説明

燃料電池用セパレータおよびその製造方法

【課題】実際の燃料電池の使用環境に即した条件下においても優れた導電性および耐食性を示す燃料電池用セパレータおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】燃料電池用セパレータ40は、ステンレス鋼からなる基材41と、基材の少なくとも電極に対向する表面に形成され、Cを主成分とし、Nを3〜20原子%、Hを0原子%を超え20原子%以下含み、かつ、Cの全体量を100原子%としたときにsp混成軌道をもつ炭素(Csp)が70原子%以上100原子%未満であって、グラファイトの(002)面が厚さ方向に沿って配向する配向性非晶質炭素膜42と、基材と配向性非晶質炭素膜との界面に生成され両者の構成原子をそれぞれ一種以上含む混合層43と、混合層から配向性非晶質炭素膜内に突出し、平均長さが10〜150nmである複数の突起44と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として固体高分子型燃料電池に使用される燃料電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気などの酸素を含有する酸素ガスと、を電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させる。図13に、単セルの固体高分子型燃料電池の一例を模式的に示す。図13の左図は、積層する前のそれぞれの構成要素の配列を示し、図13の右図は、それらを積層した状態を示す。単電池1は、電解質膜1aとそれを両側から挟持する一組の電極(空気極1bおよび燃料極1c)とから構成される。セパレータ2は、複数本の凹条が形成された凹条形成面2b、2cを有する。セパレータ2は、樹脂製のセパレータ枠3に収められ、空気極1bと凹条形成面2b、燃料極1cと凹条形成面2c、がそれぞれ対向するように積層される。こうして、電極とセパレータとの間に、電極表面と凹条とで区画されたガス流路が構成され、燃料電池における反応ガスである燃料ガスおよび酸素ガスが効率よく電極表面に供給される。
【0003】
燃料電池では、燃料ガスと酸素ガスとが、互いに混合しないように分離したまま電極表面全体に供給される必要がある。したがって、セパレータには、ガスに対する気密性が必要である。さらに、セパレータには、反応により発生した電子を集電するとともに、複数のセルを積層させたときに隣接する単電池同士の電気的コネクターとして良好な導電性が必要とされる。また、電解質表面は強酸性を示すため、セパレータには、耐食性が要求される。
【0004】
そのため、セパレータの材料としては、グラファイト板材が用いられるのが一般的であった。ところが、グラファイト板材は割れやすいため、グラファイト板材に複数のガス流路を形成したりその表面を平坦にしたりなどしてセパレータを生産する場合、加工性に問題がある。一方、金属材料は、導電性とともに加工性にも優れ、特に、チタンやステンレス鋼は耐食性に優れるため、セパレータの材料として使用可能である。しかしながら、耐食性に優れる金属材料は不働態化しやすいため、燃料電池の内部抵抗が増大して電圧降下を引き起こすという問題がある。
【0005】
特許文献1には、金属製部材からなり、単電池の電極との接触面に直接金めっきを施した燃料電池用セパレータが開示されている。接触面に金めっきが施されているため、セパレータと電極との接触抵抗が低下して導通が良好となり、燃料電池の出力電圧が大きくなる。金属製部材に腐食されにくい金めっきのような導電性物質でセパレータを完全に被覆すれば、金属製部材は腐食し難く金属イオンの流出が防止され、かつ低い接触抵抗を示すと考えられる。しかし金めっきは、コスト的、資源的な観点から実用化の大きな障害となる。
【0006】
特許文献2には、耐食性が高く接触電気抵抗が低いステンレス鋼が開示されている。具体的には、導電性の金属介在物をステンレス鋼表面の不働態皮膜を突き破るようにして分散させて、ステンレス鋼の接触抵抗を低下させている。しかし、たとえマトリックスが不働態化していても、電解質膜の劣化の原因となるクロムイオン、鉄イオンなどの溶出は避けられない。また、電位のかかる高腐食環境下では、金属介在物も徐々に腐食するため、この金属介在物が腐食により不働態化すれば、出力電圧が低下すると予想される。
【0007】
上記のような問題を解決するため、金属製の基材の表面に、導電性をもつ非晶質炭素膜を被覆した燃料電池用セパレータが注目されつつある。
【0008】
たとえば、特許文献3および特許文献4には、導電性の非晶質炭素膜で金属板を被覆したセパレータが開示されている。金属板に非晶質炭素膜を被覆することによりセパレータは耐食性を示す。特に、特許文献4では、イオン化蒸着法を用い、金属製の基板の表面に主として炭素および水素からなる非晶質炭素膜を形成している。イオン化蒸着で成膜を行うことで、入射した炭素膜形成分子と基板の表層を構成する原子とが化学的に結合した中間層が形成されると述べている。
【0009】
ところで、特許文献5では、非晶質炭素膜において、sp混成軌道をもつ炭素を増加させ、水素の含有量を低減させることで、導電性を確保している。炭素原子には、化学結合における原子軌道の違いにより、sp混成軌道をもつ炭素(Csp)、sp混成軌道をもつ炭素(Csp)、sp混成軌道をもつ炭素(Csp)の三種類がある。たとえば、Cspのみからなるダイヤモンドは、σ結合のみを形成し、σ電子の局在化により高い絶縁性を示す。一方、グラファイトは、Cspのみからなり、σ結合とπ結合とを形成し、π電子の非局在化により高い導電性を示す。特許文献5に記載の非晶質炭素膜は、全炭素に占めるCspの割合が多いためπ電子の非局在化が促進されるとともに、水素の含有量が低減されているためC−H結合(σ結合)による分子の終端化が抑制される。その結果、高い導電性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−228914号公報
【特許文献2】特開2001−32056号公報
【特許文献3】特開2000−67881号公報
【特許文献4】特開2005−93172号公報
【特許文献5】特開2008−4540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
燃料電池用セパレータの特性は、通常、実際の燃料電池の使用環境に即した条件下で評価されるべきである。すなわち、耐食性であれば、電圧を印加した厳しい条件下での評価試験がなされていなければ、燃料電池用セパレータとして満足な特性を有するとは言えない。特許文献3および特許文献4では、そのような厳しい条件下での特性評価がされていないため、燃料電池に使用された場合に、要求される導電性および耐食性が発揮されないと考えられる。特許文献3および特許文献4に記載されているような耐食性の評価方法は電圧を印加して行われていないため、仮に非晶質炭素膜に腐食の原因となり得る気孔が存在してもイオンの移動は起こらない。つまり、特許文献3および特許文献4に記載されている評価方法は、実際の燃料電池の使用環境に即した試験ではない。
【0012】
特に、特許文献4の実施例では、ステンレス鋼製の基材に直接、水素と炭素とからなる非晶質炭素膜を形成する。ステンレス鋼は、クロム(Cr)を約12質量%以上含む低炭素の鉄基合金である。ステンレス鋼は、表面に安定な不動態被膜を形成して安定化するため、優れた耐食性を示す。不動態被膜の形成に深く関わる合金元素はCrであり、Cr濃度が12質量%を超えると急激に耐食性が向上し、環境によってはほとんど腐食しなくなる。しかし、ステンレス鋼製の基材に非晶質炭素膜から炭素が拡散すると、ステンレス鋼に含まれる添加元素であるCrが拡散した炭素と結合して炭化物などが形成される。そのため、それらの周りにCr量の少ない低クロム層が形成される。低クロム層が形成された周囲では、元のステンレス鋼よりもCr濃度が低下するため、安定な不動態被膜は形成され難くなり、局所的にステンレス鋼の耐食性が低下し、セパレータが腐食しやすくなるという問題がある。
【0013】
本発明者等は、上記問題点に鑑み、ステンレス鋼製の基材に非晶質炭素膜を形成した燃料電池用セパレータにおいて、実際の燃料電池の使用環境に即した条件下においても優れた導電性および耐食性を示す燃料電池用セパレータおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者の鋭意研究の結果、特許文献5に記載の非晶質炭素膜において、非晶質構造を保ちつつグラファイトの(002)面を膜内で配向させることで、導電性が高く緻密な非晶質炭素膜となることがわかった。さらに、このような非晶質炭素膜を特定の成膜条件でステンレス鋼製の基材の表面に形成することで、特徴的な断面構造をもつ燃料電池用セパレータが得られることがわかった。そして本発明者は、この成果を発展させることで、以降に述べる種々の発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明の燃料電池用セパレータは、ステンレス鋼からなる基材と、
該基材の少なくとも電極に対向する表面に形成され、炭素(C)を主成分とし、窒素(N)を3〜20原子%、水素(H)を0原子%を超え20原子%以下含み、かつ、該炭素の全体量を100原子%としたときにsp混成軌道をもつ炭素量が70原子%以上100原子%未満であって、グラファイトの(002)面が厚さ方向に沿って配向する配向性非晶質炭素膜と、
前記基材と前記配向性非晶質炭素膜との界面に生成され該両者の構成原子をそれぞれ一種以上含む混合層と、
前記混合層から前記配向性非晶質炭素膜内に突出し、平均長さが10〜150nmである複数の突起と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の燃料電池用セパレータが備える配向性非晶質炭素膜は、含有するCのうちの70原子%以上がsp混成軌道をもつ炭素(Csp)である。さらに、グラファイトの(002)面が厚さ方向に沿って配向する。つまり、配向性非晶質炭素膜は、環構造が厚さ方向に連続的に広がるとともにその環構造が層状に重なった構造をとるため、主として厚さ方向において高い導電性を示す。また、配向性非晶質炭素膜は、NおよびHを含むため、配向していても完全な結晶構造(グラファイト構造)をとらず、長距離秩序性のない非晶質構造をとる。
【0017】
さらに、配向性非晶質炭素膜は、高い配向性を有するため緻密な膜であり、膜密度が高く硬い。そのため、本発明の燃料電池用セパレータは、機械的特性はもちろん、耐食性、耐薬品性、酸素バリア性などの面でも信頼性が高い。
【0018】
また、本発明の燃料電池用セパレータは、基材および配向性非晶質炭素膜の構成原子を含む混合層および複数の突起を備える。混合層および突起の存在により、基材と配向性非晶質炭素膜との密着性が向上する。混合層は、基材および配向性非晶質炭素膜との親和性に優れるからである。特に、混合層と配向性非晶質炭素膜との密着性は、複数の突起が混合層から配向性非晶質炭素膜内へと突出するため、アンカー効果によると推測される。そのため、配向性非晶質炭素膜の欠陥(ピンホール)から腐食液が浸入しても、非晶質炭素膜は剥離し難い。
【0019】
ところで、混合層は、基材および配向性非晶質炭素膜の構成原子を含むため、上述したクロム(Cr)の減少による基材の耐食性の低下が懸念される。しかし、配向性非晶質炭素膜が緻密であることから、混合層にCrが取り込まれて化合物を形成したとしても、耐食性の低下は抑制される。また、窒素を含有する混合層は、ピンホール近傍のアンモニウムイオン濃度を上昇させ、塩化物イオン、フッ化物イオンなどを局所的に減少させる効果があるため、孔食が起こりにくくなる。
【0020】
また、本発明の燃料電池用セパレータの製造方法によれば、上記の混合層および複数の突起を備える本発明の燃料電池用セパレータを容易に形成することができる。
【0021】
すなわち、本発明の燃料電池用セパレータの製造方法は、直流プラズマCVD法により上記の燃料電池用セパレータを製造する方法であって、
前記基材を反応容器内に配置し、該反応容器内に、sp混成軌道をもつ炭素を含む炭素環式化合物ガスならびにsp混成軌道をもつ炭素と窒素とを含む含窒素複素環式化合物ガスから選ばれる一種以上の化合物ガスと窒素ガスとを含む反応ガスを導入して1500V以上で放電し、300〜520℃の該基材に成膜することを特徴とする。
【0022】
上記の配向性非晶質炭素膜は、特定の組み合わせの反応ガスを用い、高電圧を印加して行う直流プラズマCVD法により容易に形成できる。その理由は、以下のように考えられる。
【0023】
一般に、炭化水素に電子が衝突すると、C−H結合が切断されてイオン化する。メタンなどのようにCspからなるガスを用いた場合、C−H結合が切断されても4配位の立体形状を維持したまま膜中に取り込まれやすい。したがって、強い配向は起こり難く、特定の配向をもつ非晶質炭素膜を形成することはできないと考えられる。一方、ベンゼン、ピリジンなどのように環構造をもつ化合物ガスに1500V以上の高電圧を印加すると、イオン化する際に平面内で強い分極作用が生じ、平面内でプラス電荷とマイナス電荷が生じると考えられる。強く分極したイオンは、高い負電圧により陰極側(基材側)へ引き寄せられ、環構造を維持したまま堆積すると推察される。図1は、上記化合物ガスとしてピリジンを用いた場合の、配向性非晶質炭素膜の形成メカニズムを説明する模式図である。化合物ガスのなかでも特にピリジンは、初期からNが負電荷を帯びており、残りのCが陽電荷を帯びているため、高電圧を印加するとさらに大きく分極する。そのため、化合物ガスとして環構造にNを含む化合物を用いると、非晶質炭素膜は、より配向を起こしやすいと推察される。さらに、上記の化合物ガスとともに窒素ガスを用いることで、化合物ガスが有するC−H結合のHがNに置換される。その結果、配向性非晶質炭素の水素含有量が低下するとともに、化合物ガスの分極が促進されると推測される。
【0024】
なお、本明細書において「厚さ方向」とは、基材の表面と垂直な方向である。つまり、成膜中の炭素等の堆積方向とも言える。また、「厚さ方向に沿って配向する」とは、配向性非晶質炭素膜のグラファイトの(002)面がその厚さ方向に対して平行であることはもちろん、厚さ方向から僅かに傾いた場合も含む。成膜方法によっては、基材を装置に対して相対的に移動させることもあるため、(002)面の配向は、基材と垂直な方向から僅かに傾く場合もある。
【0025】
さらに、基板温度を特定の範囲にして配向性非晶質炭素膜をステンレス鋼製の基材の表面に形成することで、混合層および複数の突起が自ずと形成される。つまり、本発明の燃料電池用セパレータは、基材の表面に、混合層、複数の突起および配向性非晶質炭素膜を別々の工程を経て形成しているのではない。ステンレス鋼製の基材に、特定の成膜条件で配向性非晶質炭素膜を形成する一工程だけで、基材と配向性非晶質炭素膜との界面に、混合層および複数の突起が生成されるのである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の燃料電池用セパレータは、過酷な腐食環境下で使用されても、優れた導電性および耐食性を示す。この燃料電池用セパレータは、本発明の燃料電池用セパレータの製造方法により、簡単に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】配向性非晶質炭素膜の形成メカニズムを説明する模式図である。
【図2】非晶質炭素膜の13C NMRスペクトルの一例である。
【図3】配向性非晶質炭素膜の配向性を確認するための面内X線回折(散乱)測定法を説明する模式図である。
【図4】本発明の燃料電池用セパレータの構成を模式的に示す断面図である。
【図5】直流プラズマCVD成膜装置の概略図である。
【図6】体積抵抗率の測定に用いられる試験片の作製手順を説明する模式図である。
【図7】導電部材とカーボンペーパーとの接触抵抗を測定するための装置構成を模式的に示す断面図である。
【図8A】配向性非晶質炭素膜のX線回折結果を示した図であって、面外回折測定法を用いたX線回折パターンを示す。
【図8B】配向性非晶質炭素膜のX線回折結果を示した図であって、面内回折測定法を用いたX線回折パターンを示す。
【図9】腐食試験に用いられる測定装置を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明の燃料電池用セパレータの断面を透過電子顕微鏡(TEM)により観察した結果を示す図面代用写真である。
【図11】本発明の燃料電池用セパレータの断面をTEMにより観察した結果を示す図面代用写真である。
【図12】図11の低倍率のTEM像である。
【図13】単セルの固体高分子型燃料電池の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の燃料電池用セパレータおよびその製造方法を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。また、その数値範囲内において、本明細書に記載した数値を任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。
【0029】
一般に、非晶質炭素膜を備える燃料電池用セパレータは、金属製の基材と、基材の少なくとも電極に対向する表面を覆う非晶質炭素膜と、からなる。燃料電池のセパレータは、通常、固体電解質に積層された電極に一部が接触する表面を有し、電極との間にガス流路を区画形成する。非晶質炭素膜が、金属製の基材の表面に被覆されていることで、燃料電池用セパレータとして必要とされる導電性および耐食性が発揮される。
【0030】
以下に詳説する本発明の燃料電池用セパレータは、一般的な燃料電池に適用可能である。なお、一般的な燃料電池は、固体電解質とそれを両側から挟持する一対の電極とから構成される単電池をもつ。電極は、金属触媒を担持した炭素粉末を主成分とし高分子電解質膜の表面に形成される触媒層と、この触媒層の外面に位置し通気性および導電性をもつガス拡散層と、からなる。触媒層を構成する炭素粉末には、白金、ニッケル、パラジウム等の触媒が担持されている。また、ガス拡散層としては、カーボン繊維を用いた織布(カーボンクロス)や不織布(カーボンペーパー)が通常用いられる。
【0031】
《燃料電池用セパレータ》
本発明の燃料電池用セパレータは、基材、配向性非晶質炭素膜、混合層および複数の突起、を備える。以下にそれぞれ詳説する。
【0032】
〈基材〉
基材は、ステンレス鋼からなる。既に説明したが、ステンレス鋼は、クロム(Cr)を12質量%以上含む低炭素の鉄基合金である。すなわち、基材は、主として鉄(Fe)およびCrを含む。さらに、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、珪素(Si)などを含んでもよい。Cr−Ni系ステンレス鋼であれば、Crを14〜40質量%、Niを0.1〜16質量%含むとよい。また、ステンレス鋼の組織にも特に限定はなく、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼あるいは2相ステンレス鋼から選択すればよい。JIS規格であれば、SUS430、SUS447J1、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS440C等である。基材の形状は、燃料電池の仕様に応じて適宜選択すればよい。
【0033】
〈配向性非晶質炭素膜〉
配向性非晶質炭素膜は、基材の少なくとも電極に対向する表面に形成される。配向性非晶質炭素膜は、炭素(C)を主成分とし、窒素(N)を3〜20at%、水素(H)を0at%を超え20at%以下含み、かつ、該炭素の全体量を100at%としたときにsp混成軌道をもつ炭素量(Csp量)が70at%以上100at%未満である。
【0034】
本明細書では、Csp、Cspの定量法として、多くの有機材料や無機材料などの構造規定において最も定量性の高い核磁気共鳴法(NMR)を採用する。Csp量、Csp量の測定には、固体NMRで定量性のあるマジックアングルスピニングを行う高出力デカップリング法(HD−MAS)を用いた。図2に、非晶質炭素膜の13C NMRスペクトルの一例を示す。図2に示すように、130ppm付近、30ppm付近に、それぞれCsp、Cspに起因するピークが見られる。それぞれのピークとベースラインとにより囲まれる部分の面積比から、全炭素におけるCsp、Cspの含有割合を算出した。
【0035】
上記のようにして算出された配向性非晶質炭素膜のCsp量は、全炭素量を100at%とした場合の70at%以上100at%未満である。Csp量が70at%以上であれば、π電子の非局在化が促進され高い導電性を示す。ただし、Csp量が100at%であると、導電性は有するものの非晶質炭素は粉末状となり、配向性非晶質炭素膜が得られ難い。配向性非晶質炭素膜のCsp量は、80at%以上、90at%以上、92at%以上さらには94at%以上、また、99.5at%以下さらには99at%以下であるのが好ましい。なお、配向性非晶質炭素膜を構成する炭素は、CspとCspとの二種類であると考えられる。したがって、配向性非晶質炭素膜のCsp量は、全炭素量を100at%とした場合の30at%以下(0at%を除く)となる。
【0036】
配向性非晶質炭素膜は、窒素(N)を3〜20at%含む。後述の成膜方法により生成された窒素を3at%以上含む非晶質炭素膜は、グラファイトの(002)面が厚さ方向に配向する。また、窒素原子は、配向性非晶質炭素膜中でn型ドナーとして働き、ドナー準位に束縛されていた電子を効果的に伝導帯へと励起するため、配向性非晶質炭素膜の導電性がさらに高くなる。N含有量は、5at%以上、さらには7at%以上が好ましい。ただし、N含有量が多いと、C≡N結合の形成により分子の終端化が促進されるため、N含有量は20at%以下に抑える。配向性非晶質炭素膜のN含有量は、11at%以上さらには11.5at%以上、また、17at%以下、15at%以下さらには13.5at%以下であるのが好ましい。
【0037】
配向性非晶質炭素膜の水素(H)の含有量は、0at%を超え20at%以下である。H含有量を低減することで、C−H結合(σ結合)による分子の終端化が抑制されるためπ電子が増加し、高い導電性を示す。したがって、配向性非晶質炭素膜のH含有量が少なくなる程、導電性の向上効果が高くなるため、H含有量は、19at%以下さらには18at%以下であるのが好ましい。また、H含有量は、少ないほど導電性が高いが、敢えて規定するならば5at%以上、8at%以上、10at%以上さらには12at%以上であってもよい。
【0038】
配向性非晶質炭素膜は、さらに珪素を含んでもよい。配向性非晶質炭素膜において、1at%以下の珪素(Si)は、配向性非晶質炭素膜の配向性および導電性にほとんど影響が無く、配向性非晶質炭素膜の密度が高まるとともに配向性非晶質炭素膜と基材との密着性を向上させる。配向性非晶質炭素膜のSi含有量は、0.5at%以上さらには0.75at%以上、また、1at%未満であるのが好ましい。
【0039】
上述のように、配向性非晶質炭素膜は、水素、窒素、必要に応じて珪素を含み、残部は炭素と不可避不純物と、からなり、他の元素を実質的に含まないことが望まれる。ただし、配向性非晶質炭素膜全体を100at%としたときに、さらに、酸素(O)を3at%以下含んでもよい。配向性非晶質炭素膜の形成時に混入する酸素ガスなどに起因する酸素の含有量を3at%以下とすれば、酸化珪素などの酸化物の形成を抑制できるため、酸素の含有は許容される。O含有量は、2at%以下さらには1at%以下であるのが好ましい。
【0040】
そして、配向性非晶質炭素膜は、グラファイトの(002)面が厚さ方向に沿って配向する。グラファイトの(002)面が配向性非晶質炭素膜の厚さ方向に沿って配向していることは、以下に説明するX線回折測定により確認できる。以下に、面内回折測定法について説明する。
【0041】
X線回折法は、測定する格子面の方向の幾何学的な配置によって、面外回折測定(Out−of−Plane測定)と面内回折測定(In−Plane測定)という二つの測定手法に大別される。面外回折測定法は、入射角固定の2θスキャンであって、観察される結晶面は試料の表面に対して平行な結晶面である。一方、面内回折測定法は、入射X線を精密に制御して試料の表面すれすれに入射して行われる。図3を用いて説明すると、入射角αは、通常0.5°以下であり、入射X線エネルギー12keVに対しては0.1°以下である。面内回折X線を検出する検出器は、面外回折X線を測定するθ−2θ法のように試料の表面に対して起き上がるのではなく、試料の表面を這う様にして回折X線の強度を測定する。つまり、測定中に、試料表面の照射部に対する見込み角α’を一定とする。面内回折に寄与する結晶面(回折面)は、試料表面に対し直交している面である。
【0042】
グラファイトの(002)面が膜厚方向に沿って配向している場合には、面内回折の回折スペクトルにおいて(002)面に相当するピークが顕著に表れる。たとえば、2θ=17°付近のピークが、2θ=29°付近のピークよりも強く表れる(図8B参照)。2θ=17°付近のピークはグラファイトの(002)面、2θ=29°付近のピークはグラファイトの(100)面、に相当する。配向性を数値により具体的に表すのであれば、配向指数を用いることができる。本明細書では、配向指数として、以下に説明する配向指数D、配向指数rおよびr’を用いる。
【0043】
D=(I002/I100)/(I002’/I100’)
ここで、I002、I100、I002’およびI100’は、それぞれ、非晶質炭素膜をX線回折測定して得られるピーク強度である。I002は(002)面からの面内回折ピーク強度、I100は(001)面からの面内回折ピーク強度、I002’は(002)面からの面外回折ピーク強度、I100’は(100)面からの面外回折ピーク強度、である。いずれも、(002)面または(100)面の回折ピークが見られる角度(2θ)付近での最大強度である。配向性非晶質炭素膜の配向指数Dは、9以上、10以上、20以上、30以上、50以上さらには500以上であるのが好ましい。配向指数Dの上限値に特に規定はないが、1000以下さらには800以下が好ましい。
【0044】
さらに精密に配向指数を規定するのであれば、2Hグラファイト(六方晶系グラファイト)の粉末X線回折シミュレーションを、(002)面配向状態から無配向状態を経て(100)面配向状態に至るまでの構造パラメータに対して行い、回折パターン(つまりピーク強度)と構造パラメータとの関係を求め、両者の関係から上記の「I002/I100」に対する配向指数rおよび「I002’/I100’」に対する配向指数r’を算出してもよい。なお、粉末X線回折シミュレーションは、一般的なリートベルト解析ソフトウェアを用いればよい。この際、構造パラメータのうち、配向指数に相当するのは選択配向パラメータであって、無配向状態で1である。配向指数の算出方法については実施例の欄で詳説するが、配向性非晶質炭素膜の配向指数rは0.9〜1.6さらには1〜1.5が好ましく、配向指数r’は2以上、3.5以上さらには4.5以上であるのが好ましい。配向指数r’の上限値に特に規定はないが、10以下さらには7以下が好ましい。
【0045】
上記のピーク強度は、X線回折スペクトルからバックグラウンドを除去した値を求める必要がある。バックグラウンドの除去は、市販のソフトを用いてもよいし、実施例の欄で詳説する方法を用いてもよい。
【0046】
なお、配向性非晶質炭素膜は、炭素を主成分とする非晶質の炭素膜である。炭素の他、窒素および水素を所定の量含むことで、結晶性が低下するためである。配向性非晶質炭素膜が非晶質であることは、配向性非晶質炭素膜を粉末状にしてX線回折測定を行うことで確認できる。X線回折測定によれば、結晶の存在を示す先鋭な回折ピークは検出されず、グラファイトの(002)面に相当する回折ピークは、ブロードなハローパターンとなる。また、配向性非晶質炭素膜の全体に対して電子線回折を行った場合にも、同様である。
このとき、ブラッグの式から算出された(002)面の平均面間隔が0.34〜0.50nmであるのが好ましい。(002)面の平均面間隔が0.50nm以下であれば、面間隔が狭くなることにより、面間でのπ電子の相互作用が増大するとともに、導電性が向上する。なお、グラファイトの(002)面の平均面間隔は、0.34nmである。
【0047】
なお、本明細書で「導電性をもつ」とは、10Ω・cm以下の体積抵抗率を示すことを意味する。本発明の非晶質炭素膜の導電性は、特に限定されるものではないが、体積抵抗率が10Ω・cm以下、10Ω・cm以下、5×10−1Ω・cm以下、10−1Ω・cm以下さらには10−2Ω・cm以下であるのが好ましい。ただし、本明細書において、配向性非晶質炭素膜の体積抵抗率は、四探針法により膜表面に対して測定した値とする。配向性非晶質炭素膜は、グラファイトの(002)面が厚さ方向に沿って配向している。したがって、配向性非晶質炭素膜の厚さ方向に電流を流して測定した場合の電気抵抗は、さらに低くなると推測される。たとえば、高配向熱分解グラファイト(HOPG)の体積抵抗率が、層間では約10−1Ω・cm、層方向では約10−3Ω・cmである。
【0048】
なお、本明細書において、配向性非晶質炭素膜の緻密さは、膜の密度で評価する。密度の測定は、一般的に行われている測定方法を用いて行えばよく、具体的な手順については実施例の欄で詳説する。本発明の配向性非晶質炭素膜の密度は、1.6g/cm以上、1.8g/cm以上さらには2.0g/cm以上である。膜密度の上限を規定するのであれば、3g/cm以下さらには2.4g/cm以下であるのが好ましい。
【0049】
また、配向性非晶質炭素膜の膜厚に特に限定はないが、5nm以上、10nm以上、50nm以上さらには100nm以上とするのが好ましい。膜厚が厚い方が耐食性の面で有利であるが、配向性非晶質炭素膜は緻密であることから、厚くなる程、剥離や亀裂の発生が生じることがある。そのため、膜厚を1000nm以下、750nm以下さらには600nm以下とするのが好ましい。なお、配向性非晶質炭素膜の膜厚は、混合層の表面から配向性非晶質炭素膜の表面までの膜厚であり、配向性非晶質炭素膜の断面を観察した顕微鏡写真から複数箇所を測定して得られた値の平均値である。
【0050】
〈混合層〉
混合層は、基材と配向性非晶質炭素膜との界面において生成される。そのため、混合層は、基材および配向性非晶質炭素膜の構成原子をそれぞれ一種以上含む。混合層は、基材の表層に少なくともCおよびNが拡散してなる拡散層を有してもよい。また、混合層は、基材の構成原子から選ばれる一種以上と、配向性非晶質炭素膜の構成原子および酸素から選ばれる一種以上と、の組み合わせからなる化合物から選ばれる少なくとも一種を含む化合物層を有してもよい。以下に、混合層について、図4を用いて説明する。
【0051】
図4は、本発明の燃料電池用セパレータの一部を模式的に示す断面図である。なお、図4に示す燃料電池用セパレータは、本発明の一例であり、この構成に限定されるものではない。燃料電池用セパレータ40は、ステンレス鋼製の基材41と、基材41の表面に形成された配向性非晶質炭素膜42と、を備える。混合層43は、基材41と配向性非晶質炭素膜42との界面に生成しており、混合層43からは複数の突起44(後述)が配向性非晶質炭素膜42に向かって突出している。混合層43は、基材41の構成原子が配向性非晶質炭素膜42側へ、配向性非晶質炭素膜42の構成原子が基材41側へ、移動して基材に拡散したり互いに結合したりすることで生成される。たとえば、配向性非晶質炭素膜42は、主としてCおよびNを含むため、これらの原子が基材41へと拡散して拡散層431が形成される。また、基材は、主としてFeおよびCrを含むため、これらのうちの一種以上の原子が配向性非晶質炭素膜42の構成原子および酸素の一種以上と結合して化合物を形成する。このような混合層の生成は、配向性非晶質炭素膜の成膜中に起きる。なお酸素は、配向性非晶質炭素膜にほとんど含まれないが、成膜雰囲気中に含まれるため、成膜中に膜中に取り込まれて酸化物が形成されることもある。
【0052】
つまり、燃料電池用セパレータの断面構造は、基材(拡散層)/化合物層/突起/配向性非晶質炭素膜の順に連続的な積層体を構成している。混合層の厚さに特に限定はない。しかし、化合物層が過剰に生成されると、基材のCr量が低下して耐食性が低下するため、その膜厚が1000nm以下、500nm以下、200nm以下さらには150nm以下であるのが好ましい。化合物層の膜厚の下限に特に限定はないが、化合物層が形成されないと突起(後述)が成長しにくいことがわかっている。そのため、0.5nm以上、2.5nm以上さらには4nm以上であるとよい。また、拡散層の厚さ(基材の表面からの拡散距離)を規定するのであれば、10nm以上20μm以下、0.1〜10μmさらには0.5〜4μmであるとよい。化合物層および拡散層の厚さは、燃料電池用セパレータの表面部を断面観察した顕微鏡写真から複数箇所を測定して得られた値の平均値である。たとえば、透過電子顕微鏡(TEM)であれば、基材側にコントラストの異なる2つの層が確認できる。化合物層の厚さは、TEM像から容易に判断できる。拡散層の厚さは、電子プローブ微小部分析法(EPMA)で測定した炭素濃度が、基材マトリックスの炭素濃度を超える範囲を測定すればよい。つまり、基材のステンレス鋼に含まれる炭素量が1at%であれば、EPMAで測定した炭素濃度が1at%を超える範囲が拡散層である。
【0053】
化合物層は、Feおよび/またはCrと、C、NおよびOのうちの一種以上と、を組み合わせてなる化合物のうちの少なくとも一種を含むとよい。つまり、化合物層に含まれる化合物としては、クロム炭化物、鉄炭化物、クロム炭窒化物、鉄炭窒化物、鉄酸化物などが挙げられ、化合物層はこれらのうちの一種以上を含む。しかし、ステンレス鋼にNi等の他の合金元素が含まれている場合や、配向性非晶質炭素膜にSiなどの他の添加元素が含まれている場合には、これらの元素を含む化合物が化合物層に含まれることもある。また、拡散層は、基材のステンレス鋼のマトリックスに、CおよびNが合計で0.01at%以上さらには0.1at%以上含まれるとよい。既に説明したように、一般に、ステンレス鋼にCを拡散させると、耐食性が低減する。しかし、本発明の燃料電池用セパレータでは、CだけでなくCとともにNもステンレス鋼に拡散することで、耐食性の低下が抑制されていると推測される。このメカニズムは明らかではないが、配向性非晶質炭素膜のピンホールに腐食液が侵入したとしても、ピンホール近傍のアンモニウムイオン濃度が上昇し、孔食の原因となる塩化物イオン、フッ化物イオンなどを局所的に減少させるからであると推測される。そのため、ステンレス鋼製の基材の表面に直接、配向性非晶質炭素膜を成膜しても、基材の耐食性は高く維持される。
【0054】
化合物層および拡散層に含まれる元素は、たとえば、電子プローブ微小部分析法(EPMA)、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光法(AES)、ラザフォード後方散乱法(RBS)、エネルギー分散形X線分光法(EDX)により確認することができる。前述の配向性非晶質炭素膜の組成も同様である。また、化合物の同定は、X線回折、電子線回折などにより行うとよい。
【0055】
〈複数の突起〉
複数の突起は、混合層から配向性非晶質炭素膜内に突出する。これらの突起の成長メカニズムは明らかではないが、基材構成原子が比較的拡散しやすい箇所から優先的に、配向性非晶質炭素膜へ浸入して結合すると推測される。これは、配向性非晶質炭素膜が厚さ方向に沿って配向しており、さらに非晶質であることから構成原子同士の間隔が一定でないためである。複数の突起は、混合層から突出しているため、混合層(あるいは化合物層)と同様の組成を有すると考えられる。
【0056】
複数の突起は、その平均長さが10〜150nmである。平均長さが10nm未満では、配向性非晶質炭素膜が剥離しやすい。突起が長い方が密着性の観点からは好ましいが、突起が長くなると化合物層が厚くなる傾向がある。そのため、突起の平均長さが150nmを超えると化合物層も厚膜となり、基材のCrが低減して耐食性が大きく低下する。突起の好ましい平均長さは、15〜70nmさらには20〜55nmである。ただし、突起が配向性非晶質炭素膜の表面付近まで突出したり、さらには、配向性非晶質炭素膜外へ突出したりすると、突起から腐食が進行しやすくなると予測される。そのため、突起の長さは、配向性非晶質炭素膜の厚さに対して規定することもできる。複数の前記突起の平均長さ(L)に対する配向性非晶質炭素膜の厚さ(T)の比(T/L)は、1〜30、1.5〜20、2〜17さらには5.5〜11であるとよい。また、1つの突起の幅に特に限定はないが、平均幅が5〜30nmさらには10〜25nmであるとよい。なお、突起の平均長さおよび平均幅は、燃料電池用セパレータの断面を観察した顕微鏡写真から複数箇所を測定して得られた値の平均値である。
【0057】
以上説明した本発明の燃料電池用セパレータは、以下に説明する燃料電池用セパレータの製造方法により、基材に配向性非晶質炭素膜を形成する一工程のみで、容易に作製することができる。
【0058】
《燃料電池用セパレータの製造方法》
以上説明した本発明の燃料電池用セパレータは、直流プラズマCVD法により作製することができる。配向性非晶質炭素膜の形成に直流方式を採用することで、配向性の高い非晶質炭素膜を形成することができる。また、直流プラズマCVD法であれば、反応ガス濃度を高くして、成膜圧力を100Pa以上としても、安定した放電が得られるという利点がある。
【0059】
直流プラズマCVD法により本発明の燃料電池用セパレータを作製する場合、まず、真空容器内に基材を配置して、反応ガス(必要に応じてキャリアガス)を導入する。次いで、放電によりプラズマを生成させて、プラズマ化された炭素などを基材に堆積させればよい。ただし、上記の配向性非晶質炭素膜のように、全炭素に占めるCspの割合が多く、特定の配向を有する非晶質炭素膜を成膜するためには、後に詳説する特定の反応ガスを選択して用いる必要がある。また、基材と配向性非晶質炭素膜との界面において混合層および複数の突起を生成させるには、特定の放電電圧および成膜温度にて配向性非晶質炭素膜を形成する必要がある。
【0060】
すなわち、本発明の燃料電池用セパレータの製造方法は、基材を反応容器内に配置し、該反応容器内に特定の反応ガスを導入して、この反応ガスを特定の放電電圧で放電し、配向性非晶質炭素膜を特定の温度の基材に成膜する。
【0061】
本発明の燃料電池用セパレータの製造方法では、配向性非晶質炭素膜の成膜中に、既に説明した混合層および複数の突起が生成される。そのため、基材に窒化処理などの前処理を施す必要はない。ただし、配向性非晶質炭素膜と基材との密着性をさらに向上させるという観点から、基材の表面に、予めイオン衝撃法による凹凸形成処理を施してもよい。具体的には、まず、反応容器内に基材を設置し、反応容器内のガスを排気して所定のガス圧とする。次に、凹凸形成用ガスの希ガスを反応容器内に導入する。次に、グロー放電またはイオンビームによりイオン衝撃を行い、基材の表面に凹凸を形成する。
【0062】
反応ガスには、以下に詳説する化合物ガスと、窒素ガスと、を含む反応ガスを用いる。窒素ガスは、市販の高純度窒素ガス、高品質窒素ガスなど(たとえば純度99%以上)を用いればよい。
【0063】
化合物ガスには、sp混成軌道をもつ炭素を含む炭素環式化合物ガスならびにsp混成軌道をもつ炭素と窒素とを含む含窒素複素環式化合物ガスから選ばれる一種以上を用いる。なお、「炭素環式化合物」とは、環を形成する原子がすべて炭素原子である環式化合物である。また、これに対して「複素環式化合物」とは、2種またはそれ以上の原子から環が構成されている環式化合物である。Cspを含む炭素環式化合物、言い換えれば、炭素−炭素二重結合をもつ炭素環式化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびナフタレン等の芳香族炭化水素化合物の他、シクロヘキセン等が挙げられる。また、Cspとともに窒素を含む炭素環式化合物を使用してもよく、アニリン、アゾベンゼン等のNを含む芳香族化合物が挙げられる。複素環式化合物としては、たとえば、炭素と窒素とから環が構成されているピリジン、ピラジン、ピロール、イミダゾールおよびピラゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられる。配向性非晶質炭素膜の膜組成に応じて、これらの炭素環式化合物ガスおよび複素環式化合物ガスのうちいずれか一種を単独で、あるいは二種以上を混合して用いればよい。特にピリジンは、配向性の観点から化合物ガスとして望ましい。
【0064】
珪素を含む配向性非晶質炭素膜を形成する場合には、化合物ガスとして、CspとSiとを含むフェニルシラン、フェニルメチルシラン等の炭素環式化合物ガス、CspとSiとを含む含珪素複素環式化合物ガス、も使用可能である。また、反応ガスは、さらに、飽和有機珪素化合物ガスを含んでもよい。具体的には、Si(CH〔TMS〕、Si(CHH、Si(CH、Si(CH)H、SiH、SiCl、SiHなどが挙げられる。特に、TMSは空気中で化学的に安定であり、取り扱いが容易であり好適である。
【0065】
反応ガスは、上記の化合物ガスと窒素ガスとをともに用いさえすれば、その流量比に特に限定はない。ただし、窒素ガスの流量を、化合物ガスの流量以上とすることで、高配向性で窒素含有量の高い配向性非晶質炭素膜が、容易に得られる。
【0066】
また、反応ガスとともに、キャリアガスを導入してもよい。キャリアガスを使用する場合には、反応ガスおよびキャリアガスにより薄膜形成雰囲気が形成される。キャリアガスとしては、アルゴンガス、ヘリウムガス等を用いればよい。なお、従来の非晶質炭素膜の成膜では、キャリアガスとして水素ガスを用いることもある。しかし、水素含有量が20at%以下である配向性非晶質炭素膜を形成する場合には、水素ガスを使用せずに成膜を行うのがよい。キャリアガスの流量は、反応ガスの流量以下とするとよい。反応ガスおよびキャリアガスの望ましい流量を具体的に規定するのであれば、キャリアガスを0〜1200sccm(standard cc/min)、反応ガスを1〜2500sccm(化合物ガス:1〜1500sccm、窒素ガス:1〜1600sccm)とすると好適である。
【0067】
薄膜形成雰囲気の圧力は、0.1Pa以上1300Pa以下とするとよい。1Pa以上500Pa以下さらには3Pa以上100Pa以下とすると好適である。成膜圧力を高くすると、反応ガスの濃度が高くなる。よって、成膜速度が大きく、実用的な速さで厚膜を形成することができる。
【0068】
また、放電の際の電圧(放電電圧)を1500V以上とすることで、高配向の配向性非晶質炭素膜が形成される。好ましい放電電圧は1750V以上、さらに好ましくは1900V以上である。放電電圧が高いほど、配向性は高くなり、緻密な膜が効率よく形成されるが、10kVを超えると、基材の温度が大きく上昇して突起が過剰に成長するため、耐食性が低下する可能性がある。ただし、基材を冷却するなどして、基材の温度上昇を抑制すれば、耐食性の低下を抑制することは可能である。
【0069】
配向性非晶質炭素膜の成膜中の基材の表面温度(成膜温度)を300℃以上とすることで、基材の表層において成膜中に混合層および突起が生成する。成膜温度が300℃未満では、突起が十分に成長せず、配向性非晶質炭素膜が剥離しやすくなる。望ましい成膜温度は、350℃以上、375℃以上さらには390℃以上である。成膜温度が高いほど、配向性非晶質炭素膜に含まれる水素の含有量が低減されて導電性が向上するが、成膜温度が520℃を超えると、突起が過剰に成長するため、耐食性が低下する。突起が過剰に成長する場合には、化合物層も厚く成長するため、ステンレス鋼のCr量が低下する原因となる。望ましい成膜温度は、500℃以下、490℃以下さらには440℃以下である。なお、成膜温度は、熱電対、赤外線放射温度計などを用い、成膜中の基材の表面温度を測定すればよい。
【0070】
また、成膜時間は、配向性非晶質炭素膜の膜厚および突起の成長の程度に関係する。突起の成長の程度は、混合層の厚さにも関係する。そのため、成膜時間は、10秒以上1時間以下、30秒〜30分さらには1〜5分とするとよい。この範囲であれば、300〜520℃の成膜温度において、燃料電池用セパレータに好適な膜厚の配向性非晶質炭素膜および混合層、適切な長さの複数の突起が形成される。しかし、混合層および突起は、成膜温度が高いほど成長しやすい。そのため、成膜時間を、成膜温度が300〜350℃であれば3時間以下さらには1時間以下、350℃を超え400℃以下であれば2時間以下さらには30分以下、400℃を超え520℃以下であれば1時間以下さらには15分以下、に抑えることで、突起および化合物層の過剰な成長が抑制され、燃料電池用セパレータの耐食性が維持される。
【0071】
以上、本発明の燃料電池用セパレータおよびその製造方法の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、本発明の燃料電池用セパレータにおける配向性非晶質硬質炭素膜の態様、被覆箇所、およびセパレータの形状などについては、適宜採用することができる。
【実施例】
【0072】
以下に、本発明の燃料電池用セパレータおよびその製造方法の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。はじめに、参考例として、配向性非晶質炭素膜の特性を具体的に示す。
【0073】
《参考例:配向性非晶質炭素膜の評価》
配向性非晶質炭素膜の形成に用いた直流プラズマCVD成膜装置(「PCVD成膜装置」と略記)と配向性非晶質炭素膜の成膜手順を、図5を用いて説明する。
【0074】
〔PCVD成膜装置〕
図5に示すように、PCVD成膜装置9は、円筒形状の本体部をもつステンレス鋼製のチャンバー90と、基台91と、ガス導入管92およびガス導出管93と、高電圧電源装置99と、を備える。ガス導入管92は、バルブ(図略)を介して各種ガスボンベ(図略)に接続される。ガス導出管93は、バルブ(図略)を介してロータリーポンプ(図略)および拡散ポンプ(図略)に接続される。
【0075】
チャンバー90内には、基材100を保持する基台91および円筒形状の陽極板94が配設されている。基台91は、チャンバー90の中央部に設置されている。陽極板94は、チャンバー90の内壁に沿って、チャンバー90と同軸的に配置されている。基台91および陽極板94はともにステンレス鋼製で、高電圧電源装置99にそれぞれ接続されている。
【0076】
(参考例1)
上記のPCVD成膜装置を用いて、基材(冷間圧延鋼板:SPCC)の表面に配向性の非晶質炭素膜を形成し、試料#R1を作製した。
【0077】
はじめに、基材(50mm×80mm×厚さ1.5mm)を、基台91に載置した。次に、チャンバー90を密閉し、ガス導出管93に接続されたロータリーポンプおよび拡散ポンプにより、チャンバー90内のガスを排気した。約1×10−3Paまで排気後、ガス導入管92からアルゴンガスを120sccm導入し、ガス圧を11Paとした。
【0078】
基台91(陰極)と陽極板94との間に200Vの直流電圧を印加すると、放電が開始した。放電に伴うイオン衝撃により、基材表面の温度を所定の温度まで昇温させた。なお、基材の表面温度の測定は、赤外放射温度計により行った。
【0079】
次に、ガス導入管92から、アルゴンガスに加え、反応ガスとして10.7sccmのピリジンガスおよび120sccmの窒素ガスを導入した。このときのガス圧は11Paであった。基台91(陰極)と陽極板94との間に3000Vの直流電圧を印加(電流:0.4A)すると、基台91および基材の周囲で放電95が開始した。このときの基材の表面温度は、400℃であった。
【0080】
放電開始から所定の時間の経過後、放電を停止させた。成膜時間は、膜厚に応じて制御した。こうして、基材の表面に厚さ1μm程度の非晶質炭素膜をもつ試料#R1を得た。
【0081】
(参考例2)
反応ガスを導入後の直流電圧を2000V(電流:0.35A)とした他は、参考例1と同様にして、試料#R2を作製した。なお、成膜中の基材の表面温度は、350℃であった。
【0082】
(参考例3)
反応ガスとしてピリジンガスおよび窒素ガスに加えてテトラメチルシラン(TMS)を用い、反応ガスを導入後の直流電圧を3000V(電流:0.35A)とし、参考例1と同様にして、試料#R3を作製した。なお、成膜中の基材の表面温度は、400℃であった。
【0083】
(参考例4)
反応ガスを導入後の直流電圧を1000V(電流:0.2A)とした他は、参考例1と同様にして、試料#R4を作製した。なお、成膜中の基材の表面温度は、280℃であった。
【0084】
(参考例5)
上記のPCVD成膜装置を用いて、基材(冷間圧延鋼板:SPCC)の表面に配向性の非晶質炭素膜を形成し、導電性部材#04を作製した。
【0085】
はじめに、基材(50mm×80mm×厚さ1.5mm)を、基台91に載置した。次に、チャンバー90を密閉し、ガス導出管93に接続されたロータリーポンプおよび拡散ポンプにより、チャンバー90内のガスを排気した。約1×10−3Paまで排気後、ガス導入管92からアルゴンガスを120sccm導入し、ガス圧を11Paとした。
【0086】
基台91(陰極)と陽極板94との間に200Vの直流電圧を印加すると、放電が開始した。放電に伴うイオン衝撃により、基材表面の温度を所定の温度まで昇温させた。なお、基材の表面温度の測定は、赤外線放射温度計により行った。
【0087】
次に、アルゴンガスの流入を停止し、ガス導入管92から、反応ガスとして35sccmのピリジンガスおよび60sccmの窒素ガスを導入した。このときのガス圧は、11Paであった。基台91(陰極)と陽極板94との間に3000Vの直流電圧を印加(電流:0.4A)すると、基台91および基材の周囲で放電95が開始した。このときの基材の表面温度は、560℃であった。
【0088】
放電開始から所定の時間の経過後、放電を停止させた。成膜時間は、膜厚に応じて制御した。こうして、基材の表面に厚さ1μm程度の非晶質炭素膜をもつ導電性部材#R5を作製した。
【0089】
【表1】

【0090】
〔評価〕
試料#R1〜#R5について、非晶質炭素膜の膜組成、膜密度、導電性および配向性を評価した。以下に、評価方法を説明するとともに、その結果を示す。
【0091】
〔膜組成および膜密度〕
各試料の非晶質炭素膜の膜組成の測定結果を表2に示す。非晶質炭素膜中のC、NおよびSi含有量は、電子プローブ微小部分析法(EPMA)、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光法(AES)、ラザフォード後方散乱法(RBS)により定量した。また、H含有量は、弾性反跳粒子検出法(ERDA)により定量した。ERDAは、2MeVのヘリウムイオンビームを膜表面に照射して、膜からはじき出される水素を半導体検出器により検出し、膜中の水素濃度を測定する方法である。また、Csp量およびCsp量は、既に詳説したNMRスペクトルにより定量した。
【0092】
また、各部材の非晶質炭素膜の密度を測定した。密度の測定には、X線反射率法、弾性反跳粒子検出法(ERDA)およびラザフォード後方散乱分光法(RBS)を用いた。X線の反射率スペクトルにおける振動振幅およびERDA−RBSからの組成情報から、密度を算出した。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
〔導電性〕
各試料の導電性を評価するために、体積抵抗と接触抵抗を測定した。
【0095】
一般的に、基材の表面に成膜された薄膜の電気抵抗の測定には、二端子法、四探針法、四端子法といった方法が用いられている。二端子法では、2点間の電圧降下を測定するが、電極−薄膜間の接触抵抗も含まれるため、薄膜の体積抵抗率が正確に測定できない。このため、接触抵抗の影響を受けない四探針法(JIS K 7194、JIS R 1637)や四端子法(ISO 3915)が提唱されている。そのため、各試料が有する非晶質炭素膜の抵抗測定には、四探針法を用いた。また、基材の体積抵抗率は、非晶質炭素膜よりも低い。そのため、このままの状態で抵抗測定を行うと、基材側にも電流が流れ、非晶質炭素膜の体積抵抗が低く測定される。そこで、非晶質炭素膜そのものの体積抵抗率を測定するために、各導電性部材に対して以下の処理を行った(図6)。
【0096】
図6において、試料10は、基材100と、基材100の表面に成膜された非晶質炭素膜101と、からなる。はじめに、ガラス板200の表面と試料10の非晶質炭素膜101の表面とを接着剤201で接着し、接合体20を作製した。接着剤201が十分に乾燥した後、接合体20をエッチング溶液Sに浸漬し、基材100をエッチングして、ガラス板200の表面に非晶質炭素膜101が固定された試験片20’を得た。ここで、ガラス板200および用いた接着剤201からなる接着層201’の体積抵抗率は1014Ω・cm程度で、絶縁性を示した。したがって、試験片20’を用いて抵抗測定を行えば、非晶質炭素膜の正確な体積抵抗率が得られる。試験片20’は、純水で洗浄後、非晶質炭素膜101の表面をXPS分析に供し、鉄などの基材成分が残留していないこと、炭素の構造変化が起きていないこと、を確認した。また、走査電子顕微鏡により、非晶質炭素膜101にクラックが存在しないことを確認した。得られた試験片20’を用い、100mA〜0.1μAの電流を印加して、非晶質炭素膜101の体積抵抗率を四探針法により測定した。測定結果を表3に示す。
【0097】
なお、接着剤201にはα―シアノアクリレート系接着剤、エッチング溶液Sには塩化第2鉄溶液を用いた。また、四探針プローブPを具備する抵抗測定装置(三菱化学株式会社製ロレスタ−GP)を使用した。
【0098】
また、各試料と、燃料電池用セパレータにおいてガス拡散層を構成するカーボンペーパーと、の接触抵抗を測定した。接触抵抗の測定は、図7に示すように、試料10の非晶質炭素膜上にカーボンペーパー31を載置し、2枚の銅板32により挟持した。銅板32は、試料10およびカーボンペーパー31に接触する接触面が金めっきされたものを用いた。このとき、試料10の非晶質炭素膜とカーボンペーパー31とが接触する接触面の面積は、2cm×2cmであった。2枚の銅板32には、ロードセルにより1.47MPaの荷重が、接触面に対して垂直に負荷された。この状態で、2枚の銅板32の間に低電流DC電源により1Aの直流電流を流した。荷重負荷の開始から60秒後における試料10とカーボンペーパー31との電位差を測定して電気抵抗値を算出し、これを接触抵抗値とした。測定結果を表3に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
〔配向性〕
各試料に対してX線回折測定を行い、配向指数を求めた。
【0101】
X線回折測定は、SPring−8(BL16XUおよびBL46XU)にて行った。入射X線エネルギー:12keV(波長λ:1.033Å)、入射角度:約0.1°(非晶質炭素膜でX線が全反射して基材の回折X線が検出されない条件とした)、走査範囲:2θで3°〜95°(1ステップを1°とした)、の条件で、基材に対して面外方向および面内方向の二種類の測定を行った。図8Aおよび図8Bに、導電性部材#01に対してX線回折測定を行った結果を示した。図8Aは面外方向の測定結果、図8Bは面内方向の測定結果である。2θ=17°付近および29°付近にピークがあり、2Hグラファイトを想定すると、(002)面および(100)面、にそれぞれ相当する。したがって、図8Bを見るだけで、グラファイトの(002)面が厚さ方向に沿って選択的に配向していることは明確である。しかし、(002)面と(100)面のピーク強度をより定量的に比較するために、それぞれのピーク強度を以下のように算出した。
【0102】
X線回折により得られたスペクトルからバックグラウンドを除去し、2θ=17°付近と29°付近のピーク強度を算出した。各ピークの最強ピーク強度を、そのピークの強度とした。以下に、バックグラウンドの除去方法を説明する。
【0103】
バックグラウンド(BG)を、次の式より導入した。
BG=a+(bx+cx+d)/(ex+fx+g)
ここで、a〜gは任意の定数、xはq値(単位:nm−1,d値の逆数であって、d値は、2dsinθ=nλの回折条件(Braggの法則)を満たす値)である。次の三つの条件を同時に満たすa〜gを、マイクロソフト社製エクセル(登録商標)のソルバー機能を用いて算出した。
【0104】
I.BG>0
II.(sig.−BG)>0 ここでsig.は生データ。
III.q値が、x<2かつx>9.5の範囲において、(sig.−BG)が最小となる。
【0105】
上記の手法により得られたピーク強度から、配向指数Dを算出した。結果を表4に示した。
【0106】
さらに精密に配向指数を規定するために、リートベルト解析用ソフトウェアである多目的パターンフィッティングシステム「RIETAN−FP」(F. Izumi and K. Momma, “Three-dimensional visualization in powder diffraction,” Solid State Phenom., 130, 15-20 (2007))を用いて、2Hグラファイトの粉末X線回折シミュレーションを行った。この解析において、構造パラメータとして選択配向パラメータ「rl値」を規定する。rl値は、配向状態を指標する値であって、文献(W. A. Dollase, J. Appl. Crystallogr., 19, 267(1986))で述べられている。rl値を0.5から5まで変化させたときの(002)面と(100)面のピーク強度比(I/I)を求め、rl値とI/Iとの関係を最小二乗法で累乗式に近似した。なお、rl値は、約1の時に無配向状態にあり、無配向状態を基準にrl値が大きいとa面(つまり(100)面)配向性が強く、rl値が小さいとc面(つまり(001)面)配向性が強い。
【0107】
rl=2.073×(I/I−0.222
ここで、面内回折について、rlは配向指数rであって、r=1:無配向状態、r<1:c面配向、r>1:a面配向、I:I002、I:I100、である。面外回折について、rlは配向指数r’であって、r’=1:無配向状態、r’<1:c面配向、r’>1:a面配向、I:I002’、I:I100’、である。配向指数rおよびr’を、表4に示した。
【0108】
【表4】

【0109】
〔評価結果について〕
面内回折の強度比から算出した配向指数rは、1.1〜1.5の範囲にあり、いずれの試料のr値も1に近い値であった。一方、面外回折の強度比から算出した配向指数r’については、試料#R4はNを含む非晶質炭素膜を備えるが、配向指数r’はほぼ無配向状態を示す1.4であった。また、試料#R1〜#R3および#R5の配向指数r’は、2.2〜5程度、つまり2以上であった。r’≧2では、表面に対して平行な面にa面が優先的に配向しており、表面に対して平行なc面が少ない状態を示す。つまりこれは、基材の表面に対して直交した方向には、c面が配向している状態を示す。さらに、#R1〜#R3および#R5では、配向指数Dも9以上の高い値を示した。よって、試料#R1〜#R3および#R5は、(002)面が膜の厚さ方向に高配向している配向性非晶質炭素膜を備えると言える。
【0110】
試料#R1〜#R3および#R5は、体積抵抗率が10−1Ωcmのオーダーあるいはそれ以下で非常に低く、高い導電性を示した。また、接触抵抗も非常に低かった。これら試料#R1〜#R3および#R5は、窒素を8〜13at%、水素を10〜17at%含み、Cspの割合が95at%以上の非晶質炭素膜を有する導電性部材であった。また、試料#R1〜#R3および#R5の非晶質炭素膜は、配向指数r’が2以上、Dが9以上で、非常に配向性が高かった。また、試料#R1〜#R3および#R5の非晶質炭素膜は、膜密度が2g/cm程度であり、アークイオンプレーティング法またはスパッタリングで作製される非晶質炭素膜に匹敵するほど緻密であった。
【0111】
なお、試料#R1〜R3および#R5の体積抵抗率は、上記の四探針法を用いて非晶質炭素膜の表面に対して測定を行った。試料#R1〜R3および#R5はグラファイトの(002)面が厚さ方向に沿って高配向しているため、膜厚方向に電流を流して測定した抵抗率は、さらに低いと予測される。
【0112】
そして、試料#R1〜#R3および#R5の非晶質炭素膜は、放電電圧:2000V以上、成膜温度:350℃以上、の成膜条件により形成された。しかし、放電電圧:1000V、成膜温度:280℃、で形成された非晶質炭素膜を備える試料#R4は、導電性の面でも配向性の面でも、試料#R1〜#R3および#R5に劣った。これは、放電電圧も成膜温度も共に低かったため、反応ガスとしてピリジンガスと窒素ガスとを共用しても、ピリジンに結合する水素原子と窒素原子との置換が良好に行われなかったためであると考えられる。したがって、試料R4の作製方法において成膜温度を上昇させることで、水素含有量が減少して分極状態も良好となり、十分な導電性および配向性をしめす非晶質炭素膜が得られる可能性もある。
【0113】
また、試料#R5は、成膜温度が560℃と高く、本発明の燃料電池用セパレータの製造方法として好適ではない。しかし、参考例5において成膜温度を300〜520℃としても、#R5の同等の組成をもち十分に高導電性を示す非晶質炭素膜が得られると考えられる。
【0114】
以下の各実施例では、上記の参考例と同等の配向性非晶質炭素膜が得られる成膜条件を用いて、各試料(燃料電池用セパレータ)を作製した。
【0115】
《実施例》
(実施例1)
上記のPCVD成膜装置を用いて、ステンレス鋼製の基材(SUS447J1)の表面に配向性非晶質炭素膜を形成し、試料#01を作製した。
【0116】
はじめに、基材(50mm×80mm×厚さ0.2mm)を、基台91に載置した。次に、チャンバー90を密閉し、ガス導出管93に接続されたロータリーポンプおよび拡散ポンプにより、チャンバー90内のガスを排気した。約1×10−3Paまで排気後、ガス導入管92からアルゴンガスを120sccm導入し、ガス圧を11Paとした。
【0117】
基台91(陰極)と陽極板94との間に200Vの直流電圧を印加すると、放電が開始した。放電に伴うイオン衝撃により、基材表面の温度を所定の温度まで昇温させた。なお、基材の表面温度の測定は、赤外放射温度計により行った。
【0118】
次に、ガス導入管92から、アルゴンガスに加え、反応ガスとして10.7sccmのピリジンガスおよび120sccmの窒素ガスを導入した。このときのガス圧は7Paであった。基台91(陰極)と陽極板94との間に3000Vの直流電圧を印加(電流:0.35A)すると、基台91および基材の周囲で放電95が開始した。このときの基材の表面温度は、430℃であった。
【0119】
放電開始から30分後、放電を停止させた。こうして、ステンレス鋼製の基材の表面に配向性非晶質炭素膜が形成された試料#01を得た。
【0120】
(実施例2〜実施例6および実施例8)
成膜温度および成膜時間を変更した他は実施例1と同様にして、試料#02〜#06および#08を作製した。それぞれの成膜条件を表5に示した。
【0121】
(実施例7)
上記のPCVD成膜装置を用いて、ステンレス鋼製の基材(SUS447J1)の表面に配向性非晶質炭素膜を形成し、試料#07を作製した。
【0122】
はじめに、基材(50mm×80mm×厚さ0.2mm)を、基台91に載置した。次に、チャンバー90を密閉し、ガス導出管93に接続されたロータリーポンプおよび拡散ポンプにより、チャンバー90内のガスを排気した。約1×10−3Paまで排気後、ガス導入管92からアルゴンガスを60sccm導入し、ガス圧を11Paとした。
【0123】
基台91(陰極)と陽極板94との間に200Vの直流電圧を印加すると、放電が開始した。放電に伴うイオン衝撃により、基材表面の温度を所定の温度まで昇温させた。なお、基材の表面温度の測定は、赤外放射温度計により行った。
【0124】
次に、ガス導入管92から、アルゴンガスに加え、反応ガスとして22.5sccmのピリジンガスおよび60sccmの窒素ガスを導入した。このときのガス圧は7Paであった。基台91(陰極)と陽極板94との間に3000Vの直流電圧を印加(電流:0.36A)すると、基台91および基材の周囲で放電95が開始した。このときの基材の表面温度は、430℃であった。
【0125】
放電開始から4分後、放電を停止させた。こうして、ステンレス鋼製の基材の表面に配向性非晶質炭素膜が形成された試料#07を得た。
【0126】
(実施例9)
上記のPCVD成膜装置を用いて、ステンレス鋼製の基材(SUS447J1)の表面に配向性非晶質炭素膜を形成し、試料#09を作製した。
【0127】
はじめに、基材(50mm×80mm×厚さ0.2mm)を、基台91に載置した。次に、チャンバー90を密閉し、ガス導出管93に接続されたロータリーポンプおよび拡散ポンプにより、チャンバー90内のガスを排気した。約1×10−3Paまで排気後、ガス導入管92からアルゴンガスを60sccm導入し、ガス圧を11Paとした。
【0128】
基台91(陰極)と陽極板94との間に200Vの直流電圧を印加すると、放電が開始した。放電に伴うイオン衝撃により、基材表面の温度を所定の温度まで昇温させた。なお、基材の表面温度の測定は、赤外放射温度計により行った。
【0129】
次に、ガス導入管92から、アルゴンガスに加え、反応ガスとして35sccmのピリジンガスおよび60sccmの窒素ガスを導入した。このときのガス圧は7Paであった。基台91(陰極)と陽極板94との間に3000Vの直流電圧を印加(電流:0.38A)すると、基台91および基材の周囲で放電95が開始した。このときの基材の表面温度は、430℃であった。
【0130】
放電開始から2分後、放電を停止させた。こうして、ステンレス鋼製の基材の表面に配向性非晶質炭素膜が形成された試料#09を得た。
【0131】
(実施例10)
成膜温度を510℃に変更した他は実施例9と同様にして、試料#10を作製した。
【0132】
(実施例11)
基材をSUS304とし、成膜時間を35分に変更した他は実施例1と同様にして、試料#11を作製した。
【0133】
(比較例1および比較例3)
SUS447J1を試料#C1、SUS304を試料#C3とした。つまり、試料#C1は実施例1〜10の基材、試料#C3は実施例11の基材、にそれぞれ相当し、皮膜をもたない。
【0134】
(比較例2)
成膜温度を529℃に変更した他は実施例1と同様にして、試料#C2を作製した。
【0135】
(比較例4)
反応ガスを導入後の直流電圧を600V(電流:1A)とし、成膜温度を290℃、成膜時間を4分に変更した他は実施例10と同様にして、試料#C4を作製した。
【0136】
【表5】

【0137】
〔評価〕
〔混合層および突起の確認〕
各試料の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、混合層(化合物層および拡散層)および突起が生成したことを確認するとともに、各層および突起の寸法を測定した。結果を表6に示す。なお、表6に示す膜厚、突起の長さおよび幅は、断面の異なる箇所(3箇所以上)を撮影したTEM像からそれぞれ複数箇所(5箇所以上)において測定した値の数平均値である。拡散層の厚さは、電子プローブ微小部分析法(EPMA)で測定した炭素濃度が、基材マトリックスの炭素濃度を超える範囲の厚さを複数箇所(5箇所以上)において測定した値の数平均値である。

【0138】
また、図10および図11に、断面観察結果を示す。図10は、試料#09の断面のTEM像である。図11および図12は、試料#11の断面のTEM像である。配向性非晶質炭素膜、突起および混合層(化合物層および拡散層)の位置を、図10〜図12に示した。いずれの混合層も、C、N、Fe、CrおよびOを含むことを、EPMAおよびEELS(電子エネルギー損失分光法)により確認した。また、混合層では、化合物として、Cr、FeC、Fe、FeNの存在を電子線回折により確認した。
なお、成膜される配向性非晶質炭素膜のうち混合層の形成に関与するのは、基材との界面付近のわずかな部分である。そのため、各実施例の配向性非晶質炭素膜の組成は、各参考例の配向性非晶質炭素膜の組成と大差はない。たとえば#R1と#08では、両者の配向性非晶質炭素膜はほぼ同じ組成になることを確認した。
【0139】
【表6】

【0140】
〔腐食試験〕
各試料について腐食試験を行い、燃料電池用セパレータとしての特性を評価した。
【0141】
腐食試験は、北斗電工株式会社製電気化学測定システム(HZ−3000)を用いて測定した。また、図9に示す測定装置を使用した。測定装置として、内径34mmφで高さ30mmの収容空間51をもつ測定セル50を用いた。収容空間51は、軸方向の両端部が開口しており、下端部には試験片(試料)10を測定セル50に固定するための固定板52を有する。また、収容空間51の上端部には、参照電極E1および対極E2が固定された蓋体53を有する。棒状の参照電極E1は、内面側に対極E2が取り付けられた蓋体53を貫通して固定されている。
【0142】
腐食電流を測定するために、試験片10が固定された測定セル50の収容空間51に電解液Lを満たした。電解液Lの調製は、希硫酸に5〜50ppmのClおよびFを試験条件に応じて添加して行った。次に、参照電極E1(飽和KCl−Ag/AgCl電極)および対極E2(白金板)を準備し、蓋体53に固定するとともに収容空間51の上端部に蓋をした。このとき、参照電極E1および対極E2は、電解液Lに浸漬した。各電極の端子を定電位電解装置(ポテンショスタット)に接続した。電解液Lの温度を80℃に保持するとともに、E1と試験片10との間に所定の電圧(0.8V、0.9Vまたは1V)を所定の試験時間(25時間または100時間)印可した。腐食試験条件(希硫酸のpH、試験時間および印加電圧)は、表7に示した。
【0143】
上記の腐食試験の前後で、接触抵抗を測定した。測定は、既に述べた測定方法において、試料10の非晶質炭素膜とカーボンペーパー31とが接触する接触面の面積を10.8cm、荷重を1MPa、として行った。測定結果を表7に示した。また、腐食試験後の電解液Lの金属イオン濃度を誘導結合高周波プラズマ分光分析(ICP)により測定した。金属イオン濃度の測定は、燃料電池において電解質膜の劣化の原因となるFeイオンおよびCrイオンについて行った。得られたFeおよびCrの溶出量を表7に示した。
【0144】
【表7】

【0145】
全ての試料のTEM像において、複数の突起を確認できた。しかし、試料#C4の突起は、平均長さで3nmしかなかった。そのため、腐食試験中に、配向性非晶質炭素膜は剥離した。一方、試料#C2では、平均長さが180nmの長い突起が形成された。しかし、腐食試験後のイオン溶出量は、表面に皮膜をもたない#C1および#C3よりも多かった。これは、突起とともに化合物層が厚く生成され、基材のステンレス鋼のCr量が低下して、耐食性が低下したためである。なお、突起が大きく成長しなかった試料#C4では、化合物が確認されなかったことから、突起が長いものほど化合物層が厚く生成することがわかった。
【0146】
試料#01〜#11は、いずれも優れた耐食性を示した。特に、試料#01〜#04および#11は、腐食試験後のCrイオン溶出量が0.1nmol/cm/Hr未満に抑えられたとともにFeイオン溶出量も0.3nmol/cm/Hr未満で低かった。これらの試料は、配向性非晶質炭素膜の膜厚に対する突起の平均長さの比(T/L)が、5.6〜16であった。なかでも、試料#01および#02は、試験前後の接触抵抗が5mΩ・cm程度を維持した。これらのT/L値は、5.6〜10であった。つまり、突起が大きく成長し、Cr量を低減させ基材の耐食性を低下させる化合物層が厚く生成しても、緻密な配向性非晶質炭素膜が十分な厚さで形成されることで、優れた耐食性を示す燃料電池用セパレータとなることがわかった。
【0147】
試料#05〜07、#09および#10は、成膜時間を10分未満として作製された。これらの試料は、成膜時間を短くしたことで化合物層の生成が低減された。たとえば、試料#10では、成膜温度が510℃で高くても成膜時間を2分としたことで、化合物層が58nmとなった。しかし、成膜時間を短くすると、ピリジンの供給量を多くしない限り、配向性非晶質炭素膜を厚く成膜することが困難となる。そのため、試料#05および#06のイオン溶出量は、他の試料よりも耐食性が低下した。なお、12〜40分程度の成膜時間で、#01〜#04、#08および#11のような耐食性に優れるセパレータが得られることがわかった。
【0148】
また、拡散層が2μm以上で基材の表層に多くのCおよびNが拡散したと思われる試料#01、#04、#10および#11であっても、燃料電池用セパレータとして十分な耐食性を示した。これは、基材のステンレス鋼に、Crを低減させる原因となるCだけでなくNも一緒に拡散したためである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼からなる基材と、
該基材の少なくとも電極に対向する表面に形成され、炭素(C)を主成分とし、窒素(N)を3〜20原子%、水素(H)を0原子%を超え20原子%以下含み、かつ、該炭素の全体量を100原子%としたときにsp混成軌道をもつ炭素量が70原子%以上100原子%未満であって、グラファイトの(002)面が厚さ方向に沿って配向する配向性非晶質炭素膜と、
前記基材と前記配向性非晶質炭素膜との界面に生成され該両者の構成原子をそれぞれ一種以上含む混合層と、
前記混合層から前記配向性非晶質炭素膜内に突出し、平均長さが10〜150nmである複数の突起と、
を備えることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
前記混合層は、前記基材の表層に少なくとも炭素(C)および窒素(N)が拡散してなる拡散層を有する請求項1記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
混合層は、前記基材の構成原子から選ばれる一種以上と、前記配向性非晶質炭素膜の構成原子および酸素から選ばれる一種以上と、の組み合わせからなる化合物から選ばれる少なくとも一種を含む化合物層を有する請求項1または2記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
複数の前記突起の平均長さ(L)に対する前記配向性非晶質炭素膜の厚さ(T)の比(T/L)は、1〜30である請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項5】
前記基材は、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼または2相ステンレス鋼からなる請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用セパレータからなることを特徴とする燃料電池。
【請求項7】
直流プラズマCVD法により、請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用セパレータを製造する方法であって、
前記基材を反応容器内に配置し、該反応容器内に、sp混成軌道をもつ炭素を含む炭素環式化合物ガスならびにsp混成軌道をもつ炭素と窒素とを含む含窒素複素環式化合物ガスから選ばれる一種以上の化合物ガスと窒素ガスとを含む反応ガスを導入して1500V以上で放電し、300〜520℃の該基材に成膜することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図13】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−151015(P2011−151015A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288502(P2010−288502)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】