説明

田植機

【課題】エアクリーナの雰囲気温度の上昇等を簡単に防止できるものでありながら、前記エンジン効率を向上できるようにした田植機を提供しようとするものである。
【解決手段】エンジン2を搭載した走行車1と、走行車1に設けた植付部15と、エンジン2に付設するエンジン冷却ファン67及びエアクリーナ75とを備えた田植機において、エンジン冷却ファン67を配置するファンケース66と、エアクリーナ75を配置するエンジン用カバー74とを、前記エンジン2を覆うボンネット9の内部で、エンジン2の外側に設置させ、エンジン用カバー74によってエンジン2の冷却風路を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば苗載台及び苗植付爪を備えて連続的に苗植作業を行う田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場で農作業をするトラクタ等の作業車において、走行車にエンジンを搭載し、ボンネットによってエンジンを覆うように構成されている。詳しくは、ボンネットの内部にエンジン及び冷却ファン等を配置し、ボンネットにインナーカバーを内装して、インナーカバーによってエンジン及びマフラーを覆い、インナーカバーの内部に冷却ファンの冷却風用の通路を形成するように構成されていた(例えば、特許文献1参照)。また、田植機において、ボンネットの内部にエンジン及びエアクリーナ等を配置し、車体カバーのステップの上方からボンネットの内部に外気を取り入れ、ステップの下方に向けてボンネットの内部の暖気を排出する技術も公知である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−42830号公報
【特許文献2】特開2001−199251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術は、特許文献1に示されるように、エンジンの後方から前方に向けて冷却風を移動していたから、ボンネットの後方の運転席から離れた位置にエンジンの暖気を排出できたが、特許文献2に示されるように、エンジンの近傍にエアクリーナを配置した場合、インナーカバーによって覆われたエンジン及びマフラーの暖気によってエアクリーナが加温されることになるから、エアクリーナからキャブレータに冷たい空気を送込んでエンジンの出力効率の上昇や燃料消費量の低減等を図ることができない等の問題がある。また、従来の田植機では、特許文献2に示されるように、ボンネットの左右方向にエンジンの冷却風を通過させていたから、ボンネットの左右側方に予備苗載台を配置した場合、ボンネットの左右いずれかの側面に開口された排風口から暖気が排出されたときに、その暖気によって、予備苗載台に搭載された苗(マット)が乾燥する等の問題もある。
【0005】
本発明の目的は、エンジンに付設したエアクリーナの雰囲気温度の上昇を簡単に防止でき、エアクリーナからキャブレータに、エンジンの暖気等に比べて比較的冷たい空気を供給できるようにした田植機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明の田植機は、エンジンを搭載した走行車と、前記走行車に設けた植付部と、前記エンジンに付設するエンジン冷却ファン及びエアクリーナとを備えた田植機において、前記エンジン冷却ファンを配置するファンケースと、前記エアクリーナを配置するエンジン用カバーとを、前記エンジンを覆うボンネットの内部で、前記エンジンの外側に設置させ、前記エンジン用カバーによって前記エンジンの冷却風路を形成したものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の田植機において、下方側が開放された状態で前記エンジンが前記ボンネットにて覆われ、前記エンジンの後方側に前記エンジン冷却ファンと運転席を設け、前記運転席側から前記エンジンの冷却風を吸込み、前記エンジンの下方側に冷却風を排出する構造であって、前記クリーナ室に連通させる排風カバーを備え、前記エンジンの側面のうち前記運転席の設置側と異なる側面に、前記クリーナ室の排気が排出されるように構成したものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の田植機において、前記エンジンの冷却風吸い込み入口側にオイルクーラを設ける一方、前記ボンネットとエンジンカバーの間に電装部品を配置させ、また前記排風カバーの下側位置に前記エンジンのスロットルレバーを配設させたものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の田植機において、前記出力軸や伝達ベルト系が前記エンジンの側面に配置された構造であって、前記エンジンの冷却風を合流させる合流部と、下方に案内する下方排出部とを有する導風板を備え、前記合流部と前記排出部とによって形成される空間部に前記出力軸や伝達ベルト系を配設させるように構成したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、エンジンを搭載した走行車と、前記走行車に設けた植付部と、前記エンジンに付設するエンジン冷却ファン及びエアクリーナとを備えた田植機において、前記エンジン冷却ファンを配置するファンケースと、前記エアクリーナを配置するエンジン用カバーとを、前記エンジンを覆うボンネットの内部で、前記エンジンの外側に設置させ、前記エンジン用カバーによって前記エンジンの冷却風路を形成したものであるから、前記エアクリーナの雰囲気温度の上昇等を簡単に防止できるものでありながら、前記エアクリーナからキャブレータに冷気を供給でき、前記エンジン効率を向上できる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、下方側が開放された状態で前記エンジンが前記ボンネットにて覆われ、前記エンジンの後方側に前記エンジン冷却ファンと運転席を設け、前記運転席側から前記エンジンの冷却風を吸込み、前記エンジンの下方側に冷却排風を排出する構造であって、前記クリーナ室に連通させる排風カバーを備え、前記エンジンの側面のうち前記運転席の設置側と異なる側面に、前記クリーナ室の排気が排出されるように構成したものであるから、運転者側に熱い冷却排風が移動するのを防止でき、運転者の作業環境を改善できる。一方、前記エンジン周辺の構成部品数を削減して、前記エンジンの組立作業性又はメンテナンス作業性を向上できる。また、製造コストを低減できる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、前記エンジンの冷却風吸い込み入口側にオイルクーラを設ける一方、前記ボンネットとエンジンカバーの間に電装部品を配置させ、また前記排風カバーの下側位置に前記エンジンのスロットルレバーを配設させたものであるから、前記オイルクーラの専用の冷却ファンが不要になり、前記エンジンに吸入される外気によって前記オイルクーラが最初に冷やされることによって、前記オイルクーラを小型化できる。さらに、前記ボンネット内のエンジンルームを高温部と低温部とに分割できるから、簡単な構造で前記エンジンの吸気温度を低下でき、前記エンジン性能を改善できる。また、電子機器などを低温部に配置できるから、前記電装部品を簡単に保護でき、前記電装部品の耐久性を向上できる。電子機器の耐久性が向上する。前記ボンネット内を区切ることによって、前記電装部品をエンジンルーム内に配置する際に設計上の自由度が上がる。前記エンジンの熱が直接的に前記電装部品に伝わるなどの悪影響を低減させると共に、前記電装部品で発生する熱が前記エアクリーナに伝わる不都合も低減でき、前記電装部品と前記エアクリーナの両方の性能(品質)を保持できる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、前記出力軸や伝達ベルト系が前記エンジンの側面に配置された構造であって、前記エンジンの冷却風を合流させる合流部と、下方に案内する下方排出部とを有する導風板を備え、前記合流部と前記排出部とによって形成される空間部に前記出力軸や伝達ベルト系を配設させるように構成したものであるから、前記エンジンの伝達構造をコンパクトに配設でき、機体を小型化できる。伝達ベルト系等の耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】田植機の全体側面図である。
【図2】田植機の全体平面図である。
【図3】田植機の全体正面図である。
【図4】車体の側面図である。
【図5】車体の平面図である。
【図6】エンジン部の斜視図である。
【図7】エンジン部の側面図である。
【図8】エンジン部の平面図である。
【図9】エンジン部の正面図である。
【図10】エンジン部の斜視説明図である。
【図11】エンジン部の斜視説明図である。
【図12】ボンネット部の断面説明図である。
【図13】ボンネット部の平面説明図である。
【図14】エンジン冷却部の説明図である。
【図15】ボンネット部の正面説明図である。
【図16】エンジンスロットル部の説明図である。
【図17】変速ペダル部の説明図である。
【図18】二股ワイヤ部の説明図である。
【図19】ワイヤジョイント部の説明図である。
【図20】固定フレーム部の斜視図である。
【図21】固定フレーム部の斜視図である。
【図22】二股ワイヤ部の他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1は全体の側面図、図2は同平面図、図3は同正面図、図4は車体の側面図、図5は同平面図を示し、図中1は作業者が搭乗する走行車であり、空冷式エンジン2を車体フレーム3に搭載させ、ミッションケース4側方にフロントアクスルケース5を介して水田走行用前輪6を支持させると共に、前記ミッションケース4後方のリヤアクスルケース7に水田走行用後輪8を支持させる。そして前記エンジン2等を覆うボンネット9両側に予備苗載台10を取付けると共に、作業者が搭乗する車体カバー11によって前記ミッションケース4等を覆い、前記車体カバー11後側上方にシートフレーム12を介して運転席13を取付け、その運転席13の前方で前記ボンネット9後部に操向ハンドル14を設ける。
【0016】
また、図中15は8条植え用の苗載台16並びに複数の苗植付爪17などを具備する植付部であり、前高後低の合成樹脂製の前傾式苗載台16を下部レール18及び上部レール19を介して植付ケース20に左右往復摺動自在に支持させると共に、一方向に等速回転させるロータリケース21を前記植付ケース20に支持させ、該ケース21の回転軸芯を中心に対称位置に一対の爪ケース22・22を配設し、その爪ケース22・22先端に苗植付爪17・17を取付ける。
【0017】
また、前記植付ケース20前側のヒッチブラケット23をトップリンク24及びロワーリンク25を含む昇降リンク機構26を介し走行車1後側に連結させ、前記リンク機構26を介して植付部15を昇降させる油圧昇降シリンダ27をロワーリンク25に連結させ、前記前後輪6・8を走行駆動して移動すると同時に、左右に往復摺動させる苗載台16から一株分の苗を植付爪17によって取出し、連続的に苗を植える田植作業を行うように構成する。
【0018】
また、図中28は主変速レバー、29は植付部15の昇降・植付クラッチの入切・マーカ操作を行う植付操作レバー、30は変速ペダル、31はアクセルレバー、32はユニットクラッチレバーである。
【0019】
さらに、図中33は中央2条均平用センタフロート、34は左右2条均平用サイドフロート、35は左右最外側1条均平用補助フロート、36は肥料ホッパ37内の肥料を送風機38の送風力で各フロート33・34・35の側条作溝器(図示せず)に排出させる8条用側条施肥機である。
【0020】
図4乃至図5に示す如く、前記車体フレーム3は前部フレーム39と中間フレーム40と後部フレーム41とに3分割させ、左右一対の前部フレーム39にエンジン2を、左右一対の中間フレーム40にフロントアクスルケース5を、左右一対の後部フレーム41にリヤアクスルケース7及びエンジン2に燃料を供給する燃料タンク42などを設けるもので、前部フレーム39の前側と中間に前フレーム43とベースフレーム44を連結させて平面視4角枠状に形成し、前部フレーム39の固定ブラケット45とベースフレーム44に防振ゴム46を介しエンジン2を上載させる。
【0021】
また、前記ミッションケース4の前面左側にパワーステアリングケース47を設け、かつケース4の右側に無段油圧変速機(HST)48を設け、油圧変速機48の変速入力用ポンプ軸49を車体前方向に突出させ、エンジン2の右下側で前後方向の伝達軸50にポンプ軸49を連結させると共に、エンジン2の出力軸51に伝達ベルト52を介して前記伝達軸50を連結させ、エンジン2出力を油圧変速機48に伝達する。
【0022】
さらに、前記ミッションケース4とリヤアクスルケース7を車体の前後方向の中心ライン上でパイプ状の連結フレーム53によって一体連結させ、ミッションケース4後方に走行出力軸54及びPTO出力軸55を突出させ、リヤアクスルケース7前方に突出させるリヤ入力軸56にリヤ伝達軸57を介し前記走行出力軸54を連結させ、走行出力軸54から左右の後輪8に動力を伝える。またリヤアクスルケース7上部の軸受58に設ける仲介軸59に自在継手軸60を介して前記PTO出力軸55を連結させ、前記植付ケース20の入力軸に自在継手軸を介して中介軸59を連結させ、PTO出力軸55から植付部15に動力を伝える。
【0023】
図6乃至図14に示す如く、前部フレーム39左外側のステップ台61下側にエンジン2のマフラー62を取付けると共に、前部フレーム39右外側のステップ台63にエンジン2を始動させるバッテリ64のバッテリ台65を取付けている。
【0024】
また、前記エンジン2後側のファンケース66内にエンジン冷却ファン67を配設させ、ファンケース66後面略中央に冷却風取入口68を開成させて該取入口68に防塵網69を張設させ、取入口68の後方位置にエンジンオイル・ミッションオイル・変速機(HST)オイルなどのオイルクーラ70を縦型で横長手状に配設させ、オイルクーラ70を取付台71及び取付板72を介し操向ハンドル14のハンドルコラム73に連結支持させて、別途にオイルクーラ70専用の冷却用ファンを設けることなくエンジン冷却ファン67を利用してオイルクーラ70を強制冷却させ、オイルクーラ70の冷却効果の向上と、オイルクーラ70の小型コンパクトな組込みを可能とさせるように構成している。
【0025】
さらに、前記エンジン2の後側上方を4角箱形状のカバー74で覆って、エンジン2のエアクリーナ75をエアクリーナ用カバー74内に配設させ、前記ファンケース66内のファン室76にエアクリーナ用カバー74内のクリーナ室77を連通させると共に、エンジン2の前側上方を正面視門形の排風カバー78で覆って、クリーナ室77に連通する冷却排風路79を排風カバー78の内側に形成して、図15にも示す如く、クリーナ室77流通後の冷却風を、排風路79を介して、ボンネット9の前面に開口する排風口80から外側方に排出させ、クリーナ室77の温度上昇を抑え、キャブレータに冷たい空気を送り込むことによってエンジン2の出力上昇や燃料消費量の向上を図るように構成している。なお、前記排風口80は車体カバー11のステップ11aより上方に配設されて、排風口80からの排風は畦の苗にも当たることなく苗の損傷も防止できる。
【0026】
また図10にも示す如く、前記エンジン2の左右両側から前方向に流通排出される熱風(エンジン冷却風)を合流させ下方に案内する単一の導風板81をエンジン2前側に配設させるもので、左右からの風を合流させる合流部81aと、合流した風を左側に集めて下方に排出案内する下方排出部81bとを正面視L形状に導風板81は有し、合流部81aの上側コーナ部3(上・左右・前方向)の形状をそれぞれ鈍角からなる案内面81cで形成して、エンジン2流通後の熱風を合流部81aでスムーズに合流させると共に、排出部81b下側の排出口82より良好に下方に排出させて、熱風の排出効率を向上させるように構成している。また、合流部81aと排出部81bとの内側に形成される空間部83に前記出力軸51や伝達ベルト52系をコンパクトに配設させて、機体の小型化を容易に可能とさせている。
【0027】
さらに、前記カバー74・78上方にエンジン2関係のリレーなど電装部品84を配設させるもので、前フレーム43とハンドルコラム73などと連結するフレーム85に電装台86を介し取外し自在に電装部品84を取付けて、エンジン2の上方近接位置に電装部品84を配設した構造においても、エンジン2の熱が直接的に電装部品84に伝わるなどの悪影響を低減させると共に、電装部品84で発生する熱のエアクリーナ75に伝わる不都合も低減させて電装部品84とエアクリーナ75両方の性能(品質)の安定保持を図るように構成している。
【0028】
図16乃至図18に示す如く、前記排風カバー78下側位置にエンジン2のスロットルレバー87を配設させ、操向ハンドル14右側に配設するアクセルレバー31とアクセルレバー31の下方位置に配設する変速ペダル30とに二股状のアクセルワイヤ88を介しスロットルレバー87を連動連結させるもので、アクセルワイヤ88の二股ワイヤ部88a・88b先端を変速ペダル30とアクセルレバー31に連結させると共に、単一ワイヤ部88c先端をスロットルレバー87に連結させて変速ペダル30及びアクセルレバー31の何れの操作でもエンジン回転数を変更するように構成している。
【0029】
また、前記変速ペダル30はペダル軸89にペダルアーム90を介し揺動自在に連結させ、ペダル軸89に変速操作カム91を固設させ、前記油圧変速機48(油圧ポンプ)の斜板の角度を調節する制御軸92に変速ロッド93を介して操作カム91を連結させ、操作カム91のノッチ94にノッチ爪95を係合させる速度保持用カム96を有して、変速ペダル30の足踏み操作時には制御軸92を回動して車速を変速するように構成している。
【0030】
さらに、前記ペダルアーム90にはアウタ受け97を介してワイヤ部88aのアウタチューブ98を連結させると共に、ワイヤ部88a先端に弾性体であるバネ99の一端側を連結させ、変速ペダル30の基端回動軸100を取付ける固定フレーム101にバネ99の他端側を連結させて、変速ペダル30の足踏み操作時にはワイヤ部88a(インナワイヤ)に対しアウタチューブ98を移動させてスロットルレバー87を操作して、車速の変速とエンジン回転数の変更を行うように構成している。
【0031】
また図19に示す如く、アクセルレバー31に連結させるワイヤ部88bはレバー31と一体のアーム102に係止部材103を連結させ、変速ペダル30とアクセルレバー31の2本のワイヤ部88a・88bの他端側を単一の連結体104に連結させ、各ワイヤ部88a・88bのアウタチューブ98・105に連結させるジョイント106に前記連結体104を摺動自在に内挿させ、前記変速ペダル30とアクセルレバー31の非操作時(0位置)に各ワイヤ部88a・88bを弛めて図19仮想線位置に連結体104を保つと共に、変速ペダル30或いはアクセルレバー31の操作で何れか一方のワイヤ部88a或いは88bを引張り状態とさせるとき同図実線状態に示す如く、一定ストロークLだけジョイント105内で連結体104を移動させて単一ワイヤ部88cを引張りスロットルレバー87を高速H側に操作するように構成している。
【0032】
このように、スロットルレバー87を操作するエンジン回転変速操作部材であるアクセルレバー31の0或いは低速操作時にはワイヤ部88bを弛め変速ペダル30を優先操作させると共に、アクセルレバー31の高速H操作時には連結体104をストロークL分高速側に移動させて変速ペダル30より優先させるもので、低速高トルクを必要とする湿田脱出時など各種作業状況に応じて最適の作業速(走行)モードに正確に変更させて作業性を向上させることができる。
【0033】
図20、図21に示す如く、前記固定フレーム101は前部フレーム39後端の固定ブラケット107と後部フレーム41前端の取付部材108間に前後端を固定させ、固定フレーム101の上面に固設するペダル台109に回動軸100を介し変速ペダル30の基端を揺動自在に支持させている。
【0034】
また図22に示す如く、前記操作カム91やペダルアーム90にバネ99を介してワイヤ88aを直接的に連結させる構成でも良い。
【0035】
上記からも明らかなように、エンジン2出力で駆動して車速など作業速度を変速させる油圧変速機(HST)48を備え、変速機48を変速操作する作業変速操作部材である変速ペダル30と、エンジン回転数を変更するエンジン回転変更部材であるスロットルレバー87とを連結部材であるアクセルワイヤ88を介して連動連結させたことによって、例えば走行の低速或いは停止時には必ずエンジン回転数も低速状態とさせて、エンジンを静かに且つ効果的に駆動して良好に作業を行うことができるもので、苗継ぎ作業時などには自動的に静かな作業が行え、また変速機48が高速Hでエンジン回転が低速のときエンジン2が出力不足状態となる不都合も防止でき、さらに発進時や停止時には走行とともにエンジン回転数も低速状態とさせたスムーズな発進や停止が行える。
【0036】
また、スロットルレバー87にアクセルレバー31と変速ペダル30とを二股ワイヤ88を介し連結させると共に、変速ペダル30とワイヤ88間に弾性体であるばらつき防止バネ99を介設したことによって、ワイヤ88及びバネ99を用いた簡単な手段で変速ペダル30側の操作ストロークをアクセルレバー31側の操作ストロークより大とさせて操作のばらつきを防止して、常に安定したエンジン回転数で作業速度の変速を可能とさせて作業の信頼性を向上させるもので、完全に変速ペダル30もアクセルレバー31も高速位置とさせた良好な高速作業を可能とさせることができる。
【0037】
上記の記載及び図1、図13、図14から明らかなように、エンジン2を搭載した走行車1と、走行車1に設けた植付部15と、エンジン2に付設するエンジン冷却ファン67及びエアクリーナ75とを備えた田植機において、エンジン2の外側方にファン室76を形成するファンケース66を備え、ファン室76内にエンジン冷却ファン67を配置し、エンジン2の上方を覆う上面側カバーとしてのエアクリーナ75用のカバー74を備え、ファン室76にエアクリーナ75用のカバー74の内部を連通させて、エンジン冷却ファン67の排風を、エアクリーナ75用のカバー74の内部に供給するように構成したものであるから、エンジン2に付設したエアクリーナ75等をエアクリーナ75用のカバー74の内部に配置することによって、そのエアクリーナ75の雰囲気温度の上昇等を簡単に防止できる。
【0038】
上記の記載及び図1、図13、図14から明らかなように、エンジン2を搭載した走行車1と、走行車1に設けた植付部15と、エンジン2に付設するエンジン冷却ファン67及びエアクリーナ75とを備えた田植機において、エンジン2の外側方にファン室76を形成するファンケース66を備え、ファン室76内にエンジン冷却ファン67を配置し、エンジン2の外側方にクリーナ室77を形成するエアクリーナ75用のカバー74を備え、クリーナ室77内にエアクリーナ75を配置し、ファン室76にクリーナ室77を連通させて、エンジン冷却ファン67の排風を、クリーナ室77を介して外部に排出するように構成したものであるから、エンジン2に付設したエアクリーナ75の雰囲気温度の上昇を簡単に防止でき、エアクリーナ75からキャブレータに、エンジン2の暖気等に比べて比較的冷たい空気を供給でき、エンジン2の出力効率を上昇できたりその燃料消費量を低減できる。
【0039】
上記の記載及び図1、図14から明らかなように、走行車1に運転席13を設け、ボンネット9によってエンジン2を覆う構造であって、クリーナ室77に連通させる排風路79を形成する排風カバー78を備え、ボンネット9の側面のうち運転席13から離れた前側面に排風口80を形成し、排風口80に排風路79を介してクリーナ室77を連通させるように構成したものであるから、例えばボンネット9の左右側方に予備苗載台10を配置しても、ボンネット9の前側面に開口された排風口80から排出される暖気によって、ボンネット9の左右側方の予備苗載台10に搭載された苗(マット)が乾燥するのを防止できる。したがって、ボンネット9の左右側方に予備苗載台10を簡単に配置できる。
【0040】
上記の記載及び図1、図14、図15から明らかなように、走行車1に設けた車体カバー11にステップ11aを形成し、ボンネット9によってエンジン2を覆う構造であって、エアクリーナ用のカバー74によってエンジン2の上面側にクリーナ室77を形成し、ボンネット9の側面のうちステップ11aよりも上方の高位置に排風口80を配置し、クリーナ室77の排気が排風口80からボンネット9の外側方に向けて排出されるように構成したものであるから、走行車1の前部を畦に対向させて、畦に置いている苗を走行車1の予備苗載台10に補給するときに、排風口80から排出される排風が、畦に置いている苗に当ることがない。したがって、苗を補給するときに、畦に置いている苗が損傷するのを防止できるものである。
【符号の説明】
【0041】
1 走行車
2 エンジン
9 ボンネット
11 車体カバー
11a ステップ
13 運転席
15 植付部
66 ファンケース
67 エンジン冷却ファン
74 エンジン用カバー(上面側カバー)
75 エアクリーナ
76 ファン室
77 クリーナ室
78 排風カバー
79 排風路
80 排風口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載した走行車と、前記走行車に設けた植付部と、前記エンジンに付設するエンジン冷却ファン及びエアクリーナとを備えた田植機において、
前記エンジン冷却ファンを配置するファンケースと、前記エアクリーナを配置するエンジン用カバーとを、前記エンジンを覆うボンネットの内部で、前記エンジンの外側に設置させ、前記エンジン用カバーによって前記エンジンの冷却風路を形成したことを特徴とする田植機。
【請求項2】
下方側が開放された状態で前記エンジンが前記ボンネットにて覆われ、前記エンジンの後方側に前記エンジン冷却ファンと運転席を設け、前記運転席側から前記エンジンの冷却風を吸込み、前記エンジンの下方側に冷却風を排出する構造であって、前記クリーナ室に連通させる排風カバーを備え、前記エンジンの側面のうち前記運転席の設置側と異なる側面に、前記クリーナ室の排気が排出されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記エンジンの冷却風吸い込み入口側にオイルクーラを設ける一方、前記ボンネットとエンジンカバーの間に電装部品を配置させ、また前記排風カバーの下側位置に前記エンジンのスロットルレバーを配設させたことを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項4】
前記出力軸や伝達ベルト系が前記エンジンの側面に配置された構造であって、前記エンジンの冷却風を合流させる合流部と、下方に案内する下方排出部とを有する導風板を備え、前記合流部と前記排出部とによって形成される空間部に前記出力軸や伝達ベルト系を配設させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−168043(P2010−168043A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48803(P2010−48803)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【分割の表示】特願2007−288834(P2007−288834)の分割
【原出願日】平成14年12月19日(2002.12.19)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】