説明

熱硬化性樹脂の層にポリオレフィン樹脂の層を融着する方法

【課題】熱硬化性樹脂を塗装硬化させた金属等の素材の表面に、ポリオレフィン樹脂の層を重ね合せて密着被覆する方法を提供する。
【解決手段】窒素系発泡剤と発泡助剤等を融合したポリオレフィン樹脂の粉末の層2を高温に加熱した熱硬化性樹脂塗装の金属等の基材1の上に載せて、その熱で層2を溶融させ、その中の発泡剤とポリオレフィン樹脂とを激しく反応させることにより、基材1の熱硬化性樹脂塗装面の上に強く融着させる。そして更にその上に同質のポリオレフィン樹脂3を重ねて融着させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明により熱硬化性樹脂塗装とポリオレフィン樹脂層の2種類の層が合体した防蝕被覆が可能となり屋外配管又は土中埋設される鋼管・鉄製橋梁・船舶部材等の防蝕に広く利用することが出来るようになる。
【背景技術】
【0002】
金属等の防蝕のためにはその表面にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を塗装硬化させる方法が広く用いられているが塗装の塗装の厚さが薄く、且傷がつきやすい。そのためその外装を保護することが必要であるが、有効な方法は見出し難い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
金属等の基材の表面に熱硬化性樹脂を塗装硬化させ、その上面を保護する素材として水に強く、そして弾力に富むポリオレフィン樹脂の層を重ね合わせて密着することが望ましい。然しながらポリオレフィン樹脂を密着出来る接着剤は未開発であり、この密着は非常に困難である。本発明はこの課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は
【図1】
に示すように窒素系発泡剤と発泡助剤等を配合したポリオレフィン樹脂の粉末の層2を高温に加熱した熱硬化性樹脂塗装の金属等の基材1の上に載せて、その熱で層2を溶融させ、その中の発泡剤とポリオレフィン樹脂とを激しく反応させることにより、基材1の熱硬化性樹脂塗装面の上に強く融着させる。そして更にその上に同質のポリオレフィン樹脂3を重ねて融着させるようにした被覆方法である。
【0005】
又、予め窒素系発泡剤と発泡助剤を配合したポリオレフィン樹脂を使用して低発泡薄板5を加熱成形し、これを高温に加熱した熱硬化性樹脂塗装の金属等の基材1の上に載せて、その熱で薄板5を溶融させ、それに内蔵している発泡ガスをポリオレフィン樹脂に激しく反応させることにより、基材1の熱硬化性樹脂塗装面の上に強く融着させる。そして更にその上に同質のポリオレフィン樹脂3を重ねて融着させる方法である。
【0006】
そして
【図4】
の示すようにしてポリオレフィン樹脂低発泡薄板5に多数の貫通小孔6を設け、これを基材1の熱硬化樹脂塗装面の上に載せて焼付ける。この時に発生する餘分の発泡ガスを薄板5の焼付面の反対側に逃がすことにより、むらなく一様に薄板5を塗装面に融着させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明により金属等の基材の表面に熱硬化樹脂を塗装硬化させ、その上面にポリオレフィン樹脂の層を強固に融着させることにより例えば鋼管の外周を完全に防蝕し、且外力によっても容易に傷つかない保護層を形成できる。又耐候性、温度変化にも優れ長年月の使用に耐えることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素系発泡剤と発泡助剤等を配合したポリオレフィン樹脂の粉末の層2を高温に加熱した熱硬化性樹脂塗装の金属等の基材1の上に載せて、その熱で層2を溶融させ、その中の発泡剤とポリオレフィン樹脂とを激しく反応させることにより、基材1の熱硬化性樹脂塗装面の上に強く融着させる。そして更にその上に同質のポリオレフィン樹脂3を重ねて融着させるようにした被覆方法。
【請求項2】
予め窒素系発泡剤と発泡助剤を配合したポリオレフィン樹脂を使用して低発泡薄板5を加熱成形し、これを高温に加熱した熱硬化性樹脂塗装の金属等の基材1の上に載せて、その熱で薄板5を溶融させ、それに内蔵している発泡ガスをポリオレフィン樹脂に激しく反応させることにより、基材1の熱硬化性樹脂塗装面の上に強く融着させる。そして更にその上に同質のポリオレフィン樹脂3を重ねて融着させる方法。
【請求項3】
特許請求の範囲
請求項2
に記載した通りのポリオレフィン樹脂低発泡薄板5に多数の貫通小孔6を設け、これを基材1の熱硬化樹脂塗装面の上に載せて焼付ける。この時に発生する余分の発泡ガスを薄板5の焼付面の反対側に逃がすことにより、むらなく一様に薄板5を塗装面に融着させる方法。

【図1】
に示す金属等の基材1は予めエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を塗装し、充分に硬化したものであり、これを炎4によって高温に加熱して、その上に窒素系発泡剤及び発泡助剤等を添加したポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂の粉末又は細粒を載せて層2を成形する。この層2は高温の基材1により溶融され、その中に含まれる発泡剤とポリオレフィン樹脂は激しく反応してこれに接する熱硬化性樹脂の表面に強く焼付く、そして更にその上に同質のポリオレフィン樹脂を融着させて層3を形成する。これにより強固な防蝕被覆が出来る。
このポリオレフィン樹脂の融着は層2自体がポリオレフィン樹脂を主体とするものであるから、同質であり、相互の融着は容易である。
この層は押出成型したポリオレフィン樹脂の板を高温にして、層2の上に載せて張合わせてもよい。
【0009】
窒素系発泡剤及び発泡助剤等を添加したポリオレフィン樹脂をプラスチック用押出機により低発泡で押出して薄板5を製造し、この薄板を
【図2】
に示すように高温に加熱している熱硬化性樹脂を塗装硬化した金属等の基材1の上に片端から少しずつ載せていくことにより高温に加熱していくと、薄板5は溶融状態になり内蔵している発泡ガスが活性化して、ポリオレフィン樹脂に激しく反応してこれに接する熱硬化性樹脂の表面に強く焼付く、そして
【図3】
のようにその上に同質のポリオレフィン樹脂を融着させて層3を形成する。
【0010】
低発泡薄板5を高温に加熱している熱硬化性樹脂を塗装硬化した金属等の基材1の上に
【図2】
のように片端から少しずつ用心して載せていき高温に加熱していくと、薄板5の内部より出るガスのうち融着に関与しない余分のガスが基材1の間に残り、均質な融着のさまたげとなる。そのため
【図4】
のように低発泡薄板5に多数の貫通小孔6を設け、基材1の表面に焼付ける時に発生する余分の発泡ガスを低発泡薄板5の焼付面の反対側に逃がすことにより、むらなく一様にその基材1の塗装表面に融着させることが出来る。
【実施例1】
【0011】
長尺の鋼管7の外周に防蝕被覆を行うときの一例を
【図5】
及び
【図6】
により説明する。ポリオレフィン樹脂の内でポリエチレン樹脂を使用し、発泡剤としてはアゾジカルボンアミドをポリエチレン樹脂量の数%、発泡助剤としてはステアリン酸亜鉛を発泡剤量の約10%をポリエチレン樹脂に配合して、これをプラスチック用押出機により厚さ0.5mm〜1.5mm程度、幅50mm〜200mm、比重0.4〜0.9程度の低発泡薄板として押出して長尺のまま捲枠8に巻き上げる。
一方、鋼管7は表面を洗浄してエポキシ樹脂を塗布し、充分硬化させて乾燥させておく。塗装した鋼管7を回転台9に載せ、矢印の方向に回転させながら1回転当たり低発泡薄板5の幅だけ鋼管の軸方向に進める。そしてこの鋼管に熱を加えて高温にする。そして先きに押出して捲枠に巻き上げた長尺の低発泡薄板5を鋼管7の周方向より送り込み、その上に押しつける。鋼管の高温により低発泡薄板5内の発泡ガスは溶融状態にあるポリエチレン樹脂に激しく反応し、鋼管外周のエポキシ樹脂表面に強く融着する。そして鋼管が回転しながら軸方向に進むことにより低発泡薄板5は鋼管の外周に人間の足に巻くゲートルのように巻き付き、焼付けられる。次の工程として、同質のポリエチレン樹脂を別のプラスチック用押出機10と押出金型11により厚さ2mm〜5mm程度、幅は低発泡薄板5の幅と同寸法に押出し、鋼管の周方向に送り込み、先きに焼付けた低発泡薄板5のゲートルの上に載せて押圧することによりそれ自体の熱により、その上に融着するようになる。以上の過程により鋼管は第一層エポキシ樹脂の被覆、第二層は低発泡ポリエチレン樹脂被覆、最外層の第三層は厚いポリエチレン樹脂被覆を持つ、強固な防蝕が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明により腐蝕に弱い鉄等の金属基材の防蝕が熱硬化樹脂とポリオレフィン樹脂との結合により、外力による損傷に強い防蝕が可能となり、且、経済的にも有利な利点もあり、広く利用されるものと思う。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】特許請求の範囲
【請求項1】
の説明用の側面図
【図2】
特許請求の範囲
【請求項2】
の初期段階状況の説明用の側面図
【図3】
特許請求の範囲
【請求項2】
の次の段階状況の説明用の側面図
【図4】
特許請求の範囲
【請求項3】
の説明用の斜視図
【図5】
鋼管被覆の実施例の平面図
【図6】
図5の側面図
【符号の説明】
【0014】
1・・・熱硬化性樹脂塗装をした金属等の基材
2・・・発泡剤及び発泡助剤等を配合したポリオレフィン樹脂粉末の層
3・・・ポリオレフィン樹脂粉末の層 4・・・加熱用の炎
5・・・ポリオレフィン樹脂の低発泡板 6・・・多数の貫通小孔
7・・・熱硬化樹脂塗装をした鋼管 8・・・薄板用捲枠
9・・・回転台 10・・・プラスチック用押出機
11・・・押出金型
12・・・押出金型11より押出されたポリオレフィン樹脂の板
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−231307(P2006−231307A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80392(P2005−80392)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000203896)
【Fターム(参考)】