現像剤規制装置
【課題】装置本体の小型化を達成しつつ、簡易な構成で可撓性シート部材の当接状態を安定化させてコート規制を行うことが可能な現像剤規制装置を提供する。
【解決手段】湾曲して弧を形成する可撓性シート部材4−aと、可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bと、を備え、弧の外側を現像ローラ3の表面に当接させて現像剤の層厚を規制する現像剤規制装置4において、保持部材4−bは、弧の円周角が180度以下になるように可撓性シート部材4−aを保持し、可撓性シート部材4−aが現像ローラ3に当接しない状態における弧に対応する弦の中心線mが、可撓性シート部材4−aが現像ローラ3の表面に当接する状態においては中心線mと平行な現像ローラ3の法線vよりも現像ローラ3の下流側に配置されるとともに、可撓性シート部材4−aの両端を挟む壁面のうち現像ローラ3の上流側の壁面が、法線vよりも現像ローラ3の上流側に配置される。
【解決手段】湾曲して弧を形成する可撓性シート部材4−aと、可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bと、を備え、弧の外側を現像ローラ3の表面に当接させて現像剤の層厚を規制する現像剤規制装置4において、保持部材4−bは、弧の円周角が180度以下になるように可撓性シート部材4−aを保持し、可撓性シート部材4−aが現像ローラ3に当接しない状態における弧に対応する弦の中心線mが、可撓性シート部材4−aが現像ローラ3の表面に当接する状態においては中心線mと平行な現像ローラ3の法線vよりも現像ローラ3の下流側に配置されるとともに、可撓性シート部材4−aの両端を挟む壁面のうち現像ローラ3の上流側の壁面が、法線vよりも現像ローラ3の上流側に配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤担持体の表面に形成された現像剤層の層厚を規制する現像剤規制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シート材に画像を形成する画像形成装置において、像担持体としての感光体ドラム上に形成された静電潜像を現像する際の現像方式として、接触現像方式と非接触現像方式が広く用いられている。
【0003】
接触現像方式とは、現像剤担持体と感光体ドラムが接触した状態で、現像剤担持体から感光体ドラム上に現像剤が供給される現像方式である。一方で非接触現像方式とは、現像剤担持体と感光体ドラム間に所定のギャップが形成された状態で、現像剤担持体から感光体ドラム上に現像剤が飛散して供給される現像方式である。
【0004】
また、現像剤担持体としては、接触現像方式では弾性体ローラが、非接触方式では弾性体ローラもしくは金属スリーブが用いられることが一般的である。
【0005】
各々の現像方式においては、色ムラ等の画像不良が生じないために現像剤担持体の表面に形成されたコート層(現像剤層)の層厚を一定にするコート規制が行われ、その手段として、現像剤担持体の表面に当接してコート規制を行う現像剤規制装置が設けられる。なお、現像剤規制装置は、コート規制を行うとともに現像剤と摩擦することで現像剤を帯電させる機能をも有する。
【0006】
現像剤規制装置は、現像剤担持体の表面に所定の当接圧を以って当接し、コート規制を行う現像剤規制部材と現像剤規制部材を保持する保持部材を備える。また現像剤規制部材として片持ちタイプのブレード形状のものが知られている。
【0007】
図22は、従来例に係る現像剤規制装置の概略構成を示すものである。ここでは、非磁性1成分トナーを現像剤として用いた接触現像方式を採用する現像剤規制装置を示す。
【0008】
図22に示す現像剤規制装置は、現像剤担持体として現像ローラ3が用いられており、現像ローラ3は誘電層を有する弾性体ローラから構成される。また、現像ローラ3への現像剤の供給は、現像ローラ3に接触して回転する供給ローラ5によって行われる。
【0009】
供給ローラ5は、現像剤が収容される現像器内から現像剤を搬送して現像ローラ3の表面に現像剤を付着させるとともに、感光体ドラムへ供給されずに現像ローラ3の表面に残留した現像剤を一旦除去する機能をも有する。
【0010】
このようにして現像ローラ3の表面に形成されたコート層は、片持ちのブレード形状の現像剤規制部材4−cによってコート規制が行われ、さらに帯電付与される。なお、現像剤規制部材4−cは、金属薄板、もしくは表面に樹脂層を有する金属薄板とこれを接着支持する支持板金と、から構成される。
【0011】
一方、図23には従来例に係る現像剤規制装置として、磁性1成分トナーを現像剤として用いた非接触現像方式を採用する現像剤規制装置を示す。
【0012】
ここでは現像剤担持体としてアルミ素管7上に樹脂層を有する現像スリーブ8が用いら
れる。現像スリーブ8から感光体ドラムへ現像剤を供給する際は、現像スリーブ8内に設けられた固定式のマグネットローラが形成する磁界を利用して行われる。
【0013】
また、現像剤規制部材4−cにはブレード形状のゴムが用いられ、さらにこれを接着支持する支持板金が備えられる。
【0014】
そして上記で説明した接触現像方式(図22)、非接触現像方式(図23)においては、現像剤担持体として設けられる現像ローラ3、もしくは現像スリーブ8に現像バイアスを印加することで感光体ドラム上へ現像剤を供給する構成である。
【特許文献1】特開平06−250509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら上記従来例に係る現像剤規制装置においては、以下に示す問題を生じる。
【0016】
ブレード形状の現像剤規制部材を現像剤担持体に安定して当接させるためには、現像剤規制部材の長手方向の一端を保持する保持部材に対して、現像剤規制部材を強固に固定する必要がある。また、ブレード形状の長手方向の寸法をなるべく大きくとればとるほど現像剤担持体に対する当接状態は安定するが、その結果、現像器の小型化が困難になるといった問題を生じる。
【0017】
これに対して、図24に示すようにU字形状に湾曲させて弧を形成する可撓性シート部材(現像剤規制部材)を用いる現像剤規制装置が提案されている(特許文献1)。
【0018】
図24に示す現像剤規装置は、U字形状に湾曲した可撓性シート部材の弧の外側を現像剤担持体に当接させて現像剤担持体の表面のコート規制を行うものである。なお、U字形状に湾曲された可撓性シート部材は、その両端を保持部材に形成された壁面に挟まれて保持されている。
【0019】
図24に示すように、U字形状の可撓性シート部材は両端を保持部材の壁面によって保持されるので、長期間にわたって現像剤規制装置を使用しても可撓性シート部材が保持部材から剥がれる可能性が低い。
【0020】
しかしながらU字形状の可撓性シート部材を備える現像剤規制装置は、現像剤担持体に対する当接圧の制御に困難がともなうといった問題を生じる。
【0021】
すなわち、コート層の層厚を所望の値に規制するためには、可撓性シート部材の現像剤担持体に対する押し込み量sを制御し、可撓性シート部材の当接圧を適切な値で安定化させる必要がある(図25b)。ここで、可撓性シート部材の押し込み量sの変動量に対する当接圧の変動量が小さいほど、可撓性シート部材の現像剤担持体に対する当接圧が制御しやすいといえる。
【0022】
例えば、U字形状の可撓性シート部材は、現像剤担持体の回転の際にその摩擦力等によって姿勢の変形を生じる。その場合、現像剤担持体上において現像剤が付着する部分と付着しない部分とでは摩擦力の大きさが異なるので、可撓性シート部材の姿勢が大きく変化し、現像剤担持体に対する押し込み量sも大きく変動する。この際、押し込み量sの変動量に対する当接圧の変動量が大きい場合は、可撓性シート部材の当接圧が大きく変動してしまい、その結果、安定したコート規制を行うことが困難になる。
【0023】
また、U字形状の可撓性シート部材を有する現像剤規制装置では、可撓性シート部材の
大きさを大きくするほど、可撓性シート部材の押し込み量sの変動量に対する当接圧の変動量が小さくなり、当接圧の制御が行いやすくなることが知られている。
【0024】
しかしながら、可撓性シート部材の大きさを大きくすると、装置本体の小型化が困難になってしまうといった問題を生じる。また、可撓性シート部材が大きくなることで可撓性シート部材が保持部材から剥がれやすくなり、当接安定性が低下するといった問題を生じる。
【0025】
その結果、可撓性シート部材を大きくすることなく安定した当接状態を保つためには、現像剤規制装置について高い設計精度が必要であった。
【0026】
すなわち、上記従来例に係る現像剤規制装置においては、装置本体の小型化を達成しつつ、高い設計精度を必要としない簡易な構成で可撓性シート部材の当接状態を安定化させてコート規制を行う構成については開示されていない。
【0027】
そこで上記現状を鑑みて本発明においては、装置本体の小型化を達成しつつ、簡易な構成で可撓性シート部材の当接状態を安定化させてコート規制を行うことが可能な現像剤規制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的を達成するために本発明にあっては、湾曲して弧を形成する可撓性シート部材と、前記可撓性シート部材の両端を挟む壁面を有し、前記可撓性シート部材を湾曲した状態で保持する保持部材と、を備え、前記弧の外側を、現像剤を担持して回転駆動する現像剤担持体の表面に当接させて現像剤の層厚を規制する現像剤規制装置において、前記保持部材は、前記弧の円周角が180度以下になるように前記可撓性シート部材を保持し、前記可撓性シート部材が前記現像剤担持体の表面に当接しない状態における前記弧に対応する弦の垂直二等分線が、前記可撓性シート部材が前記現像剤担持体の表面に当接する状態においては、前記垂直二等分線と平行な前記現像剤担持体の法線よりも前記現像剤担持体の回転方向下流側に配置されるとともに、前記可撓性シート部材の両端を挟む前記壁面のうち前記現像剤担持体の回転方向上流側の壁面が、前記法線よりも前記現像剤担持体の回転方向上流側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、装置本体の小型化を達成しつつ、簡易な構成で可撓性シート部材の当接状態を安定化させてコート規制を行うことが可能な現像剤規制装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施の形態に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0031】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る現像剤規制装置の構成について説明を行う。
【0032】
[画像形成装置の全体構成]
図2を参照して本実施の形態における画像形成装置の全体構成を説明する。図2は、本実施の形態における画像形成装置の全体構成を示すものであって、ここでは画像形成装置として電子写真プロセス利用のフルカラーレーザープリンターを用いる。
【0033】
本実施の形態における画像形成装置は、画像形成装置本体Aと、これに着脱自在な帯電装置、現像装置、クリーニング装置、及び、感光体ドラム等を一体としたプロセスカートリッジBを備える。なお、プロセスカートリッジBの構成については後述する。
【0034】
プロセスカートリッジBは、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色ごとに備えられる。そして、中間転写ベルト20を挟んで各色の感光体ドラムの対向位置に設けられた1次転写ローラ22y、22m、22c、22kにより、各色のトナー像が中間転写ベルト20上に重ねて転写され(1次転写)、フルカラー画像を形成する。
【0035】
なお、感光体ドラム1から中間転写ベルト20に転写されずに残った未転写トナーは、クリーニング装置Cに設置されたウレタンゴム製のクリーニングブレード6によって感光体ドラム1表面から掻き落とされ、クリーニング容器内に収納される(図3)。
【0036】
なお、本実施の形態においては、現像剤として平均粒径6.0μmの非磁性1成分トナーが用いられる。
【0037】
中間転写ベルト20上に1次転写されたフルカラー画像は、中間転写ベルト20の移動方向下流側に設けられた2次転写ローラ23により、一括してシート材上に転写される(2次転写)。なお、中間転写ベルト20上の未転写トナーは、中間転写ベルトクリーナー21によって回収される。
【0038】
シート材Pは、画像形成装置本体A下部のカセット24内に積載されており、印字動作の要求とともに給送ローラ25により搬送され、2次転写ローラ23の位置において、中間転写ベルト20上に形成されたフルカラー画像が転写される。
【0039】
フルカラー画像が転写されたシート材は、その後定着ユニット26により加熱され、シート材上に画像が定着する。そして排出部27を経て画像形成装置外部に排出される。
【0040】
本実施の形態においては、各4色のプロセスカートリッジB等を収納する上部のユニットと、転写ユニット、シート材等を収納する下部ユニットは分離可能になっている。この構成によって、紙詰まり等のジャム処理発生時や、プロセスカートリッジBの交換時において、上下のユニットを開口することでこれらの処理を行うことが可能になる。
【0041】
次に、図3を参照して、本実施の形態におけるプロセスカートリッジBの構成について説明する。図3は、各色ごとに設けられたプロセスカートリッジBの1つについて、その断面における概略構成図を示したものである。なお、本実施の形態において4つのプロセスカートリッジの構成は、本質的にはすべて同じものとする。
【0042】
画像形成プロセスの中心となる感光体ドラム1には、アルミニウム製シリンダーの外周面に機能性膜である下引き層、キャリア発生層、キャリア移送層を順にコーティングした有機感光体ドラムが用いられる。そして、画像形成プロセスにおいて、感光体ドラム1は所定の速度で図3中矢印a方向へ回転駆動される。
【0043】
また、帯電装置として設けられる帯電ローラ2は、導電性ゴムのローラ部を感光体ドラム1の表面に圧接することで、感光体ドラム1とともに図中矢印方向に従動回転する。
【0044】
帯電工程においては、帯電ローラ2の芯金には−1100Vの直流電圧が印加されており、これにより誘起された電荷によって感光体ドラム1の表面電位には、−550Vとなる一様な暗部電位(Vd)が形成される。
【0045】
そして感光体ドラム1における一様な表面電荷分布面に対して、スキャナーユニット10(図2参照)が画像データーに対応したレーザー光Lを射出し、感光体ドラム1の表面を露光する。
【0046】
感光体ドラム1の表面における露光された部分は、キャリア発生層からのキャリアによって電荷が消失し、電位の絶対値が低下する。この結果、露光部分は明部電位Vl=−100V、未露光部位は暗部電位Vd=−550Vの静電潜像が形成される。
【0047】
そして静電潜像に対して現像装置Dから現像剤が供給され、静電潜像がトナー像として現像される。具体的には、現像時に現像ローラ3に対してDCバイアス=―350Vを印加することで、現像ローラ3上におけるマイナスに帯電した現像剤を感光体ドラム1上の静電潜像に供給する。
【0048】
[現像剤規制装置の構成]
図4を参照して、本実施の形態に係る現像剤規制装置について説明する。図4は、本実施の形態に係る現像剤規制装置4を備える現像装置Dの概略構成を示すものである。
【0049】
本実施の形態における現像装置Dは、現像剤担持体として設けられる現像ローラ3と、現像ローラ3に現像剤を供給する供給ローラ5と、現像ローラ3の表面におけるコート層の層厚を規制(コート規制)する現像剤規制装置4と、を備える。またこれらの部材、装置は現像容器内部に収容される。
【0050】
現像剤規制装置4は、回転駆動する現像ローラ3の表面に当接してコート規制を行う可撓性シート部材4−aと、可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bを備える。これらの構成については後述する。
【0051】
現像ローラ3には、外径φ6mmの芯金に導電性の弾性層3mmを形成したφ12mmの弾性ローラが用いられており、弾性層には、体積抵抗値106Ωmのシリコーンゴムが用いられる。
【0052】
なお、弾性ローラ表層に、現像剤への電荷付与機能を持つコート層等を設けるようにしてもよい。本実施の形態では、現像ローラ3を感光体ドラム1に安定して弾性接触させるために、弾性層の硬度をJIS−Aで45°とした。さらに、現像ローラ3上に所定のトナーコート量を得るために、現像ローラ3の表面粗さRzを6μmとした。
【0053】
供給ローラ5には、外径φ8mmの芯金上に体積抵抗値1014Ωcmの絶縁性ウレタンスポンジゴムの弾性層4mmが形成された、外径φ16mmの弾性スポンジローラーを用いた。
【0054】
現像ローラ3は、感光体ドラム1に当接しながら感光体ドラム1の回転方向に対して順方向に回転駆動し、供給ローラ5は、現像ローラ3の表面に当接しながら、現像ローラ3の回転方向と同じ方向に回転駆動する。
【0055】
供給ローラ5は、現像容器内の非磁性一成分トナー剤tを現像ローラ3上に付着させるものである。さらに、現像ローラ3上において、感光体ドラム1に現像されずに残った現像剤を現像ローラ3上から剥ぎ取り、現像容器内に回収する機能をも有する。
【0056】
供給ローラ5から現像ローラ3上に供給された非磁性一成分トナー剤は、現像ローラ3とU字形状の可撓性シート部材4−aとの当接面を通過する際、摩擦帯電により帯電する
と共に、現像剤の層厚を規制するコート規制を受ける。その結果、現像ローラ3の表面には、所定の帯電量、及びコート層厚を有するトナーコート層が形成される。
【0057】
[現像剤規制装置の設置例]
本実施の形態に係る現像剤規制装置の設置状態について説明する。なお、本実施の形態においては、下記(A)〜(C)に示す項目を用いて現像剤規制装置の設置状態を規定する(図1参照)。また、本実施の形態において、現像剤担持体として設けられる現像ローラ3の回転方向下流側を下流側、現像ローラ3の回転方向上流側を上流側と定義する。
【0058】
(A)U字形状の可撓性シート部材4−aの中心線m
U字形状の可撓性シート部材4−aの姿勢を示すものとして、U字形状の中央を縦断する線を可撓性シート部材4−aの中心線mと定義する。中心線mは、図1に示すように、現像剤ローラ3との当接が無い状態において、湾曲したU字部分の弧Rの部分に対応する弦の垂直二等分線とする。
(B)U字形状の可撓性シート部材4−aの中心線mに平行な現像剤担持体の法線v
U字形状の可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する姿勢を示すために、中心線mに平行な現像ローラ3の法線を法線vとする。
(C)保持部材4−bの凹部分の上流側壁面と同一面上にある支持線u
U字形状の可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bの凹部分を形成する両壁面のうち、上流側の壁面を含む面上の直線を支持線uとする。
【0059】
本実施の形態に係る現像剤規制装置4は、その中心線mが法線vよりも下流側にくるように、さらに支持部材4−bの回転方向上流側の壁面が、法線vよりも上流側にくるように配置されることを特徴とする。すなわち現像ローラ3の回転方向下流側から、中心線m、法線v、支持線uの順に配置されるものとする。
【0060】
さらに、可撓性シート部材4−aを湾曲した状態で保持する保持部材4−bは、湾曲した弧Rの円周角が180度以下になるように可撓性シート部材4−aの両端を保持するものとする。
【0061】
以下、本実施の形態に係る現像剤規制装置4の配置例を(配置例1)〜(配置例3)に示し、後に示す(比較例)と比較することで本実施の形態の特徴、効果について説明する。
【0062】
(設置例1)
設置例1では、可撓性シート部材4−aとして、JIS−A硬度65度、厚さ0.5mmのシート形状のウレタンゴムを用いた。そして、これをU字形状に湾曲させて弧を形成し、内径6mmのコの字形状の保持部材4−b内部に嵌め込み、U字形状の弧の外側を現像ローラ3の表面に当接させた。
【0063】
また設置例1では、可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する当接圧が線圧0.25N/cmになるように可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する押し込み量を設定した。
【0064】
なお、本実施の形態では、シート型圧力センサーシステムI-SCAN(ニッタ株式会
社製)を当接部に挟むことで、可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する当接圧を測定した。
【0065】
また、設置例1において、湾曲した状態で可撓性シート部材4−aの両端を保持するする保持部材4−bの凹部分の両壁面は、互いに平行であるとする。これにより可撓性シー
ト部材4−aの弧の円周角を180度以下にすることが可能になる。
【0066】
また、可撓性シート部材4−aは保持部材4−bの凹部分の両壁面に対して未接着であり、U字形状に曲げられたことに対する反発力f1で保持部材4−bの凹部分の両壁面を押してその姿勢が保持される(図1参照)。
【0067】
さらに、可撓性シート部材4−aが現像ローラ3に所定の当接圧を以って当接することで、保持部材4−bの凹部分の底面で可撓性シート部材4−aの両端部エッジ面eが保持され、可撓性シート部材4−aの姿勢が安定する。
【0068】
なお、可撓性シート部材4−aの両端部エッジ面eと保持部材4−bの凹部の底面の摩擦力が高いほど、可撓性シート部材4−aの保持状態は安定する。また、エッジ面eの面積が小さい場合は、エッジ面eを保持部材4−bの底面に直接接着する構成であってもよい。
【0069】
設置例1においては、現像剤規制装置4を中心線mが現像ローラ3の法線vに対して下流側にあり、法線vの中心線mからの距離(m−v)が2.0mmとなるよう設置した。この時、支持線uは、法線vに対して上流側に位置する。
【0070】
(設置例2)
設置例2において、現像剤規制装置4の構成は上記で説明した設置例1と何ら異なるものではないので、その説明は省略する。設置例2では、現像剤規制装置4を、中心線mが現像ローラ3の法線vに対して下流側にあり、法線vの中心線mからの距離(m−v)が1.0mmとなるように配置した。この時、支持線uは法線vに対して上流側に位置する。
【0071】
(設置例3)
設置例3において、現像剤規制装置4の構成は上記で説明した設置例1と何ら異なるものではないので、その説明は省略する。設置例3においては、現像剤規制装置4を、中心線mが現像ローラ3表面の法線vに対して下流側にあり、法線vの中心線mからの距離(m−v)が2.8mmとなるように配置した。この時、支持線uは、法線vとほぼ同一直線上に位置する。
【0072】
ここで、上記で説明した(設置例1)〜(設置例3)の効果を検証するために(設置例1)〜(設置例3)に対する比較例として、(比較例1−1)、(比較例1−2)を以下のように設けた。なお、これらの比較結果に関しては図26を用いて後述する。
【0073】
(比較例1−1)
図7に比較例1−1の概略構成を示す。比較例1−1は、上記で説明した(設置例1)〜(設置例3)との比較において、U字形状の可撓性シート部材4−aの設置状態が異なるものである。
【0074】
なお、可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する当接圧は、(設置例1)〜(設置例3)と同じ値に設定されており、使用されるゴムシートの物性等も(設置例1)〜(設置例3)と同じである。比較例1−1では、中心線mが法線vと同一線上にくるように、すなわち、湾曲したU字形状の弧の頂点が現像ローラ3の表面に当接するように設定した。
【0075】
(比較例1−2)
図8に比較例1−2の概略構成を示す。比較例1−2は、上記で説明した(設置例1)
〜(設置例3)との比較において、U字形状の可撓性シート部材4−aの設置状態が異なるものである。
【0076】
なお、可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する当接圧は、(設置例1)〜(設置例3)と同じ値に設定されており、使用されているゴムシートの物性等も(設置例1)〜(設置例3)と同じである。比較例1−2では、中心線mが法線vに対して上流側くるようにし、法線vの中心線mからの間隔が1.0mmになるように設定した。
【0077】
(設置例4)
次に、上記(設置例1)〜(設置例3)とは異なる設置例であって、本実施の形態に係る現像剤規制装置4の設置状態を示す(設置例4)について説明する。
【0078】
設置例4における現像剤規制装置4の基本的な構成は、上記で説明した(設置例1)〜(設置例3)と同様であり、U字形状の可撓性シート部材4−aの中心線mを法線vに対して下流側2.8mmに配置する構成も(設置例3)と同様である。
【0079】
しかしながら、可撓性シート部材4−aを保持部材4−bの凹部分を形成する両壁面のうちの上流側の壁面に接着固定する点で(設置例3)と異なる。
【0080】
次に、上記(設置例1)〜(設置例4)とは異なる設置例であって、本実施の形態に係る現像剤規制装置4の設置状態を示す(設置例5)について説明する。
【0081】
(設置例5)
図9に設置例5に係る現像剤規制装置4の概略構成を示す。設置例5では、JIS−A硬度75度、厚さ0.4mmのシート形状のウレタンゴムを可撓性シート部材4−aに用いた。そして、これをU字形状に湾曲させて内径7mmのコの字形状の保持部材4−b内部に嵌め込み、U字形状の弧の部分を現像ローラ3の表面に当接させた。
【0082】
さらに、現像ローラ3に対する当接圧が、線圧0.25N/cmになるように押し込み量を設定した。すなわち、設置例5は可撓性シート部材4−aに用いられるシート形状のウレタンゴムの形状、性能、及び保持部材4−bの寸法が(設置例1)〜(設置例4)とは異なる構成である。
【0083】
なお、保持部材4−bの凹部分の両壁面は平行に設置されており、可撓性シート部材4−aは保持部材4−bに対して未接着で保持される。そして設置例5では、中心線mが法線vに対して下流側にあって、法線vの中心線mからの距離(m−v)が1.0mmとなるように配置に設定されている。
【0084】
ここで、(設置例5)の効果を検証するために、(設置例5)に対する比較例として、
(比較例5−1)〜(比較例5−3)を以下のように設けた。なお、これらの比較結果に関しては後述する。
【0085】
(比較例5−1)
図10に比較例5−1の概略構成を示す。比較例5−1は、上記で説明した(設置例5)との比較において、U字形状の可撓性シート部材4−aの設置状態が異なるものである。
【0086】
可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する当接圧は、(設置例5)と同じ値に設定されており、使用されているゴムシートの物性等も(設置例5)と同じである。比較例5−1では、中心線mが現像ローラ3表面の法線vと同一線上にあり、U字形状の弧の部
分の頂点が現像ローラ3表面に当接するように設定した。
【0087】
(比較例5−2)
図11に比較例5−2の概略構成を示す。比較例5−2は、上記で説明した(設置例5)との比較において、U字形状の可撓性シート部材4−aの設置状態が異なるものである。
【0088】
可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する当接圧は、(設置例5)と同じ値に設定されており、使用されているゴムシートの物性等も(設置例5)と同じである。
【0089】
比較例5−2では、厚さ6.2mmの板形状の保持部材4−bに対して、湾曲した可撓性シート部材4−aの内面を貼り付けてU字形状にしたものを用いる。また、(設置例5)と同様に、中心線mは法線vに対して下流側にあり、法線vの中心線mからの距離(m−v)が1.0mmとなるように配置した。
【0090】
(比較例5−3)
図12に比較例5−3の概略構成を示す。比較例5−3は、上記で説明した(設置例5)との比較において、U字形状の可撓性シート部材4−aの設置状態が異なるものである。
【0091】
比較例5−3においても、可撓性シート部材4−aとして、JIS−A硬度75度、厚さ0.4mmのシート形状のウレタンゴムを用い、これをU字形状に曲げて、保持部材4−b内部に嵌め込み、U字の凸部を現像ローラ3に当接させた。また、現像ローラ3に対する当接圧は、線圧0.25N/cmになるように、所定の量に押し込み量を設定した。
【0092】
比較例5−3では、可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bの凹部を形成する両壁を、現像ローラ3側に向けて広がるように設けた。すなわち、可撓性シート部材4−a湾曲した弧の部分の円周角が、180度を超える構成とした。
【0093】
なお、可撓性シート部材4−aの弧の円周角が180度を超える構成は本比較例のみである。
【0094】
比較例5−3において、保持部材4−bの凹部を形成する壁面は、16度の傾きを有しており、可撓性シート部材4−aを現像ローラ3に当接する前の状態における、弦の両端の幅がほぼ7mmになるように設定されている。
【0095】
また、中心線mは法線vに対して下流側にあり、法線vの中心線mからの距離(m−v)が1.0mmとなるように配置した。このときの支持線uは、法線vに対して上流側に位置する。
【0096】
[設置例と比較例の比較結果に基づく考察]
図26に、上記で説明した本実施の形態に係る現像剤規制装置4の(設置例1)〜(設置例5)と、各比較例の比較結果を示す。以下、図26に示す比較結果に基づき、本実施の形態に係る現像剤規制装置4の特徴、効果について述べる。
【0097】
図26における各項目の説明を以下に示す。
【0098】
(設定条件)
法線vに対する対称線位置:対称線とは、U字形状の可撓性シート部材4−aの中心線mを示すものであり、可撓性シート部材4−aが形成する弧の対称線を示す。この項目は
、対称線とこれに平行な法線vの位置関係を示す。例えば、(下流2.8mm)と記載されている場合は、中心線mが法線vから下流側に2.8mmのところに設けられる状態を意味する。
法線に対する上流面:上流面とは、可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bの凹部分を構成する壁面のうち、現像剤担持体の回転方向上流側の壁面を示し、この面と法線vとの位置関係を示す。すなわち(上流)と記載されている場合は、支持線uが法線vよりも上流側にあることを示す。
支持面:可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bの凹部分を形成する両壁面のうち上下流両壁面の関係を示す。
シート接着面:可撓性シート部材4−aとして用いられる可撓性シート部材が、保持部材4−bに接着されているか否かを示す。なお、軽接着は「無」と同等とする。
保持幅:可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bの凹部分を形成する壁面間の距離を示す。
厚さ:可撓性シート部材4−aの厚さを示す。単位はmm。
硬度:可撓性シート部材4−aの硬度を示す。測定はアスカーC硬度。
【0099】
(評価項目)
設計公差:押し込み量に対しての当接圧変化を調べた結果についてのもので、押し込み量に対して当接圧の変化が大きいほど、設計条件上ラチチュードが狭くなるという問題を生じる。
当接圧上昇:現像剤担持体の回転に伴う可撓性シート部材4−aの姿勢変形等により、当接圧がどの程度まで上昇し得るかを調べた結果。基本状態からの圧力上昇が大きいものは、可撓性シート部材4−a、現像剤担持体、現像剤等に大きな負荷がかかるという問題を生じる。
姿勢圧変化:各構成で、姿勢変化に伴う当接圧変化を調べた結果についてのもので、当接圧変化が大きいものや圧変化しやすい構成は、負荷の問題や、当接圧設定の設計公差が小さくなるという問題を生じる。
下流面シート安定性:可撓性シート部材4−aの下流側の面が、保持部材4−bにより加圧安定支持されるかを調べた結果で、この点が劣ると、可撓性シート部材4−aをうまく支持できず、捲れやすくなるという問題を生じる。
総合評価:各項目に関してまとめた評価
【0100】
上記の4項目の評価項目において、×は許容できないレベルであることを示すのに対して、△は許容可能なレベルを示すものであり、○は良好なレベルを示す。許容可能なレベルと良好なレベルとの差は、例えば、設計公差として、組立可能ならば△であるが、検査フリーまで設計公差が広い場合は○など、許容レベルのものに対してより明らかに優れた点がある場合を良好なレベルとした。
【0101】
図26に示すように各比較例の構成が、許容出来ないレベルの項目を含んでいるのに対して、(設置例1)〜(設置例5)の構成は、全ての項目で、少なくとも許容可能なレベル以上であることがわかる。なお、△の項目が多い設置例は、本発明の構成条件の境界領域にあるといえる。
【0102】
[設置例1,2,3及び比較例1−1、1−2に関する考察]
以下、上記で説明した現像剤規制装置4の(設置例1)〜(設置例3)と、それに対する(比較例1−1)、(比較例1−2)の比較結果に基づく考察を示す。
【0103】
(設計公差)
(設置例1)〜(設置例3)及び(比較例1−1)における、押し込み量に対する当接圧の値の測定値結果を図17に示す。
【0104】
図17に示すように、比較例1−1に比べ、(設置例1)及び(設置例3)は傾きが緩やかで、押し込み量変化に対する当接圧変化が小さいことがわかる。これは、設定ラチチュードが広い構成であることを意味する。また、(設置例2)においても、(設置例1)、(設置例3)ほどの大きな相違はみられないものの、(比較例1−1)に対して傾きが緩やかで、一定の効果を得ることができた。
【0105】
(当接圧上昇)
(設置例1)〜(設置例3)及び比較例1−1における、U字形状の可撓性シート部材4−aが変形した場合の、当接圧の最大上昇率を図18に示す。
【0106】
本実施の形態では、現像ローラ3の回転により可撓性シート部材4−aが摩擦力によって引きずられて姿勢変化を生じた時、初期状態の当接状態から当接圧がどの程度まで上昇するかを測定したものである。
【0107】
なお実験では、現像ローラ3と可撓性シート部材4−aの間に現像剤等の潤滑性のある物質は介させず、非常に高い摩擦係数を持つ状態で測定を行い、通常の画像形成装置の使用状態では起こりえない程度まで可撓性シート部材4−aを変形させた。
【0108】
本実施の形態では、現像ローラ3の軸受け部に圧力センサーを設けて現像ローラ3を少しずつ回転させ、可撓性シート部材4−aが変形して現像ローラ3の軸受け部での圧力が最大になったときの値を測定した。
【0109】
なお、現像ローラ3の回転駆動を一般的なモーターのトルクの範囲で行う過程において、可撓性シート部材4−aの変形が大きくなることで可撓性シート部材4−aが保持部材4−bからはずれるような現象は起こらなかった。
【0110】
比較例1−1の条件においては、現像剤担持体の回転と共に可撓性シート部材4−aの姿勢が変形して当接圧が上昇し、変形が最大となった時の当接圧が初期の当接圧の140%になった。
【0111】
一方、設置例1、3では、当接圧は上昇することなくむしろ下がった。また、設置例2にでは現像剤担持体の回転により当接圧が最大107%まで上昇したが、更に回転させることで下降した。
【0112】
この結果を更に考察するために、上記に挙げた設置例1〜3では挙げていない、中心線mと現像ローラ3表面の法線vとの距離が0.5mmの場合と1.5mmの場合についても調べたところ、図18に示すような結果となり、距離との相関が見られた。
【0113】
これは、可撓性シート部材4−aが変形にともなって現像剤担持体の曲率が変化することで生じる相関関係であると考えられる。なお、比較例1−2の場合は当接圧が比較例1−1以上に上昇した。
【0114】
(可撓性シート部材の姿勢変化)
(設置例1)、(設置例2)及び比較例1−1における、現像剤担持体の変形と当接圧の変化の関係を考察する。
【0115】
実験は、現像剤担持体の順方向への回転と、バッククラッシュ等を想定した、わずかな逆方向への回転における可撓性シート部材4−aの変形を観察し、変形時に当接圧がどのように変化するかを測定した。
【0116】
(設置例1)、(設置例2)においては、共に姿勢の変化は少なく、変形における圧力低下も少なかった。
【0117】
一方(設置例3)においては、図19に示すような現像剤担持体の順回転方向への可撓性シート部材4−aの変形により、当接圧は最大30%程度低下した。
【0118】
当接圧を一定に保つためには、実際に使用する状態を想定して可撓性シート部材4−aの押し込み量を大きくすることで解決することが可能である。
【0119】
なお、法線vに対して支持線uが下流側にある場合では、現像剤担持体の回転が無い状況でも可撓性シート部材4−aと現像剤担持体の加圧力のみで可撓性シート部材4−aの変形が大きくなり、姿勢は不安定になる。
【0120】
(設置例4)は、(設置例3)と同様の構成で可撓性シート部材4−aを保持部材4−bに接着するため、姿勢変形を抑えることが可能になり、それに伴う当接圧の変化も抑えることができる。
【0121】
なお、図26における評価項目には挙げていないが、接着面を持つ構成と未接着の構成では、製作の工程数や、貼り付け面の精度の要求などにおいては、未接着の構成の方が優れている。
【0122】
比較例1−1においては、姿勢変形による当接圧の上昇は既に述べたとおりであるが、現像剤担持体の逆方向への回転においても姿勢変形し当接圧上昇が起こる。すなわち、比較例1−1においては、わずかな現像剤担持体の回転に対して、当接圧の変化が大きいと言える。
【0123】
[設置例5及び比較例5−1、5−2、5−3に関する考察]
以下、上記で説明した現像剤規制装置4の(設置例5)と、それに対する(比較例5−1)、(比較例5−2)、(比較例5−3)の比較結果に基づく考察を示す。
【0124】
(設計公差)
図20は(設置例5)に用いた可撓性シート部材4−aを、中心線mと法線vの間隔を変えた上で、押し込み量と当接圧の関係を調べた測定結果である。ここでも、中心線mが法線vよりも下流側にある方が当接圧の変化量が小さいく、設計公差が大きいことがわかる。
【0125】
(当接圧上昇)
比較例5−1は、比較例1−1と同様に当接圧上昇は最大150%程度にまで上昇したが、一方で設置例5の場合は110%以下にとどまった。
【0126】
(可撓性シート部材の姿勢圧変化)
比較例5−1では、可撓性シート部材4−aの姿勢の変化に伴う当接圧の変化が大きいのに対して、設置例5では当接圧の変化は小さい。
【0127】
また、比較例5−2では、他の設置例に比べて可撓性シート部材4−aの変形を抑える壁がないため可撓性シート部材4の変形が大きくなり易く、それに伴って当接圧が低下しやすい。
【0128】
一方で押し込み量を大きくして、低下した分の当接圧を上げる試みをしたところ、更に
可撓性シート部材4−aの姿勢変形が大きくなり、結果的に十分な当接圧を得ることができなかった。よって比較例5−2の構成では当接状態を安定化させることが困難である。
【0129】
(下流面シート安定性)
図12に示すように、比較例5−3は保持部材4−bの凹部分の形状が(設置例1)〜(設置例5)と異なるものであり、可撓性シート部材4−aの弧の部分の円周角が180度を超える形状を有する。
【0130】
すなわち、保持部材4−bの凹部分を形成する両壁面が現像剤担持体方向に開く構成であるので、可撓性シート部材4−aが保持部材4−bに加圧されて姿勢を保持されにくくなる。
【0131】
このため、現像剤担持体が回転すると保持部材4−bの凹部分の下流側の壁面が図12中の矢印n方向に倒れやすくなり、可撓性シート部材4−aの保持状態が不安定になる。よって比較例5−3の構成では当接状態を安定化させることが困難である。
【0132】
すなわち本実施の形態においては、可撓性シート部材4−aを保持部材4−bに強固に接着しなくとも、装置本体の使用状態において可撓性シート部材4−aが保持部材4−bから剥がれる可能性が低い。また、現像剤担持体に対する当接圧を安定化することができる。
【0133】
以上より、本実施の形態における現像剤規制装置によれば、装置本体の小型化を達成しつつ、簡易な構成で可撓性シート部材の当接状態を安定化させてコート規制を行うことが可能な現像剤規制装置を提供することができる。
【0134】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る現像剤規制装置の構成について説明を行う。
【0135】
[画像形成装置の全体構成]
図5を参照して本実施の形態における画像形成装置の全体構成を説明する。図5は、本実施の形態における画像形成装置の全体構成を示すものであって、ここでは画像形成装置として、電子写真プロセス利用のモノクロレーザープリンターを用いる。
【0136】
本実施の形態における画像形成装置は、画像形成装置本体Aと、これに着脱自在な帯電装置、現像装置、クリーニング装置、及び、感光体ドラム等を一体としたプロセスカートリッジBと、により構成されている。なお、プロセスカートリッジBの構成については後述する。また、本実施の形態においては、平均粒径6.0μmの磁性1成分トナーを使用する。
【0137】
本実施の形態における画像形成装置は、非接触現像方式によって感光体ドラムに現像剤を供給する点において、上記で説明した第1の実施の形態と異なる。以下、非接触現像方式による現像プロセスについてのみ説明を行う。
【0138】
図6に本実施の形態における現像装置Dの概略構成を示す。静電潜像が形成された感光体ドラムの表面に対し、現像装置Dに備えられる現像剤担持体としての現像スリーブ8から現像剤が供給される。
【0139】
図6に示すように、現像スリーブ8と感光体ドラムの間には、最近接部において280μmのギャップが保たれており、感光体ドラムの回転方向に対して順方向に回転する。そして現像スリーブ8には、画像形成工程時にDCバイアス=―350Vと、周波数f=2
200HzのACバイアス=1400Vppの矩形波が印加されている。
【0140】
現像スリーブ8上で摩擦帯電によりマイナスに帯電した磁性トナーは、ACバイアスにより、感光体ドラムと現像スリーブが近接する現像部分でその間を往復運動する。そして、静電潜像の電位と現像スリーブ8に印加されたバイアスによる電位との関係により、明部電位部にのみ飛翔して静電潜像を現像する。
【0141】
なお、現像スリーブ8に内包された固定のマグネットローラー7には、現像容器内及び現像部付近に磁極が設けられている。本実施の形態においては、現像部付近の磁極の磁力を、現像スリーブ表面で800Gにすることで、電位設定で制御できないような不適当な電荷を持ったトナーが誤ってVd部に飛翔することを抑えている。
【0142】
感光体ドラムに接触する転写ローラには直流電圧が印加されており、感光体ドラムとの間で電界が形成されている。これにより、感光体ドラム上で実像化されたトナー像は、電界の力を受けて感光体ドラム上からシート材上に転写される。
【0143】
一方、感光体ドラム1上で記録紙に転写されずに残った未転写トナーは、クリーニング装置Cに設置されたウレタンゴム製のクリーニングブレードにより、ドラム表面から掻き落とされ、クリーニング容器内に収納される。
【0144】
現像スリーブ8には、導電性樹脂をコートしたφ12の金属スリーブが用いられ、現像スリーブ8内部には所定の磁極配置を持った固定のマグネットローラー7が設けられている。
【0145】
現像容器内の磁性トナーはマグネットローラー7との磁力により、現像スリーブ8表面に引き寄せられる。現像スリーブ8表面に付着した磁性トナーは、現像スリーブ8の回転により搬送され、現像スリーブ8とU字形状の現像剤規制装置4の当接面を通過する際、摩擦帯電により帯電される共にコート層厚の規制を受ける。
【0146】
[現像剤規制装置の設置]
以下、本実施の形態に係る現像剤規制装置4の配置例を(設置例6)、(設置例7)、(設置例8)に示し、後に示す(比較例)と比較することで本実施の形態の特徴、効果について説明する。
【0147】
また、現像剤規制装置の設置状態を示すために、上記第1の実施の形態と同様に、中心線m、法線v、支持線uを規定する。
【0148】
(設置例6)
図13に示す設置例6では、可撓性シート部材4−aとしてJIS−A硬度65度、厚さ0.5mmのシート形状のウレタンゴムを用いる。そして、これをU字形状に湾曲させて、内径6mmのコの字形状の保持部材4−bの凹部分に嵌め込み、U字形状の弧の外側を現像スリーブ8に当接させた。
【0149】
また、設置例6においては、可撓性シート部材4−aの現像スリーブ8に対する当接圧が線圧0.25N/cmになるように、可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する押し込み量を設定している。
【0150】
なお、本実施の形態では、可撓性シート部材4−aの現像スリーブ8に対する当接圧をシート型圧力センサーシステムI-SCAN(ニッタ株式会社)を用いて測定した。
【0151】
また、設置例6において、可撓性シート部材4−aの両端を保持するする保持部材4−bの凹部分を形成する両壁面は互いに平行なものとする。
【0152】
また、可撓性シート部材4−aは保持部材4−bに対して未接着に保持される。本実施の形態においては、中心線mは現像スリーブ8表面の法線vに対して下流側にあり、その距離は2.0mmに設定されている。この時、支持線uは法線vに対して上流側に位置する。
【0153】
ここで、上記で説明した(設置例6)の効果を検証するために、(設置例6)に対する
比較例として、(比較例6−1)を以下のように設けた。なお、これらの比較結果に関しては後述する。
【0154】
(比較例6−1)
図14に比較例6の概略構成を示す。比較例6は、上記で説明した(設置例6)との比較において、U字形状の可撓性シート部材4−aの設置状態が異なるものである。なお、可撓性シート部材4−aの現像スリーブ8に対する当接圧は(設置例6)と同じ値に設定されており、使用されているゴムシートの物性等も(設置例6)と同じである。
【0155】
図14に示すように、比較例6において中心線mは、現像スリーブ8表面の法線vと同一線上にあり、すなわち、U字形状の可撓性シート部材4−aの弧の部分の頂点が当接するように設定されている。
【0156】
(設置例7)
図15に設置例7の概略構成を示す。設置例7は、上記で説明した(設置例6)とU字形状の可撓性シート部材4−aの設置状態が異なるものである。なお、可撓性シート部材4−aの現像スリーブ8に対する当接圧は、(設置例6)と同じ値に設定されており、使用されているゴムシートの物性等も(設置例6)と同じである。
【0157】
図15に示すように、設置例7において中心線mは、現像スリーブ8表面の法線vに対して下流側にあり、中心線mからの距離は1.0mmに設定されている。
【0158】
(設置例8)
次に、上記(設置例6)とは異なる設置例であって、本実施の形態に係る現像剤規制装置4の設置状態を示す(設置例8)について説明する。
【0159】
図16に設置例8の概略構成を示す。設置例8は、U字形状の可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bの凹部分を形成する両壁面が平行ではなく、現像スリーブ8側に向けて狭まる構成を有する。
【0160】
設置例8においては、保持部材4−bの凹部分の壁面が18度の傾きを有する。さらに、可撓性シート部材4−aを現像スリーブ8に当接させる前の状態における、可撓性シート部材4−aの弧の両端部、すなわち、保持部材4−bとの両接点の距離がほぼ6mmになるように設定されている。
【0161】
設置例8においても、現像スリーブ8に対する当接圧が線圧0.25N/cmになるように所定の量に押し込み量が設定される。また、中心線mは、設置例7と同様に現像スリーブ8表面の法線vに対して下流側に1.0mmの距離に設定されている。
【0162】
[設置例6,7,8と比較例6−1の比較結果に基づく考察]
図26に本実施の形態に係る現像剤規制装置4の(設置例6)、(設置例7)、(設置
例8)と、比較例6−1の比較結果を示す。以下、図26に示す比較結果に基づき、本実施の形態に係る現像剤規制装置4の特徴、効果について述べる。
【0163】
なお、図26に示す各項目は上記第1の実施の形態に示す項目と何ら変わるものではないので、各項目に関する説明はここでは省略する。
【0164】
(当接圧上昇)
(設置例6)、(設置例7)(設置例8)のU字形状の可撓性シート部材4−aの構成は、(設置例1)に述べたものと同様である。しかしながら、本実施の形態においては磁性トナーを用いるので、第1の実施の形態と比較すると、可撓性シート部材4−aの変形が起こりやすい。
【0165】
これは、可撓性シート部材4−aに侵入しようとする現像剤tが磁気穂を形成するためトナー搬送力が大きく、現像剤が可撓性シート部材4−aを押す作用gが加わるためである。
【0166】
現像剤の磁気穂により押された可撓性シート部材4−aは、図21に示すように変形し、それによって当接圧が変化しやすくなる。
【0167】
搬送トナーが介在する状態での当接圧は、(設置例6)の場合では、最大で110%程度あったが、比較例6においては150%程度まで上昇した。また、(設置例7)においては、許容の限界値に近い125%程度の上昇が見られた。
【0168】
(設置例8)の構成では、可撓性シート部材4−aを変形させようとする力f3に対して、可撓性シート部材4−aの下流側エッジ面eが力を受けやすくなるため、可撓性シート部材4−aの下流側の姿勢の変形を抑えられる。よって、当接圧の上昇も抑えることが可能になる。
【0169】
(可撓性シート部材の姿勢圧変化)
上記で説明したように、第1の実施の形態と比較して、下流側方向への変形への力が付加される。それに伴い、(比較例6−1)の構成では、より大きな当接圧の変化が起こるのに対して、(設置例6)では、当接圧の上昇を最小限に抑えることができた。また、(設置例8)においては、姿勢の安定が図られるため、(設置例7)よりも、更に安定した当接状態が得られ、当接圧の上昇も110%程度に抑えることができた。
【0170】
すなわち本実施の形態においては、可撓性シート部材4−aを保持部材4−bに強固に接着しなくとも、装置本体の使用状態において可撓性シート部材4−aが保持部材4−bから剥がれる可能性が低い。また、現像剤担持体に対する当接圧を安定化することができる。
【0171】
以上より、本実施の形態における現像剤規制装置によれば、装置本体の小型化を達成しつつ、簡易な構成で可撓性シート部材の当接状態を安定化させてコート規制を行うことが可能な現像剤規制装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】第1の実施の形態に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図2】第1の実施の形態における画像形成装置の概略構成図
【図3】第1の実施の形態におけるプロセスカートリッジの概略構成図
【図4】第1の実施の形態における現像装置Dの概略構成図
【図5】第2の実施の形態における画像形成装置の概略構成図
【図6】第2の実施の形態における現像装置Dの概略構成図
【図7】比較例1−1に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図8】比較例1−2に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図9】第1の実施の形態に係る現像剤規制装置の概略構成図(設置例5)
【図10】比較例5−1に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図11】比較例5−2に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図12】比較例5−3に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図13】第2の実施の形態に係る現像剤規制装置の概略構成図(設置例6)
【図14】比較例6−1に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図15】設置例7に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図16】第2の実施の形態に係る現像剤規制装置の概略構成図(設置例8)
【図17】第1の実施の形態における押し込み量に対する当接圧の値の測定結果
【図18】第1の実施の形態における当接圧の最大上昇率を示す図
【図19】設置例3における現像剤規制装置の概略構成図
【図20】押し込み量に対する当接圧の値の測定結果
【図21】第2の実施の形態に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図22】従来例に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図23】従来例に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図24】従来例に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図25a】可撓性シート部材の押し込み量sを表す模式図
【図25b】可撓性シート部材の押し込み量sを表す模式図
【図26】設置例と比較例の比較結果
【符号の説明】
【0173】
3 現像ローラ(現像剤担持体)
4 現像剤規制装置
4−a可撓性シート部材
4−b保持部材
m 中心線(弧に対応する弦の垂直二等分線)
v 法線(中心線に平行な現像ローラ3の法線)
u 支持線(上流側の壁面と同一面にある直線)
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤担持体の表面に形成された現像剤層の層厚を規制する現像剤規制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シート材に画像を形成する画像形成装置において、像担持体としての感光体ドラム上に形成された静電潜像を現像する際の現像方式として、接触現像方式と非接触現像方式が広く用いられている。
【0003】
接触現像方式とは、現像剤担持体と感光体ドラムが接触した状態で、現像剤担持体から感光体ドラム上に現像剤が供給される現像方式である。一方で非接触現像方式とは、現像剤担持体と感光体ドラム間に所定のギャップが形成された状態で、現像剤担持体から感光体ドラム上に現像剤が飛散して供給される現像方式である。
【0004】
また、現像剤担持体としては、接触現像方式では弾性体ローラが、非接触方式では弾性体ローラもしくは金属スリーブが用いられることが一般的である。
【0005】
各々の現像方式においては、色ムラ等の画像不良が生じないために現像剤担持体の表面に形成されたコート層(現像剤層)の層厚を一定にするコート規制が行われ、その手段として、現像剤担持体の表面に当接してコート規制を行う現像剤規制装置が設けられる。なお、現像剤規制装置は、コート規制を行うとともに現像剤と摩擦することで現像剤を帯電させる機能をも有する。
【0006】
現像剤規制装置は、現像剤担持体の表面に所定の当接圧を以って当接し、コート規制を行う現像剤規制部材と現像剤規制部材を保持する保持部材を備える。また現像剤規制部材として片持ちタイプのブレード形状のものが知られている。
【0007】
図22は、従来例に係る現像剤規制装置の概略構成を示すものである。ここでは、非磁性1成分トナーを現像剤として用いた接触現像方式を採用する現像剤規制装置を示す。
【0008】
図22に示す現像剤規制装置は、現像剤担持体として現像ローラ3が用いられており、現像ローラ3は誘電層を有する弾性体ローラから構成される。また、現像ローラ3への現像剤の供給は、現像ローラ3に接触して回転する供給ローラ5によって行われる。
【0009】
供給ローラ5は、現像剤が収容される現像器内から現像剤を搬送して現像ローラ3の表面に現像剤を付着させるとともに、感光体ドラムへ供給されずに現像ローラ3の表面に残留した現像剤を一旦除去する機能をも有する。
【0010】
このようにして現像ローラ3の表面に形成されたコート層は、片持ちのブレード形状の現像剤規制部材4−cによってコート規制が行われ、さらに帯電付与される。なお、現像剤規制部材4−cは、金属薄板、もしくは表面に樹脂層を有する金属薄板とこれを接着支持する支持板金と、から構成される。
【0011】
一方、図23には従来例に係る現像剤規制装置として、磁性1成分トナーを現像剤として用いた非接触現像方式を採用する現像剤規制装置を示す。
【0012】
ここでは現像剤担持体としてアルミ素管7上に樹脂層を有する現像スリーブ8が用いら
れる。現像スリーブ8から感光体ドラムへ現像剤を供給する際は、現像スリーブ8内に設けられた固定式のマグネットローラが形成する磁界を利用して行われる。
【0013】
また、現像剤規制部材4−cにはブレード形状のゴムが用いられ、さらにこれを接着支持する支持板金が備えられる。
【0014】
そして上記で説明した接触現像方式(図22)、非接触現像方式(図23)においては、現像剤担持体として設けられる現像ローラ3、もしくは現像スリーブ8に現像バイアスを印加することで感光体ドラム上へ現像剤を供給する構成である。
【特許文献1】特開平06−250509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら上記従来例に係る現像剤規制装置においては、以下に示す問題を生じる。
【0016】
ブレード形状の現像剤規制部材を現像剤担持体に安定して当接させるためには、現像剤規制部材の長手方向の一端を保持する保持部材に対して、現像剤規制部材を強固に固定する必要がある。また、ブレード形状の長手方向の寸法をなるべく大きくとればとるほど現像剤担持体に対する当接状態は安定するが、その結果、現像器の小型化が困難になるといった問題を生じる。
【0017】
これに対して、図24に示すようにU字形状に湾曲させて弧を形成する可撓性シート部材(現像剤規制部材)を用いる現像剤規制装置が提案されている(特許文献1)。
【0018】
図24に示す現像剤規装置は、U字形状に湾曲した可撓性シート部材の弧の外側を現像剤担持体に当接させて現像剤担持体の表面のコート規制を行うものである。なお、U字形状に湾曲された可撓性シート部材は、その両端を保持部材に形成された壁面に挟まれて保持されている。
【0019】
図24に示すように、U字形状の可撓性シート部材は両端を保持部材の壁面によって保持されるので、長期間にわたって現像剤規制装置を使用しても可撓性シート部材が保持部材から剥がれる可能性が低い。
【0020】
しかしながらU字形状の可撓性シート部材を備える現像剤規制装置は、現像剤担持体に対する当接圧の制御に困難がともなうといった問題を生じる。
【0021】
すなわち、コート層の層厚を所望の値に規制するためには、可撓性シート部材の現像剤担持体に対する押し込み量sを制御し、可撓性シート部材の当接圧を適切な値で安定化させる必要がある(図25b)。ここで、可撓性シート部材の押し込み量sの変動量に対する当接圧の変動量が小さいほど、可撓性シート部材の現像剤担持体に対する当接圧が制御しやすいといえる。
【0022】
例えば、U字形状の可撓性シート部材は、現像剤担持体の回転の際にその摩擦力等によって姿勢の変形を生じる。その場合、現像剤担持体上において現像剤が付着する部分と付着しない部分とでは摩擦力の大きさが異なるので、可撓性シート部材の姿勢が大きく変化し、現像剤担持体に対する押し込み量sも大きく変動する。この際、押し込み量sの変動量に対する当接圧の変動量が大きい場合は、可撓性シート部材の当接圧が大きく変動してしまい、その結果、安定したコート規制を行うことが困難になる。
【0023】
また、U字形状の可撓性シート部材を有する現像剤規制装置では、可撓性シート部材の
大きさを大きくするほど、可撓性シート部材の押し込み量sの変動量に対する当接圧の変動量が小さくなり、当接圧の制御が行いやすくなることが知られている。
【0024】
しかしながら、可撓性シート部材の大きさを大きくすると、装置本体の小型化が困難になってしまうといった問題を生じる。また、可撓性シート部材が大きくなることで可撓性シート部材が保持部材から剥がれやすくなり、当接安定性が低下するといった問題を生じる。
【0025】
その結果、可撓性シート部材を大きくすることなく安定した当接状態を保つためには、現像剤規制装置について高い設計精度が必要であった。
【0026】
すなわち、上記従来例に係る現像剤規制装置においては、装置本体の小型化を達成しつつ、高い設計精度を必要としない簡易な構成で可撓性シート部材の当接状態を安定化させてコート規制を行う構成については開示されていない。
【0027】
そこで上記現状を鑑みて本発明においては、装置本体の小型化を達成しつつ、簡易な構成で可撓性シート部材の当接状態を安定化させてコート規制を行うことが可能な現像剤規制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的を達成するために本発明にあっては、湾曲して弧を形成する可撓性シート部材と、前記可撓性シート部材の両端を挟む壁面を有し、前記可撓性シート部材を湾曲した状態で保持する保持部材と、を備え、前記弧の外側を、現像剤を担持して回転駆動する現像剤担持体の表面に当接させて現像剤の層厚を規制する現像剤規制装置において、前記保持部材は、前記弧の円周角が180度以下になるように前記可撓性シート部材を保持し、前記可撓性シート部材が前記現像剤担持体の表面に当接しない状態における前記弧に対応する弦の垂直二等分線が、前記可撓性シート部材が前記現像剤担持体の表面に当接する状態においては、前記垂直二等分線と平行な前記現像剤担持体の法線よりも前記現像剤担持体の回転方向下流側に配置されるとともに、前記可撓性シート部材の両端を挟む前記壁面のうち前記現像剤担持体の回転方向上流側の壁面が、前記法線よりも前記現像剤担持体の回転方向上流側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、装置本体の小型化を達成しつつ、簡易な構成で可撓性シート部材の当接状態を安定化させてコート規制を行うことが可能な現像剤規制装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施の形態に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0031】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る現像剤規制装置の構成について説明を行う。
【0032】
[画像形成装置の全体構成]
図2を参照して本実施の形態における画像形成装置の全体構成を説明する。図2は、本実施の形態における画像形成装置の全体構成を示すものであって、ここでは画像形成装置として電子写真プロセス利用のフルカラーレーザープリンターを用いる。
【0033】
本実施の形態における画像形成装置は、画像形成装置本体Aと、これに着脱自在な帯電装置、現像装置、クリーニング装置、及び、感光体ドラム等を一体としたプロセスカートリッジBを備える。なお、プロセスカートリッジBの構成については後述する。
【0034】
プロセスカートリッジBは、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色ごとに備えられる。そして、中間転写ベルト20を挟んで各色の感光体ドラムの対向位置に設けられた1次転写ローラ22y、22m、22c、22kにより、各色のトナー像が中間転写ベルト20上に重ねて転写され(1次転写)、フルカラー画像を形成する。
【0035】
なお、感光体ドラム1から中間転写ベルト20に転写されずに残った未転写トナーは、クリーニング装置Cに設置されたウレタンゴム製のクリーニングブレード6によって感光体ドラム1表面から掻き落とされ、クリーニング容器内に収納される(図3)。
【0036】
なお、本実施の形態においては、現像剤として平均粒径6.0μmの非磁性1成分トナーが用いられる。
【0037】
中間転写ベルト20上に1次転写されたフルカラー画像は、中間転写ベルト20の移動方向下流側に設けられた2次転写ローラ23により、一括してシート材上に転写される(2次転写)。なお、中間転写ベルト20上の未転写トナーは、中間転写ベルトクリーナー21によって回収される。
【0038】
シート材Pは、画像形成装置本体A下部のカセット24内に積載されており、印字動作の要求とともに給送ローラ25により搬送され、2次転写ローラ23の位置において、中間転写ベルト20上に形成されたフルカラー画像が転写される。
【0039】
フルカラー画像が転写されたシート材は、その後定着ユニット26により加熱され、シート材上に画像が定着する。そして排出部27を経て画像形成装置外部に排出される。
【0040】
本実施の形態においては、各4色のプロセスカートリッジB等を収納する上部のユニットと、転写ユニット、シート材等を収納する下部ユニットは分離可能になっている。この構成によって、紙詰まり等のジャム処理発生時や、プロセスカートリッジBの交換時において、上下のユニットを開口することでこれらの処理を行うことが可能になる。
【0041】
次に、図3を参照して、本実施の形態におけるプロセスカートリッジBの構成について説明する。図3は、各色ごとに設けられたプロセスカートリッジBの1つについて、その断面における概略構成図を示したものである。なお、本実施の形態において4つのプロセスカートリッジの構成は、本質的にはすべて同じものとする。
【0042】
画像形成プロセスの中心となる感光体ドラム1には、アルミニウム製シリンダーの外周面に機能性膜である下引き層、キャリア発生層、キャリア移送層を順にコーティングした有機感光体ドラムが用いられる。そして、画像形成プロセスにおいて、感光体ドラム1は所定の速度で図3中矢印a方向へ回転駆動される。
【0043】
また、帯電装置として設けられる帯電ローラ2は、導電性ゴムのローラ部を感光体ドラム1の表面に圧接することで、感光体ドラム1とともに図中矢印方向に従動回転する。
【0044】
帯電工程においては、帯電ローラ2の芯金には−1100Vの直流電圧が印加されており、これにより誘起された電荷によって感光体ドラム1の表面電位には、−550Vとなる一様な暗部電位(Vd)が形成される。
【0045】
そして感光体ドラム1における一様な表面電荷分布面に対して、スキャナーユニット10(図2参照)が画像データーに対応したレーザー光Lを射出し、感光体ドラム1の表面を露光する。
【0046】
感光体ドラム1の表面における露光された部分は、キャリア発生層からのキャリアによって電荷が消失し、電位の絶対値が低下する。この結果、露光部分は明部電位Vl=−100V、未露光部位は暗部電位Vd=−550Vの静電潜像が形成される。
【0047】
そして静電潜像に対して現像装置Dから現像剤が供給され、静電潜像がトナー像として現像される。具体的には、現像時に現像ローラ3に対してDCバイアス=―350Vを印加することで、現像ローラ3上におけるマイナスに帯電した現像剤を感光体ドラム1上の静電潜像に供給する。
【0048】
[現像剤規制装置の構成]
図4を参照して、本実施の形態に係る現像剤規制装置について説明する。図4は、本実施の形態に係る現像剤規制装置4を備える現像装置Dの概略構成を示すものである。
【0049】
本実施の形態における現像装置Dは、現像剤担持体として設けられる現像ローラ3と、現像ローラ3に現像剤を供給する供給ローラ5と、現像ローラ3の表面におけるコート層の層厚を規制(コート規制)する現像剤規制装置4と、を備える。またこれらの部材、装置は現像容器内部に収容される。
【0050】
現像剤規制装置4は、回転駆動する現像ローラ3の表面に当接してコート規制を行う可撓性シート部材4−aと、可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bを備える。これらの構成については後述する。
【0051】
現像ローラ3には、外径φ6mmの芯金に導電性の弾性層3mmを形成したφ12mmの弾性ローラが用いられており、弾性層には、体積抵抗値106Ωmのシリコーンゴムが用いられる。
【0052】
なお、弾性ローラ表層に、現像剤への電荷付与機能を持つコート層等を設けるようにしてもよい。本実施の形態では、現像ローラ3を感光体ドラム1に安定して弾性接触させるために、弾性層の硬度をJIS−Aで45°とした。さらに、現像ローラ3上に所定のトナーコート量を得るために、現像ローラ3の表面粗さRzを6μmとした。
【0053】
供給ローラ5には、外径φ8mmの芯金上に体積抵抗値1014Ωcmの絶縁性ウレタンスポンジゴムの弾性層4mmが形成された、外径φ16mmの弾性スポンジローラーを用いた。
【0054】
現像ローラ3は、感光体ドラム1に当接しながら感光体ドラム1の回転方向に対して順方向に回転駆動し、供給ローラ5は、現像ローラ3の表面に当接しながら、現像ローラ3の回転方向と同じ方向に回転駆動する。
【0055】
供給ローラ5は、現像容器内の非磁性一成分トナー剤tを現像ローラ3上に付着させるものである。さらに、現像ローラ3上において、感光体ドラム1に現像されずに残った現像剤を現像ローラ3上から剥ぎ取り、現像容器内に回収する機能をも有する。
【0056】
供給ローラ5から現像ローラ3上に供給された非磁性一成分トナー剤は、現像ローラ3とU字形状の可撓性シート部材4−aとの当接面を通過する際、摩擦帯電により帯電する
と共に、現像剤の層厚を規制するコート規制を受ける。その結果、現像ローラ3の表面には、所定の帯電量、及びコート層厚を有するトナーコート層が形成される。
【0057】
[現像剤規制装置の設置例]
本実施の形態に係る現像剤規制装置の設置状態について説明する。なお、本実施の形態においては、下記(A)〜(C)に示す項目を用いて現像剤規制装置の設置状態を規定する(図1参照)。また、本実施の形態において、現像剤担持体として設けられる現像ローラ3の回転方向下流側を下流側、現像ローラ3の回転方向上流側を上流側と定義する。
【0058】
(A)U字形状の可撓性シート部材4−aの中心線m
U字形状の可撓性シート部材4−aの姿勢を示すものとして、U字形状の中央を縦断する線を可撓性シート部材4−aの中心線mと定義する。中心線mは、図1に示すように、現像剤ローラ3との当接が無い状態において、湾曲したU字部分の弧Rの部分に対応する弦の垂直二等分線とする。
(B)U字形状の可撓性シート部材4−aの中心線mに平行な現像剤担持体の法線v
U字形状の可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する姿勢を示すために、中心線mに平行な現像ローラ3の法線を法線vとする。
(C)保持部材4−bの凹部分の上流側壁面と同一面上にある支持線u
U字形状の可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bの凹部分を形成する両壁面のうち、上流側の壁面を含む面上の直線を支持線uとする。
【0059】
本実施の形態に係る現像剤規制装置4は、その中心線mが法線vよりも下流側にくるように、さらに支持部材4−bの回転方向上流側の壁面が、法線vよりも上流側にくるように配置されることを特徴とする。すなわち現像ローラ3の回転方向下流側から、中心線m、法線v、支持線uの順に配置されるものとする。
【0060】
さらに、可撓性シート部材4−aを湾曲した状態で保持する保持部材4−bは、湾曲した弧Rの円周角が180度以下になるように可撓性シート部材4−aの両端を保持するものとする。
【0061】
以下、本実施の形態に係る現像剤規制装置4の配置例を(配置例1)〜(配置例3)に示し、後に示す(比較例)と比較することで本実施の形態の特徴、効果について説明する。
【0062】
(設置例1)
設置例1では、可撓性シート部材4−aとして、JIS−A硬度65度、厚さ0.5mmのシート形状のウレタンゴムを用いた。そして、これをU字形状に湾曲させて弧を形成し、内径6mmのコの字形状の保持部材4−b内部に嵌め込み、U字形状の弧の外側を現像ローラ3の表面に当接させた。
【0063】
また設置例1では、可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する当接圧が線圧0.25N/cmになるように可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する押し込み量を設定した。
【0064】
なお、本実施の形態では、シート型圧力センサーシステムI-SCAN(ニッタ株式会
社製)を当接部に挟むことで、可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する当接圧を測定した。
【0065】
また、設置例1において、湾曲した状態で可撓性シート部材4−aの両端を保持するする保持部材4−bの凹部分の両壁面は、互いに平行であるとする。これにより可撓性シー
ト部材4−aの弧の円周角を180度以下にすることが可能になる。
【0066】
また、可撓性シート部材4−aは保持部材4−bの凹部分の両壁面に対して未接着であり、U字形状に曲げられたことに対する反発力f1で保持部材4−bの凹部分の両壁面を押してその姿勢が保持される(図1参照)。
【0067】
さらに、可撓性シート部材4−aが現像ローラ3に所定の当接圧を以って当接することで、保持部材4−bの凹部分の底面で可撓性シート部材4−aの両端部エッジ面eが保持され、可撓性シート部材4−aの姿勢が安定する。
【0068】
なお、可撓性シート部材4−aの両端部エッジ面eと保持部材4−bの凹部の底面の摩擦力が高いほど、可撓性シート部材4−aの保持状態は安定する。また、エッジ面eの面積が小さい場合は、エッジ面eを保持部材4−bの底面に直接接着する構成であってもよい。
【0069】
設置例1においては、現像剤規制装置4を中心線mが現像ローラ3の法線vに対して下流側にあり、法線vの中心線mからの距離(m−v)が2.0mmとなるよう設置した。この時、支持線uは、法線vに対して上流側に位置する。
【0070】
(設置例2)
設置例2において、現像剤規制装置4の構成は上記で説明した設置例1と何ら異なるものではないので、その説明は省略する。設置例2では、現像剤規制装置4を、中心線mが現像ローラ3の法線vに対して下流側にあり、法線vの中心線mからの距離(m−v)が1.0mmとなるように配置した。この時、支持線uは法線vに対して上流側に位置する。
【0071】
(設置例3)
設置例3において、現像剤規制装置4の構成は上記で説明した設置例1と何ら異なるものではないので、その説明は省略する。設置例3においては、現像剤規制装置4を、中心線mが現像ローラ3表面の法線vに対して下流側にあり、法線vの中心線mからの距離(m−v)が2.8mmとなるように配置した。この時、支持線uは、法線vとほぼ同一直線上に位置する。
【0072】
ここで、上記で説明した(設置例1)〜(設置例3)の効果を検証するために(設置例1)〜(設置例3)に対する比較例として、(比較例1−1)、(比較例1−2)を以下のように設けた。なお、これらの比較結果に関しては図26を用いて後述する。
【0073】
(比較例1−1)
図7に比較例1−1の概略構成を示す。比較例1−1は、上記で説明した(設置例1)〜(設置例3)との比較において、U字形状の可撓性シート部材4−aの設置状態が異なるものである。
【0074】
なお、可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する当接圧は、(設置例1)〜(設置例3)と同じ値に設定されており、使用されるゴムシートの物性等も(設置例1)〜(設置例3)と同じである。比較例1−1では、中心線mが法線vと同一線上にくるように、すなわち、湾曲したU字形状の弧の頂点が現像ローラ3の表面に当接するように設定した。
【0075】
(比較例1−2)
図8に比較例1−2の概略構成を示す。比較例1−2は、上記で説明した(設置例1)
〜(設置例3)との比較において、U字形状の可撓性シート部材4−aの設置状態が異なるものである。
【0076】
なお、可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する当接圧は、(設置例1)〜(設置例3)と同じ値に設定されており、使用されているゴムシートの物性等も(設置例1)〜(設置例3)と同じである。比較例1−2では、中心線mが法線vに対して上流側くるようにし、法線vの中心線mからの間隔が1.0mmになるように設定した。
【0077】
(設置例4)
次に、上記(設置例1)〜(設置例3)とは異なる設置例であって、本実施の形態に係る現像剤規制装置4の設置状態を示す(設置例4)について説明する。
【0078】
設置例4における現像剤規制装置4の基本的な構成は、上記で説明した(設置例1)〜(設置例3)と同様であり、U字形状の可撓性シート部材4−aの中心線mを法線vに対して下流側2.8mmに配置する構成も(設置例3)と同様である。
【0079】
しかしながら、可撓性シート部材4−aを保持部材4−bの凹部分を形成する両壁面のうちの上流側の壁面に接着固定する点で(設置例3)と異なる。
【0080】
次に、上記(設置例1)〜(設置例4)とは異なる設置例であって、本実施の形態に係る現像剤規制装置4の設置状態を示す(設置例5)について説明する。
【0081】
(設置例5)
図9に設置例5に係る現像剤規制装置4の概略構成を示す。設置例5では、JIS−A硬度75度、厚さ0.4mmのシート形状のウレタンゴムを可撓性シート部材4−aに用いた。そして、これをU字形状に湾曲させて内径7mmのコの字形状の保持部材4−b内部に嵌め込み、U字形状の弧の部分を現像ローラ3の表面に当接させた。
【0082】
さらに、現像ローラ3に対する当接圧が、線圧0.25N/cmになるように押し込み量を設定した。すなわち、設置例5は可撓性シート部材4−aに用いられるシート形状のウレタンゴムの形状、性能、及び保持部材4−bの寸法が(設置例1)〜(設置例4)とは異なる構成である。
【0083】
なお、保持部材4−bの凹部分の両壁面は平行に設置されており、可撓性シート部材4−aは保持部材4−bに対して未接着で保持される。そして設置例5では、中心線mが法線vに対して下流側にあって、法線vの中心線mからの距離(m−v)が1.0mmとなるように配置に設定されている。
【0084】
ここで、(設置例5)の効果を検証するために、(設置例5)に対する比較例として、
(比較例5−1)〜(比較例5−3)を以下のように設けた。なお、これらの比較結果に関しては後述する。
【0085】
(比較例5−1)
図10に比較例5−1の概略構成を示す。比較例5−1は、上記で説明した(設置例5)との比較において、U字形状の可撓性シート部材4−aの設置状態が異なるものである。
【0086】
可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する当接圧は、(設置例5)と同じ値に設定されており、使用されているゴムシートの物性等も(設置例5)と同じである。比較例5−1では、中心線mが現像ローラ3表面の法線vと同一線上にあり、U字形状の弧の部
分の頂点が現像ローラ3表面に当接するように設定した。
【0087】
(比較例5−2)
図11に比較例5−2の概略構成を示す。比較例5−2は、上記で説明した(設置例5)との比較において、U字形状の可撓性シート部材4−aの設置状態が異なるものである。
【0088】
可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する当接圧は、(設置例5)と同じ値に設定されており、使用されているゴムシートの物性等も(設置例5)と同じである。
【0089】
比較例5−2では、厚さ6.2mmの板形状の保持部材4−bに対して、湾曲した可撓性シート部材4−aの内面を貼り付けてU字形状にしたものを用いる。また、(設置例5)と同様に、中心線mは法線vに対して下流側にあり、法線vの中心線mからの距離(m−v)が1.0mmとなるように配置した。
【0090】
(比較例5−3)
図12に比較例5−3の概略構成を示す。比較例5−3は、上記で説明した(設置例5)との比較において、U字形状の可撓性シート部材4−aの設置状態が異なるものである。
【0091】
比較例5−3においても、可撓性シート部材4−aとして、JIS−A硬度75度、厚さ0.4mmのシート形状のウレタンゴムを用い、これをU字形状に曲げて、保持部材4−b内部に嵌め込み、U字の凸部を現像ローラ3に当接させた。また、現像ローラ3に対する当接圧は、線圧0.25N/cmになるように、所定の量に押し込み量を設定した。
【0092】
比較例5−3では、可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bの凹部を形成する両壁を、現像ローラ3側に向けて広がるように設けた。すなわち、可撓性シート部材4−a湾曲した弧の部分の円周角が、180度を超える構成とした。
【0093】
なお、可撓性シート部材4−aの弧の円周角が180度を超える構成は本比較例のみである。
【0094】
比較例5−3において、保持部材4−bの凹部を形成する壁面は、16度の傾きを有しており、可撓性シート部材4−aを現像ローラ3に当接する前の状態における、弦の両端の幅がほぼ7mmになるように設定されている。
【0095】
また、中心線mは法線vに対して下流側にあり、法線vの中心線mからの距離(m−v)が1.0mmとなるように配置した。このときの支持線uは、法線vに対して上流側に位置する。
【0096】
[設置例と比較例の比較結果に基づく考察]
図26に、上記で説明した本実施の形態に係る現像剤規制装置4の(設置例1)〜(設置例5)と、各比較例の比較結果を示す。以下、図26に示す比較結果に基づき、本実施の形態に係る現像剤規制装置4の特徴、効果について述べる。
【0097】
図26における各項目の説明を以下に示す。
【0098】
(設定条件)
法線vに対する対称線位置:対称線とは、U字形状の可撓性シート部材4−aの中心線mを示すものであり、可撓性シート部材4−aが形成する弧の対称線を示す。この項目は
、対称線とこれに平行な法線vの位置関係を示す。例えば、(下流2.8mm)と記載されている場合は、中心線mが法線vから下流側に2.8mmのところに設けられる状態を意味する。
法線に対する上流面:上流面とは、可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bの凹部分を構成する壁面のうち、現像剤担持体の回転方向上流側の壁面を示し、この面と法線vとの位置関係を示す。すなわち(上流)と記載されている場合は、支持線uが法線vよりも上流側にあることを示す。
支持面:可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bの凹部分を形成する両壁面のうち上下流両壁面の関係を示す。
シート接着面:可撓性シート部材4−aとして用いられる可撓性シート部材が、保持部材4−bに接着されているか否かを示す。なお、軽接着は「無」と同等とする。
保持幅:可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bの凹部分を形成する壁面間の距離を示す。
厚さ:可撓性シート部材4−aの厚さを示す。単位はmm。
硬度:可撓性シート部材4−aの硬度を示す。測定はアスカーC硬度。
【0099】
(評価項目)
設計公差:押し込み量に対しての当接圧変化を調べた結果についてのもので、押し込み量に対して当接圧の変化が大きいほど、設計条件上ラチチュードが狭くなるという問題を生じる。
当接圧上昇:現像剤担持体の回転に伴う可撓性シート部材4−aの姿勢変形等により、当接圧がどの程度まで上昇し得るかを調べた結果。基本状態からの圧力上昇が大きいものは、可撓性シート部材4−a、現像剤担持体、現像剤等に大きな負荷がかかるという問題を生じる。
姿勢圧変化:各構成で、姿勢変化に伴う当接圧変化を調べた結果についてのもので、当接圧変化が大きいものや圧変化しやすい構成は、負荷の問題や、当接圧設定の設計公差が小さくなるという問題を生じる。
下流面シート安定性:可撓性シート部材4−aの下流側の面が、保持部材4−bにより加圧安定支持されるかを調べた結果で、この点が劣ると、可撓性シート部材4−aをうまく支持できず、捲れやすくなるという問題を生じる。
総合評価:各項目に関してまとめた評価
【0100】
上記の4項目の評価項目において、×は許容できないレベルであることを示すのに対して、△は許容可能なレベルを示すものであり、○は良好なレベルを示す。許容可能なレベルと良好なレベルとの差は、例えば、設計公差として、組立可能ならば△であるが、検査フリーまで設計公差が広い場合は○など、許容レベルのものに対してより明らかに優れた点がある場合を良好なレベルとした。
【0101】
図26に示すように各比較例の構成が、許容出来ないレベルの項目を含んでいるのに対して、(設置例1)〜(設置例5)の構成は、全ての項目で、少なくとも許容可能なレベル以上であることがわかる。なお、△の項目が多い設置例は、本発明の構成条件の境界領域にあるといえる。
【0102】
[設置例1,2,3及び比較例1−1、1−2に関する考察]
以下、上記で説明した現像剤規制装置4の(設置例1)〜(設置例3)と、それに対する(比較例1−1)、(比較例1−2)の比較結果に基づく考察を示す。
【0103】
(設計公差)
(設置例1)〜(設置例3)及び(比較例1−1)における、押し込み量に対する当接圧の値の測定値結果を図17に示す。
【0104】
図17に示すように、比較例1−1に比べ、(設置例1)及び(設置例3)は傾きが緩やかで、押し込み量変化に対する当接圧変化が小さいことがわかる。これは、設定ラチチュードが広い構成であることを意味する。また、(設置例2)においても、(設置例1)、(設置例3)ほどの大きな相違はみられないものの、(比較例1−1)に対して傾きが緩やかで、一定の効果を得ることができた。
【0105】
(当接圧上昇)
(設置例1)〜(設置例3)及び比較例1−1における、U字形状の可撓性シート部材4−aが変形した場合の、当接圧の最大上昇率を図18に示す。
【0106】
本実施の形態では、現像ローラ3の回転により可撓性シート部材4−aが摩擦力によって引きずられて姿勢変化を生じた時、初期状態の当接状態から当接圧がどの程度まで上昇するかを測定したものである。
【0107】
なお実験では、現像ローラ3と可撓性シート部材4−aの間に現像剤等の潤滑性のある物質は介させず、非常に高い摩擦係数を持つ状態で測定を行い、通常の画像形成装置の使用状態では起こりえない程度まで可撓性シート部材4−aを変形させた。
【0108】
本実施の形態では、現像ローラ3の軸受け部に圧力センサーを設けて現像ローラ3を少しずつ回転させ、可撓性シート部材4−aが変形して現像ローラ3の軸受け部での圧力が最大になったときの値を測定した。
【0109】
なお、現像ローラ3の回転駆動を一般的なモーターのトルクの範囲で行う過程において、可撓性シート部材4−aの変形が大きくなることで可撓性シート部材4−aが保持部材4−bからはずれるような現象は起こらなかった。
【0110】
比較例1−1の条件においては、現像剤担持体の回転と共に可撓性シート部材4−aの姿勢が変形して当接圧が上昇し、変形が最大となった時の当接圧が初期の当接圧の140%になった。
【0111】
一方、設置例1、3では、当接圧は上昇することなくむしろ下がった。また、設置例2にでは現像剤担持体の回転により当接圧が最大107%まで上昇したが、更に回転させることで下降した。
【0112】
この結果を更に考察するために、上記に挙げた設置例1〜3では挙げていない、中心線mと現像ローラ3表面の法線vとの距離が0.5mmの場合と1.5mmの場合についても調べたところ、図18に示すような結果となり、距離との相関が見られた。
【0113】
これは、可撓性シート部材4−aが変形にともなって現像剤担持体の曲率が変化することで生じる相関関係であると考えられる。なお、比較例1−2の場合は当接圧が比較例1−1以上に上昇した。
【0114】
(可撓性シート部材の姿勢変化)
(設置例1)、(設置例2)及び比較例1−1における、現像剤担持体の変形と当接圧の変化の関係を考察する。
【0115】
実験は、現像剤担持体の順方向への回転と、バッククラッシュ等を想定した、わずかな逆方向への回転における可撓性シート部材4−aの変形を観察し、変形時に当接圧がどのように変化するかを測定した。
【0116】
(設置例1)、(設置例2)においては、共に姿勢の変化は少なく、変形における圧力低下も少なかった。
【0117】
一方(設置例3)においては、図19に示すような現像剤担持体の順回転方向への可撓性シート部材4−aの変形により、当接圧は最大30%程度低下した。
【0118】
当接圧を一定に保つためには、実際に使用する状態を想定して可撓性シート部材4−aの押し込み量を大きくすることで解決することが可能である。
【0119】
なお、法線vに対して支持線uが下流側にある場合では、現像剤担持体の回転が無い状況でも可撓性シート部材4−aと現像剤担持体の加圧力のみで可撓性シート部材4−aの変形が大きくなり、姿勢は不安定になる。
【0120】
(設置例4)は、(設置例3)と同様の構成で可撓性シート部材4−aを保持部材4−bに接着するため、姿勢変形を抑えることが可能になり、それに伴う当接圧の変化も抑えることができる。
【0121】
なお、図26における評価項目には挙げていないが、接着面を持つ構成と未接着の構成では、製作の工程数や、貼り付け面の精度の要求などにおいては、未接着の構成の方が優れている。
【0122】
比較例1−1においては、姿勢変形による当接圧の上昇は既に述べたとおりであるが、現像剤担持体の逆方向への回転においても姿勢変形し当接圧上昇が起こる。すなわち、比較例1−1においては、わずかな現像剤担持体の回転に対して、当接圧の変化が大きいと言える。
【0123】
[設置例5及び比較例5−1、5−2、5−3に関する考察]
以下、上記で説明した現像剤規制装置4の(設置例5)と、それに対する(比較例5−1)、(比較例5−2)、(比較例5−3)の比較結果に基づく考察を示す。
【0124】
(設計公差)
図20は(設置例5)に用いた可撓性シート部材4−aを、中心線mと法線vの間隔を変えた上で、押し込み量と当接圧の関係を調べた測定結果である。ここでも、中心線mが法線vよりも下流側にある方が当接圧の変化量が小さいく、設計公差が大きいことがわかる。
【0125】
(当接圧上昇)
比較例5−1は、比較例1−1と同様に当接圧上昇は最大150%程度にまで上昇したが、一方で設置例5の場合は110%以下にとどまった。
【0126】
(可撓性シート部材の姿勢圧変化)
比較例5−1では、可撓性シート部材4−aの姿勢の変化に伴う当接圧の変化が大きいのに対して、設置例5では当接圧の変化は小さい。
【0127】
また、比較例5−2では、他の設置例に比べて可撓性シート部材4−aの変形を抑える壁がないため可撓性シート部材4の変形が大きくなり易く、それに伴って当接圧が低下しやすい。
【0128】
一方で押し込み量を大きくして、低下した分の当接圧を上げる試みをしたところ、更に
可撓性シート部材4−aの姿勢変形が大きくなり、結果的に十分な当接圧を得ることができなかった。よって比較例5−2の構成では当接状態を安定化させることが困難である。
【0129】
(下流面シート安定性)
図12に示すように、比較例5−3は保持部材4−bの凹部分の形状が(設置例1)〜(設置例5)と異なるものであり、可撓性シート部材4−aの弧の部分の円周角が180度を超える形状を有する。
【0130】
すなわち、保持部材4−bの凹部分を形成する両壁面が現像剤担持体方向に開く構成であるので、可撓性シート部材4−aが保持部材4−bに加圧されて姿勢を保持されにくくなる。
【0131】
このため、現像剤担持体が回転すると保持部材4−bの凹部分の下流側の壁面が図12中の矢印n方向に倒れやすくなり、可撓性シート部材4−aの保持状態が不安定になる。よって比較例5−3の構成では当接状態を安定化させることが困難である。
【0132】
すなわち本実施の形態においては、可撓性シート部材4−aを保持部材4−bに強固に接着しなくとも、装置本体の使用状態において可撓性シート部材4−aが保持部材4−bから剥がれる可能性が低い。また、現像剤担持体に対する当接圧を安定化することができる。
【0133】
以上より、本実施の形態における現像剤規制装置によれば、装置本体の小型化を達成しつつ、簡易な構成で可撓性シート部材の当接状態を安定化させてコート規制を行うことが可能な現像剤規制装置を提供することができる。
【0134】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る現像剤規制装置の構成について説明を行う。
【0135】
[画像形成装置の全体構成]
図5を参照して本実施の形態における画像形成装置の全体構成を説明する。図5は、本実施の形態における画像形成装置の全体構成を示すものであって、ここでは画像形成装置として、電子写真プロセス利用のモノクロレーザープリンターを用いる。
【0136】
本実施の形態における画像形成装置は、画像形成装置本体Aと、これに着脱自在な帯電装置、現像装置、クリーニング装置、及び、感光体ドラム等を一体としたプロセスカートリッジBと、により構成されている。なお、プロセスカートリッジBの構成については後述する。また、本実施の形態においては、平均粒径6.0μmの磁性1成分トナーを使用する。
【0137】
本実施の形態における画像形成装置は、非接触現像方式によって感光体ドラムに現像剤を供給する点において、上記で説明した第1の実施の形態と異なる。以下、非接触現像方式による現像プロセスについてのみ説明を行う。
【0138】
図6に本実施の形態における現像装置Dの概略構成を示す。静電潜像が形成された感光体ドラムの表面に対し、現像装置Dに備えられる現像剤担持体としての現像スリーブ8から現像剤が供給される。
【0139】
図6に示すように、現像スリーブ8と感光体ドラムの間には、最近接部において280μmのギャップが保たれており、感光体ドラムの回転方向に対して順方向に回転する。そして現像スリーブ8には、画像形成工程時にDCバイアス=―350Vと、周波数f=2
200HzのACバイアス=1400Vppの矩形波が印加されている。
【0140】
現像スリーブ8上で摩擦帯電によりマイナスに帯電した磁性トナーは、ACバイアスにより、感光体ドラムと現像スリーブが近接する現像部分でその間を往復運動する。そして、静電潜像の電位と現像スリーブ8に印加されたバイアスによる電位との関係により、明部電位部にのみ飛翔して静電潜像を現像する。
【0141】
なお、現像スリーブ8に内包された固定のマグネットローラー7には、現像容器内及び現像部付近に磁極が設けられている。本実施の形態においては、現像部付近の磁極の磁力を、現像スリーブ表面で800Gにすることで、電位設定で制御できないような不適当な電荷を持ったトナーが誤ってVd部に飛翔することを抑えている。
【0142】
感光体ドラムに接触する転写ローラには直流電圧が印加されており、感光体ドラムとの間で電界が形成されている。これにより、感光体ドラム上で実像化されたトナー像は、電界の力を受けて感光体ドラム上からシート材上に転写される。
【0143】
一方、感光体ドラム1上で記録紙に転写されずに残った未転写トナーは、クリーニング装置Cに設置されたウレタンゴム製のクリーニングブレードにより、ドラム表面から掻き落とされ、クリーニング容器内に収納される。
【0144】
現像スリーブ8には、導電性樹脂をコートしたφ12の金属スリーブが用いられ、現像スリーブ8内部には所定の磁極配置を持った固定のマグネットローラー7が設けられている。
【0145】
現像容器内の磁性トナーはマグネットローラー7との磁力により、現像スリーブ8表面に引き寄せられる。現像スリーブ8表面に付着した磁性トナーは、現像スリーブ8の回転により搬送され、現像スリーブ8とU字形状の現像剤規制装置4の当接面を通過する際、摩擦帯電により帯電される共にコート層厚の規制を受ける。
【0146】
[現像剤規制装置の設置]
以下、本実施の形態に係る現像剤規制装置4の配置例を(設置例6)、(設置例7)、(設置例8)に示し、後に示す(比較例)と比較することで本実施の形態の特徴、効果について説明する。
【0147】
また、現像剤規制装置の設置状態を示すために、上記第1の実施の形態と同様に、中心線m、法線v、支持線uを規定する。
【0148】
(設置例6)
図13に示す設置例6では、可撓性シート部材4−aとしてJIS−A硬度65度、厚さ0.5mmのシート形状のウレタンゴムを用いる。そして、これをU字形状に湾曲させて、内径6mmのコの字形状の保持部材4−bの凹部分に嵌め込み、U字形状の弧の外側を現像スリーブ8に当接させた。
【0149】
また、設置例6においては、可撓性シート部材4−aの現像スリーブ8に対する当接圧が線圧0.25N/cmになるように、可撓性シート部材4−aの現像ローラ3に対する押し込み量を設定している。
【0150】
なお、本実施の形態では、可撓性シート部材4−aの現像スリーブ8に対する当接圧をシート型圧力センサーシステムI-SCAN(ニッタ株式会社)を用いて測定した。
【0151】
また、設置例6において、可撓性シート部材4−aの両端を保持するする保持部材4−bの凹部分を形成する両壁面は互いに平行なものとする。
【0152】
また、可撓性シート部材4−aは保持部材4−bに対して未接着に保持される。本実施の形態においては、中心線mは現像スリーブ8表面の法線vに対して下流側にあり、その距離は2.0mmに設定されている。この時、支持線uは法線vに対して上流側に位置する。
【0153】
ここで、上記で説明した(設置例6)の効果を検証するために、(設置例6)に対する
比較例として、(比較例6−1)を以下のように設けた。なお、これらの比較結果に関しては後述する。
【0154】
(比較例6−1)
図14に比較例6の概略構成を示す。比較例6は、上記で説明した(設置例6)との比較において、U字形状の可撓性シート部材4−aの設置状態が異なるものである。なお、可撓性シート部材4−aの現像スリーブ8に対する当接圧は(設置例6)と同じ値に設定されており、使用されているゴムシートの物性等も(設置例6)と同じである。
【0155】
図14に示すように、比較例6において中心線mは、現像スリーブ8表面の法線vと同一線上にあり、すなわち、U字形状の可撓性シート部材4−aの弧の部分の頂点が当接するように設定されている。
【0156】
(設置例7)
図15に設置例7の概略構成を示す。設置例7は、上記で説明した(設置例6)とU字形状の可撓性シート部材4−aの設置状態が異なるものである。なお、可撓性シート部材4−aの現像スリーブ8に対する当接圧は、(設置例6)と同じ値に設定されており、使用されているゴムシートの物性等も(設置例6)と同じである。
【0157】
図15に示すように、設置例7において中心線mは、現像スリーブ8表面の法線vに対して下流側にあり、中心線mからの距離は1.0mmに設定されている。
【0158】
(設置例8)
次に、上記(設置例6)とは異なる設置例であって、本実施の形態に係る現像剤規制装置4の設置状態を示す(設置例8)について説明する。
【0159】
図16に設置例8の概略構成を示す。設置例8は、U字形状の可撓性シート部材4−aを保持する保持部材4−bの凹部分を形成する両壁面が平行ではなく、現像スリーブ8側に向けて狭まる構成を有する。
【0160】
設置例8においては、保持部材4−bの凹部分の壁面が18度の傾きを有する。さらに、可撓性シート部材4−aを現像スリーブ8に当接させる前の状態における、可撓性シート部材4−aの弧の両端部、すなわち、保持部材4−bとの両接点の距離がほぼ6mmになるように設定されている。
【0161】
設置例8においても、現像スリーブ8に対する当接圧が線圧0.25N/cmになるように所定の量に押し込み量が設定される。また、中心線mは、設置例7と同様に現像スリーブ8表面の法線vに対して下流側に1.0mmの距離に設定されている。
【0162】
[設置例6,7,8と比較例6−1の比較結果に基づく考察]
図26に本実施の形態に係る現像剤規制装置4の(設置例6)、(設置例7)、(設置
例8)と、比較例6−1の比較結果を示す。以下、図26に示す比較結果に基づき、本実施の形態に係る現像剤規制装置4の特徴、効果について述べる。
【0163】
なお、図26に示す各項目は上記第1の実施の形態に示す項目と何ら変わるものではないので、各項目に関する説明はここでは省略する。
【0164】
(当接圧上昇)
(設置例6)、(設置例7)(設置例8)のU字形状の可撓性シート部材4−aの構成は、(設置例1)に述べたものと同様である。しかしながら、本実施の形態においては磁性トナーを用いるので、第1の実施の形態と比較すると、可撓性シート部材4−aの変形が起こりやすい。
【0165】
これは、可撓性シート部材4−aに侵入しようとする現像剤tが磁気穂を形成するためトナー搬送力が大きく、現像剤が可撓性シート部材4−aを押す作用gが加わるためである。
【0166】
現像剤の磁気穂により押された可撓性シート部材4−aは、図21に示すように変形し、それによって当接圧が変化しやすくなる。
【0167】
搬送トナーが介在する状態での当接圧は、(設置例6)の場合では、最大で110%程度あったが、比較例6においては150%程度まで上昇した。また、(設置例7)においては、許容の限界値に近い125%程度の上昇が見られた。
【0168】
(設置例8)の構成では、可撓性シート部材4−aを変形させようとする力f3に対して、可撓性シート部材4−aの下流側エッジ面eが力を受けやすくなるため、可撓性シート部材4−aの下流側の姿勢の変形を抑えられる。よって、当接圧の上昇も抑えることが可能になる。
【0169】
(可撓性シート部材の姿勢圧変化)
上記で説明したように、第1の実施の形態と比較して、下流側方向への変形への力が付加される。それに伴い、(比較例6−1)の構成では、より大きな当接圧の変化が起こるのに対して、(設置例6)では、当接圧の上昇を最小限に抑えることができた。また、(設置例8)においては、姿勢の安定が図られるため、(設置例7)よりも、更に安定した当接状態が得られ、当接圧の上昇も110%程度に抑えることができた。
【0170】
すなわち本実施の形態においては、可撓性シート部材4−aを保持部材4−bに強固に接着しなくとも、装置本体の使用状態において可撓性シート部材4−aが保持部材4−bから剥がれる可能性が低い。また、現像剤担持体に対する当接圧を安定化することができる。
【0171】
以上より、本実施の形態における現像剤規制装置によれば、装置本体の小型化を達成しつつ、簡易な構成で可撓性シート部材の当接状態を安定化させてコート規制を行うことが可能な現像剤規制装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】第1の実施の形態に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図2】第1の実施の形態における画像形成装置の概略構成図
【図3】第1の実施の形態におけるプロセスカートリッジの概略構成図
【図4】第1の実施の形態における現像装置Dの概略構成図
【図5】第2の実施の形態における画像形成装置の概略構成図
【図6】第2の実施の形態における現像装置Dの概略構成図
【図7】比較例1−1に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図8】比較例1−2に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図9】第1の実施の形態に係る現像剤規制装置の概略構成図(設置例5)
【図10】比較例5−1に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図11】比較例5−2に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図12】比較例5−3に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図13】第2の実施の形態に係る現像剤規制装置の概略構成図(設置例6)
【図14】比較例6−1に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図15】設置例7に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図16】第2の実施の形態に係る現像剤規制装置の概略構成図(設置例8)
【図17】第1の実施の形態における押し込み量に対する当接圧の値の測定結果
【図18】第1の実施の形態における当接圧の最大上昇率を示す図
【図19】設置例3における現像剤規制装置の概略構成図
【図20】押し込み量に対する当接圧の値の測定結果
【図21】第2の実施の形態に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図22】従来例に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図23】従来例に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図24】従来例に係る現像剤規制装置の概略構成図
【図25a】可撓性シート部材の押し込み量sを表す模式図
【図25b】可撓性シート部材の押し込み量sを表す模式図
【図26】設置例と比較例の比較結果
【符号の説明】
【0173】
3 現像ローラ(現像剤担持体)
4 現像剤規制装置
4−a可撓性シート部材
4−b保持部材
m 中心線(弧に対応する弦の垂直二等分線)
v 法線(中心線に平行な現像ローラ3の法線)
u 支持線(上流側の壁面と同一面にある直線)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲して弧を形成する可撓性シート部材と、
前記可撓性シート部材の両端を挟む壁面を有し、前記可撓性シート部材を湾曲した状態で保持する保持部材と、
を備え、
前記弧の外側を、現像剤を担持して回転駆動する現像剤担持体の表面に当接させて現像剤の層厚を規制する現像剤規制装置において、
前記保持部材は、
前記弧の円周角が180度以下になるように前記可撓性シート部材を保持し、
前記可撓性シート部材が前記現像剤担持体の表面に当接しない状態における前記弧に対応する弦の垂直二等分線が、
前記可撓性シート部材が前記現像剤担持体の表面に当接する状態においては、前記垂直二等分線と平行な前記現像剤担持体の法線よりも前記現像剤担持体の回転方向下流側に配置されるとともに、
前記可撓性シート部材の両端を挟む前記壁面のうち前記現像剤担持体の回転方向上流側の壁面が、前記法線よりも前記現像剤担持体の回転方向上流側に配置されることを特徴とする現像剤規制装置。
【請求項2】
前記可撓性シート部材における前記現像剤担持体の回転方向上流側の端部を、前記保持部材に対して接着することを特徴とする請求項1に記載の現像剤規制装置。
【請求項1】
湾曲して弧を形成する可撓性シート部材と、
前記可撓性シート部材の両端を挟む壁面を有し、前記可撓性シート部材を湾曲した状態で保持する保持部材と、
を備え、
前記弧の外側を、現像剤を担持して回転駆動する現像剤担持体の表面に当接させて現像剤の層厚を規制する現像剤規制装置において、
前記保持部材は、
前記弧の円周角が180度以下になるように前記可撓性シート部材を保持し、
前記可撓性シート部材が前記現像剤担持体の表面に当接しない状態における前記弧に対応する弦の垂直二等分線が、
前記可撓性シート部材が前記現像剤担持体の表面に当接する状態においては、前記垂直二等分線と平行な前記現像剤担持体の法線よりも前記現像剤担持体の回転方向下流側に配置されるとともに、
前記可撓性シート部材の両端を挟む前記壁面のうち前記現像剤担持体の回転方向上流側の壁面が、前記法線よりも前記現像剤担持体の回転方向上流側に配置されることを特徴とする現像剤規制装置。
【請求項2】
前記可撓性シート部材における前記現像剤担持体の回転方向上流側の端部を、前記保持部材に対して接着することを特徴とする請求項1に記載の現像剤規制装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25a】
【図25b】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25a】
【図25b】
【図26】
【公開番号】特開2008−310024(P2008−310024A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157559(P2007−157559)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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