特性改善された防食層
本発明は、亜鉛イオンおよびクロムイオンの共同電解析出によって鋼材上に被着された亜鉛・クロム被膜と、前記被膜上に被着された実質的に合成樹脂からなる有機薄膜被膜とを有する鋼材腐食を防止するための防食層、ならびに亜鉛・クロム防食被膜のラッカ密着性の改善方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特性を改善された防食層に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州公開特許第0566121号明細書(特許文献1)から、卓越した密着強さを有する亜鉛・クロム合金めっき鋼板の製造方法が知られている。この方法において、鋼板の表面は一定のモル濃度比で亜鉛イオンとクロムイオンとを含んだ酸性めっき浴を使用してめっきされるが、この場合、少なくとも1個の三重結合を有した少なくとも1つの非イオン性有機添加剤が含まれている。
【0003】
“Journal of Applied Electrochemistry”,30,p870〜822“Role of polyethylene glycol in electrodeposion of zinc−chromium alloys”(非特許文献1)から、ポリエチレングリコール(PEG)が亜鉛・クロム合金電着時の添加剤として知られている。
【0004】
カナムラ,ティ(Kanamura,T.)、スズキ,エス(Suzuki,S.)およびアライ,ケイ(Arai,K.)の“Corrosion resistance of ZN−CR Alloy electrocoated Steel Sheets”(日特許文献2)から、特に自動車鋼板につき、さまざまな種類の亜鉛系被膜形成によって防食性を改善することが知られているが、この場合、被膜厚さの高まりは耐食性を高めはするが、同時に、被加工性と溶接性とを低下させる旨が論じられている。この問題の解決は優れた耐食性を有する薄層被膜被覆された帯鋼を作製する点にあろう。そのため、被膜に5〜20%のクロム成分を含んだ亜鉛・クロム合金のテストが行われ、亜鉛・クロム合金は相対的に薄層の被膜被覆が行われる場合にも優れた耐食性を有する材料であり、20g/m2の被膜被覆ですでに非常に良好な結果が得られる旨の結論が得られた。さらに、亜鉛・クロム被膜は十分な陰極防食を実現すると共に、縁部腐食の防止に効果的である。またさらに、ZnCr被膜のリン酸塩被膜処理適性は不十分である旨が述べられている。
【0005】
欧州公開特許第573015号(特許文献2)から、片面または両面が亜鉛または亜鉛合金で被膜被覆された、クロメート被膜を有した表面と、前記表面上に被着された被膜厚さ0.1〜5μmの有機被膜とからなる有機被膜被覆複合鋼板が知られている。この有機被膜は、有機溶剤、分子量500〜10,000のエポキシ樹脂、芳香族ポリアミドおよび促進剤としてのフェノールまたはクレゾール化合物からなる一次組成物で形成されている。この有機被膜は、0.1μm以下の薄膜被膜被覆では薄すぎて防食性を達成することができないため、0.6〜1.6μmの乾燥被膜厚さで被着される。したがって、この有機被膜は、この被膜全体として、高い防食率を有している。被膜厚さが5μmを越えると、溶接性に影響が生ずる。
【0006】
ドイツ公開特許第3640662号明細書(特許文献3)は、亜鉛引きまたは亜鉛合金引き鋼板と、前記鋼板の表面に形成されたクロム酸塩被膜と、前記クロム酸塩被膜上に形成された樹脂組成物被膜とを含んでなる表面処理鋼板に関する。この樹脂組成物は、エポキシ樹脂とアミンとの反応によって製造されたベース樹脂ならびにポリイソシアネート化合物からなっている。この公知の被膜も、被膜厚さがそれを越えると溶接適性が大幅に低下するために、約3.5μm以下の乾燥被膜厚さでしか被着することができない。
【0007】
ドイツ特許第3412234号明細書(特許文献4)から、電解薄膜亜鉛めっきまたはリン酸塩被膜処理またはクロメート処理されて成形される鋼板用の、滑り性と溶接性とを有する防食プライマが知られており、この場合、この防食プライマは、60%以上の亜鉛、アルミニウム、グラファイトおよび/または亜硫酸モリブデンならびにその他の防食顔料、33〜35%の有機結合剤ならびに約2%の分散助剤または触媒からなっている。有機結合剤としては、ポリエステル樹脂および/またはエポキシ樹脂ならびにそれらの誘導体が提案される。この種の防食プライマは“Bonazinc 2000”の名称でBASF社によって市販されている。ただし、この種の被膜層は十分な点溶接適性がなく、焼付け温度が高すぎるため、最近の鋼材の多くにはもはや使用不可である。さらに、ラッカ密着性は必ずしも十分なものではない。
【0008】
欧州特許第1030894号明細書(特許文献5)から、金属表面を被膜被覆するための導電性と溶接性を有する防食組成物ならびに金属表面を導電性有機被膜被覆するための方法が知られている。前記特許文献の目的は、自動車工業の要求を満たす被膜組成物を提供することであり、前記組成物をコイル被覆法に適したものとし、低い焼付け温度と、亜鉛めっき鋼板の白色腐食発生の顕著な減少を達成可能とし、金属基材への有機被膜の密着性を改善し、また、クロメート処理時の薄層クロム被覆に際しても、好ましくはクロム無し前処理法に際しても、十分な防食性が達成されるようにすることであり、さらに、点溶接適性が実現されると共に、その他の防食手段たとえば空洞目塗りを不要にすることである。そのため、前記被膜は10〜40重量%の有機結合剤、0〜15重量%のケイ酸塩ベースの防食顔料、40〜70重量%の粉末状の亜鉛、アルミニウム、グラファイトおよび/または亜硫酸モリブデンならびに0〜30重量%の溶剤を含み、前記有機結合剤は少なくとも1つのエポキシ樹脂と、グアニジン、置換グアニジン、置換尿素、環式第三アミンおよびこれらの混合物からセレクトされた少なくとも1つの硬化剤ならびに少なくとも1つのブロックトポリウレタン樹脂を含んでいる。
【0009】
ドイツ公開特許第10256286号明細書(特許文献6)から、たとえば自動車工業において二次加工される鋼板の量産低摩耗成形に適した防食プライマが知られている。この被膜は、亜鉛または亜鉛含有合金被膜と、防食被膜を表すと共に、続くプライマの密着生地を表す薄層前処理被膜と、厚さ0.5〜10μmの溶接プライマ被膜とで片側または両側さえ被覆されていても、良好な溶接を可能とすべく十分な導電性を有していなければならない。ここに挙げられた亜鉛または亜鉛含有合金被膜は自動車製造において通例の合金被膜、電解亜鉛めっき被膜、加熱亜鉛めっき被膜(アルミニウム成分量0.2%)、ガルファン(アルミニウム成分量5%)、ガルバニールトおよびガルバリューム(約半分の亜鉛およびアルミニウム成分量)であってよいであろう。前記課題は、耐食性ある、低摩耗成形可能な、導電性および電気溶接適性ある高分子被膜を被着するための、樹脂と無機粒子とを含んだラッカ状混合物によって解決される。
【0010】
欧州公開特許第0607452号(特許文献7)から、自動車鋼板用の亜鉛・クロム被膜が知られており、前記文献には、鋼材に被着された亜鉛・クロム被膜は従来の亜鉛ベースの合金被膜に比較して、当初状態において他の被膜よりも耐食性が高いという利点を有することが記載されている。ただし、亜鉛・クロム合金被膜は改善された耐食性を有するとしても、これは純然たる鋼板材料に適用できるにすぎず、(成形加工の実施によって)自動車ボディー外側面の耐食性は劣ると述べられている。これは亜鉛・クロム被膜の成形性の欠如と関連している。さらに、いずれの被膜も被膜重量が高まると耐食性が改善されるが、まさに亜鉛・クロム被膜の場合には逆効果となり、被膜厚さないし被膜重量の高まりに反比例して成形性が低下すると述べられている。またさらに、亜鉛・クロム被膜は剥離に対して特に敏感であると述べられている。加えてさらに、亜鉛・クロム被膜の耐食性はクロム含有量と共に高まるが、これは、金属基材への被膜密着性がクロム含有量の高まりと共に低下するため、不利であるとも述べられている。上記の諸問題は亜鉛・クロム被膜に特別な相構成が選択されることによって解決されるが、その際、六方晶構造が達成され、格子定数は一定の値を有することになる。ただし、この種の格子定数が維持される場合にもこの種の亜鉛・クロム被膜が自動車工業における使用が不可能となる短所を有していることも確認された。
【0011】
欧州特許第0777763号明細書(特許文献8)から、金属処理用組成物とこの組成物の被着方法が知られている。この特許文献において、ラッカ密着性の改善を目的として中間被膜被着が提案され、そうでない場合には通例の自動車鋼板クロメート処理は回避される。
【0012】
この種のクロメート処理は欧州公開特許第0630993号(特許文献9)からラッカ塗り前の前処理として知られている。この種のクロメート処理は今日でもなお通例であり、上記欧州特許第0777763号(特許文献8)から知られているような別の方法は普及していない。
【0013】
欧州公開第第0285931号(特許文献10)から、亜鉛・クロム被膜が析出被着された被膜被覆鋼板が知られている。この場合、ラッカ塗り前に一次亜鉛・クロム被膜は、従来のリン酸塩処理被膜との結合特性を改善すべく、好ましくは付加的な亜鉛被膜ないし亜鉛・鉄被膜、好ましくは60重量%を越える鉄分を含んだ被膜で被覆されると述べられている。そういう意味では、ここでも、亜鉛・クロム被膜は実際にリン酸塩被膜処理不能であると述べられている。
【0014】
日本公開特許H09−276789号明細書(特許文献11)から有機複合めっき鋼板が知られている。この場合、亜鉛・ニッケル合金めっき被膜、亜鉛・鉄合金めっき被膜または亜鉛・クロム合金めっき被膜を有した鋼材が挙げられており、これらの合金めっき被膜の上にクロメート処理が実施され、さらに有機被膜が被着されている。ただし、この場合、有機被膜にはクロム酸ストロンチウム、クロム酸カルシウム、クロム酸亜鉛、クロム酸バリウムまたはクロム酸アンモニウムならびに重クロム酸アンモニウムが含まれている。
【0015】
日本公開特許H09−277438号明細書(特許文献12)から同じく溶接性を有する有機複合めっき鋼板が知られている。この場合、被膜の耐食性ならびに被膜被覆された鋼板両面における鋼板とラッカ被膜との間の密着性の改善を目的として、リン酸化合物を主体とする化学処理が行われる。特に、めっきされた、つまり亜鉛・鉄合金、亜鉛・ニッケル合金または亜鉛・クロム合金被膜被覆された鋼板のリン酸処理が実施され、その表面にリン酸化合物の結晶が析出される。
【0016】
日本特許第07292480号明細書(特許文献13)から、被膜被覆された鋼板を、続くリン酸塩被膜処理を可能とすべく、水溶性ポリマーで被覆することが知られている。
【0017】
実質的に、ラッカ塗り前に防食プライマが塗付され、続いてリン酸塩被膜処理またはクロメート処理あるいはその両方で処理される亜鉛めっき鋼板が適切であることが実証された。ただし、これらの被着被膜層において、防食プライマの形の付加的な有機被膜のせいで溶接適性が損なわれるのが短所である。亜鉛めっき被膜にあっては、フランジエリアにおける十分な防食性を保証するのに、防食プライマ被覆は不可欠である。
【0018】
さらに、鋼板への亜鉛・クロム被膜の被着使用がテストされた。この場合、好適な特性として無被覆状態で比較的高い耐食性が認められ、さらに、陰極防食効果は亜鉛めっき被膜のそれと同様であった。耐食性は非常に高く、無ラッカ塗りフランジエリアにおいても付加的な防食プライマの塗設を不要とすることができる。
【0019】
さらに、亜鉛・クロム被膜にあっては、必然的に、当該被膜のクロメート処理または少なくとも1つのその他の前処理が実施されなければならない。ただし、クロメート処理は毒性の高い六価クロムイオンが介在するために非常に問題がある。その他の前処理は、たとえば欧州公開特許第0285931号(特許文献10)または欧州特許第0777763号(特許文献80)明細書から知られているようなコスト高な中間工程を記載している。
【0020】
ただし、亜鉛・クロム被膜は特に自動車工業用鋼板の被膜被覆については、リン酸塩被膜処理適性が欠如しているために、普及しなかった。これは、リン酸塩被膜処理に際して亜鉛・クロム被膜上に不均質なリン酸塩被膜が形成されることに起因している。表面には、厚いリン酸塩被膜被着エリアとリン酸塩被膜無被着エリアとの混在が認められる。
【0021】
こうした不均質な被着は、純亜鉛被膜あるいはまた、リン酸塩被膜処理に付されなかった亜鉛・クロム被膜に比較してさえも、ラッカ密着性を低下させる。リン酸塩被膜処理の省略は亜鉛・クロム被膜へのラッカ密着性を改善することは確かであるが、ただし、自動車分野への使用には、リン酸塩被膜処理プロセスが必ず常にボディー全体に実施されるため、鋼材表面が不適な影響を受けることなくリン酸塩被膜処理浴を通過し得ることが保証されなければならない。
【0022】
重大な短所は、さらに、クロム含有量ならびに亜鉛・クロム被膜の厚さに比例して大きくなる、鋼板成形時の損耗である。この場合、成形時の損耗は一部非常に大きく、特に強度な成形が行われるエリアでは損耗は基材にまで達するため、好適な防食特性はもはや備えていないことになる。
【0023】
ただし、亜鉛・クロム被膜は、亜鉛めっき被膜の場合と異なって、フランジやつばエリアにおいても十分な防食性が常に保証されているために防食プライマを必要としない点が利点となる。
【0024】
亜鉛被膜上には、既述したように、リン酸塩被膜処理前にさらに、続くラッカ塗り時にラッカが侵入しないエリアとくにフランジエリア、つばエリア等の防食性の向上に資する防食プライマ(KSP)が被着される。したがって、亜鉛被膜上に付された防食プライマはフランジ腐食を改善するにすぎない。ラッカ腐食浸透および縁部腐食に際する改善は認めることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】欧州特許第0566121号明細書
【特許文献2】欧州公開特許第573015号
【特許文献3】ドイツ公開第3640662号明細書
【特許文献4】ドイツ特許第3412234号明細書
【特許文献5】欧州特許第1030894号明細書
【特許文献6】ドイツ公開第10256286号明細書
【特許文献7】欧州公開第0607452号明細書
【特許文献8】欧州特許第0777763号明細書
【特許文献9】欧州公開特許第0630993号
【特許文献10】欧州公開第0285931号
【特許文献11】日本公開特許H09−276789号明細書
【特許文献12】日本公開特許H09−277438号明細書
【特許文献13】日本特許第07292480号明細書
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】“Role of polyethylene glycol in electrodeposition of zinc−chromium alloys”、Journal of Applied Electrochemistry,30,p.870〜822。
【非特許文献2】Kanamura,T.、Suzuki,S.およびArai,K.著、“Corrosion resistance of ZN−CR Alloy electrocoated Steel Shetts”。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の目的は、リン酸塩被膜処理に続いてラッカ塗設が行われる通例のラッカ塗付法による通例のラッカ塗りレーンの通過時に優れたラッカ密着性がもたらされると共に、さらに、亜鉛被膜または亜鉛・クロム被膜に比較して縁部腐食が改善され、さらにラッカ腐食浸透が防止される、特性改善された防食層を製造することである。さらに、環境上の観点から、改善された被膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
前記課題は請求項1記載の特徴を有する防食層によって達成される。
【0029】
その好適な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0030】
さらにもう一つの課題は、ラッカ密着性の改善された防食層の作製方法を提供することである。この課題は請求項17記載の特徴を有する方法によって達成される。
【0031】
その好適な実施形態は請求項17の従属請求項に記載されている。
【0032】
本発明によれば、亜鉛・クロム被膜が鋼板上に電着され、続いて、無クロメート有機薄膜被膜が被着される。前処理および特に前記被膜のクロメート処理つまり六価クロムイオンの使用は実施されない。
【0033】
結果として、卓越したラッカ密着性と、特に成形に際する非常に優れた機械的特性とを有する防食層が達成される。
【0034】
この場合、前記亜鉛・クロム被膜は、耐食性の実現に本来必要とされると考えられるよりも特に薄層に形成される。前記亜鉛・クロム被膜は防食プライマと共に非常に薄層に形成されることができ、そのため損耗問題は生ぜず、それにもかかわらず十分な防食性が保証される。
【0035】
同じく、特に通例の防食プライマからなる前記有機被膜も、防食プライマが亜鉛被膜上で通例の防食効果を達成するのに必要とされると考えられるよりも薄層に形成される。本発明によれば、前記有機被膜はクロメートを含んでいない。
【0036】
一方で、亜鉛・クロム被膜には元来余計な防食プライマを被着するという先入観の克服により、さらに他方で、効果の実現に本来必要とされると思われるよりも薄層の被膜の使用によって、驚くべき相乗効果がもたらされる。
【0037】
たとえば、通例の亜鉛被膜の耐礫衝撃性および特にラッカ密着性は既知であるが、この場合、亜鉛・クロム被膜の耐礫衝撃性とラッカ密着性は亜鉛被膜よりも劣っている。
【0038】
通常の亜鉛被膜の場合、所定の値に一致している成形性ならびに損耗も、同様な亜鉛・クロム被膜にあっては一般に劣っている。
【0039】
従来の技術では、亜鉛被膜上に防食プライマ被膜を被着してもその耐礫衝撃性およびラッカ密着性は改善されず、実質的に同じままである。ただし、この種の被膜層の成形性は摩擦特性の変化によって純亜鉛被膜層に比較して改善される。
【0040】
しかしながら、薄層の亜鉛・クロム被膜と実質的に合成樹脂ベースの有機被膜と特に防食プライマ被膜とからなる本発明による被膜層構成では、耐礫衝撃性およびラッカ密着性は、純亜鉛被膜または亜鉛被膜+防食プライマ被膜の耐礫衝撃性およびラッカ密着性よりも極めて優れていることが判明した。
【0041】
純亜鉛・クロム被膜の成形性は劣っているが、他方、本発明による有機被膜被覆された亜鉛・クロム被膜層の成形性は少なくとも亜鉛被膜+防食プライマ被膜の成形性と同程度に優れている。
【0042】
ただし、相乗効果は上述した摩擦特性値についてのみならず、化学的特性値とりわけフランジエリア、縁部および掻き傷のそれぞれの腐食についても生ずる。
【0043】
通例の亜鉛被膜を基準として、亜鉛・クロム被膜は、すでに冒頭に述べたように、上述した3種の腐食形態(フランジ、縁部、掻き傷)の耐食性の点で改善をもたらしていたので、そのために、従来の技術では亜鉛・クロム被膜上にはなんらの有機被膜も被着されなかった。亜鉛被膜に防食プライマを被着する場合には、確かにフランジ腐食の若干の改善は生ずるが、縁部および掻き傷エリアの耐食性は純亜鉛被膜に比較して変わるところがない。これは防食プライマの利点が、続くラッカ塗りに際してラッカが侵入しないエリアにしか認められないことに由来している。これはフランジエリアである。
【0044】
従来技術からは推定できなかったことであるが、特に薄層に形成された亜鉛・クロム被膜と防食プライマ被膜とを組み合わせる場合には、耐食性は、純亜鉛・クロム被膜に比較して大幅に高まると共に、純亜鉛被膜または亜鉛被膜+防食プライマ被膜に比較しても、亜鉛・クロム被膜を一方とし防食プライマ被膜を他方とした両者の優れた特性の単なる組み合わせによって導かれるもの以上大幅な高まりを示すことが判明した。
【0045】
前記亜鉛・クロム被膜は1〜10μm、好ましくは2.0〜6μmの厚さを有していてよく、その際、クロム含有量は1〜25%、好ましくは3〜10%である。前記亜鉛・クロム被膜上に被着された、たとえば防食プライマの類もしくはそれ自体として通例の防食プライマを使用した有機薄膜は0.5〜10μm、特に1〜8μm、たとえば2〜6μmの厚さを有している。ただし、被膜厚さがたった0.5μmでしかない場合にも、本発明に際して生ずる相乗効果が達成される。
【0046】
その限りで、4〜6μmの被膜層厚さが可能である。厚さ4〜6μmのこの種の防食層だけで、厚さ7ないし7.5μmの亜鉛被膜に比較して、耐食性ならびに摩擦特性の改善が達成される。さらに2〜6μmの通例の防食プライマ被膜が被着された厚さ7.5μmの亜鉛被膜層でも本発明による前記防食層の卓越した特性に達することは不可能である。
【0047】
通例の亜鉛被膜に防食プライマ被膜を被着する場合には、特別な化学薬品(通例、クロメート)による前処理が実施され、続いて、防食プライマ被膜が被着される。この化学的前処理が行われない場合には、防食性とラッカ密着性とに欠陥が生ずる。驚くべきことに、亜鉛・クロム被膜の場合には、この種の化学的前処理とくにクロメート処理または無クロメート前処理とくにリン酸塩処理を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】さまざまな被膜層系の耐礫衝撃性を示す棒グラフである。
【図2】17の比較例の構成を示す表である。
【図3】テスト用試験片の概略的な構造を示す図である。
【図4】耐候テストの方法フローを示す図である。
【図5】8個の損耗テスト比較試験片を示す表である。
【図6】図5の表に基づく損耗を示す棒グラフである。
【図7】8個の異なった試験片の礫衝撃テスト時剥離面積率を示す表である。
【図8】図7の表の結果を対照するための棒グラフである。
【図9】掻き傷腐食浸透テスト結果を示す表である。
【図10】図9に基づく表の結果を示す棒グラフである。
【図11】フランジ腐食テストの結果を示す表である。
【図12】図11に基づく結果を示す棒グラフである。
【図13】さらにその他のテスト例の縁部腐食浸透を示す表である。
【図14】図13に基づく表の結果を示す棒グラフである。
【図15】結果のまとめを表形式で示したものである。
【図16】結果のまとめを表形式で示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、図面を参照し、複数の図及び種々の実施例を用いて本発明を説明する。
比較例としての試験片は以下のようにして作製された。
【0050】
I.ZnCr被膜の析出
試験片はフロー速度調節式のラボコーティングセルでコーティングされる。軟鋼(厚さ0.8mm)からなる、面積150×100mmの鋼板がコーティングされる。電解液の作製には以下の化学物質が使用される。
硫酸亜鉛七水和物: ZnSO4×7H2O
硫酸クロムカリウム十二水和物: KCr(SO4)2×12H2O
硫酸: H2SO4(98%)。
【0051】
例示試験片の析出のための正確な濃度は図2に挙げられている。電解液のpH値は2であり、温度40℃にて析出される。
有機薄膜の被着はドクタを用いて行われ、その後に被膜は30秒間にわたり、対象温度250℃にて炉中で硬化される。
析出にあたり、添加剤としてポリエチレングリコール6000(PEG)が加えられた。有機薄膜(防食プライマ被膜、KSP)はHenkel KGaA社の製品“Granocoat ZE”からなり、この場合、表面の前処理は同じくHenkelKGaA社の製品“Granodine1456”で行われた。後に挙げた方の前処理は、結晶が析出されるのではなく、非晶質化成被膜であることから、クロメート処理またはリン酸塩被膜処理の意味の前処理ではない。
この前処理は本発明によれば行われなくともよい。
【0052】
II.有機薄膜被膜被覆の一般的説明
有機薄膜被膜は大規模コイル被覆装置によりインラインにて亜鉛めっき鋼材に被着される。これは、溶接性、成形性および防食効果に関して優れている。
この種の薄膜被膜は好ましくは5重量%の導電粒子(たとえばZn、Fe、FePなど)を含んでいる。被膜はラッカ状であって、樹脂ベース(ポリウレタン、エポキシ樹脂など)の配合物であってよい。その他の通例の成分は、ポリエステル、グアニジン誘導体、尿素、メラミン樹脂、アミン(環式および芳香族)およびアルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびヘキサンジオール)である。本発明によれば、無クロメート薄膜被膜のみが使用された。
有機薄膜の被着前に鋼板は、表面に薄膜の密着性を改善する化成被膜を生成する溶液で処理される。これらの系は通例、ヘキサフルオロチタン酸塩、ジルコン酸塩、リン酸塩およびマンガン塩をベースとしている。この防食被膜はいわゆる無水洗プロセスで被着される。この場合、処理液は表面に被着され、スクィーズされて、乾燥させられる。リン酸塩被膜処理とは異なり、リン酸塩結晶は形成されず、リン酸塩からなる薄い非晶質被膜層が形成される。
【0053】
III.試験片の処理(KSPに先立つ前処理)
この処理は、既述したように有機薄膜が被着される前に、当該液への浸漬、続いての試験片のスクィーズおよび非晶質防食被膜を形成させるための70℃にて5秒間の乾燥によって行なわれた。
【0054】
IV.ラッカ塗り
耐礫衝撃性、掻き傷/縁部腐食浸透およびフランジ腐食に関するテストのために、試験片は自動車製造において通例の方法で処理される。
a)浄化:
先ず、弱アルカリ洗浄剤(pH11)にて浄化が行われる。この場合、浄化はHenkel KGaA社の製品“Ridoline 1556”を用い、55℃にて5分間実施される。続いて、試験片は水洗いされる。
b)活性化:
化成被膜層の生成ないし活性化のために、試験片はHenkel KGaA社の商品名“Fixodine 50 CF”によるリン酸チタニルナトリウムのコロイド溶液(5g/l)中で活性化される。
c)リン酸塩被膜処理:
続いて、試験片は硝酸塩反応促進されたトリカチオン・リン酸塩溶液中でリン酸塩処理される。この処理は50℃にて4分間にわたって行われる(製品名称:Granodine 958)。
d)ラッカ塗り:
試験片は、最後に、PPGの電気浸漬ラッカ“viroprime”で厚さ25μmまでラッカ塗りされる。
【0055】
V.テストの実施
V.1 損耗
直径66mmの無ラッカ塗り円形試験片から小鉢が絞り成形される。絞り比は2であり、つまり、直径33mmの小鉢が結果する。この場合、絞り速度は100mm/秒である。深絞り加工前後の重量差が小鉢周面の被覆層に関係させられて、損耗百分率として表される。このテストは成形時の損耗を表し、図5および6に示されている。
【0056】
V.2 腐食テスト
V.2.1 フランジ構造
フランジエリアの腐食をシミュレーションするため、10×10cmの試験片の半分が同じ大きさのガラス板と接着される。試験片とガラス板との間の間隔は120μmである。試験片の寸法は図3から看取される通りであり、この場合、水平方向寸法は、面の縁部腐食浸透を調べるため、105mmであってもよい(たとえば、図3左まくれ上向き、ないし右下向き)。
【0057】
V.2.2 耐候テスト
試験片は10週間にわたりVDA621−415に準拠した耐候テストに付され、特に10サイクルにわたって連続実施される(1サイクル=7日間)。この耐候テストは、DIN50021 SSに基づく塩水噴霧テストと、DIN50017に基づくKFWテストと、DIN50014に基づく乾燥相とのコンビネーションを表している。方法フローは図4に示されている。
【0058】
V.2.3 礫衝撃
IVに準拠して作製されたラッカ塗り試験片は腐食テストの実施前後にDIN55996−1に準拠して礫衝撃が加えられる。剥離したラッカ面積は画像分析によって測定される。
【0059】
V.2.4 掻き傷腐食浸透
ラッカ塗り試験片は腐食テスト実施前に基材鋼に達するまでの掻き傷がつけられる。腐食テスト後に、腐食浸透されたラッカが取り除かれて、腐食浸透された掻き傷の幅が測定される。
【0060】
V.2.5 縁部腐食浸透
腐食テスト後に、腐食浸透されたラッカが試験片縁部から取り除かれて、縁部から無傷のラッカまでの腐食浸透されたエリアの幅が測定される。
【0061】
V.2.6 フランジ腐食
組み付けられたガラスフランジが腐食テストに付され、週ごとにチェックされる。ガラス板の下に最初の鋼材腐食生成物(赤錆)が現れるまでの経過週が測定される。
【0062】
VI.結果
損耗試験(図5、6)において、異なった8個の試験片が比較対照された。試験片1および5はクロムを含まない、厚さ7.5μmの電解亜鉛めっき被膜を有する鋼材試験片であり、試験片1は有機被膜を含まず、試験片5は厚さ3μmの有機被膜を含んでいる。有機被膜形成された試験片の損耗は純亜鉛めっき鋼材試験片の損耗よりも8倍高いことが認められる。これに対して、試験片2および6は亜鉛・クロム比94:6、試験片3および7は亜鉛・クロム比90:10、試験片4および8は亜鉛・クロム比86:14でそれぞれ作製された。この場合、亜鉛・クロム被膜の厚さはそれぞれ2.5μmであり、試験片2、3および4には有機被膜は被着されず、試験片6、7および8には厚さ3μmの有機被膜が被着された。この場合、有機被膜としては特に防食プライマが考えられている。試験片2、3および4にあっては、クロム含有量の増加と共に、予測どおり、損耗は大幅に増大するが、他方、クロム含有量が増加しても3μmの有機被膜が被着されている場合の損耗は実質的に同じままである。
【0063】
したがって、従来の亜鉛めっき被膜上に有機被膜が被着された場合には(試験片5)、損耗は(劇的に)高まるが、他方、亜鉛・クロム被膜の場合の損耗挙動は、明らかにクロム含有量とは関係なく、極めて驚くべきことにはまったく反対に挙動し、つまり、損耗損失は劇的に減少する。こうした挙動はまったく予測されなかった。なぜなら、有機被膜が被着されていない亜鉛・クロム被膜の場合の損耗は、従来公知であるように、クロム含有量の増加と共に激しく増大し、さらに同じく公知であるように、防食プライマで処理された純電解亜鉛めっき被膜の場合の損耗も同じく激しく増大するからである。損耗は今や有機被膜の損耗によって規定され、亜鉛・クロム被膜の損耗とは無関係である。
したがって、本発明は、損耗に関して、専門的な考察に反する結果をもたらしている。
【0064】
VI.2 礫衝撃
またもV.1の8個の試験片と同じ構成の8個の試験片が使用された(図7参照)。礫衝撃テストにおいて、純亜鉛めっき被膜を有する試験片1および5は、有機被膜(KSP)が存在するか(試験片5)、存在しないか(試験片1)の事実にかかわりなく、同じ剥離挙動を示している。クロム含有量が徐々に増加する亜鉛・クロム被膜を有する試験片2、3および4は、クロム含有量が増加すると共にもともと脆性も高まるために、公知の亜鉛・クロム被膜が示す礫衝撃挙動を示している。予測どおり、クロム含有量が増加すると共に剥離面積が増大することが確認された。亜鉛・クロム比86:14の場合には、純電解亜鉛めっき被膜の場合よりも剥離面積は4倍以上大きい。
【0065】
KSP被膜は礫衝撃挙動に関して純電解亜鉛めっき被膜の場合と比較してなんらの相違ももたらさないが、他方、KSP被膜は亜鉛・クロム被膜の場合にあってはクロム含有量とは無関係にきわめて驚くべきことに剥離面積の減少をもたらし、この場合、剥離面積は厚さ7.5μmの純電解亜鉛めっき被膜の場合の半分の大きさでしかない。亜鉛・クロム被膜上に被着された有機被膜が有するこうした驚くべき効果は、特に亜鉛・クロム比86:14の被膜上に有機被膜が被着されている場合に顕著である。
【0066】
上記の剥離面積は、有機被膜の被着されていない同一組成の亜鉛・クロム被膜に比較して、まさしく1/8である。
この強力な効果もまた、通例のように被着された防食プライマ被膜を有する電解亜鉛めっき被膜の挙動からも予測不能である。リン酸塩処理工程を通過する、防食プライマ被膜を持たない亜鉛・クロム被膜は礫衝撃テストにおいてもっと劣ったラッカ密着性を示す。
【0067】
VI.3 掻き傷腐食浸透(図9、10参照)
総計8個の試験片のうち試験片1および5はまたも厚さ7.5μmの純電解被着亜鉛めっき被膜を有している。一方は有機被膜を有し(試験片5)、他方は有機被膜を有していない(試験片1)。この場合、有機被膜は掻き傷腐食浸透になんらの影響も示していないが、これは、電解被着亜鉛めっき被膜の場合にまさに通例使用される防食プライマ被膜にとって、公知の事実である。
【0068】
被膜厚さ2.5μmで、クロム含有量が徐々に増加する亜鉛・クロム被膜を有する3個の試験片の場合、クロム含有量の増加と共に腐食浸透の有意な増大を観察することができる。2個の試験片につき、腐食浸透は総じて、全体として3倍の厚さを有する純亜鉛めっき被膜の場合よりもなお低いが、このことは相対的に薄層の亜鉛・クロム被膜の著しい防食効果を示している。ただし、クロム含有量14%の第3の試験片は掻き傷腐食浸透に関しても純亜鉛めっき被膜より若干劣っている。
【0069】
驚くべきことに、掻き傷腐食浸透の場合にも、有機被膜は亜鉛・クロム被膜と協働してまったく反対の挙動を示す。クロム含有量の増加と、厚さ3μmの有機被膜とによって、掻き傷腐食浸透に関する挙動は改善すらされ、あるいはクロム含有量が高くともその挙動は同じままである。これは専門家の予測にまったく反しており、この場合、特にクロム含有量が高い場合に、相対的に薄層の亜鉛・クロム被膜と有機被膜との間に明らかな相乗効果が観察される。
【0070】
VI.4 フランジ腐食(赤錆発生まで)(図11および12参照)
フランジ腐食テストについても、また、8個の試験片が使用され、この場合、試験片1および5は鋼材に被着された厚さ7.5μmの純電解亜鉛めっき被膜を有しており、一方は有機被膜を有し(5)、他方は有機被膜を有していない(1)。フランジ腐食の場合、防食プライマ被膜によってフランジ腐食を効果的に低下させることができるとの公知の事実が顕著になった。これは、従来の技術において、純亜鉛めっき被膜の場合に防食プライマ被膜を使用する根拠ともなっている。
【0071】
ただし、試験によって、これまで亜鉛・クロム被膜の場合に防食プライマ被膜ないし有機被膜が適用も思料もされなかった理由も明らかになる。すでに90:10という通例の亜鉛・クロム比で亜鉛・クロム被膜は防食プライマ被膜を有した純亜鉛めっき被膜よりも優れており、その限りで、亜鉛・クロム被膜の場合にフランジ腐食の改善のために防食プライマ被膜が適用される必要はない。
【0072】
ただし、試験片6、7および8により、亜鉛・クロム被膜の場合にも防食プライマ被膜は防食効果を改善することが明らかである。この場合、防食プライマ被膜を有した亜鉛・クロム被膜は、被膜厚さがかなり薄くとも、従来の亜鉛めっき被膜よりも遥かに優れていることは明らかである(図11、12)。
【0073】
VI.5 縁部腐食浸透(図13、14参照)
縁部腐食浸透テストのため、被膜厚さ7.5μmの電解亜鉛めっき被膜を有した2個の試験片が比較対照され、その際、3μmの有機被膜を有した試験片(5)と、有機被膜のない試験片(8)とがテストされた。これらの試験片に対して、亜鉛・クロム被膜を有する4個の試験片が比較対照され、その際、一方の亜鉛・クロム比は95:5、他方のそれは90:10であり、これらの比を有する被膜のいずれについても一方の被膜厚さは2.5μmであり、他方は5μmであった。これらの試験片はそれぞれ有機被膜付き(試験片14〜17)と有機被膜なし(試験片9〜12)で使用された。
【0074】
先ず、純亜鉛めっき被膜の場合には防食プライマ被膜は腐食浸透挙動になんらの影響も及ぼさないことが確認される。有機被膜が被着されている場合の腐食浸透は有機被膜層被着されていない場合のそれとまったく同じであった。これに対して、被膜厚さ2.5μm、したがって亜鉛めっき被膜の1/3の厚さで、クロム含有量5%の亜鉛・クロム被膜は腐食浸透挙動に関して亜鉛めっき被膜に比較して著しく優れている。被膜厚さ5μmの場合にあっては、腐食浸透挙動はほぼ比例的に2倍の改善が達成された。
【0075】
クロム含有量10%の場合にあっては、被膜厚さ2.5μmの場合の腐食浸透挙動はそれより若干薄い被膜の場合のそれに比較して大幅に改善され、被膜厚さ5μmの場合にあっては、クロム含有量5%の亜鉛・クロム被膜の腐食浸透挙動はクロム含有量10%の亜鉛・クロム被膜のそれとほぼ同等であった。
【0076】
一方で被膜厚さと相関し、他方でクロム含有量と相関した亜鉛・クロム被膜の上記挙動に対し、有機被膜(たとえばKSP)の被着下において上記の条件で、予測されなかった効果が達成される。
【0077】
クロム含有率5%の被膜の場合、有機被膜によって縁部腐食浸透挙動は著しく改善され、腐食浸透の進行をほぼ半減させることができる。ただし、クロム含有率5%で、被膜厚さがもっと厚い場合には、防食プライマ被膜ないし有機被膜による改善は達成されない。ただし、特異なことに、クロム含有率がもっと高く10%で、有機被膜が被着されている場合には、さらなる改善が達成可能であり、有機被膜が被着されていない、クロム含有量10%の亜鉛・クロム被膜層に比較して、有機被膜ないし防食プライマ被膜の被着により縁部腐食浸透をさらに半減させることが可能である。
【0078】
したがって、亜鉛・クロム被膜のクロム含有量と有機被膜ないし防食プライマ被膜の使用との間にはこれまで観察されなかった相乗効果が存在すると推定することができる。この相乗効果が正確には何に基づいているのかはこれまでのところまだ確実に確認することはできなかった。
【0079】
防食プライマ被膜の被着された通例の亜鉛めっき被膜の場合には、特別な化学薬品による前処理が実施され、続いて、防食プライマ被膜が被着される。この化学的前処理が行われない場合には、防食性ならびにラッカ密着性に欠陥が生ずる。驚くべきことに、亜鉛・クロム被膜層の場合にはこの種の化学的前処理を不要にすることができる。
【0080】
VII まとめ
総じて、上記試験に基づき、亜鉛・クロム被膜を一方とし、その上に被着された実質的に合成樹脂ベースの有機被膜とくに防食プライマ被膜を他方とした両者の間には、双方の系の加算的な効果を著しく上回る相互作用による飛躍的効果が明らかに存在することが確認できる。
これは縁部腐食浸透の場合にとりわけ顕著となり、その際、特にクロム含有量が高い場合に防食プライマ被膜と亜鉛・クロム被膜との間の相互作用効果が顕著になる。
ただし、これは損耗テストの場合にも顕著となり、これらの試験において、公知の系である電解亜鉛めっき被膜+防食プライマ被膜の場合の損耗は高まり、公知の亜鉛・クロム被膜の場合の損耗はクロム含有量と共に高まる(これも同じく公知であった)が、ただし、亜鉛・クロム被膜+防食プライマ被膜の場合の損耗は低下する。従来の技術及びこれまでの試験から、この種の挙動は知られていず、まったく予測さえされていなかった。
【0081】
本発明によれば、純電解亜鉛めっき被膜、電解または加熱亜鉛めっき被膜+防食プライマ被膜および亜鉛・クロム被膜に比較してどの重要なパラメータの点でも遥かに卓越していると共にとりわけ優れたラッカ密着性を生ずる防食層の形態の防食系が製造される点が利点である。
【0082】
加えて、この被膜層の総厚さは著しく薄く、それぞれ防食プライマ被膜を有した、公知の電解亜鉛めっき被膜層の厚さの半分、加熱亜鉛めっき被膜層の厚さの1/4でしかない。
【0083】
本発明による防食層は被膜層厚さが僅かであるために速やかに被着することができると共に、機械的・化学的負荷に対する耐性がかなり高いために、相対的に大きな絞り深さと絞り速度が可能となり、その結果、防食効果を損なうことなく複雑な構造部品の製造も可能となる。
【0084】
本発明によれば、これまで専門家達の先入観によって互いに結び付けられることがなく、また、純亜鉛・クロム被膜の公知の短所からしてそもそも大規模な技術的使用などまったく行われたことのなかった2つの防食被膜系が協働することになる。亜鉛・クロム被膜と、防食プライマ被膜ないし有機被膜の防食系の組み合わせの場合には、さらに、場合によりそれ自体として予測可能であったと思われる純然たる防食性改善だけでは考えられない効果が生ずる。それどころか、機械的特性も、有機被膜を有した他の防食層の先行試験からは決して予測されなかったほど大幅に改善される。
【技術分野】
【0001】
本発明は特性を改善された防食層に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州公開特許第0566121号明細書(特許文献1)から、卓越した密着強さを有する亜鉛・クロム合金めっき鋼板の製造方法が知られている。この方法において、鋼板の表面は一定のモル濃度比で亜鉛イオンとクロムイオンとを含んだ酸性めっき浴を使用してめっきされるが、この場合、少なくとも1個の三重結合を有した少なくとも1つの非イオン性有機添加剤が含まれている。
【0003】
“Journal of Applied Electrochemistry”,30,p870〜822“Role of polyethylene glycol in electrodeposion of zinc−chromium alloys”(非特許文献1)から、ポリエチレングリコール(PEG)が亜鉛・クロム合金電着時の添加剤として知られている。
【0004】
カナムラ,ティ(Kanamura,T.)、スズキ,エス(Suzuki,S.)およびアライ,ケイ(Arai,K.)の“Corrosion resistance of ZN−CR Alloy electrocoated Steel Sheets”(日特許文献2)から、特に自動車鋼板につき、さまざまな種類の亜鉛系被膜形成によって防食性を改善することが知られているが、この場合、被膜厚さの高まりは耐食性を高めはするが、同時に、被加工性と溶接性とを低下させる旨が論じられている。この問題の解決は優れた耐食性を有する薄層被膜被覆された帯鋼を作製する点にあろう。そのため、被膜に5〜20%のクロム成分を含んだ亜鉛・クロム合金のテストが行われ、亜鉛・クロム合金は相対的に薄層の被膜被覆が行われる場合にも優れた耐食性を有する材料であり、20g/m2の被膜被覆ですでに非常に良好な結果が得られる旨の結論が得られた。さらに、亜鉛・クロム被膜は十分な陰極防食を実現すると共に、縁部腐食の防止に効果的である。またさらに、ZnCr被膜のリン酸塩被膜処理適性は不十分である旨が述べられている。
【0005】
欧州公開特許第573015号(特許文献2)から、片面または両面が亜鉛または亜鉛合金で被膜被覆された、クロメート被膜を有した表面と、前記表面上に被着された被膜厚さ0.1〜5μmの有機被膜とからなる有機被膜被覆複合鋼板が知られている。この有機被膜は、有機溶剤、分子量500〜10,000のエポキシ樹脂、芳香族ポリアミドおよび促進剤としてのフェノールまたはクレゾール化合物からなる一次組成物で形成されている。この有機被膜は、0.1μm以下の薄膜被膜被覆では薄すぎて防食性を達成することができないため、0.6〜1.6μmの乾燥被膜厚さで被着される。したがって、この有機被膜は、この被膜全体として、高い防食率を有している。被膜厚さが5μmを越えると、溶接性に影響が生ずる。
【0006】
ドイツ公開特許第3640662号明細書(特許文献3)は、亜鉛引きまたは亜鉛合金引き鋼板と、前記鋼板の表面に形成されたクロム酸塩被膜と、前記クロム酸塩被膜上に形成された樹脂組成物被膜とを含んでなる表面処理鋼板に関する。この樹脂組成物は、エポキシ樹脂とアミンとの反応によって製造されたベース樹脂ならびにポリイソシアネート化合物からなっている。この公知の被膜も、被膜厚さがそれを越えると溶接適性が大幅に低下するために、約3.5μm以下の乾燥被膜厚さでしか被着することができない。
【0007】
ドイツ特許第3412234号明細書(特許文献4)から、電解薄膜亜鉛めっきまたはリン酸塩被膜処理またはクロメート処理されて成形される鋼板用の、滑り性と溶接性とを有する防食プライマが知られており、この場合、この防食プライマは、60%以上の亜鉛、アルミニウム、グラファイトおよび/または亜硫酸モリブデンならびにその他の防食顔料、33〜35%の有機結合剤ならびに約2%の分散助剤または触媒からなっている。有機結合剤としては、ポリエステル樹脂および/またはエポキシ樹脂ならびにそれらの誘導体が提案される。この種の防食プライマは“Bonazinc 2000”の名称でBASF社によって市販されている。ただし、この種の被膜層は十分な点溶接適性がなく、焼付け温度が高すぎるため、最近の鋼材の多くにはもはや使用不可である。さらに、ラッカ密着性は必ずしも十分なものではない。
【0008】
欧州特許第1030894号明細書(特許文献5)から、金属表面を被膜被覆するための導電性と溶接性を有する防食組成物ならびに金属表面を導電性有機被膜被覆するための方法が知られている。前記特許文献の目的は、自動車工業の要求を満たす被膜組成物を提供することであり、前記組成物をコイル被覆法に適したものとし、低い焼付け温度と、亜鉛めっき鋼板の白色腐食発生の顕著な減少を達成可能とし、金属基材への有機被膜の密着性を改善し、また、クロメート処理時の薄層クロム被覆に際しても、好ましくはクロム無し前処理法に際しても、十分な防食性が達成されるようにすることであり、さらに、点溶接適性が実現されると共に、その他の防食手段たとえば空洞目塗りを不要にすることである。そのため、前記被膜は10〜40重量%の有機結合剤、0〜15重量%のケイ酸塩ベースの防食顔料、40〜70重量%の粉末状の亜鉛、アルミニウム、グラファイトおよび/または亜硫酸モリブデンならびに0〜30重量%の溶剤を含み、前記有機結合剤は少なくとも1つのエポキシ樹脂と、グアニジン、置換グアニジン、置換尿素、環式第三アミンおよびこれらの混合物からセレクトされた少なくとも1つの硬化剤ならびに少なくとも1つのブロックトポリウレタン樹脂を含んでいる。
【0009】
ドイツ公開特許第10256286号明細書(特許文献6)から、たとえば自動車工業において二次加工される鋼板の量産低摩耗成形に適した防食プライマが知られている。この被膜は、亜鉛または亜鉛含有合金被膜と、防食被膜を表すと共に、続くプライマの密着生地を表す薄層前処理被膜と、厚さ0.5〜10μmの溶接プライマ被膜とで片側または両側さえ被覆されていても、良好な溶接を可能とすべく十分な導電性を有していなければならない。ここに挙げられた亜鉛または亜鉛含有合金被膜は自動車製造において通例の合金被膜、電解亜鉛めっき被膜、加熱亜鉛めっき被膜(アルミニウム成分量0.2%)、ガルファン(アルミニウム成分量5%)、ガルバニールトおよびガルバリューム(約半分の亜鉛およびアルミニウム成分量)であってよいであろう。前記課題は、耐食性ある、低摩耗成形可能な、導電性および電気溶接適性ある高分子被膜を被着するための、樹脂と無機粒子とを含んだラッカ状混合物によって解決される。
【0010】
欧州公開特許第0607452号(特許文献7)から、自動車鋼板用の亜鉛・クロム被膜が知られており、前記文献には、鋼材に被着された亜鉛・クロム被膜は従来の亜鉛ベースの合金被膜に比較して、当初状態において他の被膜よりも耐食性が高いという利点を有することが記載されている。ただし、亜鉛・クロム合金被膜は改善された耐食性を有するとしても、これは純然たる鋼板材料に適用できるにすぎず、(成形加工の実施によって)自動車ボディー外側面の耐食性は劣ると述べられている。これは亜鉛・クロム被膜の成形性の欠如と関連している。さらに、いずれの被膜も被膜重量が高まると耐食性が改善されるが、まさに亜鉛・クロム被膜の場合には逆効果となり、被膜厚さないし被膜重量の高まりに反比例して成形性が低下すると述べられている。またさらに、亜鉛・クロム被膜は剥離に対して特に敏感であると述べられている。加えてさらに、亜鉛・クロム被膜の耐食性はクロム含有量と共に高まるが、これは、金属基材への被膜密着性がクロム含有量の高まりと共に低下するため、不利であるとも述べられている。上記の諸問題は亜鉛・クロム被膜に特別な相構成が選択されることによって解決されるが、その際、六方晶構造が達成され、格子定数は一定の値を有することになる。ただし、この種の格子定数が維持される場合にもこの種の亜鉛・クロム被膜が自動車工業における使用が不可能となる短所を有していることも確認された。
【0011】
欧州特許第0777763号明細書(特許文献8)から、金属処理用組成物とこの組成物の被着方法が知られている。この特許文献において、ラッカ密着性の改善を目的として中間被膜被着が提案され、そうでない場合には通例の自動車鋼板クロメート処理は回避される。
【0012】
この種のクロメート処理は欧州公開特許第0630993号(特許文献9)からラッカ塗り前の前処理として知られている。この種のクロメート処理は今日でもなお通例であり、上記欧州特許第0777763号(特許文献8)から知られているような別の方法は普及していない。
【0013】
欧州公開第第0285931号(特許文献10)から、亜鉛・クロム被膜が析出被着された被膜被覆鋼板が知られている。この場合、ラッカ塗り前に一次亜鉛・クロム被膜は、従来のリン酸塩処理被膜との結合特性を改善すべく、好ましくは付加的な亜鉛被膜ないし亜鉛・鉄被膜、好ましくは60重量%を越える鉄分を含んだ被膜で被覆されると述べられている。そういう意味では、ここでも、亜鉛・クロム被膜は実際にリン酸塩被膜処理不能であると述べられている。
【0014】
日本公開特許H09−276789号明細書(特許文献11)から有機複合めっき鋼板が知られている。この場合、亜鉛・ニッケル合金めっき被膜、亜鉛・鉄合金めっき被膜または亜鉛・クロム合金めっき被膜を有した鋼材が挙げられており、これらの合金めっき被膜の上にクロメート処理が実施され、さらに有機被膜が被着されている。ただし、この場合、有機被膜にはクロム酸ストロンチウム、クロム酸カルシウム、クロム酸亜鉛、クロム酸バリウムまたはクロム酸アンモニウムならびに重クロム酸アンモニウムが含まれている。
【0015】
日本公開特許H09−277438号明細書(特許文献12)から同じく溶接性を有する有機複合めっき鋼板が知られている。この場合、被膜の耐食性ならびに被膜被覆された鋼板両面における鋼板とラッカ被膜との間の密着性の改善を目的として、リン酸化合物を主体とする化学処理が行われる。特に、めっきされた、つまり亜鉛・鉄合金、亜鉛・ニッケル合金または亜鉛・クロム合金被膜被覆された鋼板のリン酸処理が実施され、その表面にリン酸化合物の結晶が析出される。
【0016】
日本特許第07292480号明細書(特許文献13)から、被膜被覆された鋼板を、続くリン酸塩被膜処理を可能とすべく、水溶性ポリマーで被覆することが知られている。
【0017】
実質的に、ラッカ塗り前に防食プライマが塗付され、続いてリン酸塩被膜処理またはクロメート処理あるいはその両方で処理される亜鉛めっき鋼板が適切であることが実証された。ただし、これらの被着被膜層において、防食プライマの形の付加的な有機被膜のせいで溶接適性が損なわれるのが短所である。亜鉛めっき被膜にあっては、フランジエリアにおける十分な防食性を保証するのに、防食プライマ被覆は不可欠である。
【0018】
さらに、鋼板への亜鉛・クロム被膜の被着使用がテストされた。この場合、好適な特性として無被覆状態で比較的高い耐食性が認められ、さらに、陰極防食効果は亜鉛めっき被膜のそれと同様であった。耐食性は非常に高く、無ラッカ塗りフランジエリアにおいても付加的な防食プライマの塗設を不要とすることができる。
【0019】
さらに、亜鉛・クロム被膜にあっては、必然的に、当該被膜のクロメート処理または少なくとも1つのその他の前処理が実施されなければならない。ただし、クロメート処理は毒性の高い六価クロムイオンが介在するために非常に問題がある。その他の前処理は、たとえば欧州公開特許第0285931号(特許文献10)または欧州特許第0777763号(特許文献80)明細書から知られているようなコスト高な中間工程を記載している。
【0020】
ただし、亜鉛・クロム被膜は特に自動車工業用鋼板の被膜被覆については、リン酸塩被膜処理適性が欠如しているために、普及しなかった。これは、リン酸塩被膜処理に際して亜鉛・クロム被膜上に不均質なリン酸塩被膜が形成されることに起因している。表面には、厚いリン酸塩被膜被着エリアとリン酸塩被膜無被着エリアとの混在が認められる。
【0021】
こうした不均質な被着は、純亜鉛被膜あるいはまた、リン酸塩被膜処理に付されなかった亜鉛・クロム被膜に比較してさえも、ラッカ密着性を低下させる。リン酸塩被膜処理の省略は亜鉛・クロム被膜へのラッカ密着性を改善することは確かであるが、ただし、自動車分野への使用には、リン酸塩被膜処理プロセスが必ず常にボディー全体に実施されるため、鋼材表面が不適な影響を受けることなくリン酸塩被膜処理浴を通過し得ることが保証されなければならない。
【0022】
重大な短所は、さらに、クロム含有量ならびに亜鉛・クロム被膜の厚さに比例して大きくなる、鋼板成形時の損耗である。この場合、成形時の損耗は一部非常に大きく、特に強度な成形が行われるエリアでは損耗は基材にまで達するため、好適な防食特性はもはや備えていないことになる。
【0023】
ただし、亜鉛・クロム被膜は、亜鉛めっき被膜の場合と異なって、フランジやつばエリアにおいても十分な防食性が常に保証されているために防食プライマを必要としない点が利点となる。
【0024】
亜鉛被膜上には、既述したように、リン酸塩被膜処理前にさらに、続くラッカ塗り時にラッカが侵入しないエリアとくにフランジエリア、つばエリア等の防食性の向上に資する防食プライマ(KSP)が被着される。したがって、亜鉛被膜上に付された防食プライマはフランジ腐食を改善するにすぎない。ラッカ腐食浸透および縁部腐食に際する改善は認めることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】欧州特許第0566121号明細書
【特許文献2】欧州公開特許第573015号
【特許文献3】ドイツ公開第3640662号明細書
【特許文献4】ドイツ特許第3412234号明細書
【特許文献5】欧州特許第1030894号明細書
【特許文献6】ドイツ公開第10256286号明細書
【特許文献7】欧州公開第0607452号明細書
【特許文献8】欧州特許第0777763号明細書
【特許文献9】欧州公開特許第0630993号
【特許文献10】欧州公開第0285931号
【特許文献11】日本公開特許H09−276789号明細書
【特許文献12】日本公開特許H09−277438号明細書
【特許文献13】日本特許第07292480号明細書
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】“Role of polyethylene glycol in electrodeposition of zinc−chromium alloys”、Journal of Applied Electrochemistry,30,p.870〜822。
【非特許文献2】Kanamura,T.、Suzuki,S.およびArai,K.著、“Corrosion resistance of ZN−CR Alloy electrocoated Steel Shetts”。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の目的は、リン酸塩被膜処理に続いてラッカ塗設が行われる通例のラッカ塗付法による通例のラッカ塗りレーンの通過時に優れたラッカ密着性がもたらされると共に、さらに、亜鉛被膜または亜鉛・クロム被膜に比較して縁部腐食が改善され、さらにラッカ腐食浸透が防止される、特性改善された防食層を製造することである。さらに、環境上の観点から、改善された被膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
前記課題は請求項1記載の特徴を有する防食層によって達成される。
【0029】
その好適な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0030】
さらにもう一つの課題は、ラッカ密着性の改善された防食層の作製方法を提供することである。この課題は請求項17記載の特徴を有する方法によって達成される。
【0031】
その好適な実施形態は請求項17の従属請求項に記載されている。
【0032】
本発明によれば、亜鉛・クロム被膜が鋼板上に電着され、続いて、無クロメート有機薄膜被膜が被着される。前処理および特に前記被膜のクロメート処理つまり六価クロムイオンの使用は実施されない。
【0033】
結果として、卓越したラッカ密着性と、特に成形に際する非常に優れた機械的特性とを有する防食層が達成される。
【0034】
この場合、前記亜鉛・クロム被膜は、耐食性の実現に本来必要とされると考えられるよりも特に薄層に形成される。前記亜鉛・クロム被膜は防食プライマと共に非常に薄層に形成されることができ、そのため損耗問題は生ぜず、それにもかかわらず十分な防食性が保証される。
【0035】
同じく、特に通例の防食プライマからなる前記有機被膜も、防食プライマが亜鉛被膜上で通例の防食効果を達成するのに必要とされると考えられるよりも薄層に形成される。本発明によれば、前記有機被膜はクロメートを含んでいない。
【0036】
一方で、亜鉛・クロム被膜には元来余計な防食プライマを被着するという先入観の克服により、さらに他方で、効果の実現に本来必要とされると思われるよりも薄層の被膜の使用によって、驚くべき相乗効果がもたらされる。
【0037】
たとえば、通例の亜鉛被膜の耐礫衝撃性および特にラッカ密着性は既知であるが、この場合、亜鉛・クロム被膜の耐礫衝撃性とラッカ密着性は亜鉛被膜よりも劣っている。
【0038】
通常の亜鉛被膜の場合、所定の値に一致している成形性ならびに損耗も、同様な亜鉛・クロム被膜にあっては一般に劣っている。
【0039】
従来の技術では、亜鉛被膜上に防食プライマ被膜を被着してもその耐礫衝撃性およびラッカ密着性は改善されず、実質的に同じままである。ただし、この種の被膜層の成形性は摩擦特性の変化によって純亜鉛被膜層に比較して改善される。
【0040】
しかしながら、薄層の亜鉛・クロム被膜と実質的に合成樹脂ベースの有機被膜と特に防食プライマ被膜とからなる本発明による被膜層構成では、耐礫衝撃性およびラッカ密着性は、純亜鉛被膜または亜鉛被膜+防食プライマ被膜の耐礫衝撃性およびラッカ密着性よりも極めて優れていることが判明した。
【0041】
純亜鉛・クロム被膜の成形性は劣っているが、他方、本発明による有機被膜被覆された亜鉛・クロム被膜層の成形性は少なくとも亜鉛被膜+防食プライマ被膜の成形性と同程度に優れている。
【0042】
ただし、相乗効果は上述した摩擦特性値についてのみならず、化学的特性値とりわけフランジエリア、縁部および掻き傷のそれぞれの腐食についても生ずる。
【0043】
通例の亜鉛被膜を基準として、亜鉛・クロム被膜は、すでに冒頭に述べたように、上述した3種の腐食形態(フランジ、縁部、掻き傷)の耐食性の点で改善をもたらしていたので、そのために、従来の技術では亜鉛・クロム被膜上にはなんらの有機被膜も被着されなかった。亜鉛被膜に防食プライマを被着する場合には、確かにフランジ腐食の若干の改善は生ずるが、縁部および掻き傷エリアの耐食性は純亜鉛被膜に比較して変わるところがない。これは防食プライマの利点が、続くラッカ塗りに際してラッカが侵入しないエリアにしか認められないことに由来している。これはフランジエリアである。
【0044】
従来技術からは推定できなかったことであるが、特に薄層に形成された亜鉛・クロム被膜と防食プライマ被膜とを組み合わせる場合には、耐食性は、純亜鉛・クロム被膜に比較して大幅に高まると共に、純亜鉛被膜または亜鉛被膜+防食プライマ被膜に比較しても、亜鉛・クロム被膜を一方とし防食プライマ被膜を他方とした両者の優れた特性の単なる組み合わせによって導かれるもの以上大幅な高まりを示すことが判明した。
【0045】
前記亜鉛・クロム被膜は1〜10μm、好ましくは2.0〜6μmの厚さを有していてよく、その際、クロム含有量は1〜25%、好ましくは3〜10%である。前記亜鉛・クロム被膜上に被着された、たとえば防食プライマの類もしくはそれ自体として通例の防食プライマを使用した有機薄膜は0.5〜10μm、特に1〜8μm、たとえば2〜6μmの厚さを有している。ただし、被膜厚さがたった0.5μmでしかない場合にも、本発明に際して生ずる相乗効果が達成される。
【0046】
その限りで、4〜6μmの被膜層厚さが可能である。厚さ4〜6μmのこの種の防食層だけで、厚さ7ないし7.5μmの亜鉛被膜に比較して、耐食性ならびに摩擦特性の改善が達成される。さらに2〜6μmの通例の防食プライマ被膜が被着された厚さ7.5μmの亜鉛被膜層でも本発明による前記防食層の卓越した特性に達することは不可能である。
【0047】
通例の亜鉛被膜に防食プライマ被膜を被着する場合には、特別な化学薬品(通例、クロメート)による前処理が実施され、続いて、防食プライマ被膜が被着される。この化学的前処理が行われない場合には、防食性とラッカ密着性とに欠陥が生ずる。驚くべきことに、亜鉛・クロム被膜の場合には、この種の化学的前処理とくにクロメート処理または無クロメート前処理とくにリン酸塩処理を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】さまざまな被膜層系の耐礫衝撃性を示す棒グラフである。
【図2】17の比較例の構成を示す表である。
【図3】テスト用試験片の概略的な構造を示す図である。
【図4】耐候テストの方法フローを示す図である。
【図5】8個の損耗テスト比較試験片を示す表である。
【図6】図5の表に基づく損耗を示す棒グラフである。
【図7】8個の異なった試験片の礫衝撃テスト時剥離面積率を示す表である。
【図8】図7の表の結果を対照するための棒グラフである。
【図9】掻き傷腐食浸透テスト結果を示す表である。
【図10】図9に基づく表の結果を示す棒グラフである。
【図11】フランジ腐食テストの結果を示す表である。
【図12】図11に基づく結果を示す棒グラフである。
【図13】さらにその他のテスト例の縁部腐食浸透を示す表である。
【図14】図13に基づく表の結果を示す棒グラフである。
【図15】結果のまとめを表形式で示したものである。
【図16】結果のまとめを表形式で示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、図面を参照し、複数の図及び種々の実施例を用いて本発明を説明する。
比較例としての試験片は以下のようにして作製された。
【0050】
I.ZnCr被膜の析出
試験片はフロー速度調節式のラボコーティングセルでコーティングされる。軟鋼(厚さ0.8mm)からなる、面積150×100mmの鋼板がコーティングされる。電解液の作製には以下の化学物質が使用される。
硫酸亜鉛七水和物: ZnSO4×7H2O
硫酸クロムカリウム十二水和物: KCr(SO4)2×12H2O
硫酸: H2SO4(98%)。
【0051】
例示試験片の析出のための正確な濃度は図2に挙げられている。電解液のpH値は2であり、温度40℃にて析出される。
有機薄膜の被着はドクタを用いて行われ、その後に被膜は30秒間にわたり、対象温度250℃にて炉中で硬化される。
析出にあたり、添加剤としてポリエチレングリコール6000(PEG)が加えられた。有機薄膜(防食プライマ被膜、KSP)はHenkel KGaA社の製品“Granocoat ZE”からなり、この場合、表面の前処理は同じくHenkelKGaA社の製品“Granodine1456”で行われた。後に挙げた方の前処理は、結晶が析出されるのではなく、非晶質化成被膜であることから、クロメート処理またはリン酸塩被膜処理の意味の前処理ではない。
この前処理は本発明によれば行われなくともよい。
【0052】
II.有機薄膜被膜被覆の一般的説明
有機薄膜被膜は大規模コイル被覆装置によりインラインにて亜鉛めっき鋼材に被着される。これは、溶接性、成形性および防食効果に関して優れている。
この種の薄膜被膜は好ましくは5重量%の導電粒子(たとえばZn、Fe、FePなど)を含んでいる。被膜はラッカ状であって、樹脂ベース(ポリウレタン、エポキシ樹脂など)の配合物であってよい。その他の通例の成分は、ポリエステル、グアニジン誘導体、尿素、メラミン樹脂、アミン(環式および芳香族)およびアルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびヘキサンジオール)である。本発明によれば、無クロメート薄膜被膜のみが使用された。
有機薄膜の被着前に鋼板は、表面に薄膜の密着性を改善する化成被膜を生成する溶液で処理される。これらの系は通例、ヘキサフルオロチタン酸塩、ジルコン酸塩、リン酸塩およびマンガン塩をベースとしている。この防食被膜はいわゆる無水洗プロセスで被着される。この場合、処理液は表面に被着され、スクィーズされて、乾燥させられる。リン酸塩被膜処理とは異なり、リン酸塩結晶は形成されず、リン酸塩からなる薄い非晶質被膜層が形成される。
【0053】
III.試験片の処理(KSPに先立つ前処理)
この処理は、既述したように有機薄膜が被着される前に、当該液への浸漬、続いての試験片のスクィーズおよび非晶質防食被膜を形成させるための70℃にて5秒間の乾燥によって行なわれた。
【0054】
IV.ラッカ塗り
耐礫衝撃性、掻き傷/縁部腐食浸透およびフランジ腐食に関するテストのために、試験片は自動車製造において通例の方法で処理される。
a)浄化:
先ず、弱アルカリ洗浄剤(pH11)にて浄化が行われる。この場合、浄化はHenkel KGaA社の製品“Ridoline 1556”を用い、55℃にて5分間実施される。続いて、試験片は水洗いされる。
b)活性化:
化成被膜層の生成ないし活性化のために、試験片はHenkel KGaA社の商品名“Fixodine 50 CF”によるリン酸チタニルナトリウムのコロイド溶液(5g/l)中で活性化される。
c)リン酸塩被膜処理:
続いて、試験片は硝酸塩反応促進されたトリカチオン・リン酸塩溶液中でリン酸塩処理される。この処理は50℃にて4分間にわたって行われる(製品名称:Granodine 958)。
d)ラッカ塗り:
試験片は、最後に、PPGの電気浸漬ラッカ“viroprime”で厚さ25μmまでラッカ塗りされる。
【0055】
V.テストの実施
V.1 損耗
直径66mmの無ラッカ塗り円形試験片から小鉢が絞り成形される。絞り比は2であり、つまり、直径33mmの小鉢が結果する。この場合、絞り速度は100mm/秒である。深絞り加工前後の重量差が小鉢周面の被覆層に関係させられて、損耗百分率として表される。このテストは成形時の損耗を表し、図5および6に示されている。
【0056】
V.2 腐食テスト
V.2.1 フランジ構造
フランジエリアの腐食をシミュレーションするため、10×10cmの試験片の半分が同じ大きさのガラス板と接着される。試験片とガラス板との間の間隔は120μmである。試験片の寸法は図3から看取される通りであり、この場合、水平方向寸法は、面の縁部腐食浸透を調べるため、105mmであってもよい(たとえば、図3左まくれ上向き、ないし右下向き)。
【0057】
V.2.2 耐候テスト
試験片は10週間にわたりVDA621−415に準拠した耐候テストに付され、特に10サイクルにわたって連続実施される(1サイクル=7日間)。この耐候テストは、DIN50021 SSに基づく塩水噴霧テストと、DIN50017に基づくKFWテストと、DIN50014に基づく乾燥相とのコンビネーションを表している。方法フローは図4に示されている。
【0058】
V.2.3 礫衝撃
IVに準拠して作製されたラッカ塗り試験片は腐食テストの実施前後にDIN55996−1に準拠して礫衝撃が加えられる。剥離したラッカ面積は画像分析によって測定される。
【0059】
V.2.4 掻き傷腐食浸透
ラッカ塗り試験片は腐食テスト実施前に基材鋼に達するまでの掻き傷がつけられる。腐食テスト後に、腐食浸透されたラッカが取り除かれて、腐食浸透された掻き傷の幅が測定される。
【0060】
V.2.5 縁部腐食浸透
腐食テスト後に、腐食浸透されたラッカが試験片縁部から取り除かれて、縁部から無傷のラッカまでの腐食浸透されたエリアの幅が測定される。
【0061】
V.2.6 フランジ腐食
組み付けられたガラスフランジが腐食テストに付され、週ごとにチェックされる。ガラス板の下に最初の鋼材腐食生成物(赤錆)が現れるまでの経過週が測定される。
【0062】
VI.結果
損耗試験(図5、6)において、異なった8個の試験片が比較対照された。試験片1および5はクロムを含まない、厚さ7.5μmの電解亜鉛めっき被膜を有する鋼材試験片であり、試験片1は有機被膜を含まず、試験片5は厚さ3μmの有機被膜を含んでいる。有機被膜形成された試験片の損耗は純亜鉛めっき鋼材試験片の損耗よりも8倍高いことが認められる。これに対して、試験片2および6は亜鉛・クロム比94:6、試験片3および7は亜鉛・クロム比90:10、試験片4および8は亜鉛・クロム比86:14でそれぞれ作製された。この場合、亜鉛・クロム被膜の厚さはそれぞれ2.5μmであり、試験片2、3および4には有機被膜は被着されず、試験片6、7および8には厚さ3μmの有機被膜が被着された。この場合、有機被膜としては特に防食プライマが考えられている。試験片2、3および4にあっては、クロム含有量の増加と共に、予測どおり、損耗は大幅に増大するが、他方、クロム含有量が増加しても3μmの有機被膜が被着されている場合の損耗は実質的に同じままである。
【0063】
したがって、従来の亜鉛めっき被膜上に有機被膜が被着された場合には(試験片5)、損耗は(劇的に)高まるが、他方、亜鉛・クロム被膜の場合の損耗挙動は、明らかにクロム含有量とは関係なく、極めて驚くべきことにはまったく反対に挙動し、つまり、損耗損失は劇的に減少する。こうした挙動はまったく予測されなかった。なぜなら、有機被膜が被着されていない亜鉛・クロム被膜の場合の損耗は、従来公知であるように、クロム含有量の増加と共に激しく増大し、さらに同じく公知であるように、防食プライマで処理された純電解亜鉛めっき被膜の場合の損耗も同じく激しく増大するからである。損耗は今や有機被膜の損耗によって規定され、亜鉛・クロム被膜の損耗とは無関係である。
したがって、本発明は、損耗に関して、専門的な考察に反する結果をもたらしている。
【0064】
VI.2 礫衝撃
またもV.1の8個の試験片と同じ構成の8個の試験片が使用された(図7参照)。礫衝撃テストにおいて、純亜鉛めっき被膜を有する試験片1および5は、有機被膜(KSP)が存在するか(試験片5)、存在しないか(試験片1)の事実にかかわりなく、同じ剥離挙動を示している。クロム含有量が徐々に増加する亜鉛・クロム被膜を有する試験片2、3および4は、クロム含有量が増加すると共にもともと脆性も高まるために、公知の亜鉛・クロム被膜が示す礫衝撃挙動を示している。予測どおり、クロム含有量が増加すると共に剥離面積が増大することが確認された。亜鉛・クロム比86:14の場合には、純電解亜鉛めっき被膜の場合よりも剥離面積は4倍以上大きい。
【0065】
KSP被膜は礫衝撃挙動に関して純電解亜鉛めっき被膜の場合と比較してなんらの相違ももたらさないが、他方、KSP被膜は亜鉛・クロム被膜の場合にあってはクロム含有量とは無関係にきわめて驚くべきことに剥離面積の減少をもたらし、この場合、剥離面積は厚さ7.5μmの純電解亜鉛めっき被膜の場合の半分の大きさでしかない。亜鉛・クロム被膜上に被着された有機被膜が有するこうした驚くべき効果は、特に亜鉛・クロム比86:14の被膜上に有機被膜が被着されている場合に顕著である。
【0066】
上記の剥離面積は、有機被膜の被着されていない同一組成の亜鉛・クロム被膜に比較して、まさしく1/8である。
この強力な効果もまた、通例のように被着された防食プライマ被膜を有する電解亜鉛めっき被膜の挙動からも予測不能である。リン酸塩処理工程を通過する、防食プライマ被膜を持たない亜鉛・クロム被膜は礫衝撃テストにおいてもっと劣ったラッカ密着性を示す。
【0067】
VI.3 掻き傷腐食浸透(図9、10参照)
総計8個の試験片のうち試験片1および5はまたも厚さ7.5μmの純電解被着亜鉛めっき被膜を有している。一方は有機被膜を有し(試験片5)、他方は有機被膜を有していない(試験片1)。この場合、有機被膜は掻き傷腐食浸透になんらの影響も示していないが、これは、電解被着亜鉛めっき被膜の場合にまさに通例使用される防食プライマ被膜にとって、公知の事実である。
【0068】
被膜厚さ2.5μmで、クロム含有量が徐々に増加する亜鉛・クロム被膜を有する3個の試験片の場合、クロム含有量の増加と共に腐食浸透の有意な増大を観察することができる。2個の試験片につき、腐食浸透は総じて、全体として3倍の厚さを有する純亜鉛めっき被膜の場合よりもなお低いが、このことは相対的に薄層の亜鉛・クロム被膜の著しい防食効果を示している。ただし、クロム含有量14%の第3の試験片は掻き傷腐食浸透に関しても純亜鉛めっき被膜より若干劣っている。
【0069】
驚くべきことに、掻き傷腐食浸透の場合にも、有機被膜は亜鉛・クロム被膜と協働してまったく反対の挙動を示す。クロム含有量の増加と、厚さ3μmの有機被膜とによって、掻き傷腐食浸透に関する挙動は改善すらされ、あるいはクロム含有量が高くともその挙動は同じままである。これは専門家の予測にまったく反しており、この場合、特にクロム含有量が高い場合に、相対的に薄層の亜鉛・クロム被膜と有機被膜との間に明らかな相乗効果が観察される。
【0070】
VI.4 フランジ腐食(赤錆発生まで)(図11および12参照)
フランジ腐食テストについても、また、8個の試験片が使用され、この場合、試験片1および5は鋼材に被着された厚さ7.5μmの純電解亜鉛めっき被膜を有しており、一方は有機被膜を有し(5)、他方は有機被膜を有していない(1)。フランジ腐食の場合、防食プライマ被膜によってフランジ腐食を効果的に低下させることができるとの公知の事実が顕著になった。これは、従来の技術において、純亜鉛めっき被膜の場合に防食プライマ被膜を使用する根拠ともなっている。
【0071】
ただし、試験によって、これまで亜鉛・クロム被膜の場合に防食プライマ被膜ないし有機被膜が適用も思料もされなかった理由も明らかになる。すでに90:10という通例の亜鉛・クロム比で亜鉛・クロム被膜は防食プライマ被膜を有した純亜鉛めっき被膜よりも優れており、その限りで、亜鉛・クロム被膜の場合にフランジ腐食の改善のために防食プライマ被膜が適用される必要はない。
【0072】
ただし、試験片6、7および8により、亜鉛・クロム被膜の場合にも防食プライマ被膜は防食効果を改善することが明らかである。この場合、防食プライマ被膜を有した亜鉛・クロム被膜は、被膜厚さがかなり薄くとも、従来の亜鉛めっき被膜よりも遥かに優れていることは明らかである(図11、12)。
【0073】
VI.5 縁部腐食浸透(図13、14参照)
縁部腐食浸透テストのため、被膜厚さ7.5μmの電解亜鉛めっき被膜を有した2個の試験片が比較対照され、その際、3μmの有機被膜を有した試験片(5)と、有機被膜のない試験片(8)とがテストされた。これらの試験片に対して、亜鉛・クロム被膜を有する4個の試験片が比較対照され、その際、一方の亜鉛・クロム比は95:5、他方のそれは90:10であり、これらの比を有する被膜のいずれについても一方の被膜厚さは2.5μmであり、他方は5μmであった。これらの試験片はそれぞれ有機被膜付き(試験片14〜17)と有機被膜なし(試験片9〜12)で使用された。
【0074】
先ず、純亜鉛めっき被膜の場合には防食プライマ被膜は腐食浸透挙動になんらの影響も及ぼさないことが確認される。有機被膜が被着されている場合の腐食浸透は有機被膜層被着されていない場合のそれとまったく同じであった。これに対して、被膜厚さ2.5μm、したがって亜鉛めっき被膜の1/3の厚さで、クロム含有量5%の亜鉛・クロム被膜は腐食浸透挙動に関して亜鉛めっき被膜に比較して著しく優れている。被膜厚さ5μmの場合にあっては、腐食浸透挙動はほぼ比例的に2倍の改善が達成された。
【0075】
クロム含有量10%の場合にあっては、被膜厚さ2.5μmの場合の腐食浸透挙動はそれより若干薄い被膜の場合のそれに比較して大幅に改善され、被膜厚さ5μmの場合にあっては、クロム含有量5%の亜鉛・クロム被膜の腐食浸透挙動はクロム含有量10%の亜鉛・クロム被膜のそれとほぼ同等であった。
【0076】
一方で被膜厚さと相関し、他方でクロム含有量と相関した亜鉛・クロム被膜の上記挙動に対し、有機被膜(たとえばKSP)の被着下において上記の条件で、予測されなかった効果が達成される。
【0077】
クロム含有率5%の被膜の場合、有機被膜によって縁部腐食浸透挙動は著しく改善され、腐食浸透の進行をほぼ半減させることができる。ただし、クロム含有率5%で、被膜厚さがもっと厚い場合には、防食プライマ被膜ないし有機被膜による改善は達成されない。ただし、特異なことに、クロム含有率がもっと高く10%で、有機被膜が被着されている場合には、さらなる改善が達成可能であり、有機被膜が被着されていない、クロム含有量10%の亜鉛・クロム被膜層に比較して、有機被膜ないし防食プライマ被膜の被着により縁部腐食浸透をさらに半減させることが可能である。
【0078】
したがって、亜鉛・クロム被膜のクロム含有量と有機被膜ないし防食プライマ被膜の使用との間にはこれまで観察されなかった相乗効果が存在すると推定することができる。この相乗効果が正確には何に基づいているのかはこれまでのところまだ確実に確認することはできなかった。
【0079】
防食プライマ被膜の被着された通例の亜鉛めっき被膜の場合には、特別な化学薬品による前処理が実施され、続いて、防食プライマ被膜が被着される。この化学的前処理が行われない場合には、防食性ならびにラッカ密着性に欠陥が生ずる。驚くべきことに、亜鉛・クロム被膜層の場合にはこの種の化学的前処理を不要にすることができる。
【0080】
VII まとめ
総じて、上記試験に基づき、亜鉛・クロム被膜を一方とし、その上に被着された実質的に合成樹脂ベースの有機被膜とくに防食プライマ被膜を他方とした両者の間には、双方の系の加算的な効果を著しく上回る相互作用による飛躍的効果が明らかに存在することが確認できる。
これは縁部腐食浸透の場合にとりわけ顕著となり、その際、特にクロム含有量が高い場合に防食プライマ被膜と亜鉛・クロム被膜との間の相互作用効果が顕著になる。
ただし、これは損耗テストの場合にも顕著となり、これらの試験において、公知の系である電解亜鉛めっき被膜+防食プライマ被膜の場合の損耗は高まり、公知の亜鉛・クロム被膜の場合の損耗はクロム含有量と共に高まる(これも同じく公知であった)が、ただし、亜鉛・クロム被膜+防食プライマ被膜の場合の損耗は低下する。従来の技術及びこれまでの試験から、この種の挙動は知られていず、まったく予測さえされていなかった。
【0081】
本発明によれば、純電解亜鉛めっき被膜、電解または加熱亜鉛めっき被膜+防食プライマ被膜および亜鉛・クロム被膜に比較してどの重要なパラメータの点でも遥かに卓越していると共にとりわけ優れたラッカ密着性を生ずる防食層の形態の防食系が製造される点が利点である。
【0082】
加えて、この被膜層の総厚さは著しく薄く、それぞれ防食プライマ被膜を有した、公知の電解亜鉛めっき被膜層の厚さの半分、加熱亜鉛めっき被膜層の厚さの1/4でしかない。
【0083】
本発明による防食層は被膜層厚さが僅かであるために速やかに被着することができると共に、機械的・化学的負荷に対する耐性がかなり高いために、相対的に大きな絞り深さと絞り速度が可能となり、その結果、防食効果を損なうことなく複雑な構造部品の製造も可能となる。
【0084】
本発明によれば、これまで専門家達の先入観によって互いに結び付けられることがなく、また、純亜鉛・クロム被膜の公知の短所からしてそもそも大規模な技術的使用などまったく行われたことのなかった2つの防食被膜系が協働することになる。亜鉛・クロム被膜と、防食プライマ被膜ないし有機被膜の防食系の組み合わせの場合には、さらに、場合によりそれ自体として予測可能であったと思われる純然たる防食性改善だけでは考えられない効果が生ずる。それどころか、機械的特性も、有機被膜を有した他の防食層の先行試験からは決して予測されなかったほど大幅に改善される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛イオンおよびクロムイオンの共同電解析出によって鋼材上に被着された亜鉛・クロム被膜と、前記被膜上に被着された合成樹脂からなる無クロメート有機薄膜被膜とを有する鋼材腐食を防止するための防食層。
【請求項2】
前記亜鉛・クロム被膜が1〜25%のクロムを含有し、残りは主として亜鉛であり、付随元素ならびに通例の不純物を付加することができることを特徴とする請求項1に記載の防食層。
【請求項3】
クロム含有量が3〜10%であり、残りは亜鉛であり、付随元素および通例の不純物を付加することができることを特徴とする請求項1または2に記載の防食層。
【請求項4】
前記亜鉛・クロム被膜が1〜10μmの厚さを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項5】
前記亜鉛・クロム被膜の厚さが2〜6μmであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項6】
前記亜鉛・クロム被膜の厚さが2.5〜5μmであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項7】
前記亜鉛・クロム被膜の厚さが前記亜鉛・クロム被膜のクロム含有量に依存し、前記亜鉛・クロム被膜はクロム含有量が低い場合には5〜10μmの厚さを有し、クロム含有量が高い場合には1〜5μmの厚さを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項8】
前記有機被膜が導電粒子を含み、前記有機被膜は合成樹脂をベースとしてラッカ状に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項9】
前記有機被膜が導電粒子として金属粒子を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項10】
合成樹脂をベースとした前記有機被膜はポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂から選択されたものを含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項11】
前記有機被膜がさらに、ポリエステル、グアニジン誘導体、尿素、環式アミン、芳香族アミン、アルコールから選択されたものを含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項12】
前記有機被膜が薄膜被膜であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項13】
前記有機被膜が通例の防食プライマから形成されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項14】
前記亜鉛・クロム被膜上の前記有機薄膜の厚さが0.5〜10μmであることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項15】
前記有機薄膜の厚さが1.5〜6μmであることを特徴とする請求項14に記載の防食層。
【請求項16】
前記有機薄膜の厚さが3μmであることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項17】
鋼材上に電着された亜鉛・クロム防食被膜をベースとするラッカ密着性の改善された防食層を作製するための方法であって、電解析出された亜鉛・クロム被膜上に合成樹脂を含んだ無クロメート有機薄膜が被着されることを特徴とする方法。
【請求項18】
2価の亜鉛と3価のクロムとを有する酸性硫酸塩電解液から前記亜鉛・クロム被膜の析出が行われることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記被膜中へのクロムの共同析出のためにポリエチレングリコールが添加剤として使用されることを特徴とする請求項17または18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記有機薄膜が前処理なしで前記電解析出された亜鉛・クロム被膜上に被着されることを特徴とする請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記有機薄膜の被着前に密着性を改善するための化成処理が実施され、その際、シランなどの有機ポリマーの他に、リン酸塩、フルオロチタン酸塩、フルオロジルコン酸塩から選択されたものを含む溶液が無水洗法にて被着されて、非晶質被膜が形成されることを特徴とする請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記薄膜被膜がコイル被覆法にて被着されることを特徴とする請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記薄膜被膜が0.5〜10μmの厚さにて被着されることを特徴とする請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
導電性粒子を含む有機被膜が使用され、その際、ベース合成樹脂はポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂から選択されたものを含むことを特徴とする請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
有機薄膜被膜として、電解亜鉛めっきまたは加熱亜鉛めっき鋼材を被覆するための汎用的な防食プライマが使用されることを特徴とする請求項17から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
鋼材に被着された亜鉛・クロム被膜上への合成樹脂を含む無クロメート有機薄膜被膜の被着目的での使用。
【請求項27】
鋼材に被着された亜鉛・クロム被膜上への無クロメート防食プライマ被膜の被着目的での使用。
【請求項1】
亜鉛イオンおよびクロムイオンの共同電解析出によって鋼材上に被着された亜鉛・クロム被膜と、前記被膜上に被着された合成樹脂からなる無クロメート有機薄膜被膜とを有する鋼材腐食を防止するための防食層。
【請求項2】
前記亜鉛・クロム被膜が1〜25%のクロムを含有し、残りは主として亜鉛であり、付随元素ならびに通例の不純物を付加することができることを特徴とする請求項1に記載の防食層。
【請求項3】
クロム含有量が3〜10%であり、残りは亜鉛であり、付随元素および通例の不純物を付加することができることを特徴とする請求項1または2に記載の防食層。
【請求項4】
前記亜鉛・クロム被膜が1〜10μmの厚さを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項5】
前記亜鉛・クロム被膜の厚さが2〜6μmであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項6】
前記亜鉛・クロム被膜の厚さが2.5〜5μmであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項7】
前記亜鉛・クロム被膜の厚さが前記亜鉛・クロム被膜のクロム含有量に依存し、前記亜鉛・クロム被膜はクロム含有量が低い場合には5〜10μmの厚さを有し、クロム含有量が高い場合には1〜5μmの厚さを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項8】
前記有機被膜が導電粒子を含み、前記有機被膜は合成樹脂をベースとしてラッカ状に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項9】
前記有機被膜が導電粒子として金属粒子を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項10】
合成樹脂をベースとした前記有機被膜はポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂から選択されたものを含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項11】
前記有機被膜がさらに、ポリエステル、グアニジン誘導体、尿素、環式アミン、芳香族アミン、アルコールから選択されたものを含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項12】
前記有機被膜が薄膜被膜であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項13】
前記有機被膜が通例の防食プライマから形成されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項14】
前記亜鉛・クロム被膜上の前記有機薄膜の厚さが0.5〜10μmであることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項15】
前記有機薄膜の厚さが1.5〜6μmであることを特徴とする請求項14に記載の防食層。
【請求項16】
前記有機薄膜の厚さが3μmであることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の防食層。
【請求項17】
鋼材上に電着された亜鉛・クロム防食被膜をベースとするラッカ密着性の改善された防食層を作製するための方法であって、電解析出された亜鉛・クロム被膜上に合成樹脂を含んだ無クロメート有機薄膜が被着されることを特徴とする方法。
【請求項18】
2価の亜鉛と3価のクロムとを有する酸性硫酸塩電解液から前記亜鉛・クロム被膜の析出が行われることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記被膜中へのクロムの共同析出のためにポリエチレングリコールが添加剤として使用されることを特徴とする請求項17または18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記有機薄膜が前処理なしで前記電解析出された亜鉛・クロム被膜上に被着されることを特徴とする請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記有機薄膜の被着前に密着性を改善するための化成処理が実施され、その際、シランなどの有機ポリマーの他に、リン酸塩、フルオロチタン酸塩、フルオロジルコン酸塩から選択されたものを含む溶液が無水洗法にて被着されて、非晶質被膜が形成されることを特徴とする請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記薄膜被膜がコイル被覆法にて被着されることを特徴とする請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記薄膜被膜が0.5〜10μmの厚さにて被着されることを特徴とする請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
導電性粒子を含む有機被膜が使用され、その際、ベース合成樹脂はポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂から選択されたものを含むことを特徴とする請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
有機薄膜被膜として、電解亜鉛めっきまたは加熱亜鉛めっき鋼材を被覆するための汎用的な防食プライマが使用されることを特徴とする請求項17から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
鋼材に被着された亜鉛・クロム被膜上への合成樹脂を含む無クロメート有機薄膜被膜の被着目的での使用。
【請求項27】
鋼材に被着された亜鉛・クロム被膜上への無クロメート防食プライマ被膜の被着目的での使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2009−545668(P2009−545668A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522133(P2009−522133)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006336
【国際公開番号】WO2008/014885
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(506029255)フェストアルピネ シュタール ゲーエムベーハー (11)
【氏名又は名称原語表記】VOESTALPINE STAHL GMBH
【住所又は居所原語表記】VOESTALPINE−STRASSE 3, A−4020 LINZ, AUSTRIA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006336
【国際公開番号】WO2008/014885
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(506029255)フェストアルピネ シュタール ゲーエムベーハー (11)
【氏名又は名称原語表記】VOESTALPINE STAHL GMBH
【住所又は居所原語表記】VOESTALPINE−STRASSE 3, A−4020 LINZ, AUSTRIA
【Fターム(参考)】
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