物体搬送装置、露光装置、デバイス製造方法、フラットパネルディスプレイの製造方法、及び物体搬送方法
【課題】ステージ装置上から基板を迅速に搬出する。
【解決手段】 基板搬出装置60は、基板が載置された基板トレイ90を吸着保持して、水平面に平行にスライドさせることにより、基板トレイ90を基板ホルダ50から搬出し、エア浮上装置68上に載置する。また基板搬出装置60では、基板トレイ90が進行して来る前に予めエア浮上ユニット68を、その上面が基板ホルダ50に近い側が低くなるように傾斜させておき、基板トレイ90の進行に応じて水平に姿勢を制御する。基板トレイ90は、傾斜したエア浮上装置68のガイド面に対して進入するので、基板ホルダ50のエア浮上装置55からエア浮上装置68にスムーズに載り移ることができる。従って、基板トレイ90を高速でスライドさせることができ、基板の搬出を迅速に行うことができる。
【解決手段】 基板搬出装置60は、基板が載置された基板トレイ90を吸着保持して、水平面に平行にスライドさせることにより、基板トレイ90を基板ホルダ50から搬出し、エア浮上装置68上に載置する。また基板搬出装置60では、基板トレイ90が進行して来る前に予めエア浮上ユニット68を、その上面が基板ホルダ50に近い側が低くなるように傾斜させておき、基板トレイ90の進行に応じて水平に姿勢を制御する。基板トレイ90は、傾斜したエア浮上装置68のガイド面に対して進入するので、基板ホルダ50のエア浮上装置55からエア浮上装置68にスムーズに載り移ることができる。従って、基板トレイ90を高速でスライドさせることができ、基板の搬出を迅速に行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体搬送装置、露光装置、デバイス製造方法、フラットパネルディスプレイの製造方法、及び物体搬送方法に係り、更に詳しくは、互いに離間した2つの物体支持装置間で物体の搬送を行う物体搬送装置及び方法、並びに該物体搬送装置を用いた露光装置、該露光装置を用いたデバイス製造方法、及び該露光装置を用いたフラットパネルディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、主として、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置としては、露光対象物であるガラスプレート又はウエハ(以下、「基板」と総称する)を所定の基板支持部材上に載置し、その基板支持部材を用いて基板ステージ装置に対する基板の搬入、及び搬出を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、露光装置では、基板ステージ装置上に載置された基板への露光処理が終了すると、その基板は基板ステージ上から搬出され、基板ステージ上には別の基板が搬送されることにより、複数の基板に対して連続して露光処理が行われる。従って、複数の基板を連続露光する際には、基板ステージ装置からの搬出を迅速に行うことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,559,928号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の事情の下でなされたもので、第1の観点からすると、第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送装置であって、前記第1物体支持装置から前記第2物体支持装置に向けて前記物体を所定平面に平行な第1軸方向に駆動する搬送装置と、前記第1物体支持装置に設けられ、前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材と、前記第2物体支持装置に設けられ、前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材と、前記物体が前記第1物体支持装置上に位置した状態で、前記第2支持部材を前記第1支持部材よりも下方に位置させ、前記物体の一部が前記第2支持部材の上方に位置したのに応じて、前記第1及び第2支持部材の少なくとも一方を前記所定平面に交差する方向に移動させて前記第1及び第2支持部材に前記物体を支持させる支持部材駆動装置と、を備える第1の物体搬送装置である。
【0007】
これによれば、物体は、所定平面に平行な第1軸方向に移動することにより、第1物体支持装置から第2物体支持装置に向けて搬送される。この際、物体は、第1物体支持装置上では第1支持部材に下方から支持され、第2物体支持装置上では第2支持部材に下方から支持される。ここで、物体は、第1支持部材にのみ支持された状態で第2物体支持装置に向けて搬送され、その一部(第1軸方向の前部)が第2支持部材上に位置すると、これに応じて第1支持部材と併せて第2支持部材に支持される。従って、物体が第1支持部材上から第2支持部材上に載り移る際の衝撃を低減でき、物体を高速で移動させることができる。
【0008】
本発明は、第2の観点からすると、第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送装置であって、前記第1物体支持装置に設けられ、前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材と、前記第2物体支持装置に設けられ、前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材と、前記物体が前記第1支持部材上に位置した状態で前記第1及び第2支持部材の少なくとも一方を駆動して前記第1及び第2支持部材に前記物体を支持させる駆動装置と、前記第1及び第2支持部材に支持された前記物体を前記第1物体支持装置から前記第2物体支持装置に向けて所定平面に平行な第1軸に平行な方向に駆動する搬送装置と、を備える第2の物体搬送装置である。
【0009】
これによれば、物体は、所定平面に平行な第1軸方向に移動することにより、第1物体支持装置から第2物体支持装置に向けて搬送される。この際、物体は、第1物体支持装置上では第1支持部材に下方から支持され、第2物体支持装置上では第2支持部材に下方から支持される。ここで、物体は、搬送装置により搬送される前の段階で前記第1及び第2支持部材に支持される。従って、物体が第1支持部材上から第2支持部材上に載り移る際の衝撃を低減でき、物体を高速で移動させることができる。
【0010】
本発明は、第3の観点からすると、本発明の第1又は第2の物体搬送装置と、前記第1物体支持装置又は第2物体支持装置に支持された前記物体にエネルギビームを用いて所定のパターンを形成するパターン形成装置と、を有する露光装置である。
【0011】
本発明は、第4の観点からすると、本発明の露光装置を用いて前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法である。
【0012】
本発明は、第5の観点からすると、本発明の露光装置を用いて前記物体を露光することと、露光された物体を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法である。
【0013】
本発明は、第6の観点からすると、第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送方法であって、前記物体が前記第1物体支持装置上に位置した状態で、前記第1物体支持装置に設けられ前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材よりも、前記第2物体支持装置に設けられ、前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材を下方に位置させることと、前記物体を所定平面に平行な第1軸に平行な方向に移動させることと、前記物体の移動中に、前記物体の一部が前記第2支持部材の上方に位置したのに応じて、前記第1及び第2支持部材の少なくとも一方を前記所定平面に交差する方向に移動させて前記第1及び第2支持部材に前記物体を支持させることと、を含む第1の物体搬送方法である。
【0014】
これによれば、物体は、所定平面に平行な第1軸方向に移動することにより、第1物体支持装置から第2物体支持装置に向けて搬送される。この際、物体は、第1物体支持装置上では第1支持部材に下方から支持され、第2物体支持装置上では第2支持部材に下方から支持される。ここで、物体は、第1支持部材にのみ支持された状態で第2物体支持装置に向けて搬送され、その一部(第1軸方向の前部)が第2支持部材上に位置すると、これに応じて第1支持部材と併せて第2支持部材に支持される。従って、物体が第1支持部材上から第2支持部材上に載り移る際の衝撃を低減でき、物体を高速で移動させることができる。
【0015】
本発明は、第7の観点からすると、第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送方法であって、前記物体が前記第1支持部材上に位置した状態で、前記第1物体支持装置に設けられ前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材、及び前記第2物体支持装置に設けられ前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材の少なくとも一方を駆動して、該第1及び第2支持部材に前記物体を支持させること、前記第1及び第2支持部材に支持された前記物体を、前記第1物体支持装置から前記第2物体支持装置に向けて所定平面に平行な第1軸に平行な方向に駆動することと、を含む第2の物体搬送方法である。
【0016】
これによれば、物体は、所定平面に平行な第1軸方向に移動することにより、第1物体支持装置から第2物体支持装置に向けて搬送される。この際、物体は、第1物体支持装置上では第1支持部材に下方から支持され、第2物体支持装置上では第2支持部材に下方から支持される。ここで、物体は、第2物体支持装置に向けて搬送される前の段階で前記第1及び第2支持部材に支持される。従って、物体が第1支持部材上から第2支持部材上に載り移る際の衝撃を低減でき、物体を高速で移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態の液晶露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2(A)は、基板トレイの平面図、図2(B)は、基板トレイの側面図である。
【図3】図3(A)は、図1の液晶露光装置が有する基板ホルダ及び基板搬出装置の平面図、図3(B)は、図3(A)の3B−3B線断面図である。
【図4】図4(A)は、基板ホルダと基板トレイとが組み合わされた状態を示す平面図、図4(B)は、図4(A)の4B−4B線断面図である。
【図5】図5(A)は、基板の搬出動作を示す平面図(その1)、図5(B)は、図5(A)の5B−5B線断面図である。
【図6】図6(A)は、基板の搬出動作を示す平面図(その2)、図6(B)は、図6(A)の6B−6B線断面図である。
【図7】図7(A)は、第2の実施形態に係る基板搬出装置の平面図、図7(B)は、図7(A)の7B−7B線断面図である。
【図8】図8(A)〜図8(D)は、第2の実施形態の基板搬出装置を用いた基板搬出動作を示す図(その1〜4)である。
【図9】図9(A)及び図9(B)は、第2の実施形態の基板搬出装置を用いた基板搬出動作を示す図(その5及び6)であり、図9(C)は、図8(D)に対応する平面図である。
【図10】図10(A)は、第1の変形例に係る基板搬出装置の平面図であり、図10(B)は、第2の変形例に係る基板搬出装置の平面図である。
【図11】図11(A)は、第3の変形例に係る基板搬出装置の平面図であり、図11(B)は、第4の変形例に係る基板搬出装置の平面図である。
【図12】図12(A)は、第5の変形例に係る基板搬出装置の平面図であり、図12(B)〜図12(D)は、第5の変形例の基板搬出装置を用いた基板搬出動作を示す図(その1〜3)である。
【図13】図13(A)は、第5の変形例の基板搬出装置を用いた基板搬出動作を示す図(その4)であり、図13(B)は、図13(A)に対応する平面図である。
【図14】図14(A)は、第6の変形例に係る基板搬出装置の平面図であり、図14(B)は、第6の変形例に係る基板搬出装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態について、図1〜図6(B)に基づいて説明する。
【0019】
図1には、第1の実施形態の液晶露光装置10の概略構成が示されている。液晶露光装置10は、例えば液晶表示装置(フラットパネルディスプレイ)などに用いられる矩形(角型)のガラス基板P(以下、単に基板Pと称する)を露光対象物とする投影露光装置である。
【0020】
液晶露光装置10は、照明系IOP、マスクMを保持するマスクステージMST、投影光学系PL、基板ステージ装置PST、基板搬出装置60及びこれらの制御系等を含んでいる。以下においては、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系PLに対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向とし、水平面内でこれに直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0021】
照明系IOPは、例えば米国特許第5,729,331号明細書などに開示される照明系と同様に構成されている。すなわち、照明系IOPは、図示しない光源(例えば、水銀ランプ)から射出された光を、それぞれ図示しない反射鏡、ダイクロイックミラー、シャッター、波長選択フィルタ、各種レンズなどを介して、露光用照明光(照明光)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。また、照明光ILの波長は、波長選択フィルタにより、例えば要求される解像度に応じて適宜切り替えることが可能になっている。
【0022】
マスクステージMSTには、回路パターンなどがそのパターン面(図1における下面)に形成されたマスクMが、例えば真空吸着(あるいは静電吸着)により固定されている。マスクステージMSTは、例えばリニアモータを含むマスクステージ駆動系(図示省略)により、走査方向(X軸方向)に所定のストロークで駆動されるとともに、Y軸方向、及びθz方向にそれぞれ適宜微少駆動される。マスクステージMSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、不図示のレーザ干渉計を含むマスク干渉計システムにより計測される。
【0023】
投影光学系PLは、マスクステージMSTの図1における下方において、不図示の装置本体(ボディ)に支持されている。投影光学系PLは、例えば米国特許第5,729,331号明細書に開示された投影光学系と同様に構成されている。すなわち、投影光学系PLは、レンズモジュールなどを含む光学系(鏡筒)を複数有し、その複数の光学系は、Y軸方向に沿って、いわゆる千鳥状に配列されている(マルチレンズ投影光学系とも称される)。複数の光学系それぞれとしては、例えば両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成するものが用いられている。前述の照明系IOPは、複数の光学系に対応した複数の照明光ILをそれぞれマスクMに照射するように構成されている。このため、マスクM上には、千鳥状に配置された複数の照明光ILの照明領域が形成されるとともに、投影光学系PLの下方に配置された基板P上には、複数の光学系それぞれに対応して、千鳥状に配置された複数の照明光ILの照射領域が形成される。液晶露光装置10では、基板P上に形成される複数の照射領域が合成されることにより、千鳥状に配置された複数の光学系から成る投影光学系PLが、Y軸方向を長手方向とする単一の長方形状(帯状)のイメージフィールドを持つ投影光学系と同等に機能する。
【0024】
このため、照明系IOPからの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、投影光学系PLの像面側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布された基板P上の照明領域に共役な照明光ILの照射領域(露光領域)に形成される。そして、マスクステージMSTと基板ステージ装置PSTとの同期駆動によって、照明領域(照明光IL)に対してマスクMを走査方向(X軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pを走査方向(X軸方向)に相対移動させることで、基板P上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMのパターンが転写される。すなわち、液晶露光装置10では、照明系IOP及び投影光学系PLによって基板P上にマスクMのパターンが生成され、照明光ILによる基板P上の感応層(レジスト層)の露光によって基板P上にそのパターンが形成される。
【0025】
基板ステージ装置PSTは、定盤12、X粗動ステージ23X,Y粗動ステージ23Y、微動ステージ21、基板ホルダ50,及び重量キャンセル装置30などを備えている。
【0026】
定盤12は、例えば石材により形成された平面視で(+Z側から見て)X軸方向を長手方向とする矩形の板状部材から成り、その上面は、平面度が非常に高く仕上げられている。定盤12は、防振装置13を介して床面F上に設置された装置本体の一部であるベース15上に搭載されている。
【0027】
X粗動ステージ23Xは、平面視でY軸方向を長手方向とする矩形枠状の部材から成り、その中央部にY軸方向を長手方向とする長孔状の開口部(図示省略)を有している。X粗動ステージ23Xは、例えば基板Pを露光する際のスキャン動作時などにおいて、リニアモータなどを含むXステージ駆動系により定盤12上でX軸方向に所定のストロークで駆動される。
【0028】
Y粗動ステージ23Yは、平面視ほぼ正方形の矩形枠状の部材から成り、その中央部に矩形の開口部(図示省略)を有している。Y粗動ステージ23Yは、X粗動ステージ23X上にリニアガイド装置28を介して搭載されており、例えば露光時のステップ動作時にリニアモータなどを含むYステージ駆動系によりX粗動ステージ23X上でY軸方向に所定のストロークで駆動される。また、Y粗動ステージ23Yは、X粗動ステージ23XがX軸方向に所定のストロークで移動する際、X粗動ステージ23Xと一体的にX軸方向に移動する。
【0029】
微動ステージ21は、平面視ほぼ正方形の高さの低い直方体状の部材から成り、Y粗動ステージ23Yの上方に配置されている。微動ステージ21は、それぞれ不図示であるがY粗動ステージ23Yに固定された固定子と、微動ステージ21に固定された可動子とから成る複数のボイスコイルモータ(あるいはリニアモータ)を含む微動ステージ駆動系により、Y粗動ステージ23Y上で6自由度方向(X軸、Y軸、Z軸、θx、θy、θz方向)に微少駆動される。また、微動ステージ21は、Y粗動ステージ23YとともにX軸方向、及び/又はY軸方向に所定のストロークで移動する。微動ステージ21のXY平面内の位置情報は、微動ステージ21に固定された不図示の移動鏡(X軸に直交する反射面を有するY移動鏡と、Y軸に直交する反射面を有するX移動鏡を含む)に測長ビームを照射する不図示の干渉計(X干渉計とY干渉計とを含む)を含む干渉計システムにより求められる。
【0030】
基板ホルダ50は、平面視ほぼ正方形の高さの低い直方体状の部材から成り、微動ステージ21の上面上に固定されている。基板Pは、基板ホルダ50の上面上に吸着保持される。基板ホルダ50の構成については、後に詳しく説明する。
【0031】
重量キャンセル装置30は、Z軸方向に延びる一本の柱状の部材から成り、レベリング装置32と称される装置を介して、微動ステージ21を水平面に対してチルト可能(XY平面に平行な軸線周りに微少角度回転可能)な状態で下方から支持している。重量キャンセル装置30は、X粗動ステージ23X、及びY粗動ステージ23Yそれぞれの開口部内に挿入されており、複数の連結装置34を介してZ軸方向に関する重心高さ位置でY粗動ステージ23Yに接続されている。連結装置34は、重量キャンセル装置30の+X側、−X側、+Y側、及び−Y側それぞれに設けられている。これにより、重量キャンセル装置30は、Y粗動ステージ23Yと一体的にY軸方向、及び/又はX軸方向に移動する。重量キャンセル装置30は、その下端部に複数のエアベアリング33を有しており、定盤12上に微少なクリアランスを介して浮上支持されている。
【0032】
重量キャンセル装置30は、不図示の空気ばねを有しており、空気ばねが発生する鉛直方向上向きの力により、微動ステージ21、レベリング装置32,基板ホルダ50などの重量(鉛直方向下向きの力)をキャンセルし、これにより微動ステージ21を微少駆動するためのアクチュエータの負荷を軽減する。なお、図1では模式化されて示されているが、レベリング装置32、及び連結装置34を含み、重量キャンセル装置30の構成、及び動作については、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書などに開示されている。
【0033】
ここで、液晶露光装置10において、基板ホルダ50への基板Pの搬入(ロード)、及び基板ホルダ50からの基板Pの搬出(アンロード)は、基板Pを図2(A)に示される基板トレイ90と称される部材上に載置した状態で行われる。
【0034】
基板トレイ90は、第1支持部材91a、複数(本実施形態では、例えば4本)の第2支持部材91b、連結部材93、複数(本実施形態では、例えば4本)の補剛部材94などを有している。第1支持部材91aは、X軸方向に延びる棒状の部材から成り、そのYZ断面の断面形状は、五角形状(図4(B)参照)となっている。第2支持部材91bは、第1支持部材91aとほぼ同じ長さのX軸方向に延びる中空の棒状の部材から成り、YZ断面の断面形状は、ほぼ正方形(図4(B)参照)となっている。例えば4本の第2支持部材91bのうち、2本は第1支持部材91aの+Y側に、他の2本は第1支持部材91bの−Y側にそれぞれ第1支持部材91aに平行に配置されている。第1支持部材91a、及び例えば4本の第2支持部材91bは、Y軸方向に所定間隔で配置されている。第1支持部材91a、及び第2支持部材91bそれぞれの長手方向寸法は、基板P(図2(A)では不図示。図4(A)参照)よりも長く設定されている。なお、第1支持部材91aを第2支持部材91bと同様に中空としても良い。基板トレイ90は、第1支持部材91a、及び例えば4本の第2支持部材91bを用いて基板Pを下方から支持する。以下、第1支持部材91a、及び4本の第2支持部材91bを併せて適宜支持部材と称して説明する。また、基板トレイ90の重心CGは、第1支持部材91a上に位置している。
【0035】
連結部材93は、Y軸方向に延びるXZ断面矩形(図2(B)参照)の棒状の部材から成り、第1支持部材91a、及び例えば4本の第2支持部材91bそれぞれの+X側の端部における上面同士を連結している。例えば4本の補剛部材94は、それぞれY軸方向に延びるXZ断面矩形(図2(B)参照)の棒状の部材から成る。第1支持部材91a、及び4本の第2支持部材91bそれぞれは、その上端部に凹部が形成されており、複数の補剛部材94は、その凹部に嵌合している。図2(B)に示されるように、複数の補剛部材94は、その上端面(+Z側の面)が第1支持部材91a、及び4本の第2支持部材91bそれぞれの上端面よりも+Z側に突き出さないようになっている。第1支持部材91a、及び例えば4本の第2支持部材91b、一対の連結部材93、及び例えば4本の補剛部材94それぞれは、例えばMMC(Metal Matrix Composites:金属基複合材料)、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)、あるいはC/Cコンポジット(炭素繊維強化炭素複合材)などにより形成されている。なお、基板トレイ90は、基板Pを下方から支持した状態で、摩擦力によりその基板Pを保持するが、これに限らず、例えば真空吸着などにより吸着保持しても良い。
【0036】
これに対し、図3(A)に示されるように、基板ホルダ50の上面には、X軸に平行な複数本(例えば、5本)の溝部51xがY軸方向に所定の間隔で形成されている。溝部51xは、基板ホルダ50の+X側及び−X側それぞれの側面(端面)に開口している。図4(B)に示されるように、基板Pが基板ホルダ50上に載置された状態で、溝部51x内には、基板トレイ90の第1支持部材91a,及び例えば4本の第2支持部材91bがそれぞれ収容される。基板トレイ90のX軸方向に関する全長は、基板ホルダ50のX軸方向に関する全長よりも長く設定されており、図4(A)に示されるように、基板トレイ90が基板ホルダ50に収容された状態で、基板トレイ90の+X側の端部は、基板ホルダ50の+X側の端部よりも+X側に突き出している。
【0037】
図3(A)に戻り、基板ホルダ50の上面には、Y軸方向に延びる溝部51yが複数、例えば4本、X軸方向に所定間隔で形成されている。図3(B)に示されるように、溝部51yの深さは、溝部51xよりも浅く設定されており、基板Pが基板ホルダ50上に載置された状態で、溝部51y内には、基板トレイ90の補剛部材94が収容される。
【0038】
溝部51xと溝部51yとの交差部には、凹部52が形成されている。本実施形態では、凹部52は、計20箇所に形成されている。なお、図3(A)を含み、基板ホルダ50の平面図では、理解を容易にするために凹部52、及び凹部52に収容された後述するエアシリンダ53が実際よりも大きく示されている(実際は、図4(B)に示されるように、凹部52は、溝部51xを規定する底面に形成されている)。凹部52内には、それぞれエアシリンダ53が収容されている。5本の溝部51xのうちの中央の溝部51x(第1支持部材91aが収容される溝部51x)と同軸上に配置された4台のエアシリンダ53それぞれのロッド先端部には、図4(B)に示されるように、YZ断面V字状の溝部(以下、V溝部と称して説明する)がその上面に形成された直方体状の部材から成るトレイガイド部材54が取り付けられている。トレイガイド部材54は、図4(B)に示されるように、基板Pが基板ホルダ50上に載置された状態で第1支持部材91aを下方から支持する。トレイガイド部材54は、エアシリンダ53に供給されるエア供給圧に応じてZ軸方向に所定のストロークで移動(上下動)する。なお、トレイガイド部材54を上下動させるアクチュエータは、エアシリンダに限らず、例えばリニアモータなどの電動アクチュエータ、ネジ機構、又はリンク機構などを用いたものであっても良い。
【0039】
これに対し、5本の溝部51xのうちの中央の溝部51xを除く他の、例えば4本の溝部51x(第2支持部材91bが収容される溝部51x)と同軸上に配置された16台のエアシリンダ53それぞれのロッド先端部には、図4(B)に示されるように、平板状のエア浮上装置55が取り付けられている。エア浮上装置55は、基板Pが基板ホルダ50上に載置された状態で第2支持部材91bを下方から支持する。エア浮上装置55は、エアシリンダ53に供給されるエア供給圧に応じてZ軸方向に所定のストロークで移動(上下動)する。エア浮上装置55は、多孔質部材を含み、高圧気体(例えば、空気)を噴出することにより、第2支持部材91bを微少なクリアランスを介して浮上させる機能を有する。なお、トレイガイド部材54がエア浮上装置55と同様に、第1支持部材91aを微少なクリアランスを介して浮上させる機能(例えば、V溝部を規定する壁面にエアベアリング機能を持たせる)を有していても良い。
【0040】
ここで、基板ホルダ50の上面に形成された、例えば5本の溝部51xそれぞれの深さは、第1支持部材91a、第2支持部材91bの厚みよりも深く設定されており、基板Pが基板ホルダ50の上面上に載置された状態でトレイガイド部材54、及びエア浮上装置55それぞれをその可動範囲の最も−Z側に位置させることにより、基板トレイ90と基板Pの下面とを離間させることができる。基板Pへの露光処理などは、図4(B)に示される基板Pと基板トレイ90とが離間した状態で行われる。
【0041】
次に、図1に示される基板搬出装置60について説明する。基板搬出装置60は、基板ステージ装置PSTの+X側に配置され、架台69を介してその床面Fからの高さ位置が基板ホルダ50とほぼ同じとなるように床面F上に設置されている。基板搬出装置60は、基板ステージ装置PSTと共に、不図示のチャンバ内に収容されている。
【0042】
図3(A)に示されるように、基板搬出装置60は、ベース61、走行ユニット62、及び複数、例えば4台のエア浮上ユニット63を有している。
【0043】
ベース61は、X軸方向を長手方向とする平面視矩形の平板状の部材から成り、XY平面に平行に配置されている。走行ユニット62は、ベース61の上面中央部に固定された固定子部64と、固定子部64上に搭載された可動子部65とを含む。固定子部64は、X軸方向に延びる部材から成り、例えば磁石ユニットなどの固定子(図示省略)を有している。可動子部65は、例えばコイルなどの可動子(図示省略)を有している。可動子部65が有する可動子と固定子部64が有する固定子とは、可動子部65を固定子部64上でX軸方向に所定のストロークで駆動するXリニアモータを構成している。可動子部65は、−X側(基板ステージ装置PST側)の端部に吸着パッド66を有している。吸着パッド66には、例えば不図示の真空吸引装置が接続されており、−X側の面で後述する基板トレイ90(図3(A)では不図示。図5(A)参照)を吸着保持する。なお、可動子部65(すなわち、吸着パッド66)をX軸方向に駆動するための装置は、リニアモータに限らず、例えば送りねじ装置などであっても良い。また、基板トレイ90を吸着保持する吸着パッド66に換えて、基板トレイ90を機械的に保持(把持)するメカニカルチャックを可動子部65に設けても良い。
【0044】
エア浮上ユニット63は、例えば4台のうち2台が走行ユニット62の+Y側、別の2台が走行ユニット62の−Y側に配置されている。例えば4台のエア浮上ユニット63それぞれは、配置が異なる点を除き実質的に同じものである。例えば4台のエア浮上ユニット63は、不図示の主制御装置により同期駆動される。互いに隣接する2台のエア浮上ユニット63間の間隔は、基板トレイ90の互いに隣接する一対の第2支持部材91b(図2(A)参照)間の間隔に対応しており、例えば4台のエア浮上ユニット63を用いて基板トレイ90(図2(A)参照)の、例えば4本の第2支持部材91bそれぞれを下方から支持できるようになっている。
【0045】
エア浮上ユニット63は、図3(B)に示されるように、複数、例えば3台のリニアアクチュエータ67、及びエア浮上装置68を有している。なお、図3(B)は、図3(A)の3B−3B線断面図である。
【0046】
例えば3台のリニアアクチュエータ67は、X軸方向に所定間隔で配列され、ベース61の上面に固定されている。3台のリニアアクチュエータ67それぞれは、不図示の主制御装置により独立に制御される。リニアアクチュエータ67は、Z軸方向に所定のストロークで移動可能なロッドを有し、そのロッド先端部(+Z側の端部)それぞれには、Y軸方向に延びる回転軸70を介してθy方向に揺動(チルト)可能なチルト部材71が取り付けられている。エア浮上装置68は、X軸方向に延びる板状の部材から成り、3つのチルト部材71上に搭載されている。エア浮上装置68は、多孔質部材を含み、高圧気体(例えば、空気)を噴出することにより、第2支持部材91bを微少なクリアランスを介して浮上させる機能を有する。なお、リニアアクチュエータ67の構成は、特に限定されないが、例えば送りねじ機構、カム機構、リニアモータ、あるいはエアシリンダなどを用いてロッドを駆動するものを用いることができる。
【0047】
上述のようにして構成された液晶露光装置10(図1参照)では、不図示の主制御装置の管理の下、不図示のマスク搬送装置(マスクローダ)によって、マスクステージMST上へのマスクMのロード、及び不図示の基板搬入装置によって、基板ホルダ50上への基板Pの搬入(ロード)が行なわれる。なお、基板搬入装置は、基板トレイ90(図2(A)参照)上に載置された基板Pを、基板トレイ90と共に基板ホルダ50上に搬送し、基板トレイ90は、第1支持部材91a、及び第2支持部材91bが基板ホルダ50内に収容される(図4(B)参照)。その後、主制御装置により、不図示のアライメント検出系を用いてアライメント計測が実行され、アライメント計測の終了後、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。この露光動作は従来から行われているステップ・アンド・スキャン方式と同様であるのでその詳細な説明は省略するものとする。
【0048】
そして、基板Pに対する露光動作が完了すると、基板ホルダ50が図5(A)に示される基板交換位置に位置するように、基板ステージ装置PSTのX粗動ステージ23X,Y粗動ステージ23Y、及び微動ステージ21の位置がそれぞれ制御される。ここで、基板交換位置とは、基板搬出装置60の吸着パッド66が基板トレイ90の連結部材93の中央部を吸着保持することができる位置である。なお、図5(A)〜図6(B)では、図面の錯綜を避ける観点から、基板P、基板ステージ装置PSTの微動ステージ21、Y粗動ステージ23Y、X粗動ステージ23X(それぞれ図1参照)などの図示が省略されている。そして、図5(A)に示されるように、基板ホルダ50が基板交換位置に位置した状態で、基板ホルダ50に支持された基板トレイ90の4本の第2支持部材91bのY軸方向に関する位置は、4台のエア浮上装置68のY軸方向に関する位置と概ね一致している。そして、露光済みの基板Pは、基板搬出装置60により基板ホルダ50上から基板トレイ90と共に搬出(アンロード)される。搬出された基板トレイ90上には、新たに別の基板P(図示省略)が載置され、その新しい基板Pは、基板トレイ90と共に不図示の基板搬入装置により基板ホルダ50へ搬入(ロード)される。すなわち、液晶露光装置10では、基板ホルダ50上の基板Pの交換が行われることにより、複数枚の基板Pに連続して露光処理が行われる。
【0049】
以下、基板搬出装置60を用いた基板ホルダ50上の基板Pの搬出動作について、図5(A)〜図6(B)を用いて説明する。
【0050】
基板交換位置に基板ホルダ50が位置されると、主制御装置は、図5(B)に示されるように、基板ホルダ50が有する複数のエアシリンダ53を同期制御して基板トレイ90を上昇させる。また、これと併せて基板ホルダ50による基板Pの吸着保持を解除する。これにより、基板Pは、基板トレイ90に下方から支持され、基板トレイ90と共に上昇し、その下面が基板ホルダ50の上面から離間する。この状態で、補剛部材94の下面は、基板ホルダ50の上面よりも上方に位置している。また、第1支持部材91a、及び第2支持部材91bの下端部は、溝部51x内に収容されている。また、基板搬出装置60では、可動子部65が−X方向(基板ホルダ50に接近する方向)に駆動され、吸着パッド66が基板トレイ90の連結部材93を吸着保持する。
【0051】
ここで、図5(B)に示されるように、基板搬出装置60では、エア浮上装置68の上面が基板ホルダ50のエア浮上装置55の上面よりも−Z側に位置するように、例えば3台のリニアアクチュエータ67が制御されている。また、例えば3台のリニアアクチュエータ67は、最も−X側(基板ホルダ50に近接する側)のチルト部材71のZ位置が最も低く、最も+X側のチルト部材71のZ位置が最も高くなるように、それぞれのロッドの繰り出し量が制御される。これにより、エア浮上装置68の上面(基板トレイ90を支持する面)がXY平面に対して微少角度傾斜している。
【0052】
この後、図6(A)及び図6(B)に示されるように、可動子部65が+X方向に駆動され、これにより、基板トレイ90が+X方向にスライドし、基板トレイ90の支持部材91a、91bが基板ホルダ50の溝部51x内から抜き取られる。このとき、エア浮上装置55は、基板トレイ90を浮上支持している。
【0053】
そして、基板トレイ90が+X方向にスライドし、エア浮上装置68上を通過している最中、より詳細には、第2支持部材91bの全長のうち、例えば半分程度が基板ホルダ50の溝部51x内から引き抜かれてエア浮上装置68の上方に位置したタイミングで、エア浮上装置68の上面がXY平面に平行で、かつそのZ位置が基板ホルダ50内のエア浮上装置55の上面とほぼ同じとなるように、例えば3台のリニアアクチュエータ67が制御される。これにより、図6(B)に示されるように、エア浮上装置68が上昇し、基板トレイ90の第2支持部材91bの自重が、エア浮上装置55とエア浮上装置68とによって下方から支持される。ここで、基板トレイ90が+X方向にスライドし、エア浮上装置55とエア浮上装置68上を同時に通過し、例えばそのほぼ8割程度の部分がエア浮上装置68上に位置したとき(あるいはエア浮上装置55のうち、最も+X側のエア浮上装置55のみに支持されているとき)、エア浮上装置68の最も−X側のチルト部材71のZ位置が最も高くなるようにロッドの繰り出し量を制御して、基板トレイ90をエア浮上装置55から持ち上げても良い。これにより、基板トレイ90が最も+X側のエア浮上装置55を通過した後、基板トレイ90及びその基板トレイ90上の基板が自重撓みによって基板ホルダ50に接触すること(いわゆる尻擦り)を防止することができる。
【0054】
この後、さらに可動子部65が+X方向に駆動され、基板トレイ90が完全に基板搬出装置60のエア浮上装置68上に載り移った後、可動子部65が停止される。基板トレイ90上の基板Pは、不図示の基板搬出ロボットにより外部に搬出され、別の新たな基板(図示省略)が基板トレイ90上に載置される。新たな基板が載置された基板トレイ90は、不図示の基板搬入装置により基板ホルダ50に搬送され、新たな基板が基板ホルダ50上に載置され、基板トレイ90は基板ホルダ50に保持される。
【0055】
以上説明した第1の実施形態に係る基板搬出装置60では、基板トレイ90を基板ホルダ50のエア浮上装置55上から基板搬出装置60のエア浮上装置68上に載せ替える際、基板搬出装置60側のエア浮上装置68を予め低い位置に傾斜して位置させておき、基板トレイ90の移動に応じて上昇させる。すなわち、基板トレイ90は、最初は傾斜面に対して進行するが、その移動量に応じてエア浮上装置68の傾斜が緩くなり、最終的には水平にされる。これは例えて言うなら、航空機が滑走路に進入する際に、最初に滑走路に対して浅い角度をつけて進入し、機体の進行に応じて機体と滑走路の角度を徐々に小さくすることにより軟着陸するのと同様に作用し、基板トレイ90をエア浮上装置55上からエア浮上装置68上に載せ換える際の衝撃を抑制できる。この衝撃とは、エア浮上装置68に基板トレイ90の第2支持部材91bが機械接触する際に生じる衝撃のことであり、第2支持部材91bが上空から急激に接近するときの動的負荷変動に、静圧気体軸受であるエア浮上装置68が剛性(エア浮上装置により形成される気体層(膜)の剛性を意味する。以下同じ)不足によって耐えられなくなるために生じる。これに対し、本実施形態では、第2支持部材91bとエア浮上装置68との間隔を徐々に近づけることによって、上記動的負荷変動を低減し、エア浮上装置68の剛性を確保することができるようになる。従って、衝撃を抑制しながら基板トレイ90を迅速に基板ホルダ50から搬出することができる。また、基板トレイ90の第2支持部材91bは、X軸方向(基板トレイ90の進行方向)に延びる部材から成るので、上述した例のように、航空機の車輪と比べてエア浮上装置68に対する接地の位置やタイミングが厳密に決まっていないので、高速でエア浮上装置68に接地させることができる。
【0056】
また、基板トレイ90の第1支持部材91aを断面五角形状とし、基板ホルダ50に第1支持部材91aをX軸方向に直進案内するトレイガイド部材54(図3(A)参照)を設けたので、基板トレイ90を確実にX軸方向に直進させることができる。また、吸着パッド66は、基板トレイ90の重心位置CGを含むX軸に平行な直線上で基板トレイ90を保持するので、基板トレイ90をスライドさせる際の駆動力が基板トレイ90の重心位置CGに作用する(図6(A)参照)。従って、基板トレイ90の搬出時にθz方向のモーメントが作用することを防止できる。
【0057】
《第2の実施形態》
次に本発明の第2の実施形態について説明する。本第2の実施形態は、上記第1の実施形態に比べ、基板搬出装置の構成が異なるのみなので基板搬出装置の構成についてのみ説明する。なお、本第2の実施形態、及び後述する変形例では、上記第1の実施形態と同様の構成、及び機能を有する部材については、上記第1の実施形態と同じ符号を用い、その説明を省略する。
【0058】
図7(A)に示されるように、第2の実施形態に係る基板搬出装置160は、ベース61、走行ユニット62、及び一対のエア浮上ユニット163を有している。ベース61、及び走行ユニット62の構成は、上記第1の実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0059】
一対のエア浮上ユニット163は、一方が走行ユニット62の+Y側、他方が走行ユニット62の−Y側に配置されている。一対のエア浮上ユニット163それぞれは、配置が異なる点を除き実質的に同じものであり、不図示の主制御装置により同期駆動される。エア浮上ユニット163は、図7(B)に示されるように、ベース164、X駆動ユニット165、Z軸方向に延びる一対のエアシリンダ166、及びエア浮上装置167を有している。
【0060】
ベース164は、X軸方向を長手方向とする平面視矩形の平板状の部材から成り、XY平面に平行に配置されている。X駆動ユニット165は、送りねじ装置、及びXリニアガイド装置などを含み、ベース164をX軸方向に所定のストロークで駆動する。なお、ベース164をX軸方向に駆動するための装置は、送りねじ装置に限らず、例えばリニアモータ、エアシリンダなどであっても良い。
【0061】
一対のエアシリンダ166は、X軸方向に離間して配置され、ベース164の上面に固定されている。一対のエアシリンダ166それぞれのロッドの+Z側の端部には、エア浮上装置167が接続されている。一対のエアシリンダ166は、不図示の主制御装置により同期駆動される。
【0062】
エア浮上装置167は、平面視で梯子状(図7(A)参照)に組まれたフレーム167aと、フレーム167a上に搭載された一対の多孔質部材167bとを有している。一対の多孔質部材167bは、それぞれX軸方向に延びる板状の部材から成り、Y軸方向に所定間隔で平行に配置されている。多孔質部材167bは、外部に設けられた不図示の気体供給装置から供給される加圧気体(例えば空気)をその上面から噴出して基板トレイ90(図9(C)参照)を下方から浮上支持する。エア浮上装置167は、図8(B)に示されるようにX駆動ユニット165により−X側に駆動されることにより、−X側の端部がベース61よりも−X側に突き出す位置に移動することができる。
【0063】
次に第2の実施形態に係る基板搬出装置160の動作について説明する。図8(A)に示されるように、基板ホルダ50では、上記第1の実施形態と同様に、基板ホルダ50内のエアシリンダ53により基板トレイ90と共に基板Pが持ち上げられ、基板Pの下面が基板ホルダ50から離間している。このとき、基板搬出装置160のエア浮上装置167の上面のZ位置は、基板ホルダ50のエア浮上装置55の上面のZ位置よりも低い位置(−Z側の位置)に位置している。次いで、図8(B)に示されるように、X駆動ユニット165によりエア浮上装置167が−X方向に駆動され、エア浮上装置167の−X側の端部が基板ホルダ50に接近する。
【0064】
この後、図8(C)に示されるように、可動子部65が−X方向に駆動され、吸着パッド66が基板トレイ90の連結部材93を吸着保持する。また、一対のエアシリンダ166が同期駆動され、エア浮上装置167が上昇する。このときのエア浮上装置167の上面のZ位置は、基板ホルダ50が有するエア浮上装置55の上面のZ位置と概ね一致している。これにより、基板トレイ90の支持部材91bの+X側の端部がエア浮上装置167に下方から支持される。
【0065】
この後、図8(D)に示されるように、可動子部65が+X方向に駆動されることにより、基板トレイ90がエア浮上装置55、167上をXY平面に平行にスライドする(図8(D)に対応する平面図である図9(C)参照)。また、図9(A)に示されるように、基板トレイ90の移動に応じてX駆動ユニット165によりエア浮上装置167が基板トレイ90と一体に+X方向に駆動される。これにより、基板トレイ90が基板ホルダ50から基板搬出装置160に完全に受け渡される。この後、図9(B)に示されるように、吸着パッド66による基板トレイ90の吸着保持が解除され、可動子部65が+X方向(基板トレイ90から離間する方向)に駆動される。不図示の露光済み基板Pを支持している基板トレイ90は、一対のエアシリンダ166が同期駆動されることにより上昇し、その後、基板トレイ90上の基板Pの交換が行われる。なお、エア浮上装置167と基板トレイ90とは、一体的に移動しなくても良く、相対速度差があっても良い(例えば、エア浮上装置167は、基板トレイ90より遅くても良い)。なお、エア浮上装置167を駆動するアクチュエータは、エアシリンダ166に限られず、例えば送りねじ装置、リニアモータなどの他のアクチュエータであっても良い。
【0066】
以上説明した第2の実施形態に係る基板搬出装置160では、基板ホルダ50上の基板トレイ90をスライドさせる前に、予め基板トレイ90の移動方向先端部をエア浮上装置167により下方から支持しているので、基板トレイ90には、基板ホルダ50のエア浮上装置55から基板搬出装置160のエア浮上装置167に載り移る際の衝撃が作用しない。従って、基板トレイ90を高速で搬出することができる。
【0067】
なお、基板ホルダ50のエア浮上装置55、及び基板搬出装置160のエア浮上装置167をZ軸方向に駆動させるアクチュエータが、例えば送りねじ装置などである場合、エア浮上装置55、167の互いのZ位置を一致させることが困難である場合があるが、この場合であっても基板トレイ90はZ軸方向の剛性が低いため、適度に撓んで第2支持部材91bとエア浮上装置55、167との間に隙間が発生するのを防ぐことができる。また、例えばX軸方向に配列された四台のエアシリンダ53(図6(B)参照)のうち、最も基板搬出装置160側を予め降下させておいても良い。この場合、確実に基板搬出装置160側のエア浮上装置167が基板トレイ90を下方から支持することができる。また、上記第1の実施形態と同様に、基板トレイ90が基板ホルダ50上から徐々に引き出されて最も+X側のエアシリンダ53にのみ支持されているとき、エア浮上装置167の−X側が+X側に比べて高くなるように一対のエアシリンダ166を制御することにより、基板トレイ90及び基板トレイ90上の基板が基板ホルダ50に接触する(尻擦り)ことを防止しても良い。
【0068】
また、エア浮上装置55,167の昇降用アクチュエータが、本実施形態のようにエアシリンダなどの力制御(圧力制御)による方式の場合、エア浮上装置55,167は、それぞれ均一な指定の力で基板トレイ90を支持することができる。従って、エア浮上装置55,167それぞれのZ軸方向位置によらず、基板トレイ90とエア浮上装置55,167の間には隙間は発生しない。よって、基板トレイ90をより滑らかにスライドさせることができる。なお、基板トレイ90の引き出し動作中、基板トレイ90のX位置に応じて基板ホルダ50側のエア浮上装置55にかかる負荷が変化するので、基板トレイ90のX位置に応じて昇降装置の支持力を制御するようにしても良い。
【0069】
なお、上記第1及び第2の実施形態の基板搬出装置などの構成は、一例であって、本発明がこれに限定されるものではない。以下、上記第1及び第2の実施形態のいくつかの変形例について、基板搬出装置を中心として説明する。
【0070】
《第1の変形例》
図10(A)には、第1の変形例(上記第1の実施形態の第1の変形例)における基板ホルダ250、及び基板搬出装置260が示されている。上記第1実施形態では、図2(A)に示されるように、基板トレイ90の基板ホルダ50に対するY軸方向への相対移動を規制する断面五角形の第1支持部材91aは、基板トレイ90全体の重心CGと一致する中央部に設けられていた。しかし、図6(A)示されるように、トレイガイド部材54がエアベアリングのように摩擦が実質的に無視できる場合には、基板搬出装置260の吸着パッド66が基板トレイ90の重心CGに対応する位置を保持してX方向にスライドさせるのであれば、基板トレイ90に慣性力によるモーメント(Z軸回り)は殆ど発生しないので、第1支持部材91aはY方向のどの位置にあっても良い。そこで、本第1の変形例では、図10(A)に示されるように、基板トレイ290において、第1支持部材91aは、5本の支持部材のうち+X側から見て右から2本目(+Y側から見て手前から2本目)に設けられており、中央の支持部材は、他の支持部材91bと同様に断面矩形状となっている。
【0071】
ただし、ベース61上の中央部には走行ユニット62が配置されているため、中央の支持部材91bを下方から支持することができない。また、第1支持部材91aは、断面五角形であるので、エア浮上装置68により下方から支持することが困難となり、搬出時及び搬出後の基板トレイ290の撓みが大きくなる可能性がある。これを避けるために、本第1の変形例では、基板搬出装置260にも基板トレイ290の第1支持部材91aに係合するV溝部を有するトレイガイド部材262が設けられている。その結果、基板トレイ290が基板ホルダ250から完全に引き出されても、トレイガイド部材262により基板トレイ290がX軸方向に直進案内される。従って、仮に基板トレイ290の保持位置が基板トレイ290の重心CGに対してY軸方向にずれ、基板トレイ290にθz方向のモーメントが作用したとしても、基板トレイ290を確実にX軸方向に直進移動させることができる。なお、トレイガイド部材262がエア浮上装置55と同様に、第1支持部材91aを微少なクリアランスを介して浮上させる機能(例えば、V溝部を規定する壁面にエアベアリング機能を持たせる)を有していても良い。
【0072】
そのため、基板搬出装置260が有する基板トレイ290の保持装置は、吸着パッド66(図3(A)参照)などの面接触による保持ではなく、基板トレイ290の連結部材93に形成されたZ軸方向に貫通する孔部263にピン264を引っ掛けて引き出すような、基板トレイ290のX軸方向の位置のみを拘束する保持方法が好ましい。その結果、走行ユニット62とトレイガイド部材54,262との間で基板トレイ290の過剰拘束が生まれず、基板トレイ290を滑らかに引き出すことができる。このとき、基板搬出装置260側のトレイガイド部材262を、基板ホルダ250のトレイガイド部材54と同様に、リニアアクチュエータ67に対応して個別に設け、それらの個別に設けられたトレイガイド部材(図示省略)をθz方向に回転可能に構成しておけば、基板トレイ290の第1支持部材91aの軌跡に応答して自動的に調心作用が働き、基板トレイ290の第1支持部材91aの曲がりの影響を受けずに、基板トレイ290を滑らかに引き出すことが可能となる。なお、基板トレイ290が基板ホルダ250のエア浮上装置55から基板搬出装置260のエア浮上装置68に載り移る際の動作は、第1支持部材91aのトレイガイド部材54からトレイガイド部材262への載り移りが加わることを除き、実質的に第1実施形態と同様に行われる(トレイガイド部材262のZ位置がエア浮上装置68と同様に制御される)ため説明を省略する。
【0073】
《第2の変形例》
図10(B)には、第2の変形例(上記第1の実施形態の第2の変形例)における基板ホルダ350及び基板搬出装置60(上記第1の実施形態と同じ)が示されている。上記第1の実施形態(図5(A)参照)のように、基板ホルダ350側のエア浮上装置55と基板トレイ90との間に摩擦が殆ど発生しない場合には、基板搬出装置60の吸着パッド66が基板トレイ390の重心CGに対応する位置を保持してX方向に引き出すのであれば、慣性力によるZ軸回りのモーメントは殆ど発生しない。そこで、本第2の変形例では、図10(B)に示されるように、基板トレイ390は、断面五角形状の第1支持部材91a(図4(B)参照)を有さず、5本の支持部材は、全て断面矩形状に形成されている(第2支持部材91bが5本)。これにより第2支持部材91bの曲がり影響を受けずに、基板トレイ390を滑らかに引き出すことができる。なお、第2の変形例では、基板トレイ390をX軸に直進案内する部材がないので、基板搬出装置60は、基板トレイ390を吸着パッド66などにより面接触で拘束し、基板トレイ390がθz方向に回転することを抑制することが好ましい。なお、基板トレイ390が基板ホルダ350のエア浮上装置55から基板搬出装置60のエア浮上装置68に載り移る際の動作は、第1実施形態と同様に行われるため説明を省略する。
【0074】
《第3の変形例》
図11(A)には、第3の変形例(上記第1の実施形態の第3の変形例)における基板搬出装置460が示されている。上記第1実施形態(図2(A)参照)では、基板トレイ90は重心位置CGに一致する位置に支持部材91aが配置されていたが、本第3の変形例の基板トレイ490では、支持部材が6本(偶数本)、Y軸方向に等間隔で設けられており、基板トレイ490の重心位置には、支持部材が設けられていない。その結果、基板トレイ490のY軸方向中央部を保持して走行する走行ユニット62と、基板トレイ490を下方から支持する支持部材がY軸方向に重ならない。従って、基板搬出装置460において、基板トレイ490のすべての支持部材91a、91bを下方から支持するガイド部材を設置することができ、基板トレイ490の自重に起因する撓みをより抑制することができる。
【0075】
また、可動子部65は、基板トレイ490のY軸方向に関する中央部(すなわち重心位置に対応する位置)を保持して基板トレイ490を引き出すので、基板トレイ490をX軸方向に直進案内するための断面五角形状の第1支持部材91aは、基板トレイ490のどこに設けられていても良い(図11(A)では、中央の2本が第1支持部材91aとされているがこれに限定されない)。これにより、仮に基板トレイ490を下方から支持するガイド部材にエア浮上ガイド(第1の実施形態におけるエア浮上装置55,68に相当)ではなく転がりガイド部材を用いても、基板トレイ490は、摩擦抵抗によるモーメントの影響を受け難い。なお、上記第2の変形例と同様に、直進案内部材(断面五角形状の支持部材、及びV溝部を有する案内部材)を設けなくても良い。また、基板トレイ490が基板ホルダ450のエア浮上装置55から基板搬出装置460のエア浮上装置68に載り移る際の動作は、第1支持部材91aのトレイガイド部材54からトレイガイド部材262への載り移りが加わることを除き、第1実施形態と同様に行われるため説明を省略する。
【0076】
《第4の変形例》
図11(B)には、第4の変形例(上記第1の実施形態の第4の変形例)における基板搬出装置560が示されている。本第4の変形例では、基板搬出装置560に走行ユニット62がY軸方向に離間して2つ設けられている。その結果、可動子部65が基板トレイ590のY軸方向に関する中央部を保持しなくても、基板トレイ590の重心位置に駆動力を作用させることが可能となり、基板トレイ590をX軸方向に直進案内するガイド部材がなくても基板トレイ590を確実にX軸方向に沿って滑らかに引き出すことができる。なお、基板トレイ590が基板ホルダ550のエア浮上装置55から基板搬出装置560のエア浮上装置68に載り移る際の動作は、第1実施形態と同様に行われるため説明を省略する。
【0077】
《第5の変形例》
図12(A)には、第5の変形例(上記第2の実施形態の第1の変形例)における基板搬出装置660が示されている。本第5の変形例では、基板搬出装置660のエア浮上装置668が、可動子部65の移動に連動して常に可動子部65の1/2の速度で1/2の距離だけ動くように構成されている。具体的に説明すると、基板搬出装置660の可動子部65には、ワイヤロープ100a、100bそれぞれの一端が固定されている。ワイヤロープ100a、100bそれぞれは、複数のプーリ110を介してエア浮上装置668の動滑車120a、120bにそれぞれ巻き掛けられた後、他端がベース61上に固定されている。本第5の変形例では、このようなワイヤロープ100a、100bと動滑車120a、120bを用いた駆動システムにより、エア浮上装置668を+X方向、及び−X方向に独立した駆動源なしで、可動子部65の1/2の距離だけ、1/2の速度で移動できるようになっている。従って、コストが安く、かつ各部材の動きの信頼性も高い。また、基板搬出装置660のエア浮上装置668は、基板トレイ90を基板ホルダ50から引き出した後、基板トレイ90の自重に起因する撓みを抑制するためのものなので、長手方向の寸法が基板トレイ90の第1及び第2支持部材91a、91bよりも短く形成されているが、第1及び第2支持部材91a、91bと同程度の長さでも良い。なお、基板トレイ90が基板ホルダ50のエア浮上装置55から基板搬出装置660のエア浮上装置668に載り移る際の動作は、第2実施形態と同様であるため説明を省略する(図12(B)〜図12(D)、及び図13(A)及び図13(B)参照)。
【0078】
《第6の変形例》
図14(A)には、第6の変形例(上記第2の実施形態の第2の変形例)における基板搬出装置が示されている。第6の変形例では、基板ホルダ50のエア浮上装置55と基板搬出装置760のエア浮上装置68の間に、Z軸回りに回転可能な補助浮上装置130が設けられている。エア浮上装置68は、上記第1の実施形態と同様に、複数のリニアアクチュエータ67により上下動が可能となっている。補助浮上装置は、リニアアクチュエータ67と、補助エア浮上装置140を有している。補助エア浮上装置140は、リニアアクチュエータ67により昇降可能となっている。また、補助エア浮上装置140は、Z軸回りに回転可能となっている。補助エア浮上装置140は、基板搬出時以外は、Y軸に平行とされ、基板搬出時にのみ回転して、−X側の端部がベース61の−X側の端部よりも突き出して、基板トレイ90のX側の端部を下方から支持する(図示省略)。
【0079】
補助エア浮上装置140は中間ガイドとしての役割なので、ガイド長を短くでき、上記第2実施形態(図7(A)参照)のようにエア浮上装置68全体を水平移動させ、かつ上下動させる場合よりも、装置を省エネルギーでコンパクトに構成することができる。なお、基板トレイ90の搬出前に、予め補助エア浮上装置140の方をエア浮上装置68よりも幾分+Z側に位置させておき、基板トレイ90が補助エア浮上装置140上を通過してエア浮上装置68上に差し掛かった後に、補助エア浮上装置140を降下させれば、基板トレイ90は、中間ガイドである補助エア浮上装置140の働きによって、仮に補助エア浮上装置140がないとした場合よりも、落差による衝撃が少なく、なめらかにエア浮上装置68に載り移ることができる。
【0080】
なお、上記第1及び第2の実施形態(及びその変形例)では、本発明が基板搬出装置に適用された場合を説明したが、これに限らず基板搬入装置に適用しても良い。すなわち、基板が載置された基板トレイをスライドさせて基板ホルダに搬入する際に、基板ホルダ内のエア浮上装置に、上記第1又は第2の実施形態と同様の動作をさせても良い。
【0081】
また、上記第1及び第2の実施形態(及びその変形例)では、基板Pを基板トレイ90に載置して搬送したが、基板Pを直接搬送しても良い。
【0082】
また、上記第1の実施形態(及びその変形例)では、基板搬出装置60のエア浮上装置68を傾斜させておき、基板トレイ90の進行に応じて水平にする制御を行ったが、これに限らず、エア浮上装置68を水平のまま基板ホルダ50のエア浮上装置55よりも下方に位置させ、基板トレイ90の進行に応じて上昇させても良い。この場合、基板トレイ90がある程度(例えば半分程度)基板ホルダ50から抜き出された後にエア浮上装置68を上昇させると良い。また、エア浮上装置68を水平のまま基板ホルダ50のエア浮上装置55よりも下方に位置させる場合、必ずしもエア浮上装置68を基板トレイ90の進行に応じて上昇させる必要はなく、例えば、基板トレイ90が基板ホルダ50から抜き出されてくるのと同時に微動ステージ21を降下及び/又は傾斜させることによって、基板ホルダ50及び基板トレイ90を下方に下げることにより、エア浮上装置68を上昇させずに基板トレイ90をエア浮上装置68に受け渡しても良い。また、基板トレイ90が基板ホルダ50から引き抜かれる瞬間に、基板Pが基板ホルダ50に接触する、いわゆる尻擦りを防ぐために基板ホルダ50を降下、及び/又は傾斜させても良い。
【0083】
また、上記第2の実施形態(及びその変形例)では、基板搬出装置160のエア浮上装置167が基板ホルダ50に接近することにより、基板トレイ90が基板ホルダ50側のエア浮上装置55、及び基板搬出装置160側のエア浮上装置167に同時に支持されるようにしたが、基板トレイ90をスライドさせる前段階で基板トレイ90をエア浮上装置55、167により同時に支持できればこれに限らず、例えばX粗動ステージ23X(図1参照)を用いて微動ステージ21及び基板ホルダ50を+X方向に駆動して基板ホルダ50を基板搬出装置160に接近させても良い。この場合、基板搬出装置160の構造が単純化され、コストが抑えられる。
【0084】
また、上記第2の実施形態(及びその変形例)では、基板トレイ90の下方に基板搬出装置160のエア浮上装置167を位置させた後、そのエア浮上装置167を上昇させて基板トレイ90を下方から支持したが(図8(C)参照)、これに限らず、基板ホルダ50側のエア浮上装置55を下降させて基板トレイ90をエア浮上装置167に支持させるようにしても良い。また、微動ステージ21を−Z方向に移動させて、エア浮上装置167に基板トレイ90を支持させるようにしても良い。
【0085】
また、上記第2の実施形態(及びその変形例)において、基板トレイ90は、第2支持部材91bがエア浮上装置167により下方から支持されたが、これに限らず図10(A)に示される第1の変形例のように基板搬出装置160に基板トレイ90をX軸方向に直進案内する直進ガイド部材を設けても良い。
【0086】
また、基板ホルダ50の複数のエア浮上装置55(図3参照)において、最も+X側のエア浮上装置55の剛性が最も高くなるようにするとともに、基板搬出装置60の複数のエア浮上装置68において、−X側の剛性が+X側の剛性よりも高くなるようにしても良い。この場合、1つのエア浮上装置68の内部構造を徐々に変化させても良いし、1つのエア浮上装置68内をいくつかの部屋に分けて構成しても良い。このようにエア浮上装置55,68の剛性を場所により変えることによって、基板トレイ90(図2(A)参照)が基板ホルダ50から抜け出る際、基板Pが基板ホルダ50に接触する、いわゆる尻擦りを防止することができるようになり、かつ基板トレイ90がエア浮上装置68に載り移るときの機械接触による衝撃を抑えることができるようになる。また、最も+X側のエア浮上装置55の供給圧力を他のエア浮上装置に比べて高くしても良いし、高圧エアの排気(噴出)だけでなく、吸気(エアバキューム)を併用して最も+X側のエア浮上装置55にプリロードをかけるようにしても良い。この場合、衝撃の抑制と共に、基板トレイ搬出時の上下方向の振動(ばたつき)を抑える効果を得ることができる。
【0087】
また、複数のエア浮上装置55(エアベアリング)のうち、最も+X側のエア浮上装置55の絞りを他のエア浮上装置55とは異なる構造のものにしても良い。具体的には、−X側にあるエア浮上装置のエアベアリングの絞りを気孔径の小さな(つまりエア消費量の少ない)多孔質絞りにして基板トレイ90が上空からいなくなっても急激な圧力降下及び消費流量の大幅な増加が起こらないようにすると共に、最も+X側のエア浮上装置55の絞りをオリフィス絞りと表面絞りとの複合絞りにして剛性を高めても良い。オリフィス絞りをもつ複合絞りエアベアリングでは、絞り孔を塞いでいる上方の基板トレイ90がいなくなると、噴出する高圧エアが一気に開放されるため急激な圧力降下が起きるが、最も+X側のエア浮上装置55では、すぐに基板トレイ90が上方からいなくなるので、浮上搬送に影響を及ぼさない。基板搬出装置60のエア浮上装置68についても同様な方法によって場所によって剛性を変化させ、エア消費流量を抑えながら衝撃のない基板トレイ90の載り移りを行うことができる。なお、基板搬出装置60は、エア浮上装置68に限らず、例えばX軸方向に配列された複数の自転可能な転動体(ボール又はローラなど)と基板トレイ90とをころがり接触させることにより、載り移りによる衝撃を抑えるようにしても良い。
【0088】
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、例えばDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
【0089】
また、上記実施形態では、投影光学系PLが、複数本の光学系を備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学系の本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、オフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。
【0090】
また、上記実施形態では投影光学系PLとして、投影倍率が等倍系のものを用いる場合について説明したが、これに限らず、投影光学系は拡大系及び縮小系のいずれでも良い。
【0091】
また、上記実施形態においては、光透過性のマスク基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク)、例えば、非発光型画像表示素子(空間光変調器とも呼ばれる)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)を用いる可変成形マスクを用いても良い。
【0092】
また、露光装置の用途としては角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、例えば半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0093】
なお、露光対象となる物体はガラスプレートに限られるものでなく、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、例えばフィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。
【0094】
なお、本発明に係る露光装置は、外径が500mm以上の基板が露光対象物である場合に特に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明したように、本発明の物体搬送装置及び物体の搬送方法は、2つの物体支持装置間で物体を搬送するのに適している。また、本発明の露光装置は、エネルギビームを用いて物体を露光するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの生産に適している。また、本発明のフラットパネルディスプレイの製造方法は、フラットパネルディスプレイの生産に適している。
【符号の説明】
【0096】
10…液晶露光装置、50…基板ホルダ、60…基板搬出装置、90…基板トレイ、P…基板、PST…基板ステージ装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体搬送装置、露光装置、デバイス製造方法、フラットパネルディスプレイの製造方法、及び物体搬送方法に係り、更に詳しくは、互いに離間した2つの物体支持装置間で物体の搬送を行う物体搬送装置及び方法、並びに該物体搬送装置を用いた露光装置、該露光装置を用いたデバイス製造方法、及び該露光装置を用いたフラットパネルディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、主として、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置としては、露光対象物であるガラスプレート又はウエハ(以下、「基板」と総称する)を所定の基板支持部材上に載置し、その基板支持部材を用いて基板ステージ装置に対する基板の搬入、及び搬出を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、露光装置では、基板ステージ装置上に載置された基板への露光処理が終了すると、その基板は基板ステージ上から搬出され、基板ステージ上には別の基板が搬送されることにより、複数の基板に対して連続して露光処理が行われる。従って、複数の基板を連続露光する際には、基板ステージ装置からの搬出を迅速に行うことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,559,928号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の事情の下でなされたもので、第1の観点からすると、第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送装置であって、前記第1物体支持装置から前記第2物体支持装置に向けて前記物体を所定平面に平行な第1軸方向に駆動する搬送装置と、前記第1物体支持装置に設けられ、前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材と、前記第2物体支持装置に設けられ、前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材と、前記物体が前記第1物体支持装置上に位置した状態で、前記第2支持部材を前記第1支持部材よりも下方に位置させ、前記物体の一部が前記第2支持部材の上方に位置したのに応じて、前記第1及び第2支持部材の少なくとも一方を前記所定平面に交差する方向に移動させて前記第1及び第2支持部材に前記物体を支持させる支持部材駆動装置と、を備える第1の物体搬送装置である。
【0007】
これによれば、物体は、所定平面に平行な第1軸方向に移動することにより、第1物体支持装置から第2物体支持装置に向けて搬送される。この際、物体は、第1物体支持装置上では第1支持部材に下方から支持され、第2物体支持装置上では第2支持部材に下方から支持される。ここで、物体は、第1支持部材にのみ支持された状態で第2物体支持装置に向けて搬送され、その一部(第1軸方向の前部)が第2支持部材上に位置すると、これに応じて第1支持部材と併せて第2支持部材に支持される。従って、物体が第1支持部材上から第2支持部材上に載り移る際の衝撃を低減でき、物体を高速で移動させることができる。
【0008】
本発明は、第2の観点からすると、第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送装置であって、前記第1物体支持装置に設けられ、前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材と、前記第2物体支持装置に設けられ、前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材と、前記物体が前記第1支持部材上に位置した状態で前記第1及び第2支持部材の少なくとも一方を駆動して前記第1及び第2支持部材に前記物体を支持させる駆動装置と、前記第1及び第2支持部材に支持された前記物体を前記第1物体支持装置から前記第2物体支持装置に向けて所定平面に平行な第1軸に平行な方向に駆動する搬送装置と、を備える第2の物体搬送装置である。
【0009】
これによれば、物体は、所定平面に平行な第1軸方向に移動することにより、第1物体支持装置から第2物体支持装置に向けて搬送される。この際、物体は、第1物体支持装置上では第1支持部材に下方から支持され、第2物体支持装置上では第2支持部材に下方から支持される。ここで、物体は、搬送装置により搬送される前の段階で前記第1及び第2支持部材に支持される。従って、物体が第1支持部材上から第2支持部材上に載り移る際の衝撃を低減でき、物体を高速で移動させることができる。
【0010】
本発明は、第3の観点からすると、本発明の第1又は第2の物体搬送装置と、前記第1物体支持装置又は第2物体支持装置に支持された前記物体にエネルギビームを用いて所定のパターンを形成するパターン形成装置と、を有する露光装置である。
【0011】
本発明は、第4の観点からすると、本発明の露光装置を用いて前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法である。
【0012】
本発明は、第5の観点からすると、本発明の露光装置を用いて前記物体を露光することと、露光された物体を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法である。
【0013】
本発明は、第6の観点からすると、第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送方法であって、前記物体が前記第1物体支持装置上に位置した状態で、前記第1物体支持装置に設けられ前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材よりも、前記第2物体支持装置に設けられ、前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材を下方に位置させることと、前記物体を所定平面に平行な第1軸に平行な方向に移動させることと、前記物体の移動中に、前記物体の一部が前記第2支持部材の上方に位置したのに応じて、前記第1及び第2支持部材の少なくとも一方を前記所定平面に交差する方向に移動させて前記第1及び第2支持部材に前記物体を支持させることと、を含む第1の物体搬送方法である。
【0014】
これによれば、物体は、所定平面に平行な第1軸方向に移動することにより、第1物体支持装置から第2物体支持装置に向けて搬送される。この際、物体は、第1物体支持装置上では第1支持部材に下方から支持され、第2物体支持装置上では第2支持部材に下方から支持される。ここで、物体は、第1支持部材にのみ支持された状態で第2物体支持装置に向けて搬送され、その一部(第1軸方向の前部)が第2支持部材上に位置すると、これに応じて第1支持部材と併せて第2支持部材に支持される。従って、物体が第1支持部材上から第2支持部材上に載り移る際の衝撃を低減でき、物体を高速で移動させることができる。
【0015】
本発明は、第7の観点からすると、第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送方法であって、前記物体が前記第1支持部材上に位置した状態で、前記第1物体支持装置に設けられ前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材、及び前記第2物体支持装置に設けられ前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材の少なくとも一方を駆動して、該第1及び第2支持部材に前記物体を支持させること、前記第1及び第2支持部材に支持された前記物体を、前記第1物体支持装置から前記第2物体支持装置に向けて所定平面に平行な第1軸に平行な方向に駆動することと、を含む第2の物体搬送方法である。
【0016】
これによれば、物体は、所定平面に平行な第1軸方向に移動することにより、第1物体支持装置から第2物体支持装置に向けて搬送される。この際、物体は、第1物体支持装置上では第1支持部材に下方から支持され、第2物体支持装置上では第2支持部材に下方から支持される。ここで、物体は、第2物体支持装置に向けて搬送される前の段階で前記第1及び第2支持部材に支持される。従って、物体が第1支持部材上から第2支持部材上に載り移る際の衝撃を低減でき、物体を高速で移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態の液晶露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2(A)は、基板トレイの平面図、図2(B)は、基板トレイの側面図である。
【図3】図3(A)は、図1の液晶露光装置が有する基板ホルダ及び基板搬出装置の平面図、図3(B)は、図3(A)の3B−3B線断面図である。
【図4】図4(A)は、基板ホルダと基板トレイとが組み合わされた状態を示す平面図、図4(B)は、図4(A)の4B−4B線断面図である。
【図5】図5(A)は、基板の搬出動作を示す平面図(その1)、図5(B)は、図5(A)の5B−5B線断面図である。
【図6】図6(A)は、基板の搬出動作を示す平面図(その2)、図6(B)は、図6(A)の6B−6B線断面図である。
【図7】図7(A)は、第2の実施形態に係る基板搬出装置の平面図、図7(B)は、図7(A)の7B−7B線断面図である。
【図8】図8(A)〜図8(D)は、第2の実施形態の基板搬出装置を用いた基板搬出動作を示す図(その1〜4)である。
【図9】図9(A)及び図9(B)は、第2の実施形態の基板搬出装置を用いた基板搬出動作を示す図(その5及び6)であり、図9(C)は、図8(D)に対応する平面図である。
【図10】図10(A)は、第1の変形例に係る基板搬出装置の平面図であり、図10(B)は、第2の変形例に係る基板搬出装置の平面図である。
【図11】図11(A)は、第3の変形例に係る基板搬出装置の平面図であり、図11(B)は、第4の変形例に係る基板搬出装置の平面図である。
【図12】図12(A)は、第5の変形例に係る基板搬出装置の平面図であり、図12(B)〜図12(D)は、第5の変形例の基板搬出装置を用いた基板搬出動作を示す図(その1〜3)である。
【図13】図13(A)は、第5の変形例の基板搬出装置を用いた基板搬出動作を示す図(その4)であり、図13(B)は、図13(A)に対応する平面図である。
【図14】図14(A)は、第6の変形例に係る基板搬出装置の平面図であり、図14(B)は、第6の変形例に係る基板搬出装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態について、図1〜図6(B)に基づいて説明する。
【0019】
図1には、第1の実施形態の液晶露光装置10の概略構成が示されている。液晶露光装置10は、例えば液晶表示装置(フラットパネルディスプレイ)などに用いられる矩形(角型)のガラス基板P(以下、単に基板Pと称する)を露光対象物とする投影露光装置である。
【0020】
液晶露光装置10は、照明系IOP、マスクMを保持するマスクステージMST、投影光学系PL、基板ステージ装置PST、基板搬出装置60及びこれらの制御系等を含んでいる。以下においては、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系PLに対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向とし、水平面内でこれに直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0021】
照明系IOPは、例えば米国特許第5,729,331号明細書などに開示される照明系と同様に構成されている。すなわち、照明系IOPは、図示しない光源(例えば、水銀ランプ)から射出された光を、それぞれ図示しない反射鏡、ダイクロイックミラー、シャッター、波長選択フィルタ、各種レンズなどを介して、露光用照明光(照明光)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。また、照明光ILの波長は、波長選択フィルタにより、例えば要求される解像度に応じて適宜切り替えることが可能になっている。
【0022】
マスクステージMSTには、回路パターンなどがそのパターン面(図1における下面)に形成されたマスクMが、例えば真空吸着(あるいは静電吸着)により固定されている。マスクステージMSTは、例えばリニアモータを含むマスクステージ駆動系(図示省略)により、走査方向(X軸方向)に所定のストロークで駆動されるとともに、Y軸方向、及びθz方向にそれぞれ適宜微少駆動される。マスクステージMSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、不図示のレーザ干渉計を含むマスク干渉計システムにより計測される。
【0023】
投影光学系PLは、マスクステージMSTの図1における下方において、不図示の装置本体(ボディ)に支持されている。投影光学系PLは、例えば米国特許第5,729,331号明細書に開示された投影光学系と同様に構成されている。すなわち、投影光学系PLは、レンズモジュールなどを含む光学系(鏡筒)を複数有し、その複数の光学系は、Y軸方向に沿って、いわゆる千鳥状に配列されている(マルチレンズ投影光学系とも称される)。複数の光学系それぞれとしては、例えば両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成するものが用いられている。前述の照明系IOPは、複数の光学系に対応した複数の照明光ILをそれぞれマスクMに照射するように構成されている。このため、マスクM上には、千鳥状に配置された複数の照明光ILの照明領域が形成されるとともに、投影光学系PLの下方に配置された基板P上には、複数の光学系それぞれに対応して、千鳥状に配置された複数の照明光ILの照射領域が形成される。液晶露光装置10では、基板P上に形成される複数の照射領域が合成されることにより、千鳥状に配置された複数の光学系から成る投影光学系PLが、Y軸方向を長手方向とする単一の長方形状(帯状)のイメージフィールドを持つ投影光学系と同等に機能する。
【0024】
このため、照明系IOPからの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、投影光学系PLの像面側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布された基板P上の照明領域に共役な照明光ILの照射領域(露光領域)に形成される。そして、マスクステージMSTと基板ステージ装置PSTとの同期駆動によって、照明領域(照明光IL)に対してマスクMを走査方向(X軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pを走査方向(X軸方向)に相対移動させることで、基板P上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMのパターンが転写される。すなわち、液晶露光装置10では、照明系IOP及び投影光学系PLによって基板P上にマスクMのパターンが生成され、照明光ILによる基板P上の感応層(レジスト層)の露光によって基板P上にそのパターンが形成される。
【0025】
基板ステージ装置PSTは、定盤12、X粗動ステージ23X,Y粗動ステージ23Y、微動ステージ21、基板ホルダ50,及び重量キャンセル装置30などを備えている。
【0026】
定盤12は、例えば石材により形成された平面視で(+Z側から見て)X軸方向を長手方向とする矩形の板状部材から成り、その上面は、平面度が非常に高く仕上げられている。定盤12は、防振装置13を介して床面F上に設置された装置本体の一部であるベース15上に搭載されている。
【0027】
X粗動ステージ23Xは、平面視でY軸方向を長手方向とする矩形枠状の部材から成り、その中央部にY軸方向を長手方向とする長孔状の開口部(図示省略)を有している。X粗動ステージ23Xは、例えば基板Pを露光する際のスキャン動作時などにおいて、リニアモータなどを含むXステージ駆動系により定盤12上でX軸方向に所定のストロークで駆動される。
【0028】
Y粗動ステージ23Yは、平面視ほぼ正方形の矩形枠状の部材から成り、その中央部に矩形の開口部(図示省略)を有している。Y粗動ステージ23Yは、X粗動ステージ23X上にリニアガイド装置28を介して搭載されており、例えば露光時のステップ動作時にリニアモータなどを含むYステージ駆動系によりX粗動ステージ23X上でY軸方向に所定のストロークで駆動される。また、Y粗動ステージ23Yは、X粗動ステージ23XがX軸方向に所定のストロークで移動する際、X粗動ステージ23Xと一体的にX軸方向に移動する。
【0029】
微動ステージ21は、平面視ほぼ正方形の高さの低い直方体状の部材から成り、Y粗動ステージ23Yの上方に配置されている。微動ステージ21は、それぞれ不図示であるがY粗動ステージ23Yに固定された固定子と、微動ステージ21に固定された可動子とから成る複数のボイスコイルモータ(あるいはリニアモータ)を含む微動ステージ駆動系により、Y粗動ステージ23Y上で6自由度方向(X軸、Y軸、Z軸、θx、θy、θz方向)に微少駆動される。また、微動ステージ21は、Y粗動ステージ23YとともにX軸方向、及び/又はY軸方向に所定のストロークで移動する。微動ステージ21のXY平面内の位置情報は、微動ステージ21に固定された不図示の移動鏡(X軸に直交する反射面を有するY移動鏡と、Y軸に直交する反射面を有するX移動鏡を含む)に測長ビームを照射する不図示の干渉計(X干渉計とY干渉計とを含む)を含む干渉計システムにより求められる。
【0030】
基板ホルダ50は、平面視ほぼ正方形の高さの低い直方体状の部材から成り、微動ステージ21の上面上に固定されている。基板Pは、基板ホルダ50の上面上に吸着保持される。基板ホルダ50の構成については、後に詳しく説明する。
【0031】
重量キャンセル装置30は、Z軸方向に延びる一本の柱状の部材から成り、レベリング装置32と称される装置を介して、微動ステージ21を水平面に対してチルト可能(XY平面に平行な軸線周りに微少角度回転可能)な状態で下方から支持している。重量キャンセル装置30は、X粗動ステージ23X、及びY粗動ステージ23Yそれぞれの開口部内に挿入されており、複数の連結装置34を介してZ軸方向に関する重心高さ位置でY粗動ステージ23Yに接続されている。連結装置34は、重量キャンセル装置30の+X側、−X側、+Y側、及び−Y側それぞれに設けられている。これにより、重量キャンセル装置30は、Y粗動ステージ23Yと一体的にY軸方向、及び/又はX軸方向に移動する。重量キャンセル装置30は、その下端部に複数のエアベアリング33を有しており、定盤12上に微少なクリアランスを介して浮上支持されている。
【0032】
重量キャンセル装置30は、不図示の空気ばねを有しており、空気ばねが発生する鉛直方向上向きの力により、微動ステージ21、レベリング装置32,基板ホルダ50などの重量(鉛直方向下向きの力)をキャンセルし、これにより微動ステージ21を微少駆動するためのアクチュエータの負荷を軽減する。なお、図1では模式化されて示されているが、レベリング装置32、及び連結装置34を含み、重量キャンセル装置30の構成、及び動作については、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書などに開示されている。
【0033】
ここで、液晶露光装置10において、基板ホルダ50への基板Pの搬入(ロード)、及び基板ホルダ50からの基板Pの搬出(アンロード)は、基板Pを図2(A)に示される基板トレイ90と称される部材上に載置した状態で行われる。
【0034】
基板トレイ90は、第1支持部材91a、複数(本実施形態では、例えば4本)の第2支持部材91b、連結部材93、複数(本実施形態では、例えば4本)の補剛部材94などを有している。第1支持部材91aは、X軸方向に延びる棒状の部材から成り、そのYZ断面の断面形状は、五角形状(図4(B)参照)となっている。第2支持部材91bは、第1支持部材91aとほぼ同じ長さのX軸方向に延びる中空の棒状の部材から成り、YZ断面の断面形状は、ほぼ正方形(図4(B)参照)となっている。例えば4本の第2支持部材91bのうち、2本は第1支持部材91aの+Y側に、他の2本は第1支持部材91bの−Y側にそれぞれ第1支持部材91aに平行に配置されている。第1支持部材91a、及び例えば4本の第2支持部材91bは、Y軸方向に所定間隔で配置されている。第1支持部材91a、及び第2支持部材91bそれぞれの長手方向寸法は、基板P(図2(A)では不図示。図4(A)参照)よりも長く設定されている。なお、第1支持部材91aを第2支持部材91bと同様に中空としても良い。基板トレイ90は、第1支持部材91a、及び例えば4本の第2支持部材91bを用いて基板Pを下方から支持する。以下、第1支持部材91a、及び4本の第2支持部材91bを併せて適宜支持部材と称して説明する。また、基板トレイ90の重心CGは、第1支持部材91a上に位置している。
【0035】
連結部材93は、Y軸方向に延びるXZ断面矩形(図2(B)参照)の棒状の部材から成り、第1支持部材91a、及び例えば4本の第2支持部材91bそれぞれの+X側の端部における上面同士を連結している。例えば4本の補剛部材94は、それぞれY軸方向に延びるXZ断面矩形(図2(B)参照)の棒状の部材から成る。第1支持部材91a、及び4本の第2支持部材91bそれぞれは、その上端部に凹部が形成されており、複数の補剛部材94は、その凹部に嵌合している。図2(B)に示されるように、複数の補剛部材94は、その上端面(+Z側の面)が第1支持部材91a、及び4本の第2支持部材91bそれぞれの上端面よりも+Z側に突き出さないようになっている。第1支持部材91a、及び例えば4本の第2支持部材91b、一対の連結部材93、及び例えば4本の補剛部材94それぞれは、例えばMMC(Metal Matrix Composites:金属基複合材料)、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)、あるいはC/Cコンポジット(炭素繊維強化炭素複合材)などにより形成されている。なお、基板トレイ90は、基板Pを下方から支持した状態で、摩擦力によりその基板Pを保持するが、これに限らず、例えば真空吸着などにより吸着保持しても良い。
【0036】
これに対し、図3(A)に示されるように、基板ホルダ50の上面には、X軸に平行な複数本(例えば、5本)の溝部51xがY軸方向に所定の間隔で形成されている。溝部51xは、基板ホルダ50の+X側及び−X側それぞれの側面(端面)に開口している。図4(B)に示されるように、基板Pが基板ホルダ50上に載置された状態で、溝部51x内には、基板トレイ90の第1支持部材91a,及び例えば4本の第2支持部材91bがそれぞれ収容される。基板トレイ90のX軸方向に関する全長は、基板ホルダ50のX軸方向に関する全長よりも長く設定されており、図4(A)に示されるように、基板トレイ90が基板ホルダ50に収容された状態で、基板トレイ90の+X側の端部は、基板ホルダ50の+X側の端部よりも+X側に突き出している。
【0037】
図3(A)に戻り、基板ホルダ50の上面には、Y軸方向に延びる溝部51yが複数、例えば4本、X軸方向に所定間隔で形成されている。図3(B)に示されるように、溝部51yの深さは、溝部51xよりも浅く設定されており、基板Pが基板ホルダ50上に載置された状態で、溝部51y内には、基板トレイ90の補剛部材94が収容される。
【0038】
溝部51xと溝部51yとの交差部には、凹部52が形成されている。本実施形態では、凹部52は、計20箇所に形成されている。なお、図3(A)を含み、基板ホルダ50の平面図では、理解を容易にするために凹部52、及び凹部52に収容された後述するエアシリンダ53が実際よりも大きく示されている(実際は、図4(B)に示されるように、凹部52は、溝部51xを規定する底面に形成されている)。凹部52内には、それぞれエアシリンダ53が収容されている。5本の溝部51xのうちの中央の溝部51x(第1支持部材91aが収容される溝部51x)と同軸上に配置された4台のエアシリンダ53それぞれのロッド先端部には、図4(B)に示されるように、YZ断面V字状の溝部(以下、V溝部と称して説明する)がその上面に形成された直方体状の部材から成るトレイガイド部材54が取り付けられている。トレイガイド部材54は、図4(B)に示されるように、基板Pが基板ホルダ50上に載置された状態で第1支持部材91aを下方から支持する。トレイガイド部材54は、エアシリンダ53に供給されるエア供給圧に応じてZ軸方向に所定のストロークで移動(上下動)する。なお、トレイガイド部材54を上下動させるアクチュエータは、エアシリンダに限らず、例えばリニアモータなどの電動アクチュエータ、ネジ機構、又はリンク機構などを用いたものであっても良い。
【0039】
これに対し、5本の溝部51xのうちの中央の溝部51xを除く他の、例えば4本の溝部51x(第2支持部材91bが収容される溝部51x)と同軸上に配置された16台のエアシリンダ53それぞれのロッド先端部には、図4(B)に示されるように、平板状のエア浮上装置55が取り付けられている。エア浮上装置55は、基板Pが基板ホルダ50上に載置された状態で第2支持部材91bを下方から支持する。エア浮上装置55は、エアシリンダ53に供給されるエア供給圧に応じてZ軸方向に所定のストロークで移動(上下動)する。エア浮上装置55は、多孔質部材を含み、高圧気体(例えば、空気)を噴出することにより、第2支持部材91bを微少なクリアランスを介して浮上させる機能を有する。なお、トレイガイド部材54がエア浮上装置55と同様に、第1支持部材91aを微少なクリアランスを介して浮上させる機能(例えば、V溝部を規定する壁面にエアベアリング機能を持たせる)を有していても良い。
【0040】
ここで、基板ホルダ50の上面に形成された、例えば5本の溝部51xそれぞれの深さは、第1支持部材91a、第2支持部材91bの厚みよりも深く設定されており、基板Pが基板ホルダ50の上面上に載置された状態でトレイガイド部材54、及びエア浮上装置55それぞれをその可動範囲の最も−Z側に位置させることにより、基板トレイ90と基板Pの下面とを離間させることができる。基板Pへの露光処理などは、図4(B)に示される基板Pと基板トレイ90とが離間した状態で行われる。
【0041】
次に、図1に示される基板搬出装置60について説明する。基板搬出装置60は、基板ステージ装置PSTの+X側に配置され、架台69を介してその床面Fからの高さ位置が基板ホルダ50とほぼ同じとなるように床面F上に設置されている。基板搬出装置60は、基板ステージ装置PSTと共に、不図示のチャンバ内に収容されている。
【0042】
図3(A)に示されるように、基板搬出装置60は、ベース61、走行ユニット62、及び複数、例えば4台のエア浮上ユニット63を有している。
【0043】
ベース61は、X軸方向を長手方向とする平面視矩形の平板状の部材から成り、XY平面に平行に配置されている。走行ユニット62は、ベース61の上面中央部に固定された固定子部64と、固定子部64上に搭載された可動子部65とを含む。固定子部64は、X軸方向に延びる部材から成り、例えば磁石ユニットなどの固定子(図示省略)を有している。可動子部65は、例えばコイルなどの可動子(図示省略)を有している。可動子部65が有する可動子と固定子部64が有する固定子とは、可動子部65を固定子部64上でX軸方向に所定のストロークで駆動するXリニアモータを構成している。可動子部65は、−X側(基板ステージ装置PST側)の端部に吸着パッド66を有している。吸着パッド66には、例えば不図示の真空吸引装置が接続されており、−X側の面で後述する基板トレイ90(図3(A)では不図示。図5(A)参照)を吸着保持する。なお、可動子部65(すなわち、吸着パッド66)をX軸方向に駆動するための装置は、リニアモータに限らず、例えば送りねじ装置などであっても良い。また、基板トレイ90を吸着保持する吸着パッド66に換えて、基板トレイ90を機械的に保持(把持)するメカニカルチャックを可動子部65に設けても良い。
【0044】
エア浮上ユニット63は、例えば4台のうち2台が走行ユニット62の+Y側、別の2台が走行ユニット62の−Y側に配置されている。例えば4台のエア浮上ユニット63それぞれは、配置が異なる点を除き実質的に同じものである。例えば4台のエア浮上ユニット63は、不図示の主制御装置により同期駆動される。互いに隣接する2台のエア浮上ユニット63間の間隔は、基板トレイ90の互いに隣接する一対の第2支持部材91b(図2(A)参照)間の間隔に対応しており、例えば4台のエア浮上ユニット63を用いて基板トレイ90(図2(A)参照)の、例えば4本の第2支持部材91bそれぞれを下方から支持できるようになっている。
【0045】
エア浮上ユニット63は、図3(B)に示されるように、複数、例えば3台のリニアアクチュエータ67、及びエア浮上装置68を有している。なお、図3(B)は、図3(A)の3B−3B線断面図である。
【0046】
例えば3台のリニアアクチュエータ67は、X軸方向に所定間隔で配列され、ベース61の上面に固定されている。3台のリニアアクチュエータ67それぞれは、不図示の主制御装置により独立に制御される。リニアアクチュエータ67は、Z軸方向に所定のストロークで移動可能なロッドを有し、そのロッド先端部(+Z側の端部)それぞれには、Y軸方向に延びる回転軸70を介してθy方向に揺動(チルト)可能なチルト部材71が取り付けられている。エア浮上装置68は、X軸方向に延びる板状の部材から成り、3つのチルト部材71上に搭載されている。エア浮上装置68は、多孔質部材を含み、高圧気体(例えば、空気)を噴出することにより、第2支持部材91bを微少なクリアランスを介して浮上させる機能を有する。なお、リニアアクチュエータ67の構成は、特に限定されないが、例えば送りねじ機構、カム機構、リニアモータ、あるいはエアシリンダなどを用いてロッドを駆動するものを用いることができる。
【0047】
上述のようにして構成された液晶露光装置10(図1参照)では、不図示の主制御装置の管理の下、不図示のマスク搬送装置(マスクローダ)によって、マスクステージMST上へのマスクMのロード、及び不図示の基板搬入装置によって、基板ホルダ50上への基板Pの搬入(ロード)が行なわれる。なお、基板搬入装置は、基板トレイ90(図2(A)参照)上に載置された基板Pを、基板トレイ90と共に基板ホルダ50上に搬送し、基板トレイ90は、第1支持部材91a、及び第2支持部材91bが基板ホルダ50内に収容される(図4(B)参照)。その後、主制御装置により、不図示のアライメント検出系を用いてアライメント計測が実行され、アライメント計測の終了後、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。この露光動作は従来から行われているステップ・アンド・スキャン方式と同様であるのでその詳細な説明は省略するものとする。
【0048】
そして、基板Pに対する露光動作が完了すると、基板ホルダ50が図5(A)に示される基板交換位置に位置するように、基板ステージ装置PSTのX粗動ステージ23X,Y粗動ステージ23Y、及び微動ステージ21の位置がそれぞれ制御される。ここで、基板交換位置とは、基板搬出装置60の吸着パッド66が基板トレイ90の連結部材93の中央部を吸着保持することができる位置である。なお、図5(A)〜図6(B)では、図面の錯綜を避ける観点から、基板P、基板ステージ装置PSTの微動ステージ21、Y粗動ステージ23Y、X粗動ステージ23X(それぞれ図1参照)などの図示が省略されている。そして、図5(A)に示されるように、基板ホルダ50が基板交換位置に位置した状態で、基板ホルダ50に支持された基板トレイ90の4本の第2支持部材91bのY軸方向に関する位置は、4台のエア浮上装置68のY軸方向に関する位置と概ね一致している。そして、露光済みの基板Pは、基板搬出装置60により基板ホルダ50上から基板トレイ90と共に搬出(アンロード)される。搬出された基板トレイ90上には、新たに別の基板P(図示省略)が載置され、その新しい基板Pは、基板トレイ90と共に不図示の基板搬入装置により基板ホルダ50へ搬入(ロード)される。すなわち、液晶露光装置10では、基板ホルダ50上の基板Pの交換が行われることにより、複数枚の基板Pに連続して露光処理が行われる。
【0049】
以下、基板搬出装置60を用いた基板ホルダ50上の基板Pの搬出動作について、図5(A)〜図6(B)を用いて説明する。
【0050】
基板交換位置に基板ホルダ50が位置されると、主制御装置は、図5(B)に示されるように、基板ホルダ50が有する複数のエアシリンダ53を同期制御して基板トレイ90を上昇させる。また、これと併せて基板ホルダ50による基板Pの吸着保持を解除する。これにより、基板Pは、基板トレイ90に下方から支持され、基板トレイ90と共に上昇し、その下面が基板ホルダ50の上面から離間する。この状態で、補剛部材94の下面は、基板ホルダ50の上面よりも上方に位置している。また、第1支持部材91a、及び第2支持部材91bの下端部は、溝部51x内に収容されている。また、基板搬出装置60では、可動子部65が−X方向(基板ホルダ50に接近する方向)に駆動され、吸着パッド66が基板トレイ90の連結部材93を吸着保持する。
【0051】
ここで、図5(B)に示されるように、基板搬出装置60では、エア浮上装置68の上面が基板ホルダ50のエア浮上装置55の上面よりも−Z側に位置するように、例えば3台のリニアアクチュエータ67が制御されている。また、例えば3台のリニアアクチュエータ67は、最も−X側(基板ホルダ50に近接する側)のチルト部材71のZ位置が最も低く、最も+X側のチルト部材71のZ位置が最も高くなるように、それぞれのロッドの繰り出し量が制御される。これにより、エア浮上装置68の上面(基板トレイ90を支持する面)がXY平面に対して微少角度傾斜している。
【0052】
この後、図6(A)及び図6(B)に示されるように、可動子部65が+X方向に駆動され、これにより、基板トレイ90が+X方向にスライドし、基板トレイ90の支持部材91a、91bが基板ホルダ50の溝部51x内から抜き取られる。このとき、エア浮上装置55は、基板トレイ90を浮上支持している。
【0053】
そして、基板トレイ90が+X方向にスライドし、エア浮上装置68上を通過している最中、より詳細には、第2支持部材91bの全長のうち、例えば半分程度が基板ホルダ50の溝部51x内から引き抜かれてエア浮上装置68の上方に位置したタイミングで、エア浮上装置68の上面がXY平面に平行で、かつそのZ位置が基板ホルダ50内のエア浮上装置55の上面とほぼ同じとなるように、例えば3台のリニアアクチュエータ67が制御される。これにより、図6(B)に示されるように、エア浮上装置68が上昇し、基板トレイ90の第2支持部材91bの自重が、エア浮上装置55とエア浮上装置68とによって下方から支持される。ここで、基板トレイ90が+X方向にスライドし、エア浮上装置55とエア浮上装置68上を同時に通過し、例えばそのほぼ8割程度の部分がエア浮上装置68上に位置したとき(あるいはエア浮上装置55のうち、最も+X側のエア浮上装置55のみに支持されているとき)、エア浮上装置68の最も−X側のチルト部材71のZ位置が最も高くなるようにロッドの繰り出し量を制御して、基板トレイ90をエア浮上装置55から持ち上げても良い。これにより、基板トレイ90が最も+X側のエア浮上装置55を通過した後、基板トレイ90及びその基板トレイ90上の基板が自重撓みによって基板ホルダ50に接触すること(いわゆる尻擦り)を防止することができる。
【0054】
この後、さらに可動子部65が+X方向に駆動され、基板トレイ90が完全に基板搬出装置60のエア浮上装置68上に載り移った後、可動子部65が停止される。基板トレイ90上の基板Pは、不図示の基板搬出ロボットにより外部に搬出され、別の新たな基板(図示省略)が基板トレイ90上に載置される。新たな基板が載置された基板トレイ90は、不図示の基板搬入装置により基板ホルダ50に搬送され、新たな基板が基板ホルダ50上に載置され、基板トレイ90は基板ホルダ50に保持される。
【0055】
以上説明した第1の実施形態に係る基板搬出装置60では、基板トレイ90を基板ホルダ50のエア浮上装置55上から基板搬出装置60のエア浮上装置68上に載せ替える際、基板搬出装置60側のエア浮上装置68を予め低い位置に傾斜して位置させておき、基板トレイ90の移動に応じて上昇させる。すなわち、基板トレイ90は、最初は傾斜面に対して進行するが、その移動量に応じてエア浮上装置68の傾斜が緩くなり、最終的には水平にされる。これは例えて言うなら、航空機が滑走路に進入する際に、最初に滑走路に対して浅い角度をつけて進入し、機体の進行に応じて機体と滑走路の角度を徐々に小さくすることにより軟着陸するのと同様に作用し、基板トレイ90をエア浮上装置55上からエア浮上装置68上に載せ換える際の衝撃を抑制できる。この衝撃とは、エア浮上装置68に基板トレイ90の第2支持部材91bが機械接触する際に生じる衝撃のことであり、第2支持部材91bが上空から急激に接近するときの動的負荷変動に、静圧気体軸受であるエア浮上装置68が剛性(エア浮上装置により形成される気体層(膜)の剛性を意味する。以下同じ)不足によって耐えられなくなるために生じる。これに対し、本実施形態では、第2支持部材91bとエア浮上装置68との間隔を徐々に近づけることによって、上記動的負荷変動を低減し、エア浮上装置68の剛性を確保することができるようになる。従って、衝撃を抑制しながら基板トレイ90を迅速に基板ホルダ50から搬出することができる。また、基板トレイ90の第2支持部材91bは、X軸方向(基板トレイ90の進行方向)に延びる部材から成るので、上述した例のように、航空機の車輪と比べてエア浮上装置68に対する接地の位置やタイミングが厳密に決まっていないので、高速でエア浮上装置68に接地させることができる。
【0056】
また、基板トレイ90の第1支持部材91aを断面五角形状とし、基板ホルダ50に第1支持部材91aをX軸方向に直進案内するトレイガイド部材54(図3(A)参照)を設けたので、基板トレイ90を確実にX軸方向に直進させることができる。また、吸着パッド66は、基板トレイ90の重心位置CGを含むX軸に平行な直線上で基板トレイ90を保持するので、基板トレイ90をスライドさせる際の駆動力が基板トレイ90の重心位置CGに作用する(図6(A)参照)。従って、基板トレイ90の搬出時にθz方向のモーメントが作用することを防止できる。
【0057】
《第2の実施形態》
次に本発明の第2の実施形態について説明する。本第2の実施形態は、上記第1の実施形態に比べ、基板搬出装置の構成が異なるのみなので基板搬出装置の構成についてのみ説明する。なお、本第2の実施形態、及び後述する変形例では、上記第1の実施形態と同様の構成、及び機能を有する部材については、上記第1の実施形態と同じ符号を用い、その説明を省略する。
【0058】
図7(A)に示されるように、第2の実施形態に係る基板搬出装置160は、ベース61、走行ユニット62、及び一対のエア浮上ユニット163を有している。ベース61、及び走行ユニット62の構成は、上記第1の実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0059】
一対のエア浮上ユニット163は、一方が走行ユニット62の+Y側、他方が走行ユニット62の−Y側に配置されている。一対のエア浮上ユニット163それぞれは、配置が異なる点を除き実質的に同じものであり、不図示の主制御装置により同期駆動される。エア浮上ユニット163は、図7(B)に示されるように、ベース164、X駆動ユニット165、Z軸方向に延びる一対のエアシリンダ166、及びエア浮上装置167を有している。
【0060】
ベース164は、X軸方向を長手方向とする平面視矩形の平板状の部材から成り、XY平面に平行に配置されている。X駆動ユニット165は、送りねじ装置、及びXリニアガイド装置などを含み、ベース164をX軸方向に所定のストロークで駆動する。なお、ベース164をX軸方向に駆動するための装置は、送りねじ装置に限らず、例えばリニアモータ、エアシリンダなどであっても良い。
【0061】
一対のエアシリンダ166は、X軸方向に離間して配置され、ベース164の上面に固定されている。一対のエアシリンダ166それぞれのロッドの+Z側の端部には、エア浮上装置167が接続されている。一対のエアシリンダ166は、不図示の主制御装置により同期駆動される。
【0062】
エア浮上装置167は、平面視で梯子状(図7(A)参照)に組まれたフレーム167aと、フレーム167a上に搭載された一対の多孔質部材167bとを有している。一対の多孔質部材167bは、それぞれX軸方向に延びる板状の部材から成り、Y軸方向に所定間隔で平行に配置されている。多孔質部材167bは、外部に設けられた不図示の気体供給装置から供給される加圧気体(例えば空気)をその上面から噴出して基板トレイ90(図9(C)参照)を下方から浮上支持する。エア浮上装置167は、図8(B)に示されるようにX駆動ユニット165により−X側に駆動されることにより、−X側の端部がベース61よりも−X側に突き出す位置に移動することができる。
【0063】
次に第2の実施形態に係る基板搬出装置160の動作について説明する。図8(A)に示されるように、基板ホルダ50では、上記第1の実施形態と同様に、基板ホルダ50内のエアシリンダ53により基板トレイ90と共に基板Pが持ち上げられ、基板Pの下面が基板ホルダ50から離間している。このとき、基板搬出装置160のエア浮上装置167の上面のZ位置は、基板ホルダ50のエア浮上装置55の上面のZ位置よりも低い位置(−Z側の位置)に位置している。次いで、図8(B)に示されるように、X駆動ユニット165によりエア浮上装置167が−X方向に駆動され、エア浮上装置167の−X側の端部が基板ホルダ50に接近する。
【0064】
この後、図8(C)に示されるように、可動子部65が−X方向に駆動され、吸着パッド66が基板トレイ90の連結部材93を吸着保持する。また、一対のエアシリンダ166が同期駆動され、エア浮上装置167が上昇する。このときのエア浮上装置167の上面のZ位置は、基板ホルダ50が有するエア浮上装置55の上面のZ位置と概ね一致している。これにより、基板トレイ90の支持部材91bの+X側の端部がエア浮上装置167に下方から支持される。
【0065】
この後、図8(D)に示されるように、可動子部65が+X方向に駆動されることにより、基板トレイ90がエア浮上装置55、167上をXY平面に平行にスライドする(図8(D)に対応する平面図である図9(C)参照)。また、図9(A)に示されるように、基板トレイ90の移動に応じてX駆動ユニット165によりエア浮上装置167が基板トレイ90と一体に+X方向に駆動される。これにより、基板トレイ90が基板ホルダ50から基板搬出装置160に完全に受け渡される。この後、図9(B)に示されるように、吸着パッド66による基板トレイ90の吸着保持が解除され、可動子部65が+X方向(基板トレイ90から離間する方向)に駆動される。不図示の露光済み基板Pを支持している基板トレイ90は、一対のエアシリンダ166が同期駆動されることにより上昇し、その後、基板トレイ90上の基板Pの交換が行われる。なお、エア浮上装置167と基板トレイ90とは、一体的に移動しなくても良く、相対速度差があっても良い(例えば、エア浮上装置167は、基板トレイ90より遅くても良い)。なお、エア浮上装置167を駆動するアクチュエータは、エアシリンダ166に限られず、例えば送りねじ装置、リニアモータなどの他のアクチュエータであっても良い。
【0066】
以上説明した第2の実施形態に係る基板搬出装置160では、基板ホルダ50上の基板トレイ90をスライドさせる前に、予め基板トレイ90の移動方向先端部をエア浮上装置167により下方から支持しているので、基板トレイ90には、基板ホルダ50のエア浮上装置55から基板搬出装置160のエア浮上装置167に載り移る際の衝撃が作用しない。従って、基板トレイ90を高速で搬出することができる。
【0067】
なお、基板ホルダ50のエア浮上装置55、及び基板搬出装置160のエア浮上装置167をZ軸方向に駆動させるアクチュエータが、例えば送りねじ装置などである場合、エア浮上装置55、167の互いのZ位置を一致させることが困難である場合があるが、この場合であっても基板トレイ90はZ軸方向の剛性が低いため、適度に撓んで第2支持部材91bとエア浮上装置55、167との間に隙間が発生するのを防ぐことができる。また、例えばX軸方向に配列された四台のエアシリンダ53(図6(B)参照)のうち、最も基板搬出装置160側を予め降下させておいても良い。この場合、確実に基板搬出装置160側のエア浮上装置167が基板トレイ90を下方から支持することができる。また、上記第1の実施形態と同様に、基板トレイ90が基板ホルダ50上から徐々に引き出されて最も+X側のエアシリンダ53にのみ支持されているとき、エア浮上装置167の−X側が+X側に比べて高くなるように一対のエアシリンダ166を制御することにより、基板トレイ90及び基板トレイ90上の基板が基板ホルダ50に接触する(尻擦り)ことを防止しても良い。
【0068】
また、エア浮上装置55,167の昇降用アクチュエータが、本実施形態のようにエアシリンダなどの力制御(圧力制御)による方式の場合、エア浮上装置55,167は、それぞれ均一な指定の力で基板トレイ90を支持することができる。従って、エア浮上装置55,167それぞれのZ軸方向位置によらず、基板トレイ90とエア浮上装置55,167の間には隙間は発生しない。よって、基板トレイ90をより滑らかにスライドさせることができる。なお、基板トレイ90の引き出し動作中、基板トレイ90のX位置に応じて基板ホルダ50側のエア浮上装置55にかかる負荷が変化するので、基板トレイ90のX位置に応じて昇降装置の支持力を制御するようにしても良い。
【0069】
なお、上記第1及び第2の実施形態の基板搬出装置などの構成は、一例であって、本発明がこれに限定されるものではない。以下、上記第1及び第2の実施形態のいくつかの変形例について、基板搬出装置を中心として説明する。
【0070】
《第1の変形例》
図10(A)には、第1の変形例(上記第1の実施形態の第1の変形例)における基板ホルダ250、及び基板搬出装置260が示されている。上記第1実施形態では、図2(A)に示されるように、基板トレイ90の基板ホルダ50に対するY軸方向への相対移動を規制する断面五角形の第1支持部材91aは、基板トレイ90全体の重心CGと一致する中央部に設けられていた。しかし、図6(A)示されるように、トレイガイド部材54がエアベアリングのように摩擦が実質的に無視できる場合には、基板搬出装置260の吸着パッド66が基板トレイ90の重心CGに対応する位置を保持してX方向にスライドさせるのであれば、基板トレイ90に慣性力によるモーメント(Z軸回り)は殆ど発生しないので、第1支持部材91aはY方向のどの位置にあっても良い。そこで、本第1の変形例では、図10(A)に示されるように、基板トレイ290において、第1支持部材91aは、5本の支持部材のうち+X側から見て右から2本目(+Y側から見て手前から2本目)に設けられており、中央の支持部材は、他の支持部材91bと同様に断面矩形状となっている。
【0071】
ただし、ベース61上の中央部には走行ユニット62が配置されているため、中央の支持部材91bを下方から支持することができない。また、第1支持部材91aは、断面五角形であるので、エア浮上装置68により下方から支持することが困難となり、搬出時及び搬出後の基板トレイ290の撓みが大きくなる可能性がある。これを避けるために、本第1の変形例では、基板搬出装置260にも基板トレイ290の第1支持部材91aに係合するV溝部を有するトレイガイド部材262が設けられている。その結果、基板トレイ290が基板ホルダ250から完全に引き出されても、トレイガイド部材262により基板トレイ290がX軸方向に直進案内される。従って、仮に基板トレイ290の保持位置が基板トレイ290の重心CGに対してY軸方向にずれ、基板トレイ290にθz方向のモーメントが作用したとしても、基板トレイ290を確実にX軸方向に直進移動させることができる。なお、トレイガイド部材262がエア浮上装置55と同様に、第1支持部材91aを微少なクリアランスを介して浮上させる機能(例えば、V溝部を規定する壁面にエアベアリング機能を持たせる)を有していても良い。
【0072】
そのため、基板搬出装置260が有する基板トレイ290の保持装置は、吸着パッド66(図3(A)参照)などの面接触による保持ではなく、基板トレイ290の連結部材93に形成されたZ軸方向に貫通する孔部263にピン264を引っ掛けて引き出すような、基板トレイ290のX軸方向の位置のみを拘束する保持方法が好ましい。その結果、走行ユニット62とトレイガイド部材54,262との間で基板トレイ290の過剰拘束が生まれず、基板トレイ290を滑らかに引き出すことができる。このとき、基板搬出装置260側のトレイガイド部材262を、基板ホルダ250のトレイガイド部材54と同様に、リニアアクチュエータ67に対応して個別に設け、それらの個別に設けられたトレイガイド部材(図示省略)をθz方向に回転可能に構成しておけば、基板トレイ290の第1支持部材91aの軌跡に応答して自動的に調心作用が働き、基板トレイ290の第1支持部材91aの曲がりの影響を受けずに、基板トレイ290を滑らかに引き出すことが可能となる。なお、基板トレイ290が基板ホルダ250のエア浮上装置55から基板搬出装置260のエア浮上装置68に載り移る際の動作は、第1支持部材91aのトレイガイド部材54からトレイガイド部材262への載り移りが加わることを除き、実質的に第1実施形態と同様に行われる(トレイガイド部材262のZ位置がエア浮上装置68と同様に制御される)ため説明を省略する。
【0073】
《第2の変形例》
図10(B)には、第2の変形例(上記第1の実施形態の第2の変形例)における基板ホルダ350及び基板搬出装置60(上記第1の実施形態と同じ)が示されている。上記第1の実施形態(図5(A)参照)のように、基板ホルダ350側のエア浮上装置55と基板トレイ90との間に摩擦が殆ど発生しない場合には、基板搬出装置60の吸着パッド66が基板トレイ390の重心CGに対応する位置を保持してX方向に引き出すのであれば、慣性力によるZ軸回りのモーメントは殆ど発生しない。そこで、本第2の変形例では、図10(B)に示されるように、基板トレイ390は、断面五角形状の第1支持部材91a(図4(B)参照)を有さず、5本の支持部材は、全て断面矩形状に形成されている(第2支持部材91bが5本)。これにより第2支持部材91bの曲がり影響を受けずに、基板トレイ390を滑らかに引き出すことができる。なお、第2の変形例では、基板トレイ390をX軸に直進案内する部材がないので、基板搬出装置60は、基板トレイ390を吸着パッド66などにより面接触で拘束し、基板トレイ390がθz方向に回転することを抑制することが好ましい。なお、基板トレイ390が基板ホルダ350のエア浮上装置55から基板搬出装置60のエア浮上装置68に載り移る際の動作は、第1実施形態と同様に行われるため説明を省略する。
【0074】
《第3の変形例》
図11(A)には、第3の変形例(上記第1の実施形態の第3の変形例)における基板搬出装置460が示されている。上記第1実施形態(図2(A)参照)では、基板トレイ90は重心位置CGに一致する位置に支持部材91aが配置されていたが、本第3の変形例の基板トレイ490では、支持部材が6本(偶数本)、Y軸方向に等間隔で設けられており、基板トレイ490の重心位置には、支持部材が設けられていない。その結果、基板トレイ490のY軸方向中央部を保持して走行する走行ユニット62と、基板トレイ490を下方から支持する支持部材がY軸方向に重ならない。従って、基板搬出装置460において、基板トレイ490のすべての支持部材91a、91bを下方から支持するガイド部材を設置することができ、基板トレイ490の自重に起因する撓みをより抑制することができる。
【0075】
また、可動子部65は、基板トレイ490のY軸方向に関する中央部(すなわち重心位置に対応する位置)を保持して基板トレイ490を引き出すので、基板トレイ490をX軸方向に直進案内するための断面五角形状の第1支持部材91aは、基板トレイ490のどこに設けられていても良い(図11(A)では、中央の2本が第1支持部材91aとされているがこれに限定されない)。これにより、仮に基板トレイ490を下方から支持するガイド部材にエア浮上ガイド(第1の実施形態におけるエア浮上装置55,68に相当)ではなく転がりガイド部材を用いても、基板トレイ490は、摩擦抵抗によるモーメントの影響を受け難い。なお、上記第2の変形例と同様に、直進案内部材(断面五角形状の支持部材、及びV溝部を有する案内部材)を設けなくても良い。また、基板トレイ490が基板ホルダ450のエア浮上装置55から基板搬出装置460のエア浮上装置68に載り移る際の動作は、第1支持部材91aのトレイガイド部材54からトレイガイド部材262への載り移りが加わることを除き、第1実施形態と同様に行われるため説明を省略する。
【0076】
《第4の変形例》
図11(B)には、第4の変形例(上記第1の実施形態の第4の変形例)における基板搬出装置560が示されている。本第4の変形例では、基板搬出装置560に走行ユニット62がY軸方向に離間して2つ設けられている。その結果、可動子部65が基板トレイ590のY軸方向に関する中央部を保持しなくても、基板トレイ590の重心位置に駆動力を作用させることが可能となり、基板トレイ590をX軸方向に直進案内するガイド部材がなくても基板トレイ590を確実にX軸方向に沿って滑らかに引き出すことができる。なお、基板トレイ590が基板ホルダ550のエア浮上装置55から基板搬出装置560のエア浮上装置68に載り移る際の動作は、第1実施形態と同様に行われるため説明を省略する。
【0077】
《第5の変形例》
図12(A)には、第5の変形例(上記第2の実施形態の第1の変形例)における基板搬出装置660が示されている。本第5の変形例では、基板搬出装置660のエア浮上装置668が、可動子部65の移動に連動して常に可動子部65の1/2の速度で1/2の距離だけ動くように構成されている。具体的に説明すると、基板搬出装置660の可動子部65には、ワイヤロープ100a、100bそれぞれの一端が固定されている。ワイヤロープ100a、100bそれぞれは、複数のプーリ110を介してエア浮上装置668の動滑車120a、120bにそれぞれ巻き掛けられた後、他端がベース61上に固定されている。本第5の変形例では、このようなワイヤロープ100a、100bと動滑車120a、120bを用いた駆動システムにより、エア浮上装置668を+X方向、及び−X方向に独立した駆動源なしで、可動子部65の1/2の距離だけ、1/2の速度で移動できるようになっている。従って、コストが安く、かつ各部材の動きの信頼性も高い。また、基板搬出装置660のエア浮上装置668は、基板トレイ90を基板ホルダ50から引き出した後、基板トレイ90の自重に起因する撓みを抑制するためのものなので、長手方向の寸法が基板トレイ90の第1及び第2支持部材91a、91bよりも短く形成されているが、第1及び第2支持部材91a、91bと同程度の長さでも良い。なお、基板トレイ90が基板ホルダ50のエア浮上装置55から基板搬出装置660のエア浮上装置668に載り移る際の動作は、第2実施形態と同様であるため説明を省略する(図12(B)〜図12(D)、及び図13(A)及び図13(B)参照)。
【0078】
《第6の変形例》
図14(A)には、第6の変形例(上記第2の実施形態の第2の変形例)における基板搬出装置が示されている。第6の変形例では、基板ホルダ50のエア浮上装置55と基板搬出装置760のエア浮上装置68の間に、Z軸回りに回転可能な補助浮上装置130が設けられている。エア浮上装置68は、上記第1の実施形態と同様に、複数のリニアアクチュエータ67により上下動が可能となっている。補助浮上装置は、リニアアクチュエータ67と、補助エア浮上装置140を有している。補助エア浮上装置140は、リニアアクチュエータ67により昇降可能となっている。また、補助エア浮上装置140は、Z軸回りに回転可能となっている。補助エア浮上装置140は、基板搬出時以外は、Y軸に平行とされ、基板搬出時にのみ回転して、−X側の端部がベース61の−X側の端部よりも突き出して、基板トレイ90のX側の端部を下方から支持する(図示省略)。
【0079】
補助エア浮上装置140は中間ガイドとしての役割なので、ガイド長を短くでき、上記第2実施形態(図7(A)参照)のようにエア浮上装置68全体を水平移動させ、かつ上下動させる場合よりも、装置を省エネルギーでコンパクトに構成することができる。なお、基板トレイ90の搬出前に、予め補助エア浮上装置140の方をエア浮上装置68よりも幾分+Z側に位置させておき、基板トレイ90が補助エア浮上装置140上を通過してエア浮上装置68上に差し掛かった後に、補助エア浮上装置140を降下させれば、基板トレイ90は、中間ガイドである補助エア浮上装置140の働きによって、仮に補助エア浮上装置140がないとした場合よりも、落差による衝撃が少なく、なめらかにエア浮上装置68に載り移ることができる。
【0080】
なお、上記第1及び第2の実施形態(及びその変形例)では、本発明が基板搬出装置に適用された場合を説明したが、これに限らず基板搬入装置に適用しても良い。すなわち、基板が載置された基板トレイをスライドさせて基板ホルダに搬入する際に、基板ホルダ内のエア浮上装置に、上記第1又は第2の実施形態と同様の動作をさせても良い。
【0081】
また、上記第1及び第2の実施形態(及びその変形例)では、基板Pを基板トレイ90に載置して搬送したが、基板Pを直接搬送しても良い。
【0082】
また、上記第1の実施形態(及びその変形例)では、基板搬出装置60のエア浮上装置68を傾斜させておき、基板トレイ90の進行に応じて水平にする制御を行ったが、これに限らず、エア浮上装置68を水平のまま基板ホルダ50のエア浮上装置55よりも下方に位置させ、基板トレイ90の進行に応じて上昇させても良い。この場合、基板トレイ90がある程度(例えば半分程度)基板ホルダ50から抜き出された後にエア浮上装置68を上昇させると良い。また、エア浮上装置68を水平のまま基板ホルダ50のエア浮上装置55よりも下方に位置させる場合、必ずしもエア浮上装置68を基板トレイ90の進行に応じて上昇させる必要はなく、例えば、基板トレイ90が基板ホルダ50から抜き出されてくるのと同時に微動ステージ21を降下及び/又は傾斜させることによって、基板ホルダ50及び基板トレイ90を下方に下げることにより、エア浮上装置68を上昇させずに基板トレイ90をエア浮上装置68に受け渡しても良い。また、基板トレイ90が基板ホルダ50から引き抜かれる瞬間に、基板Pが基板ホルダ50に接触する、いわゆる尻擦りを防ぐために基板ホルダ50を降下、及び/又は傾斜させても良い。
【0083】
また、上記第2の実施形態(及びその変形例)では、基板搬出装置160のエア浮上装置167が基板ホルダ50に接近することにより、基板トレイ90が基板ホルダ50側のエア浮上装置55、及び基板搬出装置160側のエア浮上装置167に同時に支持されるようにしたが、基板トレイ90をスライドさせる前段階で基板トレイ90をエア浮上装置55、167により同時に支持できればこれに限らず、例えばX粗動ステージ23X(図1参照)を用いて微動ステージ21及び基板ホルダ50を+X方向に駆動して基板ホルダ50を基板搬出装置160に接近させても良い。この場合、基板搬出装置160の構造が単純化され、コストが抑えられる。
【0084】
また、上記第2の実施形態(及びその変形例)では、基板トレイ90の下方に基板搬出装置160のエア浮上装置167を位置させた後、そのエア浮上装置167を上昇させて基板トレイ90を下方から支持したが(図8(C)参照)、これに限らず、基板ホルダ50側のエア浮上装置55を下降させて基板トレイ90をエア浮上装置167に支持させるようにしても良い。また、微動ステージ21を−Z方向に移動させて、エア浮上装置167に基板トレイ90を支持させるようにしても良い。
【0085】
また、上記第2の実施形態(及びその変形例)において、基板トレイ90は、第2支持部材91bがエア浮上装置167により下方から支持されたが、これに限らず図10(A)に示される第1の変形例のように基板搬出装置160に基板トレイ90をX軸方向に直進案内する直進ガイド部材を設けても良い。
【0086】
また、基板ホルダ50の複数のエア浮上装置55(図3参照)において、最も+X側のエア浮上装置55の剛性が最も高くなるようにするとともに、基板搬出装置60の複数のエア浮上装置68において、−X側の剛性が+X側の剛性よりも高くなるようにしても良い。この場合、1つのエア浮上装置68の内部構造を徐々に変化させても良いし、1つのエア浮上装置68内をいくつかの部屋に分けて構成しても良い。このようにエア浮上装置55,68の剛性を場所により変えることによって、基板トレイ90(図2(A)参照)が基板ホルダ50から抜け出る際、基板Pが基板ホルダ50に接触する、いわゆる尻擦りを防止することができるようになり、かつ基板トレイ90がエア浮上装置68に載り移るときの機械接触による衝撃を抑えることができるようになる。また、最も+X側のエア浮上装置55の供給圧力を他のエア浮上装置に比べて高くしても良いし、高圧エアの排気(噴出)だけでなく、吸気(エアバキューム)を併用して最も+X側のエア浮上装置55にプリロードをかけるようにしても良い。この場合、衝撃の抑制と共に、基板トレイ搬出時の上下方向の振動(ばたつき)を抑える効果を得ることができる。
【0087】
また、複数のエア浮上装置55(エアベアリング)のうち、最も+X側のエア浮上装置55の絞りを他のエア浮上装置55とは異なる構造のものにしても良い。具体的には、−X側にあるエア浮上装置のエアベアリングの絞りを気孔径の小さな(つまりエア消費量の少ない)多孔質絞りにして基板トレイ90が上空からいなくなっても急激な圧力降下及び消費流量の大幅な増加が起こらないようにすると共に、最も+X側のエア浮上装置55の絞りをオリフィス絞りと表面絞りとの複合絞りにして剛性を高めても良い。オリフィス絞りをもつ複合絞りエアベアリングでは、絞り孔を塞いでいる上方の基板トレイ90がいなくなると、噴出する高圧エアが一気に開放されるため急激な圧力降下が起きるが、最も+X側のエア浮上装置55では、すぐに基板トレイ90が上方からいなくなるので、浮上搬送に影響を及ぼさない。基板搬出装置60のエア浮上装置68についても同様な方法によって場所によって剛性を変化させ、エア消費流量を抑えながら衝撃のない基板トレイ90の載り移りを行うことができる。なお、基板搬出装置60は、エア浮上装置68に限らず、例えばX軸方向に配列された複数の自転可能な転動体(ボール又はローラなど)と基板トレイ90とをころがり接触させることにより、載り移りによる衝撃を抑えるようにしても良い。
【0088】
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、例えばDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
【0089】
また、上記実施形態では、投影光学系PLが、複数本の光学系を備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学系の本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、オフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。
【0090】
また、上記実施形態では投影光学系PLとして、投影倍率が等倍系のものを用いる場合について説明したが、これに限らず、投影光学系は拡大系及び縮小系のいずれでも良い。
【0091】
また、上記実施形態においては、光透過性のマスク基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク)、例えば、非発光型画像表示素子(空間光変調器とも呼ばれる)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)を用いる可変成形マスクを用いても良い。
【0092】
また、露光装置の用途としては角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、例えば半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0093】
なお、露光対象となる物体はガラスプレートに限られるものでなく、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、例えばフィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。
【0094】
なお、本発明に係る露光装置は、外径が500mm以上の基板が露光対象物である場合に特に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明したように、本発明の物体搬送装置及び物体の搬送方法は、2つの物体支持装置間で物体を搬送するのに適している。また、本発明の露光装置は、エネルギビームを用いて物体を露光するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの生産に適している。また、本発明のフラットパネルディスプレイの製造方法は、フラットパネルディスプレイの生産に適している。
【符号の説明】
【0096】
10…液晶露光装置、50…基板ホルダ、60…基板搬出装置、90…基板トレイ、P…基板、PST…基板ステージ装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送装置であって、前記第1物体支持装置から前記第2物体支持装置に向けて前記物体を所定平面に平行な第1軸方向に駆動する搬送装置と、
前記第1物体支持装置に設けられ、前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材と、
前記第2物体支持装置に設けられ、前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材と、
前記物体が前記第1物体支持装置上に位置した状態で、前記第2支持部材を前記第1支持部材よりも下方に位置させ、前記物体の一部が前記第2支持部材の上方に位置したのに応じて、前記第1及び第2支持部材の少なくとも一方を前記所定平面に交差する方向に移動させて前記第1及び第2支持部材に前記物体を支持させる支持部材駆動装置と、を備える物体搬送装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記物体の移動前に前記第2支持部材を前記第1物体支持部材に近い側が低くなるように傾斜させ、前記物体の移動に応じて前記第2支持部材を前記所定平面に平行にする請求項1に記載の物体搬送装置。
【請求項3】
第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送装置であって、
前記第1物体支持装置に設けられ、前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材と、
前記第2物体支持装置に設けられ、前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材と、
前記物体が前記第1支持部材上に位置した状態で前記第1及び第2支持部材の少なくとも一方を駆動して前記第1及び第2支持部材に前記物体を支持させる駆動装置と、
前記第1及び第2支持部材に支持された前記物体を前記第1物体支持装置から前記第2物体支持装置に向けて所定平面に平行な第1軸に平行な方向に駆動する搬送装置と、を備える物体搬送装置。
【請求項4】
前記駆動装置は、前記第2支持部材を前記第1軸に沿って前記第1支持部材に接近する方向に駆動し、該駆動後の前記第2支持部材と前記第1支持部材とに前記物体を支持させる請求項3に記載の物体搬送装置。
【請求項5】
前記第2支持部材は、前記所定平面に直交する軸周りに回転可能な回転支持部材を含み、
前記駆動装置は、前記回転支持部材を回転させることにより前記回転支持部材と前記第1支持部材とを接近させ、前記回転後の回転支持部材と前記第1支持部材とに前記物体を支持させる請求項3に記載の物体搬送装置。
【請求項6】
前記第1支持部材及び前記第2支持部材は、前記物体を非接触支持する請求項1〜5のいずれか一項に記載の物体搬送装置。
【請求項7】
前記搬送装置は、前記物体の前記所定平面内で前記第1軸に直交する第2軸に平行な方向に関する重心位置に駆動力を作用させる請求項1〜6のいずれか一項に記載の物体搬送装置。
【請求項8】
前記第1物体支持装置は、前記物体に機械的に係合して該物体を前記第1軸に平行な方向に案内する第1案内部材を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の物体搬送装置。
【請求項9】
前記第2物体支持装置は、前記物体に機械的に係合して該物体を前記第1軸に平行な方向に案内する第2案内部材を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の物体搬送装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の物体搬送装置と、
前記第1物体支持装置又は第2物体支持装置に支持された前記物体にエネルギビームを用いて所定のパターンを形成するパターン形成装置と、を有する露光装置。
【請求項11】
前記物体は、第1物体と前記第1物体を下方から支持する第2物体とを含み、
前記パターン形成装置は、前記第1物体に前記所定のパターンを形成する請求項10に記載の露光装置。
【請求項12】
前記所定のパターンが形成される前記物体は、フラットパネルディスプレイに用いられる基板である請求項10又は11に記載の露光装置。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の露光装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項14】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の露光装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された物体を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法。
【請求項15】
第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送方法であって、
前記物体が前記第1物体支持装置上に位置した状態で、前記第1物体支持装置に設けられ前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材よりも、前記第2物体支持装置に設けられ、前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材を下方に位置させることと、
前記物体を所定平面に平行な第1軸に平行な方向に移動させることと、
前記物体の移動中に、前記物体の一部が前記第2支持部材の上方に位置したのに応じて、前記第1及び第2支持部材の少なくとも一方を前記所定平面に交差する方向に移動させて前記第1及び第2支持部材に前記物体を支持させることと、を含む物体搬送方法。
【請求項16】
前記物体の移動前に前記第2支持部材を前記第1物体支持部材に近い側が低くなるように傾斜させること、をさらに含み、
前記物体の移動に応じて前記第2支持部材を前記所定平面に平行にすることにより、前記第1及び第2支持部材に前記物体を支持させる請求項15に記載の物体搬送方法。
【請求項17】
第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送方法であって、
前記物体が前記第1支持部材上に位置した状態で、前記第1物体支持装置に設けられ前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材、及び前記第2物体支持装置に設けられ前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材の少なくとも一方を駆動して、該第1及び第2支持部材に前記物体を支持させること、
前記第1及び第2支持部材に支持された前記物体を、前記第1物体支持装置から前記第2物体支持装置に向けて所定平面に平行な第1軸に平行な方向に駆動することと、を含む物体搬送方法。
【請求項18】
前記第2支持部材を前記第1軸に沿って、前記第1支持部材に接近する方向に移動させ、該移動後の前記第1支持部材と前記第2支持部材により前記物体を支持させる請求項17に記載の物体搬送方法。
【請求項19】
前記第2支持部材は、前記所定平面に直交する軸周りに回転可能な回転支持部材を含み、
前記回転支持部材を回転させることにより前記回転支持部材と前記第1支持部材とを接近させ、前記回転後の回転支持部材と前記第1支持部材とにより前記物体を支持させる請求項17に記載の物体搬送方法。
【請求項20】
前記物体を前記第1軸に平行な方向に移動させる際、前記物体の前記所定平面内で前記第1軸に直交する第2軸に平行な方向に関する重心位置に駆動力を作用させる請求項15〜19のいずれか一項に記載の物体搬送方法。
【請求項1】
第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送装置であって、前記第1物体支持装置から前記第2物体支持装置に向けて前記物体を所定平面に平行な第1軸方向に駆動する搬送装置と、
前記第1物体支持装置に設けられ、前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材と、
前記第2物体支持装置に設けられ、前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材と、
前記物体が前記第1物体支持装置上に位置した状態で、前記第2支持部材を前記第1支持部材よりも下方に位置させ、前記物体の一部が前記第2支持部材の上方に位置したのに応じて、前記第1及び第2支持部材の少なくとも一方を前記所定平面に交差する方向に移動させて前記第1及び第2支持部材に前記物体を支持させる支持部材駆動装置と、を備える物体搬送装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記物体の移動前に前記第2支持部材を前記第1物体支持部材に近い側が低くなるように傾斜させ、前記物体の移動に応じて前記第2支持部材を前記所定平面に平行にする請求項1に記載の物体搬送装置。
【請求項3】
第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送装置であって、
前記第1物体支持装置に設けられ、前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材と、
前記第2物体支持装置に設けられ、前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材と、
前記物体が前記第1支持部材上に位置した状態で前記第1及び第2支持部材の少なくとも一方を駆動して前記第1及び第2支持部材に前記物体を支持させる駆動装置と、
前記第1及び第2支持部材に支持された前記物体を前記第1物体支持装置から前記第2物体支持装置に向けて所定平面に平行な第1軸に平行な方向に駆動する搬送装置と、を備える物体搬送装置。
【請求項4】
前記駆動装置は、前記第2支持部材を前記第1軸に沿って前記第1支持部材に接近する方向に駆動し、該駆動後の前記第2支持部材と前記第1支持部材とに前記物体を支持させる請求項3に記載の物体搬送装置。
【請求項5】
前記第2支持部材は、前記所定平面に直交する軸周りに回転可能な回転支持部材を含み、
前記駆動装置は、前記回転支持部材を回転させることにより前記回転支持部材と前記第1支持部材とを接近させ、前記回転後の回転支持部材と前記第1支持部材とに前記物体を支持させる請求項3に記載の物体搬送装置。
【請求項6】
前記第1支持部材及び前記第2支持部材は、前記物体を非接触支持する請求項1〜5のいずれか一項に記載の物体搬送装置。
【請求項7】
前記搬送装置は、前記物体の前記所定平面内で前記第1軸に直交する第2軸に平行な方向に関する重心位置に駆動力を作用させる請求項1〜6のいずれか一項に記載の物体搬送装置。
【請求項8】
前記第1物体支持装置は、前記物体に機械的に係合して該物体を前記第1軸に平行な方向に案内する第1案内部材を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の物体搬送装置。
【請求項9】
前記第2物体支持装置は、前記物体に機械的に係合して該物体を前記第1軸に平行な方向に案内する第2案内部材を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の物体搬送装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の物体搬送装置と、
前記第1物体支持装置又は第2物体支持装置に支持された前記物体にエネルギビームを用いて所定のパターンを形成するパターン形成装置と、を有する露光装置。
【請求項11】
前記物体は、第1物体と前記第1物体を下方から支持する第2物体とを含み、
前記パターン形成装置は、前記第1物体に前記所定のパターンを形成する請求項10に記載の露光装置。
【請求項12】
前記所定のパターンが形成される前記物体は、フラットパネルディスプレイに用いられる基板である請求項10又は11に記載の露光装置。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の露光装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項14】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の露光装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された物体を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法。
【請求項15】
第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送方法であって、
前記物体が前記第1物体支持装置上に位置した状態で、前記第1物体支持装置に設けられ前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材よりも、前記第2物体支持装置に設けられ、前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材を下方に位置させることと、
前記物体を所定平面に平行な第1軸に平行な方向に移動させることと、
前記物体の移動中に、前記物体の一部が前記第2支持部材の上方に位置したのに応じて、前記第1及び第2支持部材の少なくとも一方を前記所定平面に交差する方向に移動させて前記第1及び第2支持部材に前記物体を支持させることと、を含む物体搬送方法。
【請求項16】
前記物体の移動前に前記第2支持部材を前記第1物体支持部材に近い側が低くなるように傾斜させること、をさらに含み、
前記物体の移動に応じて前記第2支持部材を前記所定平面に平行にすることにより、前記第1及び第2支持部材に前記物体を支持させる請求項15に記載の物体搬送方法。
【請求項17】
第1物体支持装置から前記第1物体支持装置に対して離間して配置された第2物体支持装置に物体を搬送する物体搬送方法であって、
前記物体が前記第1支持部材上に位置した状態で、前記第1物体支持装置に設けられ前記物体が第1物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第1支持部材、及び前記第2物体支持装置に設けられ前記物体が第2物体支持装置上を移動する際に該物体を下方から支持する第2支持部材の少なくとも一方を駆動して、該第1及び第2支持部材に前記物体を支持させること、
前記第1及び第2支持部材に支持された前記物体を、前記第1物体支持装置から前記第2物体支持装置に向けて所定平面に平行な第1軸に平行な方向に駆動することと、を含む物体搬送方法。
【請求項18】
前記第2支持部材を前記第1軸に沿って、前記第1支持部材に接近する方向に移動させ、該移動後の前記第1支持部材と前記第2支持部材により前記物体を支持させる請求項17に記載の物体搬送方法。
【請求項19】
前記第2支持部材は、前記所定平面に直交する軸周りに回転可能な回転支持部材を含み、
前記回転支持部材を回転させることにより前記回転支持部材と前記第1支持部材とを接近させ、前記回転後の回転支持部材と前記第1支持部材とにより前記物体を支持させる請求項17に記載の物体搬送方法。
【請求項20】
前記物体を前記第1軸に平行な方向に移動させる際、前記物体の前記所定平面内で前記第1軸に直交する第2軸に平行な方向に関する重心位置に駆動力を作用させる請求項15〜19のいずれか一項に記載の物体搬送方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−228633(P2011−228633A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11518(P2011−11518)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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