説明

画像処理装置、画像処理方法及びプログラム

【課題】一対の画像を比べて異なる部分を出力画像面上で位置ずれとして認識できるようにする画像処理において、画像サイズが異なる場合のずれ検出を可能にする。
【解決手段】ヒストグラム生成部102は、入力された一対の画像から外接矩形サイズ取得部101で取得した、画像内の文字とみなせる画素連結成分に外接する矩形のサイズ(幅・高さ)のヒストグラムを各画像で生成する。サイズ差算出部103は、前記ヒストグラムから最頻値を取得し、取得した最頻値の差を一対の画像間の変倍率として算出する。位置ずれ検知部104は、算出された一対の画像間の変倍率を用いて画像を変倍し、一対の画像間のサイズ差を無くし、変倍後の一対の画像を比較することにより両画像の位置ずれを検知する。位置ずれ表示用画像出力部105は、位置ずれ検知データを処理対象の画像面上に表す位置ずれ表示用画像を生成し、出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の画像を比べて異なる部分を出力画像面上で認識できるように処理する画像処理装置に関し、例えば、プリンタ等の印刷機器によって印刷された画像の異同のチェックに利用が可能な上記処理を行う画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、文書や画像の保存は、古くからの紙媒体を用いる方法から電子データとしてメモリ等の記憶媒体に保存し、必要に応じて紙媒体に出力する方法への転換が進んでおり、特に業務分野ではその傾向が著しい。
例えば、業務上、欠かすことのできないツールとして利用される帳簿や伝票類等の帳票は、膨大な数となり、その管理を容易にするために、デジタルデータとして保存する方法をとることがよく知られた事例である。
この方法で帳票を利用する場合に、保存したデータを印刷機器に掛け、紙媒体に出力(印刷)した形で利用する場合、印刷機器の交換や機器の状態の変化、或いはユーザによって指示される機器の使用条件の違いにより、同じ保存データを用いても、同じ印刷出力が得られない場合がある。
【0003】
こうした印刷出力に生じる違いをチェックする場合、これまで身近に行われている方法は、目視検査である。この方法は、チェックの対象とする印刷物同士を重ね合わせて比較し、印刷された画像間に生じるずれ、特に位置ずれを目視により認識する方法である。ただ、この目視検査は、対象とする印刷物(紙媒体)の種類や画像の特性による限界があり、また、高い印刷精度の画像が対象になると、検査をする人の負担も大きくなり、この点でも限界が生じる。
【0004】
このような目視検査の問題を解決する方法として、下記特許文献1に例示するように、画像データの処理で画像間に生じる位置ずれを検出する方法が提案された。
特許文献1には、位置ずれの検出対象である2枚の文書をスキャナで読取ってデジタル画像データに変換し、得た画像データをもとに2枚の画像の位置合わせを行うことにより検出条件を整えた上で、画素単位で画像を比較し、画像間で画素値が違えば、そこを位置ずれの発生点として検出し、さらに検出結果をわかりやすく示すために位置ずれ表示画像を出力する位置ずれ検出装置が記載されている。
【特許文献1】特開2007−293809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1によって例示した従来技術では、サイズの異なる画像同士の位置ずれは検出できない、という問題がある。
この問題が生じる状況を、位置ずれ検出の対象とする2枚の画像の関係を示す図6の概念図を参照して説明する。ここには、画像サイズが異なるという状況として考えられる2つのケースを説明している。
1つは、同図中(A)に示すように、印刷用紙が異なり、画像1の用紙が画像2の用紙よりサイズが小さく、画像1と画像2は、用紙サイズに合わせて元の画像内容を所定の倍率で拡大(縮小)したものである。また、もう1つは、同図中(B)に示すように、印刷用紙が同じサイズであるが、画像1′の印刷内容を用紙サイズに合わせずに元の画像サイズ或いは用紙に収まる適当な倍率で拡大(縮小)したもので、用紙サイズに合わせた画像2′に比べ、余白に偏りが生じている。
図6のどちらのケースに対しても従来技術では、画像サイズが異なるために、特許文献1を適用しても、意図する位置ずれを検出することができない。
【0006】
本発明は、一対の画像を比べて異なる部分を位置ずれとして検知し、出力画像面上で認識できるように処理する画像処理において、処理対象画像のサイズが異なっていても、該位置ずれを検知し、意図した画像処理を行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、文字列を画像内容として有した一対の画像を処理し、該画像間の位置ずれを検知する画像処理装置であって、前記一対の画像それぞれについて、画像内に存在する文字とみなせる画素の連結成分に外接する矩形を抽出し、該外接矩形のサイズを取得する外接矩形サイズ取得手段と、前記一対の画像それぞれについて、前記外接矩形サイズ取得手段によって取得された画像内に存在する各外接矩形のサイズをもとに矩形サイズに関するヒストグラムを生成する矩形サイズヒストグラム生成手段と、前記矩形サイズヒストグラム生成手段で前記一対の画像それぞれについて生成したヒストグラムから最頻値を取得し、取得したそれぞれの最頻値の差を一対の画像間のサイズ差として算出するサイズ差算出手段と、前記サイズ差算出手段によって算出されたサイズ差に基づいて前記一対の画像の少なくとも一方を該サイズ差がなくなるように変倍し、変倍後の前記一対の画像を比較することにより両画像の位置ずれを検知する位置ずれ検知手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明は、文字列を画像内容として有した一対の画像間の位置ずれを検知するために該画像を処理する画像処理方法であって、前記一対の画像それぞれについて、画像内に存在する文字とみなせる画素の連結成分に外接する矩形を抽出し、該外接矩形のサイズを取得する外接矩形サイズ取得工程と、前記一対の画像それぞれについて、前記外接矩形サイズ取得工程で取得された画像内に存在する各外接矩形のサイズをもとに矩形サイズに関するヒストグラムを生成する矩形サイズヒストグラム生成工程と、前記矩形サイズヒストグラム生成工程で前記一対の画像それぞれについて生成したヒストグラムから最頻値を取得し、取得したそれぞれの最頻値の差を一対の画像間のサイズ差として算出するサイズ差算出工程と、前記サイズ差算出工程によって算出されたサイズ差に基づいて前記一対の画像の少なくとも一方を該サイズ差がなくなるように変倍し、変倍後の前記一対の画像を比較することにより両画像の位置ずれを検知する検知工程と、を有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、検知対象の一対の画像データの画像サイズが異なっていても、画像間の位置ずれを検知し、検知した位置ずれを画像面上に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明に係る画像処理装置及び画像処理方法の実施形態を示す。
本実施形態の画像処理装置及び画像処理方法は、画像間の位置ずれを検知し、検知した位置ずれを画像面上に表示する出力用データを出力する処理に係る。
ここに、位置ずれ検知とは、一対の画像データを比較し、画像の異なる部分(即ち、両画像を対比したときに対応する画素同士のデータ値が異なるところ)が画像面上のどの場所(位置)であるかを認識することである。
【0010】
本実施形態では、画像間の位置ずれ検知に係る処理において、検知対象とする一対の画像における画像サイズが異なっていても、位置ずれを検知できるようにする。これは、上記[発明が解決しようとする課題]の項で図6を参照して述べたように、例えば、オリジナルの(以下、「元の」ともいう)画像データを記憶媒体に保存しておき、保存しておいた元の画像データを用いて様々な出力条件を設定して(上記の例では、用紙サイズ、変倍率、印刷位置の設定が異なる)、印刷出力を行っているが、このような場合、出力条件の変更により生じる出力の変化を検証すべく、位置ずれ検知をしようとしても、特に画像サイズが異なる場合には、従来の位置すれ検出技術によっては、この要求に応えることができなかった。
【0011】
そこで、本実施形態では、出力条件の設定により図6のように用紙に印刷する画像サイズを変化させる様々なケースや、これ以外に、例えば、印刷機器の交換や機器の状態の経時変化によって画像サイズに変化が生じるケースでも、位置ずれが検知できるようにする。
このために、検知対象とする一対の画像の画像サイズを求め、画像サイズが異なっていても、画像データから求めた画像サイズに基づいて一対の画像サイズを同一にする変倍処理を少なくとも一方の画像に施し、位置ずれ検知のために対比可能な一対の画像を得る。
【0012】
上記画像サイズは、次の方法によって求める。即ち、対象画像の画像内容に含まれている文字列に着目し、文字列から最も多く使用されている文字のサイズによって求める画像サイズを推定する、という方法を採る。ここで、文字列に着目するのは、画像内容が文書であればもちろん、文書以外の種類の画像の一部に含まれる短い文字列であっても、通常、文字列は語句として認識される(例えば、帳票に用いられる表中の語句)もので、画像面上に所定の規則に従い構成し、配置されており、画像サイズを推測する要素として適当である、という理由からである。
この実施形態では、後記で詳述するように、文字列に対する処理として、文字に外接する矩形のサイズに関するヒストグラムを生成し、生成したヒストグラムから最頻値を求め、この値を画像サイズの推測値として用いる。
【0013】
「画像処理装置の概要」
図1は、本発明に係る画像処理装置を利用した画像処理システムの概略構成を示す図である。
同図に示すように、この画像処理システムは、スキャナ20と画像処理装置10と出力装置30をシステム要素として構成する。
スキャナ20は、この画像処理システムを印刷物の画像チェックにも適用し得るようにすることを意図して付加した要素であり、第1印刷物と第2印刷物を読取ってデジタル画像データに変換し、これを処理対象の画像データとして画像処理装置10に入力する。
画像処理装置10は、対象とする一対の画像間の位置ずれを検知し、検知した位置ずれを画像面上に表示する出力用データを生成し、出力する。スキャナ20を用いる場合、スキャナ20で読取った第1印刷物と第2印刷物の画像データの入力を受け、これらを処理の対象である一対の画像データとすることにより、例えば、印刷物を作成したプリンタ等の印刷機器の機器特性や機器の状態を検知結果として得た位置ずれから知ることができる。なお、画像処理装置10の構成及び処理については、後記で詳細に説明する。
出力装置30は、画像処理装置10によって生成された出力用データを用いて画像出力を行う装置で、ディスプレイやプリンタによって実施する。
【0014】
上記画像処理システム(図1)の画像処理装置10が有する処理機能について説明する。
図2は、画像処理装置10の機能ブロックを示す図である。
同図に示すように、画像処理装置10は、入力される処理対象の一対の画像から位置ずれ表示用画像を生成し、出力するプロセスを実行するために、外接矩形サイズ取得部101、ヒストグラム生成部102、サイズ差算出部103、位置ずれ検知部104及び位置ずれ表示用画像出力部105の各機能部を有する。
外接矩形サイズ取得部101は、入力された一対の画像から、画像内の文字とみなせる画素の連結成分に外接する矩形のサイズを取得し、ヒストグラム生成部102に渡す。
ヒストグラム生成部102は、外接矩形サイズ取得部101から受取った外接矩形サイズデータをもとに外接矩形サイズに関するヒストグラムを一対の画像それぞれに生成し、サイズ差算出部103に渡す。
【0015】
サイズ差算出部103は、一対の画像それぞれの外接矩形サイズに関するヒストグラムから最頻値を取得し、取得した最頻値の差を一対の画像間のサイズ差として算出し、位置ずれ検知部104に渡す。
位置ずれ検知部104は、一対の画像間のサイズ差に基づいて一対の画像の少なくとも一方を該サイズ差がなくなるように変倍し、変倍後の前記一対の画像を比較することにより両画像の位置ずれを検知し、位置ずれ表示用画像出力部105に渡す。
位置ずれ表示用画像出力部105は、位置ずれ検知データを処理対象の画像面上に表す位置ずれ表示用画像を生成し、出力する。
なお、画像処理装置が有する上記各機能部が行う処理は、後記する「位置ずれ検知処理プロセス」の各工程に対応するので、処理の詳細は、後記の説明を参照することとする。
【0016】
図3は、図2に示した処理機能を具備する画像処理装置10のハードウェア構成を示す図である。
図3に示すハードウェア構成は、演算処理を実行して各部を統括制御するCPU(Central Processing Unit)11及びRAM(Random Access Memory)12とROM(Read Only Memory)13の各メモリを基本的要素としてコンピュータの主体部を構成し、この主体部に、ハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)15、表示装置17及び入力装置18をバス14で接続した構成を有する。このように、本実施形態の画像処理装置10及び上記画像処理システム(図1)は、図3に示す汎用のPC(Personal computer)或いはPCに周辺機器を接続したハードウェア構成を持つデータ処理装置(システム)によって実施することができる。
【0017】
図3に示す構成において、CPU11は、制御下のRAM12、ROM13等の記憶(記録)媒体に格納(記録)した各種のアプリケーションプログラム、ワークデータ及びファイルデータ等を駆使し、各アプリケーションのデータ処理機能を実現する。なお、プログラムを記憶(記録)する媒体としては、RAM12、ROM13(カード型を含む)に限らず、HDD,CD(Compact Disc)−ROM,MO(Magneto-Optical)等のディスク型を含む各種記憶媒体を用いることができる。
アプリケーションプログラムとして、後述する位置ずれ検知処理プロセスを実行するためのプログラムを上記各種記憶媒体に記憶(記録)することにより、図2に示した外接矩形サイズ取得部101、ヒストグラム生成部102、サイズ差算出部103、位置ずれ検知部104及び位置ずれ表示用画像出力部105の各機能部を構成する。
なお、図1の画像処理システムは、図3に示すハードウェア構成(PC)に周辺機器として、入力装置(図1の例では、スキャナ)及び出力装置(プリンタ、ディスプレイ等)を接続することで構成することができる、また、出力装置は、図3に示すハードウェア構成(PC)の表示装置17を用いることができる。
【0018】
「位置ずれ検知処理プロセス」
次に、本実施形態の画像処理装置10が行う検知処理のプロセスを詳細に説明する。なお、以下では処理工程に従って、処理内容を説明する。
“外接矩形サイズ取得工程”
外接矩形サイズ取得部101は、処理対象となる画像データから文字とみなせる画素連結成分に外接する矩形を抽出し、抽出した外接矩形のサイズデータを取得する。この処理は、対象画像データを2値化して、白・黒画素で画像を表現すると、この2値化画像において、黒画素の連結成分は、文字或いはその一部とみなすことができ、この文字とみなされる連結成分に外接する矩形を抽出し、この矩形のサイズを表すデータを取得する。
【0019】
外接矩形サイズ取得部101の処理を図4に示す具体例を参照して説明する。図4(A)には、処理対象となる画像における画像内容の文字列を示している。
この実施形態の画像処理システム(図1)では、処理対象となる画像は、スキャナ20で読取られ、画像処理装置10に入力された画像データである。処理対象の画像は、同図の[A B C]の例に示すように、読取画像を2値化し、白・黒の画像で表される。
2値化後の黒画素が一つのかたまりになって連結しているものを連結成分50として認識し、連結成分50を文字或いはその一部とみなすが、この例では、文字列[A B C]の読取画像データにおける[A][B][C]それぞれがこの条件を満たしているので、これらの連結成分50が文字として認識される。
【0020】
次に、文字として認識された連結成分50の外接矩形を抽出する。図4(B)には、抽出する連結成分50の外接矩形55を示している。この外接矩形の抽出は、文字サイズに相当するデータを取得するために必要な過程である。
ところで紙媒体等の画像出力媒体上で表される文字列は、通常、画像面上に所定の規則に従い構成し、配置される。つまり、文字列は、画像面の縦・横方向を文字列の行・列方向に合わせ、各文字の間も所定の関係をもって構成し、配置されることが普通で、また、画像面に対する画像の読取/書込が、通常、主・副走査による2次元走査方式によって行われるが、その際、文字列の行・列方向は、この走査方式における主・副走査方向にあわせて行われる(図4中の主・副走査方向の矢視、参照)。
従って、抽出する連結成分50の外接矩形55は、主・副走査方向の辺で各連結成分50に外接し、図4(B)に示す例では、連結成分50としての[A][B][C]それぞれについて、同図中に破線で示すように主・副走査方向の線分を辺とする外接矩形55が抽出される。
【0021】
連結成分50の外接矩形55を抽出した後、抽出した外接矩形のサイズデータを取得する。外接矩形のサイズデータは、文字サイズに相当するデータであり、各外接矩形について、外接矩形のサイズデータとして矩形の幅と高さを求める。図4に示す例では、同図(C)に示すように、各外接矩形55の幅と高さをそれぞれ幅(w1,w2,w3,・・・)、高さ(h1,h2,h3,・・・)を外接矩形のサイズデータとして取得する。
なお、連結成分50として、図4(C)では、連結成分の例として[A][B][C]を示しているが、実際に検知精度を出すためには、多くの連結成分を抽出することが必要であり、抽出数が多いほど位置ずれの検知精度を高くすることができる。
外接矩形サイズ取得部101は、このようにして、一対の画像データから、それぞれ連結成分50の外接矩形55のサイズデータ(幅・高さ)を取得し、これを検知処理プロセスにおける次のヒストグラム生成工程を実行するヒストグラム生成部102に渡す。
【0022】
“ヒストグラム生成工程”
ヒストグラム生成部102は、外接矩形サイズ取得部101から受取った外接矩形55のサイズデータ(幅・高さ)をもとに、外接矩形サイズのヒストグラムを作成する。このヒストグラムは、一対の画像からサンプリングした外接矩形サイズ、即ち、上記した図4の例を引くと、外接矩形の幅(w1,w2,w3,・・・)又は高さ(h1,h2,h3,・・・)の度数分布である。
図5は、外接矩形サイズのヒストグラムの1例を示し、ヒストグラムにおける最頻値(詳細は後述)を説明する図である。同図に示すヒストグラムは、一対の画像(ここでは、画像I、画像IIと表す)について、横軸に外接矩形サイズをとり、縦軸にそのサイズの外接矩形をサンプリングした度数を表している。
【0023】
図5のヒストグラムは、横軸の外接矩形サイズとして矩形幅(w1,w2,w3,・・・)をとったものである。なお、図示はしていないが、ヒストグラム生成部102は、外接矩形サイズとして矩形高さ(h1,h2,h3,・・・)をとったものについても、図5の形式のヒストグラムを同様に作成する。
このように、ヒストグラム生成部102は、一対の画像データにおける連結成分の外接矩形サイズデータ(幅・高さ)から、それぞれの画像の外接矩形サイズのヒストグラムを生成し、これを検知処理プロセスにおける次のサイズ差算出工程を実行するサイズ差算出部103に渡す。
【0024】
“サイズ差算出工程”
サイズ差算出部103は、ヒストグラム生成部102から受取った一対の画像データの外接矩形サイズ(幅・高さ)のヒストグラムをもとに、一対の画像データ間に生じるサイズ差(違い)を算出する。
外接矩形のサイズ差がある画像データの場合、図5の画像Iと画像IIのヒストグラムが重なるように画像を変換すれば、狙いとする画像、即ち位置ずれを検知するために対比できる画像が得られる。
画像Iと画像IIのヒストグラムを重ねる場合、画像Iと画像IIの両方を任意に決めた同一サイズへ変換する方法をとることができるが、ただ、一方の画像のみを変換して他方に重ねる方が処理あ簡単になるので、この方法によって実施する場合についての実施形態を説明する。
【0025】
図5のcと画像IIのヒストグラムに示すように、画像Iのヒストグラムを横方向に引き伸ばすと、その形状が画像IIのヒストグラムの形状に近くなると考えることができる。
そこで、画像Iと画像IIのヒストグラムがほぼ重なるようにするにはどれだけ引き伸ばすかを表す値、即ち変倍率をヒストグラムから求める。
ただ、この変倍率の求め方は、高精度を得ようとすると、複雑な処理が必要になる。よって、ここでは、簡単な方法によって実施する例として、画像Iと画像IIのヒストグラムにおける最頻値の差(違い)に着目する方法を採る。
ヒストグラムの最頻値は、度数が最も高い外接矩形のサイズ(矩形幅/矩形高さ)であるから、図5のヒストグラムにおいては、画像I,画像IIそれぞれに対応する最頻値として、図中に示すa,bの値が得られる。
【0026】
画像I,画像IIのヒストグラム(外接矩形の矩形幅)の最頻値a,bに、図5に示すような差がある場合、この差を無くす、即ち、画像Iと画像IIのヒストグラムがほぼ重なるように画像Iを変倍する。つまり、最頻値aを持つ画像Iを横に(主走査方向に)b/a倍することにより画像IIの最頻値との差を無くすことができる。よって、サイズ差算出部103は、求めるサイズ差(違い)としてb/aを算出する。
ただ、実際にはヒストグラムの最頻値だけでなく、ヒストグラム全体の形ができるだけ重なるように倍率を割り出したほうが望ましい。ノイズがある場合や、一対の画像データに大きな差異が見られる場合は、それぞれの画像のヒストグラムのピークは対応していない可能性があるためである。
一対の画像データ間に生じるサイズ差(違い)として求める変倍率は、外接矩形の矩形幅と矩形高さそれぞれに対応して、横倍率と縦倍率の両方について行う。
【0027】
上記のような外接矩形サイズのヒストグラムを利用して変倍率を求める方法によると、次の2つの長所がある。第1には、文書等の画像データ全体の矩形領域を統計的に扱うので、ノイズの影響を受けにくく安定だということである。第2には、縦・横の両方(主・副走査方向)に対して変倍率を求め、画像Iと画像IIの文字とみなされる外接矩形のサイズを合わせるので、この倍率が大きく異なる場合は、処理が失敗していると容易に判断することができることである。
このように、サイズ差算出部103は、一対の画像データの外接矩形サイズ(幅・高さ)のヒストグラムから、一対の画像データ間に生じるサイズ差(違い)として求める変倍率を算出し、これを検知処理プロセスにおける次の位置ずれ検知工程を実行する位置ずれ検知部104に渡す。
【0028】
“位置ずれ検知工程”
位置ずれ検知部104は、位置ずれを検知する一対の画像に対し、有効なずれ検知を行うための前提条件を整える処理を行い、その後、検知対象の一対の画像について画像内容を対比し、位置ずれを検知する。
位置ずれ検知の前提条件は、検知対象となる一対の画像が同じサイズであることが第1の条件である。このために、サイズ差算出部103から受取った一対の画像データ間に生じるサイズ差としての変倍率を用いて画像に変倍処理を施す。なお、ここで行う変倍処理は、例えば、複写機、プリンタ等のようなデジタル画像データを処理する既存の画像処理装置において広く採用されている変倍処理手段を適用することにより実施し得る。
本実施形態では、上記で図5を参照して説明したように、一対の画像データの一方に横倍率(主走査方向な倍率)b/a倍の変倍を掛けることにより、検知対象となる一対の画像を同じサイズにすることができる。なお、縦倍率についても同様の手法で変倍処理を施すことで、同一サイズの画像に整える。
【0029】
位置ずれ検知の前提となる第2の条件は、検知対象となる一対の画像の位置合わせである。これは、一対の画像に生じる縦・横方向或いは回転方向の全体的な変位を補正するために行う。この位置合わせは、変倍処理により同一サイズの画像にした後の一対の画像それぞれを構成する各画素について、対応する画素同士の位置を画像間で関係付けることによる。つまり、この位置合わせは、一方の画像の画素位置の座標を他方の画像の画素位置の座標に座標変換することにより行われる。
なお、この座標変換による手法は、既存の手法を適用することにより実施し得るものであり、例えば、一対の対象画像の画像内容から導かれる変換パラメータを有する関数を用いて座標変換を行う上記特許文献1、特許第3636809号公報及び特開平10−340348号公報等に示される手法が適用できる。
【0030】
有効なずれ検知を行うための前提条件として上記第1及び第2の条件を整えることによって一対の画像の位置合わせを行い、目的とする対比可能なデータを得ることができるので、この処理を行った上で、位置ずれ検知部104は、一対の画像データの対応する画素同士の画素値を画素ごとに比較する。
ここで、画像間で画素値が違えば、そこを位置ずれの生じた画素位置として検知する。この検知動作を一対の画像データの全画素について行い、求める位置ずれ検知データを得る。位置ずれ検知データは、画素位置に対応付けて画素ごとに画素値が一致するか否かを表すデータの形をとるか、或いは画素値が一致しない画素位置のみを表すデータの形をとってもよい。また、画素値が一致しない場合には、一致しない画素値を検知データに付属させてもよい。
【0031】
このように、位置ずれ検知部104は、検知対象の一対の画像データ間に生じるサイズ差(違い)として算出された変倍率等に基づいて当該画像の位置ずれ検知の前提条件を整え、この後、検知対象の一対の画像データの位置ずれ検知を行い、得られた検知データを検知処理プロセスにおける次の位置ずれ表示用画像出力工程を実行する位置ずれ表示用画像出力105に渡す。
なお、この実施形態では、位置ずれ検知部104は、位置ずれ検知データを表示用画像出力105に渡すときに、位置ずれ検知に用いた検知対象の一対の画像データも一緒に渡す。
【0032】
“位置ずれ表示用画像出力工程”
位置ずれ表示用画像出力部105は、検知結果を画像面上に表すために用いるデータを生成し、出力する。
位置ずれの検知結果を画像面上に表す方法として、本実施形態では、検知対象画像上のどの画素位置にずれが生じたかを認識できるような表し方をする。このためには、検知対象画像の全体画像と、全体画像上において他の画像と識別可能に表したずれ位置の画像を一つの画面に合成して表す画像データを生成する必要がある。
【0033】
ずれ位置の画像を識別可能に表す方法は、例えば、位置ずれが検知された画素の色に目立つ色を割り当てる方法や濃度変化により識別性を付与する方法を単独に或いは組み合わせて用いる方法を採用することができる。
また、位置ずれ検知データに画素値が付属している場合には、画素値からずれの程度がわかるので、ずれの程度が分かるように、ずれ位置の画素の色を割り当てることで識別性を与えることができる。
位置ずれ表示用画像出力部105は、検知対象画像の全体画像の画像データを受取っているので、位置ずれ検知部104から受取った位置ずれ検知データに基づいて生成したずれ位置の画像(画素)によって、全体画像の該位置の画像(画素)を置き換えることにより、目的の出力用画像データを合成することができる。
【0034】
位置ずれ表示用画像出力部105によって生成された出力用データを用いて画像出力を行う装置は、ディスプレイやプリンタ等の出力装置30である。ディスプレイとプリンタでは、画像出力をカラーで行う場合に用いる画像データが異なる。
図1の画像処理システムにおいて、スキャナ20を通して読取られる画像は、スキャナ特性に依存するRGB(R:RED,G:GREEN,B:BLUE)データである。このRGB読取画像データに対して上記位置ずれ検知データを適用して得られる出力用画像データは、そのままではプリンタで用いるには不適当である。
このため、表示用画像出力部105は、スキャナの機器特性に依存するデータを補正し(スキャナ側で補正する場合には不要)、プリンタで用いる場合には、プロッタ用のCMYK(C:シアン,M:マゼンタ,Y:イエロー,K:ブラック)データへ変換する処理を出力用画像データに施すことが望ましい。また、ディスプレイのような出力先に対しては、sRGBのような標準的な色空間の画像データとして出力することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る画像処理装置を利用した画像処理システムの概略構成を示す図である。
【図2】画像処理システム(図1)における画像処理装置の機能ブロックを示す図である。
【図3】図2に示した処理機能を実現する画像処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【図4】外接矩形サイズ取得部(図2)の処理を説明する図で、対象画像の着目する文字列(A)、外接矩形(B)及び取得する外接矩形サイズ(C)を示す図である。
【図5】外接矩形サイズのヒストグラムの1例を示し、ヒストグラムにおける最頻値を説明する図である。
【図6】位置ずれ検出の対象とする2枚の画像の関係を(A)及び(B)の2つのケースについて示す概念図である。
【符号の説明】
【0036】
10・・画像処理装置、11・・CPU(Central Processing Unit)、12・・RAM(Random Access Memory)、13・・ROM(Read Only Memory)、14・・バス、15・・HDD(Hard Disk Drive)、17・・表示装置、18・・入力装置、20・・スキャナ、30・・出力装置、101・・外接矩形領域取得部、102・・ヒストグラム生成部、103・・サイズ差算出部、104・・位置ずれ検知部、105・・位置ずれ表示用画像出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字列を画像内容として有した一対の画像を処理し、該画像間の位置ずれを検知する画像処理装置であって、
前記一対の画像それぞれについて、画像内に存在する文字とみなせる画素の連結成分に外接する矩形を抽出し、該外接矩形のサイズを取得する外接矩形サイズ取得手段と、
前記一対の画像それぞれについて、前記外接矩形サイズ取得手段によって取得された画像内に存在する各外接矩形のサイズをもとに矩形サイズに関するヒストグラムを生成する矩形サイズヒストグラム生成手段と、
前記矩形サイズヒストグラム生成手段で前記一対の画像データそれぞれについて生成したヒストグラムから最頻値を取得し、取得したそれぞれの最頻値の差を一対の画像間のサイズ差として算出するサイズ差算出手段と、
前記サイズ差算出手段によって算出されたサイズ差に基づいて前記一対の画像の少なくとも一方を該サイズ差がなくなるように変倍し、変倍後の前記一対の画像データを比較することにより両画像の位置ずれを検知する位置ずれ検知手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記位置ずれ検知手段により検知された位置ずれを画像面上に表す位置ずれ表示用画像を生成し、生成した位置ずれ表示用画像を出力する画像出力手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
文字列を画像内容として有した一対の画像間の位置ずれを検知するために該画像を処理する画像処理方法であって、
前記一対の画像それぞれについて、画像内に存在する文字とみなせる画素の連結成分に外接する矩形を抽出し、該外接矩形のサイズを取得する外接矩形サイズ取得工程と、
前記一対の画像それぞれについて、前記外接矩形サイズ取得工程で取得された画像内に存在する各外接矩形のサイズをもとに矩形サイズに関するヒストグラムを生成する矩形サイズヒストグラム生成工程と、
前記矩形サイズヒストグラム生成工程で前記一対の画像それぞれについて生成したヒストグラムから最頻値を取得し、取得したそれぞれの最頻値の差を一対の画像間のサイズ差として算出するサイズ差算出工程と、
前記サイズ差算出工程によって算出されたサイズ差に基づいて前記一対の画像の少なくとも一方を該サイズ差がなくなるように変倍し、変倍後の前記一対の画像を比較することにより両画像の位置ずれを検知する検知工程と、
を有したことを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
前記位置ずれ検知工程により検知された位置ずれを画像面上に表す位置ずれ表示用画像を生成し、生成した位置ずれ表示用画像を出力する画像出力工程を有した請求項3記載の画像処理方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載された画像処理方法の各工程をコンピュータで実行させるためのプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−120305(P2010−120305A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297022(P2008−297022)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】