上記の光学フィルムに求められる諸性能を完全に満足できていない。
【0005】
このような状況を背景として、特許文献3には、セルロースエステル樹脂、可塑剤、酸化防止剤を含む溶融物を溶融流涎する際の融点が低く、また低粘度であり、セルロースエステル樹脂の分子量保持率、着色に優れる光学フィルム及びその製造方法、並びに偏光板、液晶表示装置を提供することを目的とした、フィルム状に流延製膜する光学フィルムの製造方法において、該溶融流涎より前段階で、アルコール類を添加することを特徴とする光学フィルムの製造方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、ラウリルアルコール(1−ドデカノール)等のアルコール類は、減粘効果があり生産性を上げることができるものの、溶融流涎は、一般に250℃程度の高温下で行うため、アルコール類は、その温度下では揮発してしまい、工程内を汚染してしまうという問題点があった。
【特許文献1】特開2000−352620号公報
【特許文献2】特開2005−178194号公報
【特許文献3】特開2007−63311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、熱可塑性樹脂を溶融流涎する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、減粘効果と工程内汚染の改善とを両立させ、かつ再利用時の性能劣化を抑えた熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供することである。更に、当該製造方法により位相差波長分散性を向上させ光学フィルムに適した熱可塑性樹脂フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0009】
1.イオン性液体と熱可塑性樹脂を含む樹脂混合物を溶融流涎することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【0010】
2.前記熱可塑性樹脂が、セルロースエステルであることを特徴とする前記1に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【0011】
3.前記樹脂混合物が、酸化防止剤を含有することを特徴とする前記1又は2に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【0012】
4.前記酸化防止剤が、リン系もしくはフェノール系の化合物であることを特徴とする前記3に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【0013】
5.前記1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法により製造された熱可塑性樹脂フィルムであって、イオン性液体を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記手段により、熱可塑性樹脂を溶融流涎する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、減粘効果と工程内汚染の改善とを両立させ、かつ再利用時の性能劣化を抑えた熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供することである。更に、当該製造方法により位相差波長分散性を向上させ光学フィルムに適した熱可塑性樹脂フィルムを提供することができる。
【0015】
すなわち、上記効果を作用機構的観点から説明するならば、イオン性液体は、熱可塑性樹脂組成物に混合すると他の可塑剤同様もしくはそれ以上の減粘効果があるので、加工性、生産性を向上することができる。また、溶融流涎の高温下でもイオン性液体は揮発しないため、工程内を汚染する問題を防止することができる。更に、イオン性液体を溶融流涎で繰り返し用いても、減粘効果が減少しないので、当該イオン性液体を含有する熱可塑性樹脂フィルム、例えば、セルロースエステルフィルムは返材利用することが可能となる。また、イオン性液体を用いることで波長分散性が好ましい値になり、コントラストを上げる効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、イオン性液体と熱可塑性樹脂を含む樹脂混合物を溶融流涎することを特徴とする。この特徴は、請求項1〜5に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0017】
本発明の実施態様としては、前記熱可塑性樹脂が、セルロースエステルである態様が好ましい。また、前記樹脂混合物が、酸化防止剤を含有すること、更に、当該酸化防止剤が、リン系もしくはフェノール系の化合物であることが好ましい。
【0018】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法により製造された熱可塑性樹脂フィルムは、イオン性液体を含有することを特徴とし、種々の目的に適応するが、光学フィルム等に適している。
【0019】
以下、本発明とその構成要素、本発明を実施するための最良の形態・態様等について詳細な説明をする。
【0020】
(溶融流涎に用いる樹脂混合物)
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法においては、イオン性液体と熱可塑性樹脂を含む樹脂混合物を溶融流涎することを特徴とする。当該樹脂混合物に含有させるイオン性液体と熱可塑性樹脂については、以下において詳述するが、樹脂混合物におけるイオン性液体の含有率は、2〜30質量%、好ましくは、5〜15質量%である。一方、熱可塑性樹脂の含有率は70〜95質量%、好ましくは、85〜98質量%である。
【0021】
当該樹脂混合物の調製方法は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)+30〜150℃で1軸ないし2軸混錬させ押し出し成形される。
【0022】
なお、当該樹脂混合物には、目的に応じて後述する酸化防止剤等の各種添加剤を含有させることが好ましい。
【0023】
(イオン性液体)
本発明に係る「イオン性液体」は、100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは0℃以下においても液体として存在しうる塩で、すでに公知のものを使用することができ、カチオン成分とアニオン成分からなる。
【0024】
イオン性液体におけるアニオン成分としては、N(CF3SO22-、C(CF323-、CF3SO3-、C25SO3-、C37SO3-、C49SO3-、BF4-、PF6-、Al3Cl8-、Al2Cl7-、AlCl4-およびClO4-が挙げられる。
【0025】
また、イオン性液体におけるカチオン成分としては、アルカリ金属イオン、イミダゾリウムカチオンが挙げられ、好ましくは、一般式(1)で表されるイミダゾリウムカチオンである。ただし、一般式(1)においては、イミダゾリウムカチオンのカウンタアニオンであるアニオン成分もX−として表示し、全体をイミダゾリウム塩の形で表示してある。
【0026】
【化1】

【0027】
本発明においては、一般式(1)中、R1〜R5は、水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基またはアラルキル基を表し、各々同一でも異なっていてもよく、互いに環を形成していても良い。
【0028】
一般式(1)において、R1〜R5の組合わせとしては、R1及びR3がそれぞれ独立にアルキル基であり、かつR2、R4及びR5が水素原子であることが好ましい。
【0029】
上記のアルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖または枝分かれしたアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖または枝分かれしたアルキル基が挙げられる。これらの中でも炭素数1〜5の直鎖または枝分かれしたアルキル基がより好ましく、炭素数1〜5の直鎖アルキル基が特に好ましい。
【0030】
上記のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トルイル基、キシリル基等が挙げられる。該アリール基は、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、水酸基、低級アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基)、カルボキシル基、アセチル基、プロパノイル基、チオール基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基)、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基等の置換基をいくつか有していてもよい。
【0031】
上記の複素環基としては、ピリジル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ピロリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基等が挙げられる。
【0032】
上記のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0033】
なお、一般式(1)におけるアニオン成分Xとしては、N(CF3SO22-、C(CF3SO23-、CF3SO3-、C25SO3-、C37SO3-、C49SO3-、BF4-、PF6-、Al3Cl8-、Al2Cl7-、AlCl4-及びClO4-が好ましく、N(CF3SO22-、PF6-、BF4-及びCF3SO3-がより好ましく、N(CF3SO22-及びPF6-が特に好ましい。
【0034】
上記の一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0035】
【化2】

【0036】
上記のA1〜A10で表される化合物の製造方法は、特に限定されない。例えば、上記のA1〜A10で表される化合物は、対応する一置換イミダゾールをハロゲン化アルキルで四級化した後に、目的のアニオンを有する塩を用いてアニオン交換反応を行うことにより得ることができる。
【0037】
当該一般式(1)で表される化合物は、不燃性を示し、飛散性が著しく小さく、得られる熱可塑性樹脂フィルム、例えばセルロースエステルフィルムを製造する工程を汚染せず、再利用にも適している。また粘性に優れ、生産効率の高いかつ波長分散性の良い熱可塑性樹脂フィルムを得ることができる。
【0038】
なお、イオン性液体としては、脂環式アミン系、脂肪族アミン系のイオン性液体やアミジン系イオン性液体でもよい。具体的には、広栄化学工業社製のIL−P11、IL−P14、IL−C3、IL−C5、IL−A1、IL−A2,IL−A3、IL−A4、IL−A5、IL−M8,IL−IM1などを用いることができる。
【0039】
(熱可塑性樹脂)
本発明において用いることができる熱可塑性樹脂としては、例えば、セルロースエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、および脂環式オレフィンポリマーなどを挙げることができる。この中でも、熱可塑性樹脂としては、セルロースエステル樹脂、環状オレフィン樹脂、及びアクリル樹脂が好ましい。特に、セルロースエステル樹脂が好ましい。
【0040】
〈セルロースエステル樹脂〉
本発明に用いることができるセルロースエステル樹脂は、セルロースエステルの構造を有し、脂肪酸アシル基、置換もしくは無置換の芳香族アシル基の中から少なくともいずれかの構造を含む、セルロースの前記単独または混合酸エステルであることが好ましい。
【0041】
以下、本発明において特に有用なセルロースエステルについて例示するがこれらに限定されるものではない。
【0042】
芳香族アシル基において、芳香族環がベンゼン環であるとき、ベンゼン環の置換基の例としてハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基及びアリールオキシスルホニル基、−S−R、−NH−CO−OR、−PH−R、−P(−R)2、−PH−O−R、−P(−R)(−O−R)、−P(−O−R)2、−PH(=O)−R−P(=O)(−R)2、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)(−O−R)、−P(=O)(−O−R)2、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)2−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)(−O−R)、−O−P(=O)(−O−R)2、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)(−O−R)、−NH−P(=O)(−O−R)2、−SiH2−R、−SiH(−R)2、−Si(−R)3、−O−SiH2−R、−O−SiH(−R)2及び−O−Si(−R)3が含まれる。上記Rは脂肪族基、芳香族基またはヘテロ環基である。置換基の数は、一個〜五個であることが好ましく、一個〜四個であることがより好ましく、一個〜三個であることが更に好ましく、一個または二個であることが最も好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基及びウレイド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基及びカルボンアミド基がより好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基及びアリールオキシ基が更に好ましく、ハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基が最も好ましい。
【0043】
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が含まれる。上記アルキル基は、環状構造或いは分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル及び2−エチルヘキシルが含まれる。上記アルコキシ基は、環状構造或いは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基は、更に別のアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ、ブチルオキシ、ヘキシルオキシ及びオクチルオキシが含まれる。
【0044】
上記アリール基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリール基の例には、フェニル及びナフチルが含まれる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールオキシ基の例には、フェノキシ及びナフトキシが含まれる。上記アシル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アシル基の例には、ホルミル、アセチル及びベンゾイルが含まれる。上記カルボンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。カルボンアミド基の例には、アセトアミド及びベンズアミドが含まれる。上記スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド及びp−トルエンスルホンアミドが含まれる。上記ウレイド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。ウレイド基の例には、(無置換)ウレイドが含まれる。
【0045】
上記アラルキル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることが更に好ましい。アラルキル基の例には、ベンジル、フェネチル及びナフチルメチルが含まれる。上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルが含まれる。上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることが更に好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニルが含まれる。上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、8〜20であることが好ましく、8〜12であることが更に好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例には、ベンジルオキシカルボニルが含まれる。上記カルバモイル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。カルバモイル基の例には、(無置換)カルバモイル及びN−メチルカルバモイルが含まれる。上記スルファモイル基の炭素原子数は、20以下であることが好ましく、12以下であることが更に好ましい。スルファモイル基の例には、(無置換)スルファモイル及びN−メチルスルファモイルが含まれる。上記アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アシルオキシ基の例には、アセトキシ及びベンゾイルオキシが含まれる。
【0046】
上記アルケニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルケニル基の例には、ビニル、アリル及びイソプロペニルが含まれる。上記アルキニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルキニル基の例には、チエニルが含まれる。上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。上記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。
【0047】
本発明のセルロースエステルにおいて、セルロースの水酸基部分の水素原子が脂肪族アシル基との脂肪酸エステルであるとき、脂肪族アシル基は炭素原子数が2〜20で具体的にはアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等が挙げられる。
【0048】
本発明において前記脂肪族アシル基とは更に置換基を有するものも包含する意味であり、置換基としては上述の芳香族アシル基において、芳香族環がベンゼン環であるとき、ベンゼン環の置換基として例示したものが挙げられる。
【0049】
また、上記セルロースエステルのエステル化された置換基が芳香環であるとき、芳香族環に置換する置換基Xの数は0または1〜5個であり、好ましくは1〜3個で、特に好ましいのは1又は2個である。更に、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよいが、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
【0050】
上記セルロースエステルにおいて置換もしくは無置換の脂肪族アシル基、置換もしくは無置換の芳香族アシル基の少なくともいずれか1種選択された構造を有する構造を有することが本発明のセルロースエステルに用いる構造として用いられ、これらは、セルロースの単独または混合酸エステルでもよく、2種以上のセルロースエステルを混合して用いてもよい。
【0051】
本発明の光学フィルムを構成する前記セルロースエステルにおいて、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、及びセルロースフタレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0052】
これらの中で特に好ましいセルロースエステルは、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートが挙げられる。
【0053】
混合脂肪酸エステルの置換度として、更に好ましいセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートの低級脂肪酸エステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロース樹脂であることが好ましい。
【0054】
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 1.0≦X≦2.5
この内特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.9≦X≦2.5であり、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。上記アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
【0055】
更に、本発明で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは2.0〜5.0であり、更に好ましくは2.5〜5.0であり、更に好ましくは3.0〜5.0のセルロースエステルが好ましく用いられる。
【0056】
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、或いは単独で使用することができる。
【0057】
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることができる。
【0058】
本発明に係るセルロースエステル樹脂は、20mlの純水(電気伝導度0.1μS/cm以下、pH6.8)に1g投入し、25℃、1hr、窒素雰囲気下にて攪拌した時のpHが6〜7、電気伝導度が1〜100μS/cmであることが好ましい。pHが6未満の場合、残留有機酸が加熱溶融時にセルロースの劣化を促進させる恐れがあり、pHが7より高い場合、加水分解が促進する恐れがある。また、電気伝導度が100μS/cm以上の場合、残留イオンが比較的多く存在するため、加熱溶融時にセルロースを劣化させる要因になると考えられる。
【0059】
〈アクリル樹脂〉
本発明に用いられるアクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。
【0060】
共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン、核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0061】
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
【0062】
アクリル樹脂含有熱可塑性樹脂フィルムに用いられるアクリル樹脂は、フィルムとしての機械的強度、フィルムを生産する際の流動性の点から重量平均分子量(Mw)が80000〜1000000であることが好ましい。この分子量とすることで、耐熱性と脆性の両立を図ることができる。
【0063】
本発明のアクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
【0064】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0065】
アクリル樹脂の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系およびアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁または乳化重合では30〜100℃、塊状または溶液重合では80〜160℃で実施しうる。さらに、生成共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
【0066】
アクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0067】
(環状オレフィン樹脂)
本発明においては、環状オレフィン樹脂を用いることも好ましい。環状オレフィン樹脂としては、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系樹脂は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
【0068】
ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体又はそれらの水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体又はそれらの水素化物等を挙げることができる。
【0069】
これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。
【0070】
ノルボルネン構造を有する単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
極性基の種類としては、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン基などが挙げられる。
【0072】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類及びその誘導体、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエン及びその誘導体などが挙げられる。
【0073】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に(共)重合することにより得ることができる。
【0074】
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンなどが挙げられる。これらの単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0075】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合することにより得ることができる。
【0076】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素添加物、ノルボルネン構造を有する単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環共重合体の水素添加物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の水素添加物、およびノルボルネン構造を有する単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体との付加共重合体の水素添加物は、これらの重合体の溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素添加触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を好ましくは90%以上水素添加することによって得ることができる。
【0077】
ノルボルネン系樹脂の中でも、繰り返し単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの繰り返し単位の含有量が、ノルボルネン系樹脂の繰り返し単位全体に対して90質量%以上であり、かつ、Xの含有割合とYの含有割合との比が、X:Yの質量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような樹脂を用いることにより、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れる位相差フィルム(光学フィルム)を得ることができる。
【0078】
本発明に用いる環状オレフィン樹脂の分子量は使用目的に応じて適宜選定される。溶媒としてシクロヘキサン(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン)を用いるゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常20,000〜150,000である。好ましくは25,000〜100,000、より好ましくは30,000〜80,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、フィルムの機械的強度および成型加工性とが高度にバランスされ好適である。
【0079】
環状オレフィン樹脂のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択されればよい。耐久性及び延伸加工性の観点から、好ましくは130〜160℃、より好ましくは135〜150℃の範囲である。
【0080】
環状オレフィン樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、緩和時間、生産性等の観点から、1.2〜3.5、好ましくは1.5〜3.0、さらに好ましくは1.8〜2.7である。
【0081】
本発明に用いる環状オレフィン樹脂は、光弾性係数の絶対値が10×10-12Pa-1以下であることが好ましく、7×10-12Pa-1以下であることがより好ましく、4×10-12Pa-1以下であることが特に好ましい。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、C=Δn/σで表される値である。環状オレフィン樹脂の光弾性係数が10×10-12Pa-1を超えると、延伸フィルムの面内リターデーションのバラツキが大きくなるおそれがある。
【0082】
本発明において、環状オレフィン樹脂には、実質的に粒子を含まないことが好ましい。ここで、実質的に粒子を含まないとは、環状オレフィン樹脂からなるフィルムへ粒子を添加しても、未添加状態からのヘイズの上昇巾が0.05%以下の範囲である量までは許容できることを意味する。特に、脂環式ポリオレフィン樹脂は、多くの有機粒子や無機粒子との親和性に欠けるため、上記範囲を超えた粒子を添加した環状オレフィン樹脂フィルムを延伸すると、空隙が発生しやすく、その結果として、ヘイズの著しい低下が生じるおそれがある。
【0083】
本発明において、環状オレフィン樹脂に荷重たわみ温度調整剤を入れることにより、上述したように優れた延伸適性を持たせ、高温下における光学特性の変化を改良した位相差フィルムを得ることができる。
【0084】
これは、樹脂のガラス転位温度Tg(℃)と、荷重たわみ温度Tt(℃)との差が大きくなる事により、低温においてもフィルムに無理な力がかかることなく延伸ができ、その結果、リターデーションのムラが大幅に低減され、またリターデーションの熱緩和特性も改良されると考えられる。
【0085】
具体的には、TgとTtとの差が、Tg−Tt=5〜30(℃)であり、より好ましくは10〜30(℃)である。
【0086】
なお、本発明の熱可塑性フィルムには、上記の樹脂以外の高分子材料やオリゴマーを適宜選択して混合してもよい。高分子材料やオリゴマーとしては、セルロースエステル樹脂等と相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上であることが好ましい。セルロースエステル以外の高分子材料やオリゴマーの少なくとも1種以上を混合する目的は、加熱溶融時の粘度制御やフィルム加工後のフィルム物性を向上するために行う意味を含んでいる。
【0087】
(酸化防止剤)
本発明においては、熱可塑性樹脂とイオン性液体とを含む樹脂混合物が酸化防止剤を含有することで、ブリードアウトを抑制し寸法安定性を向上させる。
【0088】
この作用機構の詳細は不明であるが、例えばセルロースエステルの場合、加熱による置換基の脱離が起こるため、イオン性液体との相溶性を悪化させてしまうのではないかと推測している。
【0089】
好ましい酸化防止剤はリン系またはフェノール系であり、リン系とフェノール系を同時に組み合わせるとより好ましい。
【0090】
以下、本発明において好適に用いることができる酸化防止剤について説明する。
【0091】
〈フェノール系酸化防止剤〉
本発明においては、下記一般式(AO1)で表されるフェノール系の酸化防止剤を使用することができる。
【0092】
【化3】

【0093】
一般式(AO1)中、R1、R2及びR3は、さらに置換されているかまたは置換されていないアルキル置換基を表す。ヒンダードフェノール化合物の具体例には、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシルβ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミドN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリトリトール−テトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。上記タイプのヒンダードフェノール化合物は、例えば、Ciba Specialty Chemicalsから、“Irganox1076”及び“Irganox1010”という商品名で市販されている。
【0094】
〈リン系酸化防止剤〉
本発明において用いることができるリン系酸化防止剤としては、ホスファイト(phosphite)、ホスホナイト(phosphonite)、ホスフィナイト(phosphinite)、または第3級ホスファン(phosphane)等のリン系化合物を使用することができる。リン系化合物のとしては、従来既知の化合物を用いることができる。例えば、特開2002−138188号、特開2005−344044号段落番号0022〜0027、特開2004−182979号段落番号0023〜0039、特開平10−306175号、特開平1−254744号、特開平2−270892号、特開平5−202078号、特開平5−178870号、特表2004−504435号、特表2004−530759号、および特願2005−353229号公報の明細書中に記載されているものが好ましい。
【0095】
好ましいリン系化合物としては、下記の一般式で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
【化4】

【0097】
【化5】

【0098】
一般式(I)から(V)のホスファイト、一般式(VI)から(XII)のホスホナイト、一般式(XIII)から(XV)のホスフィナイト、および一般式(XVI)から(XIX)のホスファンが挙げられる。それぞれの基は互いに独立に、R1は、C1〜C24のアルキル(直鎖もしくは分岐、ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C5〜C30のシクロアルキル(ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C1〜C30のアルキルアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール(C1〜C18のアルキル(直鎖もしくは分岐)、C5〜C12のシクロアルキルもしくはC1〜C18のアルコキシ基で置換された)である。
【0099】
2は、H、C1〜C24のアルキル(直鎖もしくは分岐、ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C5〜C30のシクロアルキル(ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C1〜C30のアルキルアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール(C1〜C18のアルキル(直鎖もしくは分岐)、C5〜C12のシクロアルキルもしくはC1〜C18のアルコキシ基で置換された)である。
【0100】
3は、C1〜C30のアルキレンタイプのn価の基(直鎖もしくは分岐、ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C1〜C30のアルキリデン(ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C5〜C12のシクロアルキレンもしくはC6〜C24のアリーレン(C1〜C18のアルキル(直鎖もしくは分岐)、C5〜C12のシクロアルキルもしくはC1〜C18のアルコキシで置換された)である。
【0101】
4は、C1〜C24のアルキル(直鎖もしくは分岐、ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C5〜C30のシクロアルキル(ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C1〜C30のアルキルアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール(C1〜C18のアルキル(直鎖もしくは分岐)、C5〜C12のシクロアルキルもしくはC1〜C18のアルコキシ基で置換された)である。
【0102】
5は、C1〜C24−アルキル(直鎖もしくは分岐、ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C5〜C30のシクロアルキル(ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C1〜C30のアルキルアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール(C1〜C18のアルキル(直鎖もしくは分岐)、C5〜C12のシクロアルキルもしくはC1〜C18のアルコキシ基で置換された)である。
【0103】
6は、C1〜C24のアルキル(直鎖もしくは分岐、ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C5〜C30のシクロアルキル(ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C1〜C30のアルキルアリール、C6〜C24−アリールもしくはヘテロアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール(C1〜C18のアルキル(直鎖もしくは分岐)、C5〜C12のシクロアルキルもしくはC1〜C18のアルコキシ基で置換された)である。
【0104】
Aは、直接結合、C1〜C30のアルキリデン(ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、>NH、>NR1、−S−、>S(O)、>S(O)2、−O−である。
【0105】
Dは、C1〜C30のアルキレンタイプのq価の基(直鎖もしくは分岐、ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C1〜C30のアルキリデン(ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C5〜C12のシクロアルキレン(ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)あるいはC6〜C24のアリーレン(C1〜C18のアルキル(直鎖もしくは分岐)、C5〜C12−シクロアルキルもしくはC1〜C18のアルコキシで置換された)、−O−、−S−である。
【0106】
Xは、Cl、Br、F、OH(結果として生じる互変異性形>P(O)Hを含む)である。
【0107】
kは0から4であり、nは1から4であり、mは0から5であり、pは0もしくは1であり、qは1から5であり、rは3から6である。
【0108】
式(XIX)の基P−R6は、Pから発する結合上の*により表されるホスファシクル(phosphacycle)の構成要素である。
【0109】
このような化合物のうち特に好ましい化合物として以下の化合物が挙げられる。またこれらの化合物は2種以上併用して使用してもよい。リン系化合物の添加量は、セルロースエステル100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜3質量部である。
【0110】
【化6】

【0111】
【化7】

【0112】
【化8】

【0113】
【化9】

【0114】
【化10】

【0115】
【化11】

【0116】
【化12】

【0117】
【化13】

【0118】
【化14】

【0119】
【化15】

【0120】
【化16】

【0121】
【化17】

【0122】
【化18】

【0123】
上記の例に加えて、本発明において用いることができるリン系化合物の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピン、トリデシルホスファイト等のモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物;トリフェニルホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4′−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4′−ジイルビスホスホナイト等のホスホナイト系化合物;トリフェニルホスフィナイト、2,6−ジメチルフェニルジフェニルホスフィナイト等のホスフィナイト系化合物;トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン系化合物;等が挙げられる。
【0124】
上記タイプのリン系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“SumilizerGP”、株式会社ADEKAから“ADK STAB PEP−24G”、“ADK STAB PEP−36”及び“ADK STAB 3010”、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社から“IRGAFOS P−EPQ”、堺化学工業株式会社から“GSY−P101”という商品名で市販されている。
【0125】
(その他の酸化防止剤)
また、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3、5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等の耐熱加工安定剤、特公平08−27508号記載の3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン系化合物、3,3′−スピロジクロマン系化合物、1,1−スピロインダン系化合物、モルホリン、チオモルホリン、チオモルホリンオキシド、チオモルホリンジオキシド、ピペラジン骨格を部分構造に有する化合物、特開平03−174150号記載のジアルコキシベンゼン系化合物等の酸素スカベンジャー等が挙げられる。これら酸化防止剤の部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、可塑剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0126】
(その他添加剤)
本発明に係る熱可塑性フィルムには、上記の化合物等の他に、目的に応じて種々の化合物等を添加剤として含有させることができる。例えば、光学フィルムとする場合には、酸捕捉剤、光安定剤、紫外線吸収剤、リターデーション制御剤等を含有させることができる。以下、各種添加剤について説明する。
【0127】
〈酸捕捉剤〉
酸捕捉剤としては、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸捕捉剤としてのエポキシ化合物を含んでなるのが好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油などの組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。
【0128】
〈光安定剤〉
光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物が挙げられ、これは既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。更に、特開2007−63311号公報に記載されている光安定剤を用いることができる。
【0129】
〈紫外線吸収剤〉
紫外線吸収剤としては、偏光子や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
【0130】
ベンゾトリアゾール系化合物の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(1−メチル−1−フェニルエチル)−5′−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0131】
また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)326、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)900、チヌビン(TINUVIN)928、チヌビン(TINUVIN)360(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、LA31(ADEKA社製)、Sumisorb250(住友化学社製)、RUVA−100(大塚化学製)が挙げられる。
【0132】
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
本発明においては、紫外線吸収剤は0.1〜20質量%添加することが好ましく、さらに0.5〜10質量%添加することが好ましく、さらに1〜5質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
【0134】
〈リターデーション制御剤〉
リターデーションを調節するために添加する化合物としては、欧州特許911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物をリターデーション制御剤として使用することもできる。また二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環が特に好ましい。
【0135】
〈マット剤〉
本発明に係る熱可塑性樹脂フィルムは、滑り性を付与するためにマット剤等の微粒子を添加することができ、微粒子としては、無機化合物の微粒子又は有機化合物の微粒子が挙げられる。マット剤はできるだけ微粒子のものが好ましく、微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることができる。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低くできるので好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。
【0136】
表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどが挙げられる。微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れる。
【0137】
また、微粒子の二次粒子の平均粒径は0.05〜1.0μmの範囲である。好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は0.001〜1.0μmが好ましく、更に好ましくは、0.03〜0.5μmである。これらの微粒子はセルロースエステルフィルム中では、セルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させる為に好ましく用いられる。微粒子のセルロースエステル中の含有量はセルロースエステルに対して0.005〜2.0質量%が好ましい。
【0138】
二酸化ケイ素の微粒子としては、日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600、NAX50、日本触媒社製のシーホスターKE−P10、KE−P30、KE−P50、KE−P100、KE−P150、KE−P200等を挙げることができ、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812、NAX50、シーホスターKE−P30、KE−P50、KE−P100である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えば、アエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用できる。
【0139】
上記マット剤として用いられるフィルム中の微粒子の存在は、別の目的としてフィルムの強度向上のために用いることもできる。また、フィルム中の上記微粒子の存在は、熱可塑性樹脂フィルムを構成するセルロースエステル等の樹脂自身の配向性を向上することも可能である。
【0140】
(熱可塑性樹脂フィルムの製造方法)
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、溶融流延法を用いることを特徴とする。
【0141】
溶液流延法において、従来使用されてきた溶媒(例えば塩化メチレン等)を用いずに、加熱溶融する溶融流延による成形法は、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度等に優れる偏光板保護フィルムを得るためには、溶融押出し法が優れている。
【0142】
以下、典型的な例として、本発明に係る熱可塑性樹脂フィルムをセルロースエステル樹脂を用いて光学フィルムとして製造する場合について説明する。
【0143】
本発明の光学フィルムの巻きの長さとしては、500〜5000mが好ましく、1000〜5000mがより好ましい。幅手両端部には膜厚の0〜25%の高さのナーリングを設けて巻き取ることも好ましい。
【0144】
このような非常に長大なフィルムを安定して生産するためには、溶融製膜中に分子量をいかに低下させないかが重要である。分子量が低下すると、フィルムが脆くなり、破断が発生しやすくなり、上記のような長さのフィルムを得ることは難しい。分子量の低下を防ぐためには、前述のような安定化剤を添加するのみならず、材料の購入前または合成時に混入している溶媒や不純物や、酸素・水分などを、溶融プロセス前になるべく除去しておくことが重要である。溶融流延法による製膜は、溶液流延法と比べるとその製膜時の温度が著しく高いため、酸素や水分、或いは化学的に活性な不純物が混入していると、セルロースエステルの分解が促進されてしまうためである。
【0145】
前記水分や不純物等の揮発成分は、製膜する前に、または溶融前に除去されていることが好ましい。この除去する方法は、乾燥による方法が適用でき、加熱法、減圧法、加熱減圧法等の方法で行うことができる。乾燥は空気中または不活性ガスとして窒素或いはアルゴン等の不活性ガスを選択した雰囲気下で行ってもよい。これらの不活性ガスは水や酸素の含有量が低いことが好ましい。酸素濃度は0.1%以下であることが好ましく、ガスの露点は−30℃以下であることが好ましい。最も好ましくは、実質的に含有しないことである。これらの公知の乾燥方法を行うとき、フィルム構成材料が分解しない温度領域で行うことがフィルムの品質上好ましい。例えば、前記乾燥工程で除去した後の残存する水分または不純物は、各々フィルム構成材料の全体に質量に対して1質量%以下とすることが好ましく、更に好ましくは0.5質量%以下にすることである。
【0146】
特にセルロースエステル樹脂の水分は、0.3質量%未満のものが好ましく用いられる。これらの特性値はASTM−D817−96により測定することができる。セルロースエステルは、更に熱処理することで水分を低減させて0.1〜1000ppmとして用いることが好ましい。
【0147】
また残留有機不純物量は、ヘッドスペースガスクロ法により測定できる。即ち、既知量のセルロースエステルフィルムを密閉容器内で120℃で20分間加熱し、その密閉容器内の気相に含まれる有機溶媒をガスクロマトグラフにより定量する。この結果から残留有機溶媒量(%)を算出することができる。
【0148】
フィルム構成材料は、製膜前に乾燥することにより、揮発成分の発生を削減することができ、樹脂単独、または樹脂とフィルム構成材料の内、樹脂以外の少なくとも1種以上の混合物または相溶物に分割して乾燥することができる。好ましい乾燥温度は80℃以上、かつ乾燥する材料のTgまたは融点以下であることが好ましい。材料同士の融着を回避する観点を含めると、より好ましくは100〜(Tg−5)℃、更に好ましくは110〜(Tg−20)℃である。好ましい乾燥時間は0.5〜24時間、より好ましくは1〜18時間、更に好ましくは1.5〜12時間である。
【0149】
乾燥は1気圧以下で行うことが好ましく、特に真空〜1/2気圧に減圧しながら行うことが好ましい。乾燥は、樹脂等の材料は適度に撹拌しながら行うことが好ましく、乾燥容器内で下部より乾燥空気もしくは乾燥窒素を送り込みながら乾燥させる流動床方式が、より短時間で必要な乾燥を行うことができるため好ましい。
【0150】
乾燥工程は2段階以上に分離してもよく、例えば予備乾燥工程による材料の保管と、製膜する直前〜1週間前の間に行う直前乾燥を行った素材を用いて製膜してもよい。
【0151】
乾燥工程によって、フィルム形成材料中の水分・不純物等の揮発性成分を除去した後、フィルム形成材料は個別に、或いは事前に混合/ペレット化されて、加熱されたバレルに送られ、溶融・流動化したのち、Tダイによってシート状に押出され、例えば、静電印加法等により冷却ドラム或いはエンドレスベルト等に密着させ、冷却固化されてシート状に固化し、未延伸シートを得る。これらの工程は、流延工程と呼ばれる。
【0152】
得られる光学フィルムの物性を鑑みると、溶融温度(バレル内の温度)は150〜300℃の範囲であることが好ましく、180℃〜260℃であることがより好ましく、更に好ましくは190℃〜220℃である。本発明の好ましい溶融粘度は1200Pa・s以下が好ましく、より好ましくは1000Pa・s以下である。冷却ドラムの温度は、フィルム内の構造の均一性、生産性等の観点から、80〜150℃に維持されていることが好ましい。
【0153】
本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとした場合、該保護フィルムの厚さは、透湿性、薄型軽量の目的、リターデーションの発現性等の観点から、10〜500μmが好ましい。特に10〜100μmが好ましく、20〜80μmが好ましく、特に好ましくは30〜60μmである。
【0154】
また、本発明の熱可塑性樹脂フィルムは位相差波長分散性を向上させる。面内位相差(R0)の480nm/630nmで求めた波長分散値としては、0.900〜0.940が好ましく、より好ましくは0.910〜0.930である。
【0155】
尚、溶液流延法ではフィルムの厚みが増えると乾燥(溶剤除去)負荷が著しく増加してしまうが、本発明では乾燥(溶剤除去)工程が不要なため、膜厚が厚いフィルムを生産性よく製造することができる。そのため、必要な位相差の付与や透湿性の低減等の目的に応じてフィルムの厚みを増やすことが今まで以上にやりやすくなるという利点がある。また、膜厚の薄いフィルムであっても、このような厚手のフィルムを延伸することで高い生産性で生産することができると言う効果を有する。尚、延伸した際のフィルムの膜厚は、延伸倍率と反比例して薄くなる。例えば、未延伸シートが200μであった場合、2倍に延伸すると100μのフィルムが得られる。
【0156】
また、光学フィルム支持体の膜厚変動は、±3%、更に±1%、更に好ましくは±0.1%の範囲とすることが好ましい。これらの膜厚変動は、延伸することによって低減することができる。
【0157】
近年の液晶ディスプレイの大型化を鑑みると、偏光板保護フィルムの幅は1m以上が好ましい。他方で、4mを超えると装置が大型化し、また搬送が困難となるため、光学フィルムの幅は1〜4mが好ましく、特に好ましくは1.4〜2mである。バレルから流動してきたセルロースエステルを、1.4m以上の幅手に均一にダイから押出すことは困難であるため、1.4m以上の幅を有するフィルムは、横延伸しなければ得ることは困難である。
【0158】
〈延伸工程〉
セルロースエステルを用いた光学フィルムは、溶融温度を低くすることができ、溶融押出し後のセルロースエステルの分子量低下を抑えることができるため、搬送時の破断が起こりにくく、高収率かつ高速に製造できる。また、溶解時の粘度が低いためか未延伸であっても平面性の良好なフィルムが得られ、更に高倍率延伸が可能なため、より平面性に優れた光学フィルムを得ることができる。更に光学フィルムを生産性よく製造することができる。
【0159】
バレルから押出され、冷却ドラムに密着させられた後、冷却ドラムから剥離されたフィルムは、横延伸や縦延伸、或いは特開2004−226465号公報に開示されているような、斜め方向の延伸を行うことによって、平面性を向上させ、かつ生産速度を向上させることができる。これらの延伸は、複数回行っても良く、複数回行う際には、同時であっても逐次であっても良い。複数回の延伸を行った際には、全ての延伸倍率の積が、最終延伸倍率となる。例えば、2倍の延伸を2回行えば、最終延伸倍率は4倍となる。
【0160】
尚セルロースエステルは、延伸された方向に対して屈折率が上昇し、遅相軸が形成される。従って、最終的に得られるフィルムが満たすべき光学特性の範囲内で延伸倍率は決定される。
【0161】
フィルム面内の位相差をなるべく低減したい場合には、2軸延伸することが好ましい。1回目の延伸軸と直交する方向に、同倍率程度の延伸を行うにより、1回目の延伸による複屈折の発生がキャンセルされ、等方性のフィルムを得ることができる。
【0162】
他方で、液晶ディスプレイの視野角を拡大する効果のあるような位相差フィルムを得る場合には、1回目の延伸と2回目の延伸の比率を変化させ、どちらか一方の延伸倍率が他方の延伸倍率よりも大きくなるように延伸することで光学異方性のフィルムを得ることができる。その際の幅手方向と長手方向との延伸倍率比は1.1〜2.0が好ましく、より好ましくは1.2〜1.5である。
【0163】
複数回の延伸を行う際には、長手方向から延伸しても、幅手方向から延伸しても良いが、幅手方向の延伸工程を経たのちにはフィルムの搬送幅が大きくなり、搬送装置の大型化を招くため、長手方向の延伸の後に幅手方向の延伸を行うことが好ましい。
【0164】
また、光学フィルムの最終延伸倍率は1.5〜4.0倍であることが好ましい。1.5倍未満では、得られるフィルムの平面性に劣ることがある。他方、4.0倍よりも大きく延伸することは、本発明のセルロースエステルを用いても困難であり、延伸工程中で破断が起きる可能性が高くなるため好ましくない。より好ましくは2.0〜3.0倍に延伸されたものである。
【0165】
最初に、長手方向(MD)の延伸方法について説明する。
【0166】
バレルから押出され、冷却ドラムに密着させられた後、冷却ドラムから剥離されたフィルムは、1つまたは複数のロール群及び/または赤外線ヒーター等の加熱装置を介して、再度加熱して長手方向に一段または多段MD延伸してもよい。
【0167】
延伸する際は、本発明のフィルムのガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃の範囲内で加熱して搬送方向(長手方向;MD)或いは幅手方向(TD)に延伸することが好ましい。(Tg−20)〜(Tg+20)℃の温度範囲内で横延伸し次いで熱固定することが好ましい。また延伸工程の後、緩和処理を行うことも好ましい。
【0168】
光学フィルムのTgは、フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって制御することができる。本発明の用途においてはフィルムの乾燥時のTgは110℃以上が好ましく、更に120℃以上が好ましい。これは液晶表示装置に本発明の光学フィルムを用いた場合、該フィルムのTgが上記よりも低いと、使用環境の温度や湿度、バックライトの熱による影響によって、フィルム内部に固定された分子の配向状態に影響を与え、リターデーション値及びフィルムとしての寸法安定性や形状に大きな変化を与える可能性が高くなる。また、フィルムの形状を保持できなくなることがある。逆に該フィルムのTgが高過ぎると、フィルム構成材料の分解温度に近づくため製造しにくくなり、フィルム化するときに用いる材料自身の分解によって揮発成分の存在や着色を呈することがある。従ってガラス転移温度は180℃以下、より好ましくは150℃以下であることが好ましい。このとき、フィルムのTgはJIS K7121に記載の方法などによって求めることができる。
【0169】
次に、幅手方向(TD)の延伸方法について説明する。
【0170】
TD延伸する場合、2つ以上に分割された延伸領域で温度差を1〜50℃の範囲で順次昇温しながら横延伸すると幅方向の物性の分布が低減でき好ましい。更に横延伸後、フィルムをその最終TD延伸温度以下でTg−40℃以上の範囲に0.01〜5分間保持すると幅方向の物性の分布が更に低減でき好ましい。
【0171】
熱固定は、その最終TD延伸温度より高温で、Tg−20℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定する。この際、2つ以上に分割された領域で温度差が1〜100℃となる範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。
【0172】
熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、横方向及び/または縦方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。また冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。尚、冷却速度は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとした時、(T1−Tg)/tで求めた値である。
【0173】
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するセルロースエステルや可塑剤等の添加剤種により異なるので、得られた二軸延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整することにより決定すればよい。
【0174】
本発明に係る光学フィルムの面内リターデーション値(Ro)及び厚さ方向のリターデーション値(Rth)は、偏光板保護フィルムとして用いる場合には0≦Ro、Rth≦70nmであることが好ましい。より好ましくは0≦Ro≦20nmかつ0≦Rth≦50nmであリ、より好ましくは0≦Ro≦10nmかつ0≦Rth≦30nmである。位相差フィルムとして用いる場合には、30≦Ro≦100nmかつ70≦Rth≦400nmであリ、より好ましくは35≦Ro≦65nmかつ90≦Rth≦180nmである。また、Rthの変動や分布の幅は±10%未満であることが好ましく、より好ましくは±5%未満である。更に好ましくは±1%未満であることが好ましく、最も好ましくはRthの変動がないことである。
【0175】
尚リターデーション値Ro、Rthは以下の式によって求めることができる。
【0176】
Ro=(nx−ny)×d
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
ここにおいて、dはフィルムの厚み(nm)、屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう)、ny(フィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率)、nz(厚み方向におけるフィルムの屈折率)である。
【0177】
尚、リターデーション値(Ro)、(Rth)は自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmで求めることができる。
【0178】
また、遅相軸はフィルムの幅手方向±1°もしくは長手方向±1°にあることが好ましい。より好ましくは幅手方向または長手方向に対して±0.7°、更に好ましくは幅手方向または長手方向に対して±0.5°である。このような範囲とすることで、得られる液晶ディスプレイのコントラストを高めることができる。
【0179】
本発明の光学フィルムは製膜工程で実質的に溶媒を使用することがないため、製膜後巻き取られた光学フィルムに含まれる残留有機溶媒量は安定して0.1質量%未満であり、これによって従来以上に安定した平面性とRthをもつ光学フィルムを提供することが可能である。特に100m以上の長尺の巻物においても安定した平面性とRthを持つ光学フィルムを提供することが可能となる。該光学フィルムは巻きの長さについては特に制限はなく、1500m、2500m、5000mであっても好ましく用いられる。
【0180】
溶液流延法で作製された光学フィルムの残留有機溶媒量(%)を0.1質量%以下とすることは困難であり、そのためには長い乾燥工程が必要であるが、この方法によれば安いコストで極めて低い残留有機溶媒含有量の光学フィルムを得ることができ、光学フィルムとして優れた特性を持つセルロースエステルフィルムを得ることができる。
【0181】
また、製膜工程において、カットされたフィルム両端のクリップ把持部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理を行った後、返材として再利用してもよい。
【0182】
(機能性層)
光学フィルム製造に際し、延伸の前及び/又は後で帯電防止層、ハードコート層、反射防止層、易滑性層、易接着層、防眩層、バリアー層、光学補償層等の機能性層を塗設してもよい。特に、帯電防止層、ハードコート層、反射防止層、易接着層、防眩層及び光学補償層から選ばれる少なくとも1層を設けることが好ましい。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことができる。
【0183】
また、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロース樹脂を含む組成物を共押出しして、積層構造のセルロースエステルフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースエステルフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、又はスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多く入れることができ、コア層のみに入れてもよい。又、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えば、スキン層に低揮発性の可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。スキン層とコア層のTgが異なっていても良く、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。又、溶融流延時のセルロースエステルを含む溶融物の粘度もスキン層とコア層で異なっていても良く、スキン層の粘度>コア層の粘度でも、コア層の粘度≧スキン層の粘度でもよい。
【0184】
(偏光板)
光学フィルムを用いた偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られた光学フィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に完全鹸化ポリビニルアルコール水溶液を用いて本発明の光学フィルムを貼合する。偏光子の両面に本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして貼り合わせてもよい。
【0185】
尚、従来の偏光板保護フィルムとしては、コニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC12UR、KC8UXW−H、KC8UYW−HA、KC8UX−RHA(コニカミノルタオプト(株)製)等のセルロースエステルフィルムが用いることができる。
【0186】
また、上記アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、同6−118232号に記載されているような易接着加工を施して偏光板加工を行ってもよい。
【0187】
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶セルへ貼合する面側に用いられる。
【0188】
(液晶表示装置)
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムは平面性・リターデーションの均一性が高いため、どの部位に配置しても優れた表示性が得られる。液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには、クリアハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられた偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが好ましい。また光学補償層を設けた偏光板保護フィルムや、延伸操作等によりそれ自身に適切な光学補償能を付与した偏光板保護フィルムの場合には、液晶セルと接する部位に配置することで、優れた表示性が得られる。特にマルチドメイン型の液晶表示装置、より好ましくは複屈折モードによってマルチドメイン型の液晶表示装置に使用することが本発明の効果をより発揮することができる。
【0189】
マルチドメイン化とは、1画素を構成する液晶セルを更に複数に分割する方式であり、視野角依存性の改善・画像表示の対称性の向上にも適しており、種々の方式が報告されている「置田、山内:液晶,6(3),303(2002)」。該液晶表示セルは、「山田、山原:液晶,7(2),184(2003)」にも示されており、これらに限定される訳ではない。
【0190】
表示セルの表示品質は、人の観察において左右対称であることが好ましい。従って、表示セルが液晶表示セルである場合、実質的に観察側の対称性を優先してドメインをマルチ化することができる。ドメインの分割は、公知の方法を採用することができ、2分割法、より好ましくは4分割法によって、公知の液晶モードの性質を考慮して決定できる。
【0191】
本発明の偏光板は垂直配向モードに代表されるMVA(Multi−domain Vertical Alignment)モード、特に4分割されたMVAモード、電極配置によってマルチドメイン化された公知のPVA(Patterned Vertical Alignment)モード、電極配置とカイラル能を融合したCPA(Continuous Pinwheel Alignment)モードに効果的に用いることができる。また、OCB(Optical Compensated Bend)モードへの適合においても光学的に二軸性を有するフィルムの提案が開示されており「T.Miyashita,T.Uchida:J.SID,3(1),29(1995)」、本発明の偏光板によって表示品質において、本発明の効果を発現することもできる。本発明の偏光板を用いることによって本発明の効果が発現できれば、液晶モード、偏光板の配置は限定されるものではない。
【0192】
該液晶表示装置はカラー化及び動画表示用の装置としても高性能であるため、本発明に係る光学フィルムを用いた液晶表示装置、特に大型の液晶表示装置の表示品質は、疲れにくく忠実な動画像表示が可能となる。
【実施例】
【0193】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0194】
(実施例1)
〈セルロースエステル樹脂の合成〉
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)30kgに酢酸60kg、プロピオン酸20kgを加え、54℃で30分撹拌した。混合物を冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸50kg、無水プロピオン酸50kg、硫酸1.2gを加えてエステル化を行った。エステル化において、40℃を超えないように調温しながら、撹拌を150分行った。反応終了後、酢酸30gと水10gの混合液を20分かけて滴下して、過剰の無水物を加水分解した。反応液の温度を40℃に保持しながら、酢酸90gと水30gを加えて1時間撹拌した。酢酸マグネシウム2gを含有した水溶液中に混合物をあけてしばらく撹拌した後に、ろ過、乾燥し、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.41、プロピオニル基置換度1.32、アシル基総置換度2.73、数平均分子量Mn=79124、重量平均分子量Mw=211307、Mw/Mn=2.67)を得た。
【0195】
〔セルロースエステルフィルムの製造〕
セルロースエステル樹脂(CAP)として上記セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度=1.41、プロピオニル基置換度=1.32、総アシル基置換度=2.73)100質量部、フェノール系酸化防止剤としてSumilizerGS(住友化学社製)の0.3質量部、フェノール系化合物として、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](市販品として、Irganox1010(チバスペシャルティケミカルズ社製))0.5質量部、リン系化合物としてテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト(市販品として、GSY−P101(堺化学工業社製))0.3質量部、紫外線吸収剤としてTinuvin−928(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)2質量部、イオン性液体としてIL−P14 (広栄化学工業(株)製)10質量部、滑り剤1としてシーホスターKE−P30(日本触媒製、一次粒径0.3μm)0.02質量部を混合し、60℃5時間減圧乾燥した。このセルロースエステル組成物を、2軸式押出し機を用いて235℃で溶融混合した後乾燥しペレットとした。この際、混錬時の剪断による発熱を抑えるためニーディングディスクは用いずオールスクリュータイプのスクリューを用いた。また、ベント孔から真空引きを行い、混錬中に発生する揮発成分を吸引除去した。尚、押出し機に供給するフィーダーやホッパー、押出し機ダイスから冷却槽間は、乾燥窒素ガス雰囲気として、樹脂への水分の吸湿を防止した。
【0196】
フィルム製膜は図1に示す製造装置で行った。
【0197】
押出し機1に上記ペレットを供給部180℃の温度でホッパーより供給しながら、加熱溶融時の樹脂組成物の温度が250℃になるよう押出し機1の溶融部の温度を設定してセルロースエステル樹脂溶融物とした。
【0198】
更にギアポンプを介して、目開き5μmのリーフ型ディスクフィルターを装着したフィルター2を通し異物、不溶物を除去した。
【0199】
第1冷却ロール5、第2冷却ロール7及び第3冷却ロール8は直径40cmのステンレス製とし、表面にハードクロムメッキを施した。又、内部には温度調整用のオイルを循環させて、ロール表面温度を制御した。弾性タッチロール6は、直径20cmとし、内筒と外筒はステンレス製とし、外筒の表面にはハードクロムメッキを施した。外筒の肉厚は2mmとし、内筒と外筒との間の空間に温度調整用のオイルを循環させて弾性タッチロールの表面温度を制御した。
【0200】
ダイス4の出口における樹脂組成物の温度が270℃になるようダイス温度を調整し、表面温度130℃の第1冷却ロール上にフィルム状に溶融押し出しして、ドロー比20でキャストフィルムを得た。この際、ダイスのリップクリアランス1.5mm、リップ部平均表面粗さRa0.01μmのダイスを用いた。
【0201】
更に、第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールを線圧10kg/cmで押圧した。押圧時のタッチロール側のフィルム温度は、180℃±1℃であった。(ここでいう押圧時のタッチロール側のフィルム温度は、第1冷却ロール上のタッチロールが接する位置のフィルムの温度を、非接触温度計を用いて、タッチロールを後退させてタッチロールがない状態で50cm離れた位置から幅方向に10点測定したフィルム表面温度の平均値を指す。)このフィルムのガラス転移温度Tgは136℃であった。(セイコー(株)製、DSC6200を用いてDSC法(窒素中、昇温温度10℃/分)によりダイスから押し出されたフィルムのガラス転移温度を測定した。)
尚、弾性タッチロールの表面温度は130℃、第2冷却ロールの表面温度は100℃とした。弾性タッチロール、第1冷却ロール、第2冷却ロール及び第3冷却ロールの各ロールの表面温度は、ロールにフィルムが最初に接する位置から回転方向に対して90°手前の位置のロール表面の温度を非接触温度計を用いて幅方向に10点測定した平均値を各ロールの表面温度とした。
【0202】
得られたフィルムを、160℃に加熱してダンサーロール11により、長手方向に1.01倍延伸し、続いて予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンター(延伸装置12)に導入し、幅方向に160℃で1.20倍延伸した後、幅方向に2%緩和しながら70℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落として、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施し、幅1430mmにスリットした膜厚80μmのセルロースエステルフィルム1を作製した。
【0203】
(実施例2〜12,及び比較例1〜3)
以下、実施例1における熱可塑性樹脂(セルロースエステル樹脂)、フェノール系化合物(Irganox1010)、リン系化合物(GSY−P101)、フェノール系酸化防止剤(Smilizer−GS)、紫外線吸収剤(Tinuvin−900)、イオン性液体(IL−P14)を下記処方及び表中に示した樹脂、各種化合物、それらの量に変更して、実施例及び比較例とした。
【0204】
〈実施例2,3〉
イオン性液体を表に示したように変更した以外実施例1と同じである。
【0205】
〈比較例1〉
セルロースエステル樹脂(CAP) 90質量部
Irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5質量部
GSY−P101(堺化学工業社製) 0.3質量部
Smilizer−GS(住友化学製) 0.3質量部
Tinuvin−900(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 2質量部
〈実施例4〉
環状オレフィン樹脂(COP) 90質量部
Irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5質量部
GSY−P101(堺化学工業社製) 0.3質量部
Smilizer−GS(住友化学製) 0.3質量部
Tinuvin−900(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 2質量部
IL−P14(広栄化学工業(株)製) 10質量部
〈実施例5〉
アクリル樹脂(BR85) 90質量部
Irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5質量部
GSY−P101(堺化学工業社製) 0.3質量部
Smilizer−GS(住友化学製) 0.3質量部
Tinuvin−900(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 2質量部
IL−P14 (広栄化学工業(株)製) 10質量部
〈実施例6〉
セルロースエステル樹脂(CAP) 85質量部
Irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5質量部
GSY−P101(堺化学工業社製) 0.3質量部
Smilizer−GS(住友化学製) 0.3質量部
Tinuvin−900(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 2質量部
IL−P14(広栄化学工業(株)製) 10質量部
サッカロースベンゾエート 5質量部
〈実施例7〉
セルロースエステル樹脂(CAP) 88質量部
Irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5質量部
GSY−P101(堺化学工業社製) 0.3質量部
Smilizer−GS(住友化学製) 0.3質量部
Tinuvin−900(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 2質量部
IL−P14(広栄化学工業(株)製) 10質量部
サッカロースベンゾエート 2質量部
〈実施例8〜11〉
セルロースエステル樹脂(CAP) 90質量部
Tinuvin−900(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 2質量部
IL−P14 (広栄化学工業(株)製) 10質量部
酸化防止剤(表中に記載) 1.1質量部
〈実施例12〉
実施例8〜11の組成にイオウ系酸化防止剤(3−ラウリルチオプロピオネート)を0.3質量部加えた。
【0206】
〈比較例3〉
セルロースエステル樹脂 100質量部
Irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5質量部
GSY−P101(堺化学工業社製) 0.3質量部
Smilizer−GS(住友化学製) 0.3質量部
Tinuvin−900(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 2質量部
なお、イオン性液体は使用せず。
【0207】
(評価)
上記の実施例及び比較例において得た各種樹脂混合物について以下の評価を行った。
【0208】
〈粘度〉
粘度測定は、回転式レオメーター(レオストレス RS600:Thermo HAAKE)を用いて行った。
【0209】
設定温度250℃、周波数依存モードで100rad/sでの測定値を評価した。なお、測定値が、低いほど良い。好ましくは1000Pa・s以下である。なお、表に示した減粘率(減粘剤を含まない熱可塑性樹脂混合物の粘度を基準とし(比較例1)、熱可塑性樹脂の一部を減粘剤に置き換えたときの基準粘度からの減少比率を表す。)は、高いほど良い。返材粘度は、返材率50%使用時の粘度を意味する。
【0210】
〈工程汚染〉
工程汚染の評価は、100kg/hで24h流涎した後にロールに付着した汚染の度合を下記ランクに基づき目視評価した。
×:ロール全体に満遍なく付着。
△:ロールにうっすら付着ないしまばらに付着。
○:ロール付着がほとんど無し。
【0211】
〈波長分散特性〉
波長分散性を評価するため、王子計測機器製KOBRA21ADHを用いて23℃、55%RH、波長590nmの環境下でリターデーション測定を行った。また、厚み方向のリターデーションを計算する際には、アッベの屈折計を用いて測定した屈折率値を用いた。リターデーション及び波長分散特性D(R40)の算出は下記式1、式2、式3を用いた。
【0212】
式1:D(R40)=R40(630)−R40(480)
(式中、R40は試料の面内の遅相軸を傾斜軸として40°傾けて測定したリターデーション値を表す。(630)、(480)は各々の測定波長(nm)を表す。)
式2:Ro=(nx−ny)×d
式3:Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸に直交する方向の屈折率をny、厚さ方向の屈折率をnz、dは厚さ(nm)を表す。)
なお、波長分散は、0.900〜0.940の範囲内であることが好ましい。0.924に近いほど良い。
【0213】
〈耐久度〉
耐久度は、温度60℃湿度90%の状況下に1000時間保存したときのブリードアウトと寸法変化を下記の基準で評価した。
◎:ブリードアウトがまったく見えず、寸法変化が±0.05未満のもの。
○:ブリードアウトがまったく見えず、寸法変化が±0.2未満。
△:ブリードアウトがうっすら白、または寸法変化が±0.2〜0.5。
×:ブリードアウトがひどい、または寸法変化±0.5以上。
【0214】
上記評価結果を表1〜3に示す。
【0215】
【表1】

【0216】
【表2】

【0217】
【表3】

【0218】
表1〜3に示した結果から明らかなように、本発明に係る実施例の上記各種評価結果は、比較例より優れていることが分かる。
【0219】
なお、環状オレフィン樹脂(COP)及びアクリル樹脂(BR85)を使用した場合において、イオン性液体を併用しなかった場合は、工程汚染の度合いが、ロール全体に満遍なく付着するレベルであった。
【0220】
上記結果に基づき、本発明の手段により、熱可塑性樹脂を溶融流涎する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、減粘効果と工程内汚染の改善とを両立させ、かつ再利用時の性能劣化を抑えた熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供することができる。更に、当該製造方法により位相差波長分散性を向上させ光学フィルムに適した熱可塑性樹脂フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】溶融流延製膜法によるフィルムを製造する工程の模式図
【符号の説明】
【0222】
1 押し出し機
2 フィルター
3 スタチックミキサー
4 ダイ(厚み調整手段含む)
5 タッチロール
6 第1冷却ロール
6’第2冷却ロール
7 剥離ロール
8 ダンサーロール
9 延伸機
10 スリッター
11 厚み測定手段
12 エンボスリング及びバックロール
13 巻き取り機
14 巻き取られたフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性液体と熱可塑性樹脂を含む樹脂混合物を溶融流涎することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、セルロースエステルであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂混合物が、酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記酸化防止剤が、リン系もしくはフェノール系の化合物であることを特徴とする請求項3に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法により製造された熱可塑性樹脂フィルムであって、イオン性液体を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2009−197157(P2009−197157A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41366(P2008−41366)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】