説明

爆発抑制剤を含有する芳香付与または香味付与マイクロカプセル

香料付与成分または風味付与成分および担体材料のほかに、爆発抑制剤を含有する香料付与または風味付与マイクロカプセルは製造中に熱空気中で懸濁した場合に激しさが減少した爆発を受けることが判明した。爆発抑制剤はC〜C12−カルボン酸、その塩およびこれらの混合物から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香料の分野および香味工業に関する。本発明はより詳しくは十分に強力な点火源に置かれた場合に、その急速な燃焼反応が弱いかまたは穏やかであるという事実により特徴付けられる、芳香付与または香味付与マイクロカプセルに関する。実際に本発明のマイクロカプセルは、ダスト危険クラスSt−1に粒子を分類するために、その爆発の激しさを減少することができる有効な量の爆発抑制剤を含有する。
【0002】
発明の背景および解決すべき課題
マイクロカプセルは多くの程度で香料工業および風味工業に使用される。マイクロカプセルは香料付与成分または風味付与成分の放出系を構成し、有利に多くの用途に使用することができる。香料付与成分または風味付与成分のような活性物質のカプセル化は同時に酸化または湿気のような攻撃に対してカプセル化される成分の保護を提供し、他方で連続する放出による感覚作用を生じるために、風味または芳香の動力学の所定の調節を可能にする。
【0003】
これらの分野でのマイクロカプセルの有利な多くの特性に、製造中に考慮しなければならない他の特性、搬送、貯蔵および取り扱いが対置している。事実これらの放出系はその性質により、特に揮発性および燃焼可能な物質をカプセル化する事実により、燃焼可能なダストを形成し、このダストが水または他の酸素含有ガスに分散した場合に、容易に発火する混合物を形成することがある。十分に強力な発火源により発火した場合に、進行する圧力および燃焼前方での急速な燃焼反応を生じる。
【0004】
この問題はマイクロカプセルの製造中に重要になる。特に噴霧乾燥および流動床カプセル化工程はこの問題に深く関係し、両方とも、粒子を微細な粒子として熱空気に懸濁させ、従って製造中に爆発が起きる装置の使用にもとづく。
【0005】
噴霧乾燥は固体の形でカプセル化することにより、風味剤または香料のような揮発性物質を安定化するために使用される多くの用途に適した、最も一般的なカプセル化技術である。噴霧乾燥粉末は一般に通常の噴霧乾燥装置で製造される。噴霧乾燥は一般に回転円板または多成分ノズルにより行われる。詳しい技術は例えばK.Masters、Spray−drying Handbook,Longman Scientific and Technical,1991に記載される。
【0006】
層の形の流動化コア材料上に被膜を噴霧するためにまたは粉末を凝結および/または造粒するために流動床が使用される。このカプセル化技術は周知であり、例えば欧州特許第70719号または米国特許第6056949号に記載され、その内容は引用により本発明に含まれる。
【0007】
前記カプセル化装置は両方とも空気中で懸濁された粒子が爆発しやすく、これらの粒子を、処理された粒子を特徴付ける技術的安全性パラメーターの関数として適合しなければならない。特にこれらの粒子はマイクロカプセルの製造中に生じることがある爆発の激しさの関数として表さなければならない。従ってこのカプセル化工程から生じる粉末生成物の起こりうる爆発の激しさを減少する問題が工業的に最も重要である。
【0008】
燃焼可能な物質を安全に取り扱うために、生成物の危険な性質を知ることが必要である。生成物の燃焼可能な爆発する性質を特性化する信頼できる方法は生成物の試料を種々の試験にかけ、技術的安全特性により結果を分類することである。国際規格(VDIガイドライン2263 1部:ダスト火災およびダストの爆発、危険の評価、保護手段、ダストの安全性の測定法、Beuth、Berlin1990年5月)は試験装置(変形ハートマン装置および閉鎖装置、20リットル球形装置)および方法、すなわちISO標準法ISO6184/1を記載する。これらの方法は閉じた系での燃焼可能なダストの最大爆発特性のような物理的定数を決定する。全エネルギー10kJの熱分解技術発火剤は発火源として使用される。前記ガイドラインに記載された試験法からダストに固有の特性定数Kstが決定される。工業的規模で、例えば医薬品および穀物、花製品用に製造され、処理される多くのダストが存在するので、いくつかのダスト爆発クラスの1つにこの最大爆発定数を付与し、この爆発クラスを構造保護手段を規定する基礎として使用することが適している。これらのクラスの相当値をこれ以後ダスト危険クラスと呼び、定数Kstは以下のとおりである。
ダスト危険クラス 生成物比定数Kst[バール・m・s−1
St−1 0〜199
St−2 200〜299
St−3 300以上
一部の香料付与および風味付与成分はダスト危険クラスSt−1に分類されるにもかかわらず、大量のこれらの成分およびこれらを包囲するマイクロカプセルは香料付与または風味付与成分の揮発性に依存してなおSt−2ダスト危険クラスに分類され、装置の進行にきわめて費用がかかる、起こりうる爆発の激しさに特に適合した製造装置が必要である。
【0009】
WO03/043728号はポリマー担体材料内部に分散または吸収された防火剤を有する香料付与または風味付与マイクロカプセルを記載し、前記防火剤は塩基性無機塩である。これらの防火剤のために、更に有益な特性を有する爆発抑制剤として適当な他の物質が必要である。特に少ない量で同様の有効性をもって使用することができるより有効な防炎剤を見出すことが必要であり、香料付与または風味付与マイクロカプセルの吸湿性に有益な作用を示す防火剤が必要であり、技術水準の防火剤と比べた場合に、香料付与または風味付与マイクロカプセルの吸湿性を減少する防火剤を有することが特に好ましい。更にWO03/043728号に記載された防火剤は食品の用途に使用するために常に適当でなく、他の解決を見出さなければならない。
【0010】
発明の説明
注目すべきことに、新しい爆発抑制剤であるC〜C12−カルボン酸、C〜C12−カルボン酸の塩、およびその混合物が、特に熱い空気に懸濁した場合に、製造中に起こりうる爆発の激しさを減少するために有効な量で香料付与および風味付与マイクロカプセルに直接添加できることが確認できた。新しい爆発抑制剤を有するマイクロカプセルのKst定数は効果的に減少できた。驚くべきことに、これらの新しい爆発抑制剤は本発明のマイクロカプセルを有する粉末の吸湿性を減少する。
【0011】
従って第1の構成において、本発明はポリマー担体材料内部に分散または吸収された少なくとも1種の香料付与または風味付与成分を有する香料付与または風味付与マイクロカプセルを提供し、前記マイクロカプセルは更にC〜C12−カルボン酸、C1〜C12−カルボン酸の塩およびその混合物の群から選択される有効な量の爆発抑制剤を有することを特徴とする。
【0012】
第2の構成において、本発明は本発明による香料付与または風味付与組成物の製造方法を提供する。
【0013】
他の構成において、本発明はマイクロカプセルの爆発の激しさを減少するための、マイクロカプセルの組成物への、C〜C12−カルボン酸、C〜C12−カルボン酸の塩およびその混合物からなる群から選択される爆発抑制剤の使用を提供する。
【0014】
もう1つの構成において、本発明は粉末化された組成物の爆発性を減少する方法を提供し、前記方法は以下の工程:
粉末化された組成物に、C〜C12−カルボン酸、C〜C12−カルボン酸の塩およびその混合物からなる群から選択される防火剤を添加し、および/または
粉末化された組成物の粒子中におよび/または内部に防火剤を配合し、および/または
粉末化された組成物上に防火剤を被覆する
ことからなる。
【0015】
本発明は更に本発明の風味付与および/または香料付与マイクロカプセルを含有する香料付与された生成物および食品、飲料または製薬生成物を提供する。
【0016】
前記のように、マイクロカプセルのStクラスはその生成物固有の定数Kst値から導かれる(前記の相当する表参照)。Kstパラメーターは201球装置中でISO規格法ISO6184/1により測定される。この装置およびKstの測定法は国際規格に記載され、引用により本発明に含まれる(VDIガイドライン2263 1部:ダスト火災およびダストの爆発、危険の評価、保護手段、ダストの安全性の測定法、Beuth、Berlin1990年5月)。
【0017】
本発明の香料付与または風味付与マイクロカプセルは有効な量の爆発抑制剤を含有し、前記抑制剤は製造中に空気中のその懸濁により場合により生じるマイクロカプセルの爆発の激しさを減少することができる。これはこのような放出系が主に高い揮発性成分から形成され、前記成分が燃焼可能なダストを形成するというきわめて有利な構想である。このような揮発性成分は従来は限られた割合で熱い空気中に粒子を懸濁することを含む方法で処理される組成物に使用しなければならなかった。今や本発明により提供された解決はより高い量のこれらの成分の使用を可能にし、従って所定の特に揮発性の成分の前駆物質の従来の使用の有利な代案を提供する。
【0018】
従って本発明は、特に噴霧乾燥器または流動床を含む処理により製造するための、香料付与および風味付与マイクロカプセルおよび粉末生成物の製造の問題に関する有利な解決を提供し、その際微細な粒子を空気中で懸濁させ、従ってより爆発しやすい。St−1クラス下では、爆発の激しさは弱いかまたは少なくとも普通の反応であるが、ダスト危険クラスSt−2では強い反応であり、ダスト危険クラスSt−3ではきわめて強い反応である。結果として、本発明によるマイクロカプセルの製造に使用される装置は、すなわちSt−1として規定され、あまり費用がかからなくなるが、同じかまたはよりよい製造安全性条件を保証する。
【0019】
〜C12−カルボン酸の用語はカルボキシル基の炭素原子を含めて1〜12個の炭素原子を有するカルボン酸である。従って本発明のカルボン酸に1個より多いカルボキシル基が存在する場合は、これらのほかのカルボキシル基は同じく本発明による爆発抑制剤として使用されるカルボン酸の1〜12個の炭素原子に数える。
【0020】
有利に本発明のマイクロカプセルに爆発抑制剤として使用されるカルボン酸および/また はその塩は直鎖、分枝、環状および/または芳香族カルボン酸および/またはその塩である。前記カルボン酸は飽和炭化水素であってもよい。選択的に前記カルボン酸は不飽和カルボン酸であってもよい。
【0021】
環状カルボン酸の例はラクトン、たとえばアスコルビン酸でる。芳香族カルボン酸の例はサリチル酸である。
【0022】
有利にカルボン酸および/またはその塩は官能化された炭化水素カルボン酸および/またはその塩である。
【0023】
有利にカルボン酸は2個の水素原子に共有結合した、7より少ない、有利に5より少ない、特に有利に3より少ない炭素原子を有する。
【0024】
有利に本発明のカルボン酸は(II)以上の負の酸化数を有する5以下の炭素原子を有する。より有利にカルボン酸は(II)以上の負の酸化数を有する3以下の炭素原子を有する。
【0025】
本発明の1つの構成において、カルボン酸および/またはその塩はヒドロキシ官能化および/またはケト官能化された炭化水素カルボン酸および/またはその塩である。有利に本発明のカルボン酸は少なくとも1個のヒドロキシ基を有する。有利に前記カルボン酸は少なくとも2個のヒドロキシ基を有する。
【0026】
本発明のマイクロカプセルの他の構成において、カルボン酸および/またはその塩はジカルボン酸、トリカルボン酸または多カルボン酸および/またはその塩である。多カルボン酸の例はC−トリカルボン酸であるクエン酸を含む。
【0027】
有利にカルボン酸は少なくとも1つのジカルボン酸である。より有利にカルボン酸は少なくとも1つのトリカルボン酸であり、少なくとも3個のカルボキシル基を有することを意味する。
【0028】
有利にカルボン酸および/またはその塩はC〜C−カルボン酸および/またはその塩である。
【0029】
本発明の1つの有利な構成において、カルボン酸および/またはその塩はC〜C−カルボン酸および/またはその塩である。
【0030】
本発明の香料付与または風味付与マイクロカプセルの1つの構成において、カルボン酸および/またはその塩は酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、バレリアン酸、カプロン酸、クエン酸、琥珀酸、ヒドロキシ琥珀酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、グリオキサル酸、アジピン酸、乳酸、酒石酸、サリチル酸、アスコルビン酸、前記酸のカリウム塩、カルシウム塩および/またはナトリウム塩、これらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0031】
有利にカルボン酸の塩はカリウム塩および/またはナトリウム塩である。より有利にトリカルボン酸の三カリウム塩および/または三ナトリウム塩である。特に有利にクエン酸の三カリウム塩および/または三ナトリウム塩である。
【0032】
前記酸およびその塩は市販されており、その合成または原料からの単離は当業者に知られている。
【0033】
本発明の1つの構成において、マイクロカプセルはマイクロカプセルの乾燥質量に対して爆発抑制剤0.5〜80質量%を含有する。有利にマイクロカプセルはマイクロカプセルの乾燥質量に対して爆発抑制剤1〜40質量%、より有利に2〜20質量%、特に有利に2〜10質量%を含有する。
【0034】
本発明のマイクロカプセルは少なくとも1種の香料付与または風味付与材料およびポリマー担体材料の存在にもとづく。
【0035】
1つのみの成分または組成物の形の、単独での、または場合により一般に使用される溶剤および助剤中の溶液または懸濁液の形の、香料付与または風味付与成分はマイクロカプセルの全質量に対して1〜70質量%、有利に15〜60質量%、特に有利に20〜45質量%である。
【0036】
ここで使用される香料または風味成分または組成物は天然および合成に由来する多くの芳香および風味材料を規定すると考えられる。これらは1つの化合物および混合物を含む。これらの成分の具体的な例は一般的な文献、例えばPerfume and Flavour Chemicals S.Arctander、Montclair、N.J.(USA)、Fenaroli’s Handbook of Flavour Ingredients、CRC Press またはSynthetic Food Adjuncts M.B.Jacobs、van Nostrand Co.Inc.および他の類似の教科書に見出され、香料付与、風味付与および/または芳香付与消費生成物、すなわち芳香または味を消費生成物に付与する当業者に周知である。
【0037】
本発明により、香料または風味成分または組成物は担体材料に分散、被覆または吸収される。
【0038】
有利に担体材料は炭水化物を含有する。例えば担体材料は単糖類、オリゴ糖および/または多糖類を含有し、オリゴおよびポリは以下に定義される。
【0039】
本発明の1つの構成において、担体材料はモノマー、オリゴマーまたはポリマー担体材料またはこれらの2種以上の混合物を有する。オリゴマー担体は2〜10個のモノマー単位が共有結合により結合される担体である。例えばオリゴマー担体が炭水化物である場合は、オリゴマー担体はスクロース、ラクトース、ラフィノース、マルトース、トレハロース、フラクトオリゴサッカリドであってもよく、一部の例を挙げたにすぎない。
【0040】
モノマー担体材料の例は例えばグルコース、フラクトース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、フコース、ソルビトール、マンニトールである。
【0041】
ポリマー担体は共有結合により結合される10より多いモノマー単位を有する。モノマー単位の限定されない例はポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、デキストリン、マルトデキストリン、天然澱粉または改質澱粉、植物ガム、ペクチン、キサンタン、アルギネート、カラゲナン、またはセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースおよび揮発性物質のカプセル化に一般に使用されるすべての材料を含む。有利にポリマー担体はマルトデキストリンを有する。特に有利にポリマー担体はマルトデキストリンおよび改質澱粉、例えばアルケニルスクシネート澱粉を有する。
【0042】
他の構成において、香料または風味成分または組成物はポリマー担体材料の内部に吸収される。担体材料の限定されない例として、アモルファスシリカ、沈殿シリカ、フュームドシリカ、およびアルミノ珪酸塩、たとえばゼオライトおよびアルミナを引用できる。
【0043】
本発明は1つの構成により爆発抑制剤を有する香料付与および風味付与マイクロカプセルの製造方法を提供する。本発明のマイクロカプセルの製造方法にはいくつかの代案がある。第1の構成において、ポリマー担体材料に分散した香料付与または風味付与成分または組成物からなる水性エマルジョンに爆発抑制剤を添加する。得られたエマルジョンを引き続き噴霧乾燥して粉末を形成する。場合によりエマルジョンを最初のエマルジョンに添加できる。このカプセル化技術は、技術水準で完全に十分に記載され(例えばSpray−Drying Handbook、第3版、K.Masters、John Wiley(1979)参照)、食品工業または風味工業および香料工業に現在適用される、一般的な噴霧乾燥技術によるので、ここでより詳しい説明を必要としない。
【0044】
他の構成において、固体粉末の形の爆発抑制剤をポリマー担体材料中の香料付与または風味付与成分または組成物および乳化剤の水性エマルジョンから形成される噴霧乾燥粉末と簡単に配合する。
【0045】
減少する激しさを有する爆発を示す本発明のマイクロカプセルを製造する第3の代案はまず前記の多孔質ポリマー担体材料の内部に香料付与または風味付与成分または組成物を吸着し、爆発抑制剤で得られた系を被覆することである。この製造方法は例えば欧州特許第70719号または米国特許第6056949号に記載される通常の技術により流動床装置で実施することができ、その内容は引用により本発明に含まれる。担体内部の芳香または風味成分または組成物の吸着により形成される粒子は造粒後に、例えば爆発抑制剤の溶液、エマルジョンまたは溶融物を噴霧することにより被覆することができ、コアの周りに保護被膜を形成する。
【0046】
造粒工程の間に、通常の添加剤、例えば人工の汗かき剤、食物染料、ビタミン、酸化防止剤、消泡剤、炭酸形成剤、または付加的な風味剤を使用することができ、これらはコア材料または噴霧材料に添加できる。
【0047】
本発明のマイクロカプセルは一般に5〜800μm、有利に50〜300μmまで変動する平均直径を有する。
【0048】
本発明は1つの構成において、粉末化された組成物の爆発の激しさを減少する方法を提供する。組成物は有利に香料付与または風味付与組成物である。より有利に風味付与、香料付与成分および/または香料付与マイクロカプセルを有する組成物である。爆発の激しさは前記のKst定数により決定される。粉末化された組成物への爆発抑制剤の添加は噴霧乾燥され、粉末化された組成物に添加することにより行うことができる。しかし粉末化された組成物に爆発抑制剤を乾式または湿式添加する任意の方法が含まれる。例えば添加は粉末化された組成物の成分との乾式配合または乾式混合である。選択的に爆発抑制剤を粉末化された組成物の粒子におよび/または粒子の内部に配合できる。この工程は爆発抑制剤を前記ポリマー担体材料に分散した水性エマルジョンに添加し、得られたエマルジョンを、例えば噴霧乾燥により乾燥することにより行うことができる。
【0049】
他の代案において、爆発抑制剤を粉末化組成物に簡単に被覆することができる。被覆は多孔質ポリマー担体材料に、例えば前記のような流動床装置を使用して被覆することにより行うことができる。
【0050】
本発明のマイクロカプセルは有利に多くの種類の魅力的な香料付与最終生成物の感覚になじむ特性を付与し、改良し、高めるかまたは改質するために使用できる。香料の分野で本発明の方法により得られる香料付与マイクロカプセルは香料付与組成物、例えば香水、コロンまたはアフターシェーブローションに配合することができ、更に機能製品、例えば洗剤または柔軟仕上げ剤、石けん、バスジェルまたはシャワージェル、脱臭剤、ボディーローション、シャンプー、他のヘアーケアー製品、家庭用クレンザー、トイレタンク用洗浄および脱臭ブロックに添加することができる。他方でカプセル化された風味剤の場合に、本発明のマイクロカプセルにより風味付与される消費生成物は食品、飲料、薬品等を含む。
【0051】
本発明のマイクロカプセルをこれらの消費生成物に配合できる濃度は香料付与または風味付与される生成物の性質に依存して広い範囲の値で変動することができる。例として厳密に受け入れられる典型的な濃度は、マイクロカプセルが含まれる風味付与または香料付与組成物または最終消費生成物の数質量ppm〜5または10質量%の広い範囲で含まれる。
【0052】
本発明を以下の限定されない実施例により説明するが、温度は℃であり、略号は当業界で一般的な意味を表す。
【0053】
本発明の実施例
例1〜9
爆発抑制剤を有する香料付与エマルジョンの噴霧乾燥
以下の表1に示される種々の組成物(質量部)にもとづき9個の香料付与エマルジョンを製造した。組成物は2つの異なる香料付与組成物(香料Aおよび香料B)にもとづき、これにより種々の爆発抑制剤を比較した。
爆発抑制剤
1および2 Naクエン酸塩
3および4 クエン酸
5および6 Kクエン酸塩
7および8 NaHPO(技術水準)
9 なし(対照)
表1に示される例1〜9において、安定剤をまず香料に溶解した。残りの成分を当量の水で均一にし、引き続き香料をSilverstoneタイプ急速攪拌機を使用してこの分散液に乳化させた。引き続き混合物をSodeva装置中でエマルジョン出力2kg/h、乾燥空気320m/h、350℃および0.45×10Paで噴霧乾燥した。
【0054】
こうしてマイクロカプセルを含有する9個の微細粉末が得られ、マイクロカプセルの直径は10〜100μmに含まれ、液体香料の含量は36〜40質量%であった。
【0055】
粉末の爆発特性を、201球状装置(VDIガイドライン2263、1部、Dust Fires and Dust Explosions、Hazard Assessment−Protective Measures、Test Methods for the Determination of Safety Characteristics of Dusts、ISO standard procedure ISO6184/1、Beuth、Berlin、1990年9月)で測定し、粉末はダスト危険クラスSt−1(例1〜8、防炎剤を含有する)およびSt−2−3(例9、防炎剤を有しない)に属した。詳細は表1に示される。
【0056】
表1からクエン酸、クエン酸ナトリウムおよびカリウムが効果的にマイクロカプセルの爆発の激しさを減少することが理解できる。最も有効な爆発抑制剤はクエン酸カリウムであり、組成物の5%で添加され、それぞれ爆発性を119Kst(香料B)および132Kst(香料A)に減少した。従ってクエン酸カリウムは、より高い濃度で使用される(15質量%、例9)技術水準(WO03/043728)の爆発抑制剤、燐酸一ナトリウムと同じかまたはより良好な爆発の激しさを減少する作用を示した。
【0057】
結論として、本発明の新しい爆発抑制剤は香料付与マイクロカプセルの爆発の激しさを減少することができ、技術水準と類似する組成で使用した爆発抑制剤よりかなり低い濃度で有効である。
【0058】
【表1】

【0059】
例10
技術水準と比較した新しい爆発抑制剤の吸湿性
例5(本発明)および例7(技術水準)のマイクロカプセルの吸湿性(水を吸収する傾向)を、Surface Measurements Systems Ltd、3Warple Mews、Warple Way、London、W3 ORFにより販売された、Dynamic Vapor Sorption(動的蒸気収着)により、相対湿度を増加して(40%、50%、60%、70%、80%)決定し、30℃で2つの粉末の融点を決定した。この例10に関する融点は、粉末が粉末の特性を失い、液体のように流動を開始し、すなわち溶融するほど多くの水を吸収する時点での相対湿度に関する。これが起きる比相対湿度はカメラを使用した、湿った空気から水を吸収する間の粉末の観察により決定できる。
【0060】
クエン酸カリウム5%を含有する例5の香料付与マイクロカプセルは相対湿度80%で溶融するが、例7の香料付与粉末(技術水準)は相対湿度60%ですでに溶融する。付加的な試験において、クエン酸カリウム15%を含有する粉末化された香料付与組成物を製造し、相対湿度70%で溶融することが判明した。
【0061】
本発明のマイクロカプセルを含有する粉末での吸湿性の差は、理論に束縛されずに、まずクエン酸カリウムが燐酸ナトリウムより劣る吸湿性粉末を生じる事実に起因すると考えられる。更に粉末の吸湿性を更に減少するために、使用される爆発抑制剤はより少なくてよい。結論として、本発明は意想外にも30℃で相対湿度80%までのきわめて湿った環境に耐える粉末化された香料付与組成物を提供する。
【0062】
例11
以下に示される香料付与マイクロカプセルの組成にもとづき、ポリマー担体および粉末化した形で爆発抑制剤を有する香料付与成分を有する噴霧乾燥粉末を乾式混合することによりマイクロカプセルを製造した。
【0063】
爆発抑制剤を使用する乾式混合
以下の組成のエマルジョンを噴霧乾燥機、Buechi(スイス)中で噴霧乾燥した。
成分
水 150.0
Capsul1) 67.0
香料濃縮物2) 33.0
合計 250.0
1)デキストリンジオクテニルスクシネート、National Starch、米国
2)Firmenich社、ジュネーブ、スイス。
【0064】
水を蒸発後の理論的収量は香料33%を含有する粉末100gである。
【0065】
粉末の爆発特性を201球状装置により測定し(例1〜9参照)、粉末はダスト危険クラスSt−2に属した。
【0066】
引き続き同じ粉末を、粉末の形のクエン酸カリウム(Kクエン酸塩×1HO)と85:15の比で混合した。
【0067】
同じ条件下で行った均一混合物の爆発特性の分析は混合物がSt−1として分類されることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体材料の内部に分散されたまたは吸着された少なくとも1種の香料付与または風味付与成分を含有する香料付与または風味付与マイクロカプセルにおいて、マイクロカプセルが更にC〜C12−カルボン酸、C〜C12−カルボン酸の塩およびその混合物の群から選択される有効な量の爆発抑制剤を含有することを特徴とする香料付与または風味付与マイクロカプセル。
【請求項2】
カルボン酸および/またはその塩がヒドロキシおよび/またはケト官能化炭化水素カルボン酸および/またはその塩である請求項1記載の香料付与または風味付与マイクロカプセル。
【請求項3】
カルボン酸および/またはその塩がジカルボン酸、トリカルボン酸またはポリカルボン酸および/またはその塩である請求項1記載の香料付与または風味付与マイクロカプセル。
【請求項4】
カルボン酸および/またはその塩がC〜C−カルボン酸および/またはその塩から選択される請求項1記載の香料付与または風味付与マイクロカプセル。
【請求項5】
カルボン酸が酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、クエン酸、琥珀酸、ヒドロキシ琥珀酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、具離オキシル酸、アジピン酸、乳酸、酒石酸、サリチル酸、アスコルビン酸、前記酸のカリウム塩、カルシウム塩および/またはナトリウム塩およびこれらの混合物の群から選択される請求項1記載の香料付与または風味付与マイクロカプセル。
【請求項6】
担体材料がモノマー、オリゴマーまたはポリマー担体材料またはこれらの2種以上の混合物からなる請求項1記載の香料付与または風味付与マイクロカプセル。
【請求項7】
マイクロカプセルの乾燥質量に対して爆発抑制剤0.5〜80質量%を含有する請求項1記載の香料付与または風味付与マイクロカプセル。
【請求項8】
マイクロカプセルの全質量に対して香料または風味剤5〜70質量%を含有する請求項1記載の香料付与または風味付与マイクロカプセル。
【請求項9】
〜C12−カルボン酸、C〜C12−カルボン酸の塩およびその混合物からなる群から選択される爆発抑制剤を担体ポリマー材料中の香料付与または風味付与成分の水性エマルジョンに添加し、得られたエマルジョンを噴霧乾燥して粉末を形成することからなる請求項1記載の香料付与または風味付与マイクロカプセルの製造方法。
【請求項10】
ポリマー担体中の香料付与または風味付与成分の水性エマルジョンを噴霧乾燥し、得られた噴霧乾燥した粉末を、粉末化された形の、C〜C12−カルボン酸、C〜C12−カルボン酸の塩およびその混合物からなる群から選択される爆発抑制剤と乾式混合することからなる請求項1記載の香料付与または風味付与マイクロカプセルの製造方法。
【請求項11】
多孔質ポリマー担体材料に香料付与または風味付与成分を含浸させ、得られた系を、C〜C12−カルボン酸、C〜C12−カルボン酸の塩およびその混合物からなる群から選択される爆発抑制剤で被覆することからなる請求項1記載の香料付与または風味付与マイクロカプセルの製造方法。
【請求項12】
マイクロカプセルの爆発の激しさを減少するマイクロカプセルの組成物へのC〜C12−カルボン酸、C〜C12−カルボン酸の塩およびその混合物からなる群から選択される爆発抑制剤の使用。
【請求項13】
粉末化された組成物の爆発の激しさを減少する方法において、前記方法が
粉末化された組成物に、C〜C12−カルボン酸、C〜C12−カルボン酸の塩およびその混合物からなる群から選択される防炎剤を添加するおよび/または
粉末化された組成物の粒子の内部に防炎剤を配合するおよび/または
粉末化された組成物に防炎剤を被覆する
工程を有することを特徴とする粉末化された組成物の爆発の激しさを減少する方法。
【請求項14】
請求項1から7までのいずれか1項記載の香料付与マイクロカプセルを含有することを特徴とする、香水、コロン、アフターシェーブローション、石鹸、バスジェル、シャワージェル、脱臭剤、ボディーローション、シャンプー、または他のヘアーケアー製品、洗剤、織物柔軟剤、家庭用クリーナー、トイレタンク用洗浄および脱臭ブロックからなる群から選択される香料付与された生成物。
【請求項15】
請求項1から7までのいずれか1項記載の風味付与マイクロカプセルを含有することを特徴とする、食品、飲料または製薬生成物。

【公表番号】特表2008−514774(P2008−514774A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534129(P2007−534129)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053089
【国際公開番号】WO2006/038134
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】