説明

熱硬化性樹脂組成物、熱硬化性フィルムおよびそれらの硬化物、ならびに電子部品

【課題】信頼性試験中の物性変化が極めて小さく、機械的特性、電気的特性、絶縁性、耐熱性、耐熱衝撃性、信頼性に優れた硬化物、およびそのような硬化物を得ることができる熱硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)結合アクリロニトリル量が10重量%未満のジエン系架橋ゴム、(C)老化防止剤、(D)硬化剤、(E)硬化触媒を含有する。(B)ジエン系架橋ゴムは、好ましくは重合性不飽和結合を少なくとも2個有する架橋性モノマーの共重合体であり、かつアクリロニトリルを含有しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、熱硬化性フィルムおよびそれらの硬化物、ならびに電子部品に関する。より詳細には、電気絶縁性、熱衝撃性、耐熱性等の特性に優れた硬化物が得られるような熱硬化性樹脂組成物、該組成物を用いた熱硬化性フィルムおよびそれらの硬化物、ならびに該組成物を用いて形成される絶縁層を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、通信機などの精密機器に装着されている電子部品は、近年ますます高速化、小型化、薄型化、軽量化、高密度化されるとともに、高信頼性が求められてきている。
このような電子部品は、高密度化、高精度化、微細化されるに伴い、多層化される傾向にあり、このような多層回路基板に用いる層間絶縁膜または平坦化膜などが必要となっている。このような層間絶縁膜または平坦化膜用の樹脂材料には、優れた導体間の電気絶縁性を有するとともに、高発熱化または高温はんだ等に対応するため優れた耐熱性を有することが求められている。
【0003】
従来、このような電子部品の回路基板に用いる絶縁膜などの樹脂材料としては、ポリイミド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられている。しかしこれらの樹脂は一般に誘電率が3.5以上と高く電気特性が十分でないため、これらの材料を用いた電子部品では演算処理の高速化が困難であるという問題点があった。また、優れた電気特性を示しても、耐熱性が劣るといった問題点がある。さらにこれらの樹脂は初期の物理的特性は十分なものの、熱衝撃性試験、絶縁耐久性試験などの信頼性試験中に弾性率の上昇等の物理的特性の変化が見られ、クラックの発生や断線等の原因となっている。これらの特性をバランス良く有する樹脂材料の出現が望まれていた。
【0004】
クラックの発生を防止し、耐(熱)衝撃性と耐熱性、電気絶縁性を両立させることを目的とした絶縁材料に関して、粒子径の小さい架橋アクリロニトリルゴムを用いた方法が開示されている(特許文献1参照)。また同様に平均二次粒子径が0.5〜2μmの架橋アクリロニトリルゴムを用いた方法が開示されている(特許文献2参照)。しかし、ここに開示された技術は通常20%以上のアクリロニトリルを含む弾性体を用いており、エポキシ樹脂等との相溶性は優れるものの、その絶縁性樹脂の誘電率または誘電正接などの電気特性、または絶縁信頼性は低下する傾向となり好ましくない。またこれらのジエン系のゴムは一般的に熱などで劣化し易く、熱衝撃性などの信頼性試験中にしばしば化学変化を起こし、ゴム弾性の低下などの物性変化を示すことがあり、結果としてこの絶縁性樹脂層を用いた電子部品の寿命が短くなるなどの問題を起こす恐れがある。
【0005】
そこで本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究し、エポキシ樹脂と結合アクリロニトリル量が10重量%未満のジエン系ゴムと老化防止剤と硬化剤と硬化触媒とからなる熱硬化性樹脂組成物を用いると、信頼性試験中の物性変化が極めて小さく、機械的特性、電気的特性、絶縁性、耐熱性、耐熱衝撃性、信頼性に優れた硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
なお、絶縁層を形成する組成物としては、多官能エポキシ樹脂を必須成分とするエポキシ樹脂、エポキシ樹脂と相溶しないゴム弾性微粒子及びフェノール類ノボラック樹脂を必須成分とする硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物(特許文献3)、主剤としてエポキシ樹脂、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂、カップリング剤としてイミダゾールシランを用いて調製した樹脂組成物(特許文献4)が知られているが、前者は絶縁層の熱膨張を小
さく抑えることを課題としており、後者は高耐熱性を維持しつつ、内層回路と絶縁層との密着性を向上させることを課題とするものである。
【特許文献1】特開平8−139457号公報
【特許文献2】特開2003−113205号公報
【特許文献3】特開2003−246849号公報
【特許文献4】特開2003−318499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、信頼性試験中の物性変化が極めて小さく、電気絶縁性、電気特性、熱衝撃性、耐熱性等の特性に優れた硬化物、およびそのような硬化物を得ることができる熱硬化性樹脂組成物を提供することを課題としている。また、このような熱硬化性樹脂組成物を用いて、熱的ストレスによるクラックの発生や断線等の発生がなく、信頼性の高い、電子部品を提供することも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば下記熱硬化性樹脂組成物、該組成物を用いた熱硬化性フィルムおよびそれらの硬化物、ならびに該組成物を用いて形成される絶縁層を有する電子部品が提供されて、本発明の上記課題が解決される。
【0009】
(1)(A)エポキシ樹脂、(B)結合アクリロニトリル量が10重量%未満のジエン系架橋ゴム、(C)老化防止剤、(D)硬化剤および(E)硬化触媒を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【0010】
(2) 前記ジエン系架橋ゴム(B)が、1つ以上のガラス転移温度を有する共重合体であって、その少なくとも1つのガラス転移温度が0℃以下であり、重合性不飽和結合を少なくとも2個有する架橋性モノマーの共重合体であり、かつアクリロニトリルを含有しないことを特徴とする上記(1)記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0011】
(3) 上記(1)または(2)に記載の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化することによって得られることを特徴とする硬化物。
(4) 上記(1)または(2)に記載の熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されることを特徴とする熱硬化性フィルム。
【0012】
(5) 上記(4)に記載の熱硬化性フィルムを熱硬化することにより得られることを特徴とする硬化フィルム。
(6) 上記(1)または(2)に記載の熱硬化性樹脂組成物を用いて形成される絶縁層を有することを特徴とする電子部品。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物を用いることによって、信頼性試験中の物性変化が極めて小さく、優れた機械的特性、絶縁性、電気特性(誘電率、誘電損失)、耐熱性、耐熱衝撃性、信頼性を有する硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物、該組成物を用いた熱硬化性フィルムおよびそれらの硬化物、ならびに該組成物を用いて形成される絶縁層を有する電子部品について具体的に説明する。
【0015】
<熱硬化性樹脂組成物>
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、結合アクリロニトリル量が10重量%未満のジエン系架橋ゴム(B)、老化防止剤(C)、硬化剤(D)および硬化触媒(E)を含有する。また、前記熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、その他のポリマー、有機溶剤、無機フィラー、密着助剤、界面活性剤その他添加剤などを含有することもできる。
【0016】
まず、本発明に用いられる成分について説明する。
(A)エポキシ樹脂:
本発明に用いられるエポキシ樹脂(A)は、多層回路基板の層間絶縁膜や平坦化膜、電子部品等の保護膜や電気絶縁膜などに用いられるエポキシ樹脂であれば特に限定されないが、具体的には、
ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、水添ビスフェノールA型エポキシ、水添ビスフェノールF型エポキシ、ビスフェノールS型エポキシ、臭素化ビスフェノールA型エポキシ、ビフェニル型エポキシ、ナフタレン型エポキシ、フルオレン型エポキシ、スピロ環型エポキシ、ビスフェノールアルカン類エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、オルソクレゾールノボラック型エポキシ、臭素化クレゾールノボラック型エポキシ、トリスヒドロキシメタン型エポキシ、テトラフェニロールエタン型エポキシ、脂環型エポキシ、アルコール型エポキシ、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル
、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル、脂肪酸変性エポキシ、トルイジン型エポキシ、アニリン型エポキシ、アミノフェノール型エポキシ、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、ヒンダトイン型エポキシ、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジフェニルエーテル型エポキシ、ジシクロペンタジエン型エポキシ、ダイマー酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエーテル、シリコーン変性エポキシ、ケイ素含有エポキシ、ウレタン変性エポキシ、NBR変性エポキシ、CTBN変性エポキシ、エポキシ化ポリブタジエン、グリシジル(メタ)アクリレート(共)重合体、アリルグリシジルエーテル(共)重合体などが挙げられる。
【0017】
(B)結合アクリロニトリル量が10重量%未満のジエン系架橋ゴム:
本発明に用いられるジエン系架橋ゴム(B)は、結合アクリロニトリル量が10重量%未満であり、好ましくは8重量%未満であり、特に好ましくは0重量%である。本発明に用いられるジエン系架橋ゴム(B)は、1つ以上のガラス転移温度(Tg)を有する共重合体で、その少なくとも1つのガラス転移温度は、0℃以下、好ましくは−100℃〜0℃、より好ましくは−80℃〜−20℃の範囲にあることが望ましい。ジエン系架橋ゴム(B)のTgが、上記範囲内にあると、熱硬化性樹脂組成物の硬化物(硬化膜)は、優れた可とう性(耐クラック性)を示す。一方、Tgが上記上限を超えると、硬化物は耐クラック性に劣り、温度変化が大きい環境下では基板表面に多数のクラックが発生することがある。
【0018】
このようなジエン系架橋ゴム(B)は、たとえば、重合性不飽和結合を少なくとも2個有する架橋性モノマー(以下、単に「架橋性モノマー」という。)と該架橋性モノマー以外のモノマー(以下、「その他のモノマー」という。)との共重合体であって、その他のモノマーが、この共重合体のTgが−100℃〜0℃となるように選択される少なくとも1種のその他のモノマーである共重合体が好ましい。さらに好ましいその他のモノマーとしては、重合性不飽和結合を有しない官能基、たとえば、カルボキシル基、エポキシ基、
アミノ基、イソシアネート基、水酸基等の官能基を有するモノマーが挙げられる。
【0019】
前記架橋性モノマーとして、具体的には、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物が挙げられる。これらのうち、ジビニルベンゼンが好ましく用いられる。
【0020】
その他のモノマーとして、具体的には、
ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン、クロロプレンなどのビニル化合物類;
1,3−ペンタジエン、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、クロトン酸ニトリル、ケイ皮酸ニトリル、イタコン酸ジニトリル、マレイン酸ジニトリル、フマル酸ジニトリルなどの不飽和ニトリル化合物類;
(メタ)アクリルアミド、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N'−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N'−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N'−ビス(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド、ケイ皮酸アミドなどの不飽和アミド類;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;
スチレン、α−メチルスチレン、o−メトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノールなどの芳香族ビニル化合物;
ビスフェノールAのジグリシジルエーテルまたはグリコールのジグリシジルエーテルなどと、(メタ)アクリル酸またはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどとの反応によって得られるエポキシ(メタ)アクリレート類;
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアナートとの反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレート類;
グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有不飽和化合物;
(メタ)アクリル酸、イタコン酸、コハク酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、マレイン酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、フタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチルなどの不飽和酸化合物;
ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有不飽和化合物;
(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有不飽和化合物;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有不飽和化合物が挙げられる。
【0021】
これらのうち、ブタジエン、イソプレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、スチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類などが好ましい。
【0022】
本発明で用いられるジエン系架橋ゴム(B)としては、ビニル化合物類と芳香族ビニル化合物と不飽和酸化合物と架橋性モノマーとから得られる架橋ゴム、ビニル化合物類と芳
香族ビニル化合物と水酸基含有不飽和酸化合物と架橋性モノマーとから得られる架橋ゴム、ビニル化合物類と不飽和ニトリル化合物類と不飽和酸化合物と水酸基含有芳香族ビニル化合物と架橋性モノマーとから得られる架橋ゴムが好ましい。
【0023】
本発明において、前記ジエン系架橋ゴムを製造する場合に用いられる架橋性モノマーは、全モノマー量に対して、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは2〜10重量%の量で用いられる。
【0024】
ジエン系架橋ゴム(B)の製造方法は特に限定されず、たとえば乳化重合法を用いることができる。乳化重合法では、界面活性剤を用いて水中に架橋性モノマーを含むモノマー類を乳化し、重合開始剤として、過酸化物触媒、レドックス系触媒などのラジカル重合開始剤を添加し、必要に応じて、メルカプタン系化合物、ハロゲン化炭化水素などの分子量調節剤を添加する。次いで、0〜50℃で重合を行い、所定の重合転化率に達した後、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンなどの反応停止剤を添加して重合反応を停止させる。
その後、重合系の未反応モノマーを水蒸気蒸留などで除去することによってジエン系架橋ゴム(B)を合成することができる。
【0025】
界面活性剤は、ジエン系架橋ゴム(B)を乳化重合で製造することができるものであれば特に限定されないが、たとえば、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等のノニオン系界面活性剤;両性の界面活性剤;反応性乳化剤が挙げられる。これらの界面活性剤は単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
また、上記乳化重合で得られたジエン系架橋ゴム(B)を含むラテックスを、塩析等の方法により凝固させ、水洗、乾燥することにより固体のジエン系架橋ゴム(B)を得ることもできる。ジエン系架橋ゴム(B)は、塩析により凝固させる以外に、界面活性剤としてノニオン系界面活性剤を用いた場合には、ラテックスをノニオン系界面活性剤の曇点以上に加熱して凝固することもできる。ノニオン系界面活性剤以外の界面活性剤を用いて重合した場合においても、重合後にノニオン系界面活性剤を添加し、ラテックスを曇点以上に加熱することにより、ジエン系架橋ゴム(B)を凝固することもできる。
【0027】
また、架橋性モノマーを用いずに、ジエン系架橋ゴム(B)を製造する方法として、過酸化物等の架橋剤をラテックスに添加してラテックス粒子を架橋する方法や、重合転化率を上げることによってラテックス粒子中でゲル化を行う方法、カルボキシ基等の官能基を利用して金属塩などの架橋剤を添加することによってラテックス粒子内で架橋させる方法などが挙げられる。
【0028】
本発明で用いられるジエン系架橋ゴム(B)の粒径は、通常30〜500nm、好ましくは40〜200nmが望ましい。ジエン系架橋ゴム(B)の粒径が上記範囲内にあると硬化膜の機械的特性、耐熱衝撃性等の特性に優れる。
【0029】
ジエン系架橋ゴム(B)の粒径の制御方法は特に限定されないが、たとえば、乳化重合により架橋ゴム粒子を合成する場合には、使用する乳化剤の量を調整して乳化重合中のミセルの数を制御し、粒径をコントロールすることができる。
【0030】
本発明において、前記ジエン系架橋ゴム(B)は、前記エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは10〜150重量部の量を配合することが好
ましい。配合量が上記下限未満では、熱硬化性樹脂組成物を熱硬化して得られる硬化膜の耐熱衝撃性が低下し、上記上限を超えると硬化膜の耐熱性が低下したり、熱硬化性樹脂組成物中の他の成分との相溶性が低下したりすることがある。
【0031】
(C)老化防止剤
本発明で用いられる老化防止剤としては、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤、アミン系老化防止剤などが挙げられ、フェノール系老化防止剤が特に好ましい。老化防止剤を使用することにより信頼性試験中の物性変化が極めて小さく、電子部品の製品寿命を長くすることが可能である。
【0032】
フェノール系老化防止剤としては、具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル
フェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブ
チルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、1−ヒドロキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、モノ−t−ブチル−p−クレゾール、モノ−t−ブチル−m−クレゾール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、トリエチレングリコール−ビス[
3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,
6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス[
3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエ
リスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プ
ロピオネート]、2,2'−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ノニルフェノール)、2,2'−イソブチリデン−ビス−(4,6−ジメチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−
ブチルフェノール)、4,4'−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)
、2,2−チオ−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオ−ビ
ス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオ−ビス−(2−メチル−6−ブチルフェノール)、4,4'−チオ−ビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンゼン)スルフィド、2,
2−チオ[ジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール
)プロピオネート]、ビス[3,3−ビス(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェノー
ル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、ビス[2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−3−t−ブチルベンゼン)−4−メチル−6−t−ブチルフェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、N,N'−ヘキサメチレン−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒ
ドロキシアミド)、N−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、テトラキス[メチレン−(3',5'−ジ−t−ブチル−
4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、モノ(α−メチルベンゼン)フェノール、ジ(α−メチルベンジル)フェノール、トリ(α−メチルベンジル)フェノール、ビス(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルベンジル)4−メチル−フェノール、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、2,6−ジ−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸
のジエチルエステルなどが挙げられる。
【0033】
アミン系老化防止剤としては、具体的には、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−
ピペリジル)セバケート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラ−ト、1,2,2,6,6−
ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル1,2,3,4ブタンテトラカルボキシラート
、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリ
ジノールとβ,β,β',β'−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピ
ロ〔5.5〕ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒド
ロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポ
リ[〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン
〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕]等が用いられる。好まし
くは、三級の>N−R型ヒンダードアミン系老化防止剤のテトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、1,2,
2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル1,2,3,4−ブタンテトラカル
ボキシラートが挙げられる。
【0034】
イオウ系老化防止剤としては、具体的には、ジラウリルチオプロピオネートが挙げられる。
これらの老化防止剤は、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
老化防止剤の配合量は、(A)成分100重量部当たり、0.1〜20重量部が好ましく、特に好ましくは0.5〜10重量部である。
【0035】
(D)硬化剤:
本発明で用いられる硬化剤(D)は、樹脂中のエポキシ基と硬化反応を起こすものであれば特に制限されないがアミン類、フェノール類、酸無水物等が挙げられる。
【0036】
アミン類としては、ジエチルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン、アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、メタキシリレンジアミン、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、メチレンジアニリン、メタフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0037】
フェノール類としては、フェノール性水酸基を有するものであれば特に限定されないが、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、キシレン−ノボラック、メラミン−ノボラック、p−ヒドロキシスチレン(共)重合物及びこれらのハロゲン化物、アルキル基置換体等が挙げられる。
【0038】
酸無水物としては、無水ヘキサヒドロフタル酸(HPA)、無水テトラヒドロフタル酸(THPA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、無水クロレンド酸(HET)、無水ナディック酸(NA)、無水メチルナディック酸(MNA)、無水ドデシニルコハク酸(DDSA)、無水フタル酸(PA)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(MeHPA)、無水マレイン酸等がある。
これらの硬化剤は1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
硬化剤(D)は、前記エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは10〜70重量部の量を添加することが好ましい。
(E)硬化触媒:
本発明で用いられる硬化触媒(E)は、特に制限されないが、たとえば、アミン類、カルボン酸類、酸無水物、ジシアンジアミド、二塩基酸ジヒドラジド、イミダゾール類、有機ボロン、有機ホスフィン、グアニジン類およびこれらの塩などが挙げられ、これらは1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
硬化触媒(E)は、前記エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜20重量
部、好ましくは0.5〜10重量部の量を添加することが好ましい。また、必要に応じて硬化触媒(E)とともに、硬化反応を促進する目的で硬化促進剤を併用することもできる。
【0041】
(F)有機溶剤:
本発明では、熱硬化性樹脂組成物の取り扱い性を向上させたり、粘度や保存安定性を調節するために、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。本発明で用いられる有機溶剤(F)は、特に限定されないが、たとえば、
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;
プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;
ブチルカルビトール等のカルビトール類;
乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル等の乳酸エステル類;
酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;
3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;
N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド
、N−メチルピロリドン等のアミド類;
γ−ブチロラクン等のラクトン類が挙げられる。
【0042】
これらの有機溶媒は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
(G)その他の樹脂:
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、ポリイミド、アクリルポリマー、ポリスチレン系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン系エラストマー、スチレンブタジエンエラストマー、シリコンエラストマー、トリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物またはそのブロック化物、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、(変性)ポリカルボジイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、変性ポリフェニレンオキシド、オキセタン基を有する樹脂などの熱可塑性または熱硬化性の樹脂等を含有することができる。これらの樹脂は本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0043】
(H)その他の添加剤:
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、無機フィラー、密着助剤、高分子添加剤、反応性希釈剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、帯電防止剤、無機充填剤、防カビ剤、調湿剤、難燃剤などが含まれていてもよい。これらの添加剤は本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0044】
(熱硬化性樹脂組成物の調製)
本発明の熱硬化性樹脂組成物を調製するには、例えば上記エポキシ樹脂(A)、ジエン系架橋ゴム(B)、老化防止剤(C)、硬化剤(D)および硬化触媒(E)の各成分と、必要に応じて溶剤その他の成分とを混合することによって製造することができる。熱硬化性樹脂組成物の製造方法としては、従来公知の方法を適宜使用することができ、各成分を一度に、あるいは任意の順序で加えて撹拌・混合・分散すればよい。
【0045】
(熱硬化性樹脂組成物)
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、少なくともエポキシ樹脂(A)とジエン系架橋ゴム(B)と老化防止剤(C)と硬化剤(D)と硬化触媒(E)とを含み、この熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させることによって、信頼性試験前後の物性変化が極めて小さく、機械的特性、電気特性、絶縁性、熱衝撃性、耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。
【0046】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、特に、半導体素子の多層回路基板の層間絶縁膜または平坦化膜、各種の電気機器や電子部品等の保護膜または電気絶縁膜、コンデンサフィルムなどに好適に用いることができる。また、半導体封止材料、アンダーフィル用材料または液晶封止用材料などとしても好適に使用することができる。
【0047】
また、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、粉末、ペレットなどの形状に調製して、熱硬化性成形材料として用いることもできる。
さらに、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、ガラスクロスなどに含浸させてプリプレグを調製し、銅張り積層板などの積層材などとして用いることもできる。前記プリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物をそのままガラスクロスなどに含浸させて調製することができ、また本発明の熱硬化性樹脂組成物を溶媒と混合して溶液を調製し、この溶液をガラスクロスなどに含浸させて調製することもできる。
【0048】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、銅箔に塗布して熱硬化性薄膜を形成することによりフレキシブルプリント配線板用の絶縁接着層として使用することもできる。
<熱硬化性フィルム>
本発明に係る熱硬化性フィルムは、前記熱硬化性樹脂組成物を、たとえば、予め離型処理した適当な支持体に塗布して熱硬化性薄膜を成形し、この薄膜を熱硬化せずに支持体から剥離することによって得ることができる。得られた熱硬化性フィルムは、プリント配線板等の電子部品や電気機器等の(絶縁)接着フィルムなどとして用いることができる。
【0049】
前記支持体は特に限定されるものではなく、たとえば、鉄、ニッケル、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅、各種合金などの金属;窒化ケイ素、炭化ケイ素、サイアロン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ホウ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、アルミナ、シリカ、およびこれらの混合物などのセラミック;Si、Ge、SiC、SiGe、GaAsなどの半導体;ガラス、陶磁器などの窯業材料;芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、芳香族ポリエステルなどの耐熱性樹脂が挙げられる。前記支持体には、必要に応じて、予め離型処理を施してもよく、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等による薬品処理や、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着など適宜前処理を施してもよい。
【0050】
前記熱硬化性樹脂組成物を支持体に塗布する方法は、公知の塗布方法が使用できる。た
とえば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、またはインクジェット法などの塗布方法を用いることができる。
塗膜の厚さは、塗布手段、組成物溶液の固形分濃度や粘度を適宜制御して調節する。
【0051】
<熱硬化性樹脂硬化物>
本発明に係る熱硬化性樹脂硬化物は、前記熱硬化性樹脂組成物を用いて、たとえば以下の方法により製造することができ、信頼性試験前後での物性変化が小さく、電気特性、電気絶縁性、熱衝撃性、耐熱性に優れている。
【0052】
前記硬化物の1つである、熱硬化性樹脂組成物の硬化フィルムは、上記熱硬化性フィルムを熱硬化することによって製造することができる。また、前記硬化フィルムは、予め離型処理した適当な支持体に、前記熱硬化性樹脂組成物を塗布して熱硬化性フィルム層を形成し、この熱硬化性フィルム層を加熱して硬化させた後、得られた硬化フィルム層を支持体から剥離することによって硬化フィルムを製造することもできる。このとき用いられる支持体は、前述の熱硬化性フィルムの製造の際に用いられる支持体と同じものを使用することができる。
【0053】
熱硬化性樹脂組成物の硬化条件は特に制限されるものではないが、得られる硬化物の用途に応じて、たとえば50〜200℃の範囲の温度で、10分〜48時間程度加熱することができる。また、硬化を十分に進行させたり、気泡の発生を防止するために2段階で加熱することもでき、たとえば、第1段階では、50〜100℃の範囲の温度で、10分〜10時間程度加熱し、第2段階では、80〜200℃の範囲の温度で、30分〜12時間程度加熱して硬化させてもよい。このような加熱は、一般的なオーブンや、赤外線炉などの加熱設備を用いて実施することができる。
【0054】
本発明に係る熱硬化性樹脂硬化物は、信頼性試験前後での物性変化が極めて小さく、電気特性、電気絶縁性、熱衝撃性、耐熱性に優れていることから、半導体素子や半導体パッケージやプリント配線板などの電子部品に、熱硬化性樹脂組成物の硬化フィルムを形成することによって絶縁層として作用させることができる。この絶縁層は電気絶縁性だけでなく、電気特性、熱衝撃性、耐熱性にも優れている。
【0055】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において「部」は特に断りのない限り、重量部を表すものとする。
【0056】
まず、実施例等で使用した原料および得られた硬化物の物性評価方法について説明する。
(A)エポキシ樹脂:
A−1:フェノール−ビフェニレングリコール縮合型エポキシ樹脂
(日本化薬(株)製、商品名:NC−3000P)
A−2:フェノール−ナフトール/ホルムアルデヒド縮合型エポキシ樹脂
(日本化薬(株)製、商品名;NC−7000L)
A−3:フェノール/ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂
(日本化薬(株)製、商品名:XD−1000)
(B)ジエン系ゴム:
B−1:ブタジエン/スチレン/メタクリル酸/ジビニルベンゼン
=75/20/2/3(重量比)
(Tg=−48℃、平均粒子径=70nm)
B−2:ブタジエン/スチレン/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/
ジビニルベンゼン=50/10/32/6/2(重量比)
(Tg=−45℃、平均粒子径=65nm)
B−3:ブタジエン/アクリロニトリル/メタクリル酸/ヒドロキシブチルメタ
クリレート/ジビニルベンゼン=78/5/5/10/2(重量比)
(Tg=−40℃、平均粒子径=70nm、結合ニトリル量4.8%)
B−4:ブタジエン/スチレン/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/
ペンタエリスリトールトリアクリレート=68/10/20/3(重量比)
(Tg=−45℃、平均粒子径75nm)
B−5:ブタジエン/アクリロニトリル/メタクリル酸/ジビニルベンゼン
=62/30/5/3(重量比)
(Tg=−45℃、平均粒子径70nm)
(C)老化防止剤
C−1:Nonflex RD(精工化学(株)製 商品名)
C−2:Antage SP(川口化学工業(株)製 商品名)
C−3:Nocrac G1(大内新興化学工業(株)製 商品名)
C−4:Irganox #1010(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製
商品名)
(D)硬化剤:
D−1:フェノール−キシリレングリコール縮合樹脂(三井化学(株)製、
商品名:XLC−LL)
D−2:フェノールノボラック樹脂(昭和高分子(株)製、商品名:CRG−951)
D−3:ジシアンジアミド
(E)硬化触媒:
E−1:2−エチルイミダゾール
E−2:1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール
(F)有機溶剤:
F−1:2−ヘプタノン
F−2:乳酸エチル
F−3:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<物性評価方法>
(1)結合アクリロニトリル量
ジエン系ゴムラテックスをメタノールで沈殿させ精製し、真空乾燥した後、元素分析し、窒素含有量から求めた。
【0057】
(2)ガラス転移温度
樹脂組成物をPETフィルムに塗布し、対流式オーブンで80℃×30分間加熱した。さらに170℃×2時間加熱後、PETフィルムを剥がして50μm厚の硬化フィルムを作製した。この硬化フィルムから3mm×20mmの試験片(厚み50μm)を作製し、この試験片を用いてDSC法により、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0058】
(3)弾性率
樹脂組成物をPETフィルムに塗布し、対流式オーブンで80℃×30分間加熱した。さらに170℃×2時間加熱後、PETフィルムを剥がして50μm厚の硬化フィルムを作製した。この硬化フィルムから3mm×20mmの試験片(厚み50μm)を作製し、この試験片を用いてTMA法により測定した。
【0059】
(4)電気絶縁性(体積抵抗率)
樹脂組成物をSUS基板に塗布し、対流式オーブンで80℃×30分加熱し、50μm厚の均一な樹脂塗膜を作製した。さらに170℃で2時間加熱して硬化膜を得た。この硬
化膜を恒温恒室試験装置(タバイエスペック社製)で、温度85℃、湿度85%の条件下で500時間の耐性試験を行った。JIS C6481に準拠して試験前後で硬化膜層間の体積抵抗率を測定した。
【0060】
(5)熱衝撃性
離型処理したPETフィルムに樹脂組成物を塗布し、対流式オーブンで80℃×30分加熱し、50μm厚の均一な樹脂塗膜を作製した。さらに170℃で2時間加熱して硬化膜を得た。この硬化膜を、冷熱衝撃試験器(タバイエスペック社製 TSA−40L)で、−65℃/30分〜150℃/30分を1サイクルとして1000サイクル試験を行った。
【0061】
(6)誘電率、誘電損失
鏡面仕上げの板状SUSに熱硬化性樹脂組成物を塗布し、対流式オーブンで80℃×30分間加熱した。さらに170℃×2時間加熱して、板状SUS上に10μm厚の硬化フィルムを作製した。この硬化フィルム上にアルミ電極を形成し、誘電率/誘電損失測定機(ヒューレットパッカード社製:LCRメーターHP4248)により、誘電率および誘電損失を周波数1MHzの条件で測定した。
【0062】
<実施例1>
表1に示すように、エポキシ樹脂(A−1)100重量部、ジエン系ゴム(B−1)30重量部、老化防止剤(C−1)5重量部、硬化剤(D−1)70重量部及び硬化触媒(E−1)を有機溶剤(F−1)200重量部に溶解した。この溶液を用い、前記特性評価方法にしたがって硬化物のガラス転移温度、弾性率、電気特性、電気絶縁性および熱衝撃性試験後のガラス転移温度、弾性率をそれぞれ測定した。得られた結果を表1に示す。
【0063】
<実施例2〜6>
表1に示す組成で樹脂組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして硬化物の特性を測定した。得られた結果を表1、2に示す。
【0064】
<比較例1〜2>
表2に示す組成で樹脂組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして硬化物の特性を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物を用いて、たとえば多層回路基板の層間絶縁膜などを形成すると、熱的ストレスによるクラックの発生や断線等の発生がなく、信頼性の高い回路基板を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、実施例の熱衝撃性試験に用いた基材の断面図である。
【図2】図2は、実施例の熱衝撃性試験に用いた基材の上面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 基材(シリコンウエハー)
2 金属パッド(銅製)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、(B)結合アクリロニトリル量が10重量%未満のジエン系架橋ゴム、(C)老化防止剤、(D)硬化剤、および(E)硬化触媒を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ジエン系架橋ゴム(B)が、1つ以上のガラス転移温度を有する共重合体であって、その少なくとも1つのガラス転移温度が0℃以下であり、重合性不飽和結合を少なくとも2個有する架橋性モノマーの共重合体であり、かつアクリロニトリルを含有しないことを特徴とする請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化することによって得られることを特徴とする硬化物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されることを特徴とする熱硬化性フィルム。
【請求項5】
請求項4に記載の熱硬化性フィルムを熱硬化することにより得られることを特徴とする硬化フィルム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物を用いて形成される絶縁層を有することを特徴とする電子部品。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−152148(P2006−152148A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346198(P2004−346198)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】