説明

熱可塑性樹脂組成物の残留揮発成分の低減方法

【課題】溶融混練装置(以下、押出機)を用いたグラフト重合法で得られた熱可塑性樹脂組成物から未反応モノマー、溶剤、揮発性、副生成物あるいは不純物等の揮発成分を連続的に分離する方法を提供する。
【解決手段】溶融混練重合を行った後、押出機先端(以下ダイス)よりストランド状に成形した樹脂組成物に対して冷却媒体をシャワリングすることにより樹脂組成物に含有する揮発分が低減でき、特に未反応モノマー成分が効果的に低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融混練装置(以下、押出機)を用いたグラフト重合法で得られた熱可塑性樹脂組成物から未反応モノマー、溶剤、揮発性、副生成物あるいは不純物等の揮発成分を連続的に分離し、揮発分を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機を用いた樹脂の変性は、基材となる樹脂に重合開始剤を所定量混合したものを原料とし、押出機中で溶融混練された基材樹脂に、変性用モノマーを添加し混練重合を行う。未反応モノマー揮発性物質や原料中に含まれる水分等を除去するため、押出機混錬部分下流には、バレルの内部と外部とを連通するための開口部を有する揮発成分出口(以下ベント)が設けられている。また、ベントには、真空装置が接続されており、押出機内部から発生する未反応モノマーや水分等を強制的に排出している。
【0003】
しかし、押出機の動作(熱可塑性樹脂組成物の溶融混練重合)を続けていくうちに、次第にベントに重合体組成物が付着して固まり、開口部を閉塞させてしまう場合がある。このような場合、バレルの内部と外部との圧力差により、ベント開口部に付着した重合体組成物が押し上げられる、いわゆるベントアップが生じる。このように状態になると、メンテナンスのために押出機の稼動を中断せざるを得ず、生産効率に著しい支障をきたすことになる。そこで、揮発成分除去専用装置を設ける提案がなされており、例えば特許文献1にはベントとの軸方向距離がスクリュー径をDとした時、3D以上とするスクリュー式脱気押出機が記載されている。また、特許文献2には、揮発分除去部に加熱装置が具備された熱可塑性組成物溶融混練装置が記載されている。
【0004】
脱気専用押出機を設ける方法では、溶融混練重合を行う押出機と脱気専用押出機をタンデムに配置できるものの、設備費が高コストとなり安価な製造装置が得られないことがある。 また、ベントを加熱する方法ではベントアップの防止が不十分であり、特に変性用モノマーの添加量を多くし熱可塑性樹脂組成物を混練重合する場合には、熱可塑性樹脂成分が少ないためにスクリューからの樹脂組成物剥離が多発し、完全にベントアップを抑えることができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−49925公報
【特許文献2】特開2007−290384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記のようなベントによる揮発成分の強制排気による課題を回避する為に、ベントによる揮発成分の強制排気に寄らず、押出された樹脂組成物から未反応モノマー、溶剤、揮発性、副生成物あるいは不純物等の揮発成分の分離、低減を可能とする方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、溶融混練重合を行った後、押出機先端(以下ダイス)よりストランド状に成形した樹脂組成物に対し冷却媒体をシャワリングすることにより、樹脂組成物に含有する揮発分が低減でき、特に未反応モノマー成分が効果的に低減できること見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本願発明は以下に示す通りである。
【0009】
1) ストランド状の熱可塑性樹脂組成物と冷却媒体とを接触させる熱可塑性樹脂組成物の残留揮発成分の低減方法。
【0010】
2) 押出機によりストランド状に押し出された溶融樹脂が引き取り方向に延伸された後、シャワリングにより冷却媒体が散布される1)に記載の熱可塑性樹脂組成物の残留揮発成分の低減方法。
【0011】
3) 前記シャワリングの冷却媒体が水であり、水の水量が押し出された溶融樹脂50Kg/Hrあたり50L/分以下であることを特徴とする1)または2)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の残留揮発成分の低減方法。
【0012】
4) 前記シャワリング水の温度が50℃以下である1)〜3)のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の残留揮発成分の低減方法。
【0013】
5) 前記熱可塑性樹脂重合組成物が、変性ポリオレフィン系樹脂である1)〜4)のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の残留揮発成分の低減方法。
【0014】
6) 前記変性ポリオレフィン系樹脂が、ポリオレフィン系樹脂に対して、ラジカル重合開始剤存在下、エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物、及び芳香族ビニル単量体を溶融混練して得られ、ポリオレフィン系樹脂、エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物、芳香族ビニル単量体及びその他ビニル単量体の合計100重量%中におけるエチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物の割合が、0.05〜50重量%の範囲にある変性ポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする5)に記載の熱可塑性樹脂組成物の残留揮発成分の低減方法。
【0015】
7) 前記エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物が、不飽和カルボン酸、その無水物、その誘導体、及びエポキシ基含有ビニル単量体からなる群からえらばれる少なくとも1種である6)に記載の熱可塑性樹脂組成物の残留揮発成分の低減方法。
【0016】
8) 前記エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物が、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及び(メタ)アクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる少なくとも1種である7)に記載の残留揮発成分の低減方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、押出機から吐出された樹脂組成物から未反応モノマー、溶剤、揮発性、副生成物あるいは不純物等の揮発成分の分離に有効である。押出機より吐出された後の樹脂組成物に対して冷却媒体をシャワリングすることにより、得られる樹脂組成物に残留する揮発成分を非常に小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態を、押出機での溶融混練による変性樹脂組成物中に含有する残留揮発成分の分離方法で説明する。
【0019】
ポリオレフィン系樹脂等(以下原料と記す)が押出混練装置のポッパーに供給される。ポッパーに供給された原料は、押出混練装置により溶融後、細孔を有するダイに導かれストランド状の粘着性樹脂が得られる。
【0020】
押出混練装置を使用し、変性ポリオレフィン系樹脂を得る場合は、ポリオレフィン系樹脂とラジカル重合開始剤を所定量混合したものを原料とし、押出混練装置により溶融し、変性用モノマーを添加口より供給し混練重合を行うことができる。この場合、押出混練装置の先端部に設けられたベントを開口し、重合で発生した低分子量体の除去を行っても良い。ベントの位置は、先端より4D以上10D以下とし、4D以下の場合には吐出口に近い為にバレルの温度低下によりベントアップの危険性がある。10Dを超える場合には反応ゾーンが短くなり反応率が低下することがあり好ましくない。
【0021】
ダイに導かれた溶融樹脂が細孔によりストランドに成形される。成形されたストランドを重力により垂直落下させ、コンベアで受け、冷却媒体のシャワリングを行いながら適度にライン速度を調節しながら搬送する。次に冷却槽内に導き、ペレタイザーでストランドを切断し、樹脂ペレットが形成される。
【0022】
本発明で使用されるシャワリングに使用する冷却媒体種は特に制限はないが、経済性、取扱い性の点で、水を使用することが好ましい。また、冷却媒体に固体或いは液体状の自着防止剤を添加しても良い。
【0023】
また、本発明で使用される冷却槽の冷却媒体は、経済性、取扱い性の点で、水を使用することが好ましい。
【0024】
押出機ダイから押し出される樹脂ストランドは、1本に限らず、複数本が同時に押し出されても良い。特に複数本のストランドを同時に押し出す場合に本発明を適用することが好ましい。
【0025】
シャワリング水量は特に限定されるものではないが、押し出された樹脂50Kg/Hrあたり50L/分以下、0.1L/分以上が好ましい。送水能力を50L/分を超える場合には安価な設備費用とならない場合がある。シャワリング水量が0.1L/分未満の場合、ストランドの冷却が不十分になる場合がある。
【0026】
また、シャワリング水温は50℃以下が好ましい。50℃を超えるとライン速度にもよるがストランドの冷却ができずコンベア排出口で破断してしまいトラブルを引き起こす可能性がある。
【0027】
押し出された樹脂あたりの冷却水量および冷却水温度を制御することにより、溶融混練された樹脂の残留揮発成分を低減することができる。
【0028】
本発明を適用する樹脂組成物は溶融混練可能な樹脂組成物であれば特に限定されないが、粘着性樹脂組成物である場合特に有効である。
【0029】
<<粘着性樹脂について>>
常温において軟質で接着性を有する樹脂であり、例えばポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンゴム、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリルゴム、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム及びフッ素ゴムなどのオレフィン系ゴム、並びにエラストマーの加硫物及び未加硫物が挙げられる。押出重合により得られる粘着性樹脂の一例としては、ポリオレフィン系樹脂に対してラジカル重合開始剤存在下、モノマーを一定量のエチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物、芳香族ビニル単量体及びその他ビニル単量体を溶融混練して得られる変性ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0030】
<<変性ポリオレフィン系樹脂について>>
変性ポリオレフィン系樹脂に用いられるポリオレフィン系樹脂とは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1−ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のビニル化合物などとのランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。
【0031】
中でも、物性バランス、入手の容易性及び価格の点から、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソブチレンが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンを主成分とするものが特に好ましい。ポリプロピレンを主成分とするものは、プロピレン単位を50重量%以上含む重合体を意味し、ポリエチレンを主成分とするものについても同様である。
【0032】
また、変性時に使用する極性基を有する不飽和カルボン酸単量体と相溶し易い点で、極性基が導入されたポリオレフィン樹脂も使用できる。極性基が導入されたポリオレフィン樹脂の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、アクリル酸変性ポリプロピレンなどの酸変性ポリプロピレン;エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニリデン共重合体、エチレン/アクリロニトリル共重合体、エチレン/メタクリロニトリル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリルアミド共重合体、エチレン/メタクリルアミド共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸金属塩共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、又はその鹸化物、エチレン/プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体エチレン/アクリル酸エチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/ビニル単量体共重合体;塩素化ポリプロピレン塩素化ポリエチレンなどの塩素化ポリオレフィンなどが挙げられる。これらの極性基導入ポリオレフィンは混合しても使用できる。
【0033】
前記原料ポリオレフィン樹脂には、必要に応じて、ほかの樹脂またはゴムを添加してもよい。
【0034】
前記ほかの樹脂またはゴムとしては、たとえばポリペンテン−1、ポリメチルペンテン−1などのポリα−オレフィン;プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン/ブテン−1共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン共重合体;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン/ジエン系単量体共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン系共重合体;スチレン/ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体;スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体;水素化(スチレン/ブタジエンランダム共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体);水素化(スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体);アクリロニトリル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなどのビニル重合体;塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体などのビニル系共重合体などがあげられる。
【0035】
ポリオレフィン樹脂に対するこれらほかの樹脂またはゴムの添加量は、この樹脂の種類またはゴムの種類により異なり、前述のように本発明の効果を損なわない範囲内にあればよいものである。
【0036】
<<ポリオレフィン系樹脂の変性に使用するモノマーについて>>
ポリオレフィン系樹脂の変性は、エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物、芳香族ビニル単量体及びその他ビニル単量体等のモノマーを使用し実施される。
【0037】
エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物の使用量は、ポリオレフィン100重量部に対して0.05〜100重量部であることが好ましく、0.5〜50重量部であることがさらに好ましい。好ましい使用量において、ポリオレフィン樹脂の接着性を十分に改良することができ、またポリオレフィン樹脂に結合しないポリマー成分の発生を抑制することができる。
【0038】
また、エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物の割合が、ポリオレフィン系樹脂、エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物単量体及び芳香族ビニル単量体の合計重量の0.05〜50重量%の範囲であることが好ましく、0.5〜40重量%の範囲であることがより好ましく、1〜30重量%の範囲であることが特に好ましい。
【0039】
エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物としては、α、β−不飽和カルボン酸またはその無水物単量体及び/又はエポキシ基含有ビニル単量体を用いることが好ましい。
【0040】
α、β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物単量体とは、エチレン性二重結合とカルボン酸基またはカルボン酸無水物基を同一分子内に持つ、各種不飽和モノも又はジカルボン酸およびそれらの酸無水物であり、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、エンド−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸(エンディック酸)、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水エンディック酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水ナジック酸などが例示できる。これらの単量体のうち、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の無水物であり、より好ましくは、無水マレイン酸である。これらは、一種単独で用いてもよく、また、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、無水マレイン酸が異種材と接着させる場合、特に金属材料と接着させる場合に、低い温度で接着するという点で好ましい。
【0041】
エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物として、α、β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物単量体を用いる場合、その使用量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して0.05〜100重量部であることが好ましく、0.1〜50重量部であることがさらに好ましく、0.5〜20重量部であることが特に好ましい。好ましい使用量において、ポリオレフィン樹脂の接着性を十分に改良することができ、また未反応モノマーの除去も容易くなる。
【0042】
また、エポキシ基含有ビニル単量体について例示するならば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノグリシジル、マレイン酸ジグリシジル、イタコン酸モノグリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルコハク酸モノグリシジル、アリルコハク酸ジグリシジル、p−スチレンカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテンなどのエポキシオレフィン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドなどの1種または2種以上が挙げられる。これらのうち、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジルが安価という点で好ましい。
【0043】
エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物として、エポキシ樹脂含有ビニル単量体を用いる場合、その使用量は、ポリオレフィン100重量部に対して0.2〜100重量部であることが好ましく、0.5〜50重量部であることがさらに好ましい。好ましい使用量において、ポリオレフィン樹脂の接着性を十分に改良することができ、またポリオレフィン樹脂に結合しないポリマー成分の発生を抑制することができる。
【0044】
芳香族ビニル単量体について例示するならば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレンなどのメチルスチレン;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、α−クロロスチレン、β−クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのクロロスチレン;o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなどのブロモスチレン;o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、ジフルオロスチレン、トリフルオロスチレンなどのフルオロスチレン;o−ニトロスチレン、m−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン、ジニトロスチレン、トリニトロスチレンなどのニトロスチレン;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレンなどのビニルフェノール;o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼンなどのジビニルベンゼン;o−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼンなどのジイソプロペニルベンゼン;などの1種または2種以上が挙げられる。これらのうちスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのメチルスチレン、ジビニルベンゼン単量体またはジビニルベンゼン異性体混合物が安価であるという点で好ましい。
【0045】
芳香族ビニル単量体の使用量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部であることが好ましく、0.5〜40重量部であることがさらに好ましく、1〜30重量部であることが特に好ましい。好ましい範囲において、α、β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物単量体及び/又はエポキシ樹脂含有ビニル単量体のポリオレフィンへの重合(グラフト)を効率良く実施することができる。
【0046】
その他ビニル単量体について、例示するならば、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルn−ブチルエーテル、ビニルtert−ブチルエーテル等のビニルエーテル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸ナフチル等が挙げられる。これらの単量体は単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。なかでも(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸メチルよりで好ましい。
【0047】
<<ラジカル重合開始剤について>>
ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物またはアゾ化合物などがあげられる。前記ラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;パーメタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの有機過酸化物の1種または2種以上があげられる。
【0048】
これらのうち、とくに水素引き抜き能が高いものが好ましく、そのようなラジカル重合開始剤としては、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの1種または2種以上があげられる。
【0049】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲内にあることが好ましく、0.05〜5重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。0.01重量部未満では変性が充分に進行せず、10重量部を超えると流動性、機械的特性の低下を招くことがある。
【実施例】
【0050】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
(残留揮発成分)
ガスクロマトグラフィー(GC-17A 島津製作所)で検量線を引いて測定した。カラムにHP No190952Z-623(HP製)を使用しペレット1g中のメタクリル酸グリシジル及びスチレンの濃度を測定した。
【0051】
(実施例1)
<押出変性>
ホモポリプロピレン((株)プライムポリマー製J105G、MFR=9)100部と1,3−ジ(t−ブチルパーオキシイソブロビル)ベンゼン(日本油脂(株):パーブチルルP
、1分間半減期175℃)0.5重量部を混合させ、200℃に設定した2軸押出機(TEX44:L/D=38、日本製鋼所製)のポッパー口よりに供給し、溶融したあと添加口よりメタクリル酸グリシジル5重量部、スチレン5重量部を加え混練させた後、ダイからストランド状に成形された変性ポリオレフィン系樹脂を得た。この時の樹脂の吐出量は、50Kg/Hrであった。
【0052】
<残存揮発成分除去>
続いて連続的に溶融状態のストランド状の変性ポリオレフィン系樹脂を、ストランド冷却ネットコンベア(L3000×W500×H900 株式会社タナカ製)にストランドがダイから鉛直となる様ネットコンベアに導入し、搬送線速20m/minに設定し、水道水シャワリングを10L/分にて噴射させた後、ペレタイザー(KM-150H 有限会社勝製作所製)で切断した。ペレットの残留揮発成分は、1559ppmであった。この時のシャワリングの水温は10℃であった。
【0053】
(比較例1)
<押出変性>
実施例1同様の方法により押出変性を行った。この時の樹脂の吐出量は、50Kg/Hrであった。
【0054】
<残存揮発成分除去>
続いて連続的に溶融状態のストランド状の変性ポリオレフィン系樹脂を冷却水槽(L3000×W300×H400)内に水没させながら引取(線速23m/min)ペレタイザー(KM-150H 有限会社勝製作所製)で切断した。ペレットの残留揮発成分は、18776ppmであった。この時の冷却水槽内温は10℃であった。
【0055】
本発明の実施例1は、溶融状態のストランドを冷却水槽に直接水没させた比較例に対して、得られたペレットの残留揮発成分量が大きく低減した。本発明は、一般に用いられる押出機ベントからの揮発成分の強制排気時に生じる諸課題を回避でき、かつ得られたペレット中の残留揮発分を大きく低減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストランド状の熱可塑性樹脂組成物と冷却媒体とを接触させる熱可塑性樹脂組成物の残留揮発成分の低減方法。
【請求項2】
押出機によりストランド状に押し出された溶融樹脂が引き取り方向に延伸された後、シャワリングにより冷却媒体が散布される請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の残留揮発成分の低減方法。
【請求項3】
前記シャワリングの冷却媒体が水であり、水の水量が押し出された溶融樹脂50Kg/Hrあたり50L/分以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の残留揮発成分の低減方法。
【請求項4】
前記シャワリング水の温度が50℃以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の残留揮発成分の低減方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂重合組成物が、変性ポリオレフィン系樹脂である請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の残留揮発成分の低減方法。
【請求項6】
前記変性ポリオレフィン系樹脂が、ポリオレフィン系樹脂に対して、ラジカル重合開始剤存在下、エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物、及び芳香族ビニル単量体を溶融混練して得られ、ポリオレフィン系樹脂、エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物、芳香族ビニル単量体及びその他ビニル単量体の合計100重量%中におけるエチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物の割合が、0.05〜50重量%の範囲にある変性ポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物の残留揮発成分の低減方法。
【請求項7】
前記エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物が、不飽和カルボン酸、その無水物、その誘導体、及びエポキシ基含有ビニル単量体からなる群からえらばれる少なくとも1種である請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物の残留揮発成分の低減方法。
【請求項8】
前記エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物が、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及び(メタ)アクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載の残留揮発成分の低減方法。

【公開番号】特開2011−241341(P2011−241341A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116497(P2010−116497)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】