説明

現像装置、並びに、これを備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】供給回収分離方式の現像装置における現像剤供給搬送路の下流側で現像剤量の不足が生じても画像濃度ムラを生じにくくさせることを課題とする。
【解決手段】供給搬送路37中を供給スクリュー39によって搬送されている現像剤を現像スリーブ34aの内部に配置されているマグネットローラ34bによる磁気力によって現像スリーブ表面に担持させるとともに、現像領域Aを通過した現像剤を現像スリーブ表面から回収搬送路38に回収する現像装置において、供給搬送路内の現像剤が現像スリーブ表面へ移動する現像剤汲み上げ領域内で、供給搬送路内の現像剤を現像スリーブ表面へ移動させる作用を及ぼす汲み上げ磁気力が、供給搬送路内の現像剤搬送方向上流側よりも下流側の方が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤を用いる現像装置、並びに、これを備えたプロセスカートリッジ、及び、プリンタ、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の現像装置は、一般に、現像剤担持体に沿って現像剤担持体回転軸方向に延びる現像剤供給搬送路中を搬送されている二成分現像剤(以下、単に「現像剤」という。)を、回転している現像剤担持体の表面に担持させ、現像剤担持体の回転により現像剤を現像領域へ供給する。従来の現像装置の中には、現像領域でトナーを消費した現像済み現像剤を再び現像剤供給搬送路へ戻す供給回収一体方式を採用するものがある。この供給回収一体方式の現像装置は、現像剤供給搬送路を流れる現像剤のトナー濃度が現像剤搬送方向下流(以下、単に「下流」という。)側ほど低くなるため、現像領域に供給される現像剤において現像剤担持体回転軸方向にトナー濃度のムラが生じるという欠点がある。このようなトナー濃度のムラは、記録材上に形成される画像の濃度ムラとなって現れやすいので、解消することが望まれる。特に、近年は、文書などの印字率の低い原稿に対して印字率の高い写真などの原稿を印刷する機会が増えてきている。印字率の高い原稿を印刷する場合、トナーの消費量が多いため、現像剤のトナー濃度分布のムラが発生しやすいことに加え、現像剤のトナー濃度分布のムラに起因した画像濃度ムラがユーザーに知覚されやすい。
【0003】
この欠点を解消し得る現像装置としては、現像領域でトナーを消費した現像済み現像剤を現像剤供給搬送路とは別の搬送路である現像剤回収搬送路へ回収する供給回収分離方式を採用するものがある(例えば特許文献1)。この供給回収分離方式の現像装置は、現像剤供給搬送路を流れる現像剤のトナー濃度が現像剤搬送方向にわたって一定に維持される。よって、現像領域に供給される現像剤において現像剤担持体回転軸方向にトナー濃度のムラが生じることはなく、上述した欠点が解消される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の画像形成装置に対しては、画像形成スピードの高速化が強く望まれている。画像形成スピードの高速化に対応するためには、現像装置の現像剤担持体の回転速度を高速化することが必要となる。現像剤担持体の回転速度が高いほど、現像剤担持体に対して現像剤を不足なく安定して供給し続けることが困難となるので、現像剤担持体への現像剤供給不足による画像濃度の低下等の画質劣化を引き起こしやすい。特に、近年の画像形成装置に対しては小型化の要請が強いことから、これに搭載される現像装置の小型化も強く望まれており、現像装置内に収容可能な現像剤の量は制限される傾向にある。そのため、現像装置内の限られた量の現像剤を有効活用して、現像剤担持体へ現像剤を不足なく安定して供給し続けることが必要となる。以上より、画像形成装置の小型化と画像形成スピードの高速化とを両立するためには、現像装置内の限られた現像剤量で、高速回転する現像剤担持体に対し、現像剤を不足なく安定して供給し続けることが望まれる。
【0005】
しかしながら、上述した供給回収分離方式を採用する現像装置において、現像剤供給搬送路内の現像剤は、その現像剤供給搬送路に沿って配置される現像剤担持体に汲み上げられながら下流端まで搬送される。そのため、現像剤供給搬送路内を流れる現像剤の量は、下流側ほど少なくなる。よって、上述したように現像剤担持体の回転速度を高速化すると、単位時間あたりの汲み上げ量が多くなって、現像剤供給搬送路の下流端まで到達できる現像剤の量が少なくなり、現像剤供給搬送路の下流側において現像剤の量が不足するという事態が起こり得る。このような事態が生じると、現像剤担持体表面に汲み上げられる現像剤の量が現像剤供給搬送路の下流側で少なくなり、現像剤担持体回転軸方向に対応する方向の画像濃度ムラが生じるという問題が起こる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、現像剤供給搬送路の下流側で現像剤量の不足が生じても画像濃度ムラが生じくい供給回収分離方式の現像装置、並びに、これを備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、現像剤担持体の表面に沿って現像剤担持体回転軸方向に延びる現像剤供給搬送路中を搬送部材によって搬送されているトナーと磁性キャリアとを含んだ二成分現像剤を、該現像剤担持体の内部に配置されている磁界発生手段による磁気力によって該現像剤担持体の表面に担持させることにより、該現像剤担持体の回転に伴って二成分現像剤を現像領域へ搬送し、現像領域にて二成分現像剤中のトナーを潜像担持体表面上の潜像に付着させて該潜像を現像するとともに、現像領域を通過した二成分現像剤を該現像剤担持体から該現像剤供給搬送路とは別の搬送路である現像剤回収搬送路に回収する現像装置において、上記磁界発生手段は、上記現像剤供給搬送路内の二成分現像剤が上記現像剤担持体の表面へ移動する現像剤汲み上げ領域内で、該現像剤供給搬送路内の二成分現像剤を該現像剤担持体の表面へ移動させる作用を及ぼす磁気力が、上記搬送部材によって該現像剤供給搬送路内の現像剤を搬送する現像剤搬送方向の上流側よりも下流側の方が大きくなるように、構成されていることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の現像装置において、上記磁界発生手段は、現像剤担持体表面移動方向に沿って複数の磁極を備えたものであり、該複数の磁極のうち、上記現像剤汲み上げ領域内の磁気力に最も影響を及ぼす汲み上げ磁極は、該汲み上げ磁極により現像剤担持体表面上に生じる該現像剤担持体表面の法線方向磁束密度の最大値を示す現像剤担持体回転軸方向位置が、上記現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向下流側に位置するように構成されていることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の現像装置において、上記磁界発生手段は、現像剤担持体表面移動方向に沿って複数の磁極を備えたものであり、該複数の磁極のうち、上記現像剤汲み上げ領域内の磁気力に最も影響を及ぼす汲み上げ磁極は、該汲み上げ磁極により現像剤担持体表面上に生じる該現像剤担持体表面の法線方向磁束密度の最大値の半分の磁束密度となる該現像剤担持体表面上の半値点を該現像剤汲み上げ領域における該現像剤担持体表面の曲率中心軸から見たときの現像剤担持体表面移動方向における半値点間の角度幅が、上記現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向上流側よりも下流側の方が大きくなるように、構成されていることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像装置において、上記現像剤汲み上げ領域における上記現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向の少なくとも一部分に、上記現像剤供給搬送路内の二成分現像剤が上記現像剤担持体の表面へ移動するための該現像剤供給搬送路と該現像剤担持体との間の現像剤通路スペースの現像剤担持体表面移動方向一部分を遮蔽して二成分現像剤の移動量を規制する移動量規制部材が設けられており、上記移動量規制部材は、上記現像剤通路スペースの遮蔽量が上記現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向上流側よりも下流側の方が少なくなるように構成されていることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、潜像担持体と該潜像担持体上の潜像を現像する現像装置とを一体的に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジにおいて、上記現像装置として、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、潜像担持体と、該潜像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤により該潜像担持体上の潜像を現像する現像装置とを有し、該現像装置により該潜像担持体上に形成されたトナー像を最終的に記録材へ転移させて、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、上記現像装置として、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、現像剤供給搬送路内の現像剤が現像剤担持体表面へ移動する現像剤汲み上げ領域内で、現像剤供給搬送路内の現像剤を現像剤担持体表面へ移動させる作用を及ぼす磁気力(以下「汲み上げ磁気力」という。)が、現像剤供給搬送路内の搬送部材による現像剤搬送方向の上流側よりも下流側の方が大きい。そのため、汲み上げ磁気力の作用により現像剤供給搬送路内の現像剤を現像剤担持体表面に向かって移動させるための搬送力を、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向上流側よりも下流側の方が相対的に大きくなるようにすることができる。従来の現像装置は、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向において汲み上げ磁気力がほぼ一様である。本発明によれば、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向下流側の汲み上げ磁気力を高めて、現像剤供給搬送路内の現像剤を現像剤担持体表面に向かって移動させるための搬送力を大きくした結果、従来の現像装置では現像剤担持体表面への現像剤汲み上げ量が不足してしまうほどの少量の現像剤しか現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向下流側まで到達できなかった場合でも、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向下流側で現像剤担持体表面に十分な量の現像剤を供給することが可能となる。
ここで、仮に現像剤汲み上げ領域全域にわたって汲み上げ磁気力を一律に大きくした場合、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向上流側における現像剤担持体側への搬送力も高まることになる。この場合、現像剤供給搬送路内を流れて現像剤搬送方向下流側まで到達できる現像剤の量が少なくなるため、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向下流側に存在する現像剤量が、現像剤担持体表面へ汲み上げるのに必要な現像剤量よりも少なくなるおそれがある。この場合、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向下流側の汲み上げ磁気力が大きくて搬送力が高まっているとしても、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向下流側に必要量の現像剤が存在しない以上、現像剤担持体表面への現像剤汲み上げ量が不足してしまう。
しかも、現像剤汲み上げ領域全域にわたって汲み上げ磁気力を一律に大きくした場合、多量の現像剤が存在している現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向上流側において、現像剤供給搬送路から現像剤担持体側への現像剤搬送力が高まる。そのため、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向上流側では、現像剤供給搬送路と現像剤担持体との間の現像剤通路スペースに過剰量の現像剤が送り込まれる。その結果、その現像剤通路スペースに存在する現像剤に過剰なストレスが加わり、現像剤が劣化しやすい。また、当該現像剤通路スペースに存在する現像剤に過剰なストレスが加わる結果、現像剤担持体に対して過剰な圧力が加わり、現像剤担持体が撓んでしまうおそれもある。現像剤担持体が撓んでしまうと、現像領域へ搬送される現像剤量が現像剤担持体軸方向において不均一となり、現像剤担持体軸方向で現像能力に差異が生じて画像濃度ムラを引き起こす。
一方、仮に現像剤汲み上げ領域全域にわたって汲み上げ磁気力を一律に小さくした場合、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向下流側における現像剤担持体側への搬送力が不足して、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向下流側に十分な量の現像剤が存在していても、現像剤担持体表面への現像剤汲み上げ量が不足してしまう。
【発明の効果】
【0009】
以上、本発明によれば、現像剤回転軸方向において汲み上げ磁気力がほぼ一様である従来の現像装置では現像剤担持体表面への現像剤汲み上げ量が不足してしまうほどの少量の現像剤しか現像剤供給搬送路の下流側まで到達できないような事態が生じても、現像剤担持体表面への現像剤汲み上げ量が不足する事態が生じにくく、これにより画像濃度ムラの発生を抑制できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【図2】同プリンタに適用可能な現像装置3の一例を示す概略断面図である。
【図3】同現像装置を図2の矢印F方向からみた各搬送スクリューの回転軸近傍の断面説明図である。
【図4】同現像装置を図2の矢印F方向から見た、現像装置の現像容器内の現像剤の流れを説明する模式図である。
【図5】(a)は、現像スリーブ表面上における現像スリーブ表面法線方向の磁束密度のグラフを、現像スリーブ軸方向に対して直交する断面に沿って切断した現像装置の断面に重ねて表示した、供給搬送路の上流端付近の説明図である。(b)は、現像スリーブ表面上における現像スリーブ表面法線方向の磁束密度のグラフを、現像スリーブ軸方向に対して直交する断面に沿って切断した現像装置の断面に重ねて表示した、供給搬送路の下流端付近の説明図である。
【図6】(a)は、供給搬送路の上流側における供給搬送路の障壁の高さを説明するための説明図である。(b)は、供給搬送路の下流側における供給搬送路の障壁の高さを説明するための説明図である。
【図7】6つの磁極を備えたマグネットローラを有する現像装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を画像形成装置としてのプリンタ100に適用した実施の形態について説明する。各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0012】
図1は、プリンタ100の概略構成図である。
プリンタ100は、タンデム方式を採用するフルカラー画像を形成可能なカラー画像形成装置であり、ブラック、マゼンタ、イエロー、シアン(以下、それぞれ、K、M、Y、Cという。)の各色トナー像を形成する作像装置17K,M,Y,Cを備えている。これらの作像装置17K,M,Y,Cの下方には、下流側張架ローラ18及び上流側張架ローラ19に掛け回されて記録紙Pを表面に担持して搬送し、各作像装置17K,M,Y,Cの対向しながら表面移動する転写搬送ベルト15が配設されている。転写搬送ベルト15を挟んで各作像装置17K,M,Y,Cと対向する転写バイアスローラ5K,M,Y,Cを備えている。
【0013】
また、転写搬送ベルト15による記録紙搬送方向について下流側張架ローラ18よりも下流側には、転写搬送ベルト15から分離した記録紙P上の未定着トナーを定着する定着装置24を備えている。また、プリンタ100の本体上部には、定着装置24を通過しトナー像が定着した記録紙Pを積載するための排紙トレイ25を備えている。
【0014】
転写搬送ベルト15の下方には、記録紙Pを収容する複数の給紙カセット20,21,22を備えている。また、転写搬送ベルト15と作像装置17K,M,Y,Cとが対向する転写領域に各給紙カセット20,21,22から記録材である記録紙Pを供給する給紙搬送装置26と、各給紙カセット20、21、22から搬送されてきた記録紙Pを作像装置17K,M,Y,Cによる作像タイミングに合わせて供給するレジストローラ23とを備えている。
【0015】
また、本実施形態のプリンタ100では、図1中の左右方向のサイズを小型にできるように転写搬送ベルト15を斜め方向に配設し、転写搬送ベルト15上での記録紙Pの搬送方向を図1中矢印で示すように斜め方向としている。これにより、プリンタ100は、図1中の左右方向における筐体の幅が、A3サイズの記録紙長手方向の長さよりも僅かに長い大きさとなっている。このように構成することで、本実施形態のプリンタ100は、内部に記録紙を収容するために最低限必要な大きさに構成できており大幅に小型化されている。
【0016】
各作像装置17K,M,Y,Cは、潜像担持体としてドラム状の感光体1K,M,Y,Cを有している。この感光体1K,M,Y,Cの回転方向に関して順に、それぞれ帯電装置2K,M,Y,C、現像装置3K,M,Y,C、クリーニング装置6K,M,Y,C、等を有している。また、帯電装置2K,M,Y,Cと現像装置3K,M,Y,Cとの間で書込み光Lを露光装置16K,M,Y,Cから照射される周知の構成である。感光体1K,M,Y,Cはドラム状でなく、ベルト状としても良い。
【0017】
このような構成のプリンタ100では、画像形成スタートとともに、各作像装置17K,M,Y,Cで各色トナー像が形成される。各作像装置17K,M,Y,Cでは、感光体1K,M,Y,Cが、図示していないメインモータにより回転駆動され、帯電装置2K,M,Y,Cによって一様帯電された後、露光装置16K,M,Y,Cより、画像を色分解した色毎の画像情報に応じて書込み光Lが照射され、静電潜像が形成される。感光体1K,M,Y,C上に形成された静電潜像は、現像装置3K,M,Y,Cにより現像され、各感光体1K,M,Y,Cの表面上に各色トナー像が形成される。一方、給紙カセット20,21,22のいずれかから給紙搬送された記録紙Pは、レジストローラ23によって作像装置17K,M,Y,Cによる作像タイミングに合わせて、転写搬送ベルト15の表面上に供給される。そして、転写搬送ベルト15に担持された記録紙Pは転写搬送ベルト15の表面移動によって各色の転写領域に搬送される。
【0018】
各感光体1K,M,Y,C上に形成されたトナー像は、感光体1K,M,Y,Cと転写搬送ベルト15との対向部で転写バイアス手段である転写バイアスローラ5K,M,Y,Cによって転写搬送ベルト15上に担持された記録紙Pに順次転写される。このようにしてK、M、Y、Cの順で各感光体1K,M,Y,C上に形成されたトナー像が転写され、重ね合わせカラートナー像が記録紙P上に形成される。トナー像を転写された記録紙Pは、転写搬送ベルト15から分離され、定着装置24に搬送され、トナー像が定着されて機外の排紙トレイ25に排出される。
【0019】
一方、記録紙P上にトナー像を転写した後の感光体1K,M,Y,Cは、クリーニング装置6K,M,Y,Cによって転写残トナーの除去がなされ、必要に応じて図示しない除電ランプで除電された後、再度、帯電装置2K,M,Y,Cで一様に帯電される動作を繰り返す。
【0020】
次に、現像装置3について詳しく説明する。本実施形態のプリンタ100の現像装置3K,M,Y,Cは、画像形成物質として、互いに異なる色(K,M,Y,C)のトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。このため、以下、特に必要のない限り添字K,M,Y,Cを省略し、現像装置3として説明する。
【0021】
図2は、本実施形態のプリンタ100に適用可能な現像装置3の一例を示す概略断面図である。
図3は、現像装置3を図2の矢印F方向からみた各搬送スクリューの回転軸近傍の断面説明図である。
図4は、現像装置3を図2の矢印F方向から見た、現像装置3のケーシングである現像容器33内の現像剤の流れを説明する模式図である。
なお、図3及び図4中の矢印が現像容器33中の現像剤の流れを示している。
【0022】
図2に示すように、現像装置3は感光体1に対向配置され、感光体1は図中矢印aに示すように、図2における時計回り方向に回転駆動する。現像装置3のケーシングである現像容器33内には磁性キャリアと磁性又は非磁性のトナーとからなる粉体状の二成分現像剤である現像剤32が収容されている。現像装置3は、感光体1の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像を行う現像領域Aまで現像容器33内の現像剤32を担持して、表面移動することによって搬送する現像剤担持体としての現像スリーブ34aを備える。また、現像スリーブ34aの内部に現像装置3に対して固定された複数の磁石からなる磁界発生手段としてのマグネットローラ34bを備え、現像スリーブ34aとマグネットローラ34bとで現像ローラ34を構成する。さらに、現像スリーブ34a上に担持された現像剤の層厚規制する現像剤規制部材としての現像ドクタ35とを有している。
【0023】
本実施形態のマグネットローラ34bは、現像スリーブ表面移動方向に沿って3つの磁極S1,N1,N2を備えている。磁極S1は、現像領域Aを通過する現像剤32を穂立ちさせ、磁性キャリアが保持しているトナーを感光体1の表面に接触させて現像させる機能を担っている現像磁極である。磁極N1は、現像スリーブ34aの回転による現像剤32の搬送性を確保するとともに、現像スリーブ34aの表面から現像剤を離間させるための現像剤離れ機能を担っている剤離れ磁極である。磁極N2は、供給搬送路37内の現像剤32をバッファ部Dへ移動させて現像スリーブ上に汲み上げる汲み上げ磁極として機能するとともに、現像ドクタ35を通過する現像剤32に磁気力を作用させて規制ギャップの現像剤通過量の安定性を確保する規制磁極としても機能する汲み上げ・規制磁極である。
【0024】
現像剤搬送手段である2つの搬送スクリューとして、供給スクリュー39と回収スクリュー40とが現像スリーブ34aの回転軸方向に対して略平行に設けられている。各搬送スクリューは、図3に示すように、回転軸とその回転軸に螺旋状に設けられた羽部とを有し、回転することにより回転軸の軸方向に沿って、それぞれ一方向に現像剤32を搬送する。現像容器33の内部は、現像剤供給搬送路としての供給搬送路37と現像剤回収搬送路としての回収搬送路38とが、仕切り板36を挟んで上下に形成されている。
【0025】
また、図3に示すように、仕切り板36の両端部には開口部がそれぞれ設けられている。ここで、供給搬送路37の現像剤搬送方向上流側と回収搬送路38の現像剤搬送方向下流側との間は開口部41によって連通している。回収搬送路38の現像剤搬送方向上流側に設けられた開口部42は、供給搬送路37の現像剤搬送方向下流側の端部に連通している。また、この開口部42の上部には、補給トナーを補給するためのトナー補給口45が配置されている。
【0026】
ここで、図2に示すように、仕切り板36は現像スリーブ34a側の端部が供給スクリュー39を下方から包み込むように立設され、この立設部によって障壁43を形成している。この障壁43と、現像装置3の内壁と、現像スリーブ34aの上部の周面とで形成される現像スリーブ34aの上方空間(現像ドクタ35の現像スリーブ表面移動方向上流側に隣接する規制前空間)には、供給搬送路37から現像剤32が順次供給される。この現像スリーブ34aの上方空間は、貯留する現像剤32が現像スリーブ34aの周面に接触し、現像スリーブ34aの回転に伴って現像スリーブ34aの周面に接触した現像剤32が、この現像スリーブ34aの回転軸方向の全幅に亘って担持搬送されるように現像幅に亘って形成されている。そして、この現像スリーブ34aの上方空間は、供給搬送路37から供給される現像剤32を一旦貯留する貯留部であるバッファ部Dとして機能し、貯留した現像剤32を現像スリーブ34aへ安定的に供給している。
【0027】
本実施形態における現像装置3においては、後述するように供給搬送路37中の現像剤32の量が下流に行くほど少なくなる傾向があるため、その量の減少に従うように障壁43の端部の高さが上流から下流に行くにしたがって低くなるように形成してもよい。図3に示すように、回収搬送路38内の現像剤32は回収スクリュー40によって供給スクリュー39の搬送方向とは逆方向に搬送される。また、供給スクリュー39は図2における時計回りに回転し、回収スクリュー40は現像スリーブ34aと同様に反時計回りに回転する。図4に示すように、現像容器33内の現像剤32は、供給スクリュー39及び回収スクリュー40の回転によって、供給搬送路37及び回収搬送路38それぞれの搬送方向に向かって搬送され、現像容器内を循環する。
【0028】
回収搬送路38から供給搬送路37への現像剤32の搬送は、回収搬送路38に設けられた回収スクリュー40による、搬送方向下流端に溜まった現像剤32の搬送圧で、供給搬送路37と回収搬送路38とを連通する開口部41を通過するように、現像剤32を鉛直方向上方へ押し上げることで行われる。供給搬送路37で搬送されている現像剤32は、現像剤搬送方向に沿って順次、供給スクリュー39の回転によって供給スクリュー39と現像スリーブ34aとの間の障壁43の端部を乗り越えてバッファ部Dに供給される。そして、バッファ部Dに供給された現像剤32は、直接又は現像スリーブ34aに内設されたマグネットローラ34bの磁気力によって現像スリーブ34aに引き付けられ現像スリーブ34aに供給される。
【0029】
バッファ部Dを介して、現像スリーブ34aに供給された現像剤32は、現像スリーブ34aの回転と、内設されたマグネットローラ34bの磁気力とによって、現像スリーブ34aの表面に担持されつつ、図2中の矢印Bの方向に搬送される。そして、バッファ部Dを介して、現像スリーブ34aに供給されて担持された現像剤32のうちの一定量が、現像スリーブ34aに担持されつつ、矢印Bで示すように、現像スリーブ34aの表面と現像ドクタ35との規制ギャップを通過する。このとき、現像スリーブ34aの表面に担持された現像剤32のうちの余分な現像剤は、規制ギャップを通過するときに現像ドクタ35によって通過を阻止され、図2中の矢印B1で示すようにバッファ部D内に留まる。
【0030】
規制ギャップを通過した現像剤32は、図2中矢印B2で示すように現像スリーブ34aと感光体1との間の現像領域Aを通過したのち、現像スリーブ34aから離れ、現像容器33の底部33bへ流れて回収搬送路38へと受け渡される。より詳しく説明すると、まず、規制ギャップを通過した現像剤32は現像スリーブ34a上に担持されて現像領域Aに搬送され、現像領域Aを通過する。その後、現像領域Aにおいて感光体1の表面の供給されずに現像スリーブ34a上に残った現像剤32は、現像スリーブ34aの回転に伴って供給搬送路37に再度回収されるのではなく、回収搬送路38に回収される。そして、回収された現像剤32は、補給されたトナーと回収搬送路38中で攪拌されつつ搬送され、再度、供給搬送路37へ受け渡される。このように、現像領域Aを通過した現像剤32は現像容器33内の供給搬送路37と回収搬送路38とを循環するため、供給搬送路37内には常に回収搬送路38で十分攪拌された現像剤のみが存在する状態となる。
【0031】
また、回収搬送路38内の現像剤32は現像領域Aを通過してトナー濃度が低下した現像剤32を含むため、トナーを補給する必要がある。そこで、潜像の画像情報から求めるトナー消費量に応じて、または、回収搬送路38内の現像剤32のトナー濃度の測定結果に応じて、回収搬送路38の上流側の現像剤32にトナー補給がなされる。この現像容器33内に補給されるトナーは、図3に示すように、トナー補給口45から開口部42を通って回収搬送路38の搬送方向上流側の端部に落下する。そして、落下した補給トナーは回収搬送路38内の現像剤32に補給され、回収搬送路38内で攪拌搬送される。このようにして、適正なトナー濃度の現像剤32を供給搬送路37に受け渡すことができる。
【0032】
本実施形態の現像装置3では、供給搬送路37から現像スリーブ34aに供給され現像領域Aを通過してトナー濃度が低下した現像剤は回収搬送路38と対向する位置で現像スリーブ34aの表面から離脱し、回収搬送路38内に回収される。また、回収搬送路38内に回収された現像剤は回収搬送路38内の搬送方向上流側端部に補給されるトナーと回収搬送路38内で攪拌され、所望のトナー濃度となった状態で供給搬送路37に供給される。このように本実施形態の現像装置3では、現像領域Aを通過してトナー濃度が低下した現像剤は供給搬送路37では回収されないため供給スクリュー39による搬送方向の上流側と下流側とで供給搬送路37内での現像剤32のトナー濃度が変化しない。
【0033】
以上のような供給回収分離方式の現像装置3においては、図4中矢印Bにて示すように、供給搬送路37からバッファ部Dを通じた現像スリーブ34aへの現像剤の受け渡しが、供給搬送路37の現像剤搬送方向全域にわたって行われる。そのため、供給搬送路37内において供給スクリュー39により搬送される現像剤の量は、供給搬送路37の上流端から下流端に向かうに従って徐々に減少する。つまり、供給搬送路37内の下流側では、その上流側に比べて現像剤量が少なくなる。そのため、供給搬送路37内の上流側でバッファ部Dへ移動する現像剤が多くなりすぎると、供給搬送路37内の下流側で現像剤が少なすぎて、十分な量の現像剤をバッファ部Dへ移動させることができず、現像スリーブ34aへ汲み上げられる現像剤の量が不足してしまう汲み上げ不良(以下「現像剤枯渇」という。)が生じる。
【0034】
以下、本発明者らによる現像剤枯渇の検討結果について説明する。
供給搬送路37内の現像剤32は、供給スクリュー39の回転によって供給搬送路37内を上流端から下流端まで搬送される間に、供給搬送路37と現像スリーブ34aとの間に配置されている障壁43を乗り越えてバッファ部Dへと供給される。このとき、本実施形態では、供給搬送路37内の現像剤32に対して汲み上げ・規制磁極N2の磁気力が作用し、その磁気力によって障壁43を乗り越える搬送力が得られる。つまり、本実施形態では、供給搬送路37内の現像剤32を磁気力によってバッファ部D側へ引き付けることができる結果、このような磁気力が作用しない場合と比較して、供給搬送路37からバッファ部Dへの現像剤搬送力が大きい。その結果、このような磁気力が作用しない場合と比較して、供給搬送路37内の現像剤量が少ない量でも、必要量の現像剤をバッファ部Dへ移動させることができ、現像剤枯渇に対する余裕度を向上させることができる。
【0035】
ただし、供給搬送路37の上流側部分、特に供給搬送路37の上流端付近では、バッファ部Dに存在する現像剤の量が多いため、供給搬送路37内の現像剤に作用する汲み上げ・規制磁極N2の磁気力の影響が大きいと、供給搬送路37内からバッファ部Dへ移動する現像剤の量が過剰となるだけでなく、その磁気力によってバッファ部D内に引き留められる現像剤の力も増大するので、バッファ部D内に過剰な現像剤が滞留する。そのため、バッファ部D内に存在する現像剤32に与えるストレスが増大し、現像剤32の劣化速度を速めてしまう。また、供給搬送路37内の現像剤に作用する汲み上げ・規制磁極N2の磁気力の影響が大きいと、供給スクリュー39の回転による供給搬送路37内の現像剤搬送が阻害され、供給搬送路37の下流側への搬送速度が落ち込み、供給搬送路37の下流側部分まで搬送される現像剤量が少なくなり、現像剤枯渇の発生を助長する結果を招くおそれがある。
【0036】
以上より、供給搬送路内の現像剤量が少ない箇所では、汲み上げ・規制磁極N2の磁気力を大きく作用させることで現像剤枯渇に対する余裕度を向上させることができるが、そのような磁気力を供給搬送路内の現像剤量が多い箇所で作用させると、現像剤へのストレスが増大するばかりか、現像剤枯渇の発生を助長する結果を招くおそれがある。
【0037】
図5(a)及び(b)は、現像スリーブ34aの表面上における現像スリーブ表面法線方向の磁束密度のグラフを、現像スリーブ軸方向に対して直交する断面に沿って切断した現像装置3の断面に重ねて表示した説明図である。ただし、図5(a)は、供給搬送路37の上流端付近のものを示し、図5(b)は、供給搬送路37の下流端付近のものを示す。
本実施形態においては、以上の検討結果から、現像剤枯渇が発生し得る供給搬送路37の現像剤搬送方向下流側部分(以下、単に「下流側部分」という。)では、供給搬送路37の上流側部分に対してバッファ部Dへと現像剤を移動させるための磁気力の影響を強くする。具体的には、汲み上げ・規制磁極N2の構成を、供給搬送路37の現像剤搬送方向上流側の磁気力よりも下流側の磁気力の方が大きくなるようにしている。これにより、現像剤枯渇が発生し得る供給搬送路37の下流側部分では現像剤枯渇の発生に対する余裕度が向上する一方、現像剤量が多い供給搬送路37の上流側部分では、現像剤ストレスの増大を抑制するとともに、供給搬送路下流側への搬送速度の落ち込みを抑制して現像剤枯渇の発生が助長されるのを抑制している。
【0038】
本実施形態においては、供給搬送路37のうち現像剤搬送方向上流側の2/3〜3/4に対しては汲み上げ・規制磁極N2の法線方向磁束密度のピーク値(最大値)が10[mT]以上30[mT]以下であり、かつ、半値角度幅が40[deg]以上60[deg]以下となるように構成し、残りの部分すなわち供給搬送路37のうち現像剤搬送方向下流側の1/4〜1/3に対しては、汲み上げ・規制磁極N2の法線方向磁束密度のピーク値(最大値)を20[mT]以上50[mT]以下の範囲で上流側よりも大きくし、もしくは、半値角度幅を50[deg]以上70[deg]以下の範囲で上流側よりも広くするように構成変更したことで、現像剤枯渇に対する余裕度が改善した。
【0039】
ここで、汲み上げ・規制磁極N2の磁気力の影響を供給搬送路37の全域に亘って強くした場合、バッファ部D内に存在する現像剤の嵩が高くなり、現像スリーブ34aに加わる現像剤の重量が増大する。そのため、現像スリーブ軸方向両端で支持されている現像スリーブ34aの中央部がその現像剤の重量によって下方へ変位し、現像スリーブ34aが撓みやすい。これに対し、本実施形態においては、汲み上げ・規制磁極N2の磁気力の影響が強いのは供給搬送路37の下流側部分のみなので、バッファ部D内に存在する現像剤の全体量は、供給搬送路全域に亘って強くする場合よりも少なく、現像スリーブ34aに加わる現像剤の重量が軽減される。しかも、汲み上げ・規制磁極N2の磁気力の影響が強い供給搬送路37の下流側部分は、現像スリーブ34aを軸支するスリーブ端部に近いので、その部分に作用する磁気力の影響を強くしてバッファ部D内に存在する現像剤の嵩が高くなっても、現像スリーブ34aの撓みに与える影響は少ない。特に、現像スリーブ34aの径が12[mm]以下の小径スリーブである場合、現像スリーブ34aは撓みやすいので、現像スリーブ34aに加わる荷重を極力抑えることが望まれる。
【0040】
また、汲み上げ・規制磁極N2の磁気力の影響を供給搬送路37の全域に亘って強くした場合、特に供給搬送路37の上流側部分の影響を強くした場合、以下に説明するように、現像剤の連れ回りや再汲み上げに対する余裕度が低下する。
本実施形態の現像装置3においては、図5(a)に示したように、回収搬送路38の下流側で現像剤量が多くなる。そのため、現像領域Aを通過した使用済みの現像剤が現像スリーブ34aから離れずにそのまま供給搬送路37側へ搬送されてしまう不具合(以下「連れ回り」という。)や、回収搬送路38内の現像剤が現像スリーブ34aの表面に付着してしまって供給搬送路37側へ搬送されてしまう不具合(以下「再汲み上げ」という。)が発生しやすい。このような連れ回りや再汲み上げが生じると、トナー濃度が低下した現像剤が現像スリーブ34aの回転に伴って供給搬送路37側へ搬送されてしまい、これが現像に寄与することで、画像濃度低下や画像濃度ムラが発生してしまう。
【0041】
ここで、連れ回りに関しては、回収搬送路38内の現像剤の嵩が高い箇所や、剤離れ領域Cに作用する磁気力(現像剤を現像スリーブ34aの表面から剥離させる方向に作用する磁気力)が小さい箇所で発生しやすい。剤離れ領域Cの磁気力は、汲み上げ・規制磁極N2を強くすると相対的に剤離れ領域Cに作用する磁気力(現像剤を現像スリーブ34aの表面から剥離させる方向に作用する磁気力)が弱くなる関係にある。よって、汲み上げ・規制磁極N2を強くすることで、連れ回りに対する余裕度が低下する。具体例を挙げて説明すると、例えば、本実施形態の現像装置3によれば、剤離れ磁極N1から出た磁力線の一部は現像磁極S1へと流れ込み、残りの磁力線は剤離れ領域Cの近傍を通過して現像スリーブ34aの表面法線方向外側に向かう。同じように、汲み上げ・規制磁極N2から出た磁力線の一部は現像磁極S1へと流れ込み、残りの磁力線は剤離れ領域Cの近傍を通過して現像スリーブ34aの表面法線方向外側に向かう。剤離れ領域Cの磁気力ベクトルは、剤離れ磁極N1からの磁力線と、汲み上げ・規制磁極N2からの磁力線とのバランスにより決まる。このとき、汲み上げ・規制磁極N2の磁束密度が増加すると、汲み上げ・規制磁極N2からの磁力線の数が増え、これにより剤離れ領域Cでの法線方向磁気吸引力が増加することになる。
【0042】
しかしながら、本実施形態においては、汲み上げ・規制磁極N2の磁気力を強めるのは、供給搬送路37の下流側部分、すなわち、存在する現像剤量が少なくかつ現像剤の嵩が低い回収搬送路38の上流側部分である。連れ回りに関しては、回収搬送路38内の現像剤の嵩が低いほど発生しにくいので、回収搬送路38の上流側部分において汲み上げ・規制磁極N2の磁気力を高めて剤離れ領域Cでの法線方向磁気吸引力が増加しても、連れ回りに対する余裕度が大幅に低下することはない。しかも、現像剤の嵩が低い回収搬送路38の上流側部分では、再汲み上げに対する余裕度が高いので、回収搬送路38の上流側部分だけ汲み上げ・規制磁極N2の磁気力を高めるのであれば、トナー濃度が低下した現像剤が現像スリーブ34aの回転に伴って供給搬送路37側へ搬送され、現像に寄与するような事態を助長することはない。
したがって、本実施形態によれば、汲み上げ・規制磁極N2の磁気力の影響を供給搬送路37の全域に亘って強くする場合と比較して、現像剤の連れ回りや再汲み上げに対する余裕度が高く、トナー濃度が低下した現像剤が現像スリーブ34aの回転に伴って供給搬送路37側へ搬送されて画像濃度低下や画像濃度ムラを発生される事態が少ない。
【0043】
また、本実施形態において、供給搬送路37の下流側部分では障壁43を乗り越えた現像剤のみがバッファ部Dへ移動し、現像スリーブ34aへ汲み上げられる。つまり、障壁43を乗り越えられなかった現像剤は現像に使われない余剰現像剤となる。このような余剰現像剤を少なくする方法としては、障壁43の高さを低くすればよい。この場合、余剰現像剤を少なくできるだけでなく、かつ、現像剤枯渇に対する余裕度も向上させることができる。しかしながら、その反面、障壁43の高さを低くすると、供給搬送路37からの現像剤がバッファ部Dへ供給される供給領域が、現像スリーブ表面移動方向上流側にシフトすることになる。供給領域の現像スリーブ表面移動方向上流側には、剤離れ領域Cが近接しているため、通常は、供給領域の現像スリーブ表面移動方向上流側に作用する汲み上げ磁気力は小さい。よって、単に、障壁43の高さを低くしても、供給領域が現像スリーブ表面移動方向上流側にシフトするだけで、その供給領域に作用する汲み上げ磁気力は小さいままである。そのため、その供給領域に供給された現像剤を現像スリーブ34aの表面に汲み上げることができず、現像スリーブ34aの表面への現像剤汲み上げ量の増加への効果が低い。
【0044】
しかしながら、本実施形態においては、供給搬送路37の下流側部分の汲み上げ磁気力が大きいので、この部分の障壁43の高さを低くしても、その供給領域に供給された現像剤を現像スリーブ34aの表面に汲み上げることができ、現像スリーブ34aの表面への現像剤汲み上げ量の増加に対する効果が高い。したがって、供給搬送路37の下流側部分だけ汲み上げ・規制磁極N2による汲み上げ磁気力が大きい本実施形態によれば、図6(a)に示すように供給搬送路37の上流側部分の障壁43を高くしたまま、図6(b)に示すように供給搬送路37の下流側部分の障壁43を低くすることで、障壁43を乗り越えられない余剰現像剤を減らしつつ、バッファ部Dに供給された現像剤の現像スリーブ34aへの汲み上げ量を維持できる結果、現像剤枯渇に対する余裕度を向上させることができる。
【0045】
なお、供給搬送路37内の現像剤32に対する汲み上げ・規制磁極N2の磁気力の影響を供給搬送路37の現像剤搬送方向上流側よりも下流側の方が大きくなるようにする方法としては、例えば、供給搬送路37の現像剤搬送方向下流側に向かって、汲み上げ・規制磁極N2の磁気力の影響が2段階以上で段階的に大きくなるようにする方法が挙げられる。また、例えば、供給搬送路37の現像剤搬送方向下流側に向かって、汲み上げ・規制磁極N2の磁気力の影響が連続的に大きくなるようにする方法も挙げられる。
【0046】
また、本発明は、供給搬送路37内で現像剤枯渇が発生し得る箇所すなわち供給搬送路37内の現像剤量が少ない箇所で作用する磁気力の大きさが、供給搬送路37内の現像剤量が多い箇所に対して相対的に大きくなるようにすればよい。本実施形態では、供給搬送路37内の現像剤を一端部側から他端部側へ一方向に搬送する構成であるため、供給搬送路37内の当該一端部側で作用する磁気力を相対的に小さくし、供給搬送路37内の当該他端部側で作用する磁気力を相対的に大きくしている。しかしながら、例えば、供給搬送路37内の現像剤を両端部から中央部へ搬送する構成であれば、供給搬送路37内の両端部で作用する磁気力を相対的に小さくし、供給搬送路37内の中央部で作用する磁気力を相対的に大きくすることになる。いずれにしても、供給スクリュー39による供給搬送路37内の現像剤搬送方向下流側で作用する磁気力の大きさを、上流側よりも大きくする。
【0047】
また、本実施形態においては、マグネットローラ34bが3つの磁極を有する場合を例に挙げて説明したが、磁極の数はこれに限定されることはなく、例えば図7に示すように6つの磁極を備えたマグネットローラ34bにおいても同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態では、汲み上げ・規制磁極N2による汲み上げ磁気力だけでなく、現像剤の自重も作用して、供給搬送路37からバッファ部Dへの現像剤の移動が実現される構成となっているが、例えば、現像スリーブ34aに対して供給搬送路37が鉛直方向下側に位置するようにして汲み上げ・規制磁極N2による汲み上げ磁気力だけで供給搬送路37からバッファ部Dへの現像剤の移動が実現されるような構成であっても、同様の効果が得られる。
【0048】
以上、本実施形態に係るプリンタは、潜像担持体としての感光体1と、感光体1上に静電潜像を形成する潜像形成手段としての帯電装置2及び露光装置16と、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤により感光体1上の静電潜像を現像する現像装置3とを有し、現像装置3により感光体1上に形成されたトナー像を最終的に記録材としての記録紙Pへ転移させて記録紙P上に画像を形成する画像形成装置である。この現像装置3は、現像剤担持体としての現像スリーブ34aに沿って現像スリーブ回転軸方向に延びる現像剤供給搬送路中を搬送部材としての供給スクリュー39によって搬送されている現像剤を、現像スリーブ34aの内部に配置されている磁界発生手段としてのマグネットローラ34bによる磁気力によって現像スリーブ34aの表面に担持させることにより、現像スリーブ34aの回転に伴って現像剤を現像領域Aへ搬送し、現像領域Aにて現像剤中のトナーを感光体1の表面上の潜像に付着させて潜像を現像するとともに、現像領域Aを通過した現像剤を現像スリーブ34aから現像剤供給搬送路37とは別の搬送路である現像剤回収搬送路38に回収する。この現像装置3において、マグネットローラ34bは、供給搬送路37内の現像剤が現像スリーブ34aの表面へ移動する現像剤汲み上げ領域内で、供給搬送路37内の現像剤を現像スリーブ34aの表面へ移動させる作用を及ぼす汲み上げ磁気力が、供給スクリュー39によって供給搬送路37内の現像剤を搬送する現像剤搬送方向の上流側よりも下流側の方が大きくなるように、構成されている。これにより、汲み上げ磁気力の作用により供給搬送路37内の現像剤を現像スリーブ表面に向かって移動させるための搬送力について、供給搬送路37内の現像剤搬送方向上流側よりも下流側の方を相対的に大きくすることができる。その結果、供給搬送路37の全域に一様な汲み上げ磁気力が作用する構成では現像スリーブ表面への現像剤汲み上げ量が不足してしまうほどの少量の現像剤しか供給搬送路37の下流側まで到達できなかった場合でも、本実施形態によれば、供給搬送路37の下流側で現像スリーブ表面に十分な量の現像剤を供給することが可能となる。したがって、現像剤枯渇に対する余裕度が向上する。
また、本実施形態において、マグネットローラ34bは、現像スリーブ表面移動方向に沿って3つの磁極S1,N1,N2を備えており、これらの磁極のうち、現像剤汲み上げ領域内の磁気力に最も影響を及ぼす汲み上げ磁極である汲み上げ・規制磁極N2は、汲み上げ・規制磁極N2により現像スリーブ34aの表面上に生じる現像スリーブ表面の法線方向磁束密度の最大値(ピーク値)を示す現像スリーブ34a回転軸方向位置が、供給搬送路37内の現像剤搬送方向下流側に位置するように構成されている。汲み上げ・規制磁極N2をこのように構成することで、供給搬送路37内の現像剤搬送方向上流側よりも下流側の方の汲み上げ磁気力が大きい構成を実現できる。
また、本実施形態において、マグネットローラ34bは、現像スリーブ表面移動方向に沿って3つの磁極S1,N1,N2を備えており、これらの磁極のうち、現像剤汲み上げ領域内の磁気力に最も影響を及ぼす汲み上げ磁極である汲み上げ・規制磁極N2は、汲み上げ・規制磁極N2により現像スリーブ34aの表面上に生じる現像スリーブ表面の法線方向磁束密度の最大値の半分の磁束密度となる現像スリーブ表面上の半値点を現像剤汲み上げ領域における現像スリーブ表面の曲率中心軸から見たときの現像スリーブ表面移動方向における半値点間の角度幅が、供給搬送路37内の上流側よりも下流側の方が大きくなるように、構成されている。汲み上げ・規制磁極N2をこのように構成することで、供給搬送路37内の現像剤搬送方向上流側よりも下流側の方の汲み上げ磁気力が大きい構成を実現できる。
また、本実施形態においては、現像剤汲み上げ領域における供給搬送路37内の現像剤搬送方向の少なくとも一部分に、供給搬送路37内の現像剤が現像スリーブ34aの表面へ移動するための供給搬送路37と現像スリーブ34aとの間の現像剤通路スペースの現像スリーブ表面移動方向一部分を遮蔽して現像剤の移動量を規制する移動量規制部材としての障壁43が設けられており、この障壁43は、現像剤通路スペースの遮蔽量が供給搬送路37内の上流側よりも下流側の方が少なくなるように構成されている。これにより、更に現像剤枯渇に対する余裕度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 感光体
2 帯電装置
3 現像装置
15 転写搬送ベルト
16 露光装置
17 作像装置
32 現像剤
33 現像容器
34 現像ローラ
34a 現像スリーブ
34b マグネットローラ
35 現像ドクタ
36 仕切り板
37 供給搬送路
38 回収搬送路
39 供給スクリュー
40 回収スクリュー
41,42 開口部
43 障壁
45 トナー補給口
S1 現像磁極
N1 剤離れ磁極
N2 汲み上げ・規制磁極
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特許第4093677号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤担持体の表面に沿って現像剤担持体回転軸方向に延びる現像剤供給搬送路中を搬送部材によって搬送されているトナーと磁性キャリアとを含んだ二成分現像剤を、該現像剤担持体の内部に配置されている磁界発生手段による磁気力によって該現像剤担持体の表面に担持させることにより、該現像剤担持体の回転に伴って二成分現像剤を現像領域へ搬送し、現像領域にて二成分現像剤中のトナーを潜像担持体表面上の潜像に付着させて該潜像を現像するとともに、現像領域を通過した二成分現像剤を該現像剤担持体から該現像剤供給搬送路とは別の搬送路である現像剤回収搬送路に回収する現像装置において、
上記磁界発生手段は、上記現像剤供給搬送路内の二成分現像剤が上記現像剤担持体の表面へ移動する現像剤汲み上げ領域内で、該現像剤供給搬送路内の二成分現像剤を該現像剤担持体の表面へ移動させる作用を及ぼす磁気力が、上記搬送部材によって該現像剤供給搬送路内の現像剤を搬送する現像剤搬送方向の上流側よりも下流側の方が大きくなるように、構成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1の現像装置において、
上記磁界発生手段は、現像剤担持体表面移動方向に沿って複数の磁極を備えたものであり、
該複数の磁極のうち、上記現像剤汲み上げ領域内の磁気力に最も影響を及ぼす汲み上げ磁極は、該汲み上げ磁極により現像剤担持体表面上に生じる該現像剤担持体表面の法線方向磁束密度の最大値を示す現像剤担持体回転軸方向位置が、上記現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向下流側に位置するように構成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1又は2の現像装置において、
上記磁界発生手段は、現像剤担持体表面移動方向に沿って複数の磁極を備えたものであり、
該複数の磁極のうち、上記現像剤汲み上げ領域内の磁気力に最も影響を及ぼす汲み上げ磁極は、該汲み上げ磁極により現像剤担持体表面上に生じる該現像剤担持体表面の法線方向磁束密度の最大値の半分の磁束密度となる該現像剤担持体表面上の半値点を該現像剤汲み上げ領域における該現像剤担持体表面の曲率中心軸から見たときの現像剤担持体表面移動方向における半値点間の角度幅が、上記現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向上流側よりも下流側の方が大きくなるように、構成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像装置において、
上記現像剤汲み上げ領域における上記現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向の少なくとも一部分に、上記現像剤供給搬送路内の二成分現像剤が上記現像剤担持体の表面へ移動するための該現像剤供給搬送路と該現像剤担持体との間の現像剤通路スペースの現像剤担持体表面移動方向一部分を遮蔽して二成分現像剤の移動量を規制する移動量規制部材が設けられており、
上記移動量規制部材は、上記現像剤通路スペースの遮蔽量が上記現像剤供給搬送路内の現像剤搬送方向上流側よりも下流側の方が少なくなるように構成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
潜像担持体と該潜像担持体上の潜像を現像する現像装置とを一体的に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジにおいて、
上記現像装置として、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
潜像担持体と、該潜像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤により該潜像担持体上の潜像を現像する現像装置とを有し、該現像装置により該潜像担持体上に形成されたトナー像を最終的に記録材へ転移させて、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
上記現像装置として、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−53154(P2012−53154A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193955(P2010−193955)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】