説明

生体信号検出装置

【課題】ステアリングホイールに設けられた電極部と脈波センサとを利用して生体信号を検出する装置において、各部の設置方法を改善して生体信号の検出精度を向上する。
【解決手段】ステアリングホイール2の右側のスポーク部6に、脈波センサ30を設け、リング部4において左右のスポーク部6が連結される部分に、電極部10、20を設ける。電極部10、20、脈波センサ30は、何れもステアリングホイール2に形成された凹部に挿入することで、ステアリングホイール2の運転席側表面に配置される。この結果、左電極部10、及び、右電極部20と脈波センサ30には、それぞれ、運転者の左右の掌のうち、皮膚が薄く生体信号を検出し易い、親指の付け根部分が接触する。よって、生体信号の検出精度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリングホイールに設けられた電極等を利用して車両運転者の生体情報を取得するのに使用される生体信号検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールのリング部やスポーク部に左右一対の電極部を設け、車両運転者がこれら各電極部を左右の手で把持した際に各電極間に生じる電位差を検出することで、運転者の心電信号を計測する心電信号計測装置が知られている(例えば、特許文献1,2等、参照)。
【0003】
また、自動車においては、心電信号計測装置とは別に、運転者の脈波を計測する脈波センサを設け、これら各部で計測される心電波形のピークと脈波のピークとの時間的ずれに基づき血圧を推定することも提案されている(例えば、特許文献3,4等、参照)。
【特許文献1】特開2000−14653号公報
【特許文献2】特開2002−85360号公報
【特許文献3】特開2005−185608号公報
【特許文献4】特開2006−34803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように自動車に脈波センサを搭載する場合、ステアリングホイールとは別体で構成し、使用時に、運転者自らが手首に固定するようにしてもよいが、このようにすると、使い勝手が悪いことから、特許文献4に記載のように、脈波センサについても、心電信号計測用の電極部と同様に、車両走行時に運転者が把持するステアリングホイールに装着することが望ましい。
【0005】
そして、このように、ステアリングホイールに左右一対の電極部と脈波センサとを設ける場合、脈波センサは、運転者がステアリングホイールを把持した際に、一方の電極部と同時に把持できるように、ステアリングホイールの右側或いは左側に配置すればよい。
【0006】
しかしながら、運転者の掌には、皮膚の厚み等によって、脈波や心電波形を正確に計測することができない部位があることから、ステアリングホイール上で電極部と脈波センサとを単に近接配置しただけでは、その一方が、皮膚が厚い角質部分に当たって、一方の生体信号を安定して取得することができなくなる、といった問題がある。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、ステアリングホイールに設けられた電極部と脈波センサとを使用して運転者から各種生体信号を取得する生体信号検出装置において、電極部及び脈波センサの設置方法を改善することで生体信号の検出精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の生体信号検出装置においては、左右一対の電極部と脈波センサとが、それぞれ、ステアリングホイールにおいて運転者により把持される把持部のうち、運転席側表面に配置されており、しかも、電極部の一方と脈波センサとは、運転者が片手で同時に把持可能な領域内に近接配置されている。
【0009】
つまり、ステアリングホイールにおいて、運転者により把持される把持部は、リング部及びスポーク部であるが、このうち、特に、運転席側表面には、運転者がこれら各部を把持した際に、運転者の親指の付け根部分が接触されることになる。そして、この親指の付け根部分は、掌において、皮膚が最も薄くなっていて、生体信号を最も良好に検出できる部位である。
【0010】
そこで、本発明では、ステアリングホイールの運転席側表面に電極部及び脈波センサを配置し、しかも、電極部の一方と脈波センサとは、運転者が片手で同時に把持可能な領域内に近接配置することで、左右一対の電極部を用いた心電波形等の計測と、脈波センサを用いた脈波計測とを、同時に、高精度に実行できるようにしているのである。
【0011】
よって、本発明によれば、ステアリングホイールに設けた左右一対の電極部と脈波センサとを利用して心電波形、脈波、血圧、…、といった各種生体情報を同時に高精度に計測することができるようになる。
【0012】
なお、ステアリングホイールの運転席側表面で、運転者が片手で同時に把持可能な領域としては、その領域内の最大長さを5cm以内に設定すればよい。
ところで、ステアリングホイールの把持部(リング部やスポーク部)で運転席側表面は、複雑な曲面形状となっているため、例えば、脈波センサをスポーク部に設けて、その近傍のリング部に電極部を設けるような場合、電極部の電極形状も複雑な曲面形状にする必要がある。このため、電極部を電極板として形成して、ステアリングホイールに貼り付けるようにすると、その製造及び組み付けが極めて面倒になる。
【0013】
そこで、各電極部の電極は、請求項2に記載のように、ステアリングホイールに形成された凹部に埋め込み可能な基台に形成し、この基台を介して、ステアリングホイールに固定するようにするとよい。
【0014】
つまり、このようにすれば、各電極部の電極を、ステアリングホイールとは別体の基台に形成すればよいため、電極を基台へのメッキ等で簡単に形成することができ、しかも、ステアリングホイールへの装着は、基台を介して行えばよいことから、その装着作業も極めて簡単に行うことができる。
【0015】
なお、左右一対の電極部は、それぞれ、一つの電極だけで構成されていても、複数の電極にて構成されていてもよいが、電極部を複数の電極にて構成する場合には、請求項3に記載のように、複数の電極を一つの基台に形成するようにしてもよい。
【0016】
つまり、心電波形を計測する場合、各電極部から得られる信号に対する基準電位を設定するために、電極部を検出用の電極と基準電位設定用の電極との2つの電極にて構成することが知られているが、このように電極部を2つの電極にて構成した場合には、各電極を各電極専用の基台に形成するのではなく、各電極を共通の基台に形成するのである。
【0017】
そして、このようにすれば、電極部のステアリングホイールへの組み付けをより簡単に行うことができ、しかも、電極部を構成する各電極を、限られた領域内に簡単に配置することができるようになる。
【0018】
また、脈波センサが、発光素子と受光素子とからなる光学式の脈波センサである場合には、請求項4に記載のように、脈波センサを構成する発光素子と受光素子を、脈波センサに近接配置される電極部の電極の基台に一体的に組み付けるようにしてもよい。
【0019】
そして、このようにすれば、脈波センサと電極部とをより簡単に近接配置することができると共に、これら各部のステアリングホイールへの組み付けもより簡単に行うことができるようになる。
【0020】
また、脈波センサと電極部とを、ステアリングホイールの運転席側表面で曲面の小さい領域(例えばスポーク部)に配置できるようにするには、請求項5に記載のように、脈波センサを構成している発光素子と受光素子の周りを囲むように、電極部を構成している1又は複数の電極を配置するとよい。
【0021】
つまり、このようにすれば、電極部と脈波センサとを別々に配置するよりも、これら各部を狭い領域内に配置することができるようになり、電極部と脈波センサとを、スポーク部等、ステアリングホイールにおいて曲面の少ない領域に設けることができるようになる。このため、請求項5に記載の装置によれば、電極部や脈波センサをステアリングホイールの形状に容易に対応させることができるようになり、その製造をより簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、車両運転者から心電信号及び脈波信号を取得することにより、運転者の心電波形、脈拍、血圧等の生体情報を計測する生体信号検出装置の構成を表すブロック図であり、図2は、当該検出装置各部の車両への配置状態を表す説明図である。また、図2において、(a)はステアリングホイールを運転席側からみた正面図であり、(b)は(a)に示すA−A線断面図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の生体信号検出装置には、車両運転者から心電信号を取得するための左右一対の電極部(左電極部10及び右電極部20)と、車両運転者から脈波信号を取得するための脈波センサ30とが設けられている。
【0024】
左右の各電極部10、20は、それぞれ、心電計測用電極12、22と、GND電極14、24とから構成されている。そして、心電計測用電極12、22は、それぞれ、差動増幅回路42の非反転入力端子(+)及び非反転入力端子(−)に接続されている。
【0025】
このため、差動増幅回路42からは、心電計測用電極12、22に生じた信号の電位差に対応した信号が出力され、この出力信号は、心電センサ信号用増幅回路43にて増幅された後、心電波形に対応した周波数成分のみを通過させる心電計測用フィルタ44を介して、演算・制御部46に入力される。
【0026】
なお、GND電極14、24は、心電計測用電極12、22の近傍に配置されて、各電極12、22から得られる信号の基準電位(本実施形態ではグランド電位GND)を設定するためのものであり、差動増幅回路42、心電センサ信号用増幅回路43及び心電計測用フィルタ44のグランドラインに接続されている。
【0027】
また、脈波センサ30は、血管の容積変化を光学的に検出する周知の光学式脈波センサであり、発光ダイオード(LED:発光素子)32とフォトダイオード(PD:受光素子)34とを備える(図2参照)。
【0028】
そして、LED32は、演算・制御部46により駆動される。また、LED32の駆動に伴いPD34から出力される受光信号は、脈波センサ信号増幅回路52にて所定レベルまで増幅され、更に、脈波に対応した周波数成分のみを通過させる脈波計測用フィルタ54を介して、演算・制御部46に入力される。
【0029】
次に、演算・制御部46は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを中心に構成されており、心電計測用フィルタ44を通過してきた心電信号や、脈波計測用フィルタ54を通過してきた脈波信号をサンプリングして、RAM若しくは外部メモリに格納したり、これら各信号を解析して、血圧、心拍数等を算出する、各種処理を実行する。
【0030】
また、演算・制御部46には、運転者が所持する携帯機器や車載機器に無線又は有線で計測結果を送信するための通信部48が接続されており、演算・制御部46は、通信部48を介して、これら外部機器からの要求に従い計測結果を送信する。
【0031】
図2(a)に示すように、運転者から生体信号を取り込むための左電極部10、右電極部20、及び、脈波センサ30は、ステアリングホイール2のリング部(換言すればホイールリング)4及びスポーク部(換言すればホイールスポーク)6に設けられており、差動増幅回路42、心電センサ信号用増幅回路43、心電計測用フィルタ44、演算・制御部46、通信部48、脈波センサ信号増幅回路52、脈波計測用フィルタ54等の計測用回路は、計測用基板40に形成されている。そして、この計測用基板40は、エアバッグ等が設けられるステアリングホイール2の中央部8に内蔵されている。
【0032】
以下、本発明の主要部である左電極部10、右電極部20、及び脈波センサ30のステアリングホイール2への装着状態について詳しく説明する。
図2(a)に示すように、左電極部10及び右電極部20は、リング部4のうち、ステアリングホイール2が操舵角「0」の基準位置にあるときに運転席から見て左右に位置し、しかも、運転者が左右の手でステアリングホイール2を把持するのに好適な、左右のスポーク部6の近傍に配置されており、脈波センサ30は、その左右のスポーク部6のうち、運転席から見て右側のスポーク部6に設けられている。
【0033】
また、これら各部10、20、30は、運転者がステアリングホイール2を把持した際に、運転者の掌のうち、皮膚が薄く各生体信号を検出し易い親指の付け根部分が当接されるよう、ステアリングホイール2の運転席側表面に配置されている。
【0034】
そして、脈波センサ30と、右電極部20の心電計測用電極22及びGND電極24は、ステアリングホイール2が基準位置にあるときに左右に一列に並ぶように配置されており、しかもこれら各部は、運転者がステアリングホイール2を右手で把持した際に、運転者の掌(特に親指の付け根部分)に同時に接触して、心電信号と脈波信号とを同時に取得できるように、脈波センサ30の左端からGND電極24の右端までの距離が5cm以内となるよう設定されている。
【0035】
また、図2(b)に示すように、脈波センサ30は、LED32とPD34を一つの筐体内に一体的に収納したものであり、ステアリングホイール2のスポーク部6に形成された脈波センサ30装着用の凹部6aに挿入することにより固定されている。
【0036】
また、脈波センサ30には、LED32及びPD34を外部回路に接続するためのコネクタ36が設けられており、凹部6aには、このコネクタ36が嵌合されることにより、ステアリングホイール2内に配線された信号線を介して脈波センサ30と計測用基板40とを接続するコネクタ38が設けられている。
【0037】
また、右電極部20の心電計測用電極22とGND電極24は、それぞれ、合成樹脂製の基台22a、24aに、無電解メッキ等で導電層を形成することで作成されている。各基台22a、24aは、ステアリングホイール2のリング部4に形成された凹部4a、4bに挿入可能で、凹部4a、4bに挿入した際に外側に露出する部分が、リング部4の形状に対応した曲面形状となるように形成されている。そして、各基台22a、24aは、リング部4の裏面側から挿入された固定ねじ9を介して、リング部4の凹部4a、4b内に固定されている。
【0038】
また、基台22a、24の底面には、外側表面に形成された導電層(つまり心電計測用電極22、GND電極24)に電気的に接続された端子22b、24bが形成されており、各凹部4a、4bには、心電計測用電極22、GND電極24と計測用基板40とを接続するためにステアリングホイール内に配線された信号線に接続された電極が設けられている。このため、右電極部20の心電計測用電極22とGND電極24をステアリングホイール2に装着する際、固定ねじ9をしっかりと締め付けることで、各電極22、24が計測用基板40に確実に接続されることになる。
【0039】
なお、左電極部10の心電計測用電極12及びGND電極14は、右電極部20の心電計測用電極22及びGND電極24に対して、左右対称となるよう、ステアリングホイール2の左側のリング部4に設けられているが、その構成やステアリングホイール2への取り付け構造は右電極部20と全く同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0040】
上記のように、本実施形態の生体信号検出装置においては、左右の電極部10、20及び脈波センサ30が、ステアリングホイール2の運転席側表面に配置され、しかも、脈波センサ30と右電極部20とは、ステアリングホイール2の右側のスポーク部6及びそのスポーク部6の外側のリング部4に近接配置されている。
【0041】
このため、本実施形態によれば、左右の電極部10、20及び脈波センサ30には、運転者の左右の掌で心電信号及び脈波信号を検出し易い部位(親指の付け根部分)が接触し易くなる。よって、本実施形態によれば、これら各部を介して、心電波形、脈波、血圧、心拍、…といった各種生体情報を精度よく計測することができるようになる。
【0042】
また、右電極部20を構成する電極22、24は、ステアリングホイール2のリング部4に形成された凹部4a、4bに挿入固定可能な基台22a、24bにメッキにて形成されているため、リング部4の曲面形状に合わせて、各電極22a、24bを容易に形成することができる。
【0043】
また、ステアリングホイール2への装着は、基台22a、24aを凹部4a、4bに挿入して、リング部4の裏面側から固定ねじ9を締め付けるだけでよいため、その装着作業も極めて簡単に行うことができる。なお、左電極部10を構成する電極12、14も、右電極部20と同様に構成されているので、上記と同様の効果を得ることができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて、種々の態様をとることができる。
例えば、上記実施形態では、左右の電極部10、20において、心電計測用電極12、22と、GND電極14、24とは、各々別体で構成されるものとして説明したが、心電計測用電極12、22と、GND電極14、24とは、共通の基台に一体的に形成して、ステアリングホイール2へはその基台を介して装着するようにしてもよい。
【0045】
つまり、図3(a)は、右電極部20の心電計測用電極22とGND電極24とを、リング部4に形成された凹部4cに挿入可能な一つの基台23に形成して、この基台23を、凹部4c内に固定ねじ9で固定するようにした状態を表している。
【0046】
そして、左右の電極部10、20をこのように構成すれば、各電極部10、20のステアリングホイール2への組み付けをより簡単に行うことができ、しかも、各電極部10、20において、電極12、14或いは電極22、24を、より簡単に近接配置することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、脈波センサ30は、LED32とPD34を筐体内に収納することにより、単体で構成されるものとして説明したが、図3(b)に示すように、脈波センサ30に近接配置される右電極部20において、心電計測用電極12、22が一体的に形成される基台を、脈波センサ30の設置領域まで広げ、この基台25に、脈波センサ30を構成するLED32とPD34とを組み込むようにすれば、右電極部20と脈波センサ30とを、ステアリングホイール2に同時に装着することができるようになる。
【0048】
但し、この場合、基台25が右電極部20の設置領域から脈波センサ30の設置領域まで広がる(大きくなる)ので、それに対応して、基台25を挿入するための凹部2aを、ステアリングホイールのリング部4からスポーク部6にかけて形成する必要はある。
【0049】
また、この場合、電極22、24、LED32、PD34を計測用基板40に接続するためには、図3(b)に示すように、基台25の底面に、凹部2aに設けられたコネクタ38と嵌合可能なコネクタ36を設けるようにしてもよく、或いは、基台25の底面に、上記各部に接続された電極を形成するようにしてもよいが、何れの場合にも、基台25が大きいことから、ステアリングホイール2には固定ねじ9を介してしっかりと固定できるようにすることが望ましい。
【0050】
また、上記実施形態では、ステアリングホイール2において運転者が把持可能な把持部のうち、運転席側からみて右側のスポーク部6からリング部4には、脈波センサ30、心電計測用電極22、及び、GND電極24が、一列に並んで配置され、左側のスポーク部6に連結されるリング部4には、心電計測用電極12とGND電極14が左右に並んで配置されるものとして説明したが、これらの配列は、ステアリングホイール2の意匠等を考慮して適宜設定すればよい。
【0051】
そして、特に、脈波センサ30の近傍に配置される右電極部20においては、図4に示すように、心電計測用電極22とGND電極24とを、脈波センサ30(詳しくはLED32とPD34)の周囲を囲むように配置するようにすれば、これら各センシング部材をコンパクトにまとめ、ステアリングホイール2への装着性を向上することができる。
【0052】
なお、図4において、(a)はステアリングホイールを運転席側からみた正面図であり、(b)は右電極部20及び脈波センサ30を一体化した部材を運転席側からみた拡大図であり、(c)は(b)に示すB−B線断面図である。
【0053】
つまり、図4(b)、(c)に示すように、合成樹脂製で略円筒形の基台29の上面周縁に、全周を2分割するように心電計測用電極22とGND電極24を無電解メッキ等で形成し、その基台29の上面中央部に脈波センサ30を構成するLED32及びPD34を固定し、基台29の底面には、これら各部に信号線を介して接続されたコネクタ36を固定することにより、脈波センサ30と右電極部20とを一体化した部材を構成するのである。
【0054】
そして、このようにすれば、図4(a)、(c)に例示するように、この部材を、ステアリングホイール2のスポーク部6に形成した凹部6bに挿入することで、脈波センサ30と右電極部20とを、リング部4近傍のスポーク部6に一定的に組み付けることができるようになり、心電計測用の電極部20と脈波センサ30とを一体化した部材の小型化を図り、ステアリングホイール2への装着性を向上することができるようになる。なお、この部材は、基台上面の形状をリング部4の表面形状に対応させれば、リング部4に組み込むこともできる。
【0055】
また次に、上記実施形態では、脈波センサ30は、ステアリングホイール2の右側の把持部で右電極部20の近傍に配置されるものとして説明したが、脈波センサ30は、ステアリングホイール2の左側の把持部で左電極部10の近傍に配置するようにしてもよい。
【0056】
また上記実施形態では、左右の電極部10、20は、心電計測用電極12、22とGND電極14、24との一対の電極にて構成されるものとして説明したが、GND電極14、24は必ずしも必要ではなく、例えば、一方の電極部10(又は20)にだけGND電極14(又は24)を設けるようにしてもよい。
【0057】
また更に、上記実施形態では、左右の電極部10、20は、差動増幅回路42、心電センサ信号用増幅回路43及び心電計測用フィルタ44を介して心電波形を計測するのに利用されるものとして説明したが、計測用基板40にインピーダンス計測回路を設け、切換スイッチ等で、左右の電極部10、20の心電計測用電極12、22の接続先を、差動増幅回路42からインピーダンス計測回路に切り換えることで、運転者の生体インピーダンスを計測するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施形態の生体信号検出装置の全体の構成を表すブロック図である。
【図2】生体信号検出装置各部の車両への配置状態を表す説明図である。
【図3】右電極部及び脈波センサのステアリングホイールへの組み付け方法の他の例を表す説明図である。
【図4】右電極部の電極を脈波センサの周囲に配置した例を表す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
2…ステアリングホイール、4…リング部、6…スポーク部、8…中央部、9…固定ねじ、10…左電極部、12…心電計測用電極、14…GND電極、20…右電極部、22…心電計測用電極、24…GND電極、2a,4a,4b,4c,6a,6b…凹部、22a,24a,23,25,29…基台、22b,24b…端子、30…脈波センサ、32…LED、34…PD、36,38…コネクタ、40…計測用基板、42…差動増幅回路、43…心電センサ信号用増幅回路、44…心電計測用フィルタ、46…演算・制御部、48…通信部、52…脈波センサ信号増幅回路、54…脈波計測用フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の左右の手に接触して生体情報を取得するためにステアリングホイールの左右の把持部にそれぞれ設けられた電極部と、
運転者の脈波を計測する脈波センサと、
を備えた生体信号検出装置であって、
前記左右の電極部と前記脈波センサとを、前記ステアリングホイールの運転席側表面に配置すると共に、前記左右の電極部の一方と前記脈波センサとを、運転者が片手で同時に把持可能な領域内に近接配置してなることを特徴とする生体信号検出装置。
【請求項2】
前記各電極部は、1又は複数の電極からなり、該電極は、前記ステアリングホイールに形成された凹部に埋め込み可能な基台に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の生体信号検出装置。
【請求項3】
前記各電極部は、複数の電極からなり、該複数の電極は、前記ステアリングホイールに形成された凹部に埋め込み可能な一つの基台に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の生体信号検出装置。
【請求項4】
前記脈波センサは、発光素子と受光素子とからなる光学式の脈波センサであり、
該脈波センサを構成する発光素子及び受光素子は、当該脈波センサに近接配置される電極部の電極の基台に組み付けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の生体信号検出装置。
【請求項5】
前記脈波センサは、発光素子と受光素子とを備えた光学式の脈波センサであり、
該脈波センサに近接配置される電極部は、発光素子及び受光素子の周りを囲むように配置された1又は複数の電極からなることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の生体信号検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−237378(P2008−237378A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79877(P2007−79877)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】