説明

産業用ロボットの制御方法

【課題】ワークが特徴部位を持たない平面または曲面であってもレーザセンサによって移動目標位置及び目標姿勢を算出することができ、教示位置及び姿勢を補正することができる産業用ロボットを提供する。
【解決手段】現在位置と教示位置との間を予め複数の移動目標位置に分割して、ロボットのツール先端点を前記移動目標位置に順次移動させながら前記教示位置に到達させる産業用ロボットの制御方法において、前記移動目標位置を、前記ツール制御点の進行方向を決めるベクトルである基準方向ベクトルと、前記進行方向の前方に配置されたレーザセンサによって前記基準方向ベクトルの方向にあって前記ツール制御点の現在位置から先行した位置において検出されたワーク表面からの高さ方向距離と、に基づいて算出する。ツールの目標姿勢は、ワーク表面からの高さ方向距離を求める基準軸に基づく予め定められた姿勢である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットの制御方法に関し、特にロボットの手首部に取り付けられたレーザセンサによって作業線をリアルタイムにトラッキングし、作業線に対するツール制御点の位置と姿勢とを維持することができる産業用ロボットの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ティーチングプレイバック方式を採用した産業用ロボットにおいては、ロボットを現在位置から作業者が教示した教示位置に移動させる方法として、現在位置と教示位置との間を予め複数の移動目標位置(補間点)に分割して軌道計画を行い、ロボットのツール制御点を複数の移動目標位置に順次移動させながら最終的に教示位置に到達させる手法が一般的に用いられている。
【0003】
しかしながら、上記したティーチングプレイバック方式のロボットは作業者が教示した位置姿勢を忠実に再現する能力しか持ち合わせていないため、ワーククランプ治具の締め付け誤差が生じたりワーク形状が不均一だったりすると、作業が行われるべき作業線が教示した作業線とずれてしまうために、作業者が意図したとおりの溶接、切断等の作業が行えないという問題がある。近年では、この問題を解決するために、ロボットの手首部等にレーザセンサを取り付け、公知のリアルタイムトラッキング方式によって、溶接線等の作業線がずれたとしても実際の作業線に沿うようにロボットを移動させながら所定の作業を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
公知のリアルタイムトラッキング方式では、レーザセンサによってワークの特徴部位をスキャンし、特徴部位の位置あるいは特徴部位までの距離を検出することによってロボットの教示軌道を補正すると同時に、ワークの特定の面方向あるいは作業線方向等に基づいてロボットの姿勢を補正している。
【0005】
図10は、ロボットにレーザセンサを取り付けて、ワークの開先をトラッキングしながらアーク溶接を行う様子を示した図である。
【0006】
同図において、図示しないマニピュレータが把持しているツール43に取付部材44を介して、ツール43に先行する位置に配置されるようにセンサヘッド45が取り付けられている。ツール43が作業線42の方向に移動する間、センサヘッド45はワーク41上の作業線42(開先)を横切るようにレーザ光46を繰り返し照射することによってスキャンを行いながら、実際の作業線に沿うように位置と姿勢を逐次補正する。
【0007】
以下、従来技術の動作を説明する。
【0008】
図11(a)及び(b)を参照して、まず位置の補正方法について説明する。
【0009】
同図(a)は、センサヘッド45が撮像した2次元画像のイメージ図であり、同図(b)は、連続して撮像した2次元画像を繋ぎ合わせることによって、ワーク41上の作業線42(図10)に沿って軌跡が生成されることを表したイメージ図である。同図(a)において、レーザ光の反射によって映し出された複数のサンプリング点51を繋ぎ合わせることによって、開先形状輪郭線50が生成されている。開先形状輪郭線50は、図10のB−B断面図に近い形状であり、図10の作業線42の方向に向かって見たイメージ図である。
【0010】
レーザセンサは、開先形状輪郭線50の形状と、ロボット制御装置に予め設定されている開先形状照合データとをパターンマッチングの手法によって比較し、開先形状を特定する。開先形状を特定した後は開先形状照合データに記憶されている特徴点の位置を抽出し、開先形状輪郭線50の線上の該当する位置に付与する。特徴点の位置は、例えば開先形状が重ね継ぎ手であれば、「上板の角の位置」、「上板の角から板厚分下がった位置」等というように開先形状照合データ内で作業者が予め定めておくことができる。
【0011】
即ち、同図(a)の場合は、「上板の角から板厚分下がった位置」に特徴点52を付与する。そして、センサヘッド45が移動しながら繰り返し撮像し処理する度に付与される複数の特徴点を繋ぎ合わせることによって、同図(b)に示すように、ワーク41上に軌道55を得ることができる。レーザセンサは特徴点52を移動目標位置とし、その位置座標値を算出してロボットに通知する。ロボットはツール制御点を複数の移動目標位置に順次移動させていくことによって、位置の補正を行う。
【0012】
次に、姿勢の補正方法について説明する。
【0013】
レーザセンサが、基準軸53を特徴点52上に付与する。基準軸53は、特徴点52と同様に、ロボット制御装置に予め設定されている開先形状照合データに定義されている。すなわち、特徴点52をパターンマッチングの手法によって特定された開先形状に基づいて付与するのと同様に、基準軸53も開先形状に基づいて決定し、付与する。例えば、開先形状を重ね継ぎ手と特定した場合は、同図(a)に示す位置に基準軸53を付与する。次に、基準軸53に対する予め定められた目標相対角度54を与える。そして、レーザセンサは基準軸53と目標相対角度54と移動目標位置への進行方向とに基づいて姿勢座標値を算出して、ロボットに通知する。ロボットは複数の移動目標位置へ移動すると共に、ツール姿勢も変化させていくことによって、姿勢の補正を行う。
【0014】
このように、従来技術においては、まず、レーザヘッドにより撮像された画像に基づいて、レーザセンサがワーク上の特徴点を決定する。次に、レーザ光の反射光の角度やセンサヘッド内部の受光位置等に基づいてレーザセンサが特徴点の位置座標値を算出し、移動目標位置とする。そして、レーザセンサが算出した位置座標値に基づいて、ロボットがツール制御点を移動目標位置に移動させる。これらのステップを繰り返すことによって位置の補正を行っている。また、レーザヘッドにより撮像された画像に基づいて、レーザセンサが特徴点上に基準軸を付与する。次に、基準軸に対して、予め定められた目標相対角度を与える。そして、基準軸に対する目標相対角度と移動目標位置への進行方向とに基づいて、レーザセンサが移動目標位置における姿勢座標値を算出する。この姿勢座標値の算出を移動目標位置毎に行うことによって姿勢の補正を行っている。すなわち、移動目標位置における位置座標値及び姿勢座標値をレーザセンサ自身が算出し、ロボットに通知することによって、位置と姿勢の補正を行っている。
【特許文献1】特開平10−034334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述した位置及び姿勢の補正のための移動目標位置及び目標姿勢の算出はワークに特徴部位があることが前提となっており、後述するように、ワークが特徴部位を持たない平面または曲面である場合は、特徴部位を捉えることができない。
【0016】
図12(a)は、ロボットにレーザセンサを取り付けて、平面ワーク上の作業線を補正する様子を示した図である。同図(b)は、同図(a)の平面ワークを曲面ワークに置き換えた図である。同図(a)及び(b)において、ワーク41、作業線42、ツール43、取付部材44、センサヘッド45、レーザ光46は図10と同様であるので説明を省略する。
【0017】
図13は、図12(a)及び(b)の構成時にセンサヘッドが撮像した2次元画像のイメージ図であり、複数のサンプリング点51を繋ぎ合わせて、開先形状輪郭線50を生成したものである。同図に示すように、ワークが特徴部位を持たない平面または曲面である場合は、複数のサンプリング点51を繋ぎ合わせても開先形状輪郭線50は直線にしかならないため、特徴点を決定することができない。すなわち、移動目標位置及び姿勢を決定することができないという問題がある。
【0018】
このように、ワークが特徴部位を持たない平面または曲面である場合は、特徴部位を捉えることができないため、これまでレーザセンサによる補正の対象外とされてきた。
【0019】
本発明は、ワークが特徴部位を持たない平面または曲面であってもレーザセンサによって移動目標位置及び目標姿勢を算出することができ、位置及び姿勢をワークに沿って補正することができる産業用ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、第1の発明は、
現在位置と教示位置との間を予め複数の移動目標位置に分割して、ロボットのツール制御点を前記移動目標位置に順次移動させながら前記教示位置に到達させる産業用ロボットの制御方法において、
前記移動目標位置を、前記ツール制御点の進行方向を決めるベクトルである基準方向ベクトルと、前記進行方向の前方に配置されたレーザセンサによって前記基準方向ベクトルの方向にあって前記ツール制御点の現在位置から先行した位置において検出されたワーク表面からの高さ方向距離と、に基づいて算出することを特徴とする産業用ロボットの制御方法である。
【0021】
第2の発明は、
第1の発明に記載の基準方向ベクトルは、前記ツール制御点が現在位置に至るまでの軌道における接線方向ベクトルであることを特徴とする産業用ロボットの制御方法である。
【0022】
第3の発明は、
前記移動目標位置におけるツールの目標姿勢は、前記ワーク表面からの高さ方向距離を求める基準軸に基づく予め定められた姿勢であることを特徴とする第1又は第2の発明に記載の産業用ロボットの制御方法である。
【0023】
第4の発明は、
移動開始位置における前記基準方向ベクトルは、前記教示位置に向かう教示方向ベクトルであることを特徴とする第1又は第2又は第3の発明に記載の産業用ロボットの制御方法である。
【発明の効果】
【0024】
第1の発明及び第2の発明によれば、ワークが特徴部位を持たない平面または曲面であってもレーザセンサによって移動目標位置を検出することができるので、ワークの設置位置に誤差が生じている場合等でもツール制御点をワーク表面に沿ってトラッキングさせることができる。例えば、平面または曲面ワーク上に加工された特徴のない加工位置(例えば浅い凹凸のスポット痕等)を検査する等のシステムにおいては、検査ツール先端を所定の高さに保つと同時に加工位置に対して垂直に押し当てる技術が要望されているが、本発明を適用すれば、検査ツールをワークに対して常に所定の高さに保つことができる。
【0025】
第3の発明によれば、第1の発明による目標位置の検出に加えて、目標姿勢をも検出することができるので、ワークの設置位置に誤差が生じている場合等でもツール先端姿勢をワーク表面に対して予め定められた姿勢に保つことができる。平面または曲面ワーク上に加工された特徴のない加工位置(例えば浅い凹凸のスポット痕等)を検査する等のシステムにおいては、第1の発明が有する効果に加えて、検査ツールをワークに対して垂直に保つことができる。
【0026】
第4の発明によれば、移動開始位置における基準方向ベクトルを教示点に向かう教示方向ベクトルとしているので、基準方向ベクトルが与えられていない移動開始段階においても教示方向ベクトルを用いて移動目標位置を算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[実施の形態1]
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。図1は、本発明の産業用ロボットの制御方法を適用したスポット痕検査用ロボットシステムの斜視図である。図2は、本発明の実施の形態1の産業用ロボットの制御方法によってワーク表面に対するツール制御点の位置を一定に保つ様子を示した図であり、図1をAの方向から見ている。図1及び図2では曲面ワークを例にしているが、平面ワークであってもよい。
【0028】
図1において、図示しないマニピュレータが把持しているツール43に取付部材44を介して、ツール43に先行する位置に配置されるようにセンサヘッド45が取り付けられている。ツール43が、作業者によって教示された作業開始位置47と作業終了位置48との間に施されたスポット痕49を検査するために、ワーク41上の作業線42に沿って移動する間、センサヘッド45は作業線42を横切るようにレーザ光46を繰り返し照射することによってスキャンを行う。そして、同図では、作業開始位置47から作業を開始し、ツール43の制御点が現在位置b2に到達した様子を示している。
【0029】
ところで、ワーク41上に施されたスポット痕49は凹凸を持つが、非常に浅い凹凸となっている。そのため、検査対象となるスポット痕は図示しないCCDカメラで検出している。即ち、レーザセンサは位置と姿勢を制御することを目的に設けられているものであってスポット痕そのものを検出することはない。
【0030】
作業開始位置47と作業終了位置48は、ツール43の制御点が該2点間を直線動作するように作業者によって教示された位置である。ワーク表面が湾曲していても第1の発明によって位置が補正されるので、作業者は同図に示すような直線動作の教示を行うだけで良い。すなわち、再生動作時は、図2に示すようにツール43の先端が作業線42(図1参照)であるワーク表面に対して高さ方向距離を一定に保って移動することになる。また、直線動作するように教示しているのはスポット痕がワーク41上に直線状に並んでいるからであり、スポット痕が円弧状に並んでいる場合はツール43が円弧動作するように教示すればよいことになる。
【0031】
次に、図3及び図4を参照して、移動目標位置の検出及び補正方法について説明する。図3は、移動目標位置の検出方法を説明するために図2における現在位置b2近傍を拡大した図であり、図4は、移動目標位置を検出し補正する動作の流れを説明するためのフローチャート図である。
【0032】
図3は、ツール43の制御点が現在位置b2にあり、次の移動目標位置を検出する様子を表している。このとき、レーザセンサの制御点はツール43の現在位置b2よりも進行方向側に先行した位置c2(以下、先行位置c2という)にある。
【0033】
ワーク41は同図に示すように表面が湾曲しているため、ツール43の制御点をc3、d4、…の位置に移動させる必要がある。すなわち、c3、d4、…を移動目標位置とする。
【0034】
図4のステップS1において、基準方向ベクトルVbを算出する。基準方向ベクトルVbは、第2の発明によって、ツール43の制御点が現在位置b2に至るまでの軌道Laにおける接線方向ベクトルとする。このとき、基準方向ベクトルVbの大きさはツール43の制御点とレーザセンサの制御点との相対位置を表すX,Y,Z成分を持った変位量Qb(Qbx,Qby,Qbz)である。
【0035】
ステップS2において、ロボットが現在位置b2の位置座標値Pb2(Pbx,Pby,Pbz)、及び基準方向ベクトルVbをレーザセンサに通知する。
【0036】
ステップS3において、レーザセンサが先行位置c2におけるワーク表面からの高さ方向距離Hcを検出する。ここで、ワーク表面からの高さ方向距離Hcは、先行位置c2から鉛直方向(重力方向)へ向けた距離としても、先行位置からワーク表面に対して垂直方向へ向けた距離としてもよく、本発明を適用するアプリケーションに合わせてどちらを採用しても良い。本実施例では、図示しているように、先行位置c2から鉛直方向(重力方向)へ向けた距離を高さ方向距離Hcとしている。
【0037】
ステップS4において、移動目標位置c3の位置座標値Pc3を算出する。すなわち、ロボットの現在座標値Pb2(Pbx,Pby,Pbz)に、基準方向ベクトルVbのXY方向成分の変位量(Qbx,Qby,0)と、高さ方向距離HcをZ方向成分の変位量とした(0,0,Hc)とを加算する。
【0038】
ステップS5において、レーザセンサが算出した移動目標位置c3の位置座標値Pc3をロボットに通知する。
【0039】
ステップS6において、ツール43の制御点を移動目標位置c3へ移動させる。
【0040】
ステップS7において、補正を終了するか否かを判定する。作業終了位置48までに必要な複数の移動目標位置(補間点)の数は、作業開始位置47と作業終了位置48との距離及び速度に基づいて予め定められている。したがって、補正を終了するか否かを、補正を行った移動目標位置(補間点)の数によって判定する。すなわち、作業終了位置48までに必要な移動目標位置の補正が全て終了していれば、フローを終了する。補正が全て終了していなければ、ステップS1に戻り、次の移動目標位置d4の算出に移る。
【0041】
このようにして、複数の移動目標位置の補正が全て終了するまで、移動目標位置c3、d4、…における位置座標値の算出と移動を順次行う。
【0042】
したがって、ワークが特徴部位を持たない平面または曲面であってもレーザセンサによって移動目標位置を検出することができるので、ワークの設置位置に誤差が生じている場合等でもツール制御点をワーク表面に沿ってトラッキングさせることができる。例えば、平面または曲面ワーク上に加工された特徴のない加工位置(例えば浅い凹凸のスポット痕等)を検査する等のシステムにおいては、検査ツール先端を所定の高さに保つと同時に加工位置に対して垂直に押し当てる技術が要望されているが、本発明を適用すれば、検査ツールをワークに対して常に所定の高さに保つことができる。
【0043】
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施の形態2の産業用ロボットの制御方法によってワーク表面に対するツール先端の位置及び姿勢を一定に保つ様子を示した図であり、図1をAの方向から見ている。同図に示すように、ツール43の先端が作業線42(図1参照)であるワーク表面に対して高さ方向距離及び姿勢を一定に保って移動する。
【0044】
次に、図6及び図7を参照して、目標姿勢の算出方法について説明する。
【0045】
図6は、目標姿勢の検出方法を説明するために図5における現在位置b2近傍を拡大した図である。同図において、ワーク41、ツール43、取付部材44、センサヘッド45、作業開始位置47、教示線60は、図3と同様であるので説明を省略する。
【0046】
図7は、本発明の実施の形態2の産業用ロボットの制御方法によって目標姿勢を検出し補正する動作の流れを説明するためのフローチャート図である。同図において、ステップS1乃至S7は、図4の同符号を付したステップと同じであるので、説明を省略する。以下、実線で示したステップS3a乃至S5aについて説明する。
【0047】
図6に示すように、ワーク表面に対してツール43の姿勢を垂直に保つためには、例えば移動目標位置b2においては姿勢63を取る必要がある。ワーク表面に対する垂直方向は、レーザセンサが持つ従来技術によって検出可能であるので、図7のステップS3aでワーク表面に対する垂直方向を検出して基準軸53としておく。
【0048】
そして、ステップS4aで、この基準軸53に対するツール43の姿勢が所定値になるような目標姿勢座標値を算出する。例えば基準軸53に対する目標相対角度54を予め(0°,0°,0°)と定めておけば、ワーク表面に対するツール43の姿勢が垂直になる目標姿勢座標値を算出することができる。
【0049】
算出した目標姿勢座標値は、ステップS5aでロボットに通知する。こうすることによって、移動目標位置b2、c3、d4、…における目標姿勢の算出と補正を順次行うことができる。
【0050】
したがって、第1の発明による目標位置の検出に加えて、目標姿勢をも検出することができるので、ワークの設置位置に誤差が生じている場合等でもツール先端姿勢をワーク表面に対して予め定められた姿勢に保つことができる。平面または曲面ワーク上に加工された特徴のない加工位置(例えば浅い凹凸のスポット痕等)を検査する等のシステムにおいては、第1の発明が有する効果に加えて、検査ツールをワークに対して垂直に保つことができる。
【0051】
[実施の形態3]
図8は、本発明の実施の形態3の産業用ロボットの制御方法によって、作業開始位置47において、最初の移動目標位置を検出する方法を説明するための図である。同図において、ワーク41、ツール43、取付部材44、センサヘッド45、教示線60は、図3と同様であるので説明を省略する。
【0052】
図9は、最初の移動目標位置を検出し補正する動作の流れを説明するためのフローチャート図である。同図において、ステップS3乃至S6、及びステップS3a乃至S5aは、図7の同符号を付したステップとほぼ同じであるので、説明を省略する。図7と図9の相違は、図7の現在位置b2が図9では現在位置aに、図7の移動目標位置c3が図9ではb2になっている点である。以下、実線で示したステップS1、S2、S7について説明する。
【0053】
図8では、ツール43の制御点が教示線60上の作業開始位置47と同じ位置aにあり、最初の移動目標位置を検出する様子を表している。このとき、レーザセンサの制御点はツール43の制御点よりも進行方向側に先行した位置b(以下、先行位置bという)にある。ワーク41は同図に示すように表面が湾曲しているため、最初の移動目標位置はb2の位置である。
【0054】
図9のステップS1において、ツール43の制御点を作業開始位置47と同じ位置aに移動させる。
【0055】
ステップS2において、ロボットが位置aの現在座標値Pa(Pax,Pay,Paz)、及び基準方向ベクトルVaをレーザセンサに通知する。ここで、ツール43の制御点は未だ移動を開始していないため、現在位置に至るまでの軌道における接線方向が与えられていない。そこで、接線方向ベクトルの代わりに教示点(作業終了位置48)に向かう教示方向ベクトルを基準方向ベクトルVaとする。向きは教示方向であり、大きさはツール43の制御点とレーザセンサの制御点との相対位置を表すX,Y,Z成分を持った変位量Q(Qx,Qy,Qz)である。
【0056】
そして、ステップS3乃至ステップS6の処理を行う。
【0057】
ステップS7以降は、図4または図7のフローに移る。このようにして、移動開始位置における基準方向ベクトルを、教示点に向かう教示方向ベクトルとすることによって、基準方向ベクトルが与えられていない移動開始段階においても移動目標位置を算出することができる。
【0058】
したがって、移動開始位置における基準方向ベクトルを教示点に向かう教示方向ベクトルとしているので、基準方向ベクトルが与えられていない移動開始段階においても教示方向ベクトルを用いて移動目標位置を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の産業用ロボットの制御方法を適用したスポット痕検査用ロボットシステムの斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1の産業用ロボットの制御方法によってワーク表面に対するツール先端の位置を一定に保つ様子を示した図である。
【図3】本発明の実施の形態1の産業用ロボットの制御方法によって移動目標位置を検出するときの動作を説明するために図2における現在位置b2近傍を拡大した図である。
【図4】本発明の実施の形態1の産業用ロボットの制御方法によって移動目標位置を検出し補正する動作の流れを説明するためのフローチャート図である。
【図5】本発明の実施の形態2の産業用ロボットの制御方法によってワーク表面に対するツール先端の位置及び姿勢を一定に保つ様子を示した図である。
【図6】本発明の実施の形態2の産業用ロボットの制御方法によって目標姿勢を検出するときの動作を説明するために図2における現在位置b2近傍を拡大した図である。
【図7】本発明の実施の形態2の産業用ロボットの制御方法によって目標姿勢を検出し補正する動作の流れを説明するためのフローチャート図である。
【図8】本発明の実施の形態3の産業用ロボットの制御方法によって作業開始直後の最初の移動目標位置を検出する方法を説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態3の産業用ロボットの制御方法によって最初の移動目標位置を検出し補正する動作の流れを説明するためのフローチャート図である。
【図10】ロボットにレーザセンサを取り付けてワークの開先をトラッキングしながらアーク溶接を行う様子を示した図である。
【図11】従来技術を用いて特徴部位を持つワークをセンサヘッドが撮像した2次元画像のイメージ図である。
【図12】従来技術を用いてレーザセンサによって特徴部位を持たないワークの教示線を補正する様子を示した図である。
【図13】従来技術を用いて特徴部位を持たないワークをセンサヘッドが撮像した2次元画像のイメージ図である。
【符号の説明】
【0060】
41 ワーク
42 作業線
43 ツール
44 取付部材
45 センサヘッド
46 レーザ光
47 作業開始位置
48 作業終了位置
49 スポット痕
50 開先形状輪郭線
51 サンプリング点
52 特徴点
53 基準軸
54 目標相対角度
55 軌道
60 教示線
Va (47における)基準方向ベクトル
Vb (b2における)基準方向ベクトル
Vc (c3における)基準方向ベクトル
La (47〜b2に至るまでの)軌道
Lb (b2〜c3に至るまでの)軌道
Lc (c3〜d4に至るまでの)軌道
Hb (b2までの)高さ方向距離
Hc (c3までの)高さ方向距離
Hd (d4までの)高さ方向距離
b2 移動目標位置
c3 移動目標位置
d4 移動目標位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置と教示位置との間を予め複数の移動目標位置に分割して、ロボットのツール制御点を前記移動目標位置に順次移動させながら前記教示位置に到達させる産業用ロボットの制御方法において、
前記移動目標位置を、前記ツール制御点の進行方向を決めるベクトルである基準方向ベクトルと、前記進行方向の前方に配置されたレーザセンサによって前記基準方向ベクトルの方向にあって前記ツール制御点の現在位置から先行した位置において検出されたワーク表面からの高さ方向距離と、に基づいて算出することを特徴とする産業用ロボットの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基準方向ベクトルは、前記ツール制御点が現在位置に至るまでの軌道における接線方向ベクトルであることを特徴とする産業用ロボットの制御方法。
【請求項3】
前記移動目標位置におけるツールの目標姿勢は、前記ワーク表面からの高さ方向距離を求める基準軸に基づく予め定められた姿勢であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の産業用ロボットの制御方法。
【請求項4】
移動開始位置における前記基準方向ベクトルは、前記教示位置に向かう教示方向ベクトルであることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の産業用ロボットの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−331255(P2006−331255A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156883(P2005−156883)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】