説明

物体検知システム及びその方法

【課題】
レーザセンサによる測距の対象物からの反射光が十分でない場合でも、領域内の物体の存在を検知する。
【解決手段】
レーザセンサを用いて領域の背景に相当する物体の情報を背景データとして取得すし、レーザセンサを用いて領域内にある物体の測距データを取得し、取得した測距データと背景データの差分を計算して物体の存在位置を算出し、物体の形状を連続する座標値であるポイントデータとしこれに近接した周辺ポイントデータの中心座標であるクラスタを検出し、このクラスタのデータを用いて領域の物体の存在位置を検出する。また、測距データが得られない場合でも領域内の物体の存在を検知し、物体が特定の領域に進入した場合に警報を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知システム及びその方法に係り、特に、レーザセンサを用いて監視対象の領域から得られる測距データを処理することにより物体の存在位置を検知する物体検知システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザセンサを用いて、あるエリア内に出入りする人や物体の存在を検知する技術が知られている。例えば、特許文献1(特開2005−214716号公報)には、検知エリアが重複しても干渉を防止して物体の位置を検知する技術が開示されている。この技術によれば、検知エリアが重複する複数の物体検知センサについて、予め複数の待ち時間の値を記憶しておき、この複数の待ち時間から互いに異なる値を選んで、各待ち時間経過後にコンピュータを用いて物体までの距離を測距することで、複数の物体検知センサが測距動作で重複すること無く物体の位置の検出することができるものである。
【0003】
また、特許文献2(特開2004−191095号公報)には、複数方向からレーザセンサでレーザ光を2次元的に照射してレーザ光の反射光を検出し、物体の位置を検知する技術が開示されている。この技術によれば、複数の検知手段を用いることで物体の位置を検出するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2005−214716号公報
【特許文献2】特開2004−191095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2に記載されている、レーザセンサによって物体を検知する技術においては、レーザセンサから照射されたレーザ光が物体に到達し、物体からの十分な反射をレーザセンサで受けることで、測距が可能となる。従って、例えば、黒色の物体でレーザ光が吸収されてしまうとその反射光が弱まったり、また鏡などによってレーザセンサ以外の方向にレーザ光が反射或いは乱反射する場合には、レーザセンサに反射光が届かず、結果的にレーザセンサによる測距が困難となる。そのため、レーザセンサを用いた場合でも物体やその存在位置が正しく判別できない。
【0006】
本発明の目的は、上記問題点を解決することにあり、レーザセンサによる測距の対象物からの反射光が十分でない場合でも、領域内の物体の存在を検知することができる物体検知システム及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る物体検知システムは、好ましくは、レーザセンサを用いて対象の領域を照射し、得られた測距データを処理装置で処理することによって物体の位置を検知する物体検知システムであって、該レーザセンサによって該領域の背景に相当する物体の情報を取得する背景データ取得手段と、該レーザセンサによって該領域内にある物体の経時的な測距データを取得して該物体の位置を検知する位置検知手段と、該領域における該物体の存在位置を検知する物体検知手段と、を有することを特徴とする物体検知システムとして構成される。
【0008】
好ましい例では、該位置検知手段は、予め取得した背景データと、経時的に得られる測距データとを比較処理して設定される該領域の物体の位置を特定する処理手段を有し、該物体検知手段は、予め設定された監視時間が経過した後において経時的に測距データが得られない場合を、該レーザセンサ以外の方向にレーザ光が乱反射して測距における認識可能レベルまでのレーザ光が反射されていないと判断する手段を有する。
また、好ましくは、更に、物体が該領域内の特定の領域に進入した場合に警報を発する警報通知手段を有する。
【0009】
本発明に係る物体検知方法は、好ましくは、レーザセンサを用いて所定の領域を照射し、得られた測距データを処理装置で処理することによって物体の位置を検知する物体検知方法であって、該レーザセンサを用いて該領域の背景に相当する物体の情報を背景データとして取得するステップと、該レーザセンサを用いて該領域内にある物体の測距データを取得するステップと、取得した該測距データと該背景データの差分を計算して、該物体の存在位置を算出するステップと、該物体の形状を連続する座標値であるポイントデータとし、これに近接した周辺ポイントデータの中心座標であるクラスタを検出するステップと、該クラスタのデータを用いて、該領域の物体の存在位置を検出するステップと、を有することを特徴とする物体検知方法として構成される。
【0010】
好ましい例では、前記物体の存在位置を算出する処理は、予め測距して背景DBに保存された背景データと、経時的に得られる測距データとを比較処理して設定される監視領域の物体の位置を特定する検知処理を含み、前記クラスタを検出する処理は、物体の形状を連続する座標値であるポイントデータとし、これに近接した周辺ポイントデータをクラスタと呼ぶ纏まりで固有IDを付けて、そのクラスタの中心座標を求めクラスタ検出をする処理を含む。
また、好ましくは、前記物体の存在位置検出の処理において、予め設定された監視時間が経過した後において経時的に測距データが得られない場合、レーザセンサ以外の方向にレーザ光が乱反射して測距における認識可能レベルまでのレーザ光が反射されていないと判断する処理を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レーザセンサによる測距の対象物からの反射光が十分でない場合でも、背景データと経時的に取得される測距データを照合することで、物体の存在位置を絞り込んで検知し、正しく物体を判断することができる。また、監視する対象の物体の大きさがある範囲内に限られる場合は、測距データからレーザセンサから物体までの距離を求めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明をする。
[実施例1]
図1は、本発明の一実施例における一台のレーザセンサを使用した物体検知システムの構成例である。
この検知システムは、レーザセンサにより監視領域内にある物体の存在位置を検知してそれを画面表示するものである。監視領域は、L1:4500cm,L2:3100cmのように設定され、その領域内にある物体の位置を検知して、検知結果をリアルタイムに表示装置133に表示する。14は監視領域の背景である。
【0013】
物体検出システムにおいて、レーザセンサ11から監視領域に対して左周りに0.5°ごとにレーザを照射して、受信した測距データをPC(パーソナルコンピュータ)13に経時的に取込む。
PC13は、その測距データを用いて物体の存在位置を計算する処理装置(CPU)131と、測距データ及び物体の位置の計算に関係する種々のデータを記憶するデータベース(DB)132と、表示装置133、及び入力装置134を有する。DB132には、後述する、背景DB21(図2)、測距データDB41(図4)、レーザセンサ位置DB51(図5)、ポイントDBA71(図7)、消失点DBA81(図8)、クラスタDBA91(図9)、物体存在領域DBA101(図10)等の種々のDBが格納される。
以下、一連の処理機能及び処理動作について説明をする。
【0014】
図12は直交座標と角度変換におけるクラスタ検出の処理動作を示す。
一連の処理は、初期化処理(S1201)〜画面表示処理(S1206)からなり、これらの処理は主にPC13内のCPU131で実行される。
初期化処理(S1201)は、動作開始時の初期設定であり監視領域、監視時間、検知条件を入力装置134から設定し、設定条件やレーザセンサ位置の値などをDB132に保存する。
【0015】
図3は、一台のレーザセンサを使用した物体検知システムにおいて監視領域内に3つの物体が存在する例を示す。
3つの物体31、物体32、物体33に対して、設定したレーザセンサの位置は、直交座標(座標値)と監視領域に対してどの方向を向いているかの水平角度を示し、例えば水平を0°とし、そこから垂直方向にn°(0°≦n≦180°)まで回転した場合の値を示すものである。
レーザセンサ位置DB51(図5)に、レーザセンサ11の設置位置を示す、直交座標(座標値)と向き(角度)情報が格納される。
【0016】
次に、背景データ取得処理(S1202)では、初期化処理(S1201)の後、無人状態の監視領域(背景以外に人等が存在しない状態)をレーザセンサ11にで測距して背景データを取得する。なお、複数のレーザセンサを使用する場合は、レーザセンサごとに背景データを取得して処理し、背景データを背景DB21(図2)に保存する。図2に示す例では、背景DB21は、角度0.5°ずつに取得された背景データ、即ちレーザセンサ11と背景14との距離を示す測距データを記憶する。
【0017】
次に、測距データ受信処理(S1203)では、レーザセンサ11による物体の測距において、監視時間の経過後においても、経時的に得られる測距データのレベルについて、認識可能レベルまでのレーザ光が反射されているかを判断して、認識可能レベルの場合は測距データから物体の形状を、連続する点の集まりの座標値をポイントデータとしてポイントDB71(図7)に保存する処理をする。ポイントDB71はレーザセンサで検出された物体のデータ(背景データと差分を取ったもの)を、ポイントデータとして連続的に記憶する。なお、ポイントデータは、(角度、距離)データから直行座標系データに変換されたものである。
【0018】
クラスタ処理(S1204)では、ポイントDB71の値に近接した周辺のポイントデータをクラスタと呼ぶ纏まりで区別し、固有の識別情報(ID)を付与して中心座標を求めてクラスタDB91(図9)に保存する。
【0019】
物体存在領域検出処理(S1205)では、消失点DBA81(図8)の各消失点の領域座標と、レーザセンサの座標とを結ぶことによって図形が描かれ、図形毎に領域IDという固有IDを付与して頂点を求め、物体存在領域DBA101(図10)に保存する、物体存在領域を検出する。
表示処理(S1206)では、上記の処理(S1201〜S1205)により求められたクラスタDBA91の中心座標と、物体存在領域DBA101の領域座標より、物体の存在する座標と領域を検知して結果を表示装置133に表示する。
処理(S1207)では、表示後に測距データを基に再度検知を必要とする場合、S1203へ推移して、再度、物体検知を実施し、測距終了する場合は終了が選択される。
【0020】
図11は、物体存在領域にて検出された物体の存在する座標と領域の表示画面例である。
表示画面において、1100は背景、円形に示される位置1101は、クラスタDBA91(図9)の中心座標に示す位置、領域1102は、物体存在領域DBA101(図10)により描かれる三角形状の領域を示している。
【0021】
次に、図23を参照して、物体の形状を連続する点の集まりの座標値とするための動作について説明する。
例えば、一台のレーザセンサを使用した物体検知システムで、監視領域内に3つの物体が存在している例(図3)について説明する。
処理(S2301)は、初期設定の対象となる各DBをクリアする。処理(S2302)は、初期設定終了後、レーザセンサによる測距から測距データが受信までの間において、設定条件による監視をしながら測距開始指示を待つ待機状態である。
【0022】
処理(S2303)は、レーザセンサによる測距開始以降の状態で、予め測距により取得される背景データ21(図2)と経時的に当該角度にて測距される測距データ41(図4)がPC13へ受信され、測距において当該角度に対して照射したレーザ光が物体の素材や色によってレーザセンサ以外の方向にレーザ光が反射又は乱反射し、認識可能レベルまでのレーザ光が得られない場合には、測距データ41(図4)のθ5、θ6に示される'NULL'が表示される。
【0023】
処理(S2304)は、背景データと測距データとにおいて角度や距離が等しい点について、その差分データを抽出する。処理(S2305)は、抽出された差分データの有無を判断し、差分が無い場合はS2310へ推移し、差分データが有る場合は、S2306へ推移する。
処理(S2306)は、レーザセンサ位置DB51(図5)の向き(角度)の値から、測距データが得られる角度が、監視領域の基準方向を回転(例えば、レーザセンサに対して垂直方向に受信した当該角度の測距データを、レーザセンサ位置DB51(図5)の角度の値を補正して、差分データ値(角度、距離)を回転)させる。
【0024】
処理(S2307)は、回転させた角度、距離のデータを、監視領域を直交座標系(X,Y)の点で示されるポイントデータに変換する。
処理(S2308)は、変換したポイントデータより、その監視領域外にある点を削除していく。図6は、変換して得られたポイントデータの様子を示す。直交座標系の値は、監視領域の左上を(0,0)、右下を(4499,3099)とした場合、監視領域の外にある点を削除した状態を示している。
処理(S2309)は、S2305で抽出された差分データが有場合にS2306からS2308までの処理のポイントデータをポイントDBA71(図7)に保存をしている。
【0025】
処理(S2310)は、差分データの有無による処理を経て、測距において当該角度に対してレーザを照射しレーザ光が物体の素材や色によってレーザセンサ以外の方向にレーザ光が反射又は乱反射して、認識可能レベルまでのレーザ光が反射されていない状態の'NULL'表示の含有を判断し、'NULL'が含まれない場合には、物体の形状を連続する点の集まりの座標値をポイントデータとし、ポイントDBA71(図7)に保存し、'NULL'が含まれる場合には、S2311に推移する。
【0026】
処理(S2311)は、認識可能レベルまでのレーザ光が反射されていない状態において、当該角度に対応する背景データの値を読み出してポイントデータに変換した後、レーザセンサ番号とともに領域座標が消失点DBA81(図8)に保存して処理を終了する。
このように、処理(S2301〜S2311)により、レーザセンサによる測距にて経時的に測距データが受信されるごとに、認識可能レベルのレーザ光が反射されていることが判断され、ポイントDBA71及び、物体存在領域DBA101及び消失点DBA81が更新、保存されることで、物体の形状を連続する点の集まりの座標値とする処理が行われる。
【0027】
[実施例2]
図13は、複数のレーザセンサを使用した物体検知システムの例を示す。この例は、2つのレーザセンサ11とレーザセンサ12によって監視領域を照射して、経時的に得られる測距データを受信してPC13に取込み、その測距データより物体の存在位置を処理するものである。PC13の構成及び監視領域にある物体の様子等は、実施例1と同様であるので、ここでは繰り返し述べない。
【0028】
図20は、複数のレーザセンサを使用した物体検知システムの処理を示す。
基本的な処理は、図12に示した、直交座標と角度変換におけるクラスタ検出処理と同様である。
処理(S2001)は、初期設定として監視領域、監視時間、検知条件を設定し、設定条件とレーザセンサ位置の値などを各DBに保存する。処理(S2002)は、変数nを用いて、注目するレーザセンサ番号を”1”に初期化する。
【0029】
処理(S2003)は、変数nのレーザセンサ番号ごとに、測距開始前の段階に監視領域内を背景以外が存在しない(無人または測距対象物が無い状態)において測距した背景データを、背景DB21(図2)に保存する。
処理(S2004)は、背景データ取得処理として、複数のレーザセンサから背景データが取得されるまで、S2020へ推移して定義した変数nの値が更新し、全てのレーザセンサからの背景データ取得が完了した場合はS2005へ推移する。
【0030】
処理(S2005)からは、測距データ受信処理として、変数nを用いて測距における特定のレーザセンサについて、レーザセンサ番号を”1”に初期化する。
処理(S2006)は、レーザセンサによる物体の測距において、監視時間の経過後に受信される測距データを物体の形状を連続する点の集まりの座標値をポイントデータとして、経時的にポイントDBA71(図7)に保存する。
処理(S2007)は、測距データ受信処理として、全てのレーザセンサから測距データが受信されるまではS2021へ推移して定義した変数nの値を更新し、全てのレーザセンサから測距データが受信された場合はS2008へ推移する。
【0031】
処理(S2008)は、クラスタ検出処理として、ポイントDBB151(図15)よりこれに近接した周辺のポイントデータをクラスタと呼ぶ纏まりで区別して固有のIDを付与して、中心座標を求めるクラスタ検出処理をし、クラスタDBB161(図16)に保存する。
処理(S2009)は、消失点DBB171(図17)の各消失点座標と、レーザセンサの座標とを結ぶことによって図形が描かれ、図形ごとに領域IDという固有IDを付与して頂点を求める物体存在領域の検出であり、物体存在領域DBB181(図18)に保存する。
【0032】
処理(S2010)は、物体存在領域DBB181(図18)にデータが存在する場合は、S2011へ推移し、物体存在領域DBB181(図18)にデータが存在しない場合は、S2016へ推移する。
処理(S2011)は、変数nを用いて、特定のレーザセンサ番号を”1”に初期化する。処理(S2012)は、レーザセンサ番号が変数nの、レーザセンサの位置座標と、極座標系におけるレーザセンサ番号が変数nの物体存在領域内である端と端の角度における測距された背景データを直交座標系に変換した位置座標とを結ぶ直線の関数を求める。
なお、実施例2における物体不在領域の直線を求める処理(図26)については、後述する。
【0033】
処理(S2013)は、レーザセンサごとに一次関数の交点座標を求める処理として、全てのレーザセンサから接線情報が取得されるまでは、S2022へ推移して定義した変数nの値を更新し、全てのレーザセンサから接線情報が取得された場合は、S2014へ推移する。
処理(S2014)は、処理(S2012)で求めた直交座標系の各直線より交点を算出し、物体不在領域の四隅の座標位置を求める(図14)。
【0034】
処理(S2015)は、レーザセンサごとの交点座標を物体存在領域DBB181(図18)に保存する。
処理(S2016)は、処理(S2001からS2008)により求めたクラスタDBB161(図16)、また、処理(S2011からS2015)より求めた物体 不在領域を表示する(図19)。
【0035】
処理(S2017)は、測距の終了判断として、検知結果の表示後に同じ背景データに基づき、再度測距データを元に検知をする場合は、S2005に推移して再実行をし、物体検知を終了する場合は終了が選択される。
上記のように、複数のレーザセンサを使用した例によれば、レーザセンサごとに測距データから物体の検知を行うことができるので、一台のレーザセンサを使用した場合よりも詳細な位置までを検知することが可能になる。
【0036】
図26は、物体不在領域の測距データを求める処理を示すフローチャートである。
処理(S2601)は、変数iを用いて、注目するレーザセンサのスキャン角度を”0度”に初期化する。処理(S2602)は、変数fを用いて、認識可能レベルのレーザ光が反射されない乱反射における表示である’NULL’を受信したことを監視するため、このフラグを”0”に初期化する。
【0037】
処理(S2603)は、監視領域内に物体A31、物体B32、物体C33の3つの物体が存在する場合、予めの測距により取得される背景データDB21(図2)と経時的に当該角度にて測距される測距データDB41(図4)がPC13に対して受信され、測距において当該角度に対して照射したレーザ光が物体の素材や色によってレーザセンサ以外の方向にレーザ光が反射して認識可能レベルのレーザ光が反射されていない場合には、測距データDB41(図4)のθ5、θ6に示される'NULL'表示をする。
【0038】
処理(S2604)は、’NULL’が受信されたかの判定として、受信された場合は、S2605へ推移し、受信されない場合は、S2620へ推移する。処理(S2605)は、レーザ光が認識可能レベルで受信されている状態(’NULL’を受信したことを示す変数fが”0”)では、S2606へ推移し、レーザ光が認識可能レベルで受信されていない状態を含む(’NULL’を受信したことを示す変数fが”1”)では、S2611へ推移する。
処理(S2620)は、’NULL’を受信したことを示す変数fが”1“以外の場合は、S2611へ推移する。
【0039】
処理(S2606)は、背景DB21(図2)から特定レーザセンサのレーザ光の角度における背景データを取得する。処理(S2607)は、レーザセンサ位置DB51(図5)から特定レーザセンサの位置データを取得する。
処理(S2608)は、取得した背景データ21(図2)とレーザセンサ位置DB51(図5のデータとを結ぶ直線の一次関数を求める。
処理(S2609)は、’NULL’を取得したことを示す変数fが”0”ならば、S2610へ推移し、同変数fが”1”ならば、S2621へ推移する。
【0040】
処理(S2610)は、’NULL’を取得したことを示す変数fを”0”→”1”に更新する。処理(S2621)は、’NULL’を取得したことを示す変数fを”0”に更新する。
処理(S2611)は、測距データ受信が、レーザセンサの照射スキャン角度が0度から最大角度までスキャンされるまではS2622へ推移し、特定レーザセンサの角度を示す変数iを更新して当該角度に対する照射から、測距データを取得する。
【0041】
[実施例3]
図21は、測距による物体までの距離dを求める例を示す図である。
この例では、物体の形状を連続する点の集まりの座標値であるポイントデータとして認識できることから、測距する物体の大きさやその移動方向に一定の条件を設けることで、レーザセンサから物体までの距離d213を求めることが可能である。
例えば、監視領域211を通路212とし、測距する物体を通行車両214とした場合は、物体の大きさは車格の範囲を想定することができるため、通路212に設定された監視領域211を通行車両214が走行した際に、測距したポイントデータを用いて物体までの距離d213を求めることができる。
【0042】
[実施例4]
図22は、監視領域内の一部に警報領域222を設けた例を示す。
この例では、物体の存在領域と警報領域222のいずれにおいても物体の存在を検知することが可能である。検知システムにおいて、PC13の構成は前述の例と同じであるが、PC13に警報装置221が接続され、警報領域222の座標を警報領域DB241(図24)に保存して管理する点が異なる。これにより、監視領域内の特定領域(警報領域)に侵入者が侵入した時に、警報装置221から警報音を発し、また表示装置133に警報表示することが可能である。
【0043】
警報領域DB241では、警報領域ごとに識別IDが付与され、矩形の警報領域を規定する4箇所の座標情報が領域座標に登録される。
この例において、検知はクラスタの中心座標、もしくは物体の存在する領域がこの警報領域に一部でも重なる場合に侵入者検知とし、ここから警報装置や警告表示などの警報通知手段を動作させることで実現できる。
【0044】
[実施例5]
図25は、レーザセンサを用いた物体検知の動作を示すフローチャートである。
この例は、レーザセンサからの測距結果と、測距データを受信するごとに予め保存した背景データとの比較処理をすることで、物体の存在を検知する。
処理(S2501)は、監視領域、監視時間や検知条件を初期設定として関係するDBに保存する(第1処理)。
【0045】
処理(S2502)は、背景データ取得をするため、監視領域211を背景以外が存在しない無人の状態において測距を実施し、測距完了にて背景データを背景DB21(図2)に保存する第2処理であり、監視領域が変更や再設定された場合は、本処理を実施することで背景データを更新することができる。
【0046】
処理(S2503)は、監視領域を監視時間の経過ごとに、物体までの距離を測距して測距データを取得するが、測距データの反射光が判定可能レベルで測距データが取得された場合には、第2処理で取得した背景データと比較をして、監視領域に存在する物体の形状を連続する点の集まりの座標値として、ポイントDBA71(図7)に保存する(第3処理)。
【0047】
処理(S2504)は、ポイントDBA71(図7)に保存された座標値を近接した周辺データとして纏めて、クラスタと呼ぶ纏まりで区別して固有のIDを付与し、中心座標を求めるクラスタ検出処理を行い、結果をクラスタDBA91(図9)に保存する(第4処理)。この処理において、測距データの反射光が判定レベル以下で測距データが取得されなかったとの判定が経時的に発生しているかを検出する。
【0048】
処理(S2505)は、経時的に反射光が判定レベル以下である状態を検出している場合にレーザセンサへの反射光において乱反射が発生したと判断し、背景データと測距データとの差分を抽出と、消失点DBA81(図8)の各消失点座標と、各レーザセンサ座標とを結ぶことによって描かれ、図形ごとに領域IDという固有IDを付与して頂点を求める物体存在領域検出をして物体存在領域DBA101(図10)に保存することにより、物体の存在領域を検知する(第5処理)。
処理(S2506)により、物体の存在領域を検知から発呼や警告を表示する警報を発信することが可能となる(第6処理)。
以上、幾つかの実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、更に変形したり応用して実施できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1における一台のレーザセンサを使用した物体検知システムの構成例を示す図、
【図2】背景データDBの記録フォーマットを示す図、
【図3】物体検知システムにおいて、監視領域内に3つの物体が存在する例を示す図、
【図4】監視領域内に3つの物体が存在する例における測距データの記録フォーマットを示す図、
【図5】レーザセンサ位置DBの記録フォーマットを示す図、
【図6】変換して得られたポイントデータの様子を示す図、
【図7】ポイントDBの記録フォーマットを示す図、
【図8】消失点DBの記録フォーマットを示す図、
【図9】クラスタDBの記録フォーマットを示す図、
【図10】物体存在領域DBの記録フォーマットを示す図、
【図11】物体存在領域にて検出された物体の存在する座標と領域の表示例を示す図、
【図12】直交座標と角度変換におけるクラスタ検出の処理動作を示すフローチャート、
【図13】実施例2における複数のレーザセンサを使用した物体検知システムの構成例を示す図、
【図14】実施例2における複数のレーザセンサを使用した場合の測距の様子を示す図、
【図15】実施例2におけるポイントDBの記録フォーマットを示す図、
【図16】実施例2におけるクラスタDBの記録フォーマットを示す図、
【図17】実施例2における消失点DBの記録フォーマットを示す図、
【図18】実施例2における物体存在領域DBの記録フォーマットを示す図、
【図19】実施例2における検知結果の様子を示す図、
【図20】実施例2における物体検知システムの処理を示すフローチャート、
【図21】実施例3における測距による物体までの距離dを求める例を示す図、
【図22】実施例4における監視領域内の一部に警報領域を設けた例を示す図、
【図23】実施例1における物体形状を連続する点の集まりの座標値とする処理を示すフローチャート、
【図24】実施例4における警報領域DBの記録フォーマットを示す図、
【図25】実施例5におけるレーザセンサを用いた物体検知の処理を示すフローチャート、
【図26】実施例2における物体不在領域の測距データを求める処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0050】
11:レーザセンサ、 12:レーザセンサ、
13:PC、 131:CPU、 132:DB、 133:表示装置、 134:入力装置、 14:背景、 21:背景データDB、 31:物体A、 32:物体B、 33:物体C、 41:レーザセンサによる測距データ、 51:レーザセンサ位置DB、 71:ポイントDBA、 81:消失点DBA、 91:クラスタDBA、 101:物体存在領域DBA、 151:ポイントDBB、 161:クラスタDBB、 171:消失点DBB、 181:物体存在領域DBB、 211:監視領域、 212:通路、 213:通行車両、 214:距離d、 221:警報装置、 222:警報領域、 241:警報領域DB。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザセンサを用いて対象の領域を照射し、得られた測距データを処理装置で処理することによって物体の位置を検知する物体検知システムであって、
該レーザセンサによって該領域の背景に相当する物体の情報を取得する背景データ取得手段と、該レーザセンサによって該領域内にある物体の経時的な測距データを取得して該物体の位置を検知する位置検知手段と、該領域における該物体の存在位置を検知する物体検知手段と、を有することを特徴とする物体検知システム。
【請求項2】
該位置検知手段は、予め取得した背景データと、経時的に得られる測距データとを比較処理して設定される該領域の物体の位置を特定する処理手段を有し、
該物体検知手段は、予め設定された監視時間が経過した後において経時的に測距データが得られない場合を、該レーザセンサ以外の方向にレーザ光が乱反射して測距における認識可能レベルまでのレーザ光が反射されていないと判断する手段を有することを特徴とする請求項1の物体検知システム。
【請求項3】
更に、物体が該領域内の特定の領域に進入した場合に警報を発する警報通知手段を有することを特徴とする請求項1又は2の物体検知システム。
【請求項4】
レーザセンサを用いて所定の領域を照射し、得られた測距データを処理装置で処理することによって物体の位置を検知する物体検知方法であって、
該レーザセンサを用いて該領域の背景に相当する物体の情報を背景データとして取得するステップと、該レーザセンサを用いて該領域内にある物体の測距データを取得するステップと、取得した該測距データと該背景データの差分を計算して、該物体の存在位置を算出するステップと、該物体の形状を連続する座標値であるポイントデータとし、これに近接した周辺ポイントデータの中心座標であるクラスタを検出するステップと、該クラスタのデータを用いて、該領域の物体の存在位置を検出するステップと、を有することを特徴とする物体検知方法。
【請求項5】
前記物体の存在位置を算出する処理は、予め測距して背景DBに保存された背景データと、経時的に得られる測距データとを比較処理して設定される監視領域の物体の位置を特定する検知処理を含み、
前記クラスタを検出する処理は、物体の形状を連続する座標値であるポイントデータとし、これに近接した周辺ポイントデータをクラスタと呼ぶ纏まりで固有IDを付けて、そのクラスタの中心座標を求めクラスタ検出をする処理を含むことを特徴とする請求項4の物体検知方法。
【請求項6】
前記物体の存在位置検出の処理において、予め設定された監視時間が経過した後において経時的に測距データが得られない場合、レーザセンサ以外の方向にレーザ光が乱反射して測距における認識可能レベルまでのレーザ光が反射されていないと判断する処理を含むことを特徴とする請求項4又は5の物体検知方法。
【請求項7】
更に、物体が該領域内の特定の領域に進入したと判断した場合に、警報を発するステップを有することを特徴とする請求項4乃至6のいずれかの物体検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−85927(P2009−85927A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259887(P2007−259887)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】