説明

生体情報表示システム

【課題】 複数の患者の脳波を異なる条件下で長時間に亘り測定するシステムを提供するものであって、患者の様子と脳波の解析データとを観察する監視者の省力化ができる生体情報表示システムを提供する。
【解決手段】 患者の脳波を測定する脳波計1と、患者の脳波測定状態を観察し、前記脳波計に接続されるカメラ150と、前記脳波計を複数台接続する通信ネットワーク5と、前記通信ネットワーク5に接続される集中管理モニタ6と、前記集中管理モニタ6が前記脳波計から出力される患者の画像と脳波解析情報とを対応させて複数表示するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報表示システムに関し、特に多数の患者の脳波を、複数の脳波計で同時に測定し、観察するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から脳波計においては、入力箱を介して電極により導出された患者の脳波や、脳波を解析して得られる解析データ(周波数スペクトル)などを連続的に表示部に表示し、記録部で記録し、あるいは記憶部に記憶することが行われてきた。さらに、測定が長時間に及んだり、患者に光や音などの刺激を与えたり、あるいは患者の様子を観察するために患者の了解を得てビデオカメラにより撮影し、得られた画像を、脳波計の表示部に、脳波波形や解析データと共に表示することが行われてきた。
【0003】
例えば、画面の左上側に脳波波形を表示し、画面の右下にビデオカメラにより撮影された患者の様子を示す画像を、1つの画面に表示することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、脳波波形そのものと、脳波を解析して得られたDSA(Density Spectral Array)とを、1つの画面に表示することも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
なお、DSA表示とは、脳波をFFT(Fast Fourier Transform)解析し、縦軸を周波数、横軸を時間軸とし、FFT解析後の振幅に応じてドット(黒点)の密度を変えたり、色を変えたりするなどした棒状の表示を、一定の時間間隔毎に表示する表示方法である。
【0005】
【特許文献1】特表2002−541891号公報(第31頁、第20図)
【特許文献2】特開2003−79591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、脳波測定は、測定される患者一人に対し、通常は脳波計1台で行い、脳波計のそばに一人の画面の監視者がいて、測定中、脳波計の画面に表示される脳波信号の様子や画面に映し出される患者の画像を観察し、患者に装着した電極が外れたり、患者に異変があったりした場合などは、直ちに対応できる状態を保たねばならなかった。しかし、例えば、てんかん専門病院などでは、複数の患者の脳波を数時間から数日間、長い場合は1週間に亘って連続して、患者個別の条件下で測定することが要求されることがある。このような場合には、監視者として脳波計1台に一人の監視者を就けることとなるが、患者に異変が起きるのは希であり、そのために数日間から1週間に亘り、脳波計1台に一人の監視者を用意することは、現実的ではなかった。そこで、監視者の数を省力化するために、次のような方法が提案された。
【0007】
すなわち、簡便な解決方法として、患者の測定状態だけを監視するために、複数の個々のビデオカメラからの映像信号だけを、集中して画面分割により1つのモニタに表示し、監視することが提案された。この場合、脳波信号を観察することなく、患者の様子のみを画像で監視しているので、情報が不足しており、的確な対応が取れない難点があった。
【0008】
また、他の方法として、脳波計の脳波信号とビデオカメラの画像信号とを、集中管理モニタに表示することも考えられたが、1台の脳波計の脳波信号は、最低でも32チャネルから、多い場合には250チャネルにもなるため、複数台の脳波計を1台の集中管理モニタに接続して表示することは、信号のサンプリングや、通信ネットワークのデータ転送速度およびデータ処理速度が不足するなど、技術的に実現することが困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、複数の患者の脳波を異なる条件下で長時間に亘り測定するシステムを提供するものであって、患者の様子と脳波の解析データとを観察する監視者の省力化ができる生体情報表示システムを提供することにある。
さらに、本発明の目的は、省力化した少ない監視者であって、複数の患者の中でどの患者の異変かを的確に確認できる生体情報表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の生体情報表示システムは、患者の脳波を測定する脳波計と、患者の脳波測定状態を観察し、前記脳波計に接続されるカメラと、前記脳波計を複数台接続する通信ネットワークと、前記通信ネットワークに接続される集中管理モニタと、前記集中管理モニタが前記脳波計から出力される患者の画像と脳波解析情報とを対応させて複数表示することを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る請求項2に記載の生体情報表示システムは、前記集中管理モニタに表示された脳波解析情報の過去の任意の時刻のデータを選択すると、当該患者の脳波計から選択した時刻に基づく患者画像および脳波信号を読み出し、当該集中管理モニタの表示画面のほぼ全域に表示することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る請求項3に記載の生体情報表示システムは、前記通信ネットワークに接続された複数の脳波計の1台からイベント情報が発せられると、前記集中管理モニタ上の当該脳波計とイベント情報を表示する表示エリアが点滅しておよび/または当該脳波計またはイベント情報の種類を示す予め設定された音を発生して報知する報知手段を前記集中管理モニタに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る請求項1に記載の生体情報表示システムによれば、複数の患者の脳波測定状態画像と脳波情報とを集中管理モニタ上で同一画面上に表示できるので、省力化された監視者で複数の患者の脳波測定状態より的確に観察することができる。
【0014】
本発明に係る請求項2および3に記載の生体情報表示システムにおいても、前記と同様に、複数の患者の脳波測定状態画像と脳波情報とを集中管理モニタ上で同一画面上に表示できるので、省力化された監視者で複数の患者の脳波測定状態より的確に観察することができ、さらにどの患者の異変かを的確に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る生体情報表示システムを実施する最良の形態につき、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1ないし図4に示す本発明における生体情報表示システムの実施の形態において、参照符号1、2、および3は複数の脳波計を示し、通信ネットワーク接続条件が満たされる範囲までの台数の脳波計が接続される。参照符号5は前記脳波計が接続される通信ネットワークを示し、この通信ネットワーク5には集中管理モニタ6が接続される。
【0017】
前記構成からなる生体情報表示システムは、図示しない生体の頭部にそれぞれ電極110が接続配置される。通常は、これらの電極の数は22個であるが、てんかん等の症状に際しての観察の場合は、必要に応じてそれ以上の電極が接続配置されることがある。電極110のリード線は、電極入力箱120に接続され、増幅器121に導かれる。増幅器121の出力信号は、サンプルホールド回路123においてサンプリング処理され、マルチプレクサ124に入力される。ここまでは、前記出力信号が複数の信号ラインにより処理されるが、マルチプレクサ124において合成された信号は、1本の信号ラインに出力される。マルチプレクサ124において得られる出力信号は、A/D変換器125に転送されてディジタル信号に変換され、CPU100に入力される。
【0018】
CPU100には、カメラ150により患者の様子を撮影した画像出力が入力される。そして、ディスプレイ手段160に画像や脳波波形を表示したり、あるいはプリンタ手段170に脳波波形を出力したり、さらには記憶装置180に記憶させるなどの信号処理や制御が行われる。脳波計の機種によっては、信号処理にはDSA処理などの信号処理もCPU100で行われ、記憶装置180に記憶される。
【0019】
従来の脳波計は、前述した構成からなるものであるが、本発明に係る生体情報表示システムにおける脳波計1のCPU100においては、図示しないインターフェースを介して、通信ネットワーク5に対し、患者の画像(61)とDSA解析データ(62、63)とを出力する機能を有する。以上、脳波計1についての機能を説明したが、通信ネットワーク5に接続された脳波計2、3も同様であり、通信ネットワーク5にはネットワーク接続条件が満たされる範囲までの台数の脳波計が接続される。
【0020】
通信ネットワーク5に接続される集中管理モニタ6は、特に図示しないが、CPU、ディスプレイ、スピーカ、プリンタなどの手段を備えている。集中管理モニタ6のディスプレイ手段における画面表示例を図3に示す。図3には、4人の患者のデータが表示されている。参照符号60が一人分の表示エリアを示し、脳波計1で測定されている患者の情報であるものとして、その表示内容について説明する。
【0021】
図3において、表示画面の左側に患者の現在の様子が画像表示されている。すなわち、ビデオカメラ150で撮影されて得られた画像信号が、脳波計1のCPU100で処理されて、送信されてくる患者の画像を表示部61に表示している。この場合、ビデオカメラ150による全画像情報の全てを通信ネットワーク5に送出した場合には、画像情報は膨大であるために、通信ネットワーク5の転送速度が追いつかなくなり、オーバーフロー状態となってしまう。
【0022】
そこで、本発明においては、脳波計1のCPU100でビデオカメラ150からの画像情報について、フレームレートを落として通信ネットワーク5に送出している。集中管理モニタ6は、その画像情報を取り込み、一定間隔で現在の患者の様子として更新し、表示している。参照符号62、63は脳波計1で測定された患者の脳波のDSA解析データの表示部をそれぞれ示すものである。これらのDSA解析データの表示部62、63においては、例えば患者の頭部の左右の状態を比較するために、2チャネル表示される。
【0023】
DSAによる表示ではなく、脳波波形そのものを表示できればよいが、多チャネルに及ぶ脳波データを表示することは、通信ネットワーク5の転送速度が追いつかないなどの問題や、仮に転送できたとしても、多数患者の画像と脳波データをモニタする目的の集中管理モニタ6においては、画面が煩雑となり、好ましいものではない。
【0024】
DSA解析データの表示部62、63においては、次のようにして表示される。まず、DSA解析データは脳波計1のCPU100で演算される。2.5秒オーバーラップした5秒間隔の脳波波形がFFT解析され、2.5秒毎に1つのDSA解析データが通信ネットワーク5に出力される。集中管理モニタ6は、そのDSA解析データを表示部62、63に表示する。DSA解析データは、横軸が右端を現在として、その左側が過去を表している。そして、DSA解析データの表示は、集中管理モニタ6で使用される表示部の画面の解像度と、表示する時間幅に依存する。例えば、表示時間幅を長時間に設定すると、時間軸の表示1ドットは数10秒分に相当することとなる。DSA解析データは、2.5秒に1データであるので、数データ分を1ドットで表現することとなるが、この場合は、数データ分の平均値あるいは数データ分の最大値で表現することとなる。平均値、最大値は、所定の周波数毎に演算される。
【0025】
通信ネットワーク5に接続された他の複数の脳波計も同様に設定されている。集中管理モニタ6は、通信ネットワーク5よりそれら脳波計からのDSA解析データを取り込み、画面に表示する。縦軸は、FFT解析の周波数を示し、表示部64にその周波数を表示する。この場合、各周波数の強度は、色分け表示することができる。その色については、DSAデータの表示部62、63の左端に指示し、例えば青を強度の低い表示とし、赤を強度の高い表示とするように設定することができる。
【0026】
DSA解析データの周波数の表示部64の右側には、脳波計1から出力する患者の測定部位を指示し、表示するDSA設定窓66が設けてある。そして、患者一人分の表示エリア60のDSA解析データの表示部62、63の下部には、DSA解析データの表示時間軸に合わせて、過去に発生したイベントが表示される。
【0027】
次に、DSA解析データの表示部62、63を観察し、気になる個所や特異的と思われる場合などがある時には、その個所へカーソルを移動して指定すると、その時点の脳波波形を表示することができる。これは、例えば患者1のDSA解析データの表示の任意の個所へマウスなどを用いてカーソルを移動し、ダブルクリックすると、集中管理モニタ6から通信ネットワーク5を介して脳波計1に時刻に関する指示が伝えられる。脳波計1は、その指示に基づき、全測定値と測定経過を記憶している記憶装置180から、指定した時刻に基づく画像情報と、指定した時刻に基づく前後の脳波波形とを読み出し、通信ネットワーク5に出力する。そして、集中管理モニタ6の表示画面は、図4に示すような画面表示となる。表示部71には、指示した時点の画像が表示される。また、表示部72には、指定した時点前後の脳波が表示される。画面下部には、最新の測定時点を右端としたDSA解析データが表示部73に表示されるが、この画面表示となる前の画面のDSA解析データの表示の続きが画面表示される。
【0028】
図4において、参照符号74はイベントの表示部であり、これについても、DSA解析データの表示と同様に、前の画面のイベントの表示の続きが表示されている。表示部75には、その上部に表示されている画像と脳波波形の時点を表している。また、図示しないOSのタスクバーに表示されているタスクの選択により、患者4人分の画面表示をする図3の画面表示に戻ることができる。図3のイベントの表示部67には、イベントが発生した時点にイベントマークが表示されるが、イベントは脳波計において次の場合に発生する。すなわち、脳波計のイベントボタンが押されたとき、脳波計が脳波を解析し発作が起きたと判断したときや所定の事象が発生したと判断したとき、あるいは患者がCALLボタンを押したときなどに、脳波計がイベント発生信号を出力する。集中管理モニタ6では、イベント発生信号を受信すると、イベントがあったことを知らせるウィンドウが開き、そのウィンドウの点滅と音で、あるいはいずれか一方でどの患者の脳波計から発信されたイベント信号であるかを表示する。なお、音に関しては、脳波計やイベントの種類毎に識別できる音声や音色などを、患者毎にすなわち脳波計毎に、設定しておくことにより、イベントの発生を容易に識別することができる。
【0029】
以上、本発明の好適な実施例において、脳波解析情報としてDSAデータ表示について説明したが、脳波解析情報としてはこれに限定されることなく、例えば脳波の振幅トレンド情報を使用することも可能であり、その他本発明の精神を逸脱しない範囲内において種々の設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、複数の脳波計を省力化した人数で監視することができるシステムを製造する産業に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る生体情報表示システムの実施形態を示すシステム構成図である。
【図2】本発明に係る生体情報表示システムに適用する脳波計のブロック回路図である。
【図3】本発明に係る生体情報表示システムにおける生体情報の表示例としての表示画面を示す説明図である。
【図4】本発明に係る生体情報表示システムにおける生体情報の表示例としての表示画面を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1、2、3 脳波計
5 通信ネットワーク
6 集中管理モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の脳波を測定する脳波計と、
患者の脳波測定状態を観察し、前記脳波計に接続されるカメラと、
前記脳波計を複数台接続する通信ネットワークと、
前記通信ネットワークに接続される集中管理モニタと、
前記集中管理モニタが前記脳波計から出力される患者の画像と脳波解析情報とを対応させて複数表示することを特徴とする生体情報表示システム。
【請求項2】
前記集中管理モニタに表示された脳波解析情報の過去の任意の時刻のデータを選択すると、当該患者の脳波計から選択した時刻に基づく患者画像および脳波信号を読み出し、当該集中管理モニタの表示画面のほぼ全域に表示することを特徴とする請求項1記載の生体情報表示システム。
【請求項3】
前記通信ネットワークに接続された複数の脳波計の1台からイベント情報が発せられると、前記集中管理モニタ上の当該脳波計とイベント情報を表示する表示エリアが点滅しておよび/または当該脳波計またはイベント情報の種類を示す予め設定された音を発生して報知する報知手段を前記集中管理モニタに有することを特徴とする請求項1記載の生体情報表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−192105(P2006−192105A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7120(P2005−7120)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】