説明

珪素水素化物ガスの供給方法

【課題】珪素水素化物ガスを使用する装置に不純物が混入していない珪素水素化物ガスを確実に供給することができる珪素水素化物ガスの供給方法を提供する。
【解決手段】珪素水素化物ガス使用装置に供給する珪素水素化物ガス、例えばモノシラン中の酸素含有化合物、例えばジシロキサンの濃度を測定し、測定した酸素含有化合物の濃度があらかじめ設定された濃度を下回ったときに珪素水素化物ガス使用装置への珪素水素化物ガスを開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、珪素水素化物ガスの供給方法に関し、詳しくは、シリコンを含む薄膜を気相成長させる気相成長装置のような装置にモノシランをはじめとする珪素水素化物ガスを供給する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノシランをはじめとする珪素水素化物ガスは、主に半導体製造や太陽電池製造における原料ガスとして用いられている。このような用途において、珪素水素化物ガス中に水分や酸素などの酸素含有化合物が不純物として混入していると、製造する半導体や太陽電池の機能を低下させる要因となる。一方、珪素水素化物ガスは、配管内面などに吸着している微量水分を化学反応によって除去するためのガスとしても用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−167073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、プロセスガスとして珪素水素化物ガスを供給する配管に対するガスシリンダー交換後のパージ操作は、大気成分除去のために行う不活性ガスパージと、大気成分除去に加え不活性ガス置換状態となったラインを珪素水素化物ガスに置換するためのプロセスガスパージとで行われており、プロセスガスパージは、あらかじめ設定した回数のパージ操作を繰り返すこととしている。しかし、プロセスガスパージを複数回繰り返す場合、配管内から大気成分が完全に除去された後も無駄なプロセスガスパージを行ってプロセスガスを無駄に消費したり、逆に、規定回数を繰り返しても配管内から大気成分を完全に除去できず、製造装置に供給するプロセスガスに不純物が混入して不良品が発生するおそれがある。
【0005】
このため、パージガスの一部を抜き出して大気成分の濃度を測定し、大気成分の除去を確認することも行われているが、プロセスガスである珪素水素化物ガスは反応性が高いため、大気成分濃度を測定するために利用できる分析法や分析装置が限られ、また、短時間で測定結果を求めることが困難であった。
【0006】
そこで本発明は、珪素水素化物ガスを使用する装置に不純物が混入していない珪素水素化物ガスを確実に供給することができる珪素水素化物ガスの供給方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の珪素水素化物ガスの供給方法は、珪素水素化物ガス使用装置に供給する珪素水素化物ガス中の酸素含有化合物の濃度を測定し、測定した酸素含有化合物の濃度があらかじめ設定された濃度を下回ったときに珪素水素化物ガス使用装置への珪素水素化物ガスを開始することを特徴とし、特に、前記酸素含有化合物が、分子構造中にSi−O−Si結合を有するシロキサンであること、前記珪素水素化物ガスがモノシランであることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の珪素水素化物ガスの供給方法は、第2の構成として、ガス容器に充填した珪素水素化物ガスをガス供給装置を介して珪素水素化物ガス使用装置に供給する際に、前記ガス供給装置から前記珪素水素化物ガス使用装置に珪素水素化物ガス供給弁を閉じた状態で前記ガス供給装置に設けられているガス容器接続用口金に前記ガス容器を接続した後、前記珪素水素化物ガス供給弁と前記ガス容器接続用口金との間の配管に対して不活性ガスを用いた不活性ガスパージを行った後、前記ガス容器からガス容器接続用口金を介して珪素水素化物ガス供給弁とガス容器接続用口金との間の配管に珪素水素化物ガスを導入してプロセスガスパージを行うとともに、前記配管内のガスの一部を分析用ガスとして抜き出して分析器に導入し、該分析器で前記分析用ガスに含まれるシロキサンの濃度を測定し、測定したシロキサンの濃度があらかじめ設定された濃度を下回ったときに、前記プロセスガスパージを終了し、前記珪素水素化物ガス供給弁を開いて前記珪素水素化物ガス使用装置への珪素水素化物ガスの供給を開始することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の珪素水素化物ガスの供給方法によれば、大気由来の水分や酸素を測定せず、珪素水素化物ガスが水分や酸素と反応して生成した酸素含有化合物、例えばシロキサンの濃度を測定するので、ガスクロマトグラフなどで容易に分析することが可能となり、高純度の珪素水素化物ガスを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の珪素水素化物ガスの供給方法を適用したガス供給装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
珪素水素化物ガス、例えばモノシランは、ガス容器(ガスシリンダー)11にあらかじめ設定された圧力で充填された状態で珪素水素化物ガス使用設備に搬送され、ガス容器11をガス供給装置(シリンダーキャビネット)12に接続し、ガス供給装置12を介して半導体製造装置や太陽電池製造装置などの珪素水素化物ガス使用装置に供給される。
【0012】
本形態例に示すガス供給装置12は、ガス容器11を接続するガス容器接続用口金13を有するガス容器接続用配管14と、珪素水素化物ガス供給弁15を介して珪素水素化物ガス使用装置に接続した珪素水素化物ガス供給配管16と、不活性ガス供給弁17を介して外部の不活性ガス供給源に接続した不活性ガス供給配管18と、パージ操作中のパージガスを排気弁19を介して外部に排出する排気配管20と、パージ操作中にガス容器接続用口金13と不活性ガス供給弁17との間の供給配管系統21から分岐し、分析弁22及び減圧弁23を介して分析器24に接続した分析用配管25と、分析用配管25内の分析用ガスを分析ガス排気弁26を介して排気する分析ガス排気配管27とを備えており、これらの配管や弁を、ガス漏洩検知器28及びダンパー29を備えたキャビネット30内に収容している。
【0013】
以下、ガス容器11内の珪素水素化物ガスを珪素水素化物ガス使用装置に供給する手順を説明する。まず、全ての弁を閉じた状態あるいは不活性ガス供給弁17をあらかじめ設定された開度に開いた状態でガス容器11をガス容器接続用口金13に接続する。次に、不活性ガス供給弁17を開き、供給配管系統21内に不活性ガス、例えば窒素ガスを導入して供給配管系統21内をあらかじめ設定された圧力に加圧する。不活性ガス供給弁17を閉じて供給配管系統21内をあらかじめ設定された時間加圧状態に保持した後、排気弁19を開いて供給配管系統21内の不活性ガスを排出する。この不活性ガスによる供給配管系統21内の加圧と排気とを行う不活性ガスパージをあらかじめ設定された回数だけ繰り返す。
【0014】
不活性ガスパージを終了した後、ガス容器11内の珪素水素化物ガスを用いたプロセスガスパージを行う。プロセスガスパージでは、不活性ガス供給弁17及び排気弁19を閉じた状態でガス容器11の容器元弁11aを開き、ガス容器11内の珪素水素化物ガスを供給配管系統21内に導入して供給配管系統21内をあらかじめ設定された圧力に加圧する。容器元弁11aを閉じて供給配管系統21内をあらかじめ設定された時間加圧状態に保持した後、排気弁19を開いて供給配管系統21内の珪素水素化物ガスを排出する。
【0015】
プロセスガスパージ操作中、珪素水素化物ガスによる供給配管系統21内の加圧を行っている際に、分析弁22を開いて供給配管系統21内の珪素水素化物ガスの一部を分析用ガスとして分析用配管25に抜き出し、減圧弁23にて分析器24に対応した圧力に減圧した分析用ガスを分析器24に導入する。分析器24では、分析用配管25から導入した分析用ガス中のシロキサン濃度を測定する。測定後は、分析弁22を閉じて分析ガス排気弁26を開き、分析用配管25内の分析用ガスを排出し、さらに、排気弁19を開いて供給配管系統21内の珪素水素化物ガスを排出する。
【0016】
そして、分析器24で測定したシロキサン濃度をあらかじめ設定された濃度と比較し、測定したシロキサン濃度があらかじめ設定された濃度を下回ったときに、通常は、分析器24におけるシロキサン濃度の検出下限値を下回ったときに、パージ終了、珪素水素化物ガス供給可能と判断する。一方、測定したシロキサン濃度があらかじめ設定された濃度以上の場合には、パージ不完全、珪素水素化物ガス供給不可と判断し、供給配管系統21内の珪素水素化物ガスを排出した後、前述のプロセスガスパージ及びシロキサン濃度の測定を繰り返す。
【0017】
珪素水素化物ガス供給可能と判断したら、排気弁19を開いて供給配管系統21内の珪素水素化物ガスを排出した後、排気弁19を閉じてから容器元弁11aを開き、さらに、珪素水素化物ガス供給弁15を開いてガス容器11から珪素水素化物ガス使用装置への珪素水素化物ガスの供給を開始する。
【0018】
このように、プロセスガスパージを行っている際に、供給配管系統21内を加圧している珪素水素化物ガスの一部を抜き出してシロキサン濃度を測定することにより、プロセスガスパージによるパージ操作によって供給配管系統21内の大気成分のパージを十分に行ったか否かを確実に判定することができ、珪素水素化物ガス使用装置へ不純物を含まない珪素水素化物ガスを供給することができる。
【0019】
さらに、分析用ガス中のシロキサン濃度の測定は、ガスクロマトグラフ質量分析計を使用して容易かつ確実に行うことができ、プロセスガスパージにおける加圧保持時間内で十分にシロキサン濃度を測定することが可能で、例えば、一般的な加圧保持時間の10分程度で測定が可能である。なお、ガスクロマトグラフ質量分析計におけるシロキサン濃度、例えばジシロキサンの検出下限値は0.01ppmである。
【符号の説明】
【0020】
11…ガス容器、11a…容器元弁、12…ガス供給装置、13…ガス容器接続用口金、14…ガス容器接続用配管、15…珪素水素化物ガス供給弁、16…珪素水素化物ガス供給配管、17…不活性ガス供給弁、18…不活性ガス供給配管、19…排気弁、20…排気配管、21…供給配管系統、22…分析弁、23…減圧弁、24…分析器、25…分析用配管、26…分析ガス排気弁、27…分析ガス排気配管、28…ガス漏洩検知器、29…ダンパー、30…キャビネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪素水素化物ガス使用装置に供給する珪素水素化物ガス中の酸素含有化合物の濃度を測定し、測定した酸素含有化合物の濃度があらかじめ設定された濃度を下回ったときに珪素水素化物ガス使用装置への珪素水素化物ガスを開始することを特徴とする珪素水素化物ガスの供給方法。
【請求項2】
前記酸素含有化合物は、分子構造中にSi−O−Si結合を有するシロキサンであることを特徴とする請求項1記載の珪素水素化物ガスの供給方法。
【請求項3】
ガス容器に充填した珪素水素化物ガスをガス供給装置を介して珪素水素化物ガス使用装置に供給する際に、前記ガス供給装置から前記珪素水素化物ガス使用装置に珪素水素化物ガス供給弁を閉じた状態で前記ガス供給装置に設けられているガス容器接続用口金に前記ガス容器を接続した後、前記珪素水素化物ガス供給弁と前記ガス容器接続用口金との間の配管に対して不活性ガスを用いた不活性ガスパージを行った後、前記ガス容器からガス容器接続用口金を介して珪素水素化物ガス供給弁とガス容器接続用口金との間の配管に珪素水素化物ガスを導入してプロセスガスパージを行うとともに、前記配管内のガスの一部を分析用ガスとして抜き出して分析器に導入し、該分析器で前記分析用ガスに含まれるシロキサンの濃度を測定し、測定したシロキサンの濃度があらかじめ設定された濃度を下回ったときに、前記プロセスガスパージを終了し、前記珪素水素化物ガス供給弁を開いて前記珪素水素化物ガス使用装置への珪素水素化物ガスの供給を開始することを特徴とする珪素水素化物ガスの供給方法。
【請求項4】
前記珪素水素化物ガスがモノシランであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の珪素水素化物ガスの供給方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−214825(P2012−214825A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79157(P2011−79157)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】