説明

生体認証情報処理システム

【課題】 利用者がフリーアドレス環境下で座席を変更する事に伴い異なる複合機を利用する場合にあっても、簡易な入力操作で生体認証を行うことができるようにする。
【解決手段】 第1のサーバには利用者が使用する業務端末から座席位置と利用者名を登録させる処理手段と、利用者の座席位置とグループ識別子を対応付ける座席位置対応テーブルと、利用者の座席位置からグループ識別子を特定し、特定したグループ識別子と利用者名を第2のサーバに対して送信する処理手段とを備え、第2のサーバには生体情報DBとグループ情報DBを構成する各要素を登録するための処理手段と、複合機からの送信されるグループ識別子と生体情報を用いることで特定の利用者を認証する処理手段とを備え、複合機には生体認証装置により読取った利用者の生体情報とグループ識別子を前記第2のサーバへ送信し、認証結果を受信する処理手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合機上で生体認証を用いて個人認証を行う際に必要な情報処理システムに関し、特に、利用者がフリーアドレス等で座席を変更する事に伴い異なる複合機を利用する場合に簡易な入力操作で認証操作を行うのに好適な情報処理システムに関するするものである。
【背景技術】
【0002】
コピー、プリント、ファックス、スキャン機能等の機能を持つ複合機は、オフィスにおいて、情報の入出力機としての役割を持ち、ミッションクリティカルな企業の知的財産を取り扱う機会が増えてきている。
一方、市場においては、オフィスの「セキュリティ向上」に向けて関心が高まる中、情報流出の問題は、紙を媒体にしたものが圧倒的に多い事が指摘されている。
この様な状況の下、オフィス内で使用する複合機がセキュリティ対応のニーズを満たす事は、既に多くのIT管理者にとっての常識となっており、このようなニーズへの対応、即ち、ユーザ認証機能が求められるケースが増加している。
【0003】
現在、複合機メーカー各社の主要製品は、この需要に対応すべく、ICカードや生体認証によるユーザ認証に対応する機能が提供されている。
複合機は、PC(パーソナルコンピュータ)と同様に主にオフィスで使用されているが、その使用方法がPCとは決定的に異なっている。PCの認証が通常、「1台の装置対1人の利用者」で行われるのに対し、複合機の認証は、「1台の装置対複数の利用者」(以降「1:N認証」と略)で行われる事にある。
【0004】
1:N認証を行う場合、登録された大勢の人々の中から、如何に速く正確に利用者を特定できるかが、必須の要件となるが、非常に多くのユーザから利用者の特定を行なわなければならない場合、認証速度が遅くなる、認証精度が落ちる(他人受け入れする頻度が高くなる)などの理由により、1:N認証を利用することが困難な場合がある。
このような生体認証特有の問題を解決するため、予め準備された「グループ」という単位に利用者を分割し、グループ単位で認証を行うような情報処理システムが多い。
本発明に関連する公知技術文献としては下記特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−52720
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、利用者が複合機上でユーザ認証を行う際に複合機のパネル上から自身の所属するグループを選択した後に認証を行う動作は、他の認証手段(たとえばICカード)の利用方法と比較し、利用者の利便性を損ねている。
また、複合機上のパネル上に多くのグループを表示し、利用者に選択させることも利用者の利便性を損ねる事となり、複合機の認証手段として生体認証を用いる事に対する阻害原因となっている。
このような理由により、複合機と生体認証を組み合わせて利用する場合には利用者の利便性を考慮し、生体のみで認証が行える工夫が必要である。
利用者が複合機上からグループを選択しなくてもよい方法として、選択認証サーバ上で複合機単位にグループを設定し、その複合機を使用する利用者をグループに属させ、複合機に予め固定値として設定されたグループ識別子を利用して認証を行うことが可能である。
【0007】
しかしながら、企業内におけるフリーアドレス化の推進に伴い、利用者は特定の座席に在席しない場合がある。この時、利用者が使用する複合機も特定の場所に置かれたものではなくなるため、特定の複合機以外では、複合機上からグループを選択する必要がある。
【0008】
本発明の目的は、利用者がフリーアドレス環境下で座席を変更する事に伴い異なる複合機を利用する場合にあっても、簡易な入力操作で生体認証を行うのに好適な生体認証情報処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の生体認証情報処理システムは、座席位置対応テーブルを備えた第1のサーバと、グループ情報データベースおよび生体情報データベースを備えた第2のサーバと、生体認証装置が接続された複合機と、利用者が使用する業務端末とからなる生体認証情報処理システムであって、
前記第1のサーバには、利用者が使用する業務端末から座席位置と利用者名を登録させる処理手段と、利用者の座席位置とグループ識別子を対応付ける座席位置対応テーブルと、利用者の座席位置からグループ識別子を特定し、特定したグループ識別子と利用者名をグループ情報データベースを管理する前記第2のサーバに対して送信する処理手段とを備え、
前記第2のサーバには、生体情報データベースとグループ情報データベースを構成する各要素を登録するための処理手段と、前記第1のサーバからの要求に応じてグループ情報データベースを更新する処理手段と、複合機からの送信されるグループ識別子と生体情報を用いることで特定の利用者を認証する処理手段とを備え、
前記複合機には、生体認証装置とグループ識別子を有し、利用者の生体情報を生体認証装置により読取り、読取った生体情報とグループ識別子を前記第2のサーバへ送信し、第2のサーバからの認証結果を受信する処理手段とを備えることを特徴とする。
また、前記第1のサーバと第2のサーバが同一のサーバで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、利用者がフリーアドレス環境下で特定の座席に座らない場合において、利用者の使用する業務端末から利用者名と座席位置を登録することにより、複合機を使用する際にグループを選択する必要が無くなる。このため、複合機の使用に際して簡易な入力操作で生体認証を行う事を可能となり、利用者の利便性向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態を示す情報処理システムの構成図である。
【図2】図1の生体情報データベースの説明図である。
【図3】図1のグループ情報データベースの説明図である。
【図4】図1の座席位置情報データベースの説明図である。
【図5】座席位置とグループとの関係図である。
【図6】座席位置によるグループ更新フロー図である。
【図7】生体認証による情報処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した生体認証情報処理システムの一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態を示す情報処理システムの構成図である。
この実施の形態の情報処理システムは、認証処理部1と登録処理部2とデータベース更新処理部3を備えたサーバ(B)4と、座席位置登録処理部6と座席位置更新処理部7を備えたサーバ(A)5と、利用者が使用する業務端末(たとえばノートPC)8と、生体認証処理部9を備えた複合機10から構成され、それぞれネットワークで接続されている。
サーバB(4)には、生体情報データベース41と、グループ情報データベース42が設けられている。
サーバ(A)5には、利用者がどの座席に在籍しているかを格納する座席位置対応テーブル51が設けられている。例えばサーバ(A)5の座席位置更新処理部はフリーアドレス環境下で利用者の在籍位置を特定するような既存の環境と組み合わせて利用することができる。
複合機9にはグループ識別子101が設けられており、生体認証装置10がUSB(UniversalSrialBus)インタフェース等の手段で接続されている。
サーバ(B)4には後述する生体情報データベース41とグループ情報データベース42が設けられている。
【0013】
図2は、生体情報データベース41に格納される利用者情報の一例を示す図である。
図に示すように利用者名201、アカウント名202、生体情報203の各データエリアから構成され、サーバ(B)4の持つ登録処理部2によって予め各要素は登録されているものとする。
【0014】
図3は、グループ情報データベース42に格納されるグループと利用者の割り当ての一例を示す図である。
図に示すように、グループ識別子301と利用者名201の各データエリアから構成される。この時、利用者名201はサーバ(B)4の持つ登録処理部2によって予め登録されているものとする。
グループ識別子301は後述する図5によって予め定められており、サーバ(B)4の持つ登録処理部2によって事前に登録され、サーバ(A)5の座席位置更新処理部6により更新される。
【0015】
図4は、座席位置対応テーブル51に格納される座席位置401とグループ識別子301の割り当ての一例を示す図である。
座席位置対応テーブル51は,例えば後述する図5によって定められた物理的な座席位置(A)501と座席位置(B)502を一つのまとまりであるグループ「2F−A」302として対応付けためのものであり、利用者数、座席数によりその対応は任意に変更する事が出来る。
図5は、グループ識別子301と座席位置401の物理的な関係の一例を示す図である。
例えば、座席位置(A)501および座席位置(B)502を任意の文字列「2F−A」302といったグループ識別子301でグループ化することとすることが出来る。
グループ化する座席数は、サーバ(B)4の認証処理部1の認証精度やサーバ(B)4が処理すべき複合機10からの同時アクセス数、図5におけるフロア構成や複合機の設置台数、座席に座る利用者の所属等により任意に設定されるものとする。このときグループ識別子301は他のグループ識別子と重複しないようにする事が必要である。
また、図5ではグループ識別子「2F−A」302に対して複合機(A)505が1台設置されているが、グループに対して設置する複合機は複数となっても良い。
【0016】
図6は、図1におけるグループ識別子301の更新に関する処理の概要を示すフローチャートである。
フリーアドレス環境下において、利用者は出社後に不特定な座席に座り作業を開始する。例えば、図5を例に説明すると、ある日は座席位置(D)504のいずれかの席に着き作業を行なったが、次の日は座席位置(A)501の席で作業を行なうという環境が考えられる(S601)。
作業のため業務端末を座席に設置し、座席に設置されたネットワークを接続し、業務端末を起動する(S602)。
業務端末起動後、利用者はサーバ(A)5にネットワークを通じてアクセスし、自身の利用者名201と座席位置401を登録する。利用者名201と座席位置401の登録は、利用者がサーバ(A)5が備えた座席位置登録処理部6にネットワークを介してアクセスすることで行う(S603)。
【0017】
次にサーバ(A)5が備えた座席位置更新処理部6が座席位置対応テーブル51を参照し、前述の処理で登録された座席位置401から、対応するグループ識別子301を検索する。検索の結果得られた特定のグループ識別子301と前述の処理にて登録された利用者名201をサーバ(B)4へネットワークを介して送信する(S604)。
サーバ(B)4が備えたデータベース更新処理部3にてサーバ(A)4から送信された利用者名201とグループ識別子301を受信し、グループ情報データベース42に対して利用者名201のグループ識別子301を更新する(S605)。
【0018】
図7は、図1において複合機10上で認証を行う処理の概要を示すフローチャートである。
利用者は自身の座席位置の最寄の複合機を使用するために、複合機10に接続された生体認証装置11を使用する(S701)。
複合機10に備えられた生体情報処理部9により、認証装置11を介して利用者の生体データが読み込まれ、サーバ(B)4が備えた認証処理部1が認識できる生体情報へと変換される(S702)。
【0019】
次に、変換された生体情報203は複合機10が備えたグループ識別子101とあわせ、サーバ(B)4へ送信される(S703)。
サーバB4は受信したグループ識別子101を基に、グループ情報データベース42より対応する利用者名201を検索する。検索結果として得られた利用者名201を基に生体情報データベース41より生体情報203を検索し、検索結果と複合機10から受信した生体情報を照合する(S704)。
【0020】
照合結果として生体情報203が一意に特定された場合、複合機10に対して利用者名201、もしくはアカウント名202を返送し、処理を終了する。また、照合結果として生体情報203が特定されない場合、複合機10に対して認証エラーを返送し処理を終了する(S705)。
【0021】
なお、上記実施形態においては、サーバ(A)5とサーバ(B)4は別装置としてネットワークを介して接続する例を挙げて説明したが、同一の装置として機能してもよい。また、本実施の形態では、生体情報データベース41やグループ情報データベース42はサーバ(B)4上に備えられるものとし、サーバB(4)上の認証処理部1にて認証が実施されることを例に挙げて説明したが、複合機10でこれらの処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0022】
1…認証処理部、2…登録処理部、3…データベース更新処理部、4…サーバ(B)、41…生体情報データベース、42…グループ情報データベース、5…サーバ(A)、51…座席位置対応テーブル、6…座席位置登録処理部、7…座席位置更新処理部、8…業務端末、9…生体情報処理部、91…グループ識別子、10…複合機、11…生体認証装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席位置対応テーブルを備えた第1のサーバと、グループ情報データベースおよび生体情報データベースを備えた第2のサーバと、生体認証装置が接続された複合機と、利用者が使用する業務端末とからなる生体認証情報処理システムであって、
前記第1のサーバには、利用者が使用する業務端末から座席位置と利用者名を登録させる処理手段と、利用者の座席位置とグループ識別子を対応付ける座席位置対応テーブルと、利用者の座席位置からグループ識別子を特定し、特定したグループ識別子と利用者名をグループ情報データベースを管理する前記第2のサーバに対して送信する処理手段とを備え、
前記第2のサーバには、生体情報データベースとグループ情報データベースを構成する各要素を登録するための処理手段と、前記第1のサーバからの要求に応じてグループ情報データベースを更新する処理手段と、複合機からの送信されるグループ識別子と生体情報を用いることで特定の利用者を認証する処理手段とを備え、
前記複合機には、生体認証装置とグループ識別子を有し、利用者の生体情報を生体認証装置により読取り、読取った生体情報とグループ識別子を前記第2のサーバへ送信し、第2のサーバからの認証結果を受信する処理手段とを備える
ことを特徴とする生体認証情報処理システム。
【請求項2】
前記第1のサーバと第2のサーバが同一のサーバで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の生体認証情報処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−191576(P2010−191576A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33716(P2009−33716)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】