説明

燃料電池システム

【課題】改質器へ供給するための水を貯めるタンクに設けられた水位検出手段に不具合が発生しても、可能な限り運転継続できる燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】この燃料電池システムFCSは、運転開始期間のイニシャルチェックとは別に、熱交換器HW1への排出ガスの供給に合わせて、貯水タンクWP2a,WP2bの水位を検出する複数の水位センサDS5a,Ds5b,DS5c,DS5dの異常有無を判断する異常判定処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質形燃料電池(SOFC)セルを含む燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような燃料電池システムとしては、固体電解質形燃料電池(以下、SOFCともいう)セルを無底又は有底の筒形状等に構成し、そのセルの内側又は外側に水素を含む燃料ガスを通すと共に、反対側には酸化剤ガス(空気)を通すことで発電反応を行わせるものが知られている。燃料ガスは、都市ガスといった被改質ガスを改質して得られるものであって、その改質を行う改質器においてはいわゆる水蒸気改質反応(以下、SRともいう)が行われている。その改質器に純水を供給する技術が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
下記特許文献1では、純水を改質器に迅速に供給することが記載されている。また、断水時にあっても燃料電池システムの運転継続が可能なように、タンクに水を供給する技術が下記特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−135271号公報
【特許文献2】特開2008−53209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、SOFCは発電効率が高く、使用する燃料ガスが少なくて済むため、非改質ガスも水蒸気も非常に少なくて済むという利点がある。例えば、上述した水蒸気改質反応SRでは、必要とされる水の量が毎分約8ml前後である。
【0006】
一方、SOFCを含む燃料電池システム特有の起動方法に着目すると、上述した水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるから、起動当初において即座に水蒸気改質反応SRを行わせてしまうとSOFCモジュールの温度が上がらず、安定した運転温度まで上昇しないものである。そこで、起動当初は改質器に空気と被改質ガスのみを送り込み、発熱反応としての部分酸化改質反応(以下、POXともいう)を行わせている。部分酸化改質反応POXと水蒸気改質反応SRとを比較すると、水素の発生効率は水蒸気改質反応SRの方が高いため、SOFCモジュールの温度上昇に合わせて水蒸気改質反応SRへと徐々に移行することが求められている。従って、改質器に供給する水量に着目すれば、全く水を用いない状態から毎分約8mlの給水へと円滑に移行させる必要がある。このような移行途中においては、部分酸化改質反応POXと水蒸気改質反応SRとが併用されたオートサーマル改質反応ATRを進行させる場合もある。
【0007】
上述した事情を鑑みれば、改質器に供給する水量を可能な限り少ない量から徐々に増やしていくことが好ましいはずであるが、実際にそのような給水を行うことは極めて困難である。SOFCを含む燃料電池システムは上述したように効率の高いものであると同時に、非常に高温(約700℃)になるものでもある。例えば、一度起動し停止した後に再起動する場合には、改質器へ水を供給する給水管の温度が高くなり、その給水管内の水は蒸発してしまっている可能性が高い。そのように水の全く無い状態の給水管に、少ない水を正確に供給することは極めて難しいものであるが、改質器へ水を正確に供給できないことを放置すれば、水が足りない場合には改質器において炭素析出が発生してセルや触媒が破損する場合があり、水が多い場合には燃料電池の温度が上がらずに安定した運転が行えない場合がある。少ない水を正確に供給することは重要であり、少ない水を正確に供給するためには流量測定方法やその測定結果を利用した制御について工夫することも必要であり、各種センサに不具合が発生した場合にいかにして制御するかも重要である。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、SOFCを含む燃料電池システムであって、改質器へ供給するための水を貯めるタンクにおける貯水状況に不具合が発生したり、そのタンクに設けられた水位検出手段に不具合が発生したりといったような事態が発生しても、可能な限り運転継続できる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る燃料電池システムは、固体電解質形の燃料電池セルを含む燃料電池システムであって、前記燃料電池セルに供給する燃料ガスの水蒸気改質を行う改質器と、前記燃料電池セルを通過した燃料ガスを燃焼して排出される排出ガスと熱交換を行う熱交換器と、前記改質器に水を供給するための水供給手段と、前記水供給手段を制御する制御手段とを備え、前記水供給手段は、前記改質器に供給する水として前記熱交換器における結露水を貯水する貯水タンクと、前記貯水タンクの水位を検出する水位検出手段と、前記貯水タンクに貯水された水を前記改質器に圧送するポンプと、を有し、前記制御手段は、運転開始期間のイニシャルチェックとは別に、前記熱交換器への排出ガスの供給に合わせて、前記水位検出手段の異常有無を判断する異常判定処理を実行することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池から排出される排出ガスと熱交換を行う熱交換器と、改質器に供給する水として熱交換器における結露水を貯水する貯水タンクとを備えている。貯水タンクに溜められた水はポンプによって改質器に圧送される。改質器に供給される水は安定的に供給される必要があるため、貯水タンクの水位を検出する水位検出手段を設けている。本発明では、運転開始期間のイニシャルチェックとは別に、熱交換器への排出ガスの供給に合わせて、水位検出手段の異常有無を判断する異常判定処理を実行するので、熱交換器への排出ガスの供給開始から所定の時間をおいた任意のタイミングで異常判定処理を実行することができる。このように異常判定処理を実行するタイミングを制御することで、熱交換器における結露が始まって貯水タンクに結露水が溜まるであろうタイミングに合わせて異常判定処理を実行することが可能となり、例えば貯水タンクに上水を供給せずに結露水のみを溜める場合であっても水位検出手段の異常有無を正確且つ早期に判断することができる。
【0011】
本願請求項2に係る燃料電池システムでは、起動時において、前記改質器における改質反応を部分酸化改質反応から開始して、水を用いた改質反応へと遷移させるものであって、前記制御手段は、前記改質器において部分酸化改質反応を起こしている段階で前記異常判定処理を実行することを特徴とする。
【0012】
起動時において改質器における改質反応を部分酸化改質反応から開始して、オートサーマル改質反応又は水蒸気改質反応といった水を用いた改質反応へと遷移させる本発明では、部分酸化改質反応は改質器に水を必要としない反応である。そこで、改質器において部分酸化改質反応を起こしている段階で異常判定処理を実行することで、結露水を貯水できる状態であって改質器においてはまだ水が必要とされない段階で水位検出手段の異常有無を判断することができ、確実な異常判定を最適なタイミングで実行することができる。更に、部分酸化改質反応を継続することで、加熱された燃料ガスを燃料電池に供給することができ、改質器と共に燃料電池セルも加温することができる。
【0013】
本願請求項3に係る燃料電池システムでは、起動時において、前記改質器における改質反応を部分酸化改質反応から開始して、水を用いた改質反応へと遷移させるものであって、前記制御手段は、前記改質器において部分酸化反応を起こしている段階で前記異常判定処理を実行し、前記改質器温度が所定温度を上回っても前記水位検出手段が水位を検出しない場合には、前記水を用いた改質反応を前記改質器において起こさせないように制御することを特徴とする。
【0014】
上述したように、起動時において改質器における改質反応を部分酸化改質反応から開始して、オートサーマル改質反応又は水蒸気改質反応といった水を用いた改質反応へと遷移させる本発明では、部分酸化改質反応は改質器に水を必要としない反応である。そこで、改質器において部分酸化改質反応を起こしている段階で異常判定処理を実行することで、結露水を貯水できる状態であって改質器においてはまだ水が必要とされない段階で水位検出手段の異常有無を判断することができ、確実な異常判定を最適なタイミングで実行することができる。更に、改質器の温度が所定温度を上回ってもなお水位検出手段が水位を検出しない場合には、水位検出手段そのものに異常が発生しているのか、結露水を貯水することができないのかが不明であるため、水を用いた改質反応への移行を制限し、水不足による改質器内での炭素析出を防止している。
【0015】
本願請求項4に係る燃料電池システムでは、起動時において、前記改質器における改質反応を部分酸化改質反応から開始して、水を用いた改質反応へと遷移させるものであって、
前記水供給手段は、前記改質器に供給する水を純水とするための逆浸透膜を有し、前記貯水タンクは、前記逆浸透膜よりも上流側に配置されている第1タンクと、前記逆浸透膜よりも下流側である前記改質器側に配置されている第2タンクとによって構成され、前記第1タンクに溜められた水を前記逆浸透膜を通して前記第2タンクに圧送する第1ポンプと、前記第2タンクに溜められた水を前記改質器に圧送する第2ポンプとが設けられており、前記第1タンク及び前記第2タンクにはそれぞれ前記水位検出手段が設けられており、前記制御手段は、前記改質器において部分酸化改質反応を起こしている段階で前記異常判定処理を実行し、前記改質器温度が所定温度を上回っても前記第2タンクに設けられている前記水位検出手段が水位を検出しない場合には、前記第1ポンプを駆動して前記第2タンクへと水を強制的に供給することを特徴とする。
【0016】
この態様では、逆浸透膜を挟んで配置されている第1タンク及び第2タンクの内、改質器側の第2タンクに設けられている水位検出手段が水位を検出しない場合には、第1ポンプを駆動して第1タンクから逆浸透膜を介して第2タンクへと水を強制的に供給するので、第2タンクに設けられている水位検出手段に異常がなければ水位を検出することができ、水を用いた改質反応への移行を保留することなく起動運転を継続することができる。
【0017】
本願請求項5に係る燃料電池システムでは、前記制御手段は、前記水を用いた改質反応を前記改質器において起こさせないように制御するにあたって、前記改質器において前記部分酸化改質反応の温度が所定温度以上に上昇しないように温度抑制制御を実行することを特徴とする。
【0018】
この態様によれば、部分酸化改質反応から水を用いた改質反応への移行を保留している状態において、改質器における温度が所定温度以上に上昇しないように温度抑制制御を実行するので、過度の温度上昇による燃料電池セルへの悪影響を防止することができる。
【0019】
本願請求項6に係る燃料電池システムでは、前記制御手段は、前記温度抑制制御を、前記改質器に供給する被改質ガスの供給量を抑制することで実行することを特徴とする。
【0020】
この態様によれば、温度抑制制御を改質器に供給する被改質ガスの供給量を抑制することで実行するので、より確実に改質器の温度が所定温度以上に上昇しないように抑制することができ、過度の温度上昇による燃料電池セルへの悪影響を確実に防止することができる。また、改質器を冷却するための冷却装置を別途設ける必要がないので、燃料電池システム全体を小型化することができる。
【0021】
本願請求項7に係る燃料電池システムでは、前記制御手段は、前記水位検出手段が水位を検出しない状態が所定時間以上継続した場合には、前記水位検出手段に異常が発生しているものとして異常処理制御を実行することを特徴とする。
【0022】
本発明の燃料電池システムにおいては、熱交換器への排出ガスの供給を所定時間続ければ結露水が生じて貯水タンクに溜まる可能性が高いものと考えられる。従ってこの態様では、水位検出手段が水位を検出しない状態が所定時間以上継続した場合には、水位検出手段に異常が発生していると判断するものとしている。このように判断することで、水位検出手段に異常が発生していることを前提として異常処理制御に移行することができ、的確な対応をとることができる。
【0023】
本願請求項8に係る燃料電池システムでは、前記制御手段は、前記水位検出手段が水位を検出しない場合に前記燃料電池を構成する燃料電池セルの酸化を抑制する温度になるように制御すると共に、前記異常処理制御においては前記改質器への被改質ガスの供給量を低下させて冷却停止処理を実行することを特徴とする。
【0024】
上述のように水位検出手段に異常が発生していることが判明したので、この態様では、燃料電池を構成する燃料電池セルの酸化を抑制する温度になるように制御すると共に、異常処理制御においては改質器への被改質ガスの供給を低下させて冷却停止処理を実行することで、燃料電池の各部が破損せずに安全に運転を停止させている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、改質器へ供給するための水を貯めるタンクにおける貯水状況に不具合が発生したり、そのタンクに設けられた水位検出手段に不具合が発生したりといったような事態が発生しても、可能な限り運転継続できる燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明の実施形態である燃料電池システムの全体構成を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す燃料電池システムの制御的な構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す燃料電池システムの起動時における各部の温度や各部の制御電圧を示すグラフである。
【図4】図1に示す燃料電池システムにおいて、燃料電池モジュールへ水を供給する部分の構成を示す概略構成図である。
【図5】図1及び図4に示す改質器へ水を供給するための基本フローを示したフローチャートである。
【図6】図2及び図4に示す水位センサの異常を判断するためのフローを示したフローチャートである。
【図7】図6に示すフローチャートに基づいて判断した場合に、図5に示すフローチャートにおいて用いるフラグを設定するフローを示したフローチャートである。
【図8】部分酸化改質反応POXから第1オートサーマル改質反応ATR1への移行を保留するフローを示したフローチャートである。
【図9】第2イニシャルチェックを行うフローを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0028】
図1を参照しながら、本発明の一実施形態である燃料電池システムについて説明する。図1は、一実施形態としての燃料電池システムFCSの全体構成を示す概略構成図である。図1に示すように、燃料電池システムFCSは、燃料電池モジュールFCMと、補器ユニットADUと、貯水タンクWP2と、温水製造装置HWとを備えている。
【0029】
まず、燃料電池モジュールFCMについて説明する。燃料電池モジュールFCMは、燃料電池FCと、改質器RFと、制御ボックスCBと、一酸化炭素検知器CODと、可燃ガス検知器GD1とを備えている。燃料電池FCは、固体電解質形の燃料電池(SOFC;Solid Oxide Fuel Cell)であって、発電室FC1と燃焼室FC2とを備えている。発電室FC1には複数本の燃料電池セルCEが配置されている。燃料電池セルCEは、電解質を挟んで燃料極と空気極とが設けられているものであって、燃料極側に燃料ガスを通し、空気極側に酸化剤ガスとしての空気を通すことで発電反応を起こすことができるように構成されている。本実施形態の燃料電池FCは固体電解質形燃料電池(SOFC)であるので、電解質を構成する材料としては、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレートといった酸素イオン導電性酸化物を用いている。
【0030】
燃料極を構成する材料としては、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレートとの混合体といった材料が用いられる。空気極を構成する材料としては、例えば、Sr、Caから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀といった材料が用いられる。もっとも、電解質や燃料極及び空気極を構成する材料はこれらに限られるものではない。
【0031】
発電室FC1において発電された電気は電力取出ラインEP1によって発電電力として取り出されて利用される。燃焼室FC2は、発電室FC1に配置された燃料電池セルCEによって発電反応に利用された残余の燃料ガスを燃焼させる部分である。燃焼室FC2において燃料ガスが燃焼した結果生じる排気ガスは、改質器RFと熱交換をした後に温水製造装置HWへと供給される。温水製造装置HWへと供給された排気ガスは更に熱交換を行い、水道水を昇温して温水とした後に外部へと排出される。
【0032】
改質器RFは、被改質ガスを改質して燃料ガスとし、燃料電池FCの発電室FC1へと供給する部分である。被改質ガスの改質態様としては、部分酸化改質反応(POX;Partial Oxidation Reforming)、オートサーマル改質反応(ATR;Auto Thermal Reforming)、水蒸気改質反応(SR;Steam Reforming)があり、運転状況に応じて選択的に実行される(詳細は後述する)。改質器RFは、改質部RF1と、蒸発部RF2とを備えている。
【0033】
蒸発部RF2は、補器ユニットADU側から供給される純水を蒸発させて水蒸気とし、その水蒸気を改質部RF1に供給する部分である。改質部RF1は、補器ユニットADU側から供給される被改質ガス、空気及び蒸発部RF2から供給される水蒸気を用いて被改質ガスを改質して燃料ガスとする部分である。改質部RF1には、改質触媒が封入されている。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したもの、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したもの、が適宜用いられる。本実施形態の場合、これらの改質触媒は球体である。
【0034】
制御ボックスCBは、燃料電池システム制御部をその内部に収納し、操作装置や表示装置、報知装置が設けられているものである。燃料電池システム制御部、操作装置、表示装置、報知装置については後述する。
【0035】
一酸化炭素検知器CODは、本来排気ガス通路等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュールFCM及び補器ユニットADUを覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。可燃ガス検知器GD1は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュールFCM及び補器ユニットADUに取り付けられている。
【0036】
続いて、補器ユニットADUについて説明する。補器ユニットADUは、燃料電池モジュールFCMに水、被改質ガス、及び空気を供給するための補器を備えるユニットである。補器ユニットADUは、空気供給部として空気ブロワや流量調整弁等を含む流量調整ユニットAP1a,AP1b、及び電磁弁AP2と、燃料供給部として燃料ポンプや流量調整弁等を含む流量調整ユニットFP1、脱硫器FP2、ガス遮断弁FP4、及びガス遮断弁FP5と、水供給部として水ポンプや流量調整弁等を含む流量調整ユニットWP1と、可燃ガス検知器GD2と、を備えている。
【0037】
外部の空気供給源から供給される空気は、電磁弁AP2が閉じていれば流量調整ユニットAP1a,AP1bに供給されず、電磁弁AP2が開いていれば流量調整ユニットAP1a,AP1bに供給される。流量調整ユニットAP1aによって流量調整された空気は改質用空気として、ヒータAH1によって昇温され、被改質ガスとの混合部MVに供給される。流量調整ユニットAP1bによって流量調整された空気は発電用空気として、ヒータAH2によって昇温され、燃料電池モジュールFCMの発電室FC1に供給される。発電室FC1に供給された発電用空気は、燃料電池セルCEの空気極に供給される。
【0038】
外部の燃料供給源から供給される都市ガスは、2連電磁弁であるガス遮断弁FP4及びガス遮断弁FP5によってその流入が制御される。ガス遮断弁FP4,FP5のいずれもが開いていれば、都市ガスは脱硫器FP2に供給され、ガス遮断弁FP4,FP5のいずれかが閉じていれば、都市ガスは遮断される。脱硫器FP2に供給された都市ガスは、硫黄成分を除去されて被改質ガスとなり、流量調整ユニットFP1に供給される。流量調整ユニットFP1によって流量調整された被改質ガスは、改質用空気との混合部MVに供給される。混合部MVにおいて混合された被改質ガスと改質用空気とは、燃料電池モジュールFCMの改質器RFに供給される。
【0039】
外部の水供給源から供給される水道水は、純水とされてから貯水タンクWP2に貯水される。貯水タンクWP2に貯水されている純水は、流量調整ユニットWP1によって流用が調整されて燃料電池モジュールFCMの改質器RFへと供給される。
【0040】
可燃ガス検知器GD2は、燃料供給部としての系統であるガス遮断弁FP5、ガス遮断弁FP4、脱硫器FP2、流量調整ユニットFP1において、ガス漏れが発生していわゆる生ガスが外部に放出されないか検知するためのセンサである。
【0041】
続いて、図2を参照しながら本実施形態の燃料電池システムFCSの制御的な構成について説明する。図2は、燃料電池システムFCSの制御的な構成を示すブロック図である。図2に示すように、燃料電池システムFCSは、燃料電池モジュールFCMと、燃料電池モジュールFCMに空気を供給する空気供給部APと、燃料電池モジュールFCMに燃料ガスとなる被改質ガスを供給する燃料供給部FPと、燃料電池モジュールFCMに水を供給する水供給部WPと、燃料電池モジュールFCMから電力を取り出す電力取出部EPとを備えている。空気供給部AP、燃料供給部FP、水供給部WP、及び電力取出部EPは補器ユニットADUに収められている。
【0042】
燃料電池モジュールFCM、空気供給部AP、燃料供給部FP、水供給部WP、及び電力取出部EPは、燃料電池システム制御部CSから出力される制御信号に基づいて制御される。燃料電池システム制御部SCは、CPU、ROM及びRAMといったメモリ、及び制御信号やセンサ信号を授受するためのインターフェイスによって構成されている。燃料電池システム制御部SCには、操作装置CS1、表示装置CS2、及び報知装置CS3が取り付けられている。操作装置CS1から入力される操作指示信号は燃料電池システム制御部CSに出力され、燃料電池システム制御部CSは、その操作指示信号に基づいて、燃料電池モジュールFCM等を制御する。燃料電池システム制御部CSが制御した情報や、所定の警告情報は、表示装置CS2及び報知装置CS3に出力される。操作装置CS1、表示装置CS2、及び報知装置CS3の具体的なハードウェア構成は特に限定されるものではなく、必要となる機能に応じて最適なハードウェア構成が選択される。一例としては、操作装置CS1として、キーボード、マウス、タッチパネルといったハードウェアが用いられる。表示装置CS2としては、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイといった表示系のハードウェアが用いられる。報知装置CS3としては、スピーカー、点灯器といったハードウェアが用いられる。燃料電池システム制御部CSは制御ボックスCBに収められている。また操作装置CS1、表示装置CS2、報知装置CS3は、図示しないボックスに収められ屋内に配置されている。
【0043】
燃料電池システム制御部CSには、燃料電池システムFCSの各所に設けられたセンサからセンサ信号が出力される。燃料電池システム制御部CSに信号を出力するセンサとしては、改質器温度センサDS1、スタック温度センサDS2、排気温度センサDS3、改質器内圧力センサDS4、水位センサDS5、水流量センサDS6、燃料流量センサDS7、改質用空気流量センサDS8、発電用空気流量センサDS9、電力状態検出部DS10、貯湯状態検出センサDS11、一酸化炭素検出センサDS12、可燃ガス検出センサDS13が設けられている。
【0044】
改質器温度センサDS1は、改質器RFの温度を測定するためのセンサであって、本実施形態の場合は2つ設けられている。スタック温度センサDS2は、発電室FC1に配置されている燃料電池セルCEの温度を測定するためのセンサであって、複数の燃料電池セルCEからなる燃料電池セルスタック近傍に配置されている。排気温度センサDS3は、燃焼室FC2から排出される排気ガスの温度を測定するためのセンサであって、燃焼室FC2から改質器RF近傍を通って温水製造装置HWに至る経路に配置されている。改質器内圧力センサDS4は、改質器RF内の圧力を測定するためのセンサである。
【0045】
水位センサDS5は、貯水タンクWP2の水位を測定するためのセンサであって、本実施形態の場合は4つ設けられている。水流量センサDS6は、補器ユニットADUから燃料電池モジュールFCMへと供給される純水の流量を測定するためのセンサである。燃料流量センサDS7は、補器ユニットADUから燃料電池モジュールFCMへと供給される被改質ガスの流量を測定するためのセンサである。改質用空気流量センサDS8は、補器ユニットADUから燃料電池モジュールFCMの改質器RFへと供給される改質用空気の流量を測定するためのセンサである。発電用空気流量センサDS9は、補器ユニットADUから燃料電池モジュールFCMへと供給される発電用空気の流量を測定するためのセンサである。
【0046】
電力状態検出部DS10は、センシング手段の集合体であって、燃料電池モジュールFCMから取り出す発電電力の状態を検出する部分である。貯湯状態検出センサDS11は、センシング手段の集合体であって、温水製造装置HWの貯湯状態を検出する部分である。
【0047】
一酸化炭素検出センサDS12は、一酸化炭素検知器CODに備えられているセンサであって、燃料電池モジュールFCM内における一酸化炭素のハウジング内への漏れを検出するセンサである。可燃ガス検出センサDS13は、可燃ガス検知器GD1,GD2に備えられているセンサであって、燃料電池モジュールFCM及び補器ユニットADU内における可燃ガスの漏洩を検出するセンサである。
【0048】
続いて、燃料電池システムFCSの起動時(起動モード)における各種改質反応の切り替えについて図3を参照しながら説明する。図3は、燃料電池システムFCSの起動時における各部の温度や各部の制御電圧を示すグラフである。
【0049】
本実施形態における燃料電池システムFCSの起動モードにおいては、燃焼運転と、部分酸化改質反応POXと、第1オートサーマル改質反応ATR1と、第2オートサーマル改質反応ATR2と、水蒸気改質反応SRとを順次切り替えながら改質反応を進行している。図3を説明するのに先立って、各改質反応について説明する。
【0050】
部分酸化改質反応POXは、改質器SRに被改質ガスと空気とを供給して行う改質反応であって、化学反応式(1)に示す反応が進行する。
mn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
部分酸化改質反応POXは、発熱反応であるので起動性が高く、燃料電池システムFCSの起動当初において好適な改質反応である。ただし、部分酸化改質反応POXは、水素収率が理論上少なく、発熱反応を制御するのも難しいことから、燃料電池モジュールFCMへ熱供給が必要な起動当初においてのみ利用されるのが好ましい改質反応である。尚、部分酸化改質反応POXのみに着目すれば、空間速度を高く設定するので、例えば改質器RFを分割形成して部分酸化改質反応POX専用の改質器を設ける場合には、その専用の改質器を小型化することができる。
【0051】
水蒸気改質反応SRは、改質器SRに被改質ガスと水蒸気とを供給して行う改質反応であって、化学反応式(2)に示す反応が進行する。
mn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
水蒸気改質反応SRは、水素収率が最も高く、高効率な反応である。ただし、水蒸気改質反応SRは、吸熱反応であるので熱源が必要であり、燃料電池システムFCSの起動当初よりはある程度温度が上昇した段階において好適な改質反応である。尚、水蒸気改質反応SRのみに着目すれば、空間速度を低く設定するので、改質器RFが大型化する傾向にある。
【0052】
第1オートサーマル改質反応ATR1及び第2オートサーマル改質反応ATR2からなるオートサーマル改質反応ATRは、部分酸化改質反応POXと水蒸気改質反応SRとの中間的な改質反応であって、改質器RFに被改質ガスと空気と水蒸気とを供給して行う改質反応であり、化学反応式(3)に示す反応が進行する。
mn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
オートサーマル改質反応ATRは、水素収率が部分酸化改質反応POXと水蒸気改質反応SRとの中間であり、反応熱のバランスが取りやすく、部分酸化改質反応POXと水蒸気改質反応SRとを繋ぐ反応として好適な改質反応である。本実施形態の場合は、水を少なく供給して部分酸化改質反応POXにより近い第1オートサーマル改質反応ATR1を先に行い、温度が上昇した後に水を増やすように供給して水蒸気改質反応SRにより近い第2オートサーマル改質反応ATR2を後に行っている。
【0053】
図3に戻って、燃料電池システムFCSの起動モードについて説明する。図3は、横軸に起動開始後の経過時間を取り、左縦軸には各部の温度を取っている。制御電圧であるため特段の目盛りは付していないが、改質用空気を供給するための流量調整ユニットAP1aに含まれる改質用空気ブロワの制御電圧、発電用空気を供給するための流量調整ユニットAP1bに含まれる発電用空気ブロワの制御電圧、被改質ガスを供給するための流量調整ユニットFP1に含まれる燃料ポンプの制御電圧、及び純水を供給するための流量調整ユニットWP1に含まれる水ポンプの制御電圧は、図中上方に行くほど電圧が高くなる(供給量が増える)ように示している。図3には、改質器RFの温度、燃料電池セルCEのスタック温度、燃焼室FC2の温度(改質器RFの温度等から推定している)、流量調整ユニットAP1aに含まれる改質用空気ブロワの制御電圧、流量調整ユニットAP1bに含まれる発電用空気ブロワの制御電圧、流量調整ユニットFP2に含まれる燃料ポンプの制御電圧、流量調整ユニットWP1に含まれる水ポンプの制御電圧を示している。
【0054】
まず、改質用空気を増やすように流量調整ユニットAP1a、電磁弁AP2、ヒータAH1、及び混合部MVを制御し、改質器RFに空気を供給する。また、被改質ガスの供給を増やすように流量調整ユニットFP1、ガス遮断弁FP4,FP5、及び混合部MVを制御し、改質器RFに被改質ガスを供給する。このように、空気と被改質ガスを供給し、イグナイタによって着火して燃焼運転を実行する(尚、条件によっては自然着火によって着火して燃焼運転を実行する)。この場合の、改質器RFに供給する改質用空気の流量は毎分10.0L(リットル)、改質器RFに供給する被改質ガスの流量は毎分6.0Lである。また、起動モード全体を通して、発電室FC1に供給する発電用空気の流量は毎分100.0Lとなるように流量調整ユニットAP1bが制御される。発電室FC1上方の燃焼室FC2においては、改質器RFを通過した燃料ガスと発電用空気とが混合して燃焼しており、燃焼室FC2の温度が徐々に上昇する。
【0055】
続いて、改質器RFの温度が約300℃程度になった際に改質器がPOX運転可能な状態になることから300℃前後になった時に成行きで部分酸化改質反応POXが進行する。部分酸化改質反応POXは発熱反応なので、各部の温度が上昇する。部分酸化改質反応POXを開始してから所定時間が経過した後、改質用空気の供給量を更に増やして部分酸化改質反応POXをより進行させる。具体的には、改質器RFに供給する改質用空気の流量は毎分18.0L、改質器RFに供給する被改質ガスの流量は毎分5.0Lである。
【0056】
続いて、改質器RFの温度が約600℃以上になり、且つ燃料電池セルCEによって構成されるセルスタックの温度が約250℃を超えたことを条件として、第1オートサーマル改質反応ATR1へと移行させる。第1オートサーマル改質反応ATR1では、改質器RFに供給する改質用空気の流量は毎分8.0Lに減らし、改質器RFに供給する被改質ガスの流量は毎分5.0Lを維持する。更に、毎分1.0mlの極微量な純水を改質器RFに供給する。オートサーマル改質反応ATRは、部分酸化改質反応ATRと水蒸気改質反応SRとを混合した反応であって、熱的に内部バランスが取れるので改質器RF内では熱自立しながら反応が進行する。また、第1オートサーマル改質反応ATR1は,空気が比較的多く部分酸化改質反応POXに近い反応であり、発熱が支配的な反応となっている。尚、第1オートサーマル改質反応ATR1中において、燃料電池セルCEによって構成されるセルスタックの温度は約250℃から約400℃である。
【0057】
続いて、改質器RFの温度が600℃以上となり、且つ燃料電池セルCEによって構成されるセルスタックの温度が約400℃を超えたことを条件として、第2オートサーマル改質反応ATR2へと移行させる。第2オートサーマル改質反応ATR2では、改質器RFに供給する改質用空気の流量は毎分4.0Lに減らし、改質器RFに供給する被改質ガスの流量も毎分4.0Lに減らす。更に、毎分3.0mlの微量な純水を改質器RFに供給する。第2オートサーマル改質反応ATR2は,空気が比較的少なく水が多いため水蒸気改質反応SRに近い反応であり、吸熱が支配的な反応となっている。しかしながら、発電室FC1内の温度を示すセルスタック温度が約400℃を超えているため、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を招くことはない。尚、第2オートサーマル改質反応ATR2中において、蒸発部RF2の温度は約100℃以上である。
【0058】
続いて、改質器RFの温度が650℃以上となり、且つ燃料電池セルCEによって構成されるセルスタックの温度が約600℃を超えたことを条件として、水蒸気改質反応SRへと移行させる。水蒸気改質反応SRでは、改質器RFに供給する改質用空気は遮断し、改質器RFに供給する被改質ガスの流量は毎分3.0Lに減らす。更に、毎分8.0mlの純水を改質器RFに供給する。この水蒸気改質反応SRは、吸熱反応であるので、燃焼室FC2からの燃焼熱による熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、既に起動の最終段階であるため、発電室FC1内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応を主体としても大幅な温度低下を招くことはない。また水蒸気改質反応SRが進行しても燃焼室FC2では継続して燃焼反応が持続する。
【0059】
上述したように着火から燃焼工程の進行に合わせて改質工程を切り替えていくことで、発電室FC1内の温度が徐々に上昇する。発電室FC1の温度(セルスタックの温度)が、燃料電池モジュールFCMを安定的に作動させる定格温度(約700℃)よりも低い所定の発電温度に達したら、燃料電池モジュールFCMを含む電気回路を閉じる。それにより、燃料電池モジュールFCMは発電を開始し、回路に電流が流れて外部に電力を供給することができる。燃料電池セルCEの発電により、燃料電池セルCE自体も発熱し、更に、燃料電池セルCEの温度が上昇する。その結果、燃料電池モジュールFCMを作動させる定格温度、例えば700〜800℃になる。
【0060】
その後、定格温度を維持するために、燃料電池セルCEで消費される燃料ガス及び空気の量よりも多い量の燃料ガス及び空気を供給し、燃焼室FC2での燃焼を継続させる。尚、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応SRで発電が進行する。水蒸気改質反応SR自体は厳密には400℃〜800℃程度で行われるが、燃料電池セルCEとの組み合わせにおいては500℃〜700℃程度で反応が進行するように設定している。
【0061】
本実施形態では、図3に示す第1オートサーマル改質反応ATR1の開始時に、毎分1ccという極めて微量な水を改質器SRに供給している。このように微量な水を正確に供給するための一実施形態について、図4を参照しながら説明する。図4は、図1に示す貯水タンクWP2から流量調整ユニットWP1を経由して燃料電池モジュールFCMに至る配管経路を模式的に示した図である。
【0062】
図4に示すように、貯水タンクWP2は、第1貯水タンクWP2aと第2貯水タンクWP2bとを備えている。第1貯水タンクWP2aには、上水が供給される給水管10が繋がれている。給水管10には電磁弁101が設けられており、電磁弁101を開閉することで第1貯水タンクWP2aに上水を供給したり停止したりすることができる。第1貯水タンクWP2aは、温水製造装置HWの熱交換器HW1において結露した水を受け入れることが可能なように配置されている。従って、第1貯水タンクWP2aには、温水製造装置HWの熱交換器HW1において結露した水を貯めつつ、水量が不足した場合には給水管10から水を補給することが可能である。第1貯水タンクWP2aにはヒータH1が設けられていて、第1貯水タンクWP2a内の水が凍結しないように構成されている。
【0063】
第1貯水タンクWP2aと第2貯水タンクWP2bとを繋ぐ管路11には、ポンプ111と逆浸透膜20とが設けられている。ポンプ111は、毎分1Lの水を第1貯水タンクWP2aから第2貯水タンクWP2bへと送り込むことができる。ポンプ111にて、逆浸透膜20を通して水を第2貯水タンクWP2b側へと押し込むので、逆浸透膜20を通過した水は純水となって第2貯水ダンクWP2bへ貯水される。第2貯水タンクWP2bにはヒータH2が設けられていて、第2貯水タンクWP2b内の水が凍結しないように構成されている。
【0064】
第2貯水タンクWP2bと燃料電池モジュールFCMとを繋ぐ管路13には、パルスポンプ131と水流量センサDS6とが設けられている。従って、管路13は、第2貯水タンクWP2bからパルスポンプ131までの管路13aと、パルスポンプ131から水流量センサDS6までの管路13bと、水流量センサDS6から燃料電池モジュールFCMまでの管路13cとによって構成されている。管路13aの第2貯水タンクWP2b近傍にはヒータH3が設けられていて、管路13a内の水、特に燃料電池モジュールFCMから離れた位置の水が凍結しないように構成されている。
【0065】
第1貯水タンクWP2aには、上述した水位センサDS5に相当する高水位センサDS5a及び低水位センサDS5bが設けられている。高水位センサDS5a(高水位検出手段)は、第1貯水タンクWP2aの高水位まで水が供給されたことを検知するためのフロートセンサであって、取り付けられた位置まで水面が上昇するとHi信号を出力するものである。低水位センサDS5b(低水位検出手段)は、第1貯水タンクWP2aの低水位まで水が供給されたことを検知するためのフロートセンサであって、取り付けられた位置まで水面が上昇するとHi信号を出力するものである。尚、高水位センサDS5a及び低水位センサDS5bは、その取り付けられている位置まで水面が到達していない場合にはLo信号を出力するものである。
【0066】
第2貯水タンクWP2bには、上述した水位センサDS5に相当する高水位センサDS5c(高水位検出手段)及び低水位センサDS5d(低水位検出手段)が設けられている。高水位センサDS5cは、第2貯水タンクWP2bの高水位まで水が供給されたことを検知するためのフロートセンサであって、取り付けられた位置まで水面が上昇するとHi信号を出力するものである。低水位センサDS5cは、第2貯水タンクWP2bの低水位まで水が供給されたことを検知するためのフロートセンサであって、取り付けられた位置まで水面が上昇するとHi信号を出力するものである。尚、高水位センサDS5c及び低水位センサDS5dは、その取り付けられている位置まで水面が到達していない場合にはLo信号を出力するものである。
【0067】
続いて、本実施形態の燃料電池システムFCSにおいて、運転の開始から燃焼運転を行い、改質器RFにおいて部分酸化改質反応POXを行ってから第1オートサーマル改質反応ATR1に移行するまでの改質器RFへの水供給制御について説明する。図5は、この場合に改質器RFへ水を供給するための基本フローを示したフローチャートである。図5の説明において、フラグFが「0」であれば、第1貯水タンクWP2a及び第2貯水タンクWP2bに正常に水が溜められていて通常の制御が可能であることを示している。フラグFが「5」であれば、水供給系に異常が発生しているものの第1貯水タンクWP2a及び第2貯水タンクWP2bに水があることを判定可能であって、推定供給制御による運転継続が可能であることを示している。フラグFが「6」であれば、水供給系に異常が発生し第1貯水タンクWP2a及び第2貯水タンクWP2bに水があることを判定することが不可能であって、燃料電池システムFCSの運転を停止することを示している。フラグFが「7」であれば、水供給系に異常が発生し第1貯水タンクWP2a及び第2貯水タンクWP2bに水を供給することが不可能であって、燃料電池システムFCSの運転を停止することを示している。
【0068】
ステップS01では、燃料電池システムFCSが運転を開始し、燃焼運転を行ってから改質器RFにおいて部分酸化改質反応POXを行い、所定の条件を満たして水蒸気を用いた改質反応(本実施形態の場合は、上述したように第1オートサーマル改質反応ATR1)を実行する時期となったか判断する。ステップS01の判断で、第1オートサーマル改質反応ATR1に移行する条件が整っていなければリターンし、整っていればステップS02の処理に進む。
【0069】
ステップS02では、フラグFが「0」であるか判断する。フラグFが「0」であればステップS03の処理に進み、フラグFが「0」でなければステップS06の処理に進む。フラグFが「0」であれば、通常の制御が可能であるので、ステップS03では、第1オートサーマル改質反応ATR1の開始タイミングであるか判断する。ステップS03において、第1オートサーマル改質反応ATR1の開始タイミングでなければ既に第1オートサーマル改質反応ATR1が行われていると判断して、ステップS04の処理に進み、第1オートサーマル改質反応ATR1の開始タイミングであれば、ステップS09の処理に進む。
【0070】
ステップS04では、水流量センサDS6が検知する流量が、第1オートサーマル改質反応ATR1において必要とされる流量Qとなるようにパルスポンプ131を制御する。ステップS04に続くステップS05では、改質器RFに設けられた改質器内圧センサDS4の検出圧力が小さく変動しているか判断する。改質器RFに設けられた改質器内圧力センサDS4の検出圧力が小さく変動していれば、水の少ない改質器RFに少量の水がパルスポンプ131によって脈動的に供給されているものと判断してリターンする。改質器RFに設けられた改質器内圧センサDS4の検出圧力が小さく変動していなければ、改質器RF内に少量の水が供給されていないものと判断してステップS08の処理に進む。ステップS08では、フラグFを「7」として燃料電池システムFCSの運転を緊急停止するための処理を実行する。
【0071】
ステップS03において、第1オートサーマル改質反応ATR1の開始タイミングであると判断されると、ステップS09では、パルスポンプ131の供給量を最大値として改質器RFに向けて水を送り出す。ステップS09に続くステップS10では、改質器RF内の圧力が大きく変動するか判断する。改質器RF内の圧力が大きく変動していれば、パルスポンプ131によって水が圧送され始めたと判断してステップS11の処理に進み、改質器RF内の圧力が大きく変動していなければ、ステップS13の処理に進む。
【0072】
ステップS11では、水流量センサDS6の検出する水量が変化したか判断する。水流量センサDS6の検出する水量が変化すれば、パルスポンプ131から送り出される水が水流センサDS6に到達したものと判断してステップS12の処理に進み、水流量センサDS6の検出する水量が変化しなければステップS13の処理に進む。
【0073】
ステップS12では、水流量センサDS6の流量が第1オートサーマル改質反応ATR1において必要とされる流量Qとなるようにパルスポンプ131を制御し、リターンする。
【0074】
ステップS13では、所定時間が経過してタイムアップとなったか判断する。所定時間が経過していなければリターンし、所定時間が経過していればステップS14の処理に進む。ステップS14では、フラグFを「7」として燃料電池システムFCSの運転を緊急停止するための処理を実行する。
【0075】
続いて、高水位センサDS5a、低水位センサDS5b、高水位センサDS5c、低水位センサDS5dのいずれかに異常が発生しているか否かを判断するフローについて、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。図6の説明において、フラグFが「0」であれば、どの水位センサ(高水位センサDS5a、低水位センサDS5b、高水位センサDS5c、低水位センサDS5d)にも異常が発生していないことを示している。フラグFが「2」であれば、第1貯水タンクWP2aの高水位センサDS5aが異常であることを示している。フラグFが「1」であれば、第1貯水タンクWP2aの低水位センサDS5bが異常であることを示している。フラグFが「4」であれば、第2貯水タンクWP2bの高水位センサDS5cが異常であることを示している。フラグFが「3」であれば、第2貯水タンクWP2bの低水位センサDS5dが異常であることを示している。尚、図6〜図9の図中において、「SW1」は高水位センサDS5aを示し、「SW2」は低水位センサDS5bを示し、「SW3」は高水位センサDS5cを示し、「SW4」は低水位センサDS5dを示している。また、「ポンプ1」はポンプ111を示し、「タンク1」は第1貯水タンクWP2aを示し、「タンク2」は第2貯水タンクWP2bを示している。
【0076】
ステップS21では、高水位センサDS5a、低水位センサDS5b、高水位センサDS5c、低水位センサDS5dの全てからHi信号が出力されているか判断する。全てのセンサからHi信号が出力されていれば、全てのセンサが水位を検出しているので、ステップS32の処理に進む。全てのセンサからHi信号が出力されていなければ、ステップS22の処理に進む。
【0077】
ステップS22では、第1貯水タンクWP2aの低水位センサDS5bからLo信号が出力されているか判断する。第1貯水タンクWP2aの低水位センサDS5bからLo信号が出力されていれば、ステップS23の処理に進み、第1貯水タンクWP2aの低水位センサDS5bからLo信号が出力されていなければ、ステップS34の処理に進む。
【0078】
ステップS23では、第1貯水タンクWP2aの高水位センサDS5aからHi信号が出力されているか判断する。第1貯水タンクWP2aの高水位センサDS5aからHi信号が出力されていれば、J1へジャンプしてステップS43の処理に進み、第1貯水タンクWP2aの高水位センサDS5aからHi信号が出力されていなければ、ステップS24の処理に進む。
【0079】
ステップS24では、第1貯水タンクWP2aに給水し、ステップS25の処理に進む。
【0080】
ステップS34では、第1貯水タンクWP2aの高水位センサDS5aからLo信号が出力されているか判断する。第1貯水タンクWP2aの高水位センサDS5aからLo信号が出力されていれば上述したステップS24の処理に進み、第1貯水タンクWP2aの高水位センサDS5aからLo信号が出力されていなければステップS35の処理に進む。
【0081】
ステップS35では、第2貯水タンクWP2bの低水位センサDS5dからLo信号が出力されているか判断する。第2貯水タンクWP2bの低水位センサDS5dからLo信号が出力されていれば、ステップS36の処理に進み、第2貯水タンクWP2bの低水位センサDS5dからLo信号が出力されていなければ、ステップS37の処理に進む。
【0082】
ステップS36では、第2貯水タンクWP2bの高水位センサDS5cからHi信号が出力されているか判断する。第2貯水タンクWP2bの高水位センサDS5cからHi信号が出力されていれば、J2へジャンプしてステップS41の処理に進み、第2貯水タンクWP2bの高水位センサDS5cからHi信号が出力されていなければ、J3へジャンプしてステップS29の処理に進む。
【0083】
ステップS37では、第2貯水タンクWP2bの高水位センサDS5cからLo信号が出力されているか判断する。第2貯水タンクWP2bの高水位センサDS5cからLo信号が出力されていれば、J3へジャンプしてステップS29の処理に進み、第2貯水タンクWP2bの高水位センサDS5cからLo信号が出力されていなければ、満水であるものとしてリターンする。
【0084】
ステップS25では、第1貯水タンクWP2aの低水位センサDS5bからHi信号が出力されているか判断する。第1貯水タンクWP2aの低水位センサDS5bからHi信号が出力されていれば、ステップS26の処理に進み、第1貯水タンクWP2aの低水位センサDS5bからHi信号が出力されていなければ、ステップS42の処理に進む。
【0085】
ステップS42では、所定時間が経過してタイムアップとなったか判断する。所定時間が経過していなければリターンし、所定時間が経過していればステップS43の処理に進む。
【0086】
ステップS43では、第1貯水タンクWP2aの低水位センサDS5bが異常であるものと判断してフラグFを「1」に設定してリターンする。これは、ステップS24において第1貯水タンクWP2aに給水を行ったものの、所定時間が経過しても低水位センサDS5bからHi信号が出力されないか、ステップS22において低水位センサDS5bからLo信号が出力されたたもののステップS23において高水位センサDS5aからHi信号が出力されたためである。尚、ステップS43の処理の際には、低水位センサDS5bからHi信号が出力されたものと擬似的に設定してリターンする。
【0087】
ステップS26では、第1貯水タンクWP2aの高水位センサDS5aからHi信号が出力されているか判断する。第1貯水タンクWP2aの高水位センサDS5aからHi信号が出力されていれば、ステップS27の処理に進み、第1貯水タンクWP2aの高水位センサDS5aからHi信号が出力されていなければ、ステップS38の処理に進む。
【0088】
ステップS38では、所定時間が経過してタイムアップとなったか判断する。所定時間が経過していなければリターンし、所定時間が経過していればステップS39の処理に進む。
【0089】
ステップS39では、第1貯水タンクWP2aの高水位センサDS5aが異常であるものと判断してフラグFを「2」に設定してリターンする。これは、ステップS24において第1貯水タンクWP2aに給水を行って、低水位センサDS5bからHi信号が出力されているものの、所定時間が経過しても高水位センサDS5aからHi信号が出力されないためである。尚、ステップS39の処理の際には、高水位センサDS5aからHi信号が出力されたものと擬似的に設定してリターンする。
【0090】
ステップS27では、第1貯水タンクWP2aへの給水を停止する。ステップS27に続くステップS28では、第2貯水タンクWP2bの低水位センサDS5dからHi信号が出力されているか判断する。第2貯水タンクWP2bの低水位センサDS5dからHi信号が出力されていればリターンし、第2貯水タンクWP2bの低水位センサDS5dからHi信号が出力されていなければステップS29の処理に進む。
【0091】
ステップS29では、純水ポンプ111を駆動して、第1貯水タンクWP2aから第2貯水タンクWP2bへと水を供給する。ステップS29に続くステップS30では、第2貯水タンクWP2bの低水位センサDS5dからHi信号が出力されているか判断する。第2貯水タンクWP2bの低水位センサDS5dからHi信号が出力されていればステップS31の処理に進み、第2貯水タンクWP2bの低水位センサDS5dからHi信号が出力されていなければステップS44の処理に進む。
【0092】
ステップS44では、所定時間が経過してタイムアップとなったか判断する。所定時間が経過していなければリターンし、所定時間が経過していればステップS45の処理に進む。
【0093】
ステップS45では、第2貯水タンクWP2bの低水位センサDS5dが異常であるものと判断してフラグFを「3」に設定してリターンする。これは、ステップS29において第1貯水タンクWP2aから第2貯水タンクWP2bに給水を行っているものの、所定時間が経過しても低水位センサDS5dからHi信号が出力されないためである。尚、ステップS45の処理の際には、低水位センサDS5dからHi信号が出力されたものと擬似的に設定してリターンする。
【0094】
ステップS31では、第2貯水タンクWP2bの高水位センサDS5cからHi信号が出力されているか判断する。第2貯水タンクWP2bの高水位センサDS5cからHi信号が出力されていれば、ステップS32の処理に進み、第2貯水タンクWP2bの高水位センサDS5cからHi信号が出力されていなければステップS40の処理に進む。
【0095】
ステップS40では、所定時間が経過してタイムアップとなったか判断する。所定時間が経過していなければリターンし、所定時間が経過していればステップS41の処理に進む。
【0096】
ステップS41では、第2貯水タンクWP2bの高水位センサDS5cが異常であるものと判断してフラグFを「4」に設定してリターンする。これは、ステップS29において第1貯水タンクWP2aから第2貯水タンクWP2bに給水を行っており、低水位センサDS5dからはHi信号が出力されているものの、所定時間が経過しても高水位センサDS5cからHi信号が出力されないためである。尚、ステップS41の処理の際には、高水位センサDS5cからHi信号が出力されたものと擬似的に設定してリターンする。
【0097】
ステップS32では、擬似的に設定されたHi信号が含まれているか判断する。擬似的に設定されたHi信号が含まれていればステップS46の処理に進み、擬似的に設定されたHi信号が含まれていなければステップS48の処理に進む。
【0098】
ステップS46では、異常対応運転を行うか推定供給運転を行うか設定する。ステップS47では、異常が発生している水位センサに対応するフラグFを立てて、リターンする。フラグFは、「1」「2」「3」「4」のいずれか一つ以上設定される。ステップS48では、正常運転制御を行うものと設定する。ステップS49では、フラグFを「0」に設定してリターンする。
【0099】
続いて、図6に示すフローに基づいて水位センサの異常に関するフラグを設定した場合に、図5に示すフローにおいて用いるフラグを設定するフローについて、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0100】
ステップS51では、フラグFが「0」であるか判断する。フラグFが「0」であればステップS57の処理に進み、フラグFが「0」でなければステップS52の処理に進む。ステップS57では、正常運転を許可し、フラグFを「0」としてリターンする。
【0101】
ステップS52では、フラグFが「1」「2」「3」「4」の全ておいて設定されているか判断する。フラグFが「1」「2」「3」「4」の全ておいて設定されていればステップS58の処理に進み、フラグFが「1」「2」「3」「4」の全ておいて設定されていなければステップS53の処理に進む。
【0102】
ステップS58では、水位センサ(高水位センサDS5a、低水位センサDS5b、高水位センサDS5c、低水位センサDS5d)が全て同時に故障しているか、そもそも水が全く供給されていないかの状態であるので、水供給系異常としてフラグFを「6」としてリターンする。
【0103】
ステップS53では、フラグFが「1」「2」「3」「4」のいずれか一つ設定されているか判断する。フラグFが「1」「2」「3」「4」のいずれか一つではなく二つから三つ設定されていればステップS59の処理に進み、フラグFが「1」「2」「3」「4」のいずれか一つ設定されていればステップS54の処理に進む。
【0104】
ステップS59では、水位センサ(高水位センサDS5a、低水位センサDS5b、高水位センサDS5c、低水位センサDS5d)のいずれか二つから三つが同時に故障している状態であるので、水供給系異常としてフラグFを「6」としてリターンする。尚、本実施形態では、水位センサ(高水位センサDS5a、低水位センサDS5b、高水位センサDS5c、低水位センサDS5d)のいずれか二つから三つが同時に故障している場合に水供給系異常であるとしてフラグFを「6」としているが、水位センサ(高水位センサDS5a、低水位センサDS5b、高水位センサDS5c、低水位センサDS5d)のいずれか一つが異常でなければ、実際には水を供給する系から水の供給が途絶えているわけではないので、水が供給されているものと判断する態様も採用することが可能である。
【0105】
ステップS54では、推定供給運転を許可するものとしてフラグFを「5」に設定する。尚、本実施形態の場合、第1貯水タンクWP2aも第2貯水タンクWP2bも、最大満水量300mlのタンクであって、オーバーフロー可能なものを使用している。これは、断水時であっても、水蒸気改質での停止運転が可能なように、毎分1mlの水を4時間以上供給し続けることが可能な水量として設定されている。
【0106】
ステップS54に続くステップS55では、低水位センサDS5b又は低水位センサDS5dが異常である場合は、高水位センサDS5a又は高水位センサDS5cによって水位を推定する低水位推定供給制御による推定供給運転に変更する。推定供給運転を継続する場合、最大使用水量は毎分8mlである。従って、300mlの水を35分前後で使い切ってしまう可能性があるので、高水位センサDS5a又は高水位センサDS5cのHi信号出力から25分後に給水を行って、満水状態を維持している。この動作によって、第1貯水タンクWP2a及び第2貯水タンクWP2bに水が必ず入っている状態を確保することができ、安全性を維持できる。
【0107】
ステップS55に続くステップS56では、高水位センサDS5a又は高水位センサDS5cが異常である場合は、低水位センサDS5b又は低水位センサDS5dによって水位を推定する高水位推定供給制御による推定供給運転に変更する。本実施形態の場合、第1貯水タンクWP2aも第2貯水タンクWP2bも、最大満水量300mlのタンクを使用しているので、低水位センサDS5b又は低水位センサDS5dのHi信号出力から通常30秒程度でタンクを満水にすることができる。そこで、低水位センサDS5b又は低水位センサDS5dのHi信号出力から40秒程度給水を行って、タンクをオーバーフロー気味に満水状態にする。この動作によって、第1貯水タンクWP2a及び第2貯水タンクWP2bに水が必ず入っている状態を確保することができ、安全性を維持できる。
【0108】
図7を参照しながら説明したフラグF「0」「5」「6」は、図5参照しながら説明したフローにおいて用いられる。また、推定供給運転の実行が、所定回数実行され、又は所定時間実行された場合には、水位センサに異常が発生しているものとしてフラグFを6に移行させて異常対応制御を実行することも好ましい。
【0109】
上述した実施形態では、上水から給水が可能である場合について説明したが、上水からの給水を受けずに結露水のみで改質器RFに水を供給する場合について説明する。この場合には、結露水が想定どおりに溜まらない場合も想定されるので、その場合は部分酸化改質反応POXから第1オートサーマル改質反応ATR1への移行を保留することが好ましい。図8に示すフローチャートを参照しながら、部分酸化改質反応POXから第1オートサーマル改質反応ATR1への移行を保留するフローについて説明する。
【0110】
ステップS61では、運転開始タイミングとなったか判断する。運転開始タイミングとなっていなければリターンし、運転開始タイミングとなっていればステップS62の処理に進む。ステップS62では、第1イニシャルチェックを実行し、燃料電池システムFCS各部のチェックを行う。
【0111】
ステップS62に続くステップS63では、空気及び被改質ガス(燃料ガス)の供給系が問題ないか判断する。空気及び被改質ガス(燃料ガス)の供給系に問題があればステップS69の処理に進み、空気及び被改質ガス(燃料ガス)の供給系に問題がなければステップS64の処理に進む。ステップS69では、異常停止処理を実行し、フラグFを「N」に設定して処理を終了する。
【0112】
ステップS64では、イグナイタによって燃料ガスに着火し燃焼運転を開始する。ステップS64に続くステップS65では、燃料電池システムFCSの運転を開始してから所定時間が経過したか判断し、所定時間経過した場合にはステップS66の処理に進む。このように所定時間が経過しているか判断するのは、部分酸化改質反応POXでの運転がある程度継続し、結露水が溜まっていると推認される時間を確保するためである。また、ステップS65の判断は、改質器RFの温度が所定温度を上回ったことを基準としたり、改質器RFの温度が所定温度を上回って所定時間が経過したことを基準としたりすることも好ましい。
【0113】
ステップS66では、第2イニシャルチェックを実行する。第2イニシャルチェックについては図9を参照しながら説明する。図9は、第2イニシャルチェックのフローを示したフローチャートである。
【0114】
ステップS81では、第2イニシャルチェックの時期になったか判断する。第2イニシャルチェックの時期になっていればステップS82の処理に進み、第2イニシャルチェックの時期になっていなければリターンする。
【0115】
ステップS82では、第1貯水タンクWP2aの低水位センサDS5bからHi信号が出力されているか判断する。第1貯水タンクWP2aの低水位センサDS5bからHi信号が出力されていればステップS83の処理に進み、第1貯水タンクWP2aの低水位センサDS5bからHi信号が出力されていなければステップS90の処理に進む。ステップS90では、第1貯水タンクWP2aの低水位センサDS5bが異常であるものとして、フラグFを「1」とする。これは、上述したように部分酸化改質反応POXでの運転がある程度継続しており、通常であれば結露水が溜まっていると思われるほど時間が経過しているのにも拘らず、第1貯水タンクWP2aの低水位センサDS5bからHi信号が出力されないためである。
【0116】
ステップS83では、フラグFをリセット(フラグFが「1」になっている場合は「0」へ)する。ステップS83に続くステップS84では、第2イニシャルチェック開始後所定時間が経過したか判断する。第2イニシャルチェック開始後所定時間が経過していなければリターンし、第2イニシャルチェック開始後所定時間が経過していればステップS85の処理に進む。
【0117】
ステップS85では、純水ポンプ111を駆動し、第1貯水タンクWP2aから第2貯水タンクWP2bへと水を供給する。第1貯水タンクWP2aが満水になる前に第2貯水タンクWP2bに給水することで、早い段階で第1オートサーマル改質反応ATR1へと移行することができる。尚、第1貯水タンクWP2aの低水位センサDS5bに異常がある場合は、第1貯水タンクWP2aの高水位センサDS5aからHI信号が出力されるのを待って第2貯水タンクWP2bへと給水することもできる。ただし、第1貯水タンクWP2aに貯水されるのは結露水であるので、非常に時間がかかる。
【0118】
ステップS85に続くステップS86では、第2貯水タンクWP2bの低水位センサDS5dからHi信号が出力されるか判断する。第2貯水タンクWP2bの低水位センサDS5dからHi信号が出力されればステップS87の処理に進み、第2貯水タンクWP2bの低水位センサDS5dからHi信号が出力されなければステップS91の処理に進む。ステップS91では、所定時間が経過したか判断し、所定時間経過していればステップS92の処理に進み、所定時間経過していなければステップS85の処理に進む。
【0119】
ステップS87では、第2貯水タンクWP2bへの給水が完了したか判断する。第2貯水タンクWP2bへの給水が完了していなければステップS85の処理に進み、第2貯水タンクWP2bへの給水が完了していればステップS88の処理に進む。
【0120】
ステップS88では、推定供給運転を許可し、フラグFを「OK」に設定する。第1貯水タンクWP2aの高水位センサDS5a及び第2貯水タンクWP2bの高水位センサDS5cに異常があるか否かは未確認であるものの、第2貯水タンクWP2bに水があることは確実だからである。
【0121】
ステップ92では、フラグFが「1」であるか判断する。フラグFが「1」あればステップS94の処理に進み、フラグFが「1」でなければステップS88の処理に進む。
【0122】
ステップS94では、水位センサ(高水位センサDS5a、低水位センサDS5b、高水位センサDS5c、低水位センサDS5d)の2個から3個が同時に故障しているものと判断し、水供給系に異常があるものとしてフラグFを「N」に設定する。
【0123】
ステップS88及びステップS94に続くステップS89では、純水ポンプ111を停止し、処理を終了する。
【0124】
図8に戻って説明を続ける。ステップS66における第2イニシャルチェックを上述のように終了すると、ステップS67において、水供給系に問題が無いか、フラグFが「0」又は「OK」であるか判断する。水供給系に問題がなければステップS68の処理に進み、水供給系に問題があればステップS70の処理に進む。ステップS68では、第1オートサーマル改質反応ATR1への移行を許可して通常制御を実行する。
【0125】
ステップS70では、異常判定中であるか判断する。異常判定中であればステップS71の処理に進み、異常判定中でなければステップS73の処理に進む。ステップS71では、第1オートサーマル改質反応ATR1への移行を保留する。ステップS71に続くステップS72では、燃料ガス及び発電用空気の供給量を低下させて処理を終了する。ステップS73では、異常停止処理を実行し、フラグFを「N」に設定して処理を終了する。
尚、貯水タンクWP2から改質器RFに水を供給する運転継続期間において継続チェックである第2イニシャルチェックとして水位センサに異常が発生していないか確認し、異常が発生している場合には推定供給制御を実行したが、運転開始期間においてイニシャルチェックとして水位センサに異常が発生していないか確認し、異常が発生している場合には推定供給制御を実行することも好ましい。
【符号の説明】
【0126】
ADU:補器ユニット
AH1:ヒータ
AH2:ヒータ
AP:空気供給部
AP1:流量調整ユニット
AP2:電磁弁
ATR:オートサーマル改質反応
ATR1:オートサーマル改質反応
ATR2:オートサーマル改質反応
CB:制御ボックス
CE:燃料電池セル
COD:一酸化炭素検知器
CS:燃料電池システム制御部
CS1:操作装置
CS2:表示装置
CS3:報知装置
DS1:改質器温度センサ
DS2:スタック温度センサ
DS3:排気温度センサ
DS4:改質器内圧力センサ
DS5:水位センサ
DS6:水流量センサ
DS7:燃料流量センサ
DS8:改質空気流量センサ
DS9:発電空気流量センサ
DS10:電力状態検出部
DS11:貯湯状態検出センサ
DS12:一酸化炭素検出センサ
DS13:可燃ガス検出センサ
EP:電力取出部
EP1:電力取出ライン
FC:燃料電池
FC1:発電室
FC2:燃焼室
FCM:燃料電池モジュール
FCS:燃料電池システム
FP:燃料供給部
FP1:流量調整ユニット
FP2:脱硫器
FP4,FP5:ガス遮断弁
GD1,GD2:可燃ガス検知器
HW:温水製造装置
MV:混合部
POX:部分酸化改質反応
RF:改質器
RF1:改質部
RF2:蒸発部
SC:燃料電池システム制御部
SR:水蒸気改質反応
WP:水供給部
WP1:流量調整ユニット
WP2:貯水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質形の燃料電池セルを含む燃料電池システムであって、
前記燃料電池セルに供給する燃料ガスの水蒸気改質を行う改質器と、前記燃料電池セルを通過した燃料ガスを燃焼して排出される排出ガスと熱交換を行う熱交換器と、前記改質器に水を供給するための水供給手段と、前記水供給手段を制御する制御手段とを備え、
前記水供給手段は、
前記改質器に供給する水として前記熱交換器における結露水を貯水する貯水タンクと、
前記貯水タンクの水位を検出する水位検出手段と、
前記貯水タンクに貯水された水を前記改質器に圧送するポンプと、を有し、
前記制御手段は、
運転開始期間のイニシャルチェックとは別に、前記熱交換器への排出ガスの供給に合わせて、前記水位検出手段の異常有無を判断する異常判定処理を実行することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
起動時において、前記改質器における改質反応を部分酸化改質反応から開始して、水を用いた改質反応へと遷移させるものであって、前記制御手段は、前記改質器において部分酸化改質反応を起こしている段階で前記異常判定処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
起動時において、前記改質器における改質反応を部分酸化改質反応から開始して、水を用いた改質反応へと遷移させるものであって、前記制御手段は、前記改質器において部分酸化反応を起こしている段階で前記異常判定処理を実行し、前記改質器温度が所定温度を上回っても前記水位検出手段が水位を検出しない場合には、前記水を用いた改質反応を前記改質器において起こさせないように制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
起動時において、前記改質器における改質反応を部分酸化改質反応から開始して、水を用いた改質反応へと遷移させるものであって、
前記水供給手段は、前記改質器に供給する水を純水とするための逆浸透膜を有し、
前記貯水タンクは、前記逆浸透膜よりも上流側に配置されている第1タンクと、前記逆浸透膜よりも下流側である前記改質器側に配置されている第2タンクとによって構成され、
前記第1タンクに溜められた水を前記逆浸透膜を通して前記第2タンクに圧送する第1ポンプと、前記第2タンクに溜められた水を前記改質器に圧送する第2ポンプとが設けられており、
前記第1タンク及び前記第2タンクにはそれぞれ前記水位検出手段が設けられており、
前記制御手段は、
前記改質器において部分酸化改質反応を起こしている段階で前記異常判定処理を実行し、前記改質器温度が所定温度を上回っても前記第2タンクに設けられている前記水位検出手段が水位を検出しない場合には、前記第1ポンプを駆動して前記第2タンクへと水を強制的に供給することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記水を用いた改質反応を前記改質器において起こさせないように制御するにあたって、前記改質器において前記部分酸化改質反応の温度が所定温度以上に上昇しないように温度抑制制御を実行することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記温度抑制制御を、前記改質器に供給する被改質ガスの供給量を抑制することで実行することを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記水位検出手段が水位を検出しない状態が所定時間以上継続した場合には、前記水位検出手段に異常が発生しているものとして異常処理制御を実行することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記水位検出手段が水位を検出しない場合に前記燃料電池を構成する燃料電池セルの酸化を抑制する温度になるように制御すると共に、前記異常処理制御においては前記改質器への被改質ガスの供給量を低下させて冷却停止処理を実行することを特徴とする請求項7に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−238591(P2010−238591A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86543(P2009−86543)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】