説明

生体の顔認定システム

被験者の顔が現実の被験者の顔か否かを評価するシステム。被験者の顔が種々のイリュミネーション条件下で照らされ、被験者のイメージが種々のイリュミネーション条件に対して得られる。種々のイリュミネーション条件で得られるイメージ間の差分を使って被験者の顔が現実の人の顔かどうかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被験者の顔が現実の(生きた)人の顔であるか否かを認定するシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の顔識別システムの技術は不正使用者により乱用されやすかった。不正使用者が真のクライアントを記録した写真又はビデオを使ってシステムにトリックを行って不正使用が行われた。従来の技術で不正使用者がこのようにしてシステムにアクセスして成功する場合があり、この場合不正使用者は真のクライアントのシステムにアクセスできた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような不正使用者の攻撃を回避するためにシステムのセキュリティを改善することは明らかに望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は被験者の顔(subject’s face)が現実の人の顔であるか否かを評価するためのシステムを提供する。このシステムは、被験者の顔に入射する光学的ラジェーション(radiation)を制御するための制御手段と、被験者の顔から反射される光学的ラジェーションを検出する検出手段と、前記制御手段に応答して前記検出手段が検出した前記反射する光学的ラディエーションを解析して被験者の顔が実際の人の顔か否かを評価する(assess)処理手段とを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
好ましい実施例において、前記制御手段は制御可能な光学的ラジェーション源(電磁スペクトルの可視又は赤外領域で動作する)を有し、被験者の顔の上に異なる照射(illumination)条件の下で光学的ラジェーションをシーケンシャルに行うように構成される。
【0006】
この構成において、被験者の顔の上記照射状態が変化する度に、検出手段は被験者の顔が反射する光学的ラジェーションを検出する。
【0007】
この照射状態は、制御可能な光学的ラジェーション源の位置を変更したり、制御可能な光学的ラジェーション源を使って被験者の顔の別領域を照射したり、光学的ラジェーション源が発するラジェーションの波長、強度を変更することにより変更される。
【0008】
好ましい実施例において、異なる照射条件下で検出手段が検出する光学的ラジェーションの間の差異を見つけることにより処理手段は被験者の顔が実際のものであるか否かを決定する。
【0009】
別の実施例において、制御手段は被験者の顔を照らす光学的ラジェーション源、及び、被験者の顔が照らされている間被験者が見つめる方向を種々の方向に向ける手段(方向手段)を有する。好ましくは、方向手段は被験者の視線に設置されたディスプレイ・スクリーン上の或る図形(a shape)を移動させる手段を有し、被験者が見つめる方向が方向手段に追従している間、検出手段は被験者の顔の位置が変化する度に被験者の顔が反射する光学的照射を検出する。
【0010】
実施例において、処理手段は、被験者が見つめる方向が方向手段に追従している間検出手段が検出した反射ラジェーションと反射ラジェーションとの差分を見ることで、被験者の顔が現実のものか否かを判定する。
【0011】
本発明によれば、被験者の顔が現実の被験者の顔か否かを評価する方法を提供する。この方法は、被験者の顔に当たる光学的照射を行うステップ、被験者の顔から反射される光学的ラジェーションを検出するステップ、被験者の顔が現実の被験者の顔か否かを評価するために検出した光学的ラジェーションを解析するステップからなる。
【0012】
本発明の実施例を図を用いながら例示として説明する。
【0013】
図から明らかなように、システムは典型的にモニタ(11)、カメラ(10)、光学ラジェーション源(15)とコンピュータ(20)を有する。コンピュータ(20)は処理手段(12)と制御手段(13)を有する。被験者の顔(1)は純粋テスト用のものであるが、カメラ(10)の前に配置される。
【0014】
対象(1)は「アクティブ イリュミネーション」のプロセスを経る、即ち、被験者の顔の2つのイメージがカメラ(10)により異なるイリュミネーション条件下でシーケンシャルに撮影される。
【0015】
本発明の1つの実施例において、第1イリュミネーション条件を形成する。第1イリュミネーション条件において、システムの光学的ラディエーション源(15)は制御されたイリュミネーション条件を提供するように設計される。この場合、前記源(15)は光源(light source)であり、対象(1)の顔は光源(15)及び既に存在している周囲のイリュミネーション条件により照らされる。光源(15)の具体的なイリュミネーション条件(例えば、その強度)は制御手段(13)により制御される。第1イリュミネーション条件下で照らされた被験者の顔のイメージはカメラ(10)で撮影され、次いで処理手段(12)により解析される。
【0016】
第2イリュミネーション条件が次にセットアップされる。この実施例では、この第2イリュミネーション条件は光源(15)が形成するイリュミネーションを取り去ることにより形成され、周囲イリュミネーションだけで照らして被験者のイメージを取得する。カメラ(10)は被験者の顔のイメージを周囲イリュミネーションの下で捕え、処理手段(12)で解析を行う。
【0017】
処理手段(12)は2つの異なるイリュミネーション条件の下でカメラが得るイメージとイメージとの差分を算出する。一般的にイリュミネーション条件は制御され、照明された前掲の顔だけが残され、背景のものは照らされない。イメージ撮影の間の頭部のわずかな動きを補正するのに標準動き推定技術(standard motion estimation technique)を用いる。
【0018】
被験者の顔が現実の被験者の顔である場合、こうして得られた「差分イメージ(difference image)」には所定の特徴があり、その顔が現実の被験者の顔であることを実証する。反対に、被験者の顔が現実の被験者の顔でなく、写真又はビデオ記録が提供するものである場合、「差分イメージ」は、詐欺師の攻撃及び顔で無いもの(non-face)を許容する場合があるが、現実の被験者の顔を意味する特徴を示すことはない。
【0019】
上記の実施例において、例えば、専用光(a dedicated lamp)のような光源(15)は制御されるイリュミネーションを提供する、イリュミネーションは交互に発光装置が提供する。例えば、コンピュータのディスプレイ・スクリーン(例えばモニタ(11))のようなものである。光源(15)が提供する光学ラディエーション又は他の手段は可視領域又は赤外領域であってよい。
【0020】
上記の通り、第1実施例において、第1イリュミネーション条件下で使う光源(15)を消灯するとイリュミネーション条件が変化する。反対に、光源(15)が発する光学的ラディエーションの強度を変化させたり、被験者の顔に対する光学的ラディエーション源の位置を変化させたり、光学的ラディエーション源(15)が発する光学的ラディエーションの波長を変化させるとイリュミネーション条件が変化する。
【0021】
また、もし例えばコンピュータ・スクリーンのような発光装置(light-emitting device)が光学的ラディエーションを供給するならば、被験者の顔の種々の領域を種々の方法で照らし出す特有のパターンを供給することができる。このパターンの変更に制御手段(13)を使うことができ、第1イリュミネーション条件下で被験者の顔は第1のパターンで照らし、第2イリュミネーション条件下で被験者の顔は第2の異なるパターンで照らすことができる。
【0022】
被験者の顔を照らすためのパターンを動くパターンとすることができる。パターンが動く度に被験者の顔のイリュミネーション条件が変化し、被験者の顔の異なる領域が照らされる。パターンが動き、イリュミネーション条件を変更する度にカメラ(10)は被験者の顔のイメージを撮影する。
【0023】
前記の実施例において、被験者の顔は第1と第2の異なるイリュミネーション条件下で連続して照射される。一連の異なるイリュミネーション条件の下で顔を照らし、被験者の顔が現実の顔であるか否かを判定するのに使う複数の「差分イメージ」を取得することが可能である。
【0024】
本発明の別の実施例において、モニタ(11)のスクリーン上にガイドアイコン(14)を設ける。スクリーン上のガイドアイコン(14)の位置が変化する間、光学的ラジェーション源(15)(又はモニタ(11))が提供するイリュミネーション条件は一定レベルで維持される。対象である被験者(1)は目線(gaze)を動かすように指示され、目線をモニタ(11)の回りのガイドアイコン(14)の動きに追従させる。ガイドアイコン(14)の位置と被験者の顔の位置が変化する度に、カメラ(10)は被験者の顔のイメージを撮影する。処理手段(12)は各イメージを受信し、イメージ間の差分を解析する。前記の通り、イメージ間の差分を使って被験者の顔が現実の人の顔であるかを判定する。
【0025】
本書で説明した実施例において、処理手段は異なるイリュミネーション条件の下で被験者の顔で反射したラジェーションを解析し、「差分イメージ」を生成する。「差分イメージ」は解析され、被験者の顔が実際の人の顔であるか否かを判定する。光学的ラジェーションが被験者の顔で反射され検出されるが、「差分イメージ」が生成されないことも可能である。代わりに処理手段は反射された光学的ラジェーションを別のやり方で解析する。例えば、被験者の顔が現実の被験者の顔であるかどうかを数値的に(numerically)判定する。
【0026】
一旦システムが被験者の顔が現実の被験者の顔であるかを判定した場合、被験者はPCT公報WO 01/91041に説明された顔認証システムにより認証されるアイデンティティを有することができる。
【0027】
一般に顔認証システムは複数の処理ステージを有する。最初に、例えばカメラがクライアントのイメージを「捕捉(grub)」する。次にイメージ内の顔の位置が識別され、位置決めされる。一旦顔の位置決めが行われるとイメージはイリュミネーション及び幾何学的な変形のために正規化される。顔のアイデンティティが認証される前に、これにより顔の適正な表示が算出される。
【0028】
被験者の顔の具体的なイメージが得られるときに、これら異なるステージは全てイリュミネーション条件に対し極めてセンシティブである。いくつかのケースでは、わずかな制御できないイリュミネーション条件の変化のために、被験者が誤って拒絶されたり、不正使用者が認容されたりすることもある。
【0029】
イリュミネーション条件を常時知れば、システムの全部のパフォーマンスを改善することができ、イメージを取得する間、顔のイリュミネーションを注意深く制御することができる。人(figure)に関する上記のシステムは顔認証システムで使用するためのイリュミネーションの制御条件を提供するために使うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の構成を示すブロック図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の顔が現実の人の顔か否かを評価するシステムであって、該システムは、
被験者の顔に当たる光学的ラジェーションを制御する制御手段と、
被験者の顔で反射する光学的ラジェーションを検出するための検出手段と、
検出手段が検出した反射された光学的ラジェーションを解析し、被験者の顔が現実の人の顔か否かを評価するために、制御手段に応答する処理手段とを有するシステム。
【請求項2】
前記制御手段は制御可能な光学的ラジェーション源を有する請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記制御可能な光学的ラジェーション源は被験者の顔に対し異なるイリュミネーション条件下で、順次に光学的ラジェーションを行うように構成した請求項2記載のシステム。
【請求項4】
制御可能な光学的ラジェーション源が被験者の顔に対し特定のイリュミネーション条件の下で光学的ラジェーションを向け、
検出手段は特定のイリュミネーション条件の下で被験者の顔で反射された光学的ラジェーションを検出し、次に、
制御可能な光学的ラジェーション源が被験者の顔に対し異なるイリュミネーション条件の下で光学的ラジェーションを向け、
検出手段は異なるイリュミネーション条件の下で被験者の顔で反射される光学的ラジェーションを検出することを特徴とする請求項3記載のシステム。
【請求項5】
被験者の顔に対する前記制御可能な光学的ラジェーション源は異なるイリュミネーション条件を提供するように変更されることを特徴とする請求項3又は請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記制御可能な光学的ラジェーション源が種々のイリュミネーション条件を提供し、被験者の顔の種々の領域に光を向けるように構成されることを特徴とする請求項3又は請求項4記載のシステム。
【請求項7】
前記制御可能な光学的ラジェーション源が発する光学的ラジェーションの強度が種々のイリュミネーション条件を提供するように変更されることを特徴とする請求項3又は請求項4記載のシステム。
【請求項8】
前記制御可能な光学的ラジェーション源が発する光学的ラジェーションの波長が種々のイリュミネーション条件を提供するように変更されることを特徴とする請求項3又は請求項4記載のシステム。
【請求項9】
種々のイリュミネーション条件下で検出手段を使って検出する反射された光学的ラジェーション間の差分を解析することにより前記処理手段が被験者の顔が現実のものであるかを判定することを特徴とする請求項3ないし8の何れか一項記載のシステム。
【請求項10】
前記制御手段が被験者の顔を照らすための、制御可能な光学的ラジェーション源と、被験者の顔が照明されている間種々の方向に被験者の視線を向ける手段を有することを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記視線を向ける手段は被験者の視線が位置づけられるディスプレイ・スクリーン上で所定の図形を移動させる手段を有することを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項12】
被験者の視線が前記視線を向ける手段を追従する間、被験者の顔の位置が変化する度に検出手段が被験者の顔で反射される光学的ラジェーションを検出することを特徴とする請求項10又は請求項11記載のシステム。
【請求項13】
被験者の視線が前記視線を向ける手段を追従する間、被験者の顔の異なる位置に対し、前記処理手段は、検出手段を使って検出する反射された光学的ラジェーション間の差分を解析することにより被験者の顔が現実のものか否かを判別することを特徴とする請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記制御可能な光学的ラジェーション源が可視領域で動作することを特徴とする請求項1ないし13のいずれか一項記載のシステム。
【請求項15】
前記制御可能な光学的ラジェーション源が赤外領域で動作することを特徴とする請求項1ないし13のいずれか一項記載のシステム。
【請求項16】
前記制御可能な光学的ラジェーション源が専用光源であることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか一項記載のシステム。
【請求項17】
前記制御可能な光学的ラジェーション源が発光ディスプレイ装置であることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか一項記載のシステム。
【請求項18】
前記発光ディスプレイ装置がコンピュータ・モニタであることを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項19】
前記検出手段はカメラである請求項1ないし18のいずれか一項記載のシステム。
【請求項20】
請求項1ないし請求項19により被験者の顔が現実の人の顔であるか否かを評価するためのシステムを有する顔認証システム。
【請求項21】
被験者の顔が現実の人の顔か否かを評価する方法であって、該方法は、
被験者の顔に当たる光学的ラジェーションを生成するステップと、
被験者の顔で反射する光学的ラジェーションを検出するステップと、
検出した光学的ラジェーションを解析し、被験者の顔が現実の人の顔か否かを評価するステップを有する方法。
【請求項22】
前記光学的ラジェーションは、制御可能な光学的ラジェーション源を含め制御手段により提供される請求項20の記載の方法。
【請求項23】
前記制御可能な光学的ラジェーション源は被験者の顔に対し異なるイリュミネーション条件下で、順次に前記光学的ラジェーションを行うように構成した請求項22記載の方法。
【請求項24】
制御可能な光学的ラジェーション源から被験者の顔に対し特定のイリュミネーション条件の下で前記光学的ラジェーションを向けるステップと、
特定のイリュミネーション条件の下で被験者の顔で反射される光学的ラジェーションを検出するステップと、
制御可能な光学的ラジェーション源から被験者の顔に対し異なるイリュミネーション条件の下で光学的ラジェーションを向けるステップと、
異なるイリュミネーション条件の下で被験者の顔で反射される光学的ラジェーションを検出するステップとを有することを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
被験者の顔に対する前記制御可能な光学的ラジェーション源の位置は異なるイリュミネーション条件を提供するように変更されることを特徴とする請求項23又は請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記制御可能な光学的ラジェーション源が種々のイリュミネーション条件を提供し、被験者の顔の種々の領域に光学的ラジェーションを向けるように構成されることを特徴とする請求項23又は請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記制御可能な光学的ラジェーション源が発する光学的ラジェーションの強度が種々のイリュミネーション条件を提供するように変更されることを特徴とする請求項23又は請求項24記載の方法。
【請求項28】
前記制御可能な光学的ラジェーション源が発する光学的ラジェーションの波長が種々のイリュミネーション条件を提供するように変更されることを特徴とする請求項23又は請求項24記載の方法。
【請求項29】
種々のイリュミネーション条件下で検出された反射された光学的ラジェーション間の差分を解析することにより被験者の顔が現実のものであるかを判定することを特徴とする請求項23ないし28の何れか一項記載の方法。
【請求項30】
被験者の顔が照明されている間種々の方向に被験者の視線を向けるステップを有することを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項31】
被験者の視線を所定方向に向けるステップは被験者の視線方向におけるディスプレイスクリーン上の所定の図形を移動させることにより実行されることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
被験者の視線が種々の方向に向く間、被験者の顔の位置が変化する度に、被験者の顔で反射される光学的ラジェーションが検出されることを特徴とする請求項30又は請求項31記載のシステム。
【請求項33】
被験者の視線が種々の方向に向く間、被験者の顔の異なる位置に対し検出される反射された光学的ラジェーション間の差分を解析することにより被験者の顔が現実のものか否かを判別するステップを有する請求項32記載の方法。
【請求項34】
対象である人の顔に供給される光学的ラジェーションが可視領域であることを特徴とする請求項21ないし33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
対象である人の顔に供給される光学的ラジェーションが赤外領域であることを特徴とする請求項21ないし33のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
実質的に図面に関連して記載されたシステム。
【請求項37】
実質的に図面に関連して記載された方法。

【公表番号】特表2007−527270(P2007−527270A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520004(P2006−520004)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003072
【国際公開番号】WO2005/008566
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(503218724)オムニパーセプション リミティド (2)
【Fターム(参考)】