説明

生体信号測定装置

【課題】従来の脈拍数測定装置は、運動中の測定においては外乱ノイズや体動ノイズが大きい場合周期のバラツキが大きくなり、そのまま平均して脈拍数を演算すると測定誤差が大きくなるという課題があった。
【解決手段】振動波検出手段2と振動波周期測定部3と周期データをまとめてグループ信号Gaとして記憶するグループ記憶手段4と振動数算出手段5を備える生体信号測定装置1において、前記振動数算出手段5はグループ信号Gaを予め定められた値と比較し区分判別する区分判別部51と、複数の区分に記憶する区分記憶部52と、重み係数Kを記憶する重み係数記憶部53と、振動波周期加重平均値算出部54とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓の拍動や呼吸に基づく振動波あるいは歩行によって生じる身体の振動波など、生体が発生する周期性のある振動波の単位時間当りの繰り返し数を測定する生体信号測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体は、その生理的機能や生態的活動において様々な周期性のある振動波を発生しており、その単位時間当りの繰り返し数、すなわち振動数を測定あるいは監視することがしばしば必要となる。
【0003】
例えばスポーツ医学は、エルゴメータやトレッドミル等の運動支援装置でトレーニングを行う際に、心不全等の事故を防ぎさらにトレーニング効果を高めるため、生体が発生する最も基本的な振動波である脈拍を連続して監視することを推奨している。また、多くの人は健康管理のためウオーキングを行っており、歩行による振動波を検出して歩数を報知する歩数計が広く使用されている。
【0004】
生体において周期性のある振動波は様々であるが、とりわけ心臓の拍動を示す脈拍は、周期性のある振動波の中でも最も重要かつ身近であり、その測定手法については数々の技術が提案されているので、脈拍の測定を中心に従来技術およびその問題点を説明する。
【0005】
病院等で看護師がストップウォッチを用いながら行う触診測定は、脈拍の測定法として古くから用いられている手法である。つまり、手首の手の平側の親指に近い側の血管を指先で押圧することによって脈波を感じ取り、所定の時間、脈波の発生を感じ取るものである。
しかしながら、この手法では、測定にある程度の熟練度合いが必要になることや、自己では行いにくいなどの理由から、電気的に脈波を測定できる機器等の提案がなされている。
【0006】
そのような機器は多くの提案を見るものであるが、指先の血流変化を検出するセンサによって脈波信号を検出し、一分間の脈波信号数を計数して脈拍数とする、いわゆる直接カウント方式による測定が広く知られている。
【0007】
しかし、直接カウント方式は、測定に一分間も時間が必要であることや、連続的な脈波の測定には適さないことなどから、センサによって検出した脈波信号の時間間隔、すなわち脈波周期を算出し、この脈波周期を所定の回数にわたって累積した脈波周期累積値を所定の回数で除算して脈波周期の算術平均値を算出し、一分間の脈拍波に換算する周期換算方式が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
周期換算方式は、数個の脈波信号によって脈拍波の測定が可能で、連続的な測定にも適しているが、例えば、スポーツなどの運動中に脈波を測定したいときなどでは、振動によるノイズで短周期の誤信号が混入しやすく、また体動等によって本来の脈波信号が欠落して長周期の誤信号が発生するなど、測定値がばらつくという課題があった。
【0009】
この欠点を克服するため、脈拍センサと体動センサとを併用し、脈波信号に含まれる体動成分を除去して脈波を得る体動除去方式が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
さらに体動ノイズによる測定精度の低下を防ぐ他の方法としては、心電波を検出する技術が提案されている。心電波検出方式は、体動が複雑な場合でも心電波は安定しているので運動中の測定が可能ある。しかしながら、装置全体の構成が複雑になる傾向があり、一般的な技術として広く浸透しているとはまだいえない。
【0011】
上述した特許文献2に示した従来技術では、主にハードウェアすなわち構成要素の改良技術が開示されているが、一方、ソフトウェアすなわち信号処理技術を用いて、正確な脈波を検出しようとする技術も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0012】
特許文献3に示した従来技術は、測定された複数の脈波周期から振動波を算出する過程において、「生理学的数値範囲に収まらない数値」を排除する処理を行うことによって、脈波の測定の精度を向上する信号処理技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭58−30694号公報(特許請求の範囲、第1図)
【特許文献2】特開2004−298609号公報(特許請求の範囲、第3図)
【特許文献3】特開2006−297004号公報(特許請求の範囲、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
体動除去方式などハードウェアによる改良技術では、脈波を測定するためのセンサの他に、体動を検出するための加速度センサや周辺回路等が別途必要となる。このため装置が複雑化し、コストアップになりがちである。
【0015】
一方、特許文献3に示した従来技術のように、信号処理技術で「生理学的数値範囲に収まらない数値」(以下、「生理上発生し得ない値」と称することにする)を排除することにより測定の精度を向上せんとする場合は、使用者が単純な動きをしたときよる体動成分や、脈波とはかけ離れた周期成分を有するノイズには効果的であるが、スポーツをしたときなどによる複雑な体動成分や、広い周期成分を有するノイズ等に対しては、脈波信号に近い成分を十分に除去することができないため、測定の精度が低下してしまう。
【0016】
[公知技術による信号処理の問題点の説明:図6、図7]
ここで、生体の振動波である脈波とそれを用いて脈波信号を処理する公知の技術を、図6と図7とを用いて説明する。
【0017】
図6は、生体の一般的な脈波信号の例を示したものであり、図7は図6に示す脈波信号を公知の技術で処理した場合の波形図である。
図6(a)の周期的に発生している波形p11は、手首の橈骨近辺に配した圧力センサによる脈波信号を示し、不規則に発生している棘状の波形p11nは、周囲から混入する電磁的あるいは機械的なノイズを示している。
【0018】
図6(b)の波形p12は、呼吸動作によって生じるゆっくりした揺らぎノイズと、運動による大きい振幅の体動ノイズとの2つの成分が混在したノイズを示す。
図6(c)の波形p1は、上記の脈波による波形p11にノイズp11nとノイズp12が加わった状態の圧力センサの出力波形であり、ノイズや揺らぎ成分の混入によって振幅が著しくばらついている様子を示している。
【0019】
図7(a)に示す信号P1は、図6(c)に示す波形p1から低周波の揺らぎ成分を電子回路的手法で除去したもので、ほぼ平坦な基線の上に振幅がばらついた脈波と、棘状の
ノイズ信号が混在する波形になっている。
【0020】
図7(a)及び(b)に示した「所定区間」は、複数の脈波信号から一定期間の脈拍数を算出するための範囲である。例えば、10秒〜20秒というような一定の時間の区間である。連続して測定される波形P1のうち、どこから「所定区間」を開始してもよく、図7(a)に示す例では、波形p3sから「所定区間」が開始されている様子を示している。
また、図7(a)に示した点線の信号P0は、波形P1を有意的信号として識別するための基準値である。
【0021】
図7(b)に示す振幅が揃ったパルス状の波形ps1〜psnは、基準値P0と比較し有意的信号として識別された脈波信号であり、“Da1〜Da16”は脈波信号ps1〜psnの間隔、すなわち、周期データDaであり、脈波信号間の周期信号の数値データである。図7(b)に示す例では、周期データは、16個のデータで示している。
【0022】
図7(c)は、周期データDa1〜Da16が処理され、その結果“算定期間”で示される範囲が脈拍数を算出するための新たな範囲になったことを示すものである。
【0023】
公知の技術では、図7(b)に示す脈波信号の脈波周期を周期データDa1〜Da16と算出した後に、「所定区間」のデータグループであるDa3〜Da16の14個のデータを順次検討し、短周期や長周期のような「人体生理上発生し得ない周期データ」を排除してしまう方式である。その結果、図7(c)の「算定期間」に示すような、間引きされた新たな測定対象のデータグループが形成されるのである。
【0024】
例えば、周期データDa3,Da4,Da10,Da13,Da15が短周期であり、周期データDa12,Da14,Da16が長周期であり、「人体生理上発生し得ない周期データ」と認識すると、測定対象のデータグループであった14個の周期データDa3〜Da16からこれら8個の周期データが削除され、測定対象のデータグループは、周期データDa5,Da6,Da7,Da8,Da9,Da11の6個に減少するのである。
【0025】
ところで、このようなデータ数が減少してしまったときに、そのデータ数が結果測定系に大きな変化を生じさせることがある。
【0026】
すなわち、デジタル信号処理理論においては、平均化点数、すなわち、平均値を算出するデータ数をM、データを取り込む間隔、すなわち、標本間隔を△t、測定系の周波数応答を左右する遮断周波数をfc、Cを定数とすると、次式で論じることができる。
【0027】
fc・M・△t=C
【0028】
ここで、fcを求めると、
fc=C/(M・△t)
となる。
【0029】
上述したように、公知の技術では、短周期と長周期との周期データ計8個を除去してしまうので、平均化点数Mは、
M=14からM=6
に減少するので、周波数帯域fcは、次のように拡大する。
【0030】
fc=2.33fco (但し、fcoは周期データ削除前の周波数帯域)
【0031】
周波数帯域が広がると混入ノイズが増えるばかりでなく、信号の応答性も著しく変化してしまう。
すなわち、短周期と長周期との周期データを全て除去して脈拍数を算出すると、短周期と長周期との脈波信号に含まれていた信号成分も全て失われてしまうばかりでなく、測定系の周波数特性をも劣化させノイズも増大するという逆の効果を生じてしまう。
【0032】
このように、公知の技術ではノイズと信号とを1か0かで峻別してしまうため、ノイズに含まれる信号成分は全て除去し、信号に含まれるノイズ成分は全て信号として扱ってしまうという基本的欠陥があった。
【0033】
以上述べたように、公知の技術による信号処理では、専用化したような特別なハードウェアが必要でないことから、ローコストのメリットはあっても、肝心の測定性能においては、不十分と言わざるを得ない状況であった。
【0034】
本発明の目的は上記課題を解決し、運動中においても生体より発せられる周期性を有する脈波等の振動波を、ソフトウエアによる信号処理技術によって高精度でかつローコストの生体信号測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
上記課題を解決するために本発明の生体信号測定装置は下記記載の構成を採用する。
【0036】
生体より発せられる周期性を有する振動波を検出し振動波信号P2として出力する振動波検出手段と、振動波信号P2の時間間隔を測定して周期データDaとして出力する振動波周期測定部と、周期データDaを複数まとめて測定対象としてのデータグループであるグループ信号Gaとして記憶するグループ記憶手段と、グループ記憶手段に記憶されたグループ信号Gaに基づき振動数データDbを算出する振動数算出手段と、を備える生体信号測定装置において、
振動数算出手段は、グループ信号Gaを構成する複数の周期データDaを入力して複数の周期データDaと予め定められた周期信号の長さdas、dalとを比較し区分判別する区分判別部と、区分判別部によって区分判別された複数の周期データDaを区分ごとに記憶し複数の区分ごとに区分データDcとして出力する区分記憶部と、複数の区分データDcに対応する複数の重み係数Kを記憶する重み係数記憶部と、複数の区分データDcと区分データDcに対応する複数の重み係数Kとから振動波周期加重平均値Ddを算出する振動波周期加重平均値算出部と、を備えたことを特徴とする。
【0037】
振動波は、心臓の鼓動により発せられる脈波、心臓の電気的活動を表す心電波、呼吸により発せられる皮膚振動波、歩行または走行時の振動波、脳波である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、脈波等の振動波信号P2の時間間隔である周期データDaは、複数まとめられて測定対象としてのデータグループであるグループ信号Gaとして記憶され、区分判別部51によって予め定められた値das、dalと比較し、複数の区分例えば短周期と中周期及び長周期各区分等に分類され、中周期の周期データDaについては重みを上げ、短周期や長周期の周期データDaについては重みを下げ振動波周期加重平均値Ddの算出が行われる。
【0039】
すなわち、中周期区分に最も多く含まれる本来の周期データDaは高い重み係数で重み付けがなされ、一方短周期区分や長周期区分に多く含まれるノイズを含む周期データDaについては、全く除去されるようなことが無く低い重み係数で重み付けされる。
【0040】
従って信号とノイズの取り扱いにおいて、「0」か「1」かの峻別を行うのではなく個別にきめ細かく重み付けがなされるため、測定対象のデータ数の減少で周波数帯域が拡大することもなく、結果として精度の高くかつローコストの生体信号測定装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による生体信号測定装置の第1の実施形態の機能ブロック図である。
【図2】本発明による生体信号測定装置の第1の実施形態の回路ブロック図である。
【図3】本発明による生体信号測定装置の第1の実施形態の外観図である。
【図4】本発明による生体信号測定装置の第1の実施形態を、手首に装着した状態を示す外観図である。
【図5】本発明による生体信号測定装置の第1の実施形態を、手首に装着した場合の断面図である。
【図6】一般的な振動波の波形図である。
【図7】一般的な振動波の波形図である。
【図8】本発明による生体信号測定装置の第1の実施形態における振動波の波形図である。
【図9】本発明による生体信号測定装置の第1の実施形態における振動波信号の数値例を表す図表である。
【図10】本発明による生体信号測定装置の第2の実施形態におけるグループ記憶手段を説明するブロック図である。
【図11】本発明による生体信号測定装置の第2の実施形態における振動波信号の波形図である。
【図12】本発明による生体信号測定装置の第2の実施形態における振動波信号の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の生体信号測定装置の大まかな動作は、生体が発する複数の振動波を取り込み、その周期の大小で並び替えおよび順位付けを行うものである。
並び替えられた振動波の周期は、区分分類される。例えば、振動波の周期が短周期のものや長周期のものは信頼性が劣ると考え、振動波の周期が中周期のものは信頼性があると考え、各区分(この場合3つの区分)ごとに重み付けを行うのである。
信頼性が劣ると考えられる区分は重み付けを下げ、信頼性があると考えられる区分は重み付けを高める。そして、これらを加重平均するのである。
このようにすることで、振動数の周期がばらついたとしても、信頼性があると考えられる振動波を使うことができるようになる。
振動波を人体の脈波とすれば、ノイズではなく正しい脈波を信号処理することができるため、心拍数などの算出の精度が向上するのである。
【0043】
このような動作を詳しく説明すると、次のようなものである。
生体が発する複数の振動波の周期データDaをグループ信号Gaとしてまとめ、各々の
周期データDaを予め定められた周期信号の長さdas、dalと比較して区分判別し、区分ごとに区分データDcとして記憶すると共に、区分ごとに重み係数Kを記憶し、区分データDcと重み係数Kとから周期データDaの振動波周期加重平均値Ddを算出し、単位時間当りの振動数データDbを算出し、表示するものである。なお、振動数データDbを算出し表示したのち、算出に使用されたグループ信号Gaは更新される。
【0044】
以下図面を用いて本発明の生体信号測定装置の実施形態を詳述する。説明に際しては、生体が発する振動波は、脈波として説明する。そして、この脈波を測定するために、生体信号測定装置は、人体の手首に装着する場合を例にして説明する。
【実施例1】
【0045】
[第1の実施形態の全図面説明:図1,図8]
以下、図1および図8を用いて本発明の生体信号測定装置の第1の実施形態を詳述する。
図1は機能ブロック図であり、図8は振動波信号の波形図であり、図9は振動波信号の数値例を表す図表である。
【0046】
まず、図1及び図8を用いて第1の実施形態の構成を説明する。
図1において、生体信号測定装置1は、振動波検出手段2と振動波周期測定部3とグループ記憶手段4と振動数算出手段5と表示手段6とクロック発生部7とから構成される。
【0047】
[振動波検出手段2の説明:図1,図8]
まず、振動波検出手段2を説明する。
振動波検出手段2は、センサ21と振動波検出部22と基準値信号記憶部23とで構成しており、振動波信号P2を出力する。
【0048】
センサ21は、特に限定しないが、圧力センサを用いることができる。例えば、橈骨動脈の脈動に基づく振動波(脈波)を検出する。その脈波を信号処理してセンサ信号P1を出力する。
脈波は、すでに説明したように、周期的に発生している波形として測定され、その信号には、不規則に発生している棘状の波形が、電磁的あるいは機械的なノイズとして混入している。脈波の波形は、呼吸動作によって生じるゆっくりした揺らぎノイズと、運動などによる大きい振幅の体動ノイズとの2つの成分が混在したノイズを含んでおり、振幅がばらついている。図8(a)に示すセンサ信号P1は、低周波の揺らぎ成分を電子回路的手法で除去したもので、ほぼ平坦な基線の上に振幅がばらついた脈波と、棘状のノイズ信号が混在する波形になっている。
【0049】
基準値信号記憶部23は、信号とノイズを識別するための閾値を記憶しており、基準値信号P0を出力する。
基準値信号P0は、センサ信号P1を有意的信号として識別するための基準値である。つまり、測定した振動波が橈骨動脈の脈動に基づく振動波なのか否かを信号の大きさ(信号レベル)で判断するための閾値となる値である。例えば、測定した振動波があまりに微弱であれば、それは振動波ではないと判断する材料になるものである。このような基準値信号P0は、予め実験などをしておけば、その値を知り得ることができる。
【0050】
振動波検出部22は、センサ信号P1と基準値信号P0とを入力し、振動波信号P2を出力する。
振動波信号P2は、図8(a)に示すように、センサ信号P1と基準値信号P0とを比較して、図8(b)に示すように、基準値信号P0の振幅を上回るセンサ信号P1を振動波信号P2として出力するのである。
【0051】
[振動波周期測定部3の説明:図1,図8]
次に、振動波周期測定部3を説明する。
振動波周期測定部3は、クロック発生部7から出力されるクロック信号Cと振動波検出手段2から出力される振動波信号P2とを入力として、周期データDaを出力する。
クロック信号Cは、振動波信号P2の時間間隔を測定するための基準クロック信号となるものであって、水晶振動子、発振回路、分周回路などからなる公知のクロック発生手段を用いることができる。
【0052】
周期データDaは、図8(b)に示すように、振動波信号P2の時間間隔、すなわち、振動波の周期を算出したものであって、図8(b)に示す例では、Da1〜Da16の16個のデータで構成している。もちろん、この周期データは16個に限定するものではない。
【0053】
[グループ記憶手段4の説明:図1,図8]
次に、グループ記憶手段4を説明する。
グループ記憶手段4は、記憶入力制御部41とグループ記憶部42と記憶出力制御部43とから構成されており、振動波周期測定部3から周期データDaを入力し、グループ信号Gaを出力する。以下にグループ記憶手段4の構成を詳述する。
【0054】
記憶入力制御部41は、振動波周期測定部3から出力される「所定区間」の複数の周期データDaを時系列の順に、グループ記憶部42の複数の記憶セル42aに収納する。
【0055】
なお、「所定区間」は、複数のセンサ信号P1から一定期間の脈拍数を算出するための範囲である。例えば、10秒〜数分間というような一定の時間の区間である。連続して測定された脈波から算出されたセンサ信号P1のうち、どこから「所定区間」を開始してもよく、図8(a)に示す例では、p1s、p2s、p3sと並ぶ波形から、波形p3sから「所定区間」が開始されている様子を示している。もちろん、「所定区間」は、任意の時間を選択することが可能である。
【0056】
グループ記憶部42は、複数のデータである周期データDa1〜Da16を時系列の順に記憶するため、複数の記憶セル42a1〜42anを有している。例えば、周期データDaが16個のデータであり「所定区間」においてその16個すべてが含まれるとき、グループ記憶部42は、少なくともその分のデータが入る記憶セル42aを有している。
【0057】
例えば、周期データDa1は記憶セル42a1に、また周期データDa2は記憶セル42a2に、また、周期データDa16は記憶セル42a16にと、周期データDaが記憶セル42aに順番に記憶される。記憶された周期データDaの群は、グループ信号Gaとして記憶される。
【0058】
なお、このグループ記憶部42は、知られているリングバッファを用いることもできる。リングバッファは、複数の記憶セルを有しており、新しいデータがいくつか記憶されると、最も古いデータから順に消えるという動作をするメモリである。このようなタイプのメモリを使えば、記憶セルの数を取り込む周期データの数と同一にする必要もない。
【0059】
図8(a)に示すように、周期データは、波形p3sから「所定区間」として取り込まれているので、そのデータの数は、周期データDa3〜Da16の14個となっている。
この「所定区間」により選択された周期データは、測定対象としてのグループ信号Gaとして、グループ記憶部42に記憶される。
【0060】
もちろん、どのタイミングで「所定区間」を開始してもよいのであるから、図8(b)に示すように、このグループ信号Gaに入らない周期データは常時Da1,Da2であるということではない。
【0061】
記憶出力制御部43は、グループ信号Gaを振動数算出手段5に出力したのち、グループ記憶部42の記憶セル42aに記憶されているグループ信号Gaを消去する。
【0062】
[振動数算出手段5の説明:図1,図8]
次に、振動数算出手段5を説明する。
振動数算出手段5は、区分判別部51と区分記憶部52と重み係数記憶部53と振動波周期加重平均値算出部54と振動数計算部55とで構成され、グループ記憶手段4の記憶出力制御部43から出力されるグループ信号Gaに基づき振動数データDbを出力する。
【0063】
次に、図8を参照して振動波算出手段5の信号処理を詳述する。
図8(c)に示すように、区分判別部51は、グループ信号Gaの構成要素である複数の周期データDa3〜Da16を、予め定められた周期信号の長さdas、dalと比較し区分判別し、判別済グループ信号Gbを出力する。
【0064】
すなわち、図8(b)に示すグループ信号Gaは、図8(c)に示すように「das」、「dal」と表された周期を基準に、「A区分」、「B区分」、「C区分」のように区分判定され、判定済グループ信号Gbとして並び替えられ、図1の区分判別部51より出力される。
【0065】
なお、予め定められた周期信号の長さdas、dalは、例えば、周期データDa3〜Da16の最小周期の140%をdasとし、最大周期の50%をdalと定めている。
【0066】
すなわち、
周期データDan<周期信号の長さdas
というように、周期信号の長さdas以下の周期を持つ周期データDaは、短周期区分のA区分に分類し、
周期データDan≧周期信号の長さdal
というように、周期信号の長さdal以上の周期を持つ周期データDaは、長周期区分のC区分に分類し、
周期信号の長さdas≦周期データDan<周期信号の長さdal
というように、周期信号の長さdas以上周期信号の長さdal未満の周期データDanは、中周期区分のB区分とに分類する。
【0067】
つまり、図8(c)に示す例では、周期データDaは、Da3,Da4,Da10,Da13,Da15,Da5,Da6,Da7,Da9,Da8,Da11,Da12,Da14,Da16の順に区分される。A区分には、周期データDa3,Da4,Da10,Da13,Da15が区分判別されている。同様に、B区分には、周期データDa5,Da6,Da7,Da9,Da8,Da11が、C区分には、周期データDa12,Da14,Da16が、それぞれ区分判別されている。
【0068】
なお、予め定められた周期信号の長さdas、dalは、この2つに限らず任意の数を選ぶことが出来る。そして区分判定される区分数は、
区分数=(予め定められた周期信号の数)+1
となる。
【0069】
区分記憶部52は、区分判別部51によって区分判別された判別済グループ信号Gbを
複数の区分(この例では、3つの区分)ごと記憶し、各区分に対応した複数の区分データDcとして出力する。つまり、A区分は区分データDca、B区分は区分データDcb、C区分は区分データDccとして出力する。
【0070】
すなわち、図8(c)に示すように、周期データDa3〜Da16までの14個の周期データDaは、
A区分:区分データDca=[Da3、Da4、Da10、Da13、Da15]
B区分:区分データDcb=[Da5、Da6、Da7、Da9、Da8、Da11]
C区分:区分データDcc=[Da12、Da14、Da16]
となる。
【0071】
重み係数記憶部53は、複数の区分(この例では、3つの区分)ごとの重み係数Kを記憶し、各区分に対応した複数の重み係数Kを出力する。A区分の重み係数Kaは「1」、B区分の重み係数Kbは「10」、C区分の重み係数Kcは「1」、のように、各区分の信号としての品質に応じた重み係数を記憶する。
図8(c)では、「A区分(1)」、「B区分(10)」、「C区分(1)」のように、重み係数を示した。
【0072】
なお、図8(c)において、判別済グループ信号Gbは、予め定められた周期信号の長さdas、dalとの比較によって、グループ信号Gaが区分された結果であって、実時間軸上の情報ではないため、図8(a),(b)と併記するのは厳密には適当でないが、説明を分かり易いものとするため、敢えて併記して表現した。
【0073】
図9に示す図表は、図8(c)に示すような周期データDa3〜Da16が、区分判別部51と、区分記憶部52と、重み係数記憶部53とによって数値化された結果を示すものである。
【0074】
すなわち、図9の図表に示す「グループ」には、周期データDaが属するグループ信号Gaが記載されている。「周期データDa」には、周期データDa3〜Da16が発生順に記載されている。「周期(任意単位)」には、周期データDa3〜Da16の周期の長短を相対的に把握するための、物理単位を有しない数値が丸め処理をされて記載されている。
【0075】
引き続き、図9の図表に示す「判別区分」には、区分判別部51によってグループ信号Gaを構成する周期データDa3〜Da16が、どの区分と判別されたかが記載されている。「判定基準」には、判別の基準が示されている。
「重み係数」には、重み係数記憶部53によって記憶される区分ごとの重み係数が示されている。
【0076】
例えば、図9の図表において、周期データDaの最小値は、
周期データDa3=3.6
であり、最大値は、
周期データDa16=18.5
である。
既に述べたように、予め定められた周期信号の長さdas、dalは、それぞれ最小周期の140%と最大周期の50%であるから、
das=3.6×1.4=5.04
であり、
dal=18.5×0.5=9.25
と表される。
【0077】
すなわち、周期データDa3〜Da16について、周期データDaが5.04未満の場合はA区分に、周期データDaが5.04以上で9.25未満の場合はB区分に、周期データDaが9.25以上の場合はC区分に、それぞれ区分判別する。
【0078】
例えば、周期データDa4は、
Da4=4.0
なので、区分判別部51は、A区分と判別する。また、重み係数記憶部53は、重み係数「1」と設定し記憶する。
また、周期データDa9は、
Da9=8.0
なので、区分判別部51は、B区分と判別する。また、重み係数記憶部53は、重み係数「10」と記憶する。
また、周期データDa12は、
Da12=11.5
なので、区分判別部51は、C区分と判別する。また、重み係数記憶部53は、重み係数「1」と記憶する。
同様に、周期データDa3〜Da16の全ての区分と、重み係数が決定される。
【0079】
振動波周期加重平均値算出部54は、区分記憶部52から出力される区分データDcと、重み係数記憶部53が出力する区分ごとの重み係数Kとを入力して、振動波周期加重平均値Ddを出力する。この振動波周期加重平均値Ddは、次の式1で求めることができる。
【0080】
[式1]
Dd=(区分データDcの「重み付けされた周期」の総和)/(区分データDcの「重み付けされたデータ数」)
【0081】
ここで、
「A区分データDcaの周期データDaの総和」をXAとし、
「B区分データDcbの周期データDaの総和」をXBとし、
「C区分データDccの周期データDaの総和」をXCとし、
さらに、
「A区分データDcaのデータ数」をXAnとし、
「B区分データDcbのデータ数」をXBnとし、
「C区分データDccのデータ数」をXCnとする。
【0082】
また、A区分の重み係数をKaとし、B区分の重み係数をKbとし、C区分の重み係数をKcとすると、前述の[式1]は、次の式2のようになる。
【0083】
[式2]
Dd=(XAKa+XBKb+XCKc)/(XAnKa+XBnKb+XCnKc)
【0084】
振動数計算部55は、振動波周期加重平均値算出部54が算出した振動波周期加重平均値Ddを入力して、振動数データDbを出力する。この振動数データDbは、次の式3で求めることができる。
【0085】
[式3]
振動数データDb=(単位時間)/(振動波周期加重平均値Dd)
【0086】
さらに、表示手段6は、振動数算出手段5の振動数計算部54が出力する振動数データDbを表示する。表示手段6は、特に限定しないが、公知の液晶表示装置を用いることができる。
【0087】
ところで、以上説明した一連の処理動作を繰り返すこともできる。使用者が脈波の測定を繰り返すなどして、新たな振動波信号P2(2)が発生すると、振動波周期測定部3は新たな振動波信号P2(2)とクロック信号Cとから新たな振動波信号P2(2)の時間間隔を測定し、新たな複数の周期データDa(2)を連続して出力する。
なお、新たな信号は、便宜上、振動波信号P2(2)などと括弧内に2回目の信号であるように表現することにした。
【0088】
次に、グループ記憶手段4の記憶入力制御部41は、振動波周期測定部3から新たな周期データDa(2)が出力されると、第1番目と同様にグループ記憶部42の記憶セル42aに時系列の順に収納してゆき、所定区間内の複数個の周期データDa(2)を第2番目のグループ信号Ga(2)として記憶する。
【0089】
グループ記憶手段4の記憶出力制御部43は、振動数算出手段5に対して第2番目のグループ信号Ga(2)を出力する。そして振動数算出手段5は第2番目のグループ信号Ga(2)に基づき、後述する加重平均によって第2番目の振動数データDb(2)を算出し、表示手段6は第2番目の振動数データDb(2)を表示する。
【0090】
このように、使用者の振動波によって振動波信号P2が発生するたびに、新しい周期データDa(n)、グループ信号Ga(n)、振動数データDb(n)が順次算出され、表示手段6に振動数データDb(n)が連続して表示される。
【0091】
[発明の効果詳細説明]
ここで、説明した第1の実施形態の効果を、図9の図表を参照してまとめる。
既に述べたように、振動数算出手段5の振動波周期加重平均値算出部54は、振動波周期加重平均値Ddを、式2で算出する。
【0092】
すると、図9の図表に示すように、
A区分のデータ数は、XAn=5で、A区分の重み係数は、Ka=1である。
B区分のデータ数は、XBn=6で、B区分の重み係数は、Kb=10である。
C区分のデータ数は、XCn=3で、C区分の重み係数は、Kc=1である。
ゆえに、式2は、式3のように算出される。すなわち、
Dd=(XA+10XB+XC)/(5+60+3)=(XA+10XB+XC)/68
となる。
【0093】
上記結果を、従来からしばしば用いられている単純平均法と比べてみると、下記のようになる。すなわち、測定対象であるグループ信号Gaの単純平均法による単純平均値は、
XA=Da3+Da4+Da10+Da13+Da15
XB=Da5+Da6+Da7+Da8+Da9+Da11
XC=Da12+Da14+Da16
となる。これを用いて、単純平均値は、
単純平均値=(XA+XB+XC)/14
と表すことができる。
【0094】
評価のため、
A区分の周期データDaの総和=XA、
B区分の周期データDaの総和=XB、
C区分の周期データDaの総和=XC、
として、XA、XB、XCの算定結果に与える寄与を、本発明による場合と単純平均法による場合とを比較すると下記の表1のようになる。
【0095】
【表1】

【0096】
すなわち、高品質の周期データDaが含まれている可能性が高いB区分の周期データDaの総和XBの算出結果への寄与は、単純平均法では1/14であるが、本発明によれば10/68に増加する。
【0097】
また、ノイズの混入や振動波信号P2の欠落など低品質の周期データDaが含まれている可能性が高いA区分の周期データDaの総和XAや、C区分の周期データDaの総和XCについては、従来では1/14であるが、本発明によれば1/68に軽減され、本来の信号とノイズとの識別がより明確になり、振動数測定の精度が高まることが分かる。
【0098】
[回路ブロックの説明:図2]
次に、図2を用いて図1に示す第1の実施形態の回路構成を説明する。
図2において、生体信号測定装置1は、センサ21と測定スイッチ8と記憶装置14と表示手段6とマイクロプロセッサ10と電源12とで構成される。
【0099】
センサ21は、橈骨動脈の脈動等、生体の周期性のある振動波をセンサ信号P1に変換し、マイクロプロセッサ10に入力する。測定スイッチ8は、生体信号測定装置1の動作を開始あるいは休止させる。
【0100】
記憶装置14は、図1における基準値信号記憶部23、グループ記憶手段4、区分記憶部52、重み係数記憶部53等の記憶手段であって、演算処理に必要なデータや固定値の記憶機能も備え、電気的に書込および消去が可能な記憶素子によって構成されている。例えば、EEPROMのような不揮発性記憶装置を用いることができる。
表示手段6は、例えば、液晶表示装置によって構成される。振動数データDbを表示する。
【0101】
マイクロプロセッサ10は、生体信号測定装置1の全体の動作を制御すると共に、セン
サ信号P1を入力として振動数データDbを出力する主機能を担う。電源12は、生体信号測定装置1を駆動するための電池等による駆動電源である。
【0102】
[装着外観図の説明:図3〜図5]
次に、図3と図4と図5とを用いて生体信号測定装置1の外観図を説明する。この例では、本発明の生体信号測定装置を人体に装着して脈波を測定する装置として運用する例を説明する。
図3は、生体信号測定装置1の外観図であり、図4は手首に装着した様子を示す外観図である。また、図5は手首部分に装着した生体信号測定装置1および手首部の断面図である。
【0103】
図3に示すように、生体信号測定装置1は腕時計を若干上回る程度の大きさで、手首への装着が便利な様に柔軟なバンド9が設けられている。バンド9は、リング形状を有していてもよいが、一部に開放端を有する、いわゆる「Cの字」形状を有するものであってもよく、バンド9の形状や内径を変更できるような調節機構を設けていてもよい。
測定を開始するための操作ボタンである測定スイッチ8は、運動中等でも簡単に操作できるように、本体正面のような操作しやすく見やすい場所に設けると便利である。同様に、表示手段6は本体正面に設けてあり、使用者は測定した脈拍数を容易に確認することができる。図3に示す例では、脈拍数「112」と表示している。
【0104】
図4に示すように、生体信号測定装置1は、生体信号測定装置1の裏面に設けられたセンサ21が振動波である脈波を容易に検出するため橈骨動脈近くに、かつ表示手段6が、手のひらの面より若干上向きになる様に、バンド9によって手首90に装着される。
【0105】
図5は、手の指の方向から肘の方向をみたときの様子を模式的に示す断面図である。生体信号測定装置1の内部には、回路などを構成する電装ボード11が搭載されており、図示しない配線等で測定スイッチ8、表示手段6、センサ21、電源12と接続している。なお、記号21aは、センサ21の検出面である。
【0106】
センサ21は、すでに説明したように、圧力センサを用いることができる。センサ21は、検出面21aを有しており、この検出面21aにかかる圧力を検出する。
生体信号測定装置1を生体に装着するに際しては、センサ21の検出面21aが手首90の内部の橈骨動脈91と平面的に重なるように、その位置をバンド9で調整する。
生体信号測定装置1は、その裏面にセンサ21を備えるのであるから、装置におけるセンサ21は、生体信号測定装置1を手首90に装着しただけで、自然に橈骨動脈91の上部の皮膚に当接するような位置に設けるように予め設計しておくと便利である。
【実施例2】
【0107】
[第2の実施形態の全図面説明:図10,図11、図12]
次に、図10、図11、図12を用いて、本発明の生体信号測定装置の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態に対してグループ記憶手段の構成が異なるものである。図10は第2の実施形態におけるグループ記憶手段を示すブロック図である。図11は、第2の実施形態における振動波信号の波形図である。図12は、図11の振動波信号を区分した結果を示すものである。なお、説明に際しては、図1に示す第1の実施形態の機能ブロック図も参照されたい。
【0108】
第2の実施形態と第1の実施形態との相違点は、グループ信号Gaの更新の際に、全ての周期データDaを書き換えるのではなく、時系列上で1個ないし数個の周期データDaのみを書き換えることによって、振動数の表示の更新を短時間で可能とするものである。
【0109】
つまり、連続して測定された脈波から算出されたセンサ信号P1を処理するとき、ある1つの「所定区間」内の信号の処理が終わるのを待って次の「所定区間」の処理をするのではなく、連続して複数の所定区間内の信号を処理するというものである。
連続して測定されたセンサ信号P1から新しい振動波信号P2を生成するたびに、新しい周期データDanを取り込んで、新しいグループ信号Ganを形成し新しい振動数データDbnを算出するものである。このような手法は、いわゆる移動平均法に基づく処理である。
【0110】
まずは、図10のブロック図を用いて構成を説明する。
図10に示すように、第2の実施形態のグループ記憶手段は、前述したように新しい振動波信号P2を生成するたびに新しい周期データDanを取り込み、新しいグループ信号Ganを形成し記憶するという動作によって、所定区間が新しい振動波信号P2を生成するたびに部分的に更新されてゆく「部分更新型」の構成となっている。
なお図10においては、説明のため記憶セル42aは3個が表現されているが、実施形態では1個の記憶セル42aを用い内容を更新していくようになっている。言うまでもないが、記憶セル42aを3個用いることも可能である。
【0111】
次に、動作を説明する。
図11は、第2の実施形態における振動波信号の波形図であり、図11の(a)には第1の実施形態と同様に一般的な振動波すなわち脈波を表すセンサ信号P1が示され、「所定区間」の範囲が測定対象であること示している。なお、「所定区間」は、「所定区間1」〜「所定区間3」が示されている。
なお、すでに説明したように、「所定区間」は、一定期間の脈拍数を算出するための範囲であり、連続して測定された脈波から算出されたセンサ信号P1のうち、どこから「所定区間」を開始してもよいのであるが、説明しやすいように、波形p3sから「所定区間1」が開始されている様子を示している。同様に、波形p4sからは、「所定区間2」が、波形p5sからは、「所定区間3」が、それぞれ開始されている。
【0112】
第2の実施形態では、グループ信号Gaを構成する1個ないし数個の周期データDa(例えば、周期データDa3及びDa4)のみを消去し、代わりに新しい1個ないし数個の周期データDa(例えば、周期データDa17及びDa18)を記憶する方式である。
【0113】
すなわち、図11(b)に示されるように、「所定期間1」の複数の周期データDaによって第1番目のグループ信号Ga1が形成され、振動数算出手段5に送られる。
その後、使用者の新たな振動波によって新たな振動波信号P2が発生し、振動波周期測定部3から新たな周期データDaがグループ記憶手段4に入力される。この周期データDaは、「所定期間2」のデータである。
【0114】
そうすると、図10に示す記憶入力制御部41は、時系列上で最も古い(1番目に記憶した)周期データDanを消去し、時系列上の2番目に記憶した周期データDan+1(“Dan+1”とはn+1番目のDaである。以下同様の表現を用いる)を時系列上で最も古い周期データDanが記憶されていた記憶部に移し換える。
さらに、3番目の周期データDan+3を2番目の周期データDan+2が記憶されていた記憶部に移し換え、以下同様のシフト動作を複数回繰り返して、時系列上で最新の周期データDamを含む複数の周期データDan+1〜Damを時系列順に複数個まとめ、図10に示すグループ記憶部42の記憶セル42aに第2番目のグループ信号Ga2として記憶する。
【0115】
グループ記憶部42の記憶セル42aに第2番目のグループ信号Ga2が記憶されると、記憶出力制御部43は振動数算出手段5に対して第2番目のグループ信号Ga2を出力
する。振動数算出手段5は、第2番目のグループ信号Ga2に基づき、加重平均法によって第2番目の振動数データDb2を算出する。
【0116】
以下同様に、第2番目のグループ信号Ga2が形成され振動数算出手段5に送られた後、使用者の新たな振動波によって新たな振動波信号P2が発生し、振動波周期測定部3から新たな周期データDaがグループ記憶手段4に入力される(「所定期間3」のデータである)と、上述のシフト動作を行って、新しいグループ信号Ga3として記憶する。
【0117】
そして、グループ記憶部42の記憶セル42aに第3番目のグループ信号Ga3が記憶されると、記憶出力制御部43は振動数算出手段5に対して第3番目のグループ信号Ga3を出力する。振動数算出手段5は、第3番目のグループ信号Ga3に基づき、第3番目の振動数データDb3を算出するのである。
【0118】
以上の様子は、図12に示した。図12(a)は、「所定区間1」による周期データDaを区分分けした後のグループ信号Gb1を示している。同様に、図12(b)は、「所定区間2」による周期データDaを区分分けした後のグループ信号Gb2を示しており、図12(c)は、「所定区間3」による周期データDaを区分分けした後のグループ信号Gb3を示している。
【0119】
なお、グループ信号Gaを構成する周期データDaの書き換えは、振動波測定において測定の速度が重要か或いは測定の精度が重要か等、生体信号測定装置1の性能に対する要求内容に応じて、1個のみならず2個、あるいは3個あるいは更に多くの周期データDaを書き換えることも勿論可能である。
【0120】
[発明の効果詳細説明]
以上、説明した第2の実施形態の効果は、次のようなものである。
すなわち、グループ信号Gaの書き換えは、1個ないし数個の新しい周期データDaによって行われ、その都度振動数データDbの算出、並びに表示が行われる。
生体信号測定装置100に対する性能要求が、表示の即時性である場合には極めて有用な技術である。
【0121】
[全体説明まとめ]
以上述べたように、本発明の生体信号測定装置によれば、複数の周期データDaはグループ信号Gaとしてまとめられたのち、予め定められた周期信号の長さdas、dalと比較して複数の区分に判別されると共に区分ごとに記憶され、B区分すなわち中周期区分の周期データDaについては重みを上げ、A区分すなわち短周期区分の周期データDaやC区分すなわち長周期区分の周期データDaについては重みを下げ、加重平均算出が行われる。
【0122】
従って、信号とノイズとの取り扱いにおいて、「0」か「1」かの峻別を行うのではなく、個別にきめ細かく重み付けがなされるため、測定対象のデータ数の減少で周波数帯域が拡大することもなく、結果として精度の高い生体信号測定装置を提供することが可能となる。
【0123】
また第2の実施形態のよる場合には、さらに表示の即時性に富む生体信号測定装置を提供することが可能となる。
なお、以上説明した実施形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば任意に変更することができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、運動中などの外乱ノイズや体動ノイズが大きい場合でも、生体が発生する振動波の測定が正しく行えるため、心拍計などの健康機器に好適である。また、生体に限らず産業界における物理量の測定機器、周期的現象に基づくデータの分析機器にも用いることができる。
【符号の説明】
【0125】
1 生体信号測定装置
2 振動波検出手段
21 センサ
21a センサ検出面
22 振動波検出部
23 基準値信号記憶部
3 振動波周期測定部
4 グループ記憶手段
41 記憶入力制御部
42 グループ記憶部
42a 記憶セル
43 記憶出力制御部
5 振動数算出手段
51 区分判別部
52 区分記憶部
53 重み係数記憶部
54 振動波周期加重平均値算出部
55 振動数計算部
6 表示手段
7 クロック発生部
8 測定スイッチ
9 バンド
90 手首
91 橈骨動脈
10 マイクロプロセッサ
11 電装ボード
12 電源
14 記憶装置
P0 基準値信号
P1 センサ信号
p1 センサ内部信号
p11n ノイズ成分
p12 揺らぎノイズ
P2 振動波信号
Da 周期データ
Da1 時系列上で最も古い周期データ
Da2 時系列上で2番目に古い周期データ
Da3 時系列上で3番目に古い周期データ
Dan、Dam 時系列上で最新の周期データ
Dan+1 時系列上で周期データDanの次の周期データ
Ga グループ信号
Gb 判別済グループ信号
Dc 区分データ
Dca A区分データ
Dcb B区分データ
Dcc C区分データ
K 重み係数
Ka A区分の重み係数
Kb B区分の重み係数
Kc C区分の重み係数
Dd 振動波周期加重平均値
Db 振動数データ
C クロック信号
XA A区分データDcaの周期データDaの総和
XB B区分データDcbの周期データDaの総和
XC C区分データDccの周期データDaの総和
XAn A区分データDcaのデータ数
XBn B区分データDcbのデータ数
XCn C区分データDccのデータ数
fc 遮断周波数
M 平均化点数
Δt 標本間隔
C −3db点定数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体より発せられる周期性を有する振動波を検出し振動波信号P2として出力する振動波検出手段と、
前記振動波信号P2の時間間隔を測定して周期データDaとして出力する振動波周期測定部と、
前記周期データDaを複数まとめて測定対象としてのデータグループであるグループ信号Gaとして記憶するグループ記憶手段と、
前記グループ記憶手段に記憶された前記グループ信号Gaに基づき振動数データDbを算出する振動数算出手段と、
を備える生体信号測定装置において、
前記振動数算出手段は、
前記グループ信号Gaを構成する前記複数の周期データDaを入力して前記複数の周期データDaと予め定められた周期信号の長さdas、dalとを比較し区分判別する区分判別部と、
前記区分判別部によって区分判別された複数の周期データDaを区分ごとに記憶し複数の区分ごとに区分データDcとして出力する区分記憶部と、
前記複数の区分データDcに対応する複数の重み係数Kを記憶する重み係数記憶部と、
前記複数の区分データDcと前記区分データDcに対応する前記複数の重み係数Kとから振動波周期加重平均値Ddを算出する振動波周期加重平均値算出部と、
を備えたことを特徴とする生体信号測定装置。
【請求項2】
前記振動波は、心臓の鼓動により発せられる脈波、心臓の電気的活動を表す心電波、呼吸により発せられる皮膚振動波、歩行または走行時の振動波、脳波であることを特徴とする請求項1に記載の生体信号測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−220947(P2010−220947A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74061(P2009−74061)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】