説明

現像剤除去補助ブラシ、及び画像形成装置

【課題】現像剤担持体における現像後又は転写後の残存現像剤の除去を効率良く補助し得る現像剤除去補助ブラシ、及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像剤除去補助ブラシは、トナーを有する現像剤を担持する現像ロール12における現像後の残存現像剤の除去を補助すべく、現像剤担持体の回転方向に沿って順に設けられた2種類の第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16からなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体上の静電潜像を、トナーを有する現像剤を用いて現像するプリンタ、複写機、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置における現像装置の現像剤担持体としての現像ローラの回転方向における上記現像剤供給部材の上流側、又は上記画像形成装置における現像剤担持体としての感光体のクリーニング部材の上流側に設けられる現像剤除去補助ブラシに関するものであり、特に、現像剤担持体の残存トナー処理用の静電植毛ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンター、複写機、ファクシミリ等の電子写真方式を採用する画像形成装置の現像装置として、例えば、特許文献1に開示された現像装置がある。
【0003】
この特許文献1に開示された現像装置100は、図14に示すように、ケーシング101内に、トナー102を表面に担持して感光体111に該トナー102を供給する現像ローラ103と、この現像ローラ103上にトナー102を供給するトナー供給ローラ104と、現像ローラ103に当接して現像ローラ103上に供給されたトナー102の帯電を行ない、トナー102の均一薄層を形成するトナー規制ブレード105とを有している。
【0004】
ここで、1成分現像剤を用いる従来の現像装置、特に非磁性1成分現像装置においては、現像ローラ103上にトナー層の薄膜を均一に形成することが困難なこと、帯電の不安定により画像の乱れが生じること、及び現像ローラ103の感光体111への現像後に残る残存するトナー102の除去不足によりカブリ等が発生すること等の問題点を有している。
【0005】
この問題を解決するために、上記現像装置100では、現像ローラ103の回転方向におけるトナー供給ローラ104の上流側に、現像ローラ103に摺接する弾性部材106を設けている。これにより、現像後の現像ローラ103上に存在する残存トナー層を全て除去するのではなく、むしろ均一化することにより、トナー規制ブレード105による帯電後に安定したトナー荷電薄層を形成し、カブリ等のない高品質の画像が得られるとしている。また、この弾性部材106の材料としては、発泡シリコンゴム等のゴム、若しくは発泡ポリウレタン等のそれ自体弾性を有する材料、又はポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維等を植毛した植毛パッド等を挙げている。
【0006】
一方、類似の技術として、特許文献2に開示された現像装置がある。この特許文献2に開示された現像装置200では、図15に示すように、弾性体層201と磁極ピッチが微細な磁界発生層202とを有する現像ローラ203をドラム状の感光体211に押圧接触させて、感光体211上の静電潜像を現像ローラ203上に保持させた1成分磁性トナーによって現像する構成の下、現像ローラ203と感光体211との接触部204よりも回転方向下流側位置の現像容器205の開口部206内で現像ローラ203表面に対してトレーリング方向に密閉的に接触する逆流防止部材として例えば、ブラシ部材207を備えて、現像ローラ203表面に生ずる不均一な電荷をブラシ部材207の摺接により掻き混ぜて均一化させると共に、トナー飛散を防止するシール機能を持たせている。
【0007】
また、この特許文献2に開示された現像装置200では、ブラシ部材207に導電性を持たせると共に、バイアス電源208によってバイアス電圧が印加されている。このバイアス電圧は現像ローラ203及び現像ブレード209と同じ電圧である。これにより、現像ローラ203の表面の電荷は接触部204よりも下流側において導電性を有するブラシ部材207を通して除電される。したがって、ブラシ部材207によって電荷のムラが掻き混ぜられ分散されて均一化されながら、現像ローラ203表面の電荷が除電される上に、現像ローラ203上のトナーに不均一な電荷が注入されることがない。この結果、不均一な電荷の蓄積がなくなり、現像ローラ203表面における電荷のムラに起因する悪影響の防止効果が向上するとしている。
【特許文献1】特開昭63−155069号公報(昭和63年6月28日公開)
【特許文献2】特開平9−50188号公報(平成9年2月18日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来の現像装置100では、現像後の現像ローラ103上に存在する残存トナー層を全て除去するのではなく、均一化するだけであり、剥離性能において改善の余地がある。
【0009】
一方、上記特許文献2に開示された従来の現像装置200では、ブラシ部材207の材料に関する開示がない。したがって、除電効果及び撹乱効果において改善の余地がある。
【0010】
一方、上述の説明では、現像装置の現像剤担持体としての現像ローラの回転方向における現像剤供給部材の上流側に設けられたブラシについての問題を提示した。しかしながら、現像後に存在する残存トナー層を除去するという観点からすると、感光体の残存トナー層の除去を行うクリーニング部材についてのクリーニング不足も共通する問題といえる。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、現像剤担持体における現像後又は転写後の残存現像剤の除去を効率良く補助し得る現像剤除去補助ブラシ、及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意努力した結果、現像剤除去補助ブラシとしては、現像剤除電及び現像剤撹乱の2つの機能を満たすことが好ましく、しかもこれら現像剤除電及び現像剤撹乱は、同時に行うよりも順に行う、つまり、一方が終わった後他方を行う方が良いことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明の現像剤除去補助ブラシは、上記課題を解決するために、トナーを有する現像剤を担持する現像剤担持体における現像後又は転写後の残存現像剤の除去を補助すべく、上記現像剤担持体の回転方向に沿って順に設けられた2種類の静電植毛ブラシからなっていることを特徴としている。
【0014】
従来の現像剤除去補助ブラシでは、1種類の静電植毛ブラシしか設けられておらず、現像剤除電及び現像剤撹乱の2つの機能を1つのブラシで行っていたために、現像剤除電及び現像剤撹乱に改良の余地があった。
【0015】
本発明によれば、現像剤担持体の回転方向に沿って、2種類の静電植毛ブラシが順に設けられており、現像剤除電及び現像剤撹乱を同時に行うのではなく、順次行う。
【0016】
したがって、本発明では、1種類の静電植毛ブラシで一度に現像剤除去の補助をするのではなく、2種類の静電植毛ブラシで二度に分けて現像剤除去の補助をするので、現像剤除去の補助を充分に行うことができる。
【0017】
この結果、現像剤担持体における現像後又は転写後の残存現像剤の除去を効率良く補助し得る現像剤除去補助ブラシを提供することができる。
【0018】
また、本発明の現像剤除去補助ブラシでは、前記2種類の静電植毛ブラシは、現像剤除電用の第1静電植毛ブラシ、及び現像剤撹乱用の第2静電植毛ブラシであることが好ましい。
【0019】
これにより、具体的に、現像剤除電用の第1静電植毛ブラシとの現像剤撹乱用の第2静電植毛ブラシとを用いて、二度に分けて現像剤除去の補助をするので現像剤除去の補助を充分に効率良く行うことができる。
【0020】
また、本発明の現像剤除去補助ブラシでは、前記現像剤除電用の第1静電植毛ブラシは、前記現像剤担持体の回転方向に沿って、前記現像剤撹乱用の第2静電植毛ブラシよりも上流側に設けられていることが好ましい。
【0021】
これにより、現像剤担持体における現像後又は転写後の残存現像剤の除電を行ってから、撹乱を行うので、現像剤除去の補助を効率良く行うことができる。すなわち、残存現像剤の除電を先に行うことにより、現像剤の電荷がなくなる。したがって、現像剤同士の電荷に基づく吸着力が低減した後に現像剤の撹乱を行うので、現像剤の撹乱を容易に行うことができる。
【0022】
また、本発明の現像剤除去補助ブラシでは、前記第1静電植毛ブラシはナイロンからなる一方、前記第2静電植毛ブラシはポリエステル又はアクリルからなっていることが好ましい。
【0023】
これにより、ナイロン/ポリエステル、又はナイロン/アクリルのように互いに異なる材質とした方が、除電性及び剥離性において効果が高い。すなわち、上流側の第1静電植毛ブラシをナイロンとすることにより、剛性が弱くトナーのこぼれ落ちを防止できる一方、下流側の第2静電植毛ブラシをポリエステル又はアクリルとすることにより、剛性が強く、撹乱し易いものと考えられる。
【0024】
また、本発明の現像剤除去補助ブラシでは、前記2種類の静電植毛ブラシは、いずれも、非導電層からなるコア部と導電層からなる外層部とを備えた2層構造となっていることが好ましい。
【0025】
これにより、非導電層からなるコア部と導電層からなる外層部とを備えた2層構造の静電植毛ブラシは、全体が導電層からなる静電植毛ブラシよりも除電性が高い。
【0026】
また、本発明の現像剤除去補助ブラシでは、前記2種類の静電植毛ブラシには、前記現像剤担持体と同電位、又は現像剤電荷を中和する方向に電圧が印加されることが好ましい。
【0027】
これにより、残存現像剤の現像剤電荷が0に近づく。したがって、確実に、現像剤電荷が除電されることになる。
【0028】
また、本発明の現像剤除去補助ブラシでは、前記2種類の静電植毛ブラシは、繊維の抵抗値がそれぞれ1012 (Ω/cm・フィラメント)未満であることが好ましい。
【0029】
これにより、2種類の静電植毛ブラシは、繊維の抵抗値がそれぞれ1012 (Ω/cm・フィラメント)未満の導電性を有しているので、現像剤電荷を中和する方向に電圧を印加したときに、残存現像剤の現像剤電荷が効率良く除電される。
【0030】
また、本発明の現像剤除去補助ブラシでは、前記2種類の静電植毛ブラシのブラシ毛を固定する各接着剤はそれぞれ導電性を有していることが好ましい。
【0031】
これにより、接着剤もそれぞれ導電性を有しているので、現像剤除去補助ブラシの基材から接着剤を介したブラシ毛への電気的流れが良くなる。このため、効率良く、残存現像剤の現像剤電荷を除電することができる。
【0032】
また、本発明の現像剤除去補助ブラシでは、前記現像剤除電用の第1静電植毛ブラシの繊度は、2.2デシテックス(T)以下であり、前記現像剤撹乱用の第2静電植毛ブラシの繊度は、4デシテックス(T)以上であることが好ましい。尚、デシテックス(T)とは、「長さ10,000mの繊維(糸)の重さがNグラムであるとき、その繊維(糸)はNデシテックス(T)である」と定義される。
【0033】
すなわち、残存現像剤の除電性及び剥離性の観点から、現像剤除電用の第1静電植毛ブラシの繊度は、2.2デシテックス(T)以下の細いものを使用し、現像剤撹乱用の第2静電植毛ブラシの繊度は、4デシテックス(T)以上の太いものを使用するのが良いということが実験により立証された。
【0034】
また、本発明の現像剤除去補助ブラシでは、前記2種類の静電植毛ブラシは、基材が平板にてなるバー型ブラシからなっているとすることができる。
【0035】
これにより、例えば、現像装置の内部における狭い部分においても容易に設置することができる。
【0036】
また、本発明の現像剤除去補助ブラシでは、前記2種類の静電植毛ブラシは、基材が円柱形状にてなるロール型ブラシからなっているとすることができる。
【0037】
これにより、バー型ブラシのように静電植毛ブラシが現像剤担持体に常に接触しているということがないので、静電植毛ブラシの寿命を延ばすことができる。
【0038】
また、本発明の現像剤除去補助ブラシでは、前記現像剤担持体は、静電潜像担持体への現像を行う現像ローラであるとすることができる。
【0039】
これにより、現像ローラにおける現像後の残存現像剤の除去を例えば現像剤供給ローラが行うに際して、現像剤除去補助ブラシは効率よく補助することができる。
【0040】
また、本発明の現像剤除去補助ブラシでは、前記現像剤担持体は、静電潜像担持体への現像を行う現像ローラであると共に、前記2種類の静電植毛ブラシにおける基材は、上記現像ローラを収容する現像剤容器の壁面を用いているとすることができる。
【0041】
これにより、現像剤容器の壁面に接着剤を塗布し、直接植毛することができる。
【0042】
また、本発明の現像剤除去補助ブラシでは、前記現像剤担持体は、静電潜像担持体であるとすることができる。
【0043】
これにより、静電潜像担持体における転写後の残存現像剤の除去を例えばクリーニングブラシが行うに際して、現像剤除去補助ブラシは効率よく補助することができる。
【0044】
本発明の画像形成装置は、上記記載の現像剤除去補助ブラシを備えていることを特徴としている。
【0045】
これにより、現像剤担持体における現像後又は転写後の残存現像剤の除去を効率良く補助し得る画像形成装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明の現像剤除去補助ブラシは、以上のように、トナーを有する現像剤を担持する現像剤担持体における現像後又は転写後の残存現像剤の除去を補助すべく、上記現像剤担持体の回転方向に沿って順に設けられた2種類の静電植毛ブラシからなっているものである。
【0047】
また、本発明の画像形成装置は、上記記載の現像剤除去補助ブラシを備えているものである。
【0048】
それゆえ、現像剤担持体における現像後又は転写後の残存現像剤の除去を効率良く補助し得る現像剤除去補助ブラシ、及び画像形成装置を提供するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明の一実施形態について図1ないし図13に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0050】
図2は、本実施の形態の現像装置を備えた画像形成装置における画像形成部の構造を模式的に示す正面図である。
【0051】
尚、画像形成装置は、画像形成装置が備えるスキャナにて読み込まれたデータや、画像形成装置に接続された外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等の画像処理装置)からのデータを画像として出力するものである。
【0052】
図2に示すように、画像形成部30は、感光体ドラム1と、帯電ブラシ2と、露光装置3と、現像装置10と、転写ブラシ4と、搬送ベルト5と、クリーニング装置20と、図示しない除電手段とを備えており、感光体ドラム1の周囲に、回転方向に沿って、帯電ブラシ2、露光装置3、現像装置10、転写ブラシ4及び搬送ベルト5、クリーニング装置20、及び除電手段をこの順序で配置した構成となっている。
【0053】
感光体ドラム1は、画像形成装置における本発明の静電潜像担持体及び現像剤担持体となるものであり、円柱形状を有している。
【0054】
帯電ブラシ2は、感光体ドラム1と物理的に接触して、感光体ドラム1の表面を一様に所定の電位まで帯電させるためのものである。帯電ブラシ2は、感光体ドラム1と互いの回転軸を平行にして隣接対向して設置されている。
【0055】
露光装置3は、帯電ブラシ2によって帯電された感光体ドラム1の表面を、例えばパーソナルコンピュータ等の画像処理装置からのデータに基づき、レーザ光等により露光して、感光体ドラム1の表面に静電潜像を形成させるためのものである。露光装置3として、例えば半導体レーザや発光ダイオードを用いることができる。
【0056】
現像装置10は、感光体ドラム1の表面に現像剤を供給し、感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像を現像剤像として顕像化するつまり現像するためのものである。この現像装置10については、後で詳述する。
【0057】
搬送ベルト5は、感光体ドラム1の表面に現像剤像が形成された後に、PPC(Plain Paper Copy)用紙等の記録媒体6を感光体ドラム1に運搬するためのものである。
【0058】
転写ブラシ4は、感光体ドラム1の表面の現像剤像を、記録媒体6に転写するためのものである。転写ブラシ4は、板金に、板金と接する面を底面とした見かけ上直方体のブラシ体を貼り付けた固定型ブラシである。転写ブラシ4は、例えば、パイル織り生地からなり、板金の上にブラシ毛を板金の面方向に垂直な方向に起毛したものである。転写ブラシ4は、板金の面方向と記録媒体6の面方向とを平行にして、搬送ベルト5を間に挟んで感光体ドラム1と隣接対向するように設置されている。
【0059】
クリーニング装置20は、クリーニングブラシ21と、固体潤滑剤供給装置22と、クリーニングブレード23とを備えており、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を除去するためのものである。
【0060】
クリーニングブラシ21は、感光体ドラム1と物理的に接触して、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を除去するためのものである。また、クリーニングブラシ21は、例えば、固体潤滑剤塗布ブラシとしての機能を兼ねており、固体潤滑剤供給装置22から供給される固体潤滑剤を、感光体ドラム1の表面に塗布するためのものである。クリーニングブラシ21は、円柱形状の基材にブラシ毛を起毛したロール型ブラシであり、感光体ドラム1の回転軸方向と円柱形状の基材の軸方向とを互いに平行にして、感光体ドラム1に隣接対向するように設置されている。
【0061】
クリーニングブレード23は、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を物理的に掻き落とすためのものである。クリーニングブレード23は、感光体ドラム1の回転方向に沿って、クリーニングブラシ21の後側に備えられ、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を均一に除去するために、感光体ドラム1の法線方向に対して鋭角に摺接している。
【0062】
固体潤滑剤供給装置22は、クリーニングブラシ21及びクリーニングブレード23によるクリーニング効率を高くするためのものである。固体潤滑剤供給装置22は、固体潤滑剤を、クリーニングブラシ21を介して、感光体ドラム1の表面に塗布する。また、固体潤滑剤供給装置22は、クリーニングブラシ21に固体潤滑剤が均一に塗布されるように、クリーニングブラシ21のシャフトの軸方向に広がった略四角柱の形状を有している。固体潤滑剤供給装置22は、クリーニングブラシ21の表面全体に固体潤滑剤が行き渡るように、クリーニングブラシ21と隣接対向して設置されている。使用する固体潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0063】
除電手段は、感光体ドラム1の表面を除電するためのものである。除電手段としては、例えば除電ブラシ等が挙げられる。
【0064】
上記構成の画像形成装置において、画像を形成する動作を、図2に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0065】
感光体ドラム1の表面は、帯電ブラシ2と接触することにより、均一に帯電する。表面が帯電された感光体ドラム1は、露光装置3によって、データに基づき露光され、感光体ドラム1の表面に静電潜像が形成される。そして、現像装置10の現像ロール12により、感光体ドラム1の表面に現像剤が供給され、感光体ドラム1の表面の静電潜像が、現像されて顕像化される。続いて、搬送ベルト5によって記録媒体6が感光体ドラム1へ運搬され、転写ブラシ4によって、感光体ドラム1の表面の現像剤像が、記録媒体6に転写される。転写後の感光体ドラム1は、固体潤滑剤が表面に塗布されたクリーニングブラシ21によって、表面に固体潤滑剤が塗布され、残留した現像剤や紙粉等が、クリーニングブラシ21及びクリーニングブレード23によって除去される。最後に図示しない除電手段により、感光体ドラム1の表面が除電される。このようなサイクルで画像形成は行われる。
【0066】
次に、本実施の形態の特徴である現像装置10の詳細について、図1に基づいて以下に説明する。
【0067】
まず、本実施の形態の現像装置10では、例えば非磁性1成分トナーからなる現像剤が使用されており、いわゆる非磁性1成分現像方式を採用している。この現像方式は、磁性1成分トナーに対して透明性の高い非磁性1成分トナーが使用できるのでフルカラーの現像に適していると共に、現像ロール12に磁石を用いない点で画像形成装置の小型軽量化に対して非常に有利である。特に、近年開発が盛んになっている小型のパーソナル用複写機、プリンタ、及び普通紙ファックス、並びにフルカラー複写機、フルカラープリンタに対してはこの現像方法を用いる例が多くなってきている。尚、本説明では、現像剤は、非磁性1成分トナーからなっているが、本発明では、必ずしもこれに限らず、例えば、磁性1成分トナーであってもよい。
【0068】
図1に示すように、現像装置10は、現像剤容器11内に、現像剤担持体及び現像ローラとしての現像ロール12と現像剤供給部材としての現像剤供給ロール13と現像剤規制ブレード14と第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16等とを備えており、感光体ドラム1の表面に現像剤Tを供給し、感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像を現像剤像として顕像化するつまり現像する。
【0069】
上記現像ロール12は、感光体ドラム1と物理的に接触して、現像剤供給ロール13から供給される現像剤を感光体ドラム1の表面に供給するためのものである。現像ロール12は、円柱形状を有しており、感光体ドラム1と互いの回転軸を平行にして隣接対向するように設置されている。
【0070】
上記現像剤供給ロール13は、現像ロール12と物理的に接触して、現像ロール12に現像剤を供給するためのものであり、現像剤を保持すると共に、現像剤を現像ロール12の表面に供給する。現像剤供給ロール13は、例えば、円柱形状の基材にブラシ毛を起毛したロール型ブラシからなっている。現像剤供給ロール13は、現像ロール12の回転軸方向と円柱形状の基材の軸方向とを互いに平行にして、現像ロール12に隣接対向するように設置されている。
【0071】
上記現像剤規制ブレード14は、現像ロール12に当接して現像ロール12上に供給された現像剤Tの帯電を行ない、現像剤Tの均一薄層を形成する。
【0072】
また、上記第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16は、現像ロール12の回転方向における現像剤供給ロール13の上流側に設けられている。
【0073】
上記構成の現像装置10では、送り羽根17によって現像ロール12近傍に送り込まれた現像剤Tは、現像剤供給ロール13で現像ロール12に塗布され、現像剤規制ブレード14で薄層化された後に、感光体ドラム1との接触部分で感光体ドラム1の潜像の現像に用いられる。そして、現像残りの現像剤Tは再度現像装置10内に戻り、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16にて現像剤Tの除電及び撹乱が行われた後、現像剤供給ロール13によって現像ロール12から剥離されて現像装置10内の現像剤Tと混合される。
【0074】
ここで、本実施の形態の特徴である第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16について詳述する。
【0075】
従来、現像ロール12上における現像後の残存トナーの掻き取り性が不足し、カブリ等の画像劣化の原因となっていた。
【0076】
そこで、この問題を解決すべく、鋭意努力した結果、現像剤除去補助ブラシとしては、現像剤除電及び現像剤撹乱の2つの機能を満たすことが好ましく、しかも、これら現像剤除電及び現像剤撹乱は、同時に行うよりも順に行う、つまり、一方が終わった後他方を行う方が良いことを見出し、本実施の形態に示すように、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16を設けることにした。
【0077】
この点、従来の現像剤除去補助ブラシでは、1種類の静電植毛ブラシしか設けられておらず、現像剤除電及び現像剤撹乱の2つの機能を1つのブラシで行っていたために、現像剤除電及び現像剤撹乱において改良の余地があったと考えられる。また、従来の現像剤除去補助ブラシの構成では、撹乱性を強めるために静電植毛ブラシの繊維の剛性を上げると、静電植毛ブラシが現像剤を堰き止めるので、現像剤がこぼれやすいといった問題点があった。
【0078】
本実施の形態では、第2静電植毛ブラシ16よりも上流側に設けられた第1静電植毛ブラシ15は、図1に示すように、例えば金属プレートからなる平板上の基材15a上の接着剤15bに静電植毛された第1導電性ブラシ毛15cを有している。また、第2静電植毛ブラシ16も同様に、例えば金属プレートからなる平板上の基材16a上の接着剤16bに静電植毛された第2導電性ブラシ毛16cを有している。ただし、本発明では、基材15a・16aは、必ずしも金属プレートからなる平板に限らず、板、シート、フィルム、又は弾性体等の平面部材であってもよい。弾性体は、例えばスポンジ又はゴム等である。また、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16は、例えば、芯材となるアルミ管等の基材15a・16aに接着剤15b・16bを塗布し、この接着剤15b・16bに第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cを静電植毛したものでもよい。したがって、静電植毛ブラシは、基材が平板にてなるバー型ブラシに限らず、基材が円柱形状にてなるロール型ブラシであってもよい。
【0079】
このように、本実施の形態の現像剤除去補助ブラシは、トナーを有する現像剤Tを担持する現像ロール12における現像後の残存現像剤の除去を補助すべく、現像ロール12の回転方向に沿って順に設けられた2種類の第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16からなっている。
【0080】
したがって、本実施の形態では、現像ロール12の回転方向に沿って、2種類の第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16が順に設けられており、現像剤除電及び現像剤撹乱を同時に行うのではなく、順次行う。このため、本実施の形態では、1種類の静電植毛ブラシで一度に現像剤除去の補助をするのではなく、2種類の第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16で二度に分けて現像剤除去の補助をするので、現像剤除去の補助を充分に行うことができる。
【0081】
この結果、現像ロール12における現像後の残存現像剤の除去を効率良く補助し得る第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16を提供することができる。
【0082】
尚、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16を静電植毛技術により製造するのは、静電植毛ブラシは、ブラシ毛の植毛が容易であるためである。すなわち、静電植毛ブラシを製造するときには、基材15a・16aに接着剤15b・16bを塗布し、次いで、この基材15a・16aと第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cとを高圧静電界中に配置する。これにより、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cが静電吸引力によって基材15a・16aに引き寄せられる。そして、基材15a・16aの表面である接着剤塗布面に垂直に第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cが突き刺さる。これにより、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16が完成する。
【0083】
ここで、本実施の形態の現像剤除去補助ブラシでは、2種類の静電植毛ブラシは、現像剤除電用の第1静電植毛ブラシ15、及び現像剤撹乱用の第2静電植毛ブラシ16であることが好ましい。
【0084】
これにより、具体的に、現像剤除電用の第1静電植毛ブラシ15と現像剤撹乱用の第2静電植毛ブラシ16とを用いて、二度に分けて現像剤除去の補助をするので現像剤除去の補助を充分に効率良く行うことができる。
【0085】
また、本実施の形態の現像剤除去補助ブラシでは、現像剤除電用の第1静電植毛ブラシ15は、現像ロール12の回転方向に沿って、現像剤撹乱用の第2静電植毛ブラシ16よりも上流側に設けられていることが好ましい。
【0086】
これにより、現像ロール12における現像後の残存現像剤の除電を行ってから、撹乱を行うので、現像剤除去の補助を効率良く行うことができる。すなわち、残存現像剤の除電を先に行うことにより、現像剤の電荷がなくなる。したがって、現像剤同士の電荷に基づく吸着力が低減した後に現像剤の撹乱を行うので、現像剤の撹乱を容易に行うことができる。
【0087】
ただし、本発明では、必ずしもこれに限らず、上流側に現像剤撹乱用の第2静電植毛ブラシ16を設け、第2静電植毛ブラシ16の下流側に現像剤除電用の第1静電植毛ブラシ15を設けることも可能である。
【0088】
また、本実施の形態の現像剤除去補助ブラシでは、第1静電植毛ブラシ15はナイロンからなる一方、第2静電植毛ブラシ16はポリエステル又はアクリルからなっていることが好ましい。
【0089】
これにより、ナイロン/ポリエステル、又はナイロン/アクリルのように互いに異なる材質とした方が、除電性及び剥離性並びにこぼれ性において効果が高い。すなわち、上流側の第1静電植毛ブラシ15をナイロンとすることにより、剛性が弱くトナーのこぼれ落ちを防止できる一方、下流側の第2静電植毛ブラシ16をポリエステル又はアクリルとすることにより、剛性が強く、撹乱し易いものと考えられる。
【0090】
また、本実施の形態の現像剤除去補助ブラシでは、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16には、現像ロール12と同電位、又は現像剤電荷を中和する方向にバイアス電源18からバイアス電圧が印加されることが好ましい。
【0091】
これにより、残存現像剤の現像剤電荷が0に近づく。したがって、確実に、現像剤電荷が除電されることになる。
【0092】
また、本実施の形態の現像剤除去補助ブラシでは、2種類の第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16は、繊維の抵抗値がそれぞれ1012 (Ω/cm・フィラメント)未満であることが好ましい。
【0093】
これにより、2種類の第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16は、繊維の抵抗値がそれぞれ1012 (Ω/cm・フィラメント)未満の導電性を有しているので、現像剤電荷を中和する方向に電圧を印加したときに、残存現像剤の現像剤電荷が効率良く除電される。
【0094】
また、本実施の形態の現像剤除去補助ブラシでは、2種類の第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16における第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cを固定する接着剤15b・16bはそれぞれ導電性を有していることが好ましい。
【0095】
これにより、接着剤15b・16bもそれぞれ導電性を有しているので、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16の基材15a・16aから接着剤15b・16bを介した第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cへの電気的流れが良くなる。このため、効率良く、残存現像剤の現像剤電荷を除電することができる。
【0096】
また、本実施の形態の現像剤除去補助ブラシでは、現像剤除電用の第1導電性ブラシ毛15cの繊度は、2.2デシテックス(T)以下であり、現像剤撹乱用の第2導電性ブラシ毛16cの繊度は、4デシテックス(T)以上であることが好ましい。尚、デシテックス(T)とは、「長さ10,000mの繊維(糸)の重さがNグラムであるとき、その繊維(糸)はNデシテックス(T)である」と定義される。尚、2.2デシテックス(T)は、従来の2.0デニール(D)に相当する。
【0097】
すなわち、残存現像剤の除電性及び剥離性の観点から、現像剤除電用の第1導電性ブラシ毛15cの繊度は、2.2デシテックス(T)以下の細いものを使用し、現像剤撹乱用の第2導電性ブラシ毛16cの繊度は、4デシテックス(T)以上の太いものを使用するのが良いということが実験により立証された。
【0098】
また、本実施の形態の現像剤除去補助ブラシでは、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16は、基材15a・16aが平板にてなるバー型ブラシからなっているとすることができる。
【0099】
これにより、例えば、現像装置10の内部における狭い部分においても容易に設置することができる。
【0100】
また、本実施の形態の現像剤除去補助ブラシでは、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16は、基材15a・16aが円柱形状にてなるロール型ブラシからなっているとすることができる。
【0101】
これにより、バー型ブラシのように第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cが現像ロール12に常に接触しているということがないので、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの寿命を延ばすことができる。
【0102】
また、本実施の形態の現像剤除去補助ブラシでは、現像剤担持体は、感光体ドラム1への現像を行う現像ロール12であるとすることができる。
【0103】
これにより、現像ロール12における現像後の残存現像剤の除去を例えば現像剤供給ロール13が行うに際して、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16は効率よく補助することができる。
【0104】
また、本実施の形態の現像剤除去補助ブラシでは、現像剤担持体は、感光体ドラム1への現像を行う現像ロール12であると共に、2種類の第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16における基材は、現像ロール12を収容する現像剤容器11の壁面を用いているとすることができる。
【0105】
これにより、現像剤容器11の壁面に接着剤15b及び接着剤16bを塗布し、直接植毛することができる。
【0106】
また、上記の説明では、本発明の現像剤担持体は、現像ロール12として説明したが、本発明では、必ずしもこれに限らず、現像剤担持体は感光体ドラム1であるとすることができる。
【0107】
これにより、感光体ドラム1における転写後の残存現像剤の除去を例えばクリーニングブラシ21が行うに際して、現像剤除去補助ブラシは効率よく補助することができる。
【0108】
また、本実施の形態の画像形成装置は、上記記載の第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16を備えている。
【0109】
これにより、現像剤担持体における現像後又は転写後の残存現像剤の除去を効率良く補助し得る画像形成装置を提供することができる。
【0110】
このように、本実施の形態では、後述する実施例1及び実施例2に示す各種の検証実験により、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16について、上記の構成を有することにより、残存トナーの除電性及び剥離性が向上することがわかった。
【0111】
尚、その他の構成について、以下に説明する。
【0112】
本実施の形態の現像装置10では、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの繊維は、非磁性1成分トナーに対して帯電系列が、同じ材質、又は同じ材質よりもトナー極性方向において上位に位置する材質からなっていることが好ましい。つまり、非磁性1成分トナーに対して帯電系列が、同じ材質、又はマイナス帯電の場合は同じ材質よりもマイナス側若しくはプラス帯電の場合は同じ材質よりもプラス側に位置する材質からなっていることが好ましい。
【0113】
ここで、帯電系列は、図3のように示される。本実施の形態では、非磁性1成分トナーとして、マイナス帯電のポリエステルのものを使用している。したがって、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの繊維は、図3に示す帯電系列に基づいて、帯電系列が同じ材質であるポリエステル、又はマイナス帯電においてポリエステルよりもマイナス側に位置する材質であるアクリル、ポリエチレン、セルドイド、セロファン、塩化ビニール、テフロン(登録商標)からなっていることが好ましい。
【0114】
これにより、第1導電性ブラシ毛15c又は第2導電性ブラシ毛16cの繊維を、非磁性1成分トナーが除電される方向に帯電し易い材質としているので、残存トナーの除電を効率的に行うことができる。
【0115】
また、本実施の形態の現像装置10においては、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cは、図4に示すように、非導電層からなるコア部と導電層からなる外層部とを備えた2層構造となったいわゆる芯鞘型、全体が導電層からなるいわゆる全分散型の第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cとが使用できる。
【0116】
しかしながら、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cは、図4に示すように、非導電層からなるコア部と導電層からなる外層部とを備えた2層構造となったいわゆる芯鞘型であることが好ましい。
【0117】
これにより、全体が導電層からなるいわゆる全分散型の第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cよりも残存トナーの除電を効率的に行うことができる。すなわち、芯鞘型の場合には、電圧印加時の電荷注入効率が良く、除電し易いためである。
【0118】
ここで、芯鞘型において、外層部を導電層にする方法は特に限定されないが、例えば、外層部に導電性材料を練り込む方法等が挙げられる。導電性材料としては、カーボン、ニッケル等の金属、酸化錫等の金属酸化物の粉が用いることできる。また、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの断面形状は、円形又は楕円形であってもよいし、多角形の角が丸くなった形状であってもよい。尚、ブラシ毛の断面形状コーナーの丸み(アール)があることが好ましい。
【実施例】
【0119】
本実施の形態の2種類の第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16を用いた場合における除電効果と剥離効果を確認するために、以下のパラメータについて各種の実験を行った。尚、導電性ブラシ毛の形状(繊維構造)、導電性ブラシ毛の抵抗値、接着剤の導電性及び導電性ブラシ毛の印加電圧については、1種類の第1静電植毛ブラシ15についてのみ行った。その効果は、第2静電植毛ブラシ16も同じであるためである。
(1)第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの繊維の材質
(2)第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの繊度
(3)導電性ブラシ毛の形状(繊維構造)
(4)導電性ブラシ毛の抵抗値
(5)接着剤の導電性
(6)第1静電植毛ブラシ15への印加電圧
これらのパラメータを評価するに際しての実験方法については、以下のようにして行った。
【0120】
まず、除電効果については、図5に示すように、現像ロール12に作成したトナー薄層を第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16の各種形態である目的部材に通過させ、通過前後のトナー帯電量の差により評価した。この場合、通過前後のトナー帯電量の差異が大きいということは、除電効果が大きいということになる。
【0121】
次に、剥離効果については、図6(a)に示すように、目的部材を使用した際に、白地印字後(現像後の残存トナーが多く、現像剤供給ロール13が現像剤Tの剥離及び供給の双方を行う必要が有る状態)と、図6(b)に示すように、ベタ印字後(現像後の残存トナーが無く、現像剤供給ロール13が現像剤Tの供給のみを行う状態)とでの現像ロール12上における現像剤Tの付着量の差により評価した。この場合、現像ロール12上における現像剤Tの付着量の差異が小さいということは、剥離効果が大きいということになる。
【0122】
また、評価条件は、表1に示すように、使用トナーとして非磁性1成分トナーであるポリエステル系/負帯電トナーを使用し、印加電圧は、現像ロール12が−280V、現像剤供給ロール13が−350V、目的部材が−200Vとした。
【0123】
【表1】

【0124】
〔実施例1〕
最初に、現像剤除去補助ブラシとして2個使用したものが、除電性及び剥離性に効果があるか否かについて調査した。尚、トナーのこぼれ性についても評価した。
【0125】
第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの材料種としては、前記図3に示す帯電系列に基づいて、現像剤Tに対する組み合わせとして、表2の評価仕様に示すように、ナイロン/ナイロン、ポリエステル/ポリエステル、アクリル/アクリル、ナイロン/ポリエステル、ナイロン/アクリルの5通りの組み合わせにより実験を行った。尚、現像剤としての非磁性1成分トナーは、ポリエステル系の負帯電トナーを使用している。
【0126】
【表2】

【0127】
一方、比較例として、現像剤除去補助ブラシとして1個のみを使用する場合について、第1静電植毛ブラシ15のみを用いた実験を行った。比較例の評価仕様は、表3に示す通りである。尚、実験では、第1導電性ブラシ毛15cの材料として、ナイロン、ポリエステル、アクリルを選択した。
【0128】
【表3】

【0129】
その結果、現像剤除去補助ブラシとして1個のみを使用した比較例においては、除電効果については、図7(a)に示すように、リファレンスとしての目的部材なしの場合には、通過前後のトナー帯電量の差異ΔQ/m(μC/g)は、0(μC/g)であるのに対して、ナイロンの場合は−4(μC/g)、ポリエステルの場合は−6(μC/g)、アクリルの場合は−8(μC/g)であった。
【0130】
また、剥離効果については、図7(b)に示すように、リファレンスとしての目的部材なしの場合には、現像ロール12上における現像剤Tの付着量の差異Δm/S(mg/cm)は、0.35(mg/cm)であるのに対して、ナイロンの場合は0.25(mg/cm)、ポリエステルの場合は0.17(mg/cm)、アクリルの場合は0.1(mg/cm)であった。
【0131】
これに対して、現像剤除去補助ブラシとして第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16の2個を使用した実施例においては、除電効果については、図8(a)に示すように、リファレンスとしての目的部材なしの場合には、通過前後のトナー帯電量の差異ΔQ/m(μC/g)は、0(μC/g)であるのに対して、ナイロン/ナイロンの場合は−8(μC/g)、ポリエステル/ポリエステルの場合は−12(μC/g)、アクリル/アクリルの場合は−13(μC/g)、ナイロン/ポリエステルの場合は−11(μC/g)、ナイロン/アクリルの場合は−11.5(μC/g)であった。
【0132】
また、剥離効果については、図8(b)に示すように、リファレンスとしての目的部材なしの場合には、現像ロール12上における現像剤Tの付着量の差異Δm/S(mg/cm)は、0.35(mg/cm)であるのに対して、ナイロン/ナイロンの場合は0.1(mg/cm)、ポリエステル/ポリエステルの場合は0.04(mg/cm)、アクリル/アクリルの場合は0.04(mg/cm)、ナイロン/ポリエステルの場合は0.02(mg/cm)、ナイロン/アクリルの場合は0.02(mg/cm)であった。
【0133】
また、トナーのこぼれ性の評価については、表4に示すように、ナイロン/ナイロン、及びナイロン/ポリエステル、ナイロン/アクリルにおいて良好であり、ポリエステル/ポリエステル、アクリル/アクリルにおいてやや良好という結果が得られた。
【0134】
【表4】

【0135】
すなわち、実施例の図8(a)(b)と比較例の図7(a)(b)とを比べると、現像剤除去補助ブラシとして第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16の2個を使用した実施例の方が、除電性及び剥離性において優れていることが分かった。また、図8(a)(b)に示す除電性及び剥離性の結果、及び表4に示すトナーのこぼれ性の評価を総合評価すると、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの材質としては、ナイロン/ポリエステル、ナイロン/アクリルのように互いに異なる材質とした方が、除電性及び剥離性並びにこぼれ性において効果が高いことが把握できた。すなわち、上流側の第1導電性ブラシ毛15cをナイロンとすることにより、剛性が弱くトナーのこぼれ落ちを防止できる一方、下流側の第2導電性ブラシ毛16cをポリエステル又はアクリルとすることにより、剛性が強く、撹乱し易いものと考えられる。
【0136】
また、この実験では、表2に示すように、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16は、繊維の抵抗値がそれぞれ10(Ω/cm・F)のものを使用している。
尚、この抵抗値は、1フィラメント(F)の導電性ブラシ毛15cにおける1cm当りの抵抗値を示している。
【0137】
したがって、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16における繊維の抵抗値が少なくともそれぞれ1012 (Ω/cm・F)未満である10(Ω/cm・F)の導電性において好ましいことが立証できた。
【0138】
さらに、この実験では、表2に示すように、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16の接着剤15b及び接着剤16bは、それぞれ導電性を有しているものを使用している。したがって、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16の接着剤15b及び接着剤16bが、導電性を有していることが非導電性であるよりも好ましいことが立証できた。
【0139】
また、この実験では、表2に示すように、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16の印加バイアスが−200Vであり、表1に示す現像ロール12の印加バイアス−280Vに対して、現像ロール12と同電位、又は現像剤電荷を中和する方向に電圧が印加されていることがわかる。したがって、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16には、現像剤電荷を中和する方向に電圧が印加されることが好ましいことが立証できた。
【0140】
さらに、この実験では、表2に示すように、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの繊維構造として、図4に示す非導電層からなるコア部と導電層からなる外層部とを備えた2層構造となったいわゆる芯鞘型のものを使用している。したがって、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの繊維構造としては、図4に示す芯鞘型の方が、図4に示す全分散型よりも好ましいことが立証できた。
【0141】
尚、上述した繊維の抵抗値が少なくともそれぞれ1012 (Ω/cm・F)未満の導電性を有していること、接着剤15b及び接着剤16bは、それぞれ導電性を有していること、第1静電植毛ブラシ15及び第2静電植毛ブラシ16には、現像剤電荷を中和する方向に電圧が印加されることが好ましいこと、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの繊維構造は芯鞘型の方が好ましいことについては、単一の第1静電植毛ブラシ15の効果と同程度のものであった。
〔実施例2〕
次に、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの繊度の影響について検討した。すなわち、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの組み合わせの繊度について、どの程度のものが除電性及び剥離性に優れているかを調査した。
【0142】
具体的には、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの組み合わせの繊度について、表5の評価仕様に示すように、繊度2.2デシテックス(T)/2.2デシテックス(T)、繊度4デシテックス(T)/4デシテックス(T)、繊度2.2デシテックス(T)/4デシテックス(T)のいずれのものが除電性及び剥離性に優れているかを調査した。尚、この実験においては、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの材質については、実施例1の結果に基づいて、ナイロン/ポリエステルについて行った。その他の評価仕様は、実施例1と同様である。
【0143】
【表5】

【0144】
この結果、除電効果については、図9(a)に示すように、リファレンスとしての目的部材なしの場合には、通過前後のトナー帯電量の差異ΔQ/m(μC/g)は、0(μC/g)であるのに対して、繊度2.2デシテックス(T)/2.2デシテックス(T)の場合は−12(μC/g)、繊度4デシテックス(T)/4デシテックス(T)の場合は−7(μC/g)、繊度2.2デシテックス(T)/4デシテックス(T)の場合は−11(μC/g)であった。
【0145】
また、剥離効果については、図9(b)に示すように、リファレンスとしての目的部材なしの場合には、現像ロール12上における現像剤Tの付着量の差異Δm/S(mg/cm)は、0.35(mg/cm)であるのに対して、繊度2.2デシテックス(T)/2.2デシテックス(T)の場合は0.14(mg/cm)、繊度4デシテックス(T)/4デシテックス(T)の場合は0.13(mg/cm)、繊度2.2デシテックス(T)/4デシテックス(T)の場合は0.02(mg/cm)であった。
【0146】
また、トナーのこぼれ性の評価については、表6に示すように、繊度2.2デシテックス(T)/2.2デシテックス(T)、及び繊度2.2デシテックス(T)/4デシテックス(T)において良好であり、繊度4デシテックス(T)/4デシテックス(T)においてやや良好という結果が得られた。
【0147】
【表6】

【0148】
すなわち、図9(a)(b)に示す除電性及び剥離性の結果、及び表6に示すトナーのこぼれ性の評価を総合評価すると、第1導電性ブラシ毛15c及び第2導電性ブラシ毛16cの繊度としては、繊度2.2デシテックス(T)/4デシテックス(T)のように互いに異なる繊度とした方が、効果が高いことが把握できた。
【0149】
さらに、残存現像剤の除電性及び剥離性の観点から、現像剤除電用の第1静電植毛ブラシ15の繊度は、2.2デシテックス(T)以下の細いものを使用し、現像剤撹乱用の第2静電植毛ブラシ16の繊度は、4デシテックス(T)以上の太いものを使用するのが良いということが分かった。すなわち、上流側の第1静電植毛ブラシ15の第1導電性ブラシ毛15cを2.2デシテックス(T)以下とすることにより剛性が弱くかつトナーのこぼれ落ちを防止できる一方、下流側の第2静電植毛ブラシ16の第2導電性ブラシ毛16cを4デシテックス(T)以上とすることにより、剛性が強くかつ撹乱し易いものと考えられる。
〔実施例3〕
次に、第1導電性ブラシ毛15cの繊維構造の影響について検討した。すなわち、前記図4に示すように、繊維構造として、全分散型又は芯鞘型のいずれが除電性及び剥離性が優れているかを調査した。
【0150】
このときの、評価仕様は、表7に示すとおりである。
【0151】
【表7】

【0152】
その結果、除電効果については、図10(a)に示すように、リファレンスとしての目的部材なしの場合には、通過前後のトナー帯電量の差異ΔQ/m(μC/g)は、0(μC/g)であるのに対して、全分散型の場合は−6(μC/g)、芯鞘型の場合は−8(μC/g)となり、芯鞘型が最も良いことが分かった。
【0153】
また、剥離効果については、図10(b)に示すように、リファレンスとしての目的部材なしの場合には、現像ロール12上における現像剤Tの付着量の差異Δm/S(mg/cm)は、0.35(mg/cm)であるのに対して、全分散型の場合は0.17(mg/cm)、芯鞘型の場合は0.10(mg/cm)となり、芯鞘型の方が良いことが分かった。
【0154】
この結果、第1導電性ブラシ毛15cの繊維構造としては、全分散型に比べて芯鞘型の方が、除電効果及び剥離性が優れていることが分かった。
〔実施例4〕
次に、第1導電性ブラシ毛15cの抵抗値の影響について検討した。すなわち、第1導電性ブラシ毛15cの抵抗値について、どの程度のものが除電性及び剥離性が優れているかを調査した。
【0155】
このときの、評価仕様は、表8に示すとおりである。すなわち、第1導電性ブラシ毛15cの抵抗値の影響調査として、第1導電性ブラシ毛15cの繊維抵抗値を、無限大(絶縁)、1012 (Ω/cm・F)、1010 (Ω/cm・F)、10(Ω/cm・F)、10(Ω/cm・F)のように変化させて実験を行った。
【0156】
【表8】

【0157】
その結果、除電効果については、図11(a)に示すように、リファレンスとしての目的部材なしの場合には、通過前後のトナー帯電量の差異ΔQ/m(μC/g)は、第1導電性ブラシ毛15cの抵抗値に関わらず0(μC/g)である。これに対して、通過前後のトナー帯電量の差異ΔQ/m(μC/g)は、抵抗値が無限大から1012 (Ω/cm・F)までは、0〜−2(μC/g)程度であるのに対して、1012 (Ω/cm・F)未満から10(Ω/cm・F)までは、−2〜−11(μC/g)と急激に増加していることが分かる。
【0158】
また、剥離効果については、図11(b)に示すように、リファレンスとしての目的部材なしの場合には、現像ロール12上における現像剤Tの付着量の差異Δm/S(mg/cm)は、0.35(mg/cm)である。これに対して、現像ロール12上における現像剤Tの付着量の差異Δm/S(mg/cm)は、抵抗値が無限大から1012 (Ω/cm・F)までは、0.33(mg/cm)以下であるのに対して、1012 (Ω/cm・F)未満から10(Ω/cm・F)までは、0.33〜0.07(mg/cm)と急激に増加していることが分かる。
【0159】
この結果、第1導電性ブラシ毛15cの抵抗値としては、1012 (Ω/cm・F)未満が除電効果及び剥離性が優れていることが分かった。尚、実験では、抵抗値として、10(Ω/cm・F)までしか測定していないが、これよりも小さい場合には、除電効果及び剥離性が優れていることは図から類推して、或いは理論的に考えても明らかである。
〔実施例5〕
次に、接着剤15bの導電性の影響について検討した。すなわち、接着剤15bの導電性について、導電性又は非導電性のいずれの方が除電性及び剥離性に優れているかを調査した。尚、接着剤15bの導電性については、接着剤15bにカーボンを混入して、抵抗値が略0(Ω)となる導電性を付与した。
【0160】
このときの、評価仕様は、表9に示すとおりである。
【0161】
【表9】

【0162】
その結果、除電効果については、図12(a)に示すように、リファレンスとしての目的部材なしの場合には、通過前後のトナー帯電量の差異ΔQ/m(μC/g)は、0(μC/g)である。これに対して、通過前後のトナー帯電量の差異ΔQ/m(μC/g)は、接着剤15bが絶縁性の場合には−6(μC/g)であるのに対して、接着剤15bが導電性の場合には−12(μC/g)であることが分かる。
【0163】
また、剥離効果については、図12(b)に示すように、リファレンスとしての目的部材なしの場合には、現像ロール12上における現像剤Tの付着量の差異Δm/S(mg/cm)は、0.35(mg/cm)である。これに対して、現像ロール12上における現像剤Tの付着量の差異Δm/S(mg/cm)は、接着剤15bが絶縁性の場合には0.17(mg/cm)であるのに対して、接着剤15bが導電性の場合には0.03(mg/cm)であることが分かる。
【0164】
この結果、接着剤15bが導電性・非導電性については、接着剤15bが導電性である方が、除電効果及び剥離性が優れていることが分かった。
〔実施例6〕
次に、第1静電植毛ブラシ15への印加電圧の影響について検討した。すなわち、第1静電植毛ブラシ15への印加電圧について、どの程度のものが除電性及び剥離性に優れているかを調査した。
【0165】
このときの、評価仕様は、表10に示すとおりである。尚、前述したように、現像ロール12の印加電圧は、−280Vとなっている。
【0166】
【表10】

【0167】
その結果、第1静電植毛ブラシ15の印加電圧については、図13(a)に示すように、リファレンスとしての目的部材なしの場合には、通過前後のトナー帯電量の差異ΔQ/m(μC/g)は、0(μC/g)である。これに対して、通過前後のトナー帯電量の差異ΔQ/m(μC/g)は、第1静電植毛ブラシ15の印加電圧が−100〜−280Vまでは、−9〜0(μC/g)であるのに対して、第1静電植毛ブラシ15の印加電圧が−280〜−400Vでは、0〜+6(μC/g)とリファレンスよりも悪くなっていることが分かる。
【0168】
また、剥離効果については、図13(b)に示すように、リファレンスとしての目的部材なしの場合には、現像ロール12上における現像剤Tの付着量の差異Δm/S(mg/cm)は、0.35(mg/cm)である。これに対して、現像ロール12上における現像剤Tの付着量の差異Δm/S(mg/cm)は、第1静電植毛ブラシ15の印加電圧が−100〜−280Vまでは、0.13〜0.35(mg/cm)であるのに対して、第1静電植毛ブラシ15の印加電圧が−280〜−400Vでは、0.35〜0.47(mg/cm)とリファレンスよりも悪くなっていることが分かる。
【0169】
この結果、第1静電植毛ブラシ15の印加電圧としては、現像ロール12と同電位(=−280V)、又はトナー電荷を中和する方向に電圧が印加されていなければ、つまり本実施の形態では、印加電圧が−100から〜−280Vが印加されていなければ、印加電圧除電性能及び剥離性能は、却って悪化することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の現像剤除去補助ブラシは、感光体上の静電潜像を、トナーを有する現像剤を用いて現像するプリンタ、複写機、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に適用できるものであり、現像剤担持体の残存トナー処理用の静電植毛ブラシに適用できる。具体的には、現像装置の現像剤担持体としての現像ローラの回転方向における上記現像剤供給部材の上流側、又は上記画像形成装置における現像剤担持体としての感光体のクリーニング部材の上流側に設けられる現像剤除去補助ブラシに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】本発明における現像装置の実施の一形態を示すものであり、現像装置の構成を示す断面図である。
【図2】上記現像装置を備えた画像形成装置の画像形成部を示す全体構成図である。
【図3】上記現像装置に適用される非磁性1成分トナーに対する帯電系列を示す図である。
【図4】上記現像装置における第1静電植毛ブラシ及び第2静電植毛ブラシの第1導電性ブラシ毛及び第2導電性ブラシ毛についての、2種類の繊維構造を示す断面図である。
【図5】上記第1静電植毛ブラシ及び第2静電植毛ブラシにおける実験条件を示す断面図である。
【図6】(a),(b)は、上記第1静電植毛ブラシ及び第2静電植毛ブラシにおける実験条件の具体的評価方法を示す断面図である。
【図7】(a)は比較例として上記第1静電植毛ブラシのみにおけるパイル材料と除電効果との関係を示すグラフであり、(b)は比較例として上記第1静電植毛ブラシのみにおけるパイル材料と現像剤供給ロールでの剥離性との関係を示すグラフである。
【図8】(a)は上記第1静電植毛ブラシ及び第2静電植毛ブラシにおけるブラシ材質と除電効果との関係を示すグラフであり、(b)は上記第1静電植毛ブラシ及び第2静電植毛ブラシにおけるブラシ材質と現像剤供給ロールでの剥離性との関係を示すグラフである。
【図9】(a)は上記第1静電植毛ブラシ及び第2静電植毛ブラシにおける繊維構造と除電効果との関係を示すグラフであり、(b)は上記第1静電植毛ブラシ及び第2静電植毛ブラシにおける繊維構造と現像剤供給ロールでの剥離性との関係を示すグラフである。
【図10】(a)は上記第1静電植毛ブラシにおける繊維構造と除電効果との関係を示すグラフであり、(b)は上記第1静電植毛ブラシにおける繊維構造と現像剤供給ロールでの剥離性との関係を示すグラフである。
【図11】(a)は上記第1静電植毛ブラシにおける導電性ブラシ毛の抵抗値と除電効果との関係を示すグラフであり、(b)は上記第1静電植毛ブラシにおける導電性ブラシ毛の抵抗値と現像剤供給ロールでの剥離性との関係を示すグラフである。
【図12】(a)は上記第1静電植毛ブラシにおける接着剤種類と除電効果との関係を示すグラフであり、(b)は上記第1静電植毛ブラシにおける接着剤種類と現像剤供給ロールでの剥離性との関係を示すグラフである。
【図13】(a)は上記第1静電植毛ブラシにおける印加バイアスと除電効果との関係を示すグラフであり、(b)は上記第1静電植毛ブラシにおける印加バイアスと現像剤供給ロールでの剥離性との関係を示すグラフである。
【図14】従来の現像装置の構成を示す断面図である。
【図15】従来の他の現像装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0172】
1 感光体ドラム(現像剤担持体、静電潜像担持体)
10 現像装置
11 現像剤容器
12 現像ロール(現像剤担持体、現像ローラ)
13 現像剤供給ロール
14 現像剤規制ブレード
15 第1静電植毛ブラシ(静電植毛ブラシ)
15a 基材
15b 接着剤
15c 第1導電性ブラシ毛(ブラシ毛)
16 第1静電植毛ブラシ(静電植毛ブラシ)
16a 基材
16b 接着剤
16c 第2導電性ブラシ毛(ブラシ毛)
17 送り羽根
18 バイアス電源
30 画像形成部
T 現像剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを有する現像剤を担持する現像剤担持体における現像後又は転写後の残存現像剤の除去を補助すべく、
上記現像剤担持体の回転方向に沿って順に設けられた2種類の静電植毛ブラシからなっていることを特徴とする現像剤除去補助ブラシ。
【請求項2】
前記2種類の静電植毛ブラシは、
現像剤除電用の第1静電植毛ブラシ、及び現像剤撹乱用の第2静電植毛ブラシであることを特徴とする請求項1記載の現像剤除去補助ブラシ。
【請求項3】
前記現像剤除電用の第1静電植毛ブラシは、前記現像剤担持体の回転方向に沿って、前記現像剤撹乱用の第2静電植毛ブラシよりも上流側に設けられていることを特徴とする請求項2記載の現像剤除去補助ブラシ。
【請求項4】
前記2種類の静電植毛ブラシには、前記現像剤担持体と同電位、又は現像剤電荷を中和する方向に電圧が印加されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像剤除去補助ブラシ。
【請求項5】
前記2種類の静電植毛ブラシは、繊維の抵抗値がそれぞれ1012 (Ω/cm・フィラメント)未満であることを特徴とする請求項4記載の現像剤除去補助ブラシ。
【請求項6】
前記2種類の静電植毛ブラシのブラシ毛を固定する各接着剤はそれぞれ導電性を有していることを特徴とする請求項4又は5記載の現像剤除去補助ブラシ。
【請求項7】
前記現像剤除電用の第1静電植毛ブラシの繊度は、2.2デシテックス(T)以下であり、
前記現像剤撹乱用の第2静電植毛ブラシの繊度は、4デシテックス(T)以上であることを特徴とする請求項3記載の現像剤除去補助ブラシ。
【請求項8】
前記2種類の静電植毛ブラシは、
基材が平板にてなるバー型ブラシからなっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の現像剤除去補助ブラシ。
【請求項9】
前記2種類の静電植毛ブラシは、
基材が円柱形状にてなるロール型ブラシからなっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の現像剤除去補助ブラシ。
【請求項10】
前記現像剤担持体は、静電潜像担持体への現像を行う現像ローラであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の現像剤除去補助ブラシ。
【請求項11】
前記現像剤担持体は、静電潜像担持体への現像を行う現像ローラであると共に、
前記2種類の静電植毛ブラシにおける基材は、上記現像ローラを収容する現像剤容器の壁面を用いていることを特徴とする請求項8記載の現像剤除去補助ブラシ。
【請求項12】
前記現像剤担持体は、静電潜像担持体であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の現像剤除去補助ブラシ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の現像剤除去補助ブラシを備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−288719(P2009−288719A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143851(P2008−143851)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(390026147)東英産業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】