説明

生分解性多層システム

少なくとも2つの層から作製された物品が開示され、ここで、第1層は、活性剤を含有しかつ少なくとも1つの第2層へ連結された生分解性水溶性支持体材料であり、第2層は、繊維の形態の生分解性しかし水不溶性の材料から作製されている。活性剤は、薬学的活性剤、化粧品、洗浄剤、農薬及び殺生物剤であり得る。物品は、水の効果に基づく少なくとも1つの活性剤の制御放出に役立つ。第2層の繊維構造は、水の流入及び/又は流出の速度の制御を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つ、好ましくは3つの層から作製された物品に関する。第1層は、活性剤を含み、好ましくは水溶性である。第2層は、水不溶性繊維から構成されている。繊維構造は、水の流入及び/又は流出の速度の制御、従ってさらに第1層からの活性剤の放出の制御を可能にする。
【背景技術】
【0002】
制御様式で活性剤を放出する物品の範囲は非常に広範囲である。これらは、(活性剤が多かれ少なかれ完全に放出されるとすぐに)捨てられ得る物品である。これに関連する不利益は、これらの使用済みの物品の処分及びごみ埋立て地におけるそれらの投棄についての必要性である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、周囲の領域へ制御様式で活性剤を放出することができ、意図される適用後、残っている構成要素が100%生分解性である、物品を提供することである。
【0004】
本発明のある特定の目的は、水との接触で、この間に物品の構成要素の顕著な分解が起こらずに、活性剤を放出することができる物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、少なくとも2つの層から作製された物品によって達成される。
【0006】
第1層は、支持体材料及び少なくとも1つの活性剤を含む。それは、水に膨潤性又は腐食性であるか、又は、好ましい態様を構成する場合、水に溶解性である。第1層に好適な支持体材料は、水に膨潤性、腐食性及び/又は溶解性でもある生分解性材料である。
【0007】
第2層は、繊維の形態である、水不溶性の、しかし生分解性の材料から構成されている。繊維構造は、水の流入及び/又は流出の速度の制御をもたらし得る。このようにして、第2層はまた、第1層からの活性剤の放出の制御を発揮し得る。1つの特定の態様において、第2層は、第1層へ強く結合され得る。
【0008】
さらなる好ましい態様において、物品(「多層システム」の形態)は、(第2層と同様に)水不溶性の、しかし生分解性の材料から構成されている第3層を含む。この第3層は、同様に、繊維の形態であり得るが、他の形態も可能である。例えば、この層はまた、フィルムの形態で実施され得る。
【0009】
好ましい態様において、第2層及び第3層は、一緒に結合され、第1層を完全に取り囲んでいる。このため、これら2つの層は、第1層よりも広い面積を有し、物品の全ての縁において第1層を越えて伸長している。
【0010】
少なくとも1つの第1活性剤含有層及び少なくとも1つの第2繊維層から作製された物品又は多層システムを製造する方法が、本発明によってさらに提供される。
【0011】
少なくとも1つの活性剤の制御放出のための、少なくとも1つの第1活性剤含有層及び少なくとも1つの第2繊維層から作製された物品又は多層システムの使用が、本発明によってさらに提供される。従って、少なくとも1つの活性剤の放出は、多層システムに対する水の作用に起因して起こる。記載される活性剤は、特に、薬学的活性剤、化粧品、洗浄剤、農薬及び殺生物剤である。
【0012】
物品は、少なくとも2つの層から構成されており、これは、それが少なくとも2つのシート様の重ねられた材料マスを含むことを意味すると理解される。
【0013】
第1層は、少なくとも1つの活性剤及び支持体材料を含む。第1層は、水に膨潤性、水に腐食性又は溶解性である。第1層の水溶性態様が好ましい。
【0014】
好適な活性剤は、特に、薬学的活性剤、化粧品、洗浄剤、農薬及び殺生物剤である。
【0015】
薬学的活性剤(薬物又は化学療法薬)は、活性な薬剤及び治療薬である。これらの物質は、関連する情報源、例えば、ドイツ薬局方又は“Red List”、Yellow List Pharmaindex及び同様のインデックスから当業者に公知である。好ましいのは、特に、外用され得る薬学的活性剤である。これらとしては、例えば、皮膚疾患(皮膚治療薬)又は創傷治癒のために使用される薬学的活性剤が挙げられる。従って、好ましくは、抗生物質、抗アレルギー性物質、消毒薬、抗ヒスタミン薬、抗疥癬薬、コルチコイド、止痒薬、タール製剤、ソラレン、レチノイド、光保護物質、角質溶解薬及び腐蝕薬、抗炎症薬、抗乾癬剤、抗細菌性活性剤、抗ウイルス性活性剤、殺真菌性活性剤(抗真菌剤)、表面麻酔薬及びステロイドが好適である。
【0016】
化粧品は、洗浄、ケア、保護、良い状態の維持、芳香、外観の変化のため又は体臭に影響を与えるための、もっぱら又は主に人体に対して又はその口腔内において外用されるように意図される物質又は物質から作製された調製物である。化粧品としては、特に、スキンケア用の物質、例えば、浴剤、皮膚ウォッシング及び洗浄剤、スキンケア剤、目の化粧品、リップケア剤、ネイルケア剤、インティメイトケア剤、及びフットケア剤;特定の効果を有する物質、例えば、光保護剤、スキンタンニング剤、脱色剤、デオドラント、アンチハイドロティック(antihydrotic)、脱毛剤、シェービング剤、及び香水;歯及び口腔ケア用の物質、例えば、歯及び口腔ケア剤、義歯ケア剤及び義歯接着剤、並びにまたヘアケア用の物質、例えば、洗髪剤、ヘアケア剤、毛髪強化剤、整髪剤、及びヘアカラーリング剤が挙げられる。化粧品の調合に使用される化粧品活性剤及び助剤についての情報は、化学工業H. Ziolkowsky GmbH, Augsburgについて発行者によって発行された“Kosmetikjahrbuch[化粧品年鑑]”において、並びにまた、The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association, Washingtonによって両方とも発行された“International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook”及び“CTFA International Buyers' Guide”において、当業者によって見つけられ得る。さらなるハンドブックは、H. P. Fiedler: “Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete[製薬、化粧品および関連分野についての助剤の語彙目録]”, Editio Cantor-Verlag, Aulendorf (1996)である。特定の間隔で定期的に出版されるこれらの著作を、それらの全体、特に、それらの機能(意図される用途)についての物質の分類及び問題の物質の命名について、参照のこと。
【0017】
洗浄剤は、特に、非常に広範囲の使用分野及びそれらに依存する非常に様々な組成を有する界面活性剤含有製剤である。最も重要な群は、家庭用クリーナー、産業用(技術用)及び施設用(商業用)クリーナーである。アルカリ性、中性及び酸性洗浄剤は、pHに従って区別される。洗浄剤としては、汎用クリーナー、並びに専用洗浄剤、例えば、自動車ケア剤、オーブンクリーナー、脱灰剤、ウィンドウクリーナー、しみ抜き剤、フロアケア剤、ガラスセラミックホブクリーナー、炉床ケア剤、レザーケア剤、金属ポリッシュ、家具ケア剤、パイプ洗浄剤、サニタリークリーナー、研磨剤、カーペットケア剤、及びWCクリーナーが挙げられる。
【0018】
洗浄剤の主成分は、界面活性剤である。当業者は、界面張力を低下させるそれらの能力のために、これらの界面活性物質を承知している。界面活性剤は、少なくとも1つの疎水性分子部分及び少なくとも1つの親水性分子部分を有する両親媒性(二官能性)化合物である。疎水性基は、大抵の場合、可能な限り線形である8〜22個の炭素原子を有する炭化水素鎖である。特定の界面活性剤はまた、疎水性分子部分として、(ジメチル)シロキサン鎖(シリコン界面活性剤)又はペルフルオロ化炭化水素鎖(フッ素界面活性剤)を有する。親水性基は、負若しくは正に帯電した(水和可能な)又は中性極性頭部基である。界面活性ベタイン又はアミノ酸界面活性剤(両性又は双性イオン性界面活性剤)は、1分子中に負及び正に帯電した基を有する。界面活性剤の基本特性は、界面への配向吸着、及びミセルを提供する凝集、及びリオトロピック相の形成である。
【0019】
界面活性剤は、それらの親水性頭部基の性質に従って分類される:
【表1】

【0020】
最も重要な(アニオン性)界面活性剤としては、石鹸、直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、脂肪アルキルポリエチレングリコールエーテルスルフェート(FAES)、例えば、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、脂肪アルコールスルフェート(AS、FAS)が挙げられ、最も重要な(非イオン性)界面活性剤としては、脂肪アルコールポリグリコールエーテル(脂肪アルコールエトキシレート、FAEO)及びアルキルフェノールポリグリコールエーテル(APEO)が挙げられる。
【0021】
農薬及び殺生物剤は、農業、園芸において及び家庭で使用される化学物質、例えば、肥料、除草剤、殺菌剤、殺虫剤及び他の作物保護剤、並びに有害生物防除剤、忌避剤、誘引剤、植物処理剤、貯蔵保護剤、植物成長剤及び植物阻害剤、サイレージ剤(silaging agent)及び防腐剤、並びにまた土壌改良剤である。当業者は、例えば、“The Pesticide Manual”, 9th edition, The British Crop Protection Council, (1991)、又はFederal Office for Consumer Protection and Food Safetyによって一定の間隔で発行される“List of approved crop protection agents”から、これらの物質を承知している。
【0022】
活性剤は、支持体材料に溶解又は分散される。活性剤は水溶性である必要はないが、水溶性活性剤が好ましい。物品中に存在する活性剤の量は、特定の意図される用途に本質的に依存する。個々の物品には、活性剤が90質量%までロードされ得る。好ましいのは、40〜70質量%の活性剤ローディングである。活性剤の含有量は、特に非常に効果的な活性剤の場合、当然より低くなり得る。
【0023】
第1層について好適な支持体材料は、水に膨潤性、腐食性及び/又は溶解性である生分解性材料である。これらの材料は、天然起源のものであるか、又は合成によって製造される、ポリマー材料である。
【0024】
生分解性は、問題の材料が、生物学的に活性な環境(コンポスト、消化汚泥、土、廃水)中において微生物によって天然の代謝産物へ分解され得ることを意味すると理解される。生分解性の程度は、好気性又は嫌気性培地中における分解を測定することによって決定される。好気性培地においては、CO2形成及び/又はO2消耗が測定され、嫌気性培地においては、CH4形成及び/又はCO2形成が使用される。これらの測定方法は、OECDテスト301A−F又は対応の均等な方法から当業者に公知である。これらによれば、これらの材料は、好気性条件下での28日テストにおいて、生分解性の最大理論値の60%超がO2消費及び/又はCO2形成のために達成される場合、「完全に生分解性」である。
【0025】
本発明の文脈内で、特に、整合EN規格EN13432(「合成製品のコンポスト化性(compostiblity)の実証」)の基準に適合する合成材料もまた、「生分解性」と理解される。
【0026】
本明細書の文脈内で、「水に溶解性」は、完全な水和が起こり、溶液、即ち、溶媒としての水と「溶解される材料」としての支持体材料及び/又は活性剤との均一混合物が形成されることを意味する。
【0027】
用語「水に膨潤性」は、水との接触で、水分子が生分解性材料に浸透し、これらが、体積及び形状の変化をもたらし、ゲルを形成すること意味する。最終的に膨潤性物質が溶液又は懸濁液へ変わる無制限の膨潤とは対照的に、本明細書の文脈内で、用語「水に膨潤性」は、形成されたゲルが凝集性のままである制限された膨潤を意味すると理解される。
【0028】
用語「水に腐食性」は、生分解性材料が、水との接触で、より小さな単位又はセグメントへ崩壊し得ることを意味すると理解される。これらは、容易に機械的に分離され得、例えば、水で洗い流され得る。この点で、材料は、水に完全に溶解性又は水に膨潤性である必要はない。特性「腐食性」についての実際的なガイドは、3ヶ月間コンポスト化し、続いて2mm篩いを用いて篩い分けした後に、元の質量に基づいて10%以下の残留物が残されなければならないという詳細である。
【0029】
「水に溶解性である生分解性材料」としては、水溶性セルロース、セルロース誘導体、及びポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルピロリドン(PVP)、PVAとPVPとのコポリマー、並びにまたプルランが挙げられる。ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が、好ましいセルロース誘導体であり、ここで、水中におけるそれらの溶解挙動はまた、それらの重合及び任意の可能な架橋の程度に依存する。従って、これらのポリマーは、それらが比較的低い重合度を有する場合、より迅速に水に溶解する。
【0030】
「水に膨潤性である生分解性材料」としては、水に膨潤性であるセルロース、デンプン、ゼラチン、ガラクトマンナン、水膨潤性セルロース製品、トラガカント、ポリグリコシド、ポリアミド、ポリアクリルアミド、カルボキシビニルポリマー、寒天様藻類製品、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との混合ポリマー、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、グアー粉末、アラビアゴム、デキストリン、デキストラン、微生物的に得られる多糖ゴム、合成的に得られる多糖、メチルグルコース誘導体、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ポリガラクツロン酸誘導体、ペクチン、及びペクチンアミドが挙げられる。
【0031】
第1層は、コンパクト層の形態で、例えばフィルムとして存在し得る。それはまた、気泡を有する固体フォームの形態で、又は不織布として存在し得る。好ましいのはフィルム形態である。
【0032】
好ましくは、第1層は可撓性である。
【0033】
第1層の寸法は、主として所望の意図される用途によって決定される。これは、寸法は、活性剤の必要量及び使用部位に応じて選択されることを意味する。従って、寸法の選択について技術的制限は、実際上ない。しかし、物品は取り扱いに可能な最も有利な寸法を有するべきでもあるので、以下の寸法が好ましい:第1層は、12μm〜5mm、好ましくは50μm〜2mm、特に好ましくは70μm〜180μmの厚みを有し得る。幅は、ここで、5mm〜30cm、好ましくは2cm〜12cmであり得る。これらの寸法は、長さについても有効である。ここで言うまでもないが、第1層が正方形又は円形である場合、これらの値は等しい。そうでなければ、前記用語は、長さは幅よりも長く、これら2つの広がりは厚みよりも常に大きいように解釈されるべきである。
【0034】
界面活性剤が第1層に活性剤として存在する場合、この層は、40〜60g/m2、好ましくは55〜60g/m2の面積重量を有し得る。オイル(即ち、親油性活性剤、即ち、高級脂肪酸の混合トリグリセリドから本質的になる植物性又は動物性の脂肪油)が第1層に存在する場合、後者は、200〜210g/m2の面積重量を有し得る。
【0035】
物品の第2層は、水不溶性であるが、水に対して不透過性(impermeable)である。この層は、同様に、生分解性材料から構成されている。
【0036】
本明細書の文脈内で、「水不溶性」は、第2層が水との接触で「水中において腐食する」ことも溶液を形成することもないことを意味する。
【0037】
用語「水に対して透過性」は、水分子が、液体及びまた気体の形態で第2層を通過し得ることを意味すると理解される。
【0038】
「水に不溶性である生分解性材料」としては、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル(例えば、Bionolle(登録商標))、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリグリコール酸、多糖(キチン)、キトサン、ポリペプチド及びコラーゲン、並びにまた対応のヒドロキシ酸のコポリマーが挙げられる。好ましいのは、ポリ乳酸及びポリグリコール酸である。
【0039】
第2層が水に対して透過性となるように、生分解性水不溶性材料は、一緒に結合されてシート材料が形成されている、繊維の形態である。このシート材料は、一方では不織布であり得、他方では織物又は編物であり得る。
【0040】
1つの特定の態様は、ポリラクテートとセルロースとの材料であり、ここで、これら2つの成分のフラクションは、ポリラクテート30〜100質量%、セルロース0〜70質量%で、変化し得る。これに関連して、これら2つの材料の繊維から製造されたシート材料(好ましくは、不織布)において、これら2つの成分のうちの1つの濃度が変化し得る。従って、1つのこのような不織布において、上側は、完全にポリラクテートから形成され得、一方、その下側において、それは、セルロースとポリラクテートとの混合物から構成される。この「内部濃度勾配」は、特に、水に対するその透過性及び密着されるその能力に関する、対応の不織布の特性に影響を与え得る。
【0041】
繊維は、原則として、連続的な材料ストランドである。天然起源の生分解性材料の繊維の長さ及び直径はそれらの起源(例えば、羊毛、絹、綿)に従って制限されるが、合成生分解性材料の繊維の長さ、直径及び特に繊維断面は、それらの製造方法に従って変化し得る。従って、これらの繊維の場合、12μm未満の直径が好ましい。
【0042】
一般に、個々の繊維は、統合の間、湿式又は乾式紡糸法で円形紡糸ノズルホールから紡糸されるので、繊維断面は、種々の形態、即ち、円形形状に加えて、さらに豆又は腎臓形状だけでなく、ギザギザ、三角形、長方形などの、種々の形態をとり得る。元の形状のさらなる修飾が、精製プロセスによって後で達成され得る。溶融紡糸の間、例えば、三角形、三小葉又は星形の、種々のプロフィール紡糸ノズルを使用することによって、ターゲッティング様式で、繊維断面を修飾することが可能であり、この結果として、繊維は、構造化されかつ体積に比べて大いに増加された表面を得る。光沢、色彩効果、伸縮性及び手触りに関して、これらのプロファイル繊維は、かなり改善された特性を有する。特殊な形状のノズル又はキャビティーを使用し、繊維の内部へ空気を含ませながら、紡糸することによって、中空繊維が製造される。
【0043】
第2層の繊維構造は、水が制御様式で第2層に浸透及び通過することができることに寄与する。これは、繊維が織物又は不織布を提供するようにプロセッシングされることに起因して可能である。織物は、長軸方向の糸(縦糸)及び交差する糸(横糸)から構成された(少なくとも製造中は長方形の)シート材料を意味すると理解される。対照的に、不織布は、製造方法によって決定される個々の繊維又は糸のポジショニングによって織物とは相違している。不織布は、それらの位置が統計学の方法を使用してのみ記載され得る繊維からなる。繊維は、互いに対してランダムに不織布中に存在する。
【0044】
このタイプのランダム繊維不織布は、種々のプロセスを使用して乾式又は湿式状態で製造される。乾式作製は、空気流中において行われ、これは、均一な繊維分布を達成するために静電気チャージングによってしばしば支援される。湿式作製は、水中において行われ得る。ローラーカードにおけるコンデンサーローリング又はランダム化も公知である。緻密度、即ち、第2層の不織布の繊維又はファブリック糸の密度は、次いで、この層における水の流入及び/又は流出の速度を本質的に決定する。
【0045】
第2層は、好ましくは、活性剤を含まない。しかし、それは活性剤に対して透過性である。
【0046】
第1層及び第2層は、強く一緒に結合され得る。このために、例えば、第1層は、接着剤を添加することによって接着性に仕上げられ得る。しかし、2つの層は、第1層と第2層との間に配置される追加の接着層の助けを借りて結合され得る。両方の場合において、使用される接着剤は、好ましくは、生分解性接着剤である。生分解性接着剤としては、例えば、ラテックス(ゴムの木の乳白色の樹液)が挙げられる。第1層及び第2層の貼り付けは、全表面にわたってであり得;しかし、それはまた、点でのみ、又は(断面において適切である場合のみ)2つの層の又は面積がより狭い層の輪郭に沿って、行われ得る。
【0047】
特に好ましい態様において、物品は3層の形態であり、第1層は、第2層と第3層との間にあるか、又はこれらの両方によって取り囲まれている(「多層システム」として)。これに関連して、特定の態様において、第3層は第2層と同一であり得る。この場合、第2層が第1層を完全に取り囲むことも可能であり、これは、管状のバッグがこのようにして製造されるパッケージング機を使用する公知の形成、充填及び密封法の場合のような製造によって達成され得る。
【0048】
第3層として、生分解性材料の不透水性層を使用することも可能である。このために、生分解性材料は、フィルムの形態であり得る。
【0049】
さらなる態様において、物品は、好ましくはハイロフト不織布の形態の、第4層を含み得る。ハイロフト不織布は、比較的大きな体積について重量が非常に軽い不織布を意味すると当業者によって理解される。このような不織布層の厚みは、50〜800g/m2の面積重量を伴って1〜8cmの範囲内にあり得る。この第4層は、第1層と第2層との間に、しかしまた第1層と第2層との積層体の上又は下にも配置され得る。それはまた、(物品が第3層を有する場合)、第1層と第3層との間に配置され得る。
【0050】
特定の態様において、物品は、5質量%未満、好ましくは2質量%未満の残留湿気を含む。物品は、全体として、可撓性であり、これは、個々の層の可撓性のためであり得る。
【0051】
物品は、微生物の効果に対する耐久性を延長する防腐剤を含み得る。このような防腐剤としては、特定の殺生物剤、発芽防止剤、さらにまた重金属塩、有機酸、例えば、サリチル酸、安息香酸、ソルビン酸、プロピオン酸、ヒドロキシコハク酸、プロピオン酸、ホウ酸、ギ酸、フマル酸及び他の酸並びにまたこれらの酸の塩、さらにまた、フェノキシエタノール、ジアゾリジニルウレア及び4−ヒドロキシ安息香酸並びに4−ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。しかし、特定の態様において、物品は防腐剤を含まず、特に、それは、フェノキシエタノール、4−ヒドロキシ安息香酸及び/又は4−ヒドロキシ安息香酸のエステル(パラベン)を含まない。防腐剤を含まないことは、それらがコンポスト化の妨げとならないという利点、即ち、使用済みの物品の生分解性を有する。
【0052】
その使用の間、物品は水と接触する。これは、第2層を通って入り、第1層と接触する。支持体材料の特性に従って(即ち、膨潤性、腐食性又は溶解性に依存して)、第1層の溶解のプロセスが始まり、従って活性剤の放出制御も始まる。
【0053】
活性剤及び支持体材料に加えて、第1層は、さらなる成分、例えば、充填剤、色素、芳香剤、矯味矯臭剤、乳化剤、抗酸化剤、顔料、及び上記に明示したハンドブックから当業者に公知である同様の助剤を含み得る。下記の基本製剤は、さらなるこのような物質をそれらの機能とともに列挙する。このタイプの物質は、第2層及び/又は第3層にも存在し得る。
【0054】
不織布の団結は、熱的に、ニードル結合並びにまたゴム結合によって行われ得る。
【0055】
物品について可能な適用分野は、活性剤の選択に依存する:医学的適応、美容的処置、家庭、病院及び産業における洗浄及び消毒、並びにまた作物保護剤の投与が、考えられる。好ましくは、このために、物品は適切な量の水と接触され、これは、第1層の溶解を引き起こし、活性剤の放出を可能にする。第1層の溶解挙動の結果として、活性剤の放出速度を制御することが可能となる。徐々にのみ溶解する第1層は、物品が長期間にわたって比較的一定の速度で活性剤を放出することを意味する。
【0056】
物品が適切な量の水と接触した後、それは、処理される物/表面と接触させられ得る。このようにして、活性剤が所望の部位(例えば、皮膚、粘膜、衣類、家具、フローリング、窓ガラス、車体、皿、農業的に使用される土壌など)で作用し得ることが確実にされる。
【0057】
第1層及び第2層は、好ましくは、2つの別個の作業工程で製造され、次いで一緒に結合される。これは、第1層と第2層とを貼り付けることによって行われ得る。しかし、3層から構成されている物品の場合、第1層はまた、第2層が縁で突き出るように第2層上へ配置され得、第3層(これは、同様に第1層を越えて縁で突き出る)でカバーされた後、第1層と第3層との結合が行われる。縁で突き出ている第1層及び第3層の領域のこの結合は、例えば、接着、ニードル結合、裁縫;熱溶接(thermowelding)、ブローイング、ウォータージェット処理、化学結合又はニードル結合によって行われ得る。層を結合するための方法のある特定の態様は、超音波溶接(ultrasonic welding)である。
【0058】
本発明を以下の実施例によってより詳細に記載する。
【0059】
実施例1:化粧品適用のための活性剤としてオイルを含む物品(「オイルパッド」)の製造についての一般的な説明
第1層を製造するために、初めに、乳化剤又は2つ以上の乳化剤の混合物、グリセロール及び水を導入し、75℃で、オイル(即ち、親油性特性を有する活性剤)又は異なるオイルの混合物を、撹拌しながら徐々に添加した。形成した素材を、撹拌しながら40℃へ冷却し、最後に香料を混合した。
【0060】
第2の容器中において、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを、激しく撹拌しながら水に溶解させた。4%濃度のカラゲーン水溶液、コーンスターチ、及び前もって作製したオイル混合物を添加し、混合物を、最大撹拌速度で、20分間、発泡させた。得られた素材を、ポリエチレンがコーティングされた紙支持体のシリコン処理面上へ、1000μmの厚みで、コーティングボックス内において、コーティングし、実験用乾燥キャビネット中において約90分間70℃で乾燥させた。
【0061】
得られた乾燥フォーム(第1層)を切断し、支持体材料から取り除き、そのエッジが約1cmより長い1枚の不織布(第2層)の中央に配置した。これを、同一サイズの不織布のさらなる層(第3層)でカバーし、2つの外層を熱溶接によって結合させた。
【0062】
実施例2:洗浄目的のための界面活性剤を含む物品の作製
第1層を製造するために、界面活性剤含有洗浄混合物(Desinol PG;市販の界面活性剤混合物)9.53g及び同量のカプリリル/カプリルグルコシド(CCG)を、激しく撹拌しながら、25%ポリビニルアルコール水溶液(Mowiol 8−88)52gへ添加した。次いで、香料0.19g及びサリチル酸ナトリウム0.06g及び安息香酸ナトリウム0.134gを添加し、混合物を光学的均質性まで撹拌した。得られた泡状素材を、ポリエチレンがコーティングされた紙支持体のシリコン処理面上へ、300μmの厚みで、コーティングボックス内において、コーティングし、実験用乾燥キャビネット中において約20分間70℃で乾燥させた。
【0063】
得られた乾燥フォーム(第1層)を3cmのエッジ長さを有する正方形切片へ切断し、支持体材料から取り除き、そのエッジが約1cmより長い1枚の不織布(混合比35:65でポリラクテート/セルロースから作製)(第2層)の中央に配置した。これを、同一サイズの不織布のさらなる層(第3層)でカバーし、2つの外層を熱溶接によって結合させた。
【0064】
使用のために、3層からなる物品(「界面活性剤パッド」)を、水中に浸すことによって水約10mlで処理し、手で優しく揉むことによって活性化させ、これによって、界面活性剤が物品から出ることがより容易となった。(例えば、顔の皮膚に対して)優しく押し当てることによって、皮膚に対する界面活性剤の効果が、可能となった。
【0065】
種々の適用について、物品を製造することができ、これらを、各場合において、下記の一般的な基本製剤によって記載する。表に、物質及び物質の群、それらの機能、並びにまた質量%での量的フラクション(固体の最終プロダクト、即ち、第1層中)を明記する。
【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
【表6】

【0071】
【表7】

【0072】
【表8】

【0073】
【表9】

【0074】
【表10】

【0075】
【表11】

【0076】
【表12】

【0077】
【表13】

【0078】
【表14】

【0079】
【表15】

【0080】
【表16】

【0081】
【表17】

【0082】
【表18】

【0083】
【表19】

【0084】
【表20】

【0085】
基本製剤に従う第1層の作製を、下記の一般的スキームに従って行った:
他の成分をフィルム形成剤混合物(例えば、25%濃度のポリビニルアルコール(PVA)水溶液、又は、4%濃度のカラゲナン溶液と、25%濃度のヒドロキシプロピルセルロース溶液と12.5%濃度のヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液との混合物)へ量り取った。全素材を光学的均質性まで撹拌した。ここで、素材の粘度は、必要に応じて、水を添加することによって調節することができ、次いでそれを激しい撹拌によって泡立てることができた。泡立てられた素材を、プラスチック又は紙から作製された支持体フィルムのシリコン処理面上へ、所定の層厚みで、コーティングボックスの助けを借りて、コーティングした。層厚みは、5mmまで、好ましくは2mmまでとすることができた。特に好ましいのは、200〜500μmの層厚みであった。
【0086】
このようにして作製された層状フォームを、次いで、70℃で約20分間乾燥した。乾燥後、フォームを、さらなるプロセッシングのために、即ち、第2層(及び必要に応じて第3層)でカバーし、必要に応じて、そこへ結合させた。その後、物品は、さらなる製剤化についていつでも準備できている状態であった。
【0087】
乾燥フォームの形態の第1層の作製は好ましい態様であり、しかしそれに対する限定とみなされるべきではないことが、単に完全のために、言及され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの層から作製された物品であって、ここで、
a)第1層が、生分解性支持体材料であり、活性剤を含有し、水に膨潤性、腐食性又は溶解性であり、
b)第2層が、水に対して透過性である繊維の形態の生分解性水不溶性材料から構成されている、
物品。
【請求項2】
第1層の生分解性支持体材料が、天然起源のものであるか、又は合成によって製造されることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
第1層の生分解性支持体材料が、セルロース、セルロース誘導体及びポリビニルアルコール(PVA)を含む群から構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
第1層が、コンパクトな層、固体フォーム又は不織布の形態であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の物品。
【請求項5】
第1層が、12μm〜5mm、好ましくは50μm〜2mmの厚み、並びに5mm〜30cm、好ましくは2cm〜12cmの幅及び長さを有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の物品。
【請求項6】
第1層が、薬学的活性剤、化粧品、洗浄剤、農薬及び殺生物剤の群からの少なくとも1つの活性剤を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の物品。
【請求項7】
第2層の生分解性材料が、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリグリコール酸、多糖、キチン、ポリペプチド、コラーゲン、特定のヒドロキシ酸のコポリマー、好ましくはポリ乳酸及びポリグリコール酸を含む群から構成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の物品。
【請求項8】
第2層の生分解性材料が、好ましくはポリラクテート30〜100質量%及びセルロース0〜70質量%のフラクションで、ポリラクテート及びセルロースから構成されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の物品。
【請求項9】
第2層が、不織布の形態のシート材料として存在することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の物品。
【請求項10】
第2層が、織物又は編物の形態のシート材料として存在することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の物品。
【請求項11】
第3層を有し、第1層が第2層と第3層との間にあり、第1層がこれら2つの層によって取り囲まれていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の物品。
【請求項12】
第1層が、生分解性支持体材料であり、活性剤を含有し、水に膨潤性、腐食性又は溶解性であり、第2層が、水に対して透過性である、繊維の形態の生分解性水不溶性材料から構成されている、少なくとも2つの層から作製された物品を製造する方法であって、第1層及び第2層が2つの別個の作業工程で製造され、次いで一緒に結合されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
水の作用での活性薬剤の制御放出のための、第1層が、生分解性支持体材料であり、薬学的活性剤、化粧品、洗浄剤、農薬及び殺生物剤の群からの少なくとも1つの活性剤を含有し、水に膨潤性、腐食性又は溶解性であり、第2層が、水に対して透過性である、繊維の形態の生分解性水不溶性材料から構成されている、少なくとも2つの層から作製された物品の使用。

【公表番号】特表2010−523746(P2010−523746A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501429(P2010−501429)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002620
【国際公開番号】WO2008/122398
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(509275781)アイシーエス・イノベイティブ・ケア・システムズ・アンダーナッハ・ゲーエムベーハー (3)
【出願人】(507310662)ドクトーア・シューマッハー・ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】