説明

燃料電池輸送構造及び燃料電池輸送方法

【課題】燃料電池発電装置に対する衝撃を抑制する。
【解決手段】燃料電池発電装置を輸送手段で輸送するための燃料電池輸送構造は、燃料電池発電装置の下面に着脱可能に取り付けられ、輸送手段の所定位置に設置され、燃料電池発電装置を支持する緩衝部40を有する。当該燃料電池輸送構造では、輸送手段に対する荷積み・荷降ろし時及び輸送手段による輸送時の燃料電池発電装置に対する衝撃を抑制すると共に輸送コストを削減することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
燃料電池輸送構造及び燃料電池発電装置の燃料電池輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、深刻化する環境問題及びエネルギー問題等を考慮したクリーンで高効率な発電手段の一つとして燃料電池が注目されている。また、燃料電池本体は電解質の違いにより、りん酸形(PAFC)、固体高分子形(PEFC)、溶融炭酸塩形(MCFC)、固体酸化物形(SOFC)に分類される。
【0003】
例えば、電解質層にりん酸を保持するりん酸形燃料電池は、カーボン材とりん酸を含有する多孔体のマトリックス等の低強度材料とで構成されている。当該燃料電池では、酸素等の酸化剤ガス及び水素等の燃料ガスを、酸化剤極及び燃料極に連続的にそれぞれ供給して、燃料ガスのもつエネルギーを電気化学的に電気エネルギーに変換すると共に、水が発生するクリーンな発電を行う。なお、約200度で稼動するりん酸形燃料電池は、高温熱利用も可能であり、総合効率が高い燃料電池として開発が進められている。また、100〜400kWの容量のりん酸形燃料電池が導入普及段階にある。
【0004】
このような燃料電池本体を具備する燃料電池発電システムは、主機及び補機により構成される。主機としては、燃料電池本体、炭化水素系の原燃料ガスから硫黄化合物を除去する脱硫装置、硫黄化合物が除去された原燃料ガスを水素を含有する改質ガスに改質する改質装置、及び改質ガス中のCO(一酸化炭素)を水素とCO2(二酸化炭素)に変えるCO変成装置等の発電反応プロセスに寄与する機器がある。また、当該補機としては、燃料電池冷却装置、水処理装置、インバータ装置等の主機の動作の補助的な役目の機器がある。このような燃料電池発電システムは、高効率なコージェネレーション発電装置としても注目されている。現在では、当該燃料電池発電システム全体をケース(例えば、キュービクル等)に収納したパッケージ化したパッケージ形燃料電池発電装置の開発が進められている。
【0005】
このようなパッケージ形燃料電池発電装置の海外での需要も増加している。当該燃料電池パッケージを海外に輸送する場合には海上輸送が行われる。
例えば、パッケージ形燃料電池発電装置でりん酸形燃料電池本体が利用される場合には、当該りん酸形燃料電池本体は、セル内に使用しているシール部材が移動及び脱落しないように、シール部材に対して本体内側への圧力を維持する必要がある。このため、製作工場から港湾までと港湾から設置場所までとの車両輸送時、及び港湾でのクレーン荷降ろし時の衝撃Gを低く抑える(例えば2G以下程度)必要がある。
【0006】
しかし、海上輸送の際には、輸送先でのエアサスペンションを備えた車両の現地調達が困難であり長期間待機する必要が生じて輸送期間が長くなる問題があると共に、輸送先の港湾でのヤードクレーン(荷卸)作業において玉掛け方法や吊上げ、吊下げ時の現場指導が必要となるため、スーパーバイザーを海外現地港湾まで派遣する必要が生じ、輸送費のコストアップに繋がる問題がある。その結果、輸送時に受ける重力、並びにクレーン落下衝撃値を2G以下に抑制しながら、短期間・低コストで輸送することが困難であった。
【0007】
そこで、パッケージ形燃料電池発電装置に対する衝撃Gを低減するために、次のように木枠梱包にて当該パッケージ形燃料電池発電装置を輸送し、スーパーバイザーを派遣せずに、港湾荷役での衝撃Gを吸収する方法が考えられる。
【0008】
図9はパッケージ形燃料電池発電装置の木枠梱包を説明するための図である。なお、図9(A)は正面図、図9(B)は側面図をそれぞれ表しており、背面側も正面図と同一であって、左右の側面図も同一であるとする。
【0009】
パッケージ形燃料電池発電装置100は、燃料電池発電システムが内包された筐体110及び筐体110の下面に取り付けられたスキッドベース120を有する。なお、筐体110内の燃料電池発電システムの具体的な図示については省略している。
【0010】
また、木枠梱包200は、上板211、下板212及び側板213〜216で覆われており、下板212の裏面には底板217が複数設置されている。
パッケージ形燃料電池発電装置100はこのような木枠梱包200内の下板212に敷板218を介して載置されている。
【0011】
このようにしてパッケージ形燃料電池発電装置100を木枠梱包200で梱包して輸送することにより、外部からの衝撃を抑制することができる。
さらに、外部からのより強い衝撃を抑制するために、例えば当該木枠梱包200を、衝撃吸収床並びに衝撃吸収マットを介して載置することも可能である。
【0012】
別の方法としては、輸送先における、車両輸送時に受ける重力、並びにクレーン落下衝撃値を2G以下に抑制するために、海運会社等から指導監督者を派遣して衝撃Gの管理を行わせるようにしても構わない。
【0013】
または、パッケージ形燃料電池発電装置内に弾性体を設置し、床をフロート構造にして、輸送振動を吸収する方法(例えば、特許文献1参照)、タンクベースの周囲に調整ボルトを設けて輸送振動に対応する方法(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−277173号公報
【特許文献2】特開平7−263012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、上記のような木枠梱包を利用すると、パッケージ形燃料電池発電装置の寸法が、パッケージ形燃料電池発電装置を搭載する車両の輸送限界に近い場合には、木枠梱包による外形寸法が増加してしまう。このため、木枠梱包のためのコスト、及び新たに寸法が大きな別の車両等が必要になり、輸送のためのコストが高くなるという問題がある。
【0016】
また、パッケージ形燃料電池発電装置が梱包された木枠梱包を衝撃吸収床や衝撃吸収マットを介して載置して輸送する場合には、車両と船舶との間の木枠梱包の移動の際、衝撃吸収床並びに衝撃吸収マットの移動作業が煩雑になる。また、港湾での荷降ろし時に衝撃吸収床並びに衝撃吸収マットを使用できないこと等の問題がある。
【0017】
対策として、木枠梱包の外底面に衝撃吸収マットをボルト、くぎ打ち等で固定する方法もあるが、衝撃吸収マットが破損する恐れがあると共に、取り外して再利用するのが困難となる問題がある。
【0018】
海運会社等から指導監督者を派遣する場合には、運用管理を徹底することができ有効な方法ではあるが、人員派遣費用が上乗せされることとなり、輸送費が増大してしまうという問題がある。
【0019】
パッケージ形燃料電池発電装置内に弾性体を設置し、下板をフロート構造にする方法は、衝撃吸収に有効だが、パッケージ構造が複雑になると共に、パッケージ形燃料電池発電装置内に機器を収納する有効スペースが減少してしまうという問題がある。
【0020】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、輸送時の衝撃を抑制する燃料電池輸送構造及び燃料電池輸送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、燃料電池発電装置を輸送手段で輸送するための燃料電池輸送構造が提供される。
この燃料電池輸送構造は、前記燃料電池発電装置の下面に着脱可能に取り付けられ、前記輸送手段の所定位置に設置され、前記燃料電池発電装置を支持する緩衝部を有する。
【0022】
また、上記目的を達成するために、燃料電池発電装置を輸送手段で輸送するための燃料電池輸送方法が提供される。
この燃料電池輸送方法は、緩衝部が、前記燃料電池発電装置の下面に着脱可能に取り付けられ、前記輸送手段の所定位置に設置され、前記燃料電池発電装置を支持する。
【0023】
このような燃料電池輸送構造及び燃料電池輸送方法によれば、緩衝部が、燃料電池発電装置の下面に着脱可能に取り付けられ、輸送手段の所定位置に設置され、燃料電池発電装置が支持されるようになる。
【発明の効果】
【0024】
上記燃料電池輸送構造及び燃料電池輸送方法によれば、燃料電池発電装置に対する衝撃が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】パッケージ形燃料電池発電装置の一例を説明するための図である。
【図2】パッケージ形燃料電池発電装置に取り付けられるスキッドベースの斜視図である。
【図3】図2のスキッドベースの側面図である。
【図4】輸送時のパッケージ形燃料電池発電装置を説明するための図である。
【図5】第1の実施の形態のパッケージ形燃料電池発電装置に取り付けられる緩衝部を説明するための図である。
【図6】第1の実施の形態のパッケージ形燃料電池発電装置に対する緩衝部の取り付けを説明するための図である。
【図7】第2の実施の形態のパッケージ形燃料電池発電装置に取り付けられる緩衝部を説明するための図である。
【図8】第2の実施の形態のパッケージ形燃料電池発電装置に対する緩衝部の取り付けを説明するための図である。
【図9】パッケージ形燃料電池発電装置の木枠梱包を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[第1の実施の形態]
図1はパッケージ形燃料電池発電装置の一例を説明するための図である。なお、図1(A)はパッケージ形燃料電池発電装置の正面図、図1(B)は上面図をそれぞれ表している。
【0027】
パッケージ形燃料電池発電装置1(燃料電池発電装置)は、燃料電池発電システムを内包する筐体2と、筐体2の下部に取り付けられたスキッドベース3(スキッド)と、筐体2の上部を四方から取り囲むように取り付けられたフェンス4とを有する。当該パッケージ形燃料電池発電装置1は、スキッドベース3を下にして所定の場所に設置される。
【0028】
筐体2は、内包する燃料電池発電システムを取り囲むように複数のパネル2aが設置され、筐体2の上部には、フェンス4に四方を囲まれる空冷装置5が設置されている。なお、筐体2の上部にはサービスハッチ7が開閉可能に設置されている。
【0029】
各パネル2aは自由に開閉することができ、パネル2aを開けて燃料電池発電システムのメンテナンスを行うことができる。また、パネル2aには操作ドアパネル2bが開閉可能に設置されており、当該操作ドアパネル2bを開けて、内部に設置されている操作部を介して、燃料電池発電システムを操作することができる。
【0030】
空冷装置5は、筐体2の内部と通じる排気口6を介して、内蔵するファン(図示を省略)が回転することにより燃料電池発電システムの駆動に伴う余剰発熱分を外部に排気して、燃料電池発電システムを冷却することができる。
【0031】
また、サービスハッチ7もパネル2aと同様に、開放して、燃料電池発電システムのメンテナンスを行うことができる。
なお、このようなパッケージ形燃料電池発電装置1は、高さ3.5m×横5m×奥行2m程度である。燃料電池発電システムを内包するパッケージ形燃料電池発電装置1の総重量は1.3t程度である。
【0032】
次に、当該パッケージ形燃料電池発電装置1の下部に取り付けられているスキッドベースについて説明する。
図2はパッケージ形燃料電池発電装置に取り付けられるスキッドベースの斜視図、図3は図2のスキッドベースの側面図である。なお、図3(A)は図2の一点鎖線X−X’における断面図、図3(B)は同様に一点鎖線Y−Y’における断面図をそれぞれ表している。
【0033】
図2に示されるように、スキッドベース3は、一対の長辺のフレーム3aと、一対の短辺のフレーム3bとにより平面視で矩形状に構成されている。さらに、一対のフレーム3b間に中空のフレーム3c1が配置されて、フレーム3aとフレーム3c1との間に中空のフレーム3c2が隙間を設けて複数形成されている。このように、フレーム3a,3bで囲まれる領域に中空のフレーム3c1及び複数のフレーム3c2をそれぞれ形成することにより、矩形状のスキッドベース3の強度が増加する。なお、スキッドベース3を構成する各フレームは、金属またはアルミニウム等により構成されている。
【0034】
また、図3に示されるように、スキッドベース3の変形防止のために、フレーム3a,3bは、側面に対して略直角に一対のリブ部材3e,3fが取り付けられている。さらに、フレーム3aの設置面(下面)側に取り付けられているリブ部材3fには、図2に示されるように、複数のねじ孔3d(図3では図示を省略)がフレーム3aに沿って所定の間隔で形成されている。当該ねじ孔3dを利用して、所定場所に設置したパッケージ形燃料電池発電装置1を固定することができる。また、リブ部材3eの任意の位置に吊り部3gが形成されている。
【0035】
このようなスキッドベース3が筐体2の下面に取り付けられている。
それでは、このような構成を有するパッケージ形燃料電池発電装置1の輸送について説明する。
【0036】
図4は、輸送時のパッケージ形燃料電池発電装置を説明するための図である。なお、図4(A)はパッケージ形燃料電池発電装置1が輸送手段の荷台または積載場(所定位置)に載置されて輸送されている場合の正面図、図4(B)は図4(A)の上面図をそれぞれ表している。また、図4(B)の破線はスキッドベース3の下面に取り付けた緩衝部40の設置位置を表している。
【0037】
パッケージ形燃料電池発電装置1は、車両、列車、船舶、航空機等の輸送手段に備え付けられた荷台または積載場に載置されて輸送される。また、各輸送手段に対して、吊り上げて搬送するクレーン、荷物を運搬する所謂フォークリフト等によりパッケージ形燃料電池発電装置1の荷積み・荷降ろしが行われる。
【0038】
パッケージ形燃料電池発電装置1は、まず、吊り枠8が上部に取り付けられる。吊り枠8はフレーム8a,8bにより平面視で矩形状に構成されており、吊り枠8の四隅に、例えば環状の吊り部8cが設置されている。なお、吊り部8cの形状は環状に限らず、鍵状等、ロープまたはワイヤー等を掛けることができる形状であれば構わない。当該吊り枠8は図1に示したパッケージ形燃料電池発電装置1のフェンス4の上部に取り付けることができる。または、図4に示されるように、パッケージ形燃料電池発電装置1の筐体2の上部に設置されたフェンス4及び空冷装置5等を取り外して、排気口6をカバー9で覆って、筐体2の上部に取り付けることも可能である。
【0039】
後者の場合は、筐体2の上部のフェンス4等を取り外すことにより、総重量を軽くすることができ、さらに、例えば、高さ寸法が小さいトラックの荷台に搭載することが可能となる。そして、最終的な設置先で、フェンス4及び空冷装置5を取り付けて、パッケージ形燃料電池発電装置1を組み立てることができる。このようにして吊り枠8が取り付けられたパッケージ形燃料電池発電装置1は、吊り枠8の吊り部8cにロープまたはワイヤー等を掛けて、クレーン等で吊り上げることができる。さらに、輸送手段において、吊り枠8の吊り部8c及びスキッドベース3の吊り部3gにロープまたはワイヤー等をそれぞれ掛けて荷台または積載場に載置したパッケージ形燃料電池発電装置1を固定することで、輸送時の水平(輸送)方向に対するずれを防止することができる。
【0040】
また、パッケージ形燃料電池発電装置1のスキッドベース3のフレーム3a,3bの下面に、複数の緩衝部40を取り付ける。なお、図4では、緩衝部40をスキッドベース3のフレーム3aに沿ってそれぞれ3つずつ取り付けている場合について示しているが、緩衝部40の設置数は図4の場合に限定されない。また、設置位置もフレーム3a,3bに沿っていれば図4の場合に限定されない。
【0041】
次に、スキッドベース3の下面に取り付けられる緩衝部40について説明する。
図5は第1の実施の形態のパッケージ形燃料電池発電装置に取り付けられる緩衝部を説明するための図である。なお、図5(A)は緩衝部40の正面図、図5(B)は緩衝部40の上面図、図5(C)は緩衝部40の側面図である。また、図5(A),(C)の破線はねじ孔41aの形成位置を、図5(B)の破線は弾性体42の設置位置をそれぞれ表している。
【0042】
緩衝部40は、図5に示されるように、ねじ孔41aが形成された連結板41と、連結板43と、当該連結板41,43で狭持された2つの弾性体42とを有する。
連結板41,43は金属またはアクリル・樹脂板により構成されている。
【0043】
ねじ孔41aはスキッドベース3のフレーム3aに形成されたねじ孔3dと同じ径である。また、ねじ孔41aの連結板41に形成される数は図5に示す3つに限定されない。さらに、ねじ孔41aは、後述するように連結板41をフレーム3aに接触した際に、フレーム3aのねじ孔3dと合致するように連結板41に形成されていればよい。
【0044】
弾性体42は、構成要素として、例えば、ゴム、スプリング等が挙げられる。また、弾性体42の形状、個数を適宜変更することにより、パッケージ形燃料電池発電装置1の総重量に耐えることができる荷重を調節することができる。また、弾性体42は連結板41,43に狭持されており、接着剤により固着されている。
【0045】
次に、このような構成を有する緩衝部40のスキッドベース3への取り付けについて説明する。
図6は第1の実施の形態のパッケージ形燃料電池発電装置に対する緩衝部の取り付けを説明するための図である。なお、図6(A)はスキッドベース3に取り付けた緩衝部40の正面図、図6(B)は図6(A)の側面図をそれぞれ表している。
【0046】
スキッドベース3のフレーム3aのリブ部材3fに緩衝部40の連結板41を接触させて、リブ部材3fのねじ孔3dと、連結板41のねじ孔41aとを合致させる。この状態で、ねじ孔3d,41aをボルト44a及びナット44bで締めこむことで、緩衝部40をパッケージ形燃料電池発電装置1に取り付けることができる。また、緩衝部40は、ボルト44a及びナット44bを緩めることで、パッケージ形燃料電池発電装置1から取り外すことができる。
【0047】
このようにパッケージ形燃料電池発電装置1に対して、パッケージ形燃料電池発電装置1に予め形成されてあるねじ孔3dを利用して、ボルト44a及びナット44bで固定するだけで緩衝部40を容易に取り付けることができる。
【0048】
また、このようにして緩衝部40が取り付けられた状態でパッケージ形燃料電池発電装置1を輸送することができ、輸送時及び荷積み・荷降ろし時の衝撃が緩衝部40の弾性体42によって低減される。
【0049】
つまり、木枠梱包を使用しないでパッケージ形燃料電池発電装置1を輸送できることから、木枠梱包による外形寸法の増加を考慮する必要が無くなり、木枠梱包のためのコスト、及び新たに寸法が大きな別の車両等の必要が無くなる。
【0050】
また、パッケージ形燃料電池発電装置1は緩衝部40が取り付けられた状態で輸送されるため、衝撃吸収床または衝撃吸収マット等を別途用意する必要がなくなると共に、港湾荷役作業時の指導監督者も不要になる。
【0051】
さらに、緩衝部40は簡単に取り付け及び取り外しができるため繰り返して利用することができる。
したがって、パッケージ形燃料電池発電装置1に対する衝撃を抑制して輸送することができ、さらに輸送コストを抑えることができる。
【0052】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、パッケージ形燃料電池発電装置1に対して緩衝部の別の取り付け方について説明する。
【0053】
図7は第2の実施の形態のパッケージ形燃料電池発電装置に取り付けられる緩衝部を説明するための図である。なお、図7(A)は緩衝部50の正面図、図7(B)は緩衝部50の上面図、図7(C)は緩衝部50の側面図である。また、図7(A),(C)の破線はねじ孔41a,51aの形成位置を、図7(B)の破線は弾性体42及び連結板43の設置位置をそれぞれ表している。
【0054】
緩衝部50は、図7に示されるように、1つのねじ孔41aと2つのねじ孔51aが形成された連結板51と、連結板43と、当該連結板51,43で狭持された2つの弾性体42とを有する。
【0055】
連結板51,43は、第1の実施の形態と同様に、金属またはアクリル・樹脂板により構成されている。一方、第2の実施の形態の連結板51は、連結板43よりも(短辺の)幅が長く形成されている。
【0056】
ねじ孔41aは、スキッドベース3のフレーム3aのリブ部材3fに形成されたねじ孔3dと同じ径である。また、ねじ孔51aは、図7に示す位置・数に限定されずに形成することができる。
【0057】
弾性体42は、第1の実施の形態と同様に、構成要素としてゴム、スプリング等が挙げられ、形状、個数を適宜変更することにより、パッケージ形燃料電池発電装置1の総重量に耐えることができる荷重を調節することができる。また、弾性体42は連結板51,43に接着剤により固着されている。
【0058】
次に、このような構成を有する緩衝部50のスキッドベース3への取り付けについて説明する。
図8は第2の実施の形態のパッケージ形燃料電池発電装置に対する緩衝部の取り付けを説明するための図である。なお、図8(A)はスキッドベース3に取り付けた緩衝部50の正面図、図8(B)は図8(A)の側面図をそれぞれ表している。
【0059】
スキッドベース3のフレーム3aのリブ部材3fに緩衝部50の連結板51を接触させて、リブ部材3fのねじ孔3dと、連結板41のねじ孔41aとを合致させる。この状態で、ねじ孔3d,41aをボルト44a及びナット44bで締めこむ。
【0060】
さらに、連結板51のリブ部材3fから突出した領域と、クランプ板53とで挟板52及びリブ部材3fを挟む。この時、クランプ板53に形成してあるねじ孔(図示を省略)が、連結板51のねじ孔51aと合致しており、これらのねじ孔をボルト54a及びナット54bで締めこむ。なお、この際、クランプ板53と連結板51との間に隙間55が構成される。
【0061】
以上により、緩衝部50をパッケージ形燃料電池発電装置1に取り付けることができる。また、緩衝部50は、ボルト44a,54a及びナット44b,54bをそれぞれ緩めることで、パッケージ形燃料電池発電装置1から取り外すことができる。
【0062】
このようにパッケージ形燃料電池発電装置1に対して、パッケージ形燃料電池発電装置1に予め形成されてあるねじ孔3dを利用して、1組のボルト44a及びナット44bで固定しているために、スキッドベース3のねじ孔3dに対する間隔調整が不要となる。このため、緩衝部50をより容易に取り付け及び取り外しを行うことができる。また、ボルト44a及びナット44bは1組のみが利用されているが、クランプ板53による狭持を利用しているため、パッケージ形燃料電池発電装置1に対して緩衝部50は強固に取り付けられる。
【0063】
このようにして緩衝部50が取り付けられた状態でパッケージ形燃料電池発電装置1を輸送することができ、輸送時及び荷積み・荷降ろし時の衝撃が緩衝部50の弾性体42によって低減される。
【0064】
つまり、木枠梱包を使用しないでパッケージ形燃料電池発電装置1を輸送できることから、木枠梱包による外形寸法の増加を考慮しないでよく、木枠梱包のためのコスト、及び新たに寸法が大きな別の車両等の必要が無くなる。
【0065】
また、パッケージ形燃料電池発電装置1は緩衝部50が取り付けられた状態で輸送されるため、衝撃吸収床または衝撃吸収マット等を別途用意する必要がなくなると共に、港湾荷役作業時の指導監督者も不要になる。
【0066】
たとえ、緩衝部50に対して、輸送時または載置時等に外部から大きな衝撃を受けた場合にでも、クランプ板53と連結板51との間の隙間55内で可動することで、ボルト44a,54a及びクランプ板53の変形が防止される。このため、緩衝部50の着脱性の低下を抑制することができる。
【0067】
さらに、緩衝部50は簡単に取り付け及び取り外しができるため繰り返して利用することができる。
したがって、パッケージ形燃料電池発電装置1に対する衝撃を抑制して輸送することができ、さらに輸送コストを抑えることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 パッケージ形燃料電池発電装置
2 筐体
2a パネル
2b 操作ドアパネル
3 スキッドベース
3a,3b,3c1,3c2,8a,8b フレーム
3d,41a,51a ねじ孔
3e,3f リブ部材
3g,8c 吊り部
4 フェンス
5 空冷装置
6 排気口
7 サービスハッチ
8 吊り枠
9 カバー
40,50 緩衝部
41,43,51 連結板
42 弾性体
44a,54a ボルト
44b,54b ナット
52 挟板
53 クランプ板
55 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池発電装置を輸送手段で輸送するための燃料電池輸送構造において、
前記燃料電池発電装置の下面に着脱可能に取り付けられ、前記輸送手段の所定位置に設置され、前記燃料電池発電装置を支持する緩衝部、
を有することを特徴とする燃料電池輸送構造。
【請求項2】
前記燃料電池発電装置は、下部に取り付けられたスキッドを有することを特徴とする請求項1記載の燃料電池輸送構造。
【請求項3】
前記スキッドは側部にリブ部材を備え、
前記緩衝部は前記リブ部材に取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の燃料電池輸送構造。
【請求項4】
前記緩衝部は、
弾性体と、
前記弾性体を狭持すると共に、一方が前記リブ部材に取り付けられ、他方が前記輸送手段の所定位置に設置される一対の連結板と、
を有することを特徴とする請求項3記載の燃料電池輸送構造。
【請求項5】
前記緩衝部は、
弾性体と、
前記弾性体を狭持すると共に、一方が前記リブ部材に取り付けられ、他方が前記輸送手段の所定位置に設置される一対の連結板と、
前記一方の連結板と、前記リブ部材を狭持するクランプ板と、
を有することを特徴とする請求項3記載の燃料電池輸送構造。
【請求項6】
燃料電池発電装置を輸送手段で輸送するための燃料電池輸送方法において、
緩衝部が、前記燃料電池発電装置の下面に着脱可能に取り付けられ、前記輸送手段の所定位置に設置され、前記燃料電池発電装置を支持する、
ことを特徴とする燃料電池輸送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−73741(P2011−73741A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227569(P2009−227569)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】