説明

生体情報検出装置

【課題】 複数人が近接して生活している場合でも、振動が発生する機器を使用している場合でも、他人の生体情報又は機器の影響を極力小さくして、自己の生体情報を精度良く抽出できる生体情報検出装置を実現する。
【解決手段】 クライアントの生体情報を検出して演算処理する生体情報検出装置において、
前記クライアントの生体情報を検出する第1の無拘束型センサと、
前記クライアントと近接して生活する少なくとも一人の他のクライアントの生体情報を検出する少なくとも一台の第2の無拘束型センサと、
この第2の無拘束型センサの出力に対して所定の演算を実行するノイズ補正手段と、
前記第1の無拘束型センサの出力より前記ノイズ補正手段の出力を減算する演算手段と、
を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライアントの生体情報を検出して演算処理する生体情報検出装置において、他クライアントからの影響や使用機器からの影響を補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
クライアントの生活情報、特に睡眠段階情報に基づいてクライアントの使用する機器、例えばベッドやエアコン、照明具等を最適状態に操作するシステムに関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−339674号公報
【0004】
特許文献1に開示された技術は、無拘束で得られる生体情報を利用し、国際的基準である睡眠の6段階に準拠した、現在の睡眠段階が6段階のどこであるかを、名義的な尺度で精度よくリアルタイムに推定する方法及びその方法を用いた装置であり、無拘束型生体センサで測定される生体の心拍変動情報並びに体動情報に基づき、睡眠の段階を名義的尺度で同定することを特徴としている。
【0005】
図3により、特許文献1の睡眠段階推定手段19に開示されている技術で検出可能なクライアントの各種生体情報についての概要を説明する。クライアント3が就寝するエアマットレス1の圧力変動を無拘束型センサ4で検出し、フィルタ手段5を介して心拍、呼吸、いびきを抽出する。
【0006】
これら生体情報及び赤外線カメラ10の画像信号を入力する画像処理手段11により得られる体動情報が点線のブロック9で示される睡眠段階推定演算部に入力され、信号処理されて心拍情報Ib、連続的睡眠段階情報Sc、名義的尺度による6段階睡眠情報Sa、体動情報Im、いびき情報Is、呼吸情報Irが得られる。信号処理のアルゴリズムについては特許文献1に詳述されているので、ここでは説明を省く。
【0007】
睡眠段階推定演算部9より得られるこれら生体情報は、記憶保持手段18に保持されその総合情報Siを利用してクライアントの状態監視、データ記録、緊急通報、快適環境を維持するための機器制御等を実行する。特許文献1には、各種の機器制御の例が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の生体情報検出装置では、生体情報検出対象のクライアントは一人だけを対象としている。ダブルベッド等に複数人が近接して寝ている場合には、自分の生体情報の検出信号に別の人の生体情報が重畳されてノイズとなり、自分の生体情報だけを精度良く検出することが困難な場合がある。
【0009】
クライアントが一人の場合でも、クライアントが使用する機器より発生する振動が自分の生体情報の検出信号に重畳されてノイズとなり、自分の生体情報だけを精度良く検出することが困難な場合がある。
【0010】
従って本発明が解決しようとする課題は、複数人が近接して生活している場合でも、振動が発生する機器を使用している場合でも、他人の生体情報又は機器の影響を極力小さくして、自己の生体情報を精度良く抽出できる生体情報検出装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を達成するために、本発明の構成は次の通りである。
(1)クライアントの生体情報を検出して演算処理する生体情報検出装置において、
前記クライアントの生体情報を検出する第1の無拘束型センサと、
前記クライアントと近接して生活する少なくとも一人の他のクライアントの生体情報を検出する少なくとも一台の第2の無拘束型センサと、
この第2の無拘束型センサの出力に対して所定の演算を実行するノイズ補正手段と、
前記第1の無拘束型センサの出力より前記ノイズ補正手段の出力を減算する演算手段と、
を備えたことを特徴とする生体情報検出装置。
【0012】
(2)前記ノイズ補正手段は、前記第2の無拘束型センサの出力に対するゲイン調整及び位相調整の少なくともいずれかの演算を実行することを(1)に記載の生体情報検出装置。
【0013】
(3)前記無拘束センサは、クライアント毎に設置されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の生体情報検出装置。
【0014】
(4)クライアントの生体情報を検出して演算処理する生体情報検出装置において、
前記クライアントの生体情報を検出する無拘束型センサと、
前記クライアントの使用する機器より発生する振動を検出するノイズセンサと、
このノイズセンサの出力に対して所定の演算を実行するノイズ補正手段と、
前記無拘束型センサの出力より前記ノイズ補正手段の出力を減算する演算手段と、
を備えたことを特徴とする生体情報検出装置。
【0015】
(5)前記ノイズ補正手段は、前記ノイズセンサの出力に対するゲイン調整及び位相調整の少なくともいずれかの演算を実行することを特徴とする(4)に記載の生体情報検出装置。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
(1)クライアントの個人別の生体情報の検出精度を高めることができ、この情報を用いた生活支援機器の制御性を向上させることができる。
(2)複数人全体ではなく、クライアント一人一人に対してきめ細かな制御が可能になる。
(3)クライアントの使用する機器より発生するノイズを軽減させて自己の生体情報だけを精度良く検出でき、この情報を用いた生活支援機器の制御性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。図1は本発明を適用した生体情報検出装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。図3で説明した従来装置と同一要素には同一符号を付し、説明を省略する。以下、本発明の特徴部につき説明する。
【0018】
図1は、複数のクライアントが近接して生活する環境に本発明を適用した実施形態を示し、簡単のためにクライアントは二人の場合を例示している。1a,1bは、共通のベッドに近接して配置されたエアマットレスであり、クライアント3a(Aさん),3b(Bさん)が使用する。
【0019】
クライアントAさんの生体情報検出を主体にすれば、Bさんの生体情報の影響はAさんの生体情報検出信号に対してノイズとなる。逆にクライアントBさんの生体情報検出を主体にすれば、Aさんの生体情報の影響はBさんの生体情報検出信号に対してノイズとなる。
【0020】
4aはAさんの使用するエアマットレス1aに接続された無拘束型センサであり、f(t)はその検出信号である。4bはBさんの使用するエアマットレス1bに接続された無拘束型センサであり、g(t)はその検出信号である。ここで、クライアントAさんの生体情報検出を主体にすれば、4aは第1の無拘束型センサ、4bは第2の無拘束型センサであり、クライアントBさんの生体情報検出を主体にすれば、4bは第1の無拘束型センサ、4aは第2の無拘束型センサである。
【0021】
100aは、無拘束型センサ4aの出力f(t)に対するノイズ補正手段であり、無拘束型センサ4bの出力g(t)に所定の演算を実行する。100bは、無拘束型センサ4bの出力g(t)に対するノイズ補正手段であり、無拘束型センサ4aの出力f(t)に所定の演算を実行する。
【0022】
ノイズ補正手段100aは、無拘束型センサ4bの出力g(t)に対するゲイン調整及び位相調整の少なくともいずれかの演算を実行する。ノイズ補正手段100aにおいて、ゲイン調整係数をAb、位相補正量をAβとすれば、ノイズ補正手段100aの演算出力は、
Ab・g(t+Aβ)である。
【0023】
同様に、ノイズ補正手段100bは、無拘束型センサ4aの出力f(t)に対するゲイン調整及び位相調整の少なくともいずれかの演算を実行する。ノイズ補正手段100bにおいて、ゲイン調整係数をBa、位相補正量をBαとすれば、ノイズ補正手段100bの演算出力は、
Ba・f(t+Bα)
である。
【0024】
200aは無拘束型センサ4aの出力f(t)とノイズ補正手段100aの差を算出する演算手段であり、その出力は、
f(t)−Ab・g(t+Aβ)
である。この信号がフィルタ手段5aに入力され、Bさん側からの体動情報の影響が補正されたAさんの生体情報である心拍、呼吸、イビキ、体動情報が抽出される。
【0025】
200bは無拘束型センサ4bの出力g(t)とノイズ補正手段100bの差を算出する演算手段であり、その出力は、
g(t)−Ba・f(t+Bα)
である。この信号がフィルタ手段5bに入力され、Aさん側からの体動情報の影響が補正されたBさんの生体情報である心拍、呼吸、イビキ、体動情報が抽出される。
【0026】
係数Ab、Ba、は、主として各センサ間のお互いの間の距離によって決定づけられる。位相Aβ、Bαは、主としてゲインノイズ補正手段100a、100bの位相特性によって決定づけられる。
【0027】
運転士、操縦士、プラント監視オペレータの睡眠の前兆を生体情報から検出してシステムに通知し、オペレータを覚醒させる対応を行う居眠り防止装置において、オペレータが使用する機器や環境より発生する振動が生体情報に対してノイズとなる場合に本発明を応用すれば、ノイズの影響を軽減して生体情報の検出精度を高めることができる。
【0028】
図2は、このような環境に用いた本発明の他の実施形態を示す機能ブロック図である。300は車の運転手であり、シート400に結合した無拘束型センサ4により生体情報(心拍と呼吸)f(t)を検出し、演算手段200に入力する。
【0029】
500はシート400が取り付けられる車台であり、エンジンや路面振動をシート400に伝え、これが無拘束型センサ4による生体情報検出信号に対してノイズとなる。600はこの振動を検出するノイズセンサであり、その出力g(t)がノイズ補正手段100に入力される。
【0030】
ノイズ補正手段100は、ノイズセンサ600の出力g(t)に対するゲイン調整及び位相調整の少なくともいずれかの演算を実行する。ノイズ補正手段100において、ゲイン調整係数をAb、位相補正量をAβとすれば、ノイズ補正手段100の演算出力は、
Ab・g(t+Aβ)
である。
【0031】
200は無拘束型センサ4の出力f(t)とノイズ補正手段100の差を算出する演算手段であり、その出力は、
f(t)−Ab・g(t+Aβ)
である。この信号がフィルタ手段5に入力され、振動ノイズが補正された運転手300の生体情報である心拍、呼吸が抽出される。心拍と呼吸情報により連続的な睡眠段階情報を演算することは容易であり、睡眠の前兆である居眠り状態を精度よく検出することができる。
【0032】
本発明を利用すれば、複数人が同時に使用する一つの装置・機器・システム(例:ダブルベッド、電気カーペット)に複数のセンサを設置し、複数人の生体情報を検出して、複数人全体ではなく各人個別に対応して生活機器を精度よく制御することができる。
【0033】
制御動作としては、電気毛布・電気カーペットの温度制御、睡眠時無呼吸防止用枕の変形動作制御、照明の照度制御、音響映像機器の音量制御等である。
【0034】
図1に示した実施形態では、簡単のため複数クライアントを二人とした場合を説明したが、クライアント数は任意である。n人とした場合には、夫々に対してノイズ補正手段はn台、演算手段もn台の構成となる。各演算手段は、自己以外のクライアントの生体情報を演算する(n−1)台のノイズ補正手段からの信号を入力して自己の生体情報検出信号と減算演算を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用した生体情報検出装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】振動を受ける環境に用いた本発明の他の実施形態を示す機能ブロック図である。
【図3】特許文献1に開示されている睡眠段階推定手段の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
1a,1b エアマットレス
3a,3b クライアント
4a,4b 無拘束型センサ
5a,5b フィルタ手段
100a,100b ノイズ補正手段
200a,200b 演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアントの生体情報を検出して演算処理する生体情報検出装置において、
前記クライアントの生体情報を検出する第1の無拘束型センサと、
前記クライアントと近接して生活する少なくとも一人の他のクライアントの生体情報を検出する少なくとも一台の第2の無拘束型センサと、
この第2の無拘束型センサの出力に対して所定の演算を実行するノイズ補正手段と、
前記第1の無拘束型センサの出力より前記ノイズ補正手段の出力を減算する演算手段と、
を備えたことを特徴とする生体情報検出装置。
【請求項2】
前記ノイズ補正手段は、前記第2の無拘束型センサの出力に対するゲイン調整及び位相調整の少なくともいずれかの演算を実行することを特徴とする請求項1に記載の生体情報検出装置。
【請求項3】
前記無拘束センサは、クライアント毎に設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の生体情報検出装置。
【請求項4】
クライアントの生体情報を検出して演算処理する生体情報検出装置において、
前記クライアントの生体情報を検出する無拘束型センサと、
前記クライアントの使用する機器より発生する振動を検出するノイズセンサと、
このノイズセンサの出力に対して所定の演算を実行するノイズ補正手段と、
前記無拘束型センサの出力より前記ノイズ補正手段の出力を減算する演算手段と、
を備えたことを特徴とする生体情報検出装置。
【請求項5】
前記ノイズ補正手段は、前記ノイズセンサの出力に対するゲイン調整及び位相調整の少なくともいずれかの演算を実行することを特徴とする請求項4に記載の生体情報検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−14765(P2006−14765A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192766(P2004−192766)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】