説明

画像処理装置およびデジタルカメラ

【課題】輝度変化の小さい画像についても、効果的に輪郭強調処理を行い、画像の解像感を高める技術を提供することを目的とする。
【解決手段】輪郭抽出回路101,102,103は、それぞれ輝度信号Y、色差信号Cb,Crから輪郭成分YE,CbE,CrEを抽出する。セレクタ104,107を介して、色差成分の2つの輪郭成分CbE,CrEが、LUT105,108に入力され、調整信号K1,K2に変換される。乗算器106において、輪郭成分YEに調整信号K1が乗算され、変調輪郭成分E1が生成され、乗算器109において、変調輪郭成分E1に調整信号K2が乗算され、変調輪郭成分E2が生成される。加算器110において、輝度信号Yに変調輪郭成分E2が加算され、輝度信号および色差信号の輪郭成分に基づいて輪郭強調された輝度信号Yaが生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像画像等の解像感を向上させることを目的として、画像に含まれる輝度信号を強調する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、デジタルムービーなどの撮影装置において、撮像画像の解像感を補うために輪郭強調処理が一般に行われている。デジタルカメラ等が備える画像処理装置において、輝度信号にラプラシアンフィルタ等が適用されて輪郭成分が抽出される。そして、抽出された輪郭成分が元信号である輝度信号に加算されることで、輝度信号の輪郭強調が行われる。
【0003】
【特許文献1】特開平8−275185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
輝度信号から抽出した輪郭成分を用いて輪郭強調処理を行うことにより、輝度変化の大きい画像については、容易に、そして効果的に画像の解像感を向上させることができる。しかし、たとえば輝度変化の小さい画像、赤地に黒の画像(特に濃い赤色と黒色の境界を含む画像)などにおいては、輪郭成分を取り出すことが困難であり、効果的に画像の解像感を高めることができない。
【0005】
上記特許文献1では、色信号の輪郭成分を抽出し、色信号の輪郭成分の大きさに応じて、輝度信号の輪郭成分を抑制するようにしている。具体的には、2つの色差信号の輪郭成分に基づいて1つの制御信号を生成し、その制御信号に基づいて輝度信号の輪郭成分を1/4に抑制するか否かの判断を行っている。
【0006】
そこで、本発明は前記問題点に鑑み、輝度変化の小さい画像についても、効果的に輪郭強調処理を行い、画像の解像感を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、画素信号から輝度信号、第1色差信号および第2色差信号を抽出する手段と、前記輝度信号から輝度輪郭成分を抽出する輝度輪郭抽出手段と、前記第1色差信号から第1輪郭成分を抽出する第1輪郭抽出手段と、前記第2色差信号から第2輪郭成分を抽出する第2輪郭抽出手段と、前記第1輪郭成分に基づいて前記輝度輪郭成分を変調し、さらに、前記第2輪郭成分に基づいて前記輝度輪郭成分を変調し、変調輪郭成分を生成する変調手段と、前記変調輪郭成分を前記輝度信号に加算することで前記輝度信号の輪郭強調を行う強調手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、画素信号から輝度信号および色差信号を抽出する手段と、前記輝度信号から輝度輪郭成分を抽出する輝度輪郭抽出手段と、前記色差信号から色差輪郭成分を抽出する色差輪郭抽出手段と、前記輝度輪郭成分を前記輝度信号に加算するとともに前記色差輪郭成分を前記輝度信号に加算することで前記輝度信号の輪郭強調を行う強調手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の画像処理装置において、前記色差信号は、第1色差信号と第2色差信号、を含み、前記色差輪郭抽出手段は、前記第1色差信号から第1輪郭成分を抽出する第1輪郭抽出手段と、前記第2色差信号から第2輪郭成分を抽出する第2輪郭抽出手段と、を含み、前記強調手段は、前記色差輪郭成分として前記第1輪郭成分および前記第2輪郭成分を前記輝度信号に加算することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1または請求項3に記載の画像処理装置において、さらに、前記第1輪郭抽出手段が抽出した前記第1輪郭成分の特性を調整する特性調整手段、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1または請求項3に記載の画像処理装置において、さらに、前記第2輪郭抽出手段が抽出した前記第2輪郭成分の特性を調整する特性調整手段、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置において、さらに、前記第1輪郭成分に基づく変調処理と前記第2輪郭成分に基づく変調処理の処理順序を変更する変更手段、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項3に記載の画像処理装置において、さらに、前記第1輪郭成分に基づく強調処理と前記第2輪郭成分に基づく強調処理の処理順序を変更する変更手段、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、デジタルカメラに関する発明であり、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の画像処理装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像処理装置は、第1色差信号から抽出された第1輪郭成分に基づいて輝度輪郭成分を変調し、さらに、第2色差信号から抽出された第2輪郭成分に基づいて輝度輪郭成分を変調し、変調輪郭成分を生成する。そして、変調輪郭成分を輝度信号に加算することで輝度信号の輪郭強調を行う。これにより、2つの色差信号のそれぞれの輪郭成分を利用して輝度信号の輪郭成分をさらに強調させることができる。たとえば、輝度変化の小さい輪郭部分や、赤地に黒の輪郭部分なども効果的に強調することが可能であり、画像の解像感を高めることができる。
【0016】
また、本発明の画像処理装置は、輝度輪郭成分を輝度信号に加算するとともに色差輪郭成分を輝度信号に加算することで輝度信号の輪郭強調を行う。輝度信号の輪郭成分と色差信号の輪郭成分とを個別に元信号である輝度信号に加算することで、輝度変化の小さい輪郭部分についても輪郭強調を行い、画像の解像感を高めることが可能である。
【0017】
さらに、本発明の画像処理装置は、色差輪郭成分として第1輪郭成分および第2輪郭成分を輝度信号に加算する。色差信号のそれぞれの輪郭成分が個別に元信号である輝度信号に加算されるので、いずれかの色差信号に輪郭成分が抽出された場合であっても、画像の解像感を高めることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
{第1の実施の形態}
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1は、第1の実施の形態に係るデジタルカメラ1のブロック図である。
【0019】
デジタルカメラ1は、色フィルタアレイ11、CCD(Charge Coupled Devices)12、A/D変換器13、補間回路14、マトリクス回路15、ガンマ補正回路16、色空間変換回路17、輪郭強調処理部18A、メモリ19などを備えて構成される。
【0020】
RGBベイヤ配列の色フィルタアレイ11を備えたCCD12は、図示せぬ光学系を介して被写体像を入射し、被写体像を結像する。CCD12から出力されたアナログの画素信号は、A/D変換器13においてデジタルの画素信号に変換される。なお、撮像素子としては、CCDの他にCMOSセンサを利用することも可能である。また、色フィルタアレイとしては、補色系のフィルタなどを用いてもよい。
【0021】
色フィルタアレイ11は、RGBベイヤ配列であるので、A/D変換器13から出力された画素信号は、1画素につきRGBいずれか1色の色成分を持つ信号である。この画素信号が、補間回路14において補間され、1画素につきRGB全ての色成分を備えた画素信号に変換される。
【0022】
補間回路14から出力された画素信号は、マトリクス回路15において色再現性を改善するための色補正処理が行われる。マトリクス回路15から出力された画素信号は、ガンマ補正回路16においてガンマ補正処理が行われる。ガンマ補正回路16から出力された画素信号は、色空間変換回路17においてRGB色空間からYCbCr色空間への色空間変換が行われる。
【0023】
色空間変換回路17においてYCbCr色空間に変換された画素信号は、次に、輪郭強調処理部18Aに入力される。輪郭強調処理部18Aは、撮像画像の輪郭を強調し、撮像画像の解像感を高めるための処理を行う。
【0024】
輪郭強調処理部18Aは、輪郭抽出回路101,102,103を備えている。輪郭抽出回路101は、輝度信号Yを入力し、輝度信号Yから輪郭成分YEを抽出する。輪郭抽出回路102は、色差信号Cbを入力し、色差信号Cbから輪郭成分CbEを抽出する。輪郭抽出回路103は、色差信号Crを入力し、色差信号Crから輪郭成分CrEを抽出する。なお、輪郭抽出回路101,102,103における輪郭抽出処理の方法は特に限定されるものではない。たとえば、ラプラシアンフィルタなどの輪郭抽出フィルタを用いることが可能である。
【0025】
輪郭抽出回路102において抽出された輪郭成分CbEは、セレクタ104,107に入力される。輪郭抽出回路103において抽出された輪郭成分CrEは、セレクタ104,107に入力される。
【0026】
セレクタ104,107は、図示せぬ制御回路から選択信号SELを入力し、出力信号の切り替えを行う。セレクタ104は、選択信号SEL“0”を入力した場合には、輪郭抽出回路102から入力した輪郭成分CbEをルックアップテーブル(以下、LUT(Look Up Table)と略す。)105に出力する。セレクタ104は、選択信号SEL“1”を入力した場合には、輪郭抽出回路103から入力した輪郭成分CrEをLUT105に出力する。
【0027】
セレクタ107は、選択信号SEL“0”を入力した場合には、輪郭抽出回路103から入力した輪郭成分CrEをLUT108に出力する。セレクタ107は、選択信号SEL“1”を入力した場合には、輪郭抽出回路102から入力した輪郭成分CbEをLUT108に出力する。
【0028】
LUT105は、セレクタ104から入力した輪郭成分CbEあるいはCrEを調整信号K1に変換するための対応テーブルを備える。LUT108は、セレクタ107から入力した輪郭成分CbEあるいはCrEを調整信号K2に変換するための対応テーブルを備える。
【0029】
図2は、LUT105やLUT108で用いられる対応テーブルの一例を示す図である。図の横軸は、入力信号である輪郭成分EA(輪郭成分CbEあるいは輪郭成分CrE)の信号値であり、縦軸は、調整信号KA(調整信号K1あるいは調整信号K2)の信号値を示している。この実施の形態においては、図に示すように、調整信号KAは、1以上の値をとるようにしている。つまり、調整信号KAは、輝度信号Yの輪郭成分YEの振幅を増大させる方向に作用する。
【0030】
図2にLUT105およびLUT108が用いる対応テーブルの一例を示したが、LUT105およびLUT108においては、それぞれ異なる対応テーブルを用いることが可能である。たとえば、色差信号Cb、Crそれぞれの信号について、異なる特性で調整信号KAを生成することができる。また、LUT105およびLUT108が用いる対応テーブルを調整することで、色差信号Cb、Crのそれぞれの輪郭成分に重み付けを行うことができる。
【0031】
LUT105から出力された調整信号K1は、乗算器106に入力される。乗算器106は、輝度信号Yの輪郭成分YEに調整信号K1を乗算し、変調輪郭成分E1を出力する。上記のように、本実施の形態においては、調整信号K1は1以上の値であり、輪郭成分YEの振幅を増大させる方向に作用する。これにより、色差信号において抽出された輪郭成分を、輝度信号の輪郭成分を強調する方向で反映させることができる。
【0032】
LUT108から出力された調整信号K2は、乗算器109に入力される。乗算器109は、変調輪郭成分E1に調整信号K2を乗算し、変調輪郭成分E2を出力する。上記のように、本実施の形態においては、調整信号K2は1以上の値であり、輪郭成分YEの振幅を増大させる方向に作用する。これにより、色差信号において抽出された輪郭成分を、輝度信号の輪郭成分を強調する方向で反映させることができる。
【0033】
乗算器109から出力された変調輪郭成分E2は、加算器110に入力される。加算器110は、色空間変換回路17が出力した輝度信号Yに変調輪郭成分E2を加算する。これにより、輪郭強調された輝度信号Yaが生成される。輪郭強調された輝度信号Ya、色差信号Cb,Crは、メモリ19に格納される。
【0034】
メモリ19に格納された輝度信号Ya、色差信号Cb、Crからなる画像信号は、たとえば、デジタルカメラ1が備える図示せぬモニタに表示される。あるいは、デジタルカメラ1に装着されているメモリカードなどに格納される。
【0035】
このように第1の実施の形態のデジタルカメラ1は、色差信号から輪郭成分を抽出し、色差信号の輪郭成分により輝度信号の輪郭成分を変調する。これにより、たとえば、輝度変化の小さい輪郭部分や、赤地に黒の輪郭部分なども効果的に強調することが可能であり、画像の解像感を高めることができる。もちろん、輝度の変化と色差の変化の両方が検出された領域については、より効果的に画像の解像感を高めることができる。
【0036】
また、第1の実施の形態のデジタルカメラ1は、セレクタ104,107を備えることにより、輪郭成分CbE,CrEを作用させる順序を切り替えることが可能である。乗算器106,109のビット精度などにより、作用順序で異なる演算結果が得られる場合があるが、この作用順序を自由に変更することで、異なる特性で輪郭成分を変調させることができる。
【0037】
なお、第1の実施の形態においては、図2で示したように、LUT105やLUT108は、調整信号KAとして1以上の値を出力する。つまり、色差信号の輪郭成分により、輝度信号の輪郭成分をより強調させるよう作用させた。ただし、調整信号KAとして1より小さい値を出力するようにしてもよい。
【0038】
調整信号KAとして1より小さい値を利用する場合、乗算器106のビット精度によっては、輪郭成分YEに調整信号K1が乗算されることで、変調輪郭成分E1が0となる場合がある。この場合、乗算器109における乗算結果も必ず0となるので、セレクタ107が出力する輪郭成分の振幅を輝度信号の輪郭成分に反映させることができなくなる。このようなケースを回避するためにも、セレクタ104,107を切り替えることで、乗算器106における演算結果が0とならないように調整するなどの利用方法がある。
【0039】
あるいは、調整係数KAが1以上の値である場合であっても、輝度信号の輪郭成分YEおよび一方の色差成分の輪郭成分が非常に微細である場合には、乗算器106における演算結果が0となる場合が生じる。このような場合でも、セレクタ104,107を切り替えることで、他方の色差信号の輪郭成分を有効利用することが可能である。
【0040】
{第2の実施の形態}
図3は、第2の実施の形態に係るデジタルカメラ1のブロック図である。色フィルタアレイ11、CCD12、A/D変換器13、補間回路14、マトリクス回路15、ガンマ補正回路16、色空間変換回路17などの構成は第1の実施の形態と同様である。
【0041】
色空間変換回路17においてYCbCr色空間に変換された画素信号は、次に、輪郭強調処理部18Bに入力される。輪郭強調処理部18Bは、撮像画像の輪郭を強調し、撮像画像の解像感を高めるための処理を行う。
【0042】
輪郭強調処理部18Bは、輪郭抽出回路101,102,103を備えている。輪郭抽出回路101は、輝度信号Yを入力し、輝度信号Yから輪郭成分YEを抽出する。輪郭抽出回路102は、色差信号Cbを入力し、色差信号Cbから輪郭成分CbEを抽出する。輪郭抽出回路103は、色差信号Crを入力し、色差信号Crから輪郭成分CrEを抽出する。
【0043】
輪郭抽出回路102が出力した輪郭成分CbEは、セレクタ122,125に入力される。輪郭抽出回路103が出力した輪郭成分CrEは、セレクタ122,125に入力される。
【0044】
セレクタ122は、選択信号SEL“0”を入力した場合には、輪郭抽出回路102から入力した輪郭成分CbEをLUT123に出力し、選択信号SEL“1”を入力した場合には、輪郭抽出回路103から入力した輪郭成分CrEをLUT123に出力する。
【0045】
セレクタ125は、選択信号SEL“0”を入力した場合には、輪郭抽出回路103から入力した輪郭成分CrEをLUT126に出力し、選択信号SEL“1”を入力した場合には、輪郭抽出回路102から入力した輪郭成分CbEをLUT126に出力する。
【0046】
LUT123は、セレクタ122から入力した輪郭成分CbEあるいはCrEを調整信号K3に変換するための対応テーブルを備える。LUT126は、セレクタ125から入力した輪郭成分CbEあるいはCrEを調整信号K4に変換するための対応テーブルを備える。
【0047】
図4は、LUT123やLUT126で用いられる対応テーブルの一例を示す図である。図の横軸は、入力信号である輪郭成分EB(輪郭成分CbEあるいは輪郭成分CrE)の信号値であり、縦軸は、調整信号KB(調整信号K3あるいは調整信号K4)の信号値を示している。この実施の形態においては、図に示すように、調整信号KBは、0以上の値をとるようにしている。つまり、調整信号KBは、輝度信号Yに輪郭成分Cb,Crを加算する方向に作用する。
【0048】
図4にLUT123およびLUT126が用いる対応テーブルの一例を示したが、LUT123およびLUT126においては、それぞれ異なる対応テーブルを用いることが可能である。たとえば、色差信号Cb、Crそれぞれの信号について、異なる特性で調整信号KBを生成することができる。また、LUT123およびLUT126が用いる対応テーブルを調整することで、色差信号Cb、Crのそれぞれの輪郭成分に重み付けを行うことができる。
【0049】
輪郭抽出回路101から出力された輪郭成分YEは、加算器121に入力される。加算器121は、色空間変換回路17が出力した輝度信号Yに輪郭成分YEを加算する。これにより、輝度信号の輪郭成分により輪郭強調された輝度信号Y1が生成される。
【0050】
LUT123から出力された調整信号K3は、加算器124に入力される。加算器124は、輝度信号Y1に調整信号K3を加算し、色差信号の輪郭成分により輪郭強調された輝度信号Y2を出力する。つまり、輝度信号Y2は、輝度信号の輪郭成分YEおよび色差信号の一方の輪郭成分によって輪郭強調された信号である。
【0051】
LUT126から出力された調整信号K4は、加算器127に入力される。加算器127は、輝度信号Y2に調整信号K4を加算し、色差信号の輪郭成分により輪郭強調された輝度信号Ybを出力する。つまり、輝度信号Ybは、輝度信号の輪郭成分YEおよび2つの色差信号の輪郭成分によって輪郭強調された信号である。そして、輪郭強調された輝度信号Yb、色差信号Cb,Crは、メモリ19に格納される。
【0052】
このように本実施の形態のデジタルカメラ1は、色差信号から輪郭成分を抽出し、色差信号の輪郭成分により輝度信号を強調する。これにより、たとえば、輝度変化の小さい輪郭部分や、赤地に黒の輪郭部分なども効果的に強調することが可能であり、画像の解像感を高めることができる。もちろん、輝度の変化と色差の変化の両方が検出された領域については、より効果的に画像の解像感を高めることができる。
【0053】
特に、第2の実施の形態のデジタルカメラ1は、輝度信号Yから抽出した輪郭成分YE、色差信号Cbから抽出した輪郭成分CbE、色差信号Crから抽出した輪郭成分CrEを、それぞれ独立して元信号である輝度信号Yに加算する。したがって、輝度変化が小さく、輪郭成分YEが抽出できないような画像領域であっても、色差成分の輪郭成分が抽出された場合には、輪郭成分が輝度信号Yに加算され、画像の解像感を高めることが可能である。
【0054】
さらには、色差信号Cbから抽出した輪郭成分CbEと、色差信号Crから抽出した輪郭成分CrEとのうち、いずれか一方の輪郭成分だけが抽出された場合であっても、それぞれ独立して元信号である輝度信号Yに加算されるので、いずれかの色の変化を利用して画像の解像感を効果的に高めることが可能である。
【0055】
また、第2の実施の形態のデジタルカメラ1は、セレクタ122,125を備えることにより、輪郭成分CbE,CrEを作用させる順序を切り替えることが可能である。
【0056】
なお、第2の実施の形態においては、図4で示したように、LUT123やLUT126は、調整信号KBとして0以上の値を出力する。つまり、色差信号の輪郭成分により、輝度信号を強調させるよう作用させた。ただし、調整信号KBとして0より小さい値を出力するようにしてもよい。
【0057】
第2の実施の形態においては、セレクタ122およびセレクタ125を用いて、色差信号の輪郭成分を加算する順序を切り替え可能としたが、加算の順序変更によっても演算結果には変動はないため、セレクタを設けない構成としてもよい。
【0058】
また、第2の実施の形態においては、LUT123およびLUT126を用いて、色差信号の輪郭成分を変換するようにしたが、色差信号の輪郭成分をそのまま加算器124,127に出力し、輪郭成分の信号値をそのまま加算するようにしてもよい。この場合には、LUT123およびLUT126を設けない構成とすることができる。
【0059】
また、本発明の画像処理装置がデジタルカメラ1に用いられている場合を例に実施の形態を説明したが、本発明の画像処理装置は、他にもデジタルムービー、スキャナなどにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1の実施の形態に係るデジタルカメラのブロック図である。
【図2】ルックアップテーブルの一例を示す図である。
【図3】第2の実施の形態に係るデジタルカメラのブロック図である。
【図4】ルックアップテーブルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 デジタルカメラ
18A,18B 輪郭強調処理部
101 輪郭抽出回路
102 輪郭抽出回路
103 輪郭抽出回路
104,107,122,125 セレクタ
105,108,123,126 ルックアップテーブル
106,109 乗算器
110,121,124,127 加算器
CbE (色差信号Cbの)輪郭成分
CrE (色差信号Crの)輪郭成分
E1,E2 変調輪郭成分
K1,K2,K3,K4 調整信号
Y1,Y2,Ya,Yb (輪郭強調された)輝度信号
YE (輝度信号の)輪郭成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素信号から輝度信号、第1色差信号および第2色差信号を抽出する手段と、
前記輝度信号から輝度輪郭成分を抽出する輝度輪郭抽出手段と、
前記第1色差信号から第1輪郭成分を抽出する第1輪郭抽出手段と、
前記第2色差信号から第2輪郭成分を抽出する第2輪郭抽出手段と、
前記第1輪郭成分に基づいて前記輝度輪郭成分を変調し、さらに、前記第2輪郭成分に基づいて前記輝度輪郭成分を変調し、変調輪郭成分を生成する変調手段と、
前記変調輪郭成分を前記輝度信号に加算することで前記輝度信号の輪郭強調を行う強調手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
画素信号から輝度信号および色差信号を抽出する手段と、
前記輝度信号から輝度輪郭成分を抽出する輝度輪郭抽出手段と、
前記色差信号から色差輪郭成分を抽出する色差輪郭抽出手段と、
前記輝度輪郭成分を前記輝度信号に加算するとともに前記色差輪郭成分を前記輝度信号に加算することで前記輝度信号の輪郭強調を行う強調手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記色差信号は、
第1色差信号と第2色差信号、
を含み、
前記色差輪郭抽出手段は、
前記第1色差信号から第1輪郭成分を抽出する第1輪郭抽出手段と、
前記第2色差信号から第2輪郭成分を抽出する第2輪郭抽出手段と、
を含み、
前記強調手段は、前記色差輪郭成分として前記第1輪郭成分および前記第2輪郭成分を前記輝度信号に加算することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の画像処理装置において、さらに、
前記第1輪郭抽出手段が抽出した前記第1輪郭成分の特性を調整する特性調整手段、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1または請求項3に記載の画像処理装置において、さらに、
前記第2輪郭抽出手段が抽出した前記第2輪郭成分の特性を調整する特性調整手段、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像処理装置において、さらに、
前記第1輪郭成分に基づく変調処理と前記第2輪郭成分に基づく変調処理の処理順序を変更する変更手段、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項3に記載の画像処理装置において、さらに、
前記第1輪郭成分に基づく強調処理と前記第2輪郭成分に基づく強調処理の処理順序を変更する変更手段、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の画像処理装置を備えることを特徴とするデジタルカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−218768(P2009−218768A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59024(P2008−59024)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】