説明

画像処理方法及び画像処理プログラム

【課題】 分光反射率等の算出の際に色配置のバランスを崩さないようにするとともに、他の物体での反射光又は透過光のスペクトルや、用紙の下地色を考慮して、色再現に必要な印刷物の分光反射率を正確に算出し、異なる環境光下でも画像が同じ印象で見えるように色補正を行う。
【解決手段】 第二の光源下にて第二対象物の対象面で反射した光のスペクトル(第二光源下スペクトル)が第一の光源下にて第一対象物の対象面で反射した光のスペクトル(第一光源下スペクトル)と同じとなるときの第二対象物の対象面の分光反射率(第一分光反射率)を算出する際に、第一光源下スペクトルについてクラスター分析を行うとともに、第二対象物の対象面に届く光のスペクトルについてクラスター分析を行い、これらのスペクトルを用いて第一分光反射率を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙に印刷された画像を他の用紙に印刷する場合において、もとの用紙とは異なる種類の用紙に印刷するとき又は異なる環境光下でそれら印刷物を見たときでも、各画像が同じ印象に見えるように色補正を行う画像処理方法、及び、この画像処理方法を実行するための画像処理プログラムに関し、特に、その色補正をより正確に実行するとともに、計算量の削減を可能とする画像処理方法及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタやコピー機、複合機などに代表される画像形成装置は、入力した画像を忠実に再現して用紙に印刷することが望まれる。
ところが、実際には、それらの画像が異なった印象に見えることがある。その原因として、例えば、環境光の種類あるいは位置が異なる場合や、用紙の種類が異なる場合などが挙げられる。
【0003】
ここで、環境光の種類あるいは位置が異なる場合とは、具体的には、次のような場合である。例えば、部屋aには、スキャナが接続されたパーソナルコンピュータ(PC)が設置されており、部屋bには、そのPCに接続されたプリンタ(画像形成装置)が設置されているものとする。そして、部屋aの光源の種類と、部屋bの光源の種類が異なるものとする。この場合、スキャナに読み込ませた印刷物の画像を部屋aで見たときの印象と、プリンタが印刷した印刷物の画像を部屋bで見たときの印象が、違って見えることがある。これは、それぞれの部屋の光源の種類が異なるためである。
【0004】
そこで、光源の種類が異なっても、各画像が同じ印象に見えるように色補正を行う技術が提案されている。
例えば、原画像のスペクトル情報を画素毎に撮影するスペクトル画像撮影手段と、原画像が撮影された空間における照明光のスペクトル分布を検出する撮影光スペクトル検出手段と、その画像が再生される空間における照明光のスペクトル分布を検出する再生環境光スペクトル検出手段と、スペクトル情報から照明光スペクトル分布の影響を除去して被写体の分光反射率を算出する手段と、再生環境光スペクトルと分光反射率分布にもとづいて被写体を再生地と同一照明光で撮影した際のスペクトル分布を算出する手段と、各画素のスペクトル分布を3次元表色ベクトルにする手段と、表色ベクトル情報にもとづいてカラーにするカラー画像再生手段とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
この技術によれば、光源の種類が異なっても、各画像が同じ印象に見えるように色補正を行うことができる。
【0005】
また、用紙の種類が異なる場合とは、例えば、普通紙と再生紙との違い、白色の用紙と白色以外の色がついた用紙との違いなどが挙げられる。
そこで、用紙の種類が異なっても、もとの画像と印刷した画像が同じ印象となるように、その画像の色を再現する技術が提案されている。
例えば、カラー複写機等において、新たに使用される記録紙に応じて容易に階調・色再現性を切り換えるものがある(例えば、特許文献2参照。)。具体的には、予め標準用紙の階調・色再現性を記憶しておき、他の用紙については、0%付近(用紙部)と0%以外(画像部)のそれぞれの信号強度における標準用紙との測光量、測色値比を元に再現性の相違を表現するものである。
この技術によれば、用紙の種類が異なっても、もとの画像と同じ印象となるように、その画像の色を再現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−172649号公報
【特許文献2】特開2001−119594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1、2に記載の技術においては、次のような問題があった。
例えば、特許文献1に記載の技術は、原画像のスペクトル情報や、分光反射率分布、3次元表色ベクトルなどを、画素毎に算出していた。つまり、原画像中の位置が隣接する画素同士が同じようなスペクトル情報を有していた場合でも、それぞれに計算処理されていた。このため、色配置のバランスが崩れる可能性があった。
また、同技術は、照明光のスペクトル分布は考慮しているものの、印刷物を見ている観察環境に設置された他の物体(障害物)から反射又は透過した光のスペクトルについては、考慮していなかった。このため、画像の反射スペクトルを正確に算出できないことから、結果として、各画像を見たときの印象が異なってしまっていた。
【0008】
さらに、特許文献2に記載の技術は、個々の色の再現は可能であるものの、用紙の色(下地色)を考慮していなかった。つまり、背景(下地)の違いによる対比効果(錯覚)を考慮していなかった。このため、実際に当該技術を用いて、異なる種類の用紙に画像を印刷した場合には、各画像が同じ印象に見えないことがあった。
しかも、異なる環境光下で見たときに画像が異なる印象で見えることについては、考慮されていなかった。
【0009】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、印刷画像における色配置のバランスを崩さないようにするとともに、他の物体で反射又は透過した光のスペクトルや、用紙の色(下地色)を考慮して、色再現に必要な印刷物の分光反射率を正確に算出し、異なる環境光下で見たときに画像が同じ印象で見えるように色補正を行う画像処理方法及び画像処理プログラム装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、本発明の画像処理方法は、第一の光源下において第一対象物の対象面で反射した光のスペクトルを第一光源下スペクトルとして算出する第一光源下スペクトル算出工程と、第二の光源下において第二対象物の対象面で反射した光のスペクトルを第二光源下スペクトルとした場合に、この第二光源下スペクトルが第一光源下スペクトルと同じとなるときの第二対象物の対象面の分光反射率を第一分光反射率として算出する第一分光反射率算出工程と、第一分光反射率にもとづき算出されたデータを用いて、印刷物に印刷する画像の色補正を行う色補正工程とを有し、第一光源下スペクトル算出工程は、第一光源下スペクトルを第一対象物の対象面における複数の画素ごとに算出する処理と、算出された複数の画素ごとの第一光源下スペクトルについてクラスター分析を行って、複数のクラスターを形成する処理とを含み、第一分光反射率算出工程は、第二対象物の対象面に届く光のスペクトルをクラスター分析して複数のクラスターを形成し、このクラスター分析を行ったスペクトルとクラスター分析された第一光源下スペクトルとを用いて、第一分光反射率を算出する処理を含む方法としてある。
【0011】
また、本発明の画像処理プログラムは、基準光源下における観察対象面で反射した光のスペクトルを基準スペクトルとして取得する基準スペクトル取得工程と、基準スペクトルにもとづいて、現在の光源下における観察対象面で反射した光のスペクトルを現光源下スペクトルとして算出する現光源下スペクトル算出工程と、現光源下スペクトルをクラスター分析して複数のクラスターに分けるクラスター分析工程と、観察環境光からの光のスペクトルにもとづいて、現光源下スペクトルを補正する観察環境光補正工程とを色補正処理装置に実行させる構成としてある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の画像処理方法及び画像処理プログラムによれば、光源のスペクトルだけでなく、他の物体で反射又は透過した光のスペクトルや、用紙の色(下地色)を考慮しているので、正確に色補正を行うことができる。よって、異なる紙に印刷し、複数の種類の様々な位置に存在する環境光の下で観察した際、色配置の印象を変えない色再現が可能となる。
【0013】
また、観察対象物(印刷物)のスペクトルについてクラスター分析の類似性を用いることにより、色配置のバランスを維持するように補正することができる。
さらに、光源から印刷物に照射される光のスペクトルや、障害物を反射又は透過して印刷物に照射される光のスペクトルについて、クラスター分析によりクラスターを形成することで、それらスペクトル合成の計算量を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】色補正処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】観察環境の構成を示すイメージ図である。
【図3】本発明の実施形態における色補正処理装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図4】観察環境光の補正計算処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】環境光補正処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】反射光・透過光計算処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】出力用紙補正処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】スペクトルデータの波形と、この波形を分解した分解波形とを示すグラフである。
【図9】スペクトルの形状情報を示す図である。
【図10】類似性にもとづくクラスターを示すイメージ図である。
【図11】同じクラスターに属する光線を合成したところを示す図である。
【図12】光源のスペクトルと距離との関係を示す図である。
【図13】障害物によって反射された光のスペクトルを示す図である。
【図14】障害物を透過した光のスペクトルを示す図である。
【図15】観察環境光で観察対象物から反射される光のスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る画像処理方法及び画像処理プログラムの好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、本実施形態においては、本発明の画像処理方法及び画像処理プログラムを実行する色補正処理装置について先に説明し、その後に、画像処理方法及び画像処理プログラムについて説明する。
【0016】
[色補正処理装置]
まず、色補正処理装置の実施形態について、図1を参照して説明する。
同図は、色補正処理装置の構成を示すブロック図である。
なお、ここでは、色補正処理装置の構成についてその概略を説明することとし、各構成が実行する処理の詳細については、後記の「画像処理方法」にて説明する。
【0017】
同図に示すように、色補正処理装置1は、データ入力部11と、原稿データ保存部12と、分光補正処理部13と、スペクトル形状情報算出部14と、クラスター分析演算部15と、クラスター分析結果保存部16と、パネル17と、環境データ保存部18と、環境光分光データ保存部19と、演算部20と、分光データ保存部21とを備えている。
【0018】
データ入力部11は、外部から、基準スペクトルデータ(後述)や用紙情報を取得する入力手段である。なお、本実施形態において、「スペクトル」とは、分光スペクトルをいう。また、「用紙情報」とは、基準光源(例えば、CIE標準光源D50など)の下における出力用紙の下地色のスペクトルデータをいう。
原稿データ保存部12は、基準スペクトルデータ、現光源下スペクトルデータ(後述)、スペクトルの形状情報(後述)、XYZ値を保存する記憶手段である。
なお、「XYZ値」は、画像形成装置が印字出力を行う際に、補正後のスペクトルをXYZに変換するために用いられる。
【0019】
分光補正処理部13は、基準スペクトルデータを現光源下スペクトルデータに変換する処理や、観察環境光スペクトルの強度補正計算などを行う演算手段である。
スペクトル形状情報算出部14は、光のスペクトルの形状情報(後述)を算出する演算手段である。
クラスター分析演算部15は、データを受け取り、クラスター分析を行う演算手段である。
クラスター分析結果保存部16は、クラスター分析の結果を保存する記憶手段である。
【0020】
パネル17は、ユーザによる入力操作により、観察環境に関する情報(壁や窓などの障害物の種類及び配置など)や、観察環境光の種類及び位置等に関する情報を受け取る入力手段である。
環境データ保存部18は、パネル17で入力された各種情報を保存する記憶手段である。
環境光分光データ保存部19は、観察環境光のスペクトルを保存する記憶手段である。観察環境光のスペクトルは、パネル17で入力された後に、環境光分光データ保存部19に保存するようにすることができる。
演算部20は、観察環境光と周囲障害物、観察対象物間の距離計算やベクトル演算を行う演算手段である。
分光データ保存部21は、強度補正を行った観察環境光のスペクトルを保存する記憶手段である。
【0021】
なお、以上説明した色補正処理装置1は、図1に示す構成を包含した単体の装置として製造することもできるが、画像形成装置に搭載することもできる。この色補正処理装置を搭載可能な画像形成装置には、プリンタやコピー機、複合機などが含まれる。
【0022】
[画像処理方法]
次に、本実施形態の色補正処理装置の動作(画像処理方法)について、図2〜図7を参照して説明する。
図2は、観察環境の構成を示すイメージ図である。図3は、本実施形態の色補正処理装置の動作手順を示すフローチャートである。図4は、観察環境光の補正計算処理の手順を示すフローチャートである。図5は、環境光補正処理の手順を示すフローチャートである。図6は、反射光・透過光計算処理の手順を示すフローチャートである。図7は、出力用紙補正処理の手順を示すフローチャートである。
【0023】
なお、ここでは、次の項目について、説明する。
(1)観察環境の構成
(2)色補正処理
(3)観察環境光の補正計算処理
(4)反射光・透過光計算処理
(5)出力用紙補正処理
【0024】
(1)観察環境の構成
(2)〜(5)で説明する各処理の内容を理解容易とするために、先に、観察環境の構成について、図2を参照して説明する。
観察環境とは、例えば、画像形成装置により用紙に印刷された画像をユーザが見るときの、その用紙が存在する空間をいう。具体的には、[背景技術]で説明した部屋bに相当する。
ただし、観察環境に画像形成装置が設置されている必要はない。つまり、その印刷物を、画像形成装置が設置された部屋で見るときは、当該部屋が観察環境になるが、画像形成装置が設置されていない部屋へ持参して見るときは、当該部屋が観察環境となる。ここでは、説明容易とするために、観察環境には画像形成装置が設置されていないものとする。
【0025】
観察環境においては、一又は二以上の光源S(同図においては、二つの光源S1、S2)が配置されている。
光源S(S1、S2)からは、観察環境光L(L1、L2)が放出されている。また、その観察環境光L(L1、L2)が伝播する方向を示すベクトルを、環境光ベクトルL→(L1→、L2→)とする。
【0026】
なお、ベクトルの表記は、本来であれば、矢印(→)、ドット(・)、オーバーバー(−)などの記号を、文字(例えば、Lなど)の上に付して、その文字がベクトルを表していることを示す。ただし、本書においては、文字の上に矢印等を付すような表記が行えないため、文字の右横に矢印(→)を記載することで、ベクトルを表すこととする。この表記は、内積についても同様である。
また、以下の説明においては、観察環境光Lを、単に環境光Lということがある。
【0027】
その観察環境においては、観察対象物Oが存在している。この観察対象物Oは、具体的には、ユーザが見ている用紙である。
観察対象物Oにおいて、ユーザが見ている面を、観察対象面Pという。この観察対象面Pに対して、光源Sから観察環境光Lが照射されているときの光源Sと観察対象面Pとの距離を、距離rOとする。
また、観察対象面Pから直交前方へ伝播する光のベクトルを、法線ベクトルn→とする。
【0028】
さらに、その観察環境においては、観察対象物O以外の物が存在することがある。観察対象物O以外の物には、例えば、壁や窓などがある。これらを周囲障害物(又は、単に障害物)という。
光源Sからの観察環境光Lが周囲障害物に照射されるとき、その周囲障害物における観察環境光Lの光線との交点を交点Bとし、光源Sと交点Bとの距離を距離rBとする。
ただし、交点Bに照射される光が、光源Sからの観察環境光Lそのものではなく、他の周囲障害物(他の交点B’)で反射又は透過した光であるときは、その交点B’と交点Bとの距離を、距離rBとする。
【0029】
また、その交点Bで反射した光の伝播方向を示すベクトルを、反射光ベクトルLR→とする。さらに、その交点Bを透過した光の伝播方向を示すベクトルを、透過光ベクトルLT→とする。
なお、同図においては、透過光ベクトルLT→が観察環境から外方へ向かっており、観察対象物Oに照射されないように示されているが、これに限るものではなく、例えば、光源Sと観察対象物Oとの間に周囲障害物が存在しているようなときは、この周囲障害物からの透過光ベクトルLT→が観察対象物Oに照射されることがある。
【0030】
観察環境光Lが交点Bに入射したときの当該観察環境光Lの光線と周囲障害物面との間の角度をθとする。この角度θは、反射光ベクトルLR→の反射角度、すなわち、周囲障害物面と反射光ベクトルLR→との間の角度と同じである。また、角度θは、透過光ベクトルLT→の透過角度、すなわち、周囲障害物面と透過光ベクトルLT→との間の角度と同じである。
【0031】
(2)色補正処理
色補正処理は、本実施形態の画像処理方法において中心となる処理手順である。
この色補正処理の手順について、図3を参照して説明する。
【0032】
同図に示すように、色補正処理装置1のデータ入力部11は、基準光源(例えば、CIE標準光源D50など)の下において観察対象面P(紙ベース)にて反射した光のスペクトルを示すデータ(基準スペクトルデータ)を外部から取得する(基準スペクトル取得工程、ステップ10)。
具体的には、スキャナなどの画像読取装置(図示せず)が用意され、この画像読取装置が用紙(観察対象物O)における一の面(観察対象面P)に印刷された画像を読み取り、この読み取った画像に関するデータにもとづいて基準スペクトルデータを算出し(又は、画像読取装置に備えられた分光器が、その用紙の観察対象面Pで反射した光のスペクトルを検出して、基準スペクトルデータを算出し)、データ入力部11がその基準スペクトルデータを取得する。
【0033】
画像読取装置は、所定の解像度(例えば、600[dpi])で画像を読み取ることができる装置であって、観察対象面Pを所定数の画素に分けたときに、1画素ごと(1ドットごと)に基準スペクトルデータを算出することができる。例えば、用紙がA4サイズの場合、その用紙の観察対象面Pを7128×5040ドットに分け、1ドットごとに、基準スペクトルデータを算出することができる。
基準スペクトルデータは、波長を示すデータと、その波長におけるスペクトルの強度を示すデータとで構成されている。後述する現光源下スペクトルデータや観察環境光のスペクトルデータ、出力印刷物のスペクトルデータなども同様である。
データ入力部11は、その取得した基準スペクトルデータを原稿データ保存部12に保存する。
【0034】
なお、用紙に印刷された画像は、カラー画像又は白黒画像のいずれでもよいが、ここではカラー画像とする。
また、本実施形態では、基準スペクトルデータの取得を、画像読取装置を用いて行うこととするが、画像読取装置を用いることに限るものではなく、例えば、基準スペクトルデータが既に明らかになっている場合には、それをユーザが手入力し、あるいは、記録媒体に保存されている基準スペクトルデータを読み取るなどして、データ入力部11がその基準スペクトルデータを取得することができる。
【0035】
分光補正処理部13は、原稿データ保存部12から基準スペクトルデータを取り出し、この取り出した基準スペクトルデータを用いて、現在の光源下における観察対象面Pで反射した光のスペクトルに関するデータ(現光源下スペクトルデータ)を算出し(すなわち、基準スペクトルデータを現光源下スペクトルデータに変換し)、この算出した現光源下スペクトルデータを、原稿データ保存部12に保存する(第一光源下スペクトル算出工程、ステップ11)。
この処理は、例えば、ユーザが画像読取装置から観察対象物Oを取り出し、その観察対象面Pに印刷された画像を現在の光源下で見たときのその観察対象面Pで反射した光のスペクトルを算出するものである。
現在の光源下とは、例えば、画像読取装置から取り出した観察対象物Oに印刷されている画像をユーザが見るときの、その観察対象物Oが存在する空間をいう。具体的には、[背景技術]で説明した部屋aに相当する。
【0036】
この基準スペクトルデータにもとづく現光源下スペクトルデータの算出は、次の手順で行うことができる。
例えば、観察対象面Pで反射した光のスペクトル(基準スペクトルデータ)を基準光源のスペクトルで除算すると、観察対象面Pの分光反射率が算出される。この観察対象面Pの分光反射率に現在の光源のスペクトルを乗算すると、現在の光源下における観察対象面Pで反射した光のスペクトル(現光源下スペクトルデータ)を算出することができる(図15(i)〜(iii)参照)。
この処理は、観察対象面Pにおけるすべての画素のそれぞれに対して行われる。
なお、現在の光源は、「第一の光源」に相当する。また、現在の光源下における観察対象物Oは、「第一対象物」に相当する。さらに、現在の光源下における観察対象物Oの観察対象面Pで反射した光のスペクトルは、「第一光源下スペクトル」に相当する。
【0037】
スペクトル形状情報算出部14は、原稿データ保存部12から現光源下スペクトルデータを取り出し、この取り出した現光源下スペクトルデータを、強度のピーク(極大)ごとに分解し、この分解したデータごとに、スペクトルの形状情報(「ピーク時波長」、「半値幅」、「対称性」、「分解波形強度」)を算出する。
具体的には、スペクトル形状情報算出部14は、その現光源下スペクトルデータの強度の極大を特定し、この極大における強度の値を算出する。例えば、現光源下スペクトルデータが図8に示すような波形W0で表される場合には、極大s1における強度ts1と、極大s2における強度ts2が、それぞれ極大値となる。
【0038】
次いで、スペクトル形状情報算出部14は、極大ごとに、その極大値が最大値となる、上に凸の形状の波形を算出し、この波形を分解波形とする。例えば、図8に示した現光源下スペクトルデータの波形W0を、分解波形W1とW2に分ける。
これら分解波形W1、W2は、原則として、現光源下スペクトルデータの波形W0のうち一つの極大を含んだ部分を包含した形状とする。ただし、波長における所定の範囲(例えば、380nm〜780nm)のうち、現光源下スペクトルデータが途中で切れていてベースライン(後述)に達していない部分や、一の極大と隣りの極大との間の部分においては、クラスター分析(後述)で必要となるスペクトルの形状情報を算出できない。そこで、それらの部分においては、現光源下スペクトルデータを微分して接線を求め、この接線の一部を含むようにしながら分解波形を算出(形成)する。
このように分解波形を算出することで、現光源下スペクトルデータを示す波形を複数の分解波形に分解することができる。
なお、ベースラインとは、強度における一つの値(ta)を示す一次関数の波形である。このベースラインは、分解波形が示す強度の最小値(ta)を表した線でもある。各分解波形は、少なくとも強度taのときの波長のデータを含んでいることが望ましい。
【0039】
続いて、スペクトル形状情報算出部14は、分解波形ごとに、スペクトルの形状情報(「ピーク時波長」、「半値幅」、「対称性」、「分解波形強度」)を算出する。
ここで、「ピーク時波長」とは、分解波形において強度が最大値(極大値)を示すときの波長の値をいう。
「半値幅」とは、分解波形における強度tbのときの二つの波長の差(半値全幅)をいう。ここで、強度tbとは、分解波形の強度の最大値(例えばts1)とベースラインの強度(ta)との差を2で除算した値をベースラインの強度(ta)に加算したときの強度をいう。
「対称性」とは、ピーク時波長を境として「半値幅(半値全幅)」を分けたときに得られる「半値幅」の右側部分の波長と左側部分の波長との差をいう。
「分解波形強度」とは、分解波形により示されるスペクトルの強度をいう。
これらスペクトルの形状情報を分解波形ごとに算出することにより、現光源下スペクトルデータを、分解波形を示すスペクトルデータ(分解スペクトルデータ)に分解できる。
スペクトル形状情報算出部14は、スペクトルの形状情報を画素ごとに算出し、原稿データ保存部12に保存する(形状情報取得処理、ステップ12)。なお、画素ごとに算出されたスペクトルの形状情報を図9に示す。
【0040】
クラスター分析演算部15は、原稿データ保存部12から観察対象面Pの現在の光源におけるスペクトルの形状情報を取り出し、この取り出したスペクトルの形状情報についてクラスター分析を行い、このクラスター分析の結果をクラスター分析結果保存部16に保存する(クラスター分析処理、ステップ13)。
また、クラスター分析演算部15は、クラスター分析結果保存部16からクラスター分析の結果を取り出し、このクラスター分析の結果にもとづいて、観察対象面P中の位置が隣接し、スペクトルの形状情報が類似しているクラスターを形成し(クラスター形成処理)、クラスター分析結果保存部16に保存する(ステップ14)。
さらに、クラスター分析演算部15は、クラスター分析結果保存部16からクラスター分析の結果を取り出し、このクラスター分析の結果にもとづいて、クラスター間のスペクトルの形状情報の類似度を取得し、クラスター分析結果保存部16に保存する(類似度取得処理、ステップ15)。
【0041】
これらステップ13〜ステップ15の処理について、さらに説明する。
クラスター分析には、種々の手法がある。例えば、最短距離法、最長距離法、群平均法、ウォード法などの階層的手法や、k-means法などの分割最適化手法などがある。いずれの手法を用いるかは任意に決めることができるが、本実施形態では、階層的手法を用いることとする。
なお、クラスター分析は、図3のステップ13〜ステップ15以外にも、例えば、図6のステップ69及びステップ74、図3のステップ20において実行される。これらステップ69、ステップ74、ステップ20におけるクラスター分析は、扱うデータが異なるだけであって、基本的な手順は、ステップ13〜ステップ15におけるクラスター分析の手順と同様である。
ここでは、階層的手法の一般的な手順について先に説明し、その後に、現光源下スペクトルデータを階層的手法によりクラスター分析する例(ステップ13〜ステップ15の処理手順)について説明する。
【0042】
クラスター分析の一つの手法である階層的手法は、次の手順で行われる。
(手順a)与えられたデータを要素として、データの行列を作成する。
(手順b)データの行列から距離(又は類似度)の行列を算出する。この算出方法には、例えば、ユークリッド距離を算出する方法や、ユークリッド平方距離を算出する方法などがある。
(手順c)距離(又は類似度)の行列からコーフェン行列を算出する。例えば、距離の行列がN個のデータで構成されているとき、1個のデータだけを含むN個のクラスターがある初期状態をつくる。この状態から始めて、データx1とx2との間の距離d(x1,x2)(非類似度)からクラスター間の距離d(C1,C2)を計算し、最も距離の近い二つのクラスターを逐次的に併合する。そして、この併合を、すべてのデータが一つのクラスターに併合されるまで繰り返すことで、階層構造を獲得する。この(手順c)において、初期状態の次の状態以降の行列(二つのクラスターの最初の併合が行われた後の行列)がコーフェン行列である。
【0043】
(手順d)コーフェン行列にもとづいてデンドログラム(樹状図)を作成する。デンドログラムは、図10に示すように、各終端ノードが各対象を表し、併合されてできたクラスターを非終端ノードで表した二分木である。
(手順e)尺度基準を設定して、クラスターを確定する。
(手順f)クラスターごとに類似度を特定する。
【0044】
これら(手順a)〜(手順f)のうち、(手順a)〜(手順c)(行列に関する演算処理)が本実施形態のステップ13に相当し、(手順c)〜(手順e)(クラスターの併合、確定に関する演算処理)がステップ14に相当し、(手順f)がステップ15に相当する。
その階層的手法を用いて、現光源下スペクトルデータをクラスター分析する場合には、次の手順で行うことができる。
クラスター分析演算部15は、原稿データ保存部12からスペクトルの形状情報(図9参照)を取り出すと、このスペクトルの形状情報を要素として、行列を作成する(手順a)。ここで、スペクトルの形状情報には、前述したように、「ピーク時波長」、「半値幅」、「対称性」、「分解波形強度」があるが、これら形状情報ごとに、データの行列を作成する。
【0045】
そのスペクトルの形状情報を要素とした行列(データ行列)から、例えば、ユークリッド距離を使用して、距離の行列を算出する(手順b)。そして、算出した距離の行列を構成する要素のそれぞれをクラスターとする。
次いで、算出した距離の行列の中から最も距離の近い二つのクラスターを選択し、この選択した二つのクラスターを一つのクラスターに併合する。そして、併合後の行列であるコーフェン行列から、例えば、ユークリッド距離を使用して、新たにコーフェン行列を算出する(手順c)。
続いて、算出したコーフェン行列の中から最も距離の近い二つのクラスターを選択し、この選択した二つのクラスターを一つのクラスターに併合する。そして、併合後の行列であるコーフェン行列から、例えば、ユークリッド距離を使用して、新たにコーフェン行列を算出する(手順c)。
これらクラスターの併合とコーフェン行列の算出は、すべてのクラスターが一つのクラスターに併合されるまで繰り返される。
【0046】
すべてのクラスターが一つのクラスターに併合されると、今度は、尺度基準設定値を定める(手順d)。そして、尺度基準設定値よりも短い距離で併合されたクラスターを選択する(手順e)。この選択したクラスターが、ステップ15で求めるクラスターであり、これらクラスターが併合された距離が、当該クラスターの類似度として設定される(手順f)。
なお、スペクトルの形状情報ごとにクラスター分析を行うと、クラスターとしてまとめられる画素が要素ごとに異なるが、優先度の高い要素(ピーク時波長、分解波形強度、半値幅、・・・)から類似性の高いものを順にクラスターにする。最終的には全要素の類似の高い画素をクラスターにする。各要素の類似度の関係が処理前後で変化が無いように比較するため、個々の要素の類似度を調べる。
クラスター分析演算部15は、クラスター分析を行った結果から、クラスター間のスペクトルの形状情報の類似度を取得して、クラスター分析結果保存部16に保存する。
【0047】
次いで、「観察環境光の補正計算」が実行される(ステップ16)。
この「観察環境光の補正計算」については、後記の「(3)観察環境光の補正計算処理」にて詳述する。
【0048】
続いて、「出力用紙補正処理」が実行される(ステップ17)。
この「出力用紙補正処理」については、後記の「(5)出力用紙補正処理」にて詳述する。
【0049】
分光補正処理部13は、補正後のスペクトルF’を観察環境光下のスペクトルC’に変換する(ステップ18)。
具体的には、補正後のスペクトルF’を現在の光源のスペクトルAで除算して、出力印刷物の分光反射率E’を算出する(第二分光反射率算出工程、図15(x)〜(xii))。
次いで、観察環境光のスペクトルDに出力印刷物の分光反射率E’を乗算して、観察環境光下のスペクトルC’を算出する(同図(xiii)〜(xv))。
なお、出力印刷物の分光反射率E’は、「第二分光反射率」に相当する。また、「第二分光反射率算出工程」は、「出力用紙補正処理」(後述)を含む。
【0050】
スペクトル形状情報算出部14は、光のスペクトルの形状情報を算出する(ステップ19)。ここで、各波長における強度にもとづいて、スペクトルの波形をピークごとに分解する。そして、その分解されたスペクトルの波形ごとに、形状情報(「ピーク時波長」、「半値幅」、「対称性」、「分解波形強度」)を算出する。
クラスター分析演算部15は、観察対象面Pの指定の光源下における補正後のスペクトルの形状情報と座標にもとづいて、クラスター分析を行い、この結果をクラスター分析結果保存部16に保存する(ステップ20)。
【0051】
演算部20は、クラスター分析結果保存部16からクラスター分析の結果を取り出し、現在の光源下におけるスペクトルの類似度の比率と補正後のスペクトルの類似度を比較する(ステップ21)。
演算部20は、クラスター分析結果保存部16のクラスター分析の結果にもとづいて、観察対象面Pのスペクトルの形状の類似度がもとの光源下における関係性に近づくように補正する(ステップ22)。その際、観察面上で距離の近いもの同士の関係性を優先的に補正する。
【0052】
(3)観察環境光の補正計算処理
この処理は、例えば、ユーザが観察対象物Oの観察対象面Pに印刷された画像を観察環境光の下で見たときのその観察対象面Pに届く光のスペクトルを算出し、この算出した光のスペクトルを用いて、その観察環境面Pにて反射した光のスペクトルを補正するものである。
【0053】
図4に示すように、色補正処理装置1は、観察環境を指定する(ステップ30)。具体的には、ユーザが、タッチパネル等で構成されるパネル17を操作することにより、観察対象物Oや障害物に関するデータを環境データとして入力する。これにより、パネル17は、環境データのユーザ指定を受ける。
ここで、障害物とは、観察環境において観察対象物Oの周囲に存在する物であって、当該障害物を反射又は透過した光がその観察対象物Oに届くときの当該物をいう。具体的には、例えば、壁や窓などが含まれる。
【0054】
環境データには、観察対象物Oの配置等に関するデータと、障害物の種類や配置等に関するデータが含まれる。
観察対象物Oの配置等に関するデータには、例えば、観察環境において観察対象物Oが配置された位置を示す座標、観察対象物Oの大きさを示す座標などが含まれる。なお、観察環境における観察対象物Oは、「第二対象物」に相当する。
障害物の種類や配置等に関するデータには、例えば、障害物の名称、障害物の分光反射率、障害物の光透過率、障害物が配置された位置を示す座標、障害物の大きさを示す座標などが含まれる。
パネル17は、その入力された環境データを、環境データ保存部18に保存する。
【0055】
また、色補正処理装置1は、観察環境光の種類及び位置を指定する(ステップ31)。具体的には、ユーザが、タッチパネル等で構成されるパネル17を操作することにより、観察環境光Lの光源Sの種類及び位置に関するデータを環境光データとして入力する。これにより、パネル17は、環境光データのユーザ指定を受ける。
ここで、環境光データには、観察環境光Lの光源Sの種類や配置に関するデータ、具体的には、例えば、観察環境光Lを放出する光源Sの種類、観察環境光Lのスペクトル、観察環境において光源Sが配置された位置を示す座標などが含まれる。
なお、観察環境に配置された光源Sは、「第二の光源」に相当する。
パネル17は、その入力された環境光データを、環境データ保存部18に保存する。
【0056】
演算部20は、環境データ保存部18から環境データ(観察対象物Oに関するデータ)と環境光データを取り出し、これら環境データ及び環境光データにもとづいて、各観察環境光L1、L2からの光線のベクトルL→と観察対象面Pの法線ベクトルn→との内積を計算する(ステップ32)。
【0057】
具体的には、演算部20は、環境データ保存部18から観察対象物Oに関するデータと環境光データを取り出す。
次いで、観察対象物Oに関するデータにもとづいて、観察対象面Pにおける各画素の位置を特定し、各画素ごとに、観察対象面Pの法線ベクトルn→を算出する。なお、この法線ベクトルn→の長さは、各画素における分光反射率に比例した長さとする。
続いて、演算部20は、観察対象面Pにおける各画素の位置と、観察環境光L1、L2の光源S1、S2の位置にもとづいて、それら光源S1、S2から各画素へ向かう光線のベクトルL→を算出する。
【0058】
さらに、演算部20は、各画素ごとに、光線のベクトルL→と法線ベクトルn→との間の角度(なす角)を算出する。
そして、演算部20は、各画素ごとに、光線のベクトルL→と法線ベクトルn→となす角とを用いて、光線のベクトルL→と法線ベクトルn→との内積L→・n→を計算する。
【0059】
クラスター分析演算部15は、環境データ保存部18から環境光データを取り出すとともに、演算部20から内積L→・n→を受け取り、環境光データから得られる光線のベクトルL→の始点と、内積L→・n→についてクラスター分析を行い、(すなわち、光源S1、S2ごとに、内積L→・n→についてクラスター分析を行い、)類似性の高いベクトルのクラスターを形成する(ステップ33)。
なお、クラスター分析については、既述の通りであるが、最初に作成されるデータの行列は、光源S1、S2ごとに、内積L→・n→を要素として作成される。
【0060】
演算部20は、光線のベクトルL→の始点と内積L→・n→についてのクラスター分析の結果をクラスター分析演算部15から受け取ると、そのクラスター分析演算部15において形成されたクラスターに含まれる光線を合成する。
例えば、図11に示すように、光線L1と光線L2が同じクラスターに含まれている場合、それら光線L1のベクトルL1→と光線L2のベクトルL2→とを合成して、光線L’のベクトルL’→を得る。
【0061】
そして、演算部20は、光線のベクトルL’→と観察対象面Pの法線ベクトルn→との内積L’→・n→を算出し、この内積L’→・n→が、(L’→・n→)<0であるか否かを判断する(ステップ34)。判断の結果、その内積L’→・n→が(L’→・n→)<0であるときは、「反射光・透過光計算」を行なう(ステップ35)。この「反射光・透過光計算」については、後記の「(4)反射光・透過光計算処理」にて詳述する。
【0062】
一方、その内積L’→・n→が(L’→・n→)<0ではないときは、環境データ保存部18から取り出した環境データと環境光データにもとづいて、各観察環境光L1、L2からの光線の延長線上に周囲障害物があるか否かを判断する(ステップ35)。
判断の結果、その周囲障害物があるときは、「反射光・透過光計算」を行なう(ステップ36)。
一方、その周囲障害物がないときは、以下に説明するステップ37以降の処理を実行する。なお、「反射光・透過光計算」の処理が終了したときも、以下に説明するステップ37以降の処理が実行される。
【0063】
演算部20は、環境データ保存部18から環境データを取り出して、各観察環境光L1、L2の光源S1、S2から観察対象物Oまでの距離rO、又は、最終反射面あるいは最終透過面から観察対象物Oまでの距離rOを計算する(ステップ37)。
ここで、前者の距離rOは、光源S1、S2と観察対象物Oとの間に障害物が無い場合に算出される距離である。一方、後者の距離rOは、光源S1、S2と観察対象物Oとの間に障害物がある場合に算出される距離である。つまり、図3に示す交点Bと観察対象面Pとの距離を距離rOとして算出する。
演算部20は、算出した距離rOを環境データ保存部18に保存する。
【0064】
分光補正処理部13は、環境光分光データ保存部19から観察環境光の光線のスペクトルを取り出すとともに、環境データ保存部18から、光源S1、S2から観察対象物Oまでの距離rOを取り出す。ただし、「反射光・透過光計算」の処理を実行したときは、分光補正処理部13は、分光データ保存部21からLR又はLTの光線のスペクトルを取り出すとともに、環境データ保存部18から、最終反射面又は最終透過面から観察対象物Oまでの距離rOを取り出す。
そして、分光補正処理部13は、観察環境光の光線Lのスペクトル(又はLRあるいはLTのスペクトル)の強度を、各波長ごとに、距離rOの2乗で除算して、スペクトルLrOを計算し、分光データ保存部21に保存する(ステップ38)。
これは、図12に示すように、光源のスペクトルの強度が、距離の2乗分の1に比例して減衰することを考慮したものである。
【0065】
分光補正処理部13は、分光データ保存部21から光線のスペクトルLrOを取り出し、観察対象物Oに届いたすべての光線のスペクトルLrOの強度を各波長ごとに加算(合成)し、(すなわち、光源Sからの光線のスペクトルと周囲障害物からの反射光又は透過光のスペクトルとを画素ごとに合成し、)この加算(合成)した光線のスペクトルを、観察対象物Oに届いた光線のスペクトルDとして、分光データ保存部21に保存する(ステップ39)。
【0066】
そして、「環境光補正処理」を実行する(ステップ40)。「環境光補正処理」は、次の手順で実行される。
図5に示すように、分光補正処理部13は、原稿データ保存部12から、現在の光源下における観察対象面Pで反射される光のスペクトル(現光源下スペクトルデータC)を取り出す(ステップ50)。
分光補正処理部13は、取り出した現光源下スペクトルデータCと、観察対象物Oに届いた光線のスペクトルDとにもとづいて、観察対象面Pの分光反射率(スペクトルE)を計算し、分光データ保存部21に保存する(第一分光反射率算出工程、ステップ51)。
なお、スペクトルEは、次式を用いて算出することができる(図15(iii)〜(vi)参照)。
スペクトルE=スペクトルC÷スペクトルD ・・・(式1)
この式1を用いて算出されたスペクトルEは、色再現に必要な出力印刷物の分光反射率(E)である。
【0067】
なお、式1の「スペクトルC」は、現光源下スペクトルデータCを代入するものであるが、これは、当該現光源下スペクトルデータCと、観察環境光下において観察対象物Oの観察対象面Pで反射した光のスペクトルのデータとが、同じとなるときの観察対象面Pの分光反射率(E:第一分光反射率)を算出するためのものである。
また、観察環境光下における観察対象物Oの観察対象面Pで反射した光のスペクトルは、「第二光源下スペクトル」に相当する。
【0068】
分光補正処理部13は、現在の光源で出力印刷物から反射される光の分光分布(スペクトルF)を計算し、分光データ保存部21に保存する(ステップ52)。
なお、スペクトルFは、次式を用いて算出できる(図15(vii)〜(ix)参照)。
スペクトルF=スペクトルA×スペクトルE ・・・(式2)
この式2のうち、スペクトルAとは、現在の光源のスペクトルである。
【0069】
そして、「環境光補正処理」を終了し、「観察環境光の補正計算処理」を終了する。
【0070】
(4)反射光・透過光計算処理
図4のステップ36に示す「反射光・透過光計算処理」は、次の手順で実行される。
図6に示すように、演算部20と分光補正処理部13は、環境データ保存部18から環境データと環境光データ(光源S1、S2に関するデータ)を取り出すと、各観察環境光L1、L2の光線の延長線上に周囲障害物が存在しているか否かを判断する(ステップ60)。
判断の結果、周囲障害物が存在していないときは、分光補正処理部13は、観察対象物Oに届かない観察環境光の光線のスペクトルを0とし、分光データ保存部21に保存する(ステップ61)。そして、「反射光・透過光計算処理」を終了し、図4に示すステップ37以降の処理を実行する。
【0071】
一方、周囲障害物が存在しているときは、演算部20は、環境データ保存部18から取り出した環境データと環境光データにもとづいて、観察環境光L1、L2の光線と周囲障害物面との交点Bの座標を計算する(ステップ62)。
演算部20は、環境データ及び環境光データにもとづいて、観察環境光L1、L2の光源S1、S2(又は、他の障害物の反射点・透過点)と周囲障害物面の交点Bまでの距離rBを計算する(ステップ63)。
演算部20は、それら環境データ及び環境光データにもとづいて、各観察環境光L1、L2の光線のベクトルL→と周囲障害物面のなす角θを計算する(ステップ64)。
分光補正処理部13は、環境データ保存部18から環境光データを取り出し、観察環境光L1、L2の光線のスペクトルLの強度を、各波長について、距離rBの2乗で割ったスペクトルLrBを計算し、分光データ保存部21に保存する(ステップ65)。
【0072】
以降は、ステップ66〜ステップ70の処理と、ステップ71〜ステップ75の処理が、並行して実行される。
分光補正処理部13は、分光データ保存部21から距離補正後の観察環境光の光線のスペクトルを取り出すとともに、環境データ保存部18から環境データ(障害物に関するデータ)を取り出す。そして、分光補正処理部13は、観察環境光の光線のスペクトルLrBに障害物の反射率スペクトルを乗算してスペクトルLRを算出し、分光データ保存部21に保存する(ステップ66)。なお、スペクトルLRは、「最終反射・透過スペクトル」に相当する。
このスペクトルLRは、障害物によって反射された光のスペクトルであり、図13に示すように、光源のスペクトルLと、障害物の反射率スペクトルRとを乗算することで得られる。
【0073】
演算部20は、環境データ保存部18からの環境データにもとづいて、交点Bを始点として、観察環境光の光線のベクトルが障害物面に対して入射側に2θ回転したベクトルLR→(反射光ベクトル)を計算する(ステップ67、「2θ」については、図2参照)。
演算部20は、光線の反射光ベクトルLR→と観察対象面Pの法線ベクトルn→との内積を計算する(ステップ68)。
【0074】
クラスター分析演算部15は、環境データ保存部18の環境データから得られる光線のベクトルLR→の始点と、演算部20において計算した内積LR→・n→についてクラスター分析を行い、類似性の高いベクトルのクラスターを形成する(ステップ69)。
演算部20は、クラスター分析演算部15において形成したクラスターに含まれる光線を合成し、光線のベクトルLR’→として観察対象面Pの法線ベクトルn→との内積LR’→・n→を算出し、この内積LR’→・n→が(LR’→・n→)<0であるか否かを判断する(ステップ70)。
判断の結果、その内積が(LR’→・n→)<0であるときは、反射光・透過光計算を終了し、図4に示すステップ37以降の処理を実行する。
一方、その内積が(LR’→・n→)<0でないときは、図6に示すステップ60以降の処理を実行する。
【0075】
また、ステップ65の処理が実行されると、前述したステップ66〜ステップ70の処理と並行して、以下に説明するステップ71〜ステップ75の処理を実行する。
分光補正処理部13は、分光データ保存部21から距離補正後の観察環境光の光線のスペクトルを取り出すとともに、環境データ保存部18から環境光データ(障害物に関するデータ)を取り出す。そして、分光補正処理部13は、観察環境光の光線のスペクトルLrBに障害物の透過率スペクトルを乗算してスペクトルLTを算出し、分光データ保存部21に保存する(ステップ71)。なお、スペクトルLTは、「最終反射・透過スペクトル」に相当する。
このスペクトルLTは、障害物によって透過された光のスペクトルであり、図14に示すように、光源のスペクトルLと、障害物の透過率スペクトルTとを乗算することで得られる。
【0076】
演算部20は、環境データ保存部18からの環境データにもとづいて、交点Bを始点としたベクトルLT→(透過光ベクトル)を計算する(ステップ72)。
演算部20は、光線の透過光ベクトルLT→と観察対象面Pの法線ベクトルn→との内積を計算する(ステップ73)。
クラスター分析演算部15は、環境データ保存部18の環境データから得られる光線のベクトルLT→の始点と、演算部20において計算した内積LT→・n→についてクラスター分析を行い、類似性の高いベクトルのクラスターを形成する(ステップ74)。
【0077】
演算部20は、クラスター分析演算部15において形成したクラスターに含まれる光線を合成し、光線のベクトルLT’→として観察対象面Pの法線ベクトルn→との内積LT’→・n→を算出し、この内積LT’→・n→が(LT’→・n→)<0であるか否かを判断する(ステップ75)。
判断の結果、その内積が(LT’→・n→)<0であるときは、反射光・透過光計算を終了し、図4に示すステップ37以降の処理を実行する。
一方、その内積が(LT’→・n→)<0でないときは、図6に示すステップ60以降の処理を実行する。
【0078】
(5)出力用紙補正処理
図7に示すように、データ入力部11は、基準光源(例えば、CIE標準光源D50など)の下における出力用紙の下地色のスペクトルデータを取得し、これを下地色スペクトルデータとして、原稿データ保存部12に保存する(下地色取得処理、ステップ80)。
なお、ここでいう「出力用紙」とは、この[画像処理方法]を実行して色補正処理装置及び画像形成装置が色補正を行った後に、その画像形成装置が印刷処理を行おうとする用紙をいう。
また、このステップ80の処理は、図3に示すステップ10の処理と同様の内容で行うことができる。すなわち、スキャナなどの画像読取装置が出力用紙における一の面を読み取り、この読み取って得られたデータにもとづいて下地色スペクトルデータを算出し(又は、画像読取装置に備えられた分光器が、その出力用紙で反射した光のスペクトルを検出して、下地色スペクトルデータを算出し)、データ入力部11がその基準スペクトルデータを取得するようにすることができる。
【0079】
分光補正処理部13は、(スペクトルFの分光強度)≧(現在の光源下における下地色スペクトルαの分光強度)であるか否かを判断する(ステップ81)。
判断の結果、(スペクトルFの分光強度)≧(現在の光源下における下地色スペクトルαの分光強度)であるときは、分光補正処理部13は、スペクトルFを分光データ保存部21に保存する(ステップ82)。
そして、「出力用紙補正処理」を終了し、図3のステップ18以降の処理を実行する。
【0080】
一方、(スペクトルFの分光強度)≧(現在の光源下における下地色スペクトルαの分光強度)でないときは、分光補正処理部13は、下地色スペクトルαの分光強度のMAX値とスペクトルFの分光強度のMAX値が一致するように、すべての分光強度を、同比率で補正する(ステップ83)。
次いで、分光補正処理部13は、補正したスペクトルF’を分光データ保存部21に保存する(ステップ84)。
そして、「出力用紙補正処理」を終了し、図3のステップ18以降の処理を実行する。
【0081】
なお、図3〜図7の各フローチャートに示された処理がすべて終了すると、色補正処理装置が搭載された画像形成装置においては、次の処理が実行される。
補正後のスペクトルをXYZに変換し、このXYZ値をLabに変換する。画像形成装置は、特性に合わせた、LabからRGBまたはLabからトナーのCMYK値に変換するルックアップテーブルを保有しており、このルックアップテーブルを用いて出力値を決定する。
【0082】
[画像処理プログラム]
次に、画像処理プログラムについて説明する。
上記の各実施形態におけるコンピュータ(画像形成装置、色補正処理装置)の画像処理機能(画像処理方法を実行するための機能)は、記憶手段(例えば、ROM(Read Only Memory)やハードディスクなど)に記憶された画像処理プログラムにより実現される。
【0083】
画像処理プログラムは、コンピュータの制御手段(CPU(Central Processing Unit)など)に読み込まれることにより、コンピュータの構成各部に指令を送り、所定の処理、たとえば、色補正処理装置の色補正処理、観察環境光の補正計算処理、反射光・透過光計算処理、出力用紙補正処理などを行わせる。
これによって、画像処理機能は、ソフトウエアである画像処理プログラムとハードウエア資源であるコンピュータ(画像形成装置、色補正処理装置)の各構成手段とが協働することにより実現される。
【0084】
なお、画像処理機能を実現するための画像処理プログラムは、コンピュータのROMやハードディスクなどに記憶される他、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、たとえば、外部記憶装置及び可搬記録媒体等に格納することができる。
外部記憶装置とは、CD−ROM(Compact Disk−Read
Only Memory)等の記憶媒体を内蔵し、画像形成装置に外部接続されるメモリ増設装置をいう。一方、可搬記録媒体とは、記録媒体駆動装置(ドライブ装置)に装着でき、かつ、持ち運び可能な記録媒体であって、たとえば、フレキシブルディスク,メモリカード,光磁気ディスク等をいう。
【0085】
そして、記録媒体に記録されたプログラムは、コンピュータのRAM(Random Access
Memory)等にロードされて、CPU(制御手段)により実行される。この実行により、上述した実施形態の画像形成装置の機能が実現される。
さらに、コンピュータで画像処理プログラムをロードする場合、他のコンピュータで保有された画像処理プログラムを、通信回線を利用して自己の有するRAMや外部記憶装置にダウンロードすることもできる。このダウンロードされた画像処理プログラムも、CPUにより実行され、上記実施形態の画像形成装置の画像処理機能を実現する。
【0086】
以上説明したように、本実施形態の画像処理方法及び画像処理プログラムによれば、光源のスペクトルだけでなく、他の物体で反射又は透過した光のスペクトルや、用紙の色(下地色)を考慮しているので、正確に色補正を行うことができる。よって、異なる紙に印刷し、複数の種類の様々な位置に存在する環境光の下で観察した際、色配置の印象を変えない色再現が可能となる。
【0087】
また、観察対象物(印刷物)のスペクトルについてクラスター分析の類似性を用いることにより、色配置のバランスを維持するように補正することができる。
さらに、光源から印刷物に照射される光のスペクトルや、障害物を反射又は透過して印刷物に照射される光のスペクトルについて、クラスター分析によりクラスターを形成することで、それらスペクトル合成の計算量を削減できる。
【0088】
以上、本発明の画像処理方法及び画像処理プログラムの好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る画像処理方法及び画像処理プログラムは上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、画像形成装置に搭載することを想定した色補正処理装置を示したが、色補正処理装置は、画像形成装置に搭載することに限るものではなく、色補正を行う種々の装置に搭載することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、色補正に関する発明であるため、色補正を行う装置や機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 色補正処理装置
11 データ入力部
12 原稿データ保存部
13 分光補正処理部
14 スペクトル形状情報算出部
15 クラスター分析演算部
16 クラスター分析結果保存部
17 パネル
18 環境データ保存部
19 環境光分光データ保存部
20 演算部
21 分光データ保存部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の光源下において第一対象物の対象面で反射した光のスペクトルを第一光源下スペクトルとして算出する第一光源下スペクトル算出工程と、
第二の光源下において第二対象物の対象面で反射した光のスペクトルを第二光源下スペクトルとした場合に、この第二光源下スペクトルが前記第一光源下スペクトルと同じとなるときの前記第二対象物の対象面の分光反射率を第一分光反射率として算出する第一分光反射率算出工程と、
前記第一分光反射率にもとづき算出されたデータを用いて、印刷物に印刷する画像の色補正を行う色補正工程とを有し、
前記第一光源下スペクトル算出工程は、
前記第一光源下スペクトルを前記第一対象物の対象面における複数の画素ごとに算出する処理と、
算出された複数の画素ごとの第一光源下スペクトルについてクラスター分析を行って、複数のクラスターを形成する処理とを含み、
前記第一分光反射率算出工程は、
前記第二対象物の対象面に届く光のスペクトルをクラスター分析して複数のクラスターを形成し、このクラスター分析を行ったスペクトルと前記クラスター分析された第一光源下スペクトルとを用いて、前記第一分光反射率を算出する処理を含む
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記第一光源下スペクトル算出工程は、
前記複数の画素ごとに、前記第一光源下スペクトルの形状情報を取得する形状情報取得処理と、
取得された形状情報にもとづいて、前記第一光源下スペクトルについてクラスター分析を行う分析処理と、
このクラスター分析の結果にもとづいて、前記形状情報が類似しているクラスターを複数形成するクラスター形成処理と、
クラスター間のスペクトルの形状情報の類似度を取得する類似度取得処理とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記第一分光反射率算出工程は、
前記第二の光源から前記第二対象物の対象面に直接届く光線のベクトルと前記第二対象物の対象面からの法線ベクトルとの内積を算出する処理と、
前記光線のベクトルの始点と前記内積についてクラスター分析を行って、複数のクラスターを形成する処理と、
所定の障害物を反射又は透過して前記第二対象物の対象面に届いた光のスペクトルを最終反射・透過スペクトルとして算出する処理と、
前記最終反射・透過スペクトルについてクラスター分析を行って、複数のクラスターを形成する処理と、
前記第二の光源から第二対象物の対象面に直接届く光のスペクトルと、前記最終反射・透過スペクトルと、をそれぞれ形成されたクラスターにもとづいて合成する処理と、
この合成により得られたスペクトルと、前記第一光源下スペクトルとを用いて、前記第一分光反射率を算出する処理とを含む
ことを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記第一対象物の分光反射率が前記第一分光反射率であるときに前記第一の光源下において前記第一対象物の対象面で反射した光のスペクトルを補正前の第一光源下スペクトルとして算出し、この算出した補正前の第一光源下スペクトルを前記第一対象物の下地色にもとづいて補正し、この補正後の第一光源下スペクトルと前記第一の光源のスペクトルにもとづいて、前記第一対象物の対象面の分光反射率を第二分光反射率として算出する第二分光反射率算出工程を有し、
前記色補正工程は、前記第二分光反射率算出工程で算出された第二分光反射率にもとづいて、前記印刷物に印刷する画像の色補正を行う
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記第二分光反射率算出工程は、
前記第一対象物の対象面が下地色であるときの当該対象面で反射した光のスペクトルを下地色スペクトルとして取得する下地色取得処理と、
前記第一光源下スペクトルの強度が前記下地色スペクトルの強度よりも大きいときに、前記下地色スペクトルの分光強度の最大値と前記第一光源下スペクトルの分光強度の最大値が一致するように、すべての分光強度を、同比率で補正し、この補正した下地色スペクトルを保存することにより、前記第一光源下スペクトルを前記第一対象物の下地色にもとづいて補正する処理とを有した
ことを特徴とする請求項4記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記下地色にもとづいて補正した後の第一光源下スペクトルを前記第二分光反射率にもとづいて第二の光源下のスペクトルに変換する工程と、
変換された第二の光源下のスペクトルの形状情報を算出する工程と、
前記第二対象物の対象面の指定の光源下における補正後のスペクトルの形状情報と座標にもとづいてクラスター分析を行う工程と、
このクラスター分析の結果にもとづいて、前記第二の光源下のスペクトルの類似度の比率と補正後のスペクトルの類似度を比較する工程と、
当該クラスター分析の結果にもとづいて、前記第二対象物の対象面のスペクトルの形状の類似度が前記第一の光源下における関係性に近づくように補正する工程とを有した
ことを特徴とする請求項4又は5記載の画像処理方法。
【請求項7】
基準光源下における前記第一対象物の対象面で反射した光のスペクトルを基準スペクトルとして取得する基準スペクトル取得工程を有し、
前記第一光源下スペクトル算出工程は、前記第一光源下スペクトルを前記基準スペクトルにもとづいて算出する処理を含む
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項8】
第一の光源下において第一対象物の対象面で反射した光のスペクトルを第一光源下スペクトルとして算出する第一光源下スペクトル算出工程と、
第二の光源下において第二対象物の対象面で反射した光のスペクトルを第二光源下スペクトルとした場合に、この第二光源下スペクトルが前記第一光源下スペクトルと同じとなるときの前記第二対象物の対象面の分光反射率を第一分光反射率として算出する第一分光反射率算出工程と、
前記第一分光反射率にもとづき算出されたデータを用いて、印刷物に印刷する画像の色補正を行う色補正工程と
を色補正処理装置に実行させるとともに、
前記第一光源下スペクトル算出工程にて、
前記第一光源下スペクトルを前記第一対象物の対象面における複数の画素ごとに算出する処理と、
算出された複数の画素ごとの第一光源下スペクトルについてクラスター分析を行って、複数のクラスターを形成する処理と
を前記色補正処理装置に実行させ、
前記第一分光反射率算出工程にて、
前記第二対象物の対象面に届く光のスペクトルをクラスター分析して複数のクラスターを形成し、このクラスター分析を行ったスペクトルと前記クラスター分析された第一光源下スペクトルとを用いて、前記第一分光反射率を算出する処理
を前記色補正処理装置に実行させる
ことを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−38624(P2013−38624A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173581(P2011−173581)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】