説明

現像装置および画像形成装置

【課題】 非磁性トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を用いる現像装置において,現像装置の容器内の非磁性トナーの濃度の安定化を図った現像装置およびそれを備える画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 現像ユニット10の現像容器15の底部に磁気センサーSが配置されている。磁気センサーSの感度特性として,現像容器15の内部のトナー濃度が,磁気センサーSの出力電圧値の1次関数であると仮定する。そして,その1次関数の2つの定数を決定するために,2点で測定する。1点目を,新品の現像ユニット10におけるトナー濃度のときに測定した出力電圧値を採用する。2点目を,新品から予め定めた量のトナーを補給した後のトナー濃度のときに測定した出力電圧値を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,現像装置および画像形成装置に関する。さらに詳細には,非磁性トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を用いる現像装置において,現像装置の容器内の非磁性トナーの濃度の安定化を図った現像装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置には,非磁性トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を用いる方式のものがある。この方式では,現像容器内に一定量のトナーを収容しておくことが望ましい。つまり,現像容器内のトナー濃度をほぼ一定とするのである。そのため,現像によりトナーが消費された場合に,その消費されたトナーの量と同じ量のトナーを現像容器の内部に供給することが好ましい。
【0003】
現像容器内のトナー濃度をほぼ一定に保つため,現像容器にトナー濃度を検出するセンサーを設けることがある。しかし,センサーの感度は,製造ロット毎にばらついている。また,センサーの感度のズレが後発的に生じることがある。センサーに感度のズレが生じると,そのセンサーの測定値に基づいて現像容器に補給されるトナーの供給量にもズレが生じる。つまり,現像容器内のトナー濃度をほぼ一定に保つことが困難となる。現像容器内のトナー濃度が好適な値からずれると,好適な濃度の画像を形成できないおそれがある。
【0004】
したがって,センサーの感度のズレを補正する技術が開発されてきている。例えば,特許文献1では,現像容器にトナー濃度検出センサーを設け,画像形成前と,ベタ画像形成後とで,トナー濃度検出センサーからの出力値を比較することにより,トナー濃度検出センサーの感度のズレを補正することとしている(特許文献1の請求項1および段落[0132]―[0142]参照)。これにより,現像容器内に好適な量のトナーを適宜補給することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−261907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし,ベタ画像を形成する場合のトナーの消費量は,そのときの温度湿度環境により左右される。これを考慮すると,特許文献1に記載の技術のようにベタ画像を形成する場合には,温度湿度環境の違いにより,センサーの感度のズレを修正する修正量が異なるはずである。そのため,特許文献1に記載の技術でセンサーの感度のズレを高い精度で修正することはやや困難である。また,特許文献1に記載の技術では,一旦はベタ画像を形成する必要がある。そのため,センサーの感度のズレの修正にあたり,ベタ画像を形成するだけのトナーを無駄に消費せざるをえない。
【0007】
本発明は,前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,非磁性トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を用いる現像装置において,現像装置の容器内の非磁性トナーの濃度の安定化を図った現像装置およびそれを備える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の一態様における現像装置は,非磁性トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を収容するとともに,トナーボトルからトナーの補給を受ける現像容器と,現像容器の内部における透磁率に応じた出力値を得るための磁気検出部と,磁気検出部により検出された出力値から,現像容器に補給するトナーの量を決定するトナー補給量制御部とを有するものである。そして,トナー補給量制御部は,現像容器の2成分現像剤のトナー濃度が,既知の第1のトナー濃度であるときの磁気検出部の第1の出力値と,現像容器の2成分現像剤のトナー濃度が,第1のトナー濃度よりも大きい,既知の第2のトナー濃度であるときの磁気検出部の第2の出力値とから,磁気検出器の感度特性を求めるとともに,画像形成時には,その求めた感度特性から現像容器に補給するトナーの量を決定するものである。かかる現像装置では,磁気検出部の出力値により求まるトナー濃度の値は適正である。そのため,トナーボトルから現像容器に好適な量のトナーを補給することができる。したがって,静電潜像に好適なトナー像を形成することができる。なお,トナー補給量制御部は,第3の出力値をも採用してよい。
【0009】
上記に記載の現像装置において,第1のトナー濃度が,画像形成時の濃度より低い,予め定まっている新品の現像装置のトナー濃度であり,第2のトナー濃度が,第1のトナー濃度である現像容器に,既知の量のトナーを補給した後の濃度であるとよい。新品の現像装置を使用する際,もしくは交換した際に,磁気検出部のキャリブレーションを行うことができるからである。
【0010】
上記に記載の現像装置において,第2のトナー濃度が,画像形成時のトナー濃度であるとよい。磁気検出部のキャリブレーションの終了後に,現像容器の内部のトナー濃度が画像形成に好適なトナー濃度になっているからである。
【0011】
上記に記載の現像装置において,磁気検出部は,現像容器の底部に配置されているものであるとよい。磁気検出部の検出範囲内に,現像剤が満たされている状態で検出を行うことができるからである。
【0012】
また,本発明の別の態様における画像形成装置は,非磁性トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を収容する現像容器と,現像容器にトナーを補給するトナーボトルと,現像容器の内部における透磁率に応じた出力値を得るための磁気検出部と,磁気検出部により検出された出力値から,現像容器に補給するトナーの量を決定するトナー補給量制御部とを有するものである。そして,トナー補給量制御部は,現像容器の2成分現像剤のトナー濃度が,既知の第1のトナー濃度であるときの磁気検出部の第1の出力値と,現像容器の2成分現像剤のトナー濃度が,第1のトナー濃度よりも大きい,既知の第2のトナー濃度であるときの磁気検出部の第2の出力値とから,磁気検出器の感度特性を求めるとともに,画像形成時には,その求めた感度特性から現像容器に補給するトナーの量を決定するものである。かかる画像形成装置では,磁気検出部の出力値により求まるトナー濃度の値は適正である。そのため,トナーボトルから現像容器に好適な量のトナーを補給することができる。したがって,静電潜像に好適なトナー像を形成することができる。なお,トナー補給量制御部は,第3の出力値をも採用してよい。
【0013】
上記に記載の画像形成装置において,第1のトナー濃度が,画像形成時の濃度より低い,予め定まっている新品の現像装置のトナー濃度であり,第2のトナー濃度が,第1のトナー濃度である現像容器に,既知の量のトナーを補給した後の濃度であるとよい。新品の現像装置を使用する際,もしくは交換した際に,磁気検出部のキャリブレーションを行うことができるからである。
【0014】
上記に記載の画像形成装置において,第2のトナー濃度が,画像形成時のトナー濃度であるとよい。磁気検出部のキャリブレーションの終了後に,現像容器の内部のトナー濃度が画像形成に好適なトナー濃度になっているからである。
【0015】
上記に記載の画像形成装置において,磁気検出部は,現像容器の底部に配置されているものであるとよい。磁気検出部の検出範囲内に,現像剤が満たされている状態で検出を行うことができるからである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,非磁性トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を用いる現像装置において,現像装置の容器内の非磁性トナーの濃度の安定化を図った現像装置およびそれを備える画像形成装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の機械的構成を示す概略構成図である。
【図2】実施形態に係る画像形成装置の現像ユニットおよび感光体ユニットを説明するための概略構成図である。
【図3】実施形態に係る現像装置およびトナーボトルを説明するための概略構成図である。
【図4】実施形態に係る画像形成装置の制御系を示すブロック図である。
【図5】実施形態に係る画像形成装置における標準的な磁気センサーの感度特性を示すグラフである。
【図6】実施形態に係る画像形成装置における磁気センサーの感度特性を示すグラフ(その1)である。
【図7】実施形態に係る画像形成装置における磁気センサーの感度特性を示すグラフ(その2)である。
【図8】実施形態に係る画像形成装置における磁気センサーの感度特性を示すグラフ(その3)である。
【図9】実施形態に係る画像形成装置における磁気センサーのキャリブレーションのフローを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,非磁性トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を用いる画像形成装置について,本発明を具体化したものである。
【0019】
1.画像形成装置
1−1.画像形成装置の概略構成
本形態の画像形成装置100は,図1にその概略構成を示すように,中間転写ベルト101を有する,いわゆるタンデム方式のカラーコピー機である。中間転写ベルト101は,無端状ベルト部材であり,その図中両端部がローラー102,103によって支持され,図1中の矢印Dの向きに回転するようになっている。中間転写ベルト101の図中下部に沿って,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の画像形成部1Y,1M,1C,1Kが配置されている。
【0020】
各色の画像形成部1Y,1M,1C,1Kはいずれも同様の構成である。それぞれ,感光体ユニット20と,露光装置30と,現像ユニット10とを有している。感光体ユニット20は,感光体ドラム21を有している。露光装置30は,感光体ドラム21に静電潜像を描きこむためのものである。現像ユニット10は,感光体ドラム21の静電潜像にトナーを付与して現像するための現像装置である。また,中間転写ベルト101を挟んで感光体ドラム21に対向する位置に,1次転写ローラー111が配置されている。図1中では画像形成部1Yによって代表してこれらの各装置の符号を示している。
【0021】
図1中で下方に配置されているのは,用紙Pを収容する給紙カセット112である。用紙Pは,給紙カセット112から用紙搬送経路114に沿って上方へ送られる。用紙搬送経路114を挟んで,ローラー103と対面する位置に,2次転写ローラー115が配置されている。さらにその下流側(図1中上方)には,定着装置130が配置されている。定着装置130より用紙搬送経路114のさらに下流側には,排紙ローラー116および排紙トレイ117が配置されている。
【0022】
1−2.画像形成装置の基本的動作
次に,本形態の画像形成装置100の基本的な動作を簡単に説明する。この画像形成装置100では,画像形成の指示を受けると,その画像信号から各色の画像データを生成する。生成された各色の画像データは,対応する画像形成部1Y,1M,1C,1Kにそれぞれ送出される。各色の画像形成部1Y,1M,1C,1Kは,画像データに基づいて,静電潜像を形成する。さらに,形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する。
【0023】
形成されたトナー像は,順次,1次転写ローラー111によって中間転写ベルト101に転写され,重ね合わせられる。中間転写ベルト101に重ね合わせられたトナー像は,2次転写ローラー115によって用紙Pに転写される。トナー像を担持した用紙Pは,さらに搬送されて定着装置130に至り,定着装置130によって加熱されるとともに加圧される。これによりトナー像が用紙Pに定着される。トナー像が定着された用紙Pは,排紙ローラー116によって排紙トレイ117に排出される。以上が,画像形成装置100の基本的な動作である。
【0024】
2.画像形成部
2−1.感光体ユニットおよび現像ユニット
図2に,画像形成部1を示す。画像形成装置100には,前述のように,各色に対して画像形成部1Y,1M,1C,1Kがある。これらは,収容されるトナーの色に違いがあるものの,機械的構造は同じである。したがって,以下,色の区別をしないで説明する。画像形成部1は,感光体ユニット20と,現像ユニット10と,露光装置30とを有している。感光体ユニット20は,感光体ドラム21と,クリーナ23と,帯電装置50とを有している。
【0025】
感光体ドラム21は,静電潜像を担持するための像担持体である。感光体ドラム21は,画像形成時に図2の矢印Eの向きに回転する。クリーナ23は,感光体ドラム21の表面に付着している現像残トナーを回収するためのものである。帯電装置50は,感光体ドラム21の表面を一様に帯電させるためのものである。
【0026】
2−2.現像ユニットおよびトナーボトル
図3に,現像ユニット10を示す。現像ユニット10は,感光体ドラム21にトナーを付与して静電潜像を現像するための現像装置である。現像ユニット10は,非磁性トナーと磁性キャリアとからなる2成分現像剤を内部に収容するための現像容器15を有している。現像の度に,トナーは静電潜像に付与されるため,現像容器15の内部のトナーは減っていく。そのため,現像容器15は,トナーボトル200からトナーの補給を受けることができるようになっている。一方,現像容器15の内部のキャリアは,現像により消費されることはない。
【0027】
現像ユニット10は,現像容器15の他に,現像スリーブ11と,供給スクリュー12と,攪拌スクリュー13とを有している。現像スリーブ11は,感光体ドラム21に形成された静電潜像にトナーを付与するための現像部材である。現像スリーブ11は,画像形成時に感光体ドラム21に対してカウンタ回り(図2の矢印Fの向き)に回転する。供給スクリュー12は,現像スリーブ11にトナーを供給するための供給部材である。攪拌スクリュー13は,現像容器15の内部のトナーを攪拌するための攪拌部材である。現像ユニット10は,モーターM1に連結されている。モーターM1は,供給スクリュー12および攪拌スクリュー13を回転駆動するためのものである。
【0028】
現像ユニット10には,図3に示すように,磁気センサーSが設けられている。磁気センサーSは,検出領域Rの透磁率を検出するための磁気検出部である。磁気センサーSは,検出領域Rの範囲内の2成分現像剤における磁性キャリアの密度,すなわち透磁率に応じた電圧を出力する。そして,その出力電圧と検出領域Rとの間には,後述するように一定の関係がある。検出領域Rは,2成分現像剤が搬送される搬送経路の少なくとも一部の領域である。なお,図3では,検出領域Rは,現像容器15の底に位置している。現像容器15の底部を搬送される現像剤の磁気を検出するためである。磁気センサーSは現像容器15の底部の透磁率を検出する。現像容器15の底部は,常に現像剤により満たされているからである。
【0029】
トナーボトル200は,トナー容器201と,補給スクリュー211とを有している。トナーボトル200は,トナーを収容して,適宜トナーを現像ユニット10に補給するためのトナー補給装置である。トナー容器201は,非磁性トナー(T)を収容しておくための容器である。補給スクリュー211は,トナーを現像ユニット10に補給するためのものである。トナーボトル200は,モーターM2に連結されている。モーターM2は,補給スクリュー211を回転駆動するためのものである。
【0030】
3.画像形成装置の制御系
ここで,画像形成装置100の制御系について説明する。画像形成装置100の制御系を図4のブロック図に示す。画像形成装置100の制御系には,制御部300と,記憶部400とがある。制御部300は,機械制御部310と,画像制御部320とを有している。
【0031】
機械制御部310は,画像形成部1Y,1M,1C,1Kやその他の各部の機械的な動作を制御するためのものである。機械制御部310は,モーター制御部350と,トナー補給量制御部360とを有している。モーター制御部350は,モーターM1,M2の回転駆動を制御するためのものである。トナー補給量制御部360は,磁気センサーSにより検出された出力値から,トナーボトル200が現像容器15に補給するトナーの量を決定するためのものである。画像制御部320は,画像形成する画像イメージを加工するためのものである。そして,画像制御部320は,露光装置30による露光量の調整も行う。
【0032】
記憶部400は,本体付属記憶部410と,ユニット付属記憶部420とを有している。本体付属記憶部410は,画像形成装置100本体の情報を記憶するためのものである。ユニット付属記憶部420は,現像ユニット10や感光体ユニット20に付属されている記憶部を概念的に抜き出して描いたものである。
【0033】
4.現像容器へのトナーの補給量
4−1.現像容器の内部のトナーの量
現像容器15の内部のトナーの量については,所定量に保持することが好ましい。すなわち,トナー濃度をほぼ一定にするとよい。トナーの量が少なすぎれば,現像に用いるトナーの量が不足する。つまり,現像後のトナー像の濃度は薄い。一方,トナーの量が多すぎれば,磁性キャリアがトナーを十分に帯電できない場合がある。すなわち,トナーの帯電不良が生じる。もしくは,トナーの帯電量にばらつきが生じる。これは,トナー像の濃度ムラの原因となる。このように,現像容器15の内部のトナー濃度には,画像形成に好適な値が存在する。本形態では,この好適なトナー濃度を8%とする。これはあくまで例示であり,これ以外の値であってもよい。
【0034】
本形態の2成分現像剤は,前述のように,非磁性トナーと磁性キャリアとからなっている。したがって,現像剤は,重量ベースでトナー濃度とキャリア濃度とを足し合わせると,1(100%)となる。数式で表すと,次式のようになる。
TD + CD = 1 (100%) ………(1)
TD: トナー濃度
CD: キャリア濃度
【0035】
4−2.トナーの補給量
現像容器15の内部のトナーは,現像により消費される。そのため,トナーボトル200は,現像容器15にトナーを補給する。その際に,トナーボトル200が現像容器15に補給するトナーの量は,現像容器15の内部のトナーの量をほぼ一定量とする量である。つまり,現像によるトナーの消費量と同じだけの量のトナーを,現像容器15に補給してやればよい。これにより,現像容器15の内部のトナー濃度を,現像に好適なトナー濃度である8%の状態に近い状態で保持することができる。
【0036】
そのトナーの補給量を決定するのが,トナー補給量制御部360である。トナー補給量制御部360は,磁気センサーSから入力されるトナー濃度の値に応じて,現像容器15へのトナーの補給量を決定する。
【0037】
例えば,本形態における現像容器15の2成分現像剤の重量の内訳を次に示す。
キャリアの重量 460g
好適なトナー濃度(8%)のときのトナーの重量 40g
好適なトナー濃度(8%)のときの2成分現像剤の重量 500g
【0038】
そこで例えば,現像容器15の内部におけるトナー濃度が7%となったとする。すると,トナー濃度の1%分に相当するトナー量を補給してやればよい。なお,トナー濃度が7%のときの現像容器15の内部の2成分現像剤の重量の内訳は次のようである。
キャリアの重量 460g
トナー濃度が7%のときのトナーの重量 35g
トナー濃度が7%のときの2成分現像剤の重量 495g
つまり,トナー濃度が7%になったときには,5gのトナーをトナーボトル200から現像容器15に供給してやればよい。
【0039】
5.磁気センサーの感度のばらつき
これまで,磁気センサーSが正しいトナー濃度を示しているものとして説明した。しかし,磁気センサーSの個体毎に感度のズレが生じていることが一般的である。つまり,磁気センサーSが必ずしも正しいトナー濃度を示しているとは限らない。そこで,ここからは,磁気センサーSの個体毎に感度のズレが生じているものとして説明する。そして本形態では,ズレの生じているであろう磁気センサーSに好適なキャリブレーションを行う。そこで,この項では,磁気センサーSの感度にどのようなズレが生じているかについて説明する。
【0040】
5−1.トナー濃度と磁気センサーの出力電圧との関係
磁気センサーSの感度のばらつきについて説明する前に,標準的な感度特性の磁気センサーSについて説明する。図5は,標準的な磁気センサーSの出力電圧の値と,磁気センサーSの検出領域Rにおけるトナー濃度との関係を示すグラフである。図5の線L0が示すように,トナーの濃度が低いほど,磁気センサーSの出力電圧は高い。これは,式(1)に示すように,トナー濃度が低いほど,キャリア濃度が高いからである。したがって,これは,製造ロット毎のばらつきと関係なく,磁気センサーSに共通の傾向である。
【0041】
5−2.変化率のばらつき
しかし,磁気センサーSの感度特性は,ロット毎に異なっているのが一般的である。そのため,異なるロットの磁気センサーSを用いると,磁気センサーSの示すトナー濃度の値は,標準的なものからズレが生ずることがある。このズレには,傾きが異なっている場合(図6参照)や,傾きが同じであってもその絶対値が異なっている場合(図7参照)がある。例えば,図6に,標準的な磁気センサーの感度特性を示す線L0と,それからずれの生じている磁気センサーSの感度特性を示す線L1,L2を示す。
【0042】
線L0,L1,L2では,線の傾き,すなわちトナー濃度の変化に対する出力電圧値の変化率が異なっている。線L1の感度特性を示す磁気センサーSでは,トナーの濃度が変化しても,出力電圧値は線L0の場合に比べてそれほど変わらない。線L2の感度特性を示す磁気センサーSでは,トナーの濃度が変化すると,出力電圧値は線L0の場合に比べて比較的大きく変化する。
【0043】
なお,図6は,線L0,L1,L2の傾きが異なっているが,これらの線L0,L1,L2はすべて出力電圧値3V,トナー濃度8%の点を通っている。図6は,各線の傾きが異なる場合を説明するためにこの点(出力電圧値3V,トナー濃度8%の点)を通ることを仮定した場合の図である。
【0044】
5−3.絶対値のばらつき
磁気センサーSの感度特性における絶対値によるばらつきを図7に示す。図7に示すように,線L3の傾きは,線L0の傾きと同じである。したがって,トナーの濃度の減少量が同じであれば,線L0であっても線L3であっても,出力電圧の変化量は同じである。しかし,線L3の出力電圧値の絶対値は,線L0の出力電圧値の絶対値よりも小さい。
【0045】
図7から明らかなように,出力電圧値として3Vが検出されたときであっても,線L0の感度を示すセンサーでは8%,線L3の感度を示すセンサーでは6%の値を示していることとなる。なお,図7は,線L0,L3の傾きが同じであると仮定した場合の図である。したがって実際には,図6に示した変化量(線の傾き)のずれや図7に示した絶対値のずれの両方が生じることが一般的である。
【0046】
そして,本個体の磁気センサーSの感度にズレが生じていた場合に,その磁気センサーSがどのような感度特性を示すものであるか,予め分かるものではない。しかし,後述するように,感度特性を示す線の2点が分かれば,線L0から線L3までに例示したような感度特性を求めることができる。
【0047】
6.磁気センサーの感度の修正方法(キャリブレーション)
ここで,本形態における磁気センサーSの出力値の修正方法(キャリブレーション)について説明する。図5から図7までの線Lから線L3までに示した感度特性は,磁気センサーSに特有のものであり,変えようがない。しかし,磁気センサーSの感度特性が線L0からずれていたとしても,そのずれた磁気センサーSの感度特性が分かればよい。その感度特性を用いれば,出力電圧値を正確なトナー濃度に読み替えることができるからである。
【0048】
キャリブレーションのため,本形態では,磁気センサーSの感度特性を示す線を1次関数と仮定する。したがって,トナー濃度TDを次式(2)により求めることができる。
TD = U × V + W ………(2)
TD:トナー濃度
U :感度特性の変化量
V :出力電圧値
W :出力電圧値が0Vのときのトナー濃度(切片)
【0049】
キャリブレーションに必要な値は,式(2)のU,Wの2つの定数である。そのために,磁気センサーSの出力電圧値とそのときのトナー濃度との組み合わせについて,2点を測定すればよい。これにより,定数U,Wを決定することができる。
【0050】
本形態では,
(1)初期状態
(2)初期状態からトナーを補給した状態
の2点での出力電圧値を測定する。これにより,磁気センサーSの感度特性を正確に把握して,トナーボトル200は,現像ユニット10への好適なトナーの補給を行うことができる。
【0051】
6−1.初期状態
それら2点のうちの1点は,初期状態である。本形態における新品の現像ユニット10,すなわち現像ユニット10の初期状態では,現像容器15の内部に予め定めた量の非磁性トナーおよび磁性キャリアが収容されている。つまり,トナー濃度(およびキャリア濃度)は既知である。そのため,このときの磁気センサーSの出力電圧値が得られればよい。そして,初期状態での磁気センサーSの値を読み取り,記憶部400のいずれかの場所に記憶しておく。
【0052】
この初期状態,すなわち新品の現像ユニット10における2成分現像剤の重量は次のとおりである。
初期状態の磁性キャリアの重量 460g
初期状態の非磁性トナーの重量 20g
初期状態の2成分現像剤の重量 480g
そして,現像ユニット10におけるトナー濃度は次のとおりである。
初期状態のトナー濃度 4%
【0053】
なお,本形態における新品の現像ユニット10に収容されているトナーの量は,画像形成に好適なトナーの量よりも少ない。つまり,初期状態のトナー濃度は,画像形成に好適なトナー濃度よりも低い。これは,後述するように,初期状態からさらにトナーを現像容器15に補給して,2点目を測定するためである。
【0054】
6−2.トナー補給後
そして,初期状態での磁気センサーSでの出力電圧値を記憶した後に,トナーボトル200から現像容器15にトナーを補給する。ここでのトナーの補給量は,好適なトナー濃度(8%)に達するだけの量である。つまり,20gである。もちろん,これは既知の値である。したがって,初期状態とは別に,トナー濃度が既知の状態における磁気センサーSの出力電圧値が得られる。
【0055】
6−3.具体例
ここで,磁気センサーSの具体的な感度特性の求め方について説明する。つまり,実際に2点について測定したとする。そのときに,表1の例1と例2のような値が得られたとする。本形態では前述のとおり,初期状態のトナー濃度は4%であり,トナー補給後のトナー濃度は8%である。表1の例1および例2の場合,磁気センサーSの感度特性を表すとそれぞれ,図8のグラフの線L0と線L4とに該当する。
【0056】
[表1]
例1(線L0):
トナー濃度 4% 出力電圧値 4V
トナー濃度 8% 出力電圧値 3V
例2(線L4):
トナー濃度 4% 出力電圧値 3.67V
トナー濃度 8% 出力電圧値 3V
【0057】
したがって,磁気センサーSの感度特性を式(2)から求めることができる。すると,線L0,L4に対して次のような式が求まる。
線L0:
TD = −4 × V + 20 ………(3)
線L4:
TD = −6 × V + 26 ………(4)
つまり,線L0の感度特性を示す磁気センサーSについては,式(3)を適用することで,トナー濃度を求めることができる。線L4の感度特性を示す磁気センサーSについては,式(4)を適用することで,トナー濃度を求めることができる。
【0058】
式(3),(4)はあくまで例示である。実際には,式(2)のうちのU,Wを決定することができる。そのため,このように求めたU,Wの値を代入した式(2)を記憶しておけばよい。このように,トナー補給量制御部360は,磁気センサーSの感度特性を求めることができる。これにより,磁気センサーSのキャリブレーションを終了する。
【0059】
6−4.画像形成時
画像形成時には,トナーの消費量にしたがい,トナーボトル200から現像容器15への適正なトナーの補給を行うことができる。そして,トナーの補給量を決定するために,トナー濃度を求める。その度に,その記憶した式(2)(U,W決定済み)の感度特性を用いることとすればよい。
【0060】
以上説明したように,式(2)と,初期状態(新品の現像ユニット10)の出力電圧値と,好適なトナー濃度となるまでトナーを補給した後の出力電圧値とから,磁気センサーSの感度特性を求めることができる。これにより,画像形成によりトナーが消費されても,現像容器15の内部のトナー濃度を好適な値に保持することのできる現像装置および画像形成装置が実現されている。
【0061】
7.磁気センサーの感度の修正フロー
ここで,本形態における磁気センサーSのキャリブレーションのフローについて説明する。図9は,磁気センサーSの感度のズレを修正するフローを説明するためのフローチャートである。まず,現像ユニット10のユニット付属記憶部420を読み出す(S101)。次に,その読み取り情報により現像ユニット10が新品であるか否かを判断する(S102)。そこで,現像ユニット10が新品であれば(S102:Yes),S103に進む。現像ユニット10が新品でなければ(S102:No),処理を終了する。
【0062】
S103では,磁気センサーSの出力電圧値を読み出す。そして,その出力電圧値から好適な量のトナーを現像ユニット10の内部に補給する(S104)。次に,現像ユニット10の内部の現像剤を攪拌する(S105)。そして,磁気センサーSの出力電圧値を読み出す(S106)。続いて,磁気センサーSの感度を検出して補正する(S107)。なお,図9のフローチャートは,現像ユニット10の使用初期に実施されるフローを示したものである。したがって,このフローを実施していないときにも,トナーボトル200は,現像ユニット10に適宜トナーを補給している。
【0063】
8.変形例
8−1.2次関数
本形態では,磁気センサーSの感度特性が1次関数であると仮定した。しかし,磁気センサーSの感度特性が2次関数であると仮定してもよい。
TD = U1 × V2 + U2 × V + W1 ………(8)
これら,U1,U2,W1を決定するために,3点を測定すればよい。これにより,トナー濃度をより正確に測定することができる。
【0064】
8−2.現像ユニットの交換時
本形態では,現像ユニット10が新品である場合に磁気センサーSのキャリブレーションを行うこととした。これは,新品の画像形成装置100に限らない。つまり,中古の画像形成装置100から使用済みの現像ユニット10を取り出し,新品の現像ユニット10を新たに装着した場合に本形態の磁気センサーSのキャリブレーションを行うこととしてもよい。これにより,画像形成装置100の使用を継続することにより後発的に生じた磁気センサーSの感度特性のズレをも修正することができるからである。
【0065】
8−3.出力値
本形態では,磁気センサーSの出力値は電圧値であるとした。しかし,この出力値は,電流値やその他の値であってもよい。
【0066】
8−4.測定する2点の選択
本形態では,現像容器15の内部のトナーの量が既知である2点として,初期状態(新品)と,適正なトナー濃度となる既知のトナーを補給した場合を採用した。しかし,磁気センサーSの感度特性を求めるために採用する2点として,他の2点を用いることとしても構わない。つまり,現像容器15内にトナーがない状態から,現像容器15内にトナーが満たされている状態(満タン状態)のうちの,いずれか2点を採用するのである。ただし,この場合,初期状態から,満タン状態までの間に画像形成を行うことでトナーが消費されないようにしなければならない。トナーの量が既知でなくなるからである。
【0067】
9.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る画像形成装置100は,現像によるトナーの消費量に応じて,トナーボトル200から現像ユニット10へトナーを供給するものである。そして,磁気センサーSに感度のズレが生じていれば,そのズレを補正する。これにより,現像容器15の内部のトナーの量をほぼ一定量とすることのできる現像装置および画像形成装置が実現されている。
【0068】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。本形態では,現像ユニット10と感光体ユニット20とを有する画像形成装置100を例に挙げて説明した。しかし,2成分現像剤を用いて,トナー補給容器から現像容器にトナーを補給する方式の画像形成装置であれば,これ以外のものであってもよい。
【0069】
また,画像形成装置は,片面印刷のものであっても,両面印刷のものであってもよい。また,カラー印刷のものに限らない。カラー印刷でない場合には,画質低下判定値については,1色のみについて算出すればよい。そして,画像形成装置は,プリンターであってもよい。また,読み取った画像を印刷ジョブとして公衆回線により送信する画像読取装置および画像形成装置に適用することができる。もちろん,複合機であってもよい。また,トナーの種類によらず適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1…画像形成部
10…現像ユニット
20…感光体ユニット
21…感光体ドラム
100…画像形成装置
300…制御部
310…機械制御部
320…画像制御部
350…モーター制御部
360…トナー補給量制御部
400…記憶部
410…本体付属記憶部
420…ユニット付属記憶部
M1…モーター
M2…モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を収容するとともに,トナーボトルからトナーの補給を受ける現像容器と,
前記現像容器の内部における透磁率に応じた出力値を得るための磁気検出部と,
前記磁気検出部により検出された出力値から,前記現像容器に補給するトナーの量を決定するトナー補給量制御部とを有し,
前記トナー補給量制御部は,
前記現像容器の2成分現像剤のトナー濃度が,既知の第1のトナー濃度であるときの前記磁気検出部の第1の出力値と,
前記現像容器の2成分現像剤のトナー濃度が,前記第1のトナー濃度よりも大きい,既知の第2のトナー濃度であるときの前記磁気検出部の第2の出力値とから,
前記磁気検出器の感度特性を求めるとともに,
画像形成時には,その求めた感度特性から前記現像容器に補給するトナーの量を決定するものであることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現像装置であって,
前記第1のトナー濃度が,
画像形成時の濃度より低い,予め定まっている新品の現像装置のトナー濃度であり,
前記第2のトナー濃度が,
前記第1のトナー濃度である現像容器に,既知の量のトナーを補給した後の濃度であることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の現像装置であって,
前記第2のトナー濃度が,
画像形成時のトナー濃度であることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までに記載のいずれかの現像装置であって,
前記磁気検出部は,
前記現像容器の底部に配置されているものであることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
非磁性トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を収容する現像容器と,
前記現像容器にトナーを補給するトナーボトルと,
前記現像容器の内部における透磁率に応じた出力値を得るための磁気検出部と,
前記磁気検出部により検出された出力値から,前記現像容器に補給するトナーの量を決定するトナー補給量制御部とを有し,
前記トナー補給量制御部は,
前記現像容器の2成分現像剤のトナー濃度が,既知の第1のトナー濃度であるときの前記磁気検出部の第1の出力値と,
前記現像容器の2成分現像剤のトナー濃度が,前記第1のトナー濃度よりも大きい,既知の第2のトナー濃度であるときの前記磁気検出部の第2の出力値とから,
前記磁気検出器の感度特性を求めるとともに,
画像形成時には,その求めた感度特性から前記現像容器に補給するトナーの量を決定するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置であって,
前記第1のトナー濃度が,
画像形成時の濃度より低い,予め定まっている新品の現像装置のトナー濃度であり,
前記第2のトナー濃度が,
前記第1のトナー濃度である現像容器に,既知の量のトナーを補給した後の濃度であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置であって,
前記第2のトナー濃度が,
画像形成時のトナー濃度であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7までに記載のいずれかの画像形成装置であって,
前記磁気検出部は,
前記現像容器の底部に配置されているものであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−29712(P2013−29712A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166504(P2011−166504)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】