説明

画像処理装置、画像処理方法、コンピュータが実行可能なプログラム、およびコンピュータが読み取り可能な記録媒体

【課題】2次色以上の多値画像データの色版全体のドット配置を最適な分散にし、各色版での色の重なりを抑制する画像処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】中間調処理部135は、n次色の多値画像データを、誤差拡散処理により、m(n>m≧1)次色とした場合の必須ドット数または必須記録材量を決定するドット配置決定工程を実行するドット配置決定手段200と、n次色の多値画像データを各色成分毎に誤差拡散処理して、各色成分のドット数を算出し、ドット配置決定工程で決定した必須ドット数の範囲内で、算出した各色成分のドット数の配置を決定する色配置決定工程を実行する色配置決定手段300を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、コンピュータが実行可能なプログラム、およびコンピュータが読み取り可能な記録媒体に関し、詳細には、n次色以上の多値画像データの色版全体のドット配置を最適な分散にして、各色版での色の重なりを抑制することが可能な画像処理装置、画像処理方法、コンピュータが実行可能なプログラム、およびコンピュータが読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録法は、高速記録可能で、いわゆる普通紙に特別の定着処理を要せずに記録でき、記録時の騒音発生が無視できる程度に小さい点で、オフィス用等として注目されている。従来から種々の方式が提案され、又は既に製品化されて実用されている。このようなインクジェット記録法は、インク液室と、それに連通したノズルが形成されたインクジェットヘッドを用いて、インク液室内のインクに画像情報に応じて、圧力を加えることにより、インク小ドットをノズルから飛翔させ、紙やフィルムなどの被記録体に付着させて画像を形成する。また、ヘッドの構成からは、シリアルインクジェットプリンタとラインインクジェットプリンタがある。シリアルインクジェットプリンタは、インクジェットヘッドを紙の幅方向に走査(主走査)しながら画像を形成し、1回または複数回の走査が終了した後に、紙を搬送し次の記録ラインを形成していくものである。一方ラインシリアルプリンタは、ノズルがほぼ紙の幅方向全域に形成され、幅方向への走査は行なわずに、紙を搬送しながら記録していくものである。後者は、幅方向の1ラインを一度に形成していくので記録速度が速いという長所がある一方で、ヘッドそのものが大きくなるためプリンタ全体の大きさが大きくなってしまうこと、高解像度の記録を行なうには、ノズルそのものの配列を高密度にする必要があり、ヘッドの製造コストが高くなるという問題がある。それに比べて、前者は比較的小さなヘッドで画像を形成していく為、装置のコストが安いという長所があり、現在数多くのシリアル型インクジェットプリンタが実用化されている。
【0003】
従来、インクジェット記録装置の出力画像を形成する記録色の色は、減法混色の3原色であるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3色、またはそれらにブラック(K)を加えた4色である場合が多い。この場合、入力画像データのレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3つの色成分を、C、M、Yの3色、またはKを加えた4色に変換した後、これら多値画像データを二値画像に変換する疑似中間調処理を実施し、各色の記録材によって画像形成を行なっている。
【0004】
多値画像データを二値画像に変換する手段としてR.Floydらによる誤差拡散法(例えば非特許文献1を参照)がある。この誤差拡散法は、ある画素で生じた量子化誤差を以降の複数画素へ拡散することにより、擬似的に階調表現を行うものである。CMYKを有する4色の多値画像データを擬似中間調処理する場合には、各色独立に上記誤差拡散法等を用いて処理を行っている。この場合、各色について生成された二値画像は視覚的に優れているが、2色以上で合成されたカラー二値画像では、必ずしも視覚的に良好ではなかった。
【0005】
図19は、シアンの画素群による二値画像とマゼンタの画素群による二値画像と、これら画像を合成した二値画像とを示す図である。同図において、601がシアンの二値画像、602がマゼンタの二値画像、603はシアンの二値画像601とマゼンタの二値画像602を重ね合わせた画像である。シアン、マゼンタの各色について生成されたいずれの二値画像も、一様な画素値を有する画像データに対し誤差拡散法を用いて生成されている。各画素が一定の間隔を保ち形成されおり、視覚的にも良好であることが確認できる。一方、2色を重ね合わせた二値画像603では、シアンの画素位置とマゼンタの画素位置とには相関がないため、お互いの色の画素が形成される位置の間隔は不均一であることが分かる。また、形成される画素の数が少ない領域にもかかわらず、2色が重なって形成される画素が発生しており、その結果、視覚的に良好とは言いがたい二値画像となってしまっている。
【0006】
上記の欠点を改善するために、特許文献1では、画素の合計値を誤差拡散処理し、その後、優先度の高いドット(「ドット径が大きい」「濃度が高い」ドット)を最適配置している。
【0007】
しかしながら、電子写真においてはドットゲインや現像特性などにより、画素値とドット数もしくは記録材量には必ずしも相関があるわけではない。そのため、特許文献1による手法では、最適なドット数・記録材量でのドット配置が得られない場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、2次色以上の多値画像データの色版全体のドット配置を最適な分散にし、各色版での色の重なりを抑制する画像処理装置、画像処理方法、コンピュータが実行可能なプログラム、およびコンピュータが読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、n(n≧2)次色の多値画像データを誤差拡散処理により量子化する画像処理装置において、前記n次色の多値画像データを、誤差拡散処理により、m(n>m≧1)次色とした場合の必須ドット数または必須記録材量を決定するドット配置決定手段と、前記n次色の多値画像データを各色成分毎に誤差拡散処理して、各色成分のドット数または記録材量を算出し、前記ドット配置決定手段で決定した必須ドット数または必須記録材量の範囲内で、算出した各色成分のドット数または記録材量の配置を決定する色配置決定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、n(n≧2)次色の多値画像データを誤差拡散処理により量子化する画像処理方法において、前記n次色の多値画像データを、誤差拡散処理により、m(n>m≧1)次色とした場合の必須ドット数または必須記録材量を決定するドット配置決定工程と、前記n次色の多値画像データを各色成分毎に誤差拡散処理して、各色成分のドット数または記録材量を算出し、前記ドット配置決定工程で決定した必須ドット数または必須記録材量の範囲内で、算出した各色成分のドット数または記録材量の配置を決定する色配置決定工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、n(n≧2)次色の多値画像データを誤差拡散処理により量子化する画像処理装置において、前記n次色の多値画像データを、誤差拡散処理により、m(n>m≧1)次色とした場合の必須ドット数または必須記録材量を決定するドット配置決定手段と、前記n次色の多値画像データを各色成分毎に誤差拡散処理して、各色成分のドット数または記録材量を算出し、前記ドット配置決定手段で決定した必須ドット数または必須記録材量の範囲内で、算出した各色成分のドット数または記録材量の配置を決定する色配置決定手段と、を備えているので、2次色以上の多値画像データの色版全体のドット配置を最適な分散にし、各色版での色の重なりを抑制する画像処理装置を提供することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明を適用する画像形成装置の実施形態としてのインクジェット記録装置の機構部の概略構成図である。
【図2】図2は、同機構部の要部平面説明図である。
【図3】図3は、同装置のヘッドユニット構成を説明する斜視説明図である。
【図4】図4は、同装置の搬送ベルトの一例を説明する説明図である。
【図5】図5は、同装置による記録動作の説明に供する説明図である。
【図6】図6は、同装置の制御部の概要を示すブロック図である。
【図7】図7は、本発明に係るデータ処理装置におけるプリンタドライバの構成の一例を機能的に説明するブロック図である。
【図8】図8は、本発明に係るデータ処理装置におけるプリンタドライバの構成の他の例を機能的に説明するブロック図である。
【図9】図9は、ディザ法による中間調処理の説明に供する説明図である。
【図10】図10は、誤差拡散法による中間調処理の説明に供する説明図である。
【図11】図11は、本実施の形態の中間調処理部の概略の機能構成を示す図である。
【図12】図12は、従来の誤差拡散処理によるドット分散を説明するための概念図である。
【図13】図13は、ドット配置決定工程を説明するためのフローチャートである。
【図14】図14は、仮想版閾値テーブルの一例を示す図である。
【図15】図15は、図13の誤差拡散処理によるドット数決定処理を説明するためのフローチャートである。
【図16】図16は、仮想版閾値テーブルの他の実施例を示す図である。
【図17】図17は、ある注目画素(必須ドット数=3)のデータの一例を示す図である。
【図18】図18は、色配置決定工程を説明するためのフローチャートである。
【図19】図19は、従来技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、この発明に係る画像処理装置、画像処理方法、コンピュータが実行可能なプログラム、およびコンピュータが読み取り可能な記録媒体を適用した画像形成装置およびホスト装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
(実施の形態)
[画像形成装置およびホスト装置]
まず、本発明を適用する双方向印刷可能な画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一例について図1〜図4を参照して説明する。図1は同記録装置の機構部全体の概略構成図、図2は同記録装置の要部平面説明図、図3は同記録装置のヘッド構成を説明する斜視説明図、図4は同記録装置の搬送ベルトの模式的断面説明図である。
【0015】
図1において、このインクジェット記録装置は、装置本体1の内部に画像形成部2等を有し、装置本体1の下方側に多数枚の記録媒体(以下「用紙」という。)3を積載可能な給紙トレイ4を備え、この給紙トレイ4から給紙される用紙3を取り込み、搬送機構5によって用紙3を搬送しながら画像形成部2によって所要の画像を記録した後、装置本体1の側方に装着された排紙トレイ6に用紙3を排紙する。
【0016】
また、このインクジェット記録装置は、装置本体1に対して着脱可能な両面ユニット7を備え、両面印刷を行うときには、一面(表面)印刷終了後、搬送機構5によって用紙3を逆方向に搬送しながら両面ユニット7内に取り込み、反転させて他面(裏面)を印刷可能面として再度搬送機構5に送り込み、他面(裏面)印刷終了後排紙トレイ6に用紙3を排紙する。
【0017】
ここで、画像形成部2は、ガイドシャフト11、12にキャリッジ13を摺動可能に保持し、図示しない主走査モータでキャリッジ13を用紙3の搬送方向と直交する方向に移動(主走査)させる。このキャリッジ13には、液滴を吐出する複数の吐出口であるノズル孔14n(図3参照)を配列した液滴吐出ヘッドで構成した記録ヘッド14を搭載し、また、この記録ヘッド14に液体を供給するインクカートリッジ15を着脱自在に搭載している。なお、インクカートリッジ15に代えてサブタンクを搭載し、メインタンクからインクをサブタンクに補充供給する構成とすることもできる。
【0018】
ここで、記録ヘッド14としては、例えば、図2及び図3に示すように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッドである独立した4個のインクジェットヘッド14y、14m、14c、14kとしているが、各色のインク滴を吐出する複数のノズル列を有する1又は複数のヘッドを用いる構成とすることもできる。なお、色の数及び配列順序はこれに限るものではない。
【0019】
記録ヘッド14を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどをインクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0020】
給紙トレイ4の用紙3は、給紙コロ(半月コロ)21と図示しない分離パッドによって1枚ずつ分離され装置本体1内に給紙され、搬送機構5に送り込まれる。
【0021】
搬送機構5は、給紙された用紙3をガイド面23aに沿って上方にガイドし、また両面ユニット7から送り込まれる用紙3をガイド面23bに沿ってガイドする搬送ガイド部23と、用紙3を搬送する搬送ローラ24と、この搬送ローラ24に対して用紙3を押し付ける加圧コロ25と、用紙3を搬送ローラ24側にガイドするガイド部材26と、両面印刷時に戻される用紙3を両面ユニット7に案内するガイド部材27と、搬送ローラ24から送り出す用紙3を押圧する押し付けコロ28とを有している。
【0022】
さらに、搬送機構5は、記録ヘッド14で用紙3の平面性を維持したまま搬送するために、駆動ローラ31と従動ローラ32との間に掛け渡した搬送ベルト33と、この搬送ベルト33を帯電させるための帯電ローラ34と、この帯電ローラ34に対向するガイドローラ35と、図示しないが、搬送ベルト33を画像形成部2に対向する部分で案内するガイド部材(プラテンプレート)と、搬送ベルト33に付着した記録液(インク)を除去するためのクリーニング手段である多孔質体などからなるクリーニングローラなどを有している。
【0023】
ここで、搬送ベルト33は、無端状ベルトであり、駆動ローラ31と従動ローラ(テンションローラ)32との間に掛け渡されて、図1の矢示方向(用紙搬送方向)に周回するように構成している。
【0024】
この搬送ベルト33は、単層構成、又は図4に示すように第1層(最表層)33aと第2層(裏層)33bの2層構成あるいは3層以上の構成とすることができる。例えば、この搬送ベルト33は、抵抗制御を行っていない純粋な厚さ40μm程度の樹脂材、例えばETFEピュア材で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とで構成する。
【0025】
帯電ローラ34は、搬送ベルト33の表層に接触し、搬送ベルト33の回動に従動して回転するように配置されている。この帯電ローラ34には図示しない高圧回路(高圧電源)から高電圧が所定のパターンで印加される。
【0026】
また、搬送機構5から下流側には画像が記録された用紙3を排紙トレイ6に送り出すための排紙ローラ38を備えている。
【0027】
このように構成した画像形成装置において、搬送ベルト33は矢示方向に周回し、高電位の印加電圧が印加される帯電ローラ34と接触することで正に帯電される。この場合、帯電ローラ34からは所定の時間間隔で極性を切り替えることによって、所定の帯電ピッチで帯電させる。
【0028】
ここで、この高電位に帯電した搬送ベルト33上に用紙3が給送されると、用紙3内部が分極状態になり、搬送ベルト33上の電荷と逆極性の電荷が用紙3のベルト33と接触している面に誘電され、ベルト33上の電荷と搬送される用紙3上に誘電された電荷同士が互いに静電的に引っ張り合い、用紙3は搬送ベルト33に静電的に吸着される。このようにして、搬送ベルト33に強力に吸着した用紙3は反りや凹凸が校正され、高度に平らな面が形成される。
【0029】
そこで、搬送ベルト33を周回させて用紙3を移動させ、キャリッジ13を片方向又は双方向に移動走査しながら画像信号に応じて記録ヘッド14を駆動し、図5(a)、(b)に示すように、記録ヘッド14から液滴14iを吐出(噴射)させて、停止している用紙3に液滴であるインク滴を着弾させてドットDiを形成することにより、1行分を記録
し、用紙3を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙3の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了する。なお、図5(b)は図5(a)のドットDi形成部分を拡大したものである。
【0030】
このようにして、画像が記録された用紙3は排紙ローラ38によって排紙トレイ6に排紙される。
【0031】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図6を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。この制御部100は、装置全体の制御を司るCPU101と、CPU101が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM102と、画像データ等を一時格納するRAM103と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)104と、各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC105とを備えている。
【0032】
また、この制御部100は、本発明に係るプリンタドライバを搭載可能なパーソナルコンピュータ等のデータ処理装置であるホスト90側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F106と、記録ヘッド14を駆動制御するためのヘッド駆動制御部107及びヘッドドライバ108と、主走査モータ110を駆動するための主走査モータ駆動部111と、副走査モータ112を駆動するための副走査モータ駆動部123と、サブシステム71のモータを駆動するためのサブシステム駆動部294と、環境温度及び/又は環境湿度を検出する環境センサ118、図示しない各種センサからの検知信号を入力するためのI/O116などを備えている。
【0033】
また、この制御部110には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル117が接続されている。さらに、制御部100は、帯電ローラ34に対する高電圧を印加する高圧回路(高圧電源)114のオン/オフの切り替え及び出力極性の切り替え制御を行う。
【0034】
ここで、制御部100は、パーソナルコンピュータ等のデータ処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト90側からの画像データを含む印刷データ等をケーブル或いはネットを介してI/F106で受信する。なお、この制御部100に対する印刷データの生成出力は、ホスト90側の本発明に係るプリンタドライバ91によって行なうようにしている。
【0035】
そして、CPU101は、I/F106に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC105にてデータの並び替え処理等を行ってヘッド駆動制御部107に画像データを転送する。なお、画像出力するための印刷データのビットマップデータへの変換は、前述したようにホスト90側のプリンタドライバ91で画像データをビットマップデータに展開してこの装置に転送するようにしているが、例えばROM102にフォントデータを格納して行っても良い。
【0036】
ヘッド駆動制御部107は、記録ヘッド14の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を受け取ると、この1行分のドットパターンデータを、クロック信号に同期して、ヘッドドライバ108にシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号をヘッドドライバ108に送出する。
【0037】
このヘッド駆動制御部107は、駆動波形(駆動信号)のパターンデータを格納したROM(ROM102で構成することもできる。)と、このROMから読出される駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器を含む波形生成回路及びアンプ等で構成される駆動波形発生回路を含む。
【0038】
また、ヘッドドライバ108は、ヘッド駆動制御部107からのクロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、シフトレジスタのレジスト値をヘッド駆動制御部107からのラッチ信号でラッチするラッチ回路と、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)と、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含み、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動波形を選択的に記録ヘッド14のアクチュエータ手段に印加してヘッドを駆動する。
【0039】
次に、この画像形成装置をよって画像を形成するために画像データを転送するホスト側となる本発明に係るプリンタドライバを含むデータ処理装置の構成の異なる例について図7及び図8を参照して説明する。まず、図7に示す例では、データ処理装置のプリンタドライバ91は、アプリケーションソフトなどから与えられた画像データをモニタ表示用の色空間から記録装置用の色空間への変換(RGB表色系→CMY表色系)を行うCMM(Color Management Module)処理部131、CMYの値から黒生成/下色除去を行うBG/UCR(black generation/ Under Color Removal)処理部132、記録装置の特性やユーザーの嗜好を反映した入出力補正を行うγ補正部133、記録装置の解像度に合わせて拡大処理を行うズーミング(Zooming)部134、画像データを記録装置から噴射するドットのパターン配置に置き換える多値・少値マトリクスを含む中間調処理部135を含んでいる。
【0040】
また、図8に示す例では、データ処理装置のプリンタドライバ91は、アプリケーションソフトなどから与えられた画像データをモニタ表示用の色空間から記録装置用の色空間への変換(RGB表色系→CMY表色系)を行うCMM(Color Management Module)処理部131、CMYの値から黒生成/下色除去を行うBG/UCR(black generation/ Under Color Removal)処理部132、記録装置の特性やユーザーの嗜好を反映した入出力補正を行うγ補正部133を含んでいる。
【0041】
そして、この図8の構成の場合、画像形成装置側の制御部100では、γ補正処理を行なった後の出力データを受信して、このデータに対して記録装置の解像度に合わせて拡大処理を行うズーミング(Zooming)部134、画像データを記録装置から噴射するドットのパターン配置に置き換える多値・少値マトリクスを含む中間調処理部135を含むことになる。
【0042】
つまり、これらの図7及び図8において、コンピュータ上で処理された画像データは、モニタに表示する前提で色空間が形成されているために、RGB表色系のデータとなっているが、プリンタ(記録装置)で出力するためにはCMYK表色系のデータに変換する必要がある。そこで、CMM処理部131で、RGB→CMYの色空間の変換を行い、次のBG/UCR処理部132にて、CMYから黒のデータ「K」を作り出している。
【0043】
また、γ補正部133によるγ補正は、CMYKのそれぞれのデータに対する微調整であり、プリンタの出力特性およびユーザーの設定を反映してデータのレベル調整を行う処理である。ズーミング(zooming)処理部134は、一画素あたりの情報量がモニタより劣るプリンタで階調表現を行うために、モニタの一画素分のデータを更に細分化して解像度を上げることにより、不足した情報量をドットの密度で補うことが可能となる。
【0044】
中間調処理部(多値、少値マトリクス)135は、モニタ表示用に作成された多値データ(m値)を、プリンタで出力可能な多値(n1値)もしくは少値データ(n2値)に置き換える閾値マトリクス処理(中間調処理)を行う(m>n1≧n2≧2)。この中間調処理部135で用いる多値、少値マトリクスは、例えば、図9に示すような閾値マトリクスを用いた所謂ディザ処理や、図10に示すような所謂誤差拡散処理が適用され、元の多値データをドットのON/OFFで置き換える処理を行う。
【0045】
図9に示す「ディザ処理」は、同図(a)に示すように入力された多値画像データに対して、同図(b)に示すような所定の方法で作成された閾値マトリクスであるディザマトリクスとの比較を行い、同図(c)に示すように、その閾値以上(あるいは以下)の値を示す画素のみをドットに置き換える手法である。なお、同図ではON/OFFのみの2値について示しているが、それ以上の組み合わせを持つ少値については、再現可能階調領域を例えば小ドット、中ドット、大ドットに区分し、それぞれのドットサイズに応じた閾値マトリクスを適用し、それぞれを入力画像データと比較することで対応したドットへの置き換えを行うことになる。
【0046】
また、図10に示す誤差拡散処理は、ディザ処理と比べるとかなり複雑な処理となる。同図は2値誤差拡散の手順について示したものであるが、画素毎に閾値処理を行い、その際の誤差を保持しつつ後の計算に所定の比率で反映させている。これにより、ディザ処理では強制的に切り捨てられてしまう分の情報をも出力画像にフィードバックさせることができ、解像力等の面でディザ画像を上回る品質を得ることができる。誤差拡散処理では、
注目画素を処理する際には、2ライン前の誤差データを参照する必要があるため、注目画素までの自ラインを含めて少なくとも3ライン分のデータがメモリに保持される。
【0047】
[中間調処理部]
図11〜図15を参照して、中間調処理部135で誤差拡散処理を使用した場合について詳細に説明する。図11は、本実施の形態の中間調処理部135の概略の機能構成を示す図である。中間調処理部135では、多値画像データの少なくとも3ライン分の画素に関するデータ(階調データ、階調補正データ、誤差等)をメモリに保持する。本実施の形態の中間調処理部135は、図11に示すように、n次色の多値画像データを、誤差拡散処理により、m(n>m≧1)次色とした場合の必須ドット数または必須記録材量を決定するドット配置決定工程を実行するドット配置決定手段200と、n次色の多値画像データを各色成分毎に誤差拡散処理して、各色成分のドット数を算出し、ドット配置決定工程で決定した必須ドット数の範囲内で、算出した各色成分のドット数の配置を決定する色配置決定工程を実行する色配置決定手段300を備えている。ここでは、ドット数に関して説明するが、ドット数から決定される記録材量(l)に置き換えてもよい。すなわち、必須記録材量を決定し、決定した必須記録材量の範囲内で、算出した各色成分の記録材量の配置を決定することにしてもよい。
【0048】
ドット配置決定手段200は、n(n≧2)次色の多値画像データの注目画素の各色の階調データに基づいて、各色毎のドット数を算出し、各色のドット数を加算して、総ドット数を算出するドット数算出手段201と、算出した総ドット数を階調データに変換する変換手段202と、変換された階調データに対して誤差拡散処理を実施して必須ドット数を算出する第2のドット数算出手段203とを備えている。
【0049】
色配置決定手段300は、n次色の多値画像データの注目画素に対して、各色成分毎に、その階調データと周辺の既に量子化済みの画素の当該色成分の階調データから拡散された誤差とを加算した階調補正データまたは当該階調補正データの閾値に占める割合である閾値到達率{(入力画像データの各色版の階調に対して誤差拡散処理を施した階調補正データ/閾値)×100}を算出する算出手段301と、ドット配置決定工程で決定した必須ドット数の範囲内で、優先順位の高い順に(閾値到達率の大きい色成分から順に、閾値到達率が同じ場合は、階調補正データの大きい色成分から順に)、算出したドット数を出力する出力手段302とを備えている。出力手段302は、閾値到達率および階調補正データが同じ場合には、輝度の高い色、記録材の濃度の高い色、または記録材の明度の低い色から順にドット数を出力する。
【0050】
図12を参照して、本実施の形態の誤差拡散処理を、従来の誤差拡散処理と比較して説明する。図12は、従来の誤差拡散処理によるドット分散を説明するための概念図である。
【0051】
従来の誤差拡散処理では、図12に示すように、n色(n≧2)の各版(C、M、Y、Bk)毎に、独立して誤差拡散処理し、ドットの配置とドット種を決定し(ステップS1〜S4)、その結果を統合して出力画像としている(ステップS5)。しかしながら、従来の誤差拡散処理では、色版を個別に誤差拡散しているので色版毎の分散性は高いが、色版間のドット分散性を考慮に入れていないため、n版を統合すると、色が重なり粒状性が低下するという問題がある。
【0052】
これに対して、本実施の形態の誤差拡散処理では、n色のドット数を「同ドット数における1次色誤差拡散処理でのドット配置」とし、さらに、色版間の重なりについても考慮することで、各色統合後においても最適なドットの分散性を得ることにしている。ここでは、ドット数に関して説明するが、ドット数から決定される記録材量に置き換えてもよい。
【0053】
本実施の形態では、上述したように、ドット配置を決定するドット配置決定工程と、ドット配置決定工程に従って記録材を配置する色配置決定工程の2段階の工程を実行する。
【0054】
[ドット配置決定工程]
図13〜図16を参照して、ドット配置決定工程を説明する。n色以上のドット配置を、同ドット数における1次色誤差拡散処理でのドット配置とするため、元となるn色以上の入力階調を「1次色誤差拡散処理として扱った場合の階調」に変換する。これを実現するため、ドット数をベースとして階調を変換する。図13は、ドット配置決定工程を説明するためのフローチャートである。図14は、仮想版閾値テーブルの一例を示す図である。図15は、図13の誤差拡散処理によるドット数決定処理を説明するためのフローチャートである。図16は、仮想版閾値テーブルの他の実施例を示す図である。
【0055】
図13において、まず、中間調処理部135が保持するドット数テーブルを参照して、注目画素におけるn色の各入力階調(例えば、C=50階調、M=40階調、Y=20階調、Bk=50階調)に基づいて、「1次色誤差拡散処理で打たれるドット数」をそれぞれ算出する(ステップS11〜S14)。この「1次色誤差拡散処理で打たれるドット数」は、単位面積当たり(例えば、48×48=2304画素当たり)のドット数であり、単位面積が全て同じ階調で塗りつぶされていたと仮定し、1次色誤差拡散処理を行った場合に発生するドット数である。ドット数テーブルには、入力階調と「1次色誤差拡散処理で打たれるべきドット数」が関連づけて格納されている。ここでは、色毎のドット数をドット種に関係なく階調数に基づいて算出する(例えば、C=50階調=1000ドット、M=40階調=900ドット、Y=20階調=500ドット、Bk=50階調=1000ドット)。次に、各色のドット数を全色加算して、「総ドット数」を算出(例えば、総ドット数=3400ドット)する(ステップS15)。
【0056】
次に、中間調処理部135が保持する階調逆変換テーブルを参照して、算出した総ドット数を階調(=1次色誤差拡散処理として扱った場合の階調)に変換する(ステップS16)。1次色誤差拡散処理として扱った場合の階調は、色数分纏めた階調であり、「階調最大値×色数分」が最大値となる。たとえば、8bit(階調:0〜255)で4色(CMYK)プリンタの場合では、最大値は、255×4=1020となる。このように、ドット配置決定工程では、4色分のドットを1色とみなして扱うため、かかる階調変換処理を行っている。階調逆変換テーブルは、総ドット数と1次色誤差拡散処理として扱った場合の階調とが関連づけて格納されている。以上の処理により、2次色以上の階調を「1次色誤差拡散処理として扱った場合の階調」が算出される。
【0057】
最後に、誤差拡散処理によるドット数決定処理を実行して、必須ドット数を決定する(ステップS17)。具体的には、まず、ドット分散を目的に、1次色誤差拡散処理として扱った場合の階調に対して誤差拡散処理を行い階調補正データを生成する。中間調処理部135は、保持する仮想版閾値テーブルを参照し、1次色誤差拡散処理として扱った場合の階調に応じた各ドットの閾値を読み出し、読み出した各閾値と階調補正データを比較して、必須ドット数(その画素で打たれるBk、C、M,Yのトータルのドット数)を算出する。
【0058】
図14は、仮想版閾値テーブルの一例を示している。同図に示すように、仮想版閾値テーブルは、1次色誤差拡散処理として扱った場合の階調と各ドット(1ドット、2ドット、3ドット、4ドット)用の閾値とが関連づけて登録されている。各ドット用閾値は、固定値ではなく、1次色誤差拡散処理として扱った場合の階調に応じた変数となっている。例えば、1次色誤差拡散処理として扱った場合の階調=600,階調補正データ=200の場合は、まず、図14に示す仮想版閾値テーブルから1次色誤差拡散処理として扱った場合の階調=600に対応する閾値(1ドット用=0、2ドット用=330階調、3ドット用=620階調、4ドット用=1010階調)を取得する。つぎに、各閾値(1ドット用=0、2ドット用=330階調、3ドット用=620階調、4ドット用=1010階調)と、階調補正データ=200を比較し、階調補正データ=200は、1ドット用閾値=0以上で、かつ、2ドット用=330階調より小さいので、必須ドット数=1ドットと決定する。なお、ドット分散を目的とした誤差拡散は、n色各版とは別の版として扱うため、以降「仮想版」と称する。仮想版閾値テーブルとしては、例えば、特開2000−270210号公報、特許第3732470号に基づき設定される閾値を使用することができる。
【0059】
つぎに、図15を参照して、上記図13のステップS17の「誤差拡散処理によるドット数決定処理」を具体的に説明する。図14では、入力画像データの各画素の階調値(0〜1020)、出力画像データの各画素のドット数(0〜4)とした場合を説明する。図14において、1次色誤差拡散処理として扱った場合の階調(入力階調)が0階調か否かを判断し(ステップS21)、入力階調が0階調である場合には(ステップS21の「Yes」)、現画素位置の誤差を「0」に設定し(ステップS30)、必須ドット数を「0」に決定する(ステップS31)。
【0060】
入力階調が「0」階調でない場合には(ステップS21の「No」)、入力階調およびその周辺誤差に基づいて(入力階調に誤差拡散処理を施して)階調補正データを算出すると共に(ステップS22)、仮想版閾値テーブル(図14参照)から入力階調に対応する1ドット用〜4ドット用の閾値を取得する(ステップS23)。
【0061】
つぎに、階調補正データ<閾値(1ドット用)であるか否かを判定し(ステップS24)、階調補正データ<閾値(1ドット用)である場合には(ステップS24の「Yes」)、誤差に階調補正データを設定し(ステップS38)、必須ドット数「0」に決定する(ステップS39)。
【0062】
他方、階調補正データ<閾値(1ドット用)でない場合には(ステップS24の「No」)、階調補正データ<閾値(2ドット用)であるか否かを判定し(ステップ25)、階調補正データ<閾値(2ドット用)である場合には(ステップS25の「Yes」)、階調補正データから「仮想用1ドット出力時に応じた値」を減算した値を誤差に設定し(ステップS36)、必須ドット数「1」に決定する(ステップS37)。ここで、「仮想用1ドット出力時に応じた値」は、固定値や入力階調に対応する1ドット用閾値とすることができる。
【0063】
階調補正データ<閾値(2ドット用)でない場合には(ステップS25の「No」)、階調補正データ<閾値(3ドット用)であるか否かを判定し(ステップ26)、階調補正データ<閾値(3ドット用)である場合には(ステップS26の「Yes」)、階調補正データから「仮想用2ドット出力時に応じた値」を減算した値を誤差に設定し(ステップS34)、必須ドット数「2」に決定する(ステップS35)。ここで、「仮想用2ドット出力時に応じた値」は、固定値や入力階調に対応する2ドット用閾値とすることができる。
【0064】
階調補正データ<閾値(3ドット用)でない場合には(ステップS26の「No」)、階調補正データ<閾値(4ドット用)であるか否かを判定し(ステップ27)、階調補正データ<閾値(4ドット用)である場合には(ステップS27の「Yes」)、階調補正データから「仮想用3ドット出力時に応じた値」を減算した値を誤差に設定し(ステップS32)、必須ドット数「3」に決定する(ステップS33)。ここで、「仮想用3ドット出力時に応じた値」は、固定値や入力階調に対応する3ドット用閾値とすることができる。
【0065】
階調補正データ<閾値(4ドット用)でない場合には(ステップS27の「No」)、階調補正データから「仮想用4ドット出力時に応じた値」を減算した値を誤差に設定し(ステップS28)、必須ドット数「4」に決定する(ステップS29)。ここで、「仮想用4ドット出力時に応じた値」は、固定値や入力階調に対応する4ドット用閾値とすることができる。以上の処理により、注目画素での必須ドット数を決定することができる。
【0066】
なお、仮想版閾値テーブルを図16に示すように、1次色誤差拡散処理として扱った場合の階調および階調補正データと、必須ドット数の各領域(0ドット、1ドット、2ドット、3ドット、4ドット)とを関連づけて登録した構成としてもよい。例えば、同図に示す仮想版閾値テーブルでは、1次色誤差拡散処理として扱った場合の階調=600,階調補正データ=200の場合は、1次色誤差拡散処理として扱った場合の階調=600および階調補正データ=200に対応する必須ドット数=1ドットと決定される。
【0067】
[色配置決定工程]
図17および図18を参照して、色配置決定工程を詳細に説明する。色配置決定工程では、n次色の多値画像データを各色成分毎に、誤差拡散処理して、各色成分のドット種(無地、小滴、中滴、大滴)を決定すると共に、当該ドット種に基づいてドット数を算出する。ここで、小滴、中滴、大滴は1ドットとカウントし、無地は0ドットとカウントする。例えば、注目画素について、Bkが大滴、Cが小滴、M、Yが無地の場合は、ドット数は2ドットとカウントされる。そして、ドット配置決定工程で決定した必須ドット数の範囲内で、閾値到達率の大きい色成分から順に、算出したドット数を出力する。このようにして色版間の重なりを考慮している。ここで、閾値到達率=(入力画像データの各色版の階調に対して誤差拡散処理を施した階調補正データ/閾値)×100%である。但し、閾値はドッド径(大滴、中滴、小滴、)毎の閾値である。閾値到達率が同じ場合には、上記階調補正データの大きい色成分から順に、算出したドット数を出力する。図17は、ある注目画素(必須ドット数=3)のデータの一例を示しており、C,M,Y,Kがそれぞれ、階調補正データ=240,226,63,108、閾値到達率=100,90,70,60、ドット径(閾値)=大(240)、大(240)、小(90)、中(180)の場合は、閾値到達率の大きいC,M,Y,Kの順に、算出したドット数を出力する。なお、ドット種の決定に関して、周辺誤差の計算、階調に対する補正、およびドット種の決定など各版の処理は従来の誤差拡散処理と同様である。
【0068】
版毎の誤差拡散処理は、仮想版での誤差拡散処理と同様のアルゴリズムで実施するため、入力階調・周辺誤差により、仮想版の誤差拡散処理で得られた必須ドット数と、各色版での誤差拡散処理によって算出されたドット出力数の合計値(以下、「各版誤差拡散結果のドット出力数」と称する)、が一致しないことがある(各版誤差拡散結果のドット出力数≠必須ドット数)。
【0069】
ここで、ドット配置決定工程によって決定されたドット数は、分散性を考慮した結果の値であるため、それより多い、または、少ないドットを出力するということは分散性、ドット数、ドット構成、および色構成を崩すことに繋がる。これを防止するため、ドットストック処理を実施する。以下、ドットストック処理に関して説明する。
【0070】
まず、「各版誤差拡散結果のドット出力数>必須ドット数」の場合、必須ドット数を超えたドットについては当該画素には出力できない。この場合、閾値到達率の大きい色成分から順に、算出したドット数を出力する。しかしながら、この色/ドット種を未出力で破棄または破棄せず出力すると、出力画像のドット数、ドット構成(無地、小滴、中滴、大滴)、および色構成を崩すことに繋がる。また、ドット出力を実施しないと各色版の誤差が異常に溜まり続けてしまうことに繋がる。このため、必須ドット数に拘わらず出力を実施したことにして、周辺誤差を減算し、次処理以降にて出力可能になった際に出力するために、余ったドットをメモリにストックするドットストック処理を実行する。
【0071】
他方、「各版誤差拡散結果のドット出力数<必須ドット数」の場合、ドットストック処理にてメモリに保存したドットのストックを使用して出力を行なうドット出力処理を実施する。この場合、注目画素の周辺画素にストックがあるか確認し、周辺画素にストックがある場合は、周辺画素のストックから色/ドット種を優先順位に従い抽出する。ここでの優先順位は、閾値到達率の大きい順を用いることができ、閾値到達率が同じ場合は、階調補正データが大きい順、さらに、閾値到達率および階調補正データが同じ場合には、輝度の高い色、記録材の濃度の高い色、または記録材の明度の低い色の順である。
【0072】
ただし、0階調の色や、既に出力済みの色については2度出力しない。また、周辺ストック取り出し後においても必須ドット数に満たない場合、優先順位の高い色から強制的に小ドットを出力する。ただし、ここでも、0階調の色や、既に出力済みの色については2度出力しない。
【0073】
図18は、色配置決定工程の一例を説明するためのフローチャートである。同図において、まず、各版毎に、CMYKの各入力階調値を従来の誤差拡散処理でそれぞれ処理し(ステップS41)、CMYKの各入力階調値に基づいて、各版の閾値テーブルからドット閾値を決定し、誤差が拡散された階調補正データと決定したドット閾値をそれぞれ比較し、各版毎にドット種(無地、小滴、中滴、大滴)を決定する(ステップS42)。
【0074】
次に、必須ドット数を出力したか否かを判断し(ステップS43)、必須ドット数を出力した場合には(ステップS43の「Yes」)、余ったドットを次画素以降のためにストックする(ステップS50)。例えば、必須ドット数が2で、各版誤差拡散結果のドット出力数は3の場合(例えば、Bk=大滴、C=中滴、M=小滴、BK=無地)には、余った1ドット(例えば、M=小滴)を次画素以降に反映させるためにストックする。
【0075】
必須ドット数を出力していない場合には(ステップS43の「No」)、注目画素で出力できる色/ドット種があるか否かを判断する(ステップS44)。注目画素で出力できる色/ドット種がある場合には(ステップS44の「Yes」)、注目画素(現在画素)で算出した色/ドット種を出力する(ステップS47)。ここでの優先順位は、閾値到達率の大きい色の順であり、また、閾値到達率が同じ場合には、上記階調補正データの大きい色成分から順に、さらに、閾値到達率および階調補正データが同じ場合には、輝度の高い色、記録材の濃度の高い色、または記録材の明度の低い色の順である。
【0076】
注目画素で出力できる色・ドット種がない場合には(ステップS44の「No」)、ストックしたドットのうち、出力できる色/ドット種があるか否かを判断する(ステップS45)。ストックしたドットのうち、出力できる色/ドット種がある場合には(ステップS45の「Yes」)、当該ドットを出力する(ステップS49)。ここでの優先順位は、上記と同様に、閾値到達率の大きい色の順であり、また、閾値到達率が同じ場合には、上記階調補正データの大きい色成分から順に、さらに、閾値到達率および階調補正データが同じ場合には、輝度の高い色、記録材の濃度の高い色、または記録材の明度の低い色の順である。
【0077】
他方、ストックで出力できる色/ドット種がない場合には(ステップS45の「No」)、出力可能なドットがないため、強制的に小ドットを出力する(ステップS46)。以上の処理により、ドット配置・色配置を最適な状態に分散させることができる。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態によれば、中間調処理部135では、ドット配置決定手段200は、n次色(例えば、YMCK)の多値画像データを、誤差拡散処理により、m次色(n>m≧1:例えば、m=1)とした場合の必須ドット数を決定し、YMCKの多値画像データを各色成分毎に誤差拡散処理して、各色成分のドット数を算出し、色配置決定手段300は、ドット配置決定手段200で決定した必須ドット数の範囲内で、算出した各色成分のドット数の配置を決定することとしたので、n次色よりも好適なドット配置であるm次色同等のドット配置を得ることができ、m次色同等のドット配置とすることで、n次色以上の多値画像データの色版全体のドット配置を最適な分散にし、各色版での色の重なりを抑制することが可能となる。
【0079】
また、本実施の形態では、ドット配置決定手段200では、ドット算出手段201は、n(n≧2)次色の多値画像データの注目画素の各色の階調データに基づいて、各色毎のドット数を算出し、各色のドット数を加算して総ドット数を算出し、変換手段202は、算出した総ドット数を階調データに変換し、必須ドット数算出手段203は、変換された階調データに対して誤差拡散処理を実施して必須ドット数を算出することとしたので、m次色でのドット配置をn次色各色の入力階調から算出したドット数の合計から設定することにより、同等ドット数におけるm次色のドット配置を得ることが可能となる。
【0080】
また、算出手段301は、階調補正データの閾値に占める割合を閾値到達率として算出し、出力手段302は、閾値到達率が大きい色成分から順に、ドット配置決定手段200で決定した必須ドット数の範囲内で、算出したドット数を出力し、また、閾値到達率が同じ場合は、階調補正データの大きい順に、さらに、閾値到達率および階調補正データが同じ場合は、輝度の高い色成分、記録材の濃度の高い色成分、または記録材の明度の低い色からドット数を出力することとしたので、最適なドット配置に各色の入力階調値と誤差値の合計値が閾値に占める割合の大きな色版から優先的に配置することで、優先度の高い色(「閾値に最も近い色」)を最適に配置することが可能となる。
【0081】
(プログラム)
なお、本発明の画像処理装置は、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インターフェイス機器、スキャナ、プリンタ等)から構成されるシステムに適用しても、1つの機器から構成される装置(ホストコンピュータ等)に適用しても良い。
【0082】
また、本発明の目的は、上述した画像処理装置の機能を実現するソフトウエアのプログラムコードを記録した記録媒体を、システムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータ(または、CPU、MPU、DSP)が記録媒体に格納されたプログラムコードを実行することによっても達成することが可能である。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した画像処理装置の機能を実現することになり、そのプログラムコードまたはそのプログラムを記憶した記録媒体は本発明を構成することになる。プログラムコードを供給するための記録媒体としては、FD、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリ、ROMなどの光記録媒体、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、半導体記録媒体を使用することができる。
【0083】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した画像処理装置の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した画像処理装置の機能が実現される場合も含まれること言うまでもない。
【0084】
また、記録媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した画像処理装置の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0085】
なお、上記実施の形態においては、本発明をインクジェット記録装置に適用した例で説明したが、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機などにも適用することができ、また、インク以外の記録液を用いた画像形成装置やこの画像形成装置に印刷データを与えるデータ処理装置及びこのデータ処理装置に搭載されるプリンタドライバなどにも適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
2 画像形成部
3 用紙
5 搬送機構部
14 記録ヘッド
33 搬送ベルト
90 ホスト(データ処理装置)
91 プリンタドライバ
133 γ補正処理部
135 中間調処理部
200 ドット配置決定手段
201 ドット数算出手段
202 変換手段
203 必須ドット数算出手段
300 色配置決定手段
301 算出手段
302 出力手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特開2007−6391号公報
【非特許文献】
【0088】
【非特許文献1】“An adaptive algorithm for spatial gray scale”, SID International Symposium Digest of Technical Papers, vol4.3, 1975, pp.36−37

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n(n≧2)次色の多値画像データを誤差拡散処理により量子化する画像処理装置において、
前記n次色の多値画像データを、誤差拡散処理により、m(n>m≧1)次色とした場合の必須ドット数または必須記録材量を決定するドット配置決定手段と、
前記n次色の多値画像データを各色成分毎に誤差拡散処理して、各色成分のドット数または記録材量を算出し、前記ドット配置決定手段で決定した必須ドット数または必須記録材量の範囲内で、算出した各色成分のドット数または記録材量の配置を決定する色配置決定手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記n(n≧2)次色の多値画像データの各色成分の階調数は、前記m次色の階調数より小さいことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ドット配置決定手段は、
前記n(n≧2)次色の多値画像データの注目画素の各色の階調データに基づいて、各色毎のドット数を算出し、各色のドット数を加算して、総ドット数を算出するドット数算出手段と、
前記算出した総ドット数を階調データに変換する変換手段と、
前記変換された階調データに対して誤差拡散処理を実施して必須ドット数を算出する必須ドット数算出手段と、
を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記色配置決定手段は、
前記n次色の多値画像データの注目画素に対して、各色成分毎に、その階調データと周辺の既に量子化済みの画素の当該色成分の階調データから拡散された誤差とを加算した階調補正データを算出し、かつ、算出した階調補正データの閾値に占める割合を閾値到達率として算出手段と、
前記閾値到達率が大きい色成分から順に、前記ドット配置決定手段で決定した必須ドット数範囲内で、前記算出したドット数を出力する出力手段と、
を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記出力手段は、前記閾値到達率が同じ場合には、前記階調補正データが大きい色成分から順に、前記ドット配置決定手段で決定した必須ドット数範囲内で、前記算出したドット数を出力することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記出力手段は、前記閾値到達率および前記階調補正データが同じ場合には、輝度の高い色成分、記録材の濃度の高い色成分、または記録材の明度の低い色成分からドット数を出力することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
n(n≧2)次色の多値画像データを誤差拡散処理により量子化する画像処理方法において、
前記n次色の多値画像データを、誤差拡散処理により、m(n>m≧1)次色とした場合の必須ドット数または必須記録材量を決定するドット配置決定工程と、
前記n次色の多値画像データを各色成分毎に誤差拡散処理して、各色成分のドット数または記録材量を算出し、前記ドット配置決定工程で決定した必須ドット数または必須記録材量の範囲内で、算出した各色成分のドット数または記録材量の配置を決定する色配置決定工程と、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の発明の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のコンピュータが実行可能なプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータが読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−98718(P2010−98718A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158123(P2009−158123)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】