説明

画像処理方法、画像処理装置、及びプログラム

【課題】入力画像に含まれるオブジェクトが線画像や文字画像である場合に、出力画像において当該画像の細線部分を明瞭に再現する画像処理方法を提供する。
【解決手段】最初のステップ200で、描画命令からオブジェクトの抽出を行う。この後、ステップ202で、抽出したオブジェクトの描画命令から、該当オブジェクトが線であるか否かを判断する。オブジェクトが線である場合には、ステップ204へ移行し、該当するオブジェクトに対して、ラスタデータが線の太さに応じて階調補正されるように階調補正情報の生成を行う。そして、ステップ206で、該当するオブジェクトに対して、階調補正情報を使用した描画処理(ラスタデータ生成)を行い、ステップ208で全オブジェクトが抽出されたか否かを判断する。オブジェクトが曲線または文字である場合にも、同様に階調補正情報を生成し、階調補正情報を使用した描画処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法、画像処理装置、及びプログラムに係り、特に、本発明は、入力された画像データ又は描画命令に基づいて画像処理を行う画像処理方法、画像処理装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高精度のカラープリンタ等の出力装置が普及しており、高精度の印刷出力が要求されるDTPの分野においても、パーソナルコンピュータや、ワークステーションなどの画像処理端末上で作成、編集、加工等によって作成されたページレイアウトなどの校正を行うときに用いられる。このようなカラープリンタには、階調表現に所謂スクリーン処理が行われる。スクリーン処理は、多値化データを2値化データに変換すること、或いはPWM等のアナログ変調により面積階調処理を行うことであり、これにより、階調のある印刷出力が得られる。スクリーン処理においては、階調数を大きくして滑らかな階調で画像等を表現するときには、スクリーン周波数を比較的低く(スクリーン線数を少なく)し、中間階調の細線再現性を高くするときには、スクリーン周波数を比較的高く(スクリーン線数を多く)している。
【0003】
ところで、スクリーン線数は、一般にドキュメントごとに切り換えられるが、近年、同一のページレイアウト上で、文字等に対しては、スクリーン線数を多く(スクリーン周波数を高く)して細線の再現性を高くし、写真等のオブジェクトに対しては、スクリーン線数を少なく(スクリーン周波数を低く)して階調性を保つようにする処理が行われることがある。これと共に、印刷出力時の、個々のオブジェクトの色再現性の向上を図るために、文字や写真などのオブジェクトごとに色変換を切り換えて、それぞれのオブジェクトごとに最適となるスクリーン処理または色処理を行って印刷出力する提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−51653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の処理方法は、オブジェクトの種類に応じた処理の切り替えであり、細線や明朝書体の細い線に関するかすれや消失を防止することはできない、という問題がある。
【0005】
近年、レーザープリンタの解像度は、300dpiから600dpi、1200dpi、2400dpiへと、書き込み解像度が細かくなり図形の外形のなめらかな表現が可能になってきてはいるが、粉体トナーおよび電子写真方式の特性から、1〜2デバイス画素の再現性は悪く、例えば1200dpiで同じ濃度70%の線を表現する場合であっても、4デバイス画素は明瞭に再現できるが、2デバイス画素では濃度が薄れ、1デバイス画素はさらにかすれてあるいは再現されず消えてしまう。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、入力画像に含まれるオブジェクトが線または文字である場合に、出力画像において当該画像の細線部分を明瞭に再現することができる画像処理方法、画像処理装置、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の画像処理方法は、画像処理端末から入力される画像データ及び描画命令に基づいて画像処理を行うときに、オブジェクトの種類に応じて画像処理を行う画像処理方法であって、前記オブジェクトの種類が細線重視である場合に、前記オブジェクトごとに線種に応じた画像処理を設定するオブジェクト情報に基づいて、前記オブジェクトごとの画像処理を可能とすることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の画像処理装置は、画像処理端末から入力される画像データ及び描画命令に基づいて画像処理を行うときに、オブジェクトの種類に応じて画像処理を行う画像処理装置であって、
前記オブジェクトの種類が細線重視である場合に、前記オブジェクトごとに線種に応じた画像処理を設定するオブジェクト情報に基づいて、前記オブジェクトごとの画像処理を行う画像処理部と、を含んで構成したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明のプログラムは、コンピュータを、画像処理端末から入力される描画命令に基づいて画像処理を行うときに、オブジェクトの種類に応じて画像処理を行う画像処理装置として機能させるプログラムであって、前記オブジェクトの種類が細線重視である場合に、前記オブジェクトごとに線種に応じた画像処理を設定するオブジェクト情報に基づいて、前記オブジェクトごとの画像処理を行う画像処理手段と、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明によれば、入力画像に含まれるオブジェクトが線または文字である場合に、出力画像において当該画像の細線部分を明瞭に再現することができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0012】
図1は本実施の形態に適用したネットワーク10の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、このネットワーク10では、本発明を適用した画像処理装置に相当するプリントサーバ12と、画像処理端末に相当する複数のクライアント端末14とが、通信回線16を介してネットワーク接続されている。また、プリントサーバ12には、印刷出力装置としてプリンタ18が接続されており、プリントサーバ12は、クライアント端末14から出力される印刷ジョブを受信すると、この印刷ジョブに応じた印刷出力を実行する。
【0013】
なお、以下では、画像処理装置がプリントサーバとして用いられる例について説明するが、本発明の画像処理装置は、これに限らずクライアント端末14とネットワーク接続されたファイルサーバ等の各種の中間サーバに設けられて画像処理を行なうものであっても良い。
【0014】
プリントサーバ12及びクライアント端末14には、ネットワークインターフェイス(ネットワークI/F)20、22が設けられており、このネットワークI/F20、22を介してそれぞれが通信回線16に接続している。また、プリントサーバ12は、双方向インターフェイス(双方向I/F)24を備えており、この双方向I/F24を介してプリンタ18に接続している。なお、プリントサーバ12に接続するプリンタ18は複数でも良く、使用する双方向I/F24も複数ないし複数種類でも良い。
【0015】
このようなプリントサーバ12は、パーソナルコンピュータ(PC)に所定の機能を備えたPCIボードを追加するなどして構成することができる。また、プリントサーバ12は、キーボード、マウス等の入力デバイスやCRTディスプレイやLCDディスプレイ等の表示デバイスを備えており、表示デバイスに表示した画像に対する処理及び表示画像を印刷出力するWYSIWYG機能を備えたものであっても良い。
【0016】
プリントサーバ12には、プリンタ18を制御するプリントコントローラ26と共に画像処理部28が設けられている。プリントサーバ12では、クライアント端末14から印刷ジョブとして画像データや描画データなどのジョブデータが入力されると、画像処理部28で、このジョブデータに基づいてラスタデータを生成するRIP処理を行なう。
【0017】
なお、プリントサーバ12では、入力された印刷ジョブを処理待ちキューに格納すると共に、処理待ちキューに格納している印刷ジョブを順に読み出して、画像処理(RIP処理)を実行し、画像処理されてプリンタ18へ出力されるデータ(ラスタデータ)を印刷待ちキューに格納して、この印刷待ちキューからプリンタ18へ順に出力する。また、プリントサーバ12では、印刷処理が指定されていないか印刷処理の実行ができないジョブを保持キューに格納して保持する一般的構成となっており、このようなプリントサーバ12は、従来公知の種々の構成を用いることができ、本実施の形態では、詳細な説明を省略する。
【0018】
一方、クライアント端末14は、各種のアプリケーション30を備えており、アプリケーション30を用いて、画像の作成、加工、編集等の画像処理や文書作成等を行う。また、クライアント端末14には、プリンタドライバ32が設けられており、クライアント端末14では、このプリンタドライバ32を介して、作成した画像データ又は描画データと各種の処理指示とを印刷ジョブとしてプリントサーバ12へ送信する。プリントサーバ12は、この印刷ジョブに対して指定された画像処理を施してプリンタ18へ出力する。これにより、印刷ジョブに応じた印刷物が得られる。
【0019】
プリントサーバ12の画像処理部28には、印刷機能設定部34が形成されている。この印刷機能設定部34では、印刷ジョブ等のジョブを受信すると、プリンタドライバ32等により指定された各種の印刷機能の設定を行う。なお、プリントサーバ12では、従来公知の各種の印刷機能の設定が可能となっており、印刷機能設定部34では、印刷ジョブで指定されている印刷機能を判断し、それぞれの印刷機能が実行されるように設定するが、本実施の形態では、詳細な説明を省略する。
【0020】
また、画像処理部28には、描画命令展開部36と各種のデータを記憶するHD38が設けられている。画像処理部28では、描画命令展開部36上で、クライアント端末14から入力された印刷ジョブに対する画像処理を行う。このとき、印刷機能設定部34で設定される印刷機能に基づいた画像処理及びRIP処理が行われる。
【0021】
画像処理部28では、RIP処理を行うことにより、印刷ジョブの各ページごとに、C、M、Y、Kの各色版(C版、M版、Y版及びK版)のラスタデータを生成する。このラスタデータが、プリントコントローラ26を介してプリンタ18へ出力されることにより、プリンタ18では、図示しない記録紙上にC版、M版、Y版及びK版の画像を重ねたカラー画像を形成する。
【0022】
図1に示すように、プリントサーバ12の描画命令展開部36には、描画命令の展開を行う描画命令展開部36Aと、展開した描画命令に基づいてラスタライズ(RIP処理)を実行するラスタ処理部36Bとが設けられている。描画命令展開部36Aでは、描画命令を展開し、ラスタ処理部36Bにおいて、展開した描画命令に基づいてラスタライズ(RIP処理)を実行する。
【0023】
ラスタ処理部36Bでは、RIP処理により、プロセスカラー(C、M、Y、K)の各色版のラスタデータを生成する。これらのラスタデータは、画素ごとにRIP処理によりスクリーン処理が行われた2値データとなっており、このラスタデータが画像データとしプリンタ18へ出力される。また、ラスタデータは画素ごとの多値データであり、このラスタデータが画像データとしてプリンタ18に出力されるものであってもよい。
【0024】
なお、上記では、ラスタ処理部36Bにおいてスクリーン処理を行う例について説明したが、プリンタ18にスクリーン生成部を設け、このスクリーン生成部をタグ情報やタグ命令により切り替えて、スクリーン処理を実施してもよい。
【0025】
また、図1に示すように、プリントサーバ12の画像処理部28には、オブジェクト抽出部74及び自動補正部76が設けられている。オブジェクト抽出部74では、展開処理部36Aで展開された描画命令に基づいてラスタ処理を実行するときに、線または文字からなるオブジェクトを抽出する。自動補正部76では、オブジェクト抽出部74で抽出されたオブジェクトの各々に対する階調補正情報が、図示しないユーザーインタフェース或いはクライアント端末14からネットワークI/F22を通して設定される情報(線の太さ、フォントの種類等)に従って生成される。これにより、ラスタ処理部36Bでは、展開処理部36Aで展開された描画命令と、自動補正部76で生成された階調補正情報とに基づいて、ラスタデータが生成される。
【0026】
次に、図1に示すネットワーク10での印刷処理動作について説明する。
【0027】
クライアント端末14では、アプリケーション30を用いて作成、加工、編集等の処理を行って、線や文字をオブジェクトとして配置したページレイアウトを作成する。また、作成したページレイアウトを印刷出力するときには、プリンタドライバ32を用いて印刷機能の設定を行い、ページレイアウト等の印刷ジョブを作成すると、この印刷ジョブをプリントサーバ12へ送信する。
【0028】
プリントサーバ12では、クライアント端末14から送信された印刷ジョブなどを受信すると、印刷機能の読込み及び設定を行う。この後、プリントサーバ12では、設定された印刷機能に基づいた画像処理、RIP処理を行って、C、M、Y、Kの各色のラスタデータを生成すると、生成したラスタデータをプリンタ18へ出力する。これにより、印刷ジョブに基づいた印刷出力が得られるようにしている。このとき、プリントサーバ12では、線や文字をオブジェクトとして抽出し、抽出したオブジェクトに対する階調補正を行うようにしている。
【0029】
図2(A)は、プリンタの階調特性(濃度特性)を示すグラフである。オブジェクトが線である場合、入力画像データに関する濃度データ(以下、「入力濃度データ」という。)と出力画像データに関する濃度データ(以下、「出力濃度データ」という。)との関係は、線の太さに応じて変化する。例えば、図2(A)に示すように、2ドットラインでは入力濃度データと出力濃度データとは略リニアな関係にあるが、1ドットラインでは入力濃度データと出力濃度データとはリニアな関係にはなく、明部入力に対しては出力感度が低く、暗部入力に対しては出力感度が高い。
【0030】
階調補正処理では、通常、入力濃度データと出力濃度データとがリニアな関係になるように、非リニアな階調特性が補正される。このような階調補正処理で用いられる補正曲線としては、階調特性の逆特性が選ばれる。例えば、図2(A)の1ドットラインの階調特性を補正するためには、図2(B)に示す補正曲線が使用される。図2(B)に示す補正曲線を用いて1ドットラインの階調特性を補正することで、図2(C)に示すように、1ドットラインでも2ドットラインと同様に略リニアな階調特性を得ることができる。
【0031】
従って、オブジェクトの種類が線である場合、線の太さに応じて補正曲線を選択することで、線の太さにかかわらずリニアな階調特性を得ることができる。すなわち、細い線もかすれたり消失することもなくプリントすることが可能になる。また、オブジェクトの種類が線である場合、入力濃度データと出力濃度データとの関係は線の角度に応じて変化するので、線の角度に応じて補正曲線を選択することで、線の角度にかかわらずリニアな階調特性を得ることができる。
【0032】
同様に、オブジェクトの種類が文字である場合は、線が太いゴシック体と、線が細い明朝体というように、或いはフォントの太さを示すウェイト(L:Light,R:Regular,M:Medium,DB:DemiBold,B:Bold,EB:ExtraBold,U:UltraBold,H:Heavy)のように、フォントの種類により線の太さが変化するので、フォントの種類に応じて補正曲線を選択することで、フォントの種類に拘わらずリニアな階調特性を得ることができる。すなわち、明朝体或いは細いウェイトのフォントにおいても横線のかすれや消失のないプリントを行うことができる。
【0033】
図3には、画像処理部28で実行される描画処理の概略を示している。このフローチャートでは、最初のステップ200で、オブジェクト抽出部74において、描画命令からオブジェクトの抽出を行う。この後、自動補正部76において階調補正情報を生成する。
【0034】
まず、ステップ202で、抽出したオブジェクトの描画命令から、該当オブジェクトが線であるか否かを判断する。オブジェクトには、イメージ、グラデーション、図形、文字、線、曲線などがあり、それぞれに対して描画命令が設定されているので、描画命令からオブジェクトが定まる。従って、描画命令から、抽出したオブジェクトが線に設定されているオブジェクトであるか、それ以外に設定されているオブジェクトであるかを判断することができる。表1に、オブジェクトの種類と、それぞれのオブジェクトに対する描画命令を米国AdobeSystems社のPostScript命令の例で示す。
【0035】
【表1】

【0036】
オブジェクトが線である場合には、ステップ204へ移行し、該当するオブジェクト(オブジェクトを形成する各画素)に対して、ラスタデータが線の太さに応じて階調補正されるように階調補正情報の生成を行う。生成された階調補正情報はラスタ処理部36Bに入力される。そして、ステップ206で、ラスタ処理部36Bにおいて、該当するオブジェクトに対して、階調補正情報を使用した描画処理(ラスタデータ生成)を行い、ステップ208で全オブジェクトが抽出されたか否かを判断する。
【0037】
ステップ202で抽出したオブジェクトが線ではないと判断された場合には、ステップ210で、抽出したオブジェクトの描画命令から、該当オブジェクトが曲線であるか否かを判断する。オブジェクトが曲線である場合には、ステップ212へ移行し、該当するオブジェクトに対して、ラスタデータが曲線の分解太さに応じて階調補正されるように階調補正情報を生成する。ここで「曲線の分解太さ」とは、曲線を領域に分解した場合のその領域の近似角度を意味する。そして、ステップ206で、該当するオブジェクトに対して、階調補正情報を使用した描画処理を行い、ステップ208で全オブジェクトが抽出されたか否かを判断する。
【0038】
また、ステップ210で抽出したオブジェクトが曲線ではないと判断された場合には、ステップ214で、抽出したオブジェクトの描画命令から、該当オブジェクトが文字であるか否かを判断する。オブジェクトが文字である場合には、ステップ216へ移行し、該当するオブジェクトに対して、ラスタデータがフォント名に応じて階調補正されるように階調補正情報を生成する。そして、ステップ206で、該当するオブジェクトに対して、階調補正情報を使用した描画処理を行い、ステップ208で全オブジェクトが抽出されたか否かを判断する。
【0039】
一方、ステップ214で抽出したオブジェクトが線、曲線、及び文字の何れでもないと判断された場合には、ステップ218で、該当するオブジェクトに対して、階調補正情報を使用せずに描画処理を行い、ステップ208で全オブジェクトが抽出されたか否かを判断する。
【0040】
ステップ208で全オブジェクトが抽出されたと判断されるまで、ステップ200に戻って処理を繰り返し、全てのオブジェクトに対して描画処理を行い、全オブジェクトが抽出されたと判断された時点でルーチンを終了する。
【0041】
図4には、図3のステップ216で実行される処理の概略を示している。このフローチャートでは、最初のステップ300で、抽出したオブジェクトの描画命令から、フォント名を抽出する。自動補正部76には、フォント名に応じて階調補正係数が予めテーブルで記憶されている。表2にはテーブルの一例を示す。
【0042】
【表2】

【0043】
また、プリンタドライバ32で設定されているUI等を用いることにより、各種の印刷機能が設定されるようになっており、このプリンタドライバ32で階調補正係数の設定も可能となっている。図5には、クライアント端末14上で階調補正係数の設定に用いるユーザインターフェイスの一例とする設定ダイアログ60を示している。
【0044】
この設定ダイアログ60は、例えば階調補正係数の設定(ここでは「フォント補正管理」設定としている)を選択することにより、クライアント端末14の図示しないモニタ上に表示される。この設定ダイアログ60では、フォント名に対し補正係数(A)及び補正係数(B)の設定が可能である。また、設定ダイアログ60では、フォント名の新規追加や削除も可能である。
【0045】
次のステップ302で、自動補正部76に記憶されたテーブルを参照し、抽出したフォント名に対応する補正係数を特定する。そして、ステップ304で、該当するオブジェクトに対して、特定した補正係数を用いて描画処理で使用する階調補正情報を生成する。
【0046】
以上の通り、本実施の形態では、オブジェクトの種類が線や曲線である場合には、その太さに応じた補正係数を適用して階調補正処理を行うことで、細い線もかすれたり消失することもなくプリントすることが可能になる。また、オブジェクトの種類が文字である場合には、フォント名に応じた階調補正係数を適用して階調補正処理を行うことで、小さいフォントや線が細いフォント、特に明朝体において、横線のかすれや消失のないプリントを行うことができる。
【0047】
なお、上記の実施の形態では、階調補正係数がテーブルで記憶されている例について説明したが、階調補正係数が補正曲線として記憶されていてもよい。図6は、クライアント端末14上で階調補正係数の設定に用いるユーザインターフェイスの一例とする設定ダイアログ70を示している。この設定ダイアログ70は、例えば階調補正係数の設定(ここでは「補正係数の調整」としている)を選択することにより、クライアント端末14の図示しないモニタ上に表示される。この設定ダイアログ70では、入力濃度データに対する出力濃度データの値を入力することで、1ドット線、2ドット線等の線の太さやフォントの種類に応じて補正曲線の設定が可能である。また、設定ダイアログ70では、補正曲線の編集も可能である。
【0048】
また、上記の実施の形態では、フォント名に応じて階調補正係数を設定する例について説明したが、フォント名だけでなく、フォントのウェイト(重み)、フォントの大きさ等、広くフォントの種類に応じて階調補正係数を設定してもよい。また、フォント名から書体の形状やフォントの重みを推測し、推測される書体の形状やフォントの重みに応じて階調補正係数を設定してもよい。
【0049】
また、上記の実施の形態では、階調補正処理を行う例について説明したが、階調補正処理と共にスクリーン処理を実施してもよい。また、階調補正処理と共に色変換処理を実施してもよい。
【0050】
また、本発明の画像処理装置は、適切な階調補正係数あるいは階調補正曲線を設定することにより、オフセット印刷などの商業印刷で発生する細線のかすれや消失をシミュレーションすることも可能であり、商業印刷向けのページレイアウトなどの校正を、プリンタでもさらに高精度で行えるようにすることが可能である。
【0051】
例えば、図7(A)及び(B)に示すように、プリンタの階調特性とオフセット印刷の階調特性とは異なるが、図7(C)に示す補正曲線を用いて1ドットラインの階調特性を補正することで、図7(A)に示すプリンタの階調特性を、図7(B)に示すオフセット印刷の階調特性に近付けることができる。
【0052】
また、上記の実施の形態では、ラスタ処理部で階調補正処理を行いラスタデータを生成する例について説明したが、描画命令を補正処理を付加した描画命令に置換し、置換後の描画命令に基づいてラスタデータを生成するようにしてもよい。
【0053】
この場合は、図8に示すように、プリントサーバ12の画像処理部28には、オブジェクト抽出部及び自動補正部に代えて、描画命令置換部72が設けられる。描画命令置換部72では、印刷ジョブが入力されたとき、線または文字からなるオブジェクトを抽出し、抽出したオブジェクト毎にオブジェクトに応じた階調補正を施す描画命令に置換する。描画命令展開部36Aでは、置換された後の描画命令を展開し、ラスタ処理部36Bにおいて、展開した描画命令に基づいてラスタライズ(RIP処理)を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施の形態に適用したネットワークの概略構成を示すブロック図である。
【図2】(A)はプリンタの階調特性(濃度特性)を示すグラフであり、(B)は補正曲線を示すグラフであり、(C)は階調補正の結果を表すグラフである。
【図3】描画処理のルーチンを示すフローチャートである。
【図4】図3のステップ216で実行される処理の概略を示すフローチャートである。
【図5】階調補正係数の設定に用いる設定ダイアログを示す図である。
【図6】階調補正係数の設定に用いる設定ダイアログの他の例を示す図である。
【図7】(A)はプリンタの階調特性を示すグラフであり、(B)はオフセット印刷の階調特性を示すグラフであり、(C)は補正曲線示すグラフである。
【図8】プリントサーバの他の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
10 ネットワーク
12 プリントサーバ
14 クライアント端末
16 通信回線
18 プリンタ
26 プリントコントローラ
28 画像処理部
30 アプリケーション
32 プリンタドライバ
34 印刷機能設定部
36 描画命令展開部
36A 描画命令展開部
36B ラスタ処理部
60 設定ダイアログ
70 設定ダイアログ
72 描画命令置換部
74 オブジェクト抽出部
76 自動補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理端末から入力される画像データ及び描画命令に基づいて画像処理を行うときに、オブジェクトの種類に応じて画像処理を行う画像処理方法であって、
前記オブジェクトの種類が細線重視である場合に、前記オブジェクトごとに線種に応じた画像処理を設定するオブジェクト情報に基づいて、前記オブジェクトごとの画像処理を可能とすることを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記画像処理が階調補正処理であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記描画命令を展開して描画情報を生成すると共に、前記オブジェクトごとに線種に応じた階調補正処理を設定するオブジェクト情報に基づいて前記描画情報を補正することで、前記オブジェクトごとの画像処理を可能とすることを特徴とする請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記階調補正処理を、前記線種に応じて予め記憶された階調補正係数を用いて行うことを特徴とする請求項2または3に記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記階調補正係数が前記線種に応じてテーブルで記憶されたことを特徴とする請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
細線重視である前記オブジェクトの種類が、線、曲線及び文字の何れかであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像処理方法。
【請求項7】
前記オブジェクトの種類が線である場合に、前記オブジェクトごとに線の太さ又は線の角度に応じた画像処理を設定する請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項8】
前記オブジェクトの種類が曲線である場合に、前記オブジェクトごとに曲線を領域に分解した場合のその領域の近似角度に応じた画像処理を設定する請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記オブジェクトの種類が文字である場合に、前記オブジェクトごとに文字の種類に応じた画像処理を設定する請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記文字の種類が、フォント名、フォントの大きさ、及びフォントの重みの何れかである請求項9に記載の画像処理方法。
【請求項11】
前記画像処理にスクリーン処理を含むことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の画像処理方法。
【請求項12】
前記画像処理に色補正処理を含むことを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の画像処理方法。
【請求項13】
前記階調補正処理を、入力画像データに関する濃度データと出力画像データに関する濃度データとがリニアな関係になるように行うことを特徴とする請求項2乃至12の何れか1項に記載の画像処理方法。
【請求項14】
前記階調補正処理を、商業印刷の特性をシミュレーションするように行うことを特徴とする請求項2乃至12の何れか1項に記載の画像処理方法。
【請求項15】
前記画像処理に画像印刷装置に対するスクリーン生成切り替え指示を含むことを特徴とする請求項1乃至14の何れか1項に記載の画像処理方法。
【請求項16】
前記オブジェクトごとに線種に応じた階調補正処理を設定するオブジェクト情報に基づいて前記描画命令を補正処理を付加した描画命令に置換し、置換した描画命令を展開して描画情報を生成することで、前記オブジェクトごとの画像処理を可能とすることを特徴とする請求項1乃至15の何れか1項に記載の画像処理方法。
【請求項17】
画像処理端末から入力される画像データ及び描画命令に基づいて画像処理を行うときに、オブジェクトの種類に応じて画像処理を行う画像処理装置であって、
前記オブジェクトの種類が細線重視である場合に、前記オブジェクトごとに線種に応じた画像処理を設定するオブジェクト情報に基づいて、前記オブジェクトごとの画像処理を行う画像処理部と、
を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項18】
前記描画命令展開部は、細線重視のオブジェクトを抽出するオブジェクト抽出手段を更に備えることを特徴とする請求項17に記載の画像処理装置。
【請求項19】
前記画像処理が階調補正処理であることを特徴とする請求項17または18に記載の画像処理装置。
【請求項20】
前記画像処理部は、前記描画命令を展開して描画情報を生成すると共に、前記オブジェクトごとに線種に応じた階調補正処理を設定するオブジェクト情報に基づいて前記描画情報を補正することで、前記オブジェクトごとの画像処理を行うことを特徴とする請求項19に記載の画像処理装置。
【請求項21】
前記画像処理部は、前記オブジェクトごとに線種に応じた階調補正処理を設定するオブジェクト情報に基づいて前記描画命令を補正処理を付加した描画命令に置換する描画命令置換部と、置換した描画命令を展開して描画情報を生成する描画命令展開部と、を含んで構成されたことを特徴とする請求項19に記載の画像処理装置。
【請求項22】
スクリーン生成切り替え部を備えた画像印刷装置と接続され、前記画像処理部が前記画像処理として前記画像印刷装置に対するスクリーン生成切り替え指示を行うことを特徴とする請求項17乃至21の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項23】
コンピュータを、画像処理端末から入力される描画命令に基づいて画像処理を行うときに、オブジェクトの種類に応じて画像処理を行う画像処理装置として機能させるプログラムであって、
前記オブジェクトの種類が細線重視である場合に、前記オブジェクトごとに線種に応じた画像処理を設定するオブジェクト情報に基づいて、前記オブジェクトごとの画像処理を行う画像処理手段と、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項24】
前記画像処理手段は、前記描画命令を展開して描画情報を生成すると共に、前記オブジェクトごとに線種に応じた階調補正処理を設定するオブジェクト情報に基づいて前記描画情報を補正することで、前記オブジェクトごとの画像処理を行うことを特徴とする請求項23に記載のプログラム。
【請求項25】
前記画像処理手段は、前記オブジェクトごとに線種に応じた階調補正処理を設定するオブジェクト情報に基づいて前記描画命令を補正処理を付加した描画命令に置換し、置換した描画命令を展開して描画情報を生成することで、前記オブジェクトごとの画像処理を行うことを特徴とする請求項23に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−1166(P2007−1166A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184675(P2005−184675)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】