説明

燃料電池用セパレータおよびその製造方法、製造装置、並びに、それを用いた燃料電池

【課題】ガスバリア性に優れたプラスチック製の燃料電池用セパレータおよびその製造方法、製造装置、並びに、それを用いた燃料電池を提供すること。
【解決手段】少なくとも、燃料ガス流路となる条溝部を有する第1層、酸化剤ガス流路となる条溝部を有する第2層のどちらか一方を備え、
前記第1層の組成が、ポリアミド樹脂100重量部に対してカーボン300〜800重量部であり、前記第2層の組成が、ポリエステルコポリマー樹脂100重量部に対してカーボン300〜800重量部ある燃料電池用セパレータであって、
前記カーボンの平均粒径(メジアン径)を10〜100μmとし、
前記カーボンのアスペクト比(長径:短径)を1〜10とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性に優れた燃料電池用セパレータおよびその製造方法、製造装置、並びに、それを用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質膜の一方の面にアノード(燃料極)、他方の面にカソード(酸化剤極)を設けた電解質膜電極接合体(以下MEAと記述する)の両側に、セパレータを配した単電池セルを複数積層した構造になっている。
アノードに対向するセパレータ表面には、燃料ガスを流通させるための凹溝状の燃料ガス流路が設けられている。
また、カソードに対向するガスセパレータ表面には、酸化剤ガスを流通させるための凹溝状の酸化剤ガス流路が設けられている。
そして、燃料ガス流路に水素を主体とした改質ガス(又は水素ガス)を供給すると共に、酸化剤ガス流路に酸化剤ガス(通常は空気)を供給し、電解質膜を介して燃料ガスの水素と酸化剤ガスの酸素とにより下記の電気化学反応を生じさせて起電力を得るようにしたものである。
【0003】
燃料極;H→2H+2e− (1)
酸化剤極;4H+4e−+O→2HO (2)
【0004】
セパレータは、隣り合う単電池セルの燃料ガス流路と酸化剤ガス流路を仕切り、燃料ガスと酸化剤ガスの相互流入を防止するものである。
また、セパレータは、MEAにおいて触媒反応により発生した電子を、外部回路へ供給するための供給路としての役割を有する。
【0005】
このため、セパレータには、ガスバリア性、電気伝導性が要求されている。
【0006】
セパレータの材料としては、ガスバリア性、電気伝導性を併せ持つカーボンが汎用らされている。
【0007】
しかし、カーボン製セパレータは、切削加工を用いて作製されるため、加工費が高い。(特許文献1参照)
また、カーボンは脆いため、振動の多い用途、例えば、自動車等の車両に搭載する燃料電池において、割れの発生が懸念される。
【0008】
上記カーボング製セパレータの問題点を解決するために、セパレータの材料として金属製セパレータを用いる試みがなされている。
【0009】
しかし、金属製セパレータを用いた燃料電池は、発電するにつれ、金属製セパレータ表面に不動態被膜が形成され、金属製セパレータの電気伝導性が劣化して、燃料電池の出力が低下していくという問題が起こっている。
【0010】
上記金属製セパレータの問題点を解決するために、カーボン粉末と熱硬化性樹脂を混練した後、金型を用いて加熱成型して作ったプラスチック製セパレータを用いる試みがなされている。
【0011】
【特許文献1】特許第3700016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記プラスチック製セパレータは、ガスバリア性が不十分な物であり、燃料電池の出力が低下するという問題が起こっている。
【0013】
本発明の課題は、ガスバリア性に優れたプラスチック製の燃料電池用セパレータおよびその製造方法、製造装置、並びに、それを用いた燃料電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明は、少なくとも、燃料ガス流路となる条溝部を有する第1層、酸化剤ガス流路となる条溝部を有する第2層のどちらか一方を備え、
前記第1層の組成が、ポリアミド樹脂100重量部に対してカーボン300〜800重量部であり、前記第2層の組成が、ポリエステルコポリマー樹脂100重量部に対してカーボン300〜800重量部ある燃料電池用セパレータであって、
前記カーボンの粒径(メジアン径)が10〜100μmであり、
前記カーボンのアスペクト比(長径:短径)が1〜10であることを特徴とする燃料電池用セパレータである。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記ポリアミド樹脂が、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用セパレータである。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記ポリエステルコポリマー樹脂が、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池用セパレータである。
【0017】
請求項4に記載の発明は、ポリアミド樹脂を添加したカーボンと、ポリエステルコポリマー樹脂を添加したカーボンとを、それぞれ溶融混練して両者を合流させスリツト状の開口部からシート状に共押出して積層体とし、該積層体を前記開口部直下に設けた凹凸部を有した一対の冷却ロールで冷却すると同時に、前記積層体に条溝部を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法である。
【0018】
請求項5に記載の発明は、樹脂材料を溶融混練して溶融混練樹脂を生成するための、シリンダーおよびスクリューを備えた複数の押出機と、
前記樹脂材料を前記複数の押出機内に供給するためのホッパーと、
前記複数の押出機から輸送管を介して前記溶融混練樹脂を単一の開口部に移送するフィードブロックと、
前記開口部から押し出される前記溶融混練樹脂の積層体を冷却および成形するための、前記開口部直下に設けた一対の冷却ロールと、
前記一対の冷却ロールどうしの距離を調整するための距離調整機構と、
前記一対の冷却ロールを駆動するための駆動機構を組み合せた燃料電池用セパレータの製造装置において、
前記一対の冷却ロールどうしは、同設計であって、表面にはロール巾方向に溝部と山部が設けられ、一方の冷却ロールの溝部と他方の冷却ロールの山部が噛み合う構造になっており、
前記駆動機構が、前記一対の冷却ロールに対して軸方向から光を照射する少なくとも一つ以上の光源と、該光源に対して前記一対の冷却ロールと逆側にある少なくとも一つ以上の受光器を備え、
該受光器で検知した、前記一対の冷却ロールの前記山部と前記溝部の噛み合わせ部分に生じる前記光源から受ける光量の変化を信号化し、該信号を基にして、前記一対の冷却ロールを個別に駆動する駆動機構であることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造装置である。
【0019】
請求項6に記載の発明は、電解質膜の表裏面に触媒層が設けられ、該触媒層の前記電解質膜と反対側の面にガス拡散材が設けられ、該ガス拡散材の前記触媒層と反対側の面に、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータを設けたことを特徴とする燃料電池である。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記電解質膜がスルホン基含有パーフルオロカーボン、または、カルボキシル基含有パーフルオロカーボンであることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池である。
【0021】
請求項8に記載の発明は、前記触媒層が、触媒を担持した電子伝導性物質、および、プロトン伝導性物質からなることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の燃料電池である。
【0022】
請求項9に記載の発明は、前記プロトン伝導性物質が、スルホン酸基含有パーフルオロカーボン、ポリエーテルスルフォン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、または、スルホン化ポリイミドであることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池である。
【0023】
請求項10に記載の発明は、前記電子伝導性物質が、二酸化珪素、または、炭素であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の燃料電池である。
【0024】
請求項11に記載の発明は、前記触媒が、Au、Pt、Pd、Rh、Ru、OsおよびIrから選ばれた1種または2種以上の金属からなることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の燃料電池である。
【0025】
請求項12に記載の発明は、前記触媒の平均粒径(体積平均粒径(Dv))が1nm以上5nm以下であることを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか1項に記載の燃料電池である。
【0026】
請求項13に記載の発明は、前記電子伝導性物質に対する前記触媒の担持率が30〜70重量%であることを特徴とする請求項8乃至請求項12のいずれか1項に記載の燃料電池である。
【0027】
請求項14に記載の発明は、前記ガス拡散材が、導電性多孔性基材であることを特徴とする請求項6乃至請求項13のいずれか1項に記載の燃料電池である。
【0028】
請求項15に記載の発明は、前記導電性多孔性基材が、カーボンペーパー、カーボンクロスであることを特徴とする請求項14に記載の燃料電池である。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の発明は、少なくとも、燃料ガス流路となる条溝部を有する第1層、酸化剤ガス流路となる条溝部を有する第2層のどちらか一方を備え、
前記第1層の組成が、ポリアミド樹脂100重量部に対してカーボン300〜800重量部であり、前記第2層の組成が、ポリエステルコポリマー樹脂100重量部に対してカーボン300〜800重量部ある燃料電池用セパレータであって、
前記カーボンの粒径(メジアン径)を10〜100μmとし、
前記カーボンのアスペクト比(長径:短径)を1〜10とすることにより、導電率が0.2S/cm以上、水素透過率が0.2cm/m・24hr・1atm以下、酸素透過率が0.2cm/m・24hr・1atm以下の燃料電池用セパレータを作製することができるものである。
また、水素透過率0.2cm/m・24hr・1atmは、燃料電池用セパレータ水素透過率の許容上限値である。
また、酸素透過率0.2cm/m・24hr・1atmは、燃料電池用セパレータ酸素透過率の許容上限値である。
【0030】
カーボンの平均粒径(体積平均粒径(Dv))が10μm未満であると、ポリアミド樹脂とカーボン混合時、および、ポリエステルコポリマー樹脂とカーボン混合時に、カーボンが凝集してしまう。
また、粒径(メジアン径)が100μmを超えると、ポリアミド樹脂とカーボン、および、ポリエステルコポリマー樹脂とカーボンを均一に混合できないために、セパレータ内にカーボン粗密部が生じ、セパレータの導電率が0.2S/cmを下回ってしまう。
導電率0.2S/cmは、燃料電池用セパレータ導電率の許容下限値である。
【0031】
カーボンのアスペクト比(長径:短径)が10より大きいと、冷却ロールでの圧縮成型時にセパレータの長手方向に偏平形状のカーボンの面が揃ってしまうために、セパレータの厚み方向の導電効率が低下し、セパレータの導電率は0.2S/cmを下回ってしまう。
導電率0.2S/cmは、燃料電池用セパレータ導電率の許容下限値である。
【0032】
請求項2の発明は、ポリアミド樹脂として、ポリアミド樹脂の中でも密度が高いポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)(密度=1.21g/cc(JIS K 7112水中置換法に準拠))を用いることにより、水素透過率が0.2cm/m・24hr・1atm(JIS K7126のA法(差圧法)に準拠)以下の燃料電池用セパレータを作製することができるものである。
【0033】
請求項3の発明は、ポリエステルコポリマー樹脂として、ポリエステルコポリマー樹脂の中でも密度が高いポリエチレンテレフタレート(PET)(密度=1.40g/cc(JIS K 7112水中置換法に準拠))を用いることにより、酸素透過率が0.2cm/m・24hr・1atm(JIS K7126のA法(差圧法)に準拠)以下の燃料電池用セパレータを作製することができるものである。
【0034】
請求項5の発明は、樹脂材料を溶融混練して溶融混練樹脂を生成するための、シリンダーおよびスクリューを備えた複数の押出機と、
前記樹脂材料を前記複数の押出機内に供給するためのホッパーと、
前記複数の押出機から輸送管を介して前記溶融混練樹脂を単一の開口部に移送するフィードブロックと、
前記開口部から押し出される前記溶融混練樹脂の積層体を冷却および成形するための、前記開口部直下に設けた一対の冷却ロールと、
前記一対の冷却ロールどうしの距離を調整するための距離調整機構と、
前記一対の冷却ロールを駆動するための駆動機構を組み合せた燃料電池用セパレータの製造装置において、
前記一対の冷却ロールどうしは、同設計であって、表面にはロール巾方向に溝部と山部が設けられ、一方の冷却ロールの溝部と他方の冷却ロールの山部が噛み合う構造になっており、
前記駆動機構が、前記一対の冷却ロールに対して軸方向から光を照射する少なくとも一つ以上の光源と、該光源に対して前記一対の冷却ロールと逆側にある少なくとも一つ以上の受光器を備え、
該受光器で検知した、前記一対の冷却ロールの前記山部と前記溝部の噛み合わせ部分に生じる前記光源から受ける光量の変化を信号化し、該信号を基にして、前記一対の冷却ロールを個別に駆動する駆動機構を設けることにより、燃料電池用セパレータ形状を均一に形成することができるものである。
【0035】
請求項6の発明は、電解質膜の表裏面に触媒層を設け、該触媒層の前記電解質膜と反対側の面にガス拡散材を設け、該ガス拡散材の前記触媒層と反対側の面に、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータを設けることにより、出力特性に優れた燃料電池を作製することができるものである。
【0036】
請求項11の発明は、触媒が、Au、Pt、Pd、Rh、Ru、OsおよびIrから選ばれた1種または2種以上の貴金属からなるが、これら1B族または8族の貴金属は酸素還元能力、水素酸化能力が高いので、触媒効率の良い燃料電池を作製することができるものである。
【0037】
請求項12の発明は、触媒の平均粒径(体積平均粒径(Dv))が1nm以上5nm以下であるので、触媒の単位重量当たりの表面積が非常に大きい、触媒効率の良い出力特性に優れた燃料電池を作製することができるものである。
【0038】
請求項13の発明は、前記電子伝導性物質に対する前記触媒の担持率を30〜70重量%にすることにより、触媒効率および出力特性に優れた燃料電池を作製することができるものである。
【0039】
請求項14の発明は、前記ガス拡散材として導電性多孔性基材を用いることにより、MEAで発生した電子を外部回路に伝導することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の燃料電池用セパレータの形成方法および製造装置の一例を、図1および図2を基に説明する。
【0041】
まず、ポリアミド樹脂、および、カーボンの溶融混練物を作製する。(図1参照)
【0042】
ポリアミド樹脂は水素バリア性に優れる。
ポリアミド樹脂としては、ナイロン6(Ny6)、メタキシリレンアジパミド(MXD6)等を用いることができるが、中でも密度が高く水素バリア性に優れるメタキシリレンアジパミド(MXD6)を用いることが好ましい。
【0043】
カーボンとしては、天然黒鉛粉、膨張黒鉛粉、炭素繊維などを用いることができ、機械強度、電気比抵抗、ガス不透過性等に優れる膨張黒鉛粉を用いることが好ましい。
【0044】
膨張黒鉛粉の製造方法としては、天然黒鉛を酸性物質および酸化剤を含む溶液中に浸漬して酸化黒鉛を生成させ、粉砕する方法を用いることができる。
【0045】
天然黒鉛を処理する酸性物質としては、酸濃度90重量%以上の硫酸または硫酸と硝酸の混酸を用いることができる。
【0046】
天然黒鉛と酸性物質の混合比は、天然黒鉛100重量部に対して酸性物質100重量部〜1000重量部が好ましい。
【0047】
酸化剤としては、酸濃度10重量%〜40重量%の過酸化水素または塩酸を用いることができる。
【0048】
天然黒鉛と酸化剤の混合比は、天然黒鉛100重量部に対して酸化剤10重量部〜60重量部が好ましい。
【0049】
カーボンの粒径(メジアン径)としては、10〜100μmを用いることができ、特に粒径(メジアン径)が10〜50μmのものが好ましい。
【0050】
粒径(メジアン径)が10μm未満であると、ポリアミド樹脂とカーボン、および、ポリエステルコポリマー樹脂とカーボン混合時に、カーボンが凝集してしまう。
また、粒径(メジアン径)が100μmを超えると、ポリアミド樹脂とカーボン、および、ポリエステルコポリマー樹脂とカーボンを均一に混合できないために、セパレータ内にカーボンの粗密部が生じ、セパレータの導電率は0.2S/cmを下回ってしまう。
導電率0.2S/cmは、燃料電池用セパレータ導電率の許容下限値である。
【0051】
また、カーボンのアスペクト比(長径:短径)としては、1〜10を用いることができ、特にアスペクト比が1〜7のものが好ましい。
アスペクト比が大きいカーボンほど偏平形に、アスペクト比が小さいカーボンほど球形に近い。
アスペクト比が10より大きいと、冷却ロールでの圧縮成型時にセパレータの長手方向に偏平形状の膨張黒鉛粉の面が揃ってしまうために、セパレータの厚み方向の導電効率が低下し、セパレータの導電率は0.2S/cmを下回ってしまう。
導電率0.2S/cmは、燃料電池用セパレータ導電率の許容下限値である。
【0052】
ポリアミド樹脂とカーボンとの配合割合は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、カーボン300〜800重量部を用いることができる。
【0053】
ポリアミド樹脂100重量部に対してカーボン300重量部未満の配合であると、セパレータの導電率は0.2S/cmを下回ってしまう。
導電率0.2S/cmは、燃料電池用セパレータ導電率の許容下限値である。
【0054】
また、ポリアミド樹脂100重量部に対してカーボン800重量部以上の配合であると、セパレータの曲げ強度は20MPaを下回ってしまう。
曲げ強度20MPaは、燃料電池用セパレータ強度の許容下限値である。
【0055】
ポリアミド樹脂とカーボンを溶融混練する方法としては、ポリアミド樹脂とカーボンの混合物を、押出機5に付随するホッパー1を通して加熱したシリンダー2へ導入し、加熱したシリンダー2内でスクリュー3を用いて溶融混練する方法を用いることができる。
【0056】
溶融混練する温度としては、290℃〜310℃を用いることができる。
【0057】
次に、ポリエステルコポリマー樹脂、および、カーボンの溶融混練物を作製する。(図1参照)
【0058】
ポリエステルコポリマー樹脂は耐熱性および酸素バリア性に優れる。
アルカリ型、固体高分子型および硫酸型の燃料電池の動作温度は、70〜120℃、好ましくは80℃である。
また、リン酸型の燃料電池の動作温度は、170〜200℃、好ましくは190℃である。
これに対して、ポリエステルコポリマー樹脂の融点は、220℃以上である。(ポリエチレンテレフタレートの融点は264℃、ポリエチレンナフタレートの融点は262℃、ポリブチレンテレフタレートの融点は228℃である。)
ポリエステルコポリマー樹脂としては、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、および、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等を用いることができるが、中でも密度が高く酸素バリア性に優れるポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが好ましい。
【0059】
カーボンとしては、天然黒鉛粉、膨張黒鉛粉、炭素繊維などを用いることができ、機械強度、電気比抵抗、ガス不透過性等に優れる膨張黒鉛粉を用いることが好ましい。
【0060】
膨張黒鉛粉の製造方法としては、天然黒鉛を酸性物質および酸化剤を含む溶液中に浸漬して酸化黒鉛を生成させ、粉砕する方法を用いることができる。
【0061】
天然黒鉛を処理する酸性物質としては、酸濃度90重量%以上の硫酸または硫酸と硝酸の混酸を用いることができる。
【0062】
天然黒鉛と酸性物質の混合比は、天然黒鉛100重量部に対して酸性物質100重量部〜1000重量部が好ましい。
【0063】
酸化剤としては、酸濃度10重量%〜40重量%の過酸化水素または塩酸を用いることができる。
【0064】
天然黒鉛と酸化剤の混合比は、天然黒鉛100重量部に対して酸化剤10重量部〜60重量部が好ましい。
【0065】
カーボンの粒径(メジアン径)としては、10〜100μmを用いることができ、特に粒径(メジアン径)が10〜50μmのものが好ましい。
【0066】
粒径(メジアン径)が10μm未満であると、ポリアミド樹脂とカーボン混合時、および、ポリエステルコポリマー樹脂とカーボン混合時に、カーボンが凝集してしまう。
また、粒径(メジアン径)が100μmを超えると、ポリアミド樹脂とカーボン、および、ポリエステルコポリマー樹脂とカーボンを均一に混合できないために、セパレータ内にカーボンの粗密部が生じ、セパレータの導電率は0.2S/cmを下回ってしまう。
導電率0.2S/cmは、燃料電池用セパレータ導電率の許容下限値である。
【0067】
また、カーボンのアスペクト比(長径:短径)としては、1〜10を用いることができ、特にアスペクト比が1〜7のものが好ましい。
アスペクト比が大きいカーボンほど偏平形に、アスペクト比が小さいカーボンほど球形に近い。
アスペクト比が10より大きいと、冷却ロールでの圧縮成型時にセパレータの長手方向に偏平形状のカーボンの面が揃ってしまうために、セパレータの厚み方向の導電効率が低下し、セパレータの導電率は0.2S/cmを下回ってしまう。
導電率0.2S/cmは、燃料電池用セパレータ導電率の許容下限値である。
【0068】
ポリエステルコポリマー樹脂とカーボンとの配合割合は、ポリエステルコポリマー樹脂100重量部に対して、カーボン300〜800重量部を用いることができる。
【0069】
ポリエステルコポリマー樹脂100重量部に対してカーボン300重量部未満の配合であると、セパレータの導電率は0.2S/cmを下回ってしまう。
導電率0.2S/cmは、燃料電池用セパレータ導電率の許容下限値である。
【0070】
また、ポリエステルコポリマー樹脂100重量部に対してカーボン800重量部以上の配合であると、セパレータの曲げ強度は20MPaを下回ってしまう。
曲げ強度20MPaは、燃料電池用セパレータ強度の許容下限値である。
【0071】
ポリエステルコポリマー樹脂とカーボンを溶融混練する方法としては、ポリエステルコポリマー樹脂とカーボンの混合物を、押出機5´に付随するホッパー1´を通して加熱したシリンダー2´へ導入し、加熱したシリンダー2´内でスクリュー3´を用いて溶融混練する方法を用いることができる。
【0072】
溶融混練する温度としては、290℃〜310℃を用いることができる。
【0073】
最後に、ポリアミド樹脂とカーボンの溶融混練物と、ポリエステルコポリマー樹脂とカーボンの溶融混練物とを、フィードブロック4内で合流させスリツト状の開口部からシート状に共押出して、セパレータの条溝形状をトレースした1対の冷却ロール6を用いて、セパレータを成形する。(図1参照)
【0074】
冷却ロールの温度は、ポリエステルの融点(Tm)、ポリアミドの融点(Tm)のうち低い方の温度より、少くとも10℃以上低い温度を用いることができ、0〜50℃が好ましい。
【0075】
セパレータの厚さは、1対の冷却ロール6どうしの距離を距離調整手段(図示せず)により調整することにより、調節する。
【0076】
セパレータの条溝形状は、1対の冷却ロール6の表面に凹凸形状を設け、1対の冷却ロール6どうしの回転を同期させることにより調整することができる。
【0077】
1対の冷却ロール6どうしの回転を同期させる方法としては、
照明7および照明8を用いて一対の冷却ロールに対して軸方向から光を照射し、
照明7および照明8に対して一対の冷却ロールと逆側にある受光器777および受光器888により、一対の冷却ロールの山部と溝部の噛み合わせ部分に生じる光量の変化を検知および信号化し、信号を基にして、前記一対の冷却ロールを個別に駆動し同期させる方法を用いることができる。
【0078】
本発明の燃料電池の製造方法の一例を、図3を基に説明する。
【0079】
まず、ガス拡散材11上に触媒層22を形成することにより、電極33を作製する。(図3(a)参照)
【0080】
ガス拡散材11の材料としては、カーボンペーパー、カーボンクロスを用いることができる。
【0081】
触媒層22の材料としては、プロトン伝導性物質であるスルホン基含有パーフルオロカーボン、ポリエーテルスルフォン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリイミド等、および、電子伝導性物質である二酸化珪素、炭素等、および、触媒であるAu、Pt、Pd、Rh、Ru、OsおよびIrから選ばれた1種または2種以上の貴金属を用いることができる。
【0082】
触媒層22の形成方法としては、触媒を担持した電子伝導性物質とプロトン伝導性物質を、IPAやNPA等のアルコール、および、水に溶解して触媒インクを生成した後、触媒インクをガス拡散材11上に、バーコート、スプレー、または、スクリーン印刷する方法を用いることができる。
【0083】
触媒と電子伝導性物質は、重量比で1:1〜50:1の範囲にすることが好ましい。
【0084】
次に、2組の電極33の触媒層22どうしを向かい合わせにして、電解質膜44を挟み込み積層して、MEA55を作製する。(図3(c)参照)
【0085】
電解質膜44の材料としては、スルホン基含有パーフルオロカーボン、または、カルボキシル基含有パーフルオロカーボンを用いることができる。
【0086】
MEA55の製造方法としては、2組の電極33の触媒層22どうしを向かい合わせにして電解質膜44を挟み、熱圧着する方法を用いることができる。
加熱温度としては、触媒層22および電解質膜44の樹脂の軟化温度やガラス転位温度を超える温度を用いることができる。
触媒層22および電解質膜44の樹脂がスルホン基含有パーフルオロカーボンの場合は、温度100℃〜300℃、圧力1MPa〜15MPa、時間5秒〜400秒の熱圧着条件を用いることができる。
【0087】
最後に、セパレータ66を介して、MEA55を複数個積層し、さらにその両側に集電板77を配置してボルトとナットで締結して燃料電池を得る。(図3(d)参照)
【0088】
集電板77の材料としては、銅、SUS(JIS規格)(Crを10%以上含有する鉄基合金)等を用いることができる。
【0089】
ボルトとナットで締結する際の圧力は、MEA55の厚さ方向に対して、面圧1〜2kg/cmとすることが好ましい。
【実施例】
【0090】
(燃料電池用セパレータの作製)
まず、濃度99%の硫酸600kgと、濃度99%の硝酸200kgと、天然黒鉛(F48C、日本黒鉛(株)製、商品名)400kgを、容積2000リットルのフッ素樹脂槽に入れ攪拌機を用いて60rpmの条件で100分間攪拌した。
【0091】
次に、濃度35%過酸化水素水40kgを加え、攪拌機を用いて60rpmの条件で150分間攪拌した。
【0092】
次に、減圧濾過を行って、酸化黒鉛(水洗前)を酸と濾別した。
【0093】
次に、容積5000リットルのフッ素樹脂槽に酸化黒鉛(水洗前)を入れ、2500リットルの水を加え、攪拌機を用いて60rpmの条件で150分間攪拌して酸化黒鉛を水洗した。
【0094】
次に、減圧濾過を行って、酸化黒鉛を得た。
【0095】
次に、酸化黒鉛を容積200リットルのSUS316製トレーに入れ、平坦化した。
【0096】
次に、加熱炉を用いて110℃の条件下で1時間乾燥させた。
【0097】
次に、加熱炉を用いて窒素ガス雰囲気下において800℃の条件下で5分間加熱して、膨張黒鉛を得た。
【0098】
次に、膨張黒鉛をロール圧延して、膨張黒鉛シート(密度0.99g/cm)を得た。
【0099】
次に、膨張黒鉛シートを、粗粉砕機、微粉砕機の順で、粗粉砕機および微粉砕機を用いて粉砕し、平均粒子径(体積平均粒径(Dv))が200μmの膨張黒鉛粉砕片を得た。
【0100】
次に、膨張黒鉛粉砕片と水200リットルを超音波粉砕機に入れ、200W、28kHzの超音波を1時間作用させた後、100℃下で2時間乾燥することにより、粒径(メジアン径)が10μm〜100μm、アスペクト比(長径:短径)が1〜10の膨張黒鉛粉末を得た。
【0101】
次に、上記の膨張黒鉛粉末110kgと、直径が2〜4mm、長さが2.5〜4mmの円柱状の平均ペレット重量10〜50mgの三菱ガス化学(株)製ポリメタキシリレンアジパミド(MXナイロン6007(商品名)相対粘度ηr=2.7)20kgを、容積500リットルのフッ素樹脂槽に入れた後、100℃下において、攪拌機を用いて60rpmの条件で1時間攪拌し、その後、乾燥することにより、膨張黒鉛粉とポリメタキシリレンアジパミドの混合物を調整した。
【0102】
次に、上記の膨張黒鉛粉末110kgと、直径が2〜3.5mm、長さが2〜4mmの円柱状の平均ペレット重量が10〜40mgの日本ユニペット(株)製ポリエチレンテレフタレート(RT543C(商品名)、固有粘度IV=0.56dl/g)20kgを、容積500リットルのフッ素樹脂槽に入れた後、100℃下において、攪拌機を用いて60rpmの条件で1時間攪拌し、その後、乾燥することにより、膨張黒鉛粉とポリエチレンテレフタレートの混合物を調整した。
【0103】
次に、ロール表面巾方向に、幅3mmの溝部と幅1mmの山部が高低差2mmで交互に設けられた外周3.14mの一対の冷却ロール(クロムメッキロール)を、各々の最短距離が1mmになるように移動し、
一対の冷却ロールに対して軸方向から光を照射する光源と、光源に対して一対の冷却ロールと逆側にある受光器と、受光器で検知した一対の冷却ロールの山部と溝部の噛み合わせ部分に生じる光量の変化を信号化し、信号を基にして、一対の冷却ロールを個別に駆動できる駆動手段を用いて、山部と溝部の最短距離が常に1mmとなるように同期を取りながら一対の冷却ロールを駆動した。
【0104】
次に、上記膨張黒鉛粉とポリメタキシリレンアジパミドの混合物を第1の押出機のホッパーへ投入し、300℃に加熱されたシリンダー内で、窒素ガスを20g/cmの圧力で圧入しながら、スクリュー速度410rpm、圧力90kg/cmの条件下で、平均滞留時間が25秒となるように溶融混練することにより、膨張黒鉛粉とポリメタキシリレンアジパミドの溶融混練物を生成した。
これと同時に、次に、上記膨張黒鉛粉とポリエチレンテレフタレートの混合物を、第2の押出機のホッパーへ投入し、300℃に加熱されたシリンダー内で、窒素ガスを20g/cmの圧力で圧入しながら、スクリュー速度410rpm、圧力90kg/cmの条件下で、平均滞留時間が25秒となるように溶融混練することにより、膨張黒鉛粉とポリエチレンテレフタレートの溶融混練物を生成した。
【0105】
次に、膨張黒鉛粉とポリメタキシリレンアジパミドの溶融混練物と、膨張黒鉛粉とポリエチレンテレフタレートの溶融混練物をフィードブロック内で合流させ、フィードブロック内圧力150kg/cm、フィードブロック出口温度290℃の条件において、フィードブロック出口から、表面温度を30℃±1℃に制御した上記一対の冷却ロール間に共押出し冷却成形し、その後、裁断することにより、縦11cm×横11cm×厚さ3mmのセパレータを得た。
【0106】
(燃料電池用セパレータの水素透過率の測定)
次に、セパレータを、水素または酸素パージ室と、
水素または酸素パージ室への水素または酸素供給手段と、
水素または酸素パージ室とセパレータとの密着手段、
水素または酸素捕集室と、
水素または酸素捕集室内の水素または酸素の検量手段と、
水素または酸素捕集室とセパレータとの密着手段
を備えた、酸素または水素ガス透過率測定装置を用いて、以下の様にセパレータの水素透過率を測定した。
【0107】
まず、セパレータの、膨張黒鉛粉とポリメタキシリレンアジパミドからなる面側に、水素パージ室を密着させ、水素パージ室内を、圧力1kg/cmおよび温度80℃(燃料電池動作温度)の水素で満たした。
次に、セパレータの、膨張黒鉛粉とポリエチレンテレフタレートからなる面側に、水素捕集室を密着させ、水素パージ室からセパレータを透過して水素捕集室に到達した水素を、圧力1kg/cmおよび温度80℃(燃料電池動作温度)の窒素をキャリアガスに用いて水素捕集室から窒素との混合ガスとして回収し、回収した混合ガス内の水素濃度を測定することにより、セパレータの水素透過率を算出した。
水素透過率は、0.1cm/m・24hr・1atm(80℃)であった。
【0108】
(燃料電池用セパレータの酸素透過率の測定)
次に、上記の酸素または水素ガス透過量測定装置を用いて、以下の様にセパレータの酸素透過率を測定した。
【0109】
まず、セパレータの、膨張黒鉛粉とポリエチレンテレフタレートからなる面側に、酸素パージ室を密着させ、酸素パージ室内を、圧力1kg/cmおよび温度80℃(燃料電池動作温度)の酸素で満たした。
次に、膨張黒鉛とポリメタキシリレンアジパミドからなる面側に、酸素捕集室を密着させ、酸素パージ室からセパレータを透過して酸素捕集室に到達した酸素を、圧力1kg/cmおよび温度80℃(燃料電池動作温度)の窒素をキャリアガスに用いて酸素捕集室から窒素との混合ガスとして回収し、回収した混合ガス内の酸素濃度を測定することにより、セパレータの酸素透過率を算出した。
酸素透過率は、0.1cm/m・24hr・1atm(80℃)であった。
【0110】
(燃料電池用セパレータの導電率の測定)
次に、燃料電池用セパレータの上下に1Vの直流電圧をかけ、燃料電池用セパレータに流れた電流を電流計で測定し、測定値を基に導電率を算出した。
燃料電池用セパレータの導電率は0.3S/cmであった。
【0111】
(燃料電池用セパレータの曲げ強度の測定)
次に、JIS K6911に準拠して、燃料電池用セパレータの曲げ強度を測定した。
燃料電池用セパレータの曲げ強度は、30MPaであった。
【0112】
(燃料電池の作製)
次に、以下の組成になるように、平均粒径が3nmの白金を担持した電子伝導性物質(白金:電子伝導性物質=1:1(重量比))、プロトン伝導性物質を溶媒に溶解した触媒インクを調整した。
・白金を担持したカーボン(電子伝導性物質) 7.5重量%
・スルホン基含有パーフルオロカーボン(プロトン伝導性物質) 2.5重量%
・水 30.0重量%
・IPA 30.0重量%
・NPA 30.0重量%
【0113】
次に、この触媒インクを、バーコーターを使用して、200mm×200mmのサイズに断裁した厚さ190μmのカーボンペーパー上に塗布した。
【0114】
次に、窒素雰囲気中、120℃、1時間の熱処理を施した後、30分間放冷し、電極を作製した。
【0115】
次に、上記の方法で作製した2枚の電極の触媒層どうしを向かい合わせにして、厚さ50μmのスルホン基含有パーフルオロカーボンを挟んで、130℃、30分、3MPaの条件で熱圧着してMEAを作製した。
【0116】
最後に、JIS規格SUS304製の集電板/燃料電池用セパレータ/MEA/燃料電池用セパレータ/MEA/燃料電池用セパレータ/JIS規格SUS304製の集電板の順に積層し、その後、MEAの厚さ方向に対して、面圧1.5kg/cmにて、ボルトとナットを用いて締結することにより燃料電池を得た。
【0117】
(燃料電池の出力密度の測定)
次に、燃料電池の出力密度を、エレクトロケミカルインターフェース(ソーラトロン社製SI−1287)、周波数応答アナライザー(ソーラトロン社製SI−1260)、電子負荷器(スクリブナー社製890CL)が用いられている燃料電池測定システムGFT−SG1(株式会社東陽テクニカ製)を用いて、以下のように測定した。
【0118】
まず、上記の燃料電池をグラファイト製の発電セルに装着後、40℃、相対湿度100%の条件にて10時間保管した。
この間、厚さ50μmのスルホン基含有パーフルオロカーボン膜を十分に湿潤させる目的で、燃料電池には1A/cmの直流電流を発電モードで流し続けた。
【0119】
次に、セル温度を80℃、アノード加湿器温度を80℃、カソード加湿器温度を80℃、配管温度を120℃、アノードの水素ガス流量を0.3リットル/分、カソードの酸素ガス流量を1.0リットル/分の条件で燃料電池の出力を測定した。
燃料電池の出力密度は、1.03W/cmであった。
【0120】
<比較例1>
粒径(メジアン径)が10〜100μmであり、
アスペクト比(長径:短径)が10超〜20の膨張黒鉛粉を使用した以外は、実施例1と同様に燃料電池用セパレータおよび燃料電池を作製した。
【0121】
燃料電池用セパレータの水素透過率は、0.1cm/m・24hr・1atm(80℃)であった。
燃料電池用セパレータの酸素透過率は、0.1cm/m・24hr・1atm(80℃)であった。
【0122】
燃料電池用セパレータの導電率は0.15S/cmであった。
【0123】
燃料電池用セパレータの曲げ強度は、30MPaであった。
【0124】
燃料電池の出力密度は、0.89W/cmであった。
【0125】
<比較例2>
アスペクト比(長径:短径)が1〜10であり、
粒径(メジアン径)が100超〜200μmの膨張黒鉛粉を使用した以外は、実施例1と同様に燃料電池用セパレータおよび燃料電池を作製した。
【0126】
燃料電池用セパレータの水素透過率は、0.1cm/m・24hr・1atm(80℃)であった。
燃料電池用セパレータの酸素透過率は、0.1cm/m・24hr・1atm(80℃)であった。
【0127】
燃料電池用セパレータの導電率は0.14S/cmであった。
【0128】
燃料電池用セパレータの曲げ強度は、30MPaであった。
【0129】
燃料電池の出力密度は、0.87W/cmであった。
【0130】
<比較例3>
アスペクト比(長径:短径)が1〜10であり、
粒径(メジアン径)が1〜10未満μmの膨張黒鉛粉を使用した以外は、実施例1と同様に燃料電池用セパレータおよび燃料電池を作製した。
【0131】
燃料電池用セパレータの水素透過率は、0.1cm/m・24hr・1atm(80℃)であった。
燃料電池用セパレータの酸素透過率は、0.1cm/m・24hr・1atm(80℃)であった。
【0132】
燃料電池用セパレータの導電率は0.11S/cmであった。
【0133】
燃料電池用セパレータの曲げ強度は、30MPaであった。
【0134】
燃料電池の出力密度は、0.79W/cmであった。
【0135】
<比較例4>
まず、ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して、膨張黒鉛550重量部をメタノールに溶解した溶液(樹脂濃度50重量%)を、ニーダーを用いて混練した。
【0136】
次に、大気中で加熱乾燥してメタノールおよびその他の揮発性成分を揮散除去した。
【0137】
次に、混練物を粉砕機にて平均粒径が400μmの粉体に粉砕した後、面中央の11cm×11cmの領域に20本の並行した溝(幅3mmの溝部と幅1mmの山部が高低差2mmで交互に設けられた)が刻んであるオスメス金型に充填し、成形型内を100Torrに減圧して揮発性成分を脱気した後、成型圧2ton/cmで等方加圧成型した後、温度160℃でノボラック型フェノール樹脂を硬化して、厚さ3mmの燃料電池用セパレータ(従来型)を作製した。
【0138】
燃料電池用セパレータの水素透過率は、0.93cm/m・24hr・1atm(80℃)であった。
燃料電池用セパレータの酸素透過率は、0.88cm/m・24hr・1atm(80℃)であった。
【0139】
燃料電池用セパレータの導電率は0.27S/cmであった。
【0140】
燃料電池用セパレータの曲げ強度は、27MPaであった。
【0141】
次に、燃料電池用セパレータ(従来型)を使用した以外は実施例と同様に燃料電池を作製した。
【0142】
燃料電池の出力密度は、0.88W/cmであった。
【0143】
本発明のセパレータを使用した燃料電池は、従来使用されているノボラック型フェノール樹脂と膨張黒鉛からなるセパレータを使用した燃料電池の4倍以上の水素バリア性および酸素バリア性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の、燃料電池用セパレータおよびその製造方法、製造装置、並びに、それを用いた燃料電池は、電気自動車用電源、携帯電話用電源等に用いるリン酸型、固体高分子型、硫酸型、アルカリ型燃料電池に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明のセパレータの形成方法および製造装置を説明するための断面図である。
【図2】本発明のセパレータの製造装置を説明するための断面図である。
【図3】本発明の燃料電池の作製方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0146】
1、1´・・・ホッパー
2、2´・・・スクリュー
3、3´・・・シリンダー
4・・・・・・フィードブロック
5、5´・・・押出機
6・・・・・・冷却ロール
7・・・・・・光源
8・・・・・・光源
11・・・・・ガス拡散材
22・・・・・触媒層
33・・・・・電極
44・・・・・電解質膜
55・・・・・MEA(電解質膜電極接合体)
66・・・・・セパレータ
77・・・・・集電板
777・・・・受光部
888・・・・受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、燃料ガス流路となる条溝部を有する第1層、酸化剤ガス流路となる条溝部を有する第2層のどちらか一方を備え、
前記第1層の組成が、ポリアミド樹脂100重量部に対してカーボン300〜800重量部であり、前記第2層の組成が、ポリエステルコポリマー樹脂100重量部に対してカーボン300〜800重量部ある燃料電池用セパレータであって、
前記カーボンの粒径(メジアン径)が10〜100μmであり、
前記カーボンのアスペクト比(長径:短径)が1〜10であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂が、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
前記ポリエステルコポリマー樹脂が、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
ポリアミド樹脂を添加したカーボンと、ポリエステルコポリマー樹脂を添加したカーボンとを、それぞれ溶融混練して両者を合流させスリツト状の開口部からシート状に共押出して積層体とし、該積層体を前記開口部直下に設けた凹凸部を有した一対の冷却ロールで冷却すると同時に、前記積層体に条溝部を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項5】
樹脂材料を溶融混練して溶融混練樹脂を生成するための、シリンダーおよびスクリューを備えた複数の押出機と、
前記樹脂材料を前記複数の押出機内に供給するためのホッパーと、
前記複数の押出機から輸送管を介して前記溶融混練樹脂を単一の開口部に移送するフィードブロックと、
前記開口部から押し出される前記溶融混練樹脂の積層体を冷却および成形するための、前記開口部直下に設けた一対の冷却ロールと、
前記一対の冷却ロールどうしの距離を調整するための距離調整機構と、
前記一対の冷却ロールを駆動するための駆動機構を組み合せた燃料電池用セパレータの製造装置において、
前記一対の冷却ロールどうしは、同設計であって、表面にはロール巾方向に溝部と山部が設けられ、一方の冷却ロールの溝部と他方の冷却ロールの山部が噛み合う構造になっており、
前記駆動機構が、前記一対の冷却ロールに対して軸方向から光を照射する少なくとも一つ以上の光源と、該光源に対して前記一対の冷却ロールと逆側にある少なくとも一つ以上の受光器を備え、
該受光器で検知した、前記一対の冷却ロールの前記山部と前記溝部の噛み合わせ部分に生じる前記光源から受ける光量の変化を信号化し、該信号を基にして、前記一対の冷却ロールを個別に駆動する駆動機構であることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造装置。
【請求項6】
電解質膜の表裏面に触媒層が設けられ、該触媒層の前記電解質膜と反対側の面にガス拡散材が設けられ、該ガス拡散材の前記触媒層と反対側の面に、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータを設けたことを特徴とする燃料電池。
【請求項7】
前記電解質膜がスルホン基含有パーフルオロカーボン、または、カルボキシル基含有パーフルオロカーボンであることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記触媒層が、触媒を担持した電子伝導性物質、および、プロトン伝導性物質からなることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記プロトン伝導性物質が、スルホン酸基含有パーフルオロカーボン、ポリエーテルスルフォン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、または、スルホン化ポリイミドであることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記電子伝導性物質が、二酸化珪素、または、炭素であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の燃料電池。
【請求項11】
前記触媒が、Au、Pt、Pd、Rh、Ru、OsおよびIrから選ばれた1種または2種以上の金属からなることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項12】
前記触媒の平均粒径(体積平均粒径(Dv))が1nm以上5nm以下であることを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項13】
前記電子伝導性物質に対する前記触媒の担持率が30〜70重量%であることを特徴とする請求項8乃至請求項12のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項14】
前記ガス拡散材が、導電性多孔性基材であることを特徴とする請求項6乃至請求項13のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項15】
前記導電性多孔性基材が、カーボンペーパー、カーボンクロスであることを特徴とする請求項14に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−280673(P2007−280673A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102868(P2006−102868)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】