説明

燃料ガスタンクを搭載した自動車

【課題】燃料ガスタンクを搭載した自動車において、衝突時等における燃料ガスタンクの保護性能を向上させる。
【解決手段】複数の燃料ガスタンク14,16が車両前後方向に沿って延びる状態でフロアパネル12のセンタートンネル部12a下に搭載されており、車両前後方向に隣接する燃料ガスタンク14,16同士が緩衝部材90を介して連結されている。自動車の前突時や後突時等の衝突時には、緩衝部材90の車両前後方向の変形により、燃料ガスタンク14,16間に作用する車両前後方向の衝撃力を緩和及び吸収することができるので、燃料ガス配管84,86との接続部の破断等、燃料ガスタンク14,16の損傷を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスを蓄圧する燃料ガスタンクを車体のフロアパネル下に搭載した自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスタンクを車体のフロアパネル下に搭載した自動車の関連技術が下記特許文献1に開示されている。特許文献1においては、フロアパネルのセンタートンネルの下方内部に、長手方向一端側に燃料出入口を備えた2個の燃料ガスタンクを、車両前後方向に沿って直列に並べ、かつ2個の燃料ガスタンクの燃料出入口を互いに対向させて配置している。これによって、車室内スペースの確保を図っている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−205754号公報
【特許文献2】特開2002−195499号公報
【特許文献3】特開2005−212513号公報
【特許文献4】特開2005−75224号公報
【特許文献5】特開2004−291665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車の前突時や後突時等の衝突時においては、自動車には車両前後方向の衝撃力が外部から作用し、燃料ガスタンクにも車両前後方向の衝撃力が作用する。特許文献1においては、車両前後方向に沿って直列に連結した2個の燃料ガスタンクを、車体に固定された支持フレーム上に可動しないように固定しているため、自動車の前突時や後突時等の衝突時に車両前後方向の衝撃力が緩和されることなく燃料ガスタンクに作用する。その結果、燃料ガス配管との接続部の破断等、燃料ガスタンクの損傷を招きやすくなる。
【0005】
また、自動車の衝突時の火災等で燃料ガスタンク周囲の温度が高温になった場合に、燃料ガスタンクに設けた可溶合金型の安全弁を溶融させて燃料ガスタンク内の燃料ガスを外部へ放出することで、燃料ガスタンクの損傷を防ぐ技術も提案されている(例えば上記特許文献2)。しかし、燃料ガスタンク内の燃料ガスを外部へ放出する際には、燃料ガスの噴射圧力による推力が自動車に作用する。燃料ガスタンク内の燃料ガスを外部へ放出して燃料ガスタンクの損傷を防ぐ際には、燃料ガスの噴射圧力により自動車が動かないように、燃料ガスタンク内の燃料ガスを外部へ放出することが望ましい。
【0006】
本発明は、燃料ガスタンクを搭載した自動車において、衝突時等における燃料ガスタンクの保護性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自動車は、上述した目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明に係る自動車は、燃料ガスを蓄圧する燃料ガスタンクを車体のフロアパネル下に搭載した自動車であって、複数の燃料ガスタンクが車両前後方向に沿って延びる状態でフロアパネル下に配置され、車両前後方向に隣接する燃料ガスタンク同士が連結部材を介して連結されており、連結部材は、自動車に車両前後方向の衝撃力が外部から作用した場合に、前記隣接する燃料ガスタンク間に作用する車両前後方向の衝撃力を緩和する部材であることを要旨とする。
【0009】
本発明の一態様では、各燃料ガスタンクは、支持部材を介して車体に支持されており、支持部材は、自動車に車両前後方向の衝撃力が外部から作用した場合に、燃料ガスタンクに作用する車両前後方向の衝撃力を緩和する部材であることが好適である。
【0010】
本発明の一態様では、前記隣接する燃料ガスタンク同士の連結部分に、当該燃料ガスタンクからの燃料ガスの流れる燃料ガス配管が接続されていることが好適である。この態様では、前記燃料ガス配管として、車両前後方向に間隔をおいて配置された前側及び後側燃料ガス配管が、前記隣接する燃料ガスタンクの一方及び他方と前記連結部分にて接続されており、前側及び後側燃料ガス配管内を流れる燃料ガスが、前記連結部分から所定距離はなれた位置で合流することが好適である。さらに、この態様では、前側及び後側燃料ガス配管がU字状に形成されていることが好適である。
【0011】
本発明の一態様では、車両前後方向に沿って延びる燃料ガスタンクの車両前方端部及び車両後方端部には、開くことで燃料ガスタンク内の燃料ガスの外部への放出を許容する放出弁が設けられており、車両前方端部及び車両後方端部に設けられた放出弁の一方が開いた場合に他方を開ける制御装置を備えることが好適である。この態様では、放出弁は、その温度が所定温度よりも高い場合に開くものであることが好適である。
【0012】
また、本発明に係る自動車は、燃料ガスを蓄圧する燃料ガスタンクを車体のフロアパネル下に搭載した自動車であって、燃料ガスタンクは、車両前後方向に沿って延びる状態で支持部材を介して車体に支持されており、支持部材は、自動車に車両前後方向の衝撃力が外部から作用した場合に、燃料ガスタンクに作用する車両前後方向の衝撃力を緩和する部材であることを要旨とする。
【0013】
また、本発明に係る自動車は、燃料ガスを蓄圧する燃料ガスタンクを車体のフロアパネル下に搭載した自動車であって、燃料ガスタンクは、車両前後方向に沿って延びる状態でフロアパネル下に配置され、燃料ガスタンクの車両前方端部及び車両後方端部には、開くことで燃料ガスタンク内の燃料ガスの外部への放出を許容する放出弁が設けられており、車両前方端部及び車両後方端部に設けられた放出弁の一方が開いた場合に他方を開ける制御装置を備えることを要旨とする。ここでの放出弁は、その温度が所定温度よりも高い場合に開くものであることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、自動車に車両前後方向の衝撃力が外部から作用した場合に、車両前後方向に隣接する燃料ガスタンク間に作用する車両前後方向の衝撃力を緩和することができるので、自動車の衝突時等において、燃料ガスタンクの損傷を防ぐことができ、燃料ガスタンクの保護性能を向上させることができる。
【0015】
また、本発明によれば、自動車に車両前後方向の衝撃力が外部から作用した場合に、燃料ガスタンクに作用する車両前後方向の衝撃力を緩和することができるので、自動車の衝突時等において、燃料ガスタンクの損傷を防ぐことができ、燃料ガスタンクの保護性能を向上させることができる。
【0016】
また、本発明によれば、燃料ガスタンクの車両前方端部及び車両後方端部に設けられた放出弁の一方が開いた場合に他方を開けることで、燃料ガスの噴射圧力による車両前後方向の推力の釣り合いを保ちながら、燃料ガスタンク内の燃料ガスを車両外部へ放出することができる。その結果、自動車の衝突時の火災等で燃料ガスタンクの温度が高温になった場合でも、燃料ガスタンクの損傷を防ぐことができ、燃料ガスタンクの保護性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
【0018】
図1〜3は、本発明の実施形態に係る自動車の概略構成を示す図であり、本発明を燃料電池自動車に適用した例を示す。図1は車両下方から見た図を示し、図2は車両側方から見た図を示し、図3は車両後方から見た図を示す。自動車の車体のフロアパネル12下には、燃料ガスを高圧で蓄える(蓄圧する)複数の燃料ガスタンク14,16が搭載されている。ここでの燃料ガスとしては、例えば水素(H2)ガスを用いることができ、ここでの燃料ガスタンク14,16としては、例えば樹脂やアルミニウムのライナにエポキシ樹脂を含浸させたカーボン繊維を巻いたコンポジット型のタンクを用いることができる。図1〜3に示す例では、車両左右方向に関するフロアパネル12の中央部には、車室内(車両上方)へ突出し、車両前後方向に沿って延びるセンタートンネル部12aが形成されている。燃料ガスタンク14,16は、略円柱状に形成されており、その長手方向が車両前後方向と一致する状態、つまり車両前後方向に沿って延びる状態で、センタートンネル部12a下に縦置きされて収容されている。燃料ガスタンク14,16は、タンク支持バンド24,26により車体(フロア)に支持されている。燃料ガスタンク14,16は、車両前後方向に関しては、前輪21の車軸31と後輪22の車軸32との間に配置されている。
【0019】
燃料ガスタンク14の車両前方端部及び車両後方端部には口金34,44がそれぞれ設けられ、燃料ガスタンク16の車両前方端部及び車両後方端部には口金36,46がそれぞれ設けられている。燃料ガスタンク14は燃料ガスタンク16よりも車両前方に位置し、燃料ガスタンク14の車両後方端部の口金44と燃料ガスタンク16の車両前方端部の口金36とが連結されていることで、車両前後方向に隣接する燃料ガスタンク14,16同士が直線状に連結されている。
【0020】
前側の燃料ガスタンク14の口金44(燃料ガスタンク16との連結部分)にはレギュレータバルブ54が設けられ、レギュレータバルブ54(口金44)には燃料ガス配管84が接続されている。同様に、後側の燃料ガスタンク16の口金36(燃料ガスタンク14との連結部分)にはレギュレータバルブ56が設けられ、レギュレータバルブ56(口金36)には燃料ガス配管86が接続されている。燃料ガス配管84,86は、車両前後方向に間隔をおいて配置されており、燃料ガス配管84が燃料ガス配管86よりも車両前方に位置する。前側の燃料ガス配管84は、口金44から車両前後方向と垂直な方向(図2では車両左右方向)に延びており、口金44から所定距離はなれた位置で車両後方に曲げられている。後側の燃料ガス配管86は、口金36から車両前後方向と垂直な方向(図2では車両左右方向)に延びており、口金36から所定距離はなれた位置で車両前方に曲げられている。そして、車両後方に曲げられた燃料ガス配管84と車両前方に曲げられた燃料ガス配管86とが口金36,44から所定距離はなれた位置で結合されることで、燃料ガス配管84,86がU字状に形成されている。燃料ガス配管84,86同士の結合部分には燃料ガス配管88が接続されている。
【0021】
燃料ガスタンク14内に蓄圧された燃料ガスは、レギュレータバルブ54で減圧されてから燃料ガス配管84内へ供給され、燃料ガスタンク16内に蓄圧された燃料ガスは、レギュレータバルブ56で減圧されてから燃料ガス配管86内へ供給される。燃料ガス配管84,86内を流れる燃料ガスは、燃料ガス配管84,86同士の結合部分(口金36,44から所定距離はなれた位置)で合流し、燃料ガス配管88内へ供給される。
【0022】
シャットバルブ58は、燃料ガス配管88内の燃料ガスの流れを許容または遮断する。燃料ガスポンプ20は、燃料ガス配管88内の燃料ガスを燃料電池スタック18へ供給する。燃料電池スタック18は、フロアパネル12下に搭載されており、燃料ガスポンプ20からの燃料ガス(水素ガス)と酸化剤ガスポンプ19からの酸化剤ガス(空気)とを用いた電気化学反応により電気エネルギーを生成する発電運転を行う。前輪駆動モータ41は、燃料電池スタック18による発電電力を利用して動力を発生し、前輪21を回転駆動する。後輪駆動モータ42は、燃料電池スタック18による発電電力を利用して動力を発生し、後輪22を回転駆動する。例えば、燃料電池スタック18による発電電力(直流電力)は、コンバータ43で昇圧(電圧変換)されてインバータ(図示せず)で交流に変換されてから前輪駆動モータ41及び後輪駆動モータ42へ供給される。なお、フロアパネル12よりも車両下方にはカバーパネル13が設置されており、フロアパネル12下に搭載された燃料ガスタンク14,16、燃料電池スタック18、制御装置40、及びコンバータ43がカバーパネル13によって覆われている。
【0023】
燃料ガスタンク14の口金34(車両前方端部)には安全弁64が設けられ、燃料ガスタンク16の口金46(車両後方端部)には安全弁66が設けられている。導配管74は、安全弁64から車両前端部へ車両前方に延びており、先端が開放されている。導配管76は、安全弁66から車両後端部へ車両後方に延びており、先端が開放されている。ここでの安全弁64,66は、その温度が所定温度よりも高くなると溶融して開く可溶合金型の弁である。安全弁64の温度が所定温度以下で安全弁64が閉じている場合は、燃料ガスタンク14内の燃料ガスが導配管74内を通って外部へ放出されるのが防止される。一方、安全弁64の温度が所定温度よりも高くなって安全弁64が開くと、燃料ガスタンク14内の燃料ガスが導配管74内を通って外部へ放出されるのが許容される。同様に、安全弁66の温度が所定温度以下で安全弁66が閉じている場合は、燃料ガスタンク16内の燃料ガスが導配管76内を通って外部へ放出されるのが防止され、安全弁66の温度が所定温度よりも高くなって安全弁66が開くと、燃料ガスタンク16内の燃料ガスが導配管76内を通って外部へ放出されるのが許容される。なお、安全弁64,66の開閉については、その温度に応じて行われるだけでなく、フロアパネル12下に搭載された制御装置40によって制御することもできる。
【0024】
本実施形態では、図4に示すように、燃料ガスタンク14の口金44と燃料ガスタンク16の口金36とが緩衝部材90を介して連結されている。ここでの緩衝部材90は、自動車の前突時や後突時等、自動車に車両前後方向の衝撃力が外部から作用した場合に、燃料ガスタンク14,16間に作用する車両前後方向の衝撃力を車両前後方向に変形しながら緩和及び吸収する部材であり、例えば、ばねやゴム等の車両前後方向に変形(弾性変形)可能な弾性部材を含んで構成することができる。なお、緩衝部材90については、自動車の走行時(加減速時)には車両前後方向の変形が抑制され、自動車の前突時や後突時等の衝突時に車両前後方向に変形するように、車両前後方向の剛性が設定される。
【0025】
さらに、本実施形態では、図4に示すように、燃料ガスタンク14が緩衝部材94,95を介して車体(フロア)に支持されており、燃料ガスタンク16が緩衝部材96,97を介して車体(フロア)に支持されている。緩衝部材94はタンク支持バンド24とフロアとの間に接続され、緩衝部材95は口金34とフロアとの間に接続され、緩衝部材96はタンク支持バンド26とフロアとの間に接続され、緩衝部材97は口金46とフロアとの間に接続されている。ここでの緩衝部材94,95は、自動車の前突時や後突時等、自動車に車両前後方向の衝撃力が外部から作用した場合に、燃料ガスタンク14に作用する車両前後方向の衝撃力を車両前後方向に変形しながら緩和及び吸収する部材であり、緩衝部材96,97は、自動車に車両前後方向の衝撃力が外部から作用した場合に、燃料ガスタンク16に作用する車両前後方向の衝撃力を車両前後方向に変形しながら緩和及び吸収する部材である。そして、緩衝部材94,95,96,97は、例えば、ばねやゴム等の車両前後方向に変形(弾性変形)可能な弾性部材を含んで構成することができる。なお、緩衝部材94,95,96,97についても、自動車の走行時(加減速時)には車両前後方向の変形が抑制され、自動車の前突時や後突時等の衝突時に車両前後方向に変形するように、車両前後方向の剛性が設定される。
【0026】
さらに、本実施形態では、制御装置40は、安全弁64,66が開いているか否かを判定する。ここでの安全弁(可溶合金型の弁)64,66は、その温度が所定温度よりも高くなると溶融して開くため、制御装置40は、図示しない温度センサで検出された安全弁64,66の温度に基づいて安全弁64,66が開いているか否かを判定することができ、例えば安全弁64の温度(あるいは安全弁66の温度)が所定温度よりも高い場合に安全弁64(あるいは安全弁66)が開いていると判定することができる。また、図示しない圧力センサで検出された燃料ガスタンク14,16内の燃料ガスの圧力変化に基づいて安全弁64,66が開いているか否かを判定することもでき、例えば燃料ガスタンク14内の圧力の時間減少率(あるいは燃料ガスタンク16内の圧力の時間減少率)が所定値よりも大きい場合に安全弁64(あるいは安全弁66)が開いていると判定することもできる。そして、制御装置40は、安全弁64,66の一方が開いていると判定した場合は、安全弁64,66の他方を強制的に開けるように制御する。例えば、安全弁64のみが開いていると判定した場合は、安全弁66を強制的に開けるように制御する。
【0027】
自動車の前突時や後突時等の衝突時に燃料ガスタンク14,16を保護するためには、燃料ガスタンク14,16を自動車の前端部及び後端部から離して前輪21の車軸31と後輪22の車軸32との間に配置することが好ましく、さらに、車室内の居住性を低下させないためにはセンタートンネル部12a下に配置することが好ましい。ただし、センタートンネル部12a下に搭載する燃料ガスタンクを1本で構成しようとすると、タンク径に対して長さが長くなりすぎて強度が低下しやすくなる。本実施形態では、複数に分割した燃料ガスタンク14,16を互いに連結することで、燃料ガスタンク14,16の各々の長さを短くすることができ、燃料ガスタンク14,16の強度低下を防ぐことができる。さらに、燃料ガスタンク14,16同士の連結部分(口金44,36)に燃料ガス配管84,86を接続することで、燃料ガスタンク14,16から燃料電池スタック18に到る燃料ガス配管84,86,88の長さを短くすることができ、燃料ガスタンク14,16から燃料電池スタック18への燃料ガス供給の応答性を向上させることができる。
【0028】
また、自動車の前突時や後突時等の衝突時においては、自動車には車両前後方向の衝撃力が外部から作用し、燃料ガスタンク14,16にも車両前後方向の衝撃力が作用する。特に、コンポジット型のタンクにおいては、表面が滑りやすいため、車両前後方向の衝撃力によって、タンク支持バンド24,26と燃料ガスタンク14,16とが相互に滑ってずれやすくなる。本実施形態では、車両前後方向に隣接する燃料ガスタンク14,16同士を連結する緩衝部材90の車両前後方向の変形により、燃料ガスタンク14,16間に作用する車両前後方向の衝撃力を緩和及び吸収することができるので、燃料ガス配管84,86との接続部の破断等、燃料ガスタンク14,16の損傷を防ぐことができる。さらに、U字形状の燃料ガス配管84,86の車両前後方向の変形によっても、燃料ガスタンク14,16間に作用する車両前後方向の衝撃力を緩和及び吸収することができる。
【0029】
さらに、本実施形態では、燃料ガスタンク14を車体(フロア)に支持する緩衝部材94,95の車両前後方向の変形によっても、燃料ガスタンク14に作用する車両前後方向の衝撃力を緩和及び吸収することができるので、燃料ガス配管84との接続部の破断等、燃料ガスタンク14の損傷を防ぐことができる。そして、燃料ガスタンク16を車体(フロア)に支持する緩衝部材96,97の車両前後方向の変形によっても、燃料ガスタンク16に作用する車両前後方向の衝撃力を緩和及び吸収することができるので、燃料ガス配管86との接続部の破断等、燃料ガスタンク16の損傷を防ぐことができる。
【0030】
したがって、本実施形態によれば、自動車の衝突時等における燃料ガスタンク14,16の保護性能を向上させることができる。
【0031】
また、自動車の衝突時の火災等で燃料ガスタンク14,16(安全弁64,66)の温度が所定温度よりも高くなった場合は、安全弁(可溶合金型の弁)64,66が溶融して開くことで、燃料ガスタンク14,16内の燃料ガスが導配管74,76内をそれぞれ通って車両外部へ放出される。ただし、安全弁64,66間の温度差により安全弁64,66のいずれか一方のみが溶融して開くと、燃料ガスの噴射圧力による車両前後方向の推力が自動車に作用する。本実施形態では、制御装置40は、安全弁64,66の一方が開いていると判定した場合は、安全弁64,66の他方を強制的に開けるように制御することで、燃料ガスの噴射圧力による車両前後方向の推力のバランスを保ちながら、燃料ガスタンク14,16内の燃料ガスを車両外部へ放出することができる。したがって、燃料ガスの噴射圧力による車両前後方向の推力が自動車に作用して自動車が移動するのを抑止しながら、燃料ガスタンク14,16内の燃料ガスを車両外部へ放出することができる。その結果、燃料ガスタンク14,16の損傷を防ぐことができ、燃料ガスタンク14,16の保護性能を向上させることができる。
【0032】
以上の実施形態の説明では、フロアパネル12(センタートンネル部12a)下に複数の燃料ガスタンク14,16が搭載されているものとした、ただし、小型車両等、燃料ガスの貯蔵量が少なくても済む場合は、フロアパネル12(センタートンネル部12a)下に搭載する燃料ガスタンクを1つにすることも可能である。
【0033】
また、以上の実施形態の説明では、本発明を燃料電池自動車に適用した場合について説明した。ただし、本発明を燃料電池自動車以外の燃料ガスタンクを搭載した自動車に適用することも可能である。
【0034】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る自動車の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る自動車の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る自動車の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
12 フロアパネル、12a センタートンネル部、13 カバーパネル、14,16 燃料ガスタンク、18 燃料電池スタック、19 酸化剤ガスポンプ、20 燃料ガスポンプ、21 前輪、22 後輪、24,26 タンク支持バンド、31,32 車軸、34,36,44,46 口金、40 制御装置、41 前輪駆動モータ、42 後輪駆動モータ、43 コンバータ、54,56 レギュレータバルブ、58 シャットバルブ、64,66 安全弁、74,76 導配管、84,86,88 燃料ガス配管、90,94,95,96,97 緩衝部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを蓄圧する燃料ガスタンクを車体のフロアパネル下に搭載した自動車であって、
複数の燃料ガスタンクが車両前後方向に沿って延びる状態でフロアパネル下に配置され、車両前後方向に隣接する燃料ガスタンク同士が連結部材を介して連結されており、
連結部材は、自動車に車両前後方向の衝撃力が外部から作用した場合に、前記隣接する燃料ガスタンク間に作用する車両前後方向の衝撃力を緩和する部材である、自動車。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車であって、
各燃料ガスタンクは、支持部材を介して車体に支持されており、
支持部材は、自動車に車両前後方向の衝撃力が外部から作用した場合に、燃料ガスタンクに作用する車両前後方向の衝撃力を緩和する部材である、自動車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動車であって、
前記隣接する燃料ガスタンク同士の連結部分に、当該燃料ガスタンクからの燃料ガスの流れる燃料ガス配管が接続されている、自動車。
【請求項4】
請求項3に記載の自動車であって、
前記燃料ガス配管として、車両前後方向に間隔をおいて配置された前側及び後側燃料ガス配管が、前記隣接する燃料ガスタンクの一方及び他方と前記連結部分にて接続されており、
前側及び後側燃料ガス配管内を流れる燃料ガスが、前記連結部分から所定距離はなれた位置で合流する、自動車。
【請求項5】
請求項4に記載の自動車であって、
前側及び後側燃料ガス配管がU字状に形成されている、自動車。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1に記載の自動車であって、
車両前後方向に沿って延びる燃料ガスタンクの車両前方端部及び車両後方端部には、開くことで燃料ガスタンク内の燃料ガスの外部への放出を許容する放出弁が設けられており、
車両前方端部及び車両後方端部に設けられた放出弁の一方が開いた場合に他方を開ける制御装置を備える、自動車。
【請求項7】
請求項6に記載の自動車であって、
放出弁は、その温度が所定温度よりも高い場合に開くものである、自動車。
【請求項8】
燃料ガスを蓄圧する燃料ガスタンクを車体のフロアパネル下に搭載した自動車であって、
燃料ガスタンクは、車両前後方向に沿って延びる状態で支持部材を介して車体に支持されており、
支持部材は、自動車に車両前後方向の衝撃力が外部から作用した場合に、燃料ガスタンクに作用する車両前後方向の衝撃力を緩和する部材である、自動車。
【請求項9】
燃料ガスを蓄圧する燃料ガスタンクを車体のフロアパネル下に搭載した自動車であって、
燃料ガスタンクは、車両前後方向に沿って延びる状態でフロアパネル下に配置され、
燃料ガスタンクの車両前方端部及び車両後方端部には、開くことで燃料ガスタンク内の燃料ガスの外部への放出を許容する放出弁が設けられており、
車両前方端部及び車両後方端部に設けられた放出弁の一方が開いた場合に他方を開ける制御装置を備える、自動車。
【請求項10】
請求項9に記載の自動車であって、
放出弁は、その温度が所定温度よりも高い場合に開くものである、自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−51296(P2009−51296A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218362(P2007−218362)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】