説明

画像処理装置および画像処理プログラム

【課題】簡単な構成で原稿の種類を判別し、その種類に応じた適切な補正を行うことができる画像処理装置および画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】濃度が薄い画素は、画素値が「1」に変換され、「1」に変換された画素が直線を形成するかを検出する(S6)。直線が検出された場合には、直線の長さを検出し、検出した長さが所定の長さ以上の直線の数を計数し、直線カウントメモリ23bに記憶する(S7)。次に、直線カウントメモリ23bに記憶された計数値が所定の数M以上であるか否かを判断する(S8)。検出された直線の数が所定数M以上である場合は(S8:Yes)、所定の書式が存在し、カーボン紙などを用いてコピーされた原稿と判断し、本スキャンを行って濃度が濃くなるように画素値を変更してプリンタ部2に出力する(S12)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理プログラムであって、特に簡単な構成で原稿に所定の書式が含まれるか否かを判別し、原稿の種類に応じた適切な濃度補正を行うことができる画像処理装置および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原稿に描かれた画像を読み取り、印刷を行う場合に、濃く描かれた部分は、識別できるが、薄く描かれた部分は、識別が困難、あるいは識別が不能になる場合がある。
【0003】
また、カラー画像データをモノクロ画像で印刷を行ったり、カラー画像データをファクシミリ受信し、モノクロ画像で印刷が行われる場合に、カラー画像で印刷した場合には、識別できる画像が、モノクロ画像では識別できなくなったり不鮮明になったりすることがある。
【0004】
特に、カーボン紙を用いて文字などが記入された用紙、例えば、伝票や帳票、申し込用紙などの画像をスキャンし、その画像データをモノクロ画像で印刷する場合は、カーボン紙により転写された文字などの濃度が薄くなったり、用紙に元々印刷されている書式等の直線の色によっては、その書式自体も鮮明に印刷されないことがある。
【0005】
特開平8−44818号公報(特許文献1)には、カーボン紙を使用して一度に複数枚の用紙に文字を記入することができる場合に、下に重なっている用紙ほど文字が薄くなるので、用紙に予め上から何枚目の用紙であるかを識別する識別マークを付加しておき、その識別マークを判別して画像の濃度を変更する技術が開示されている。
【0006】
また、特開2000−287090号公報(特許文献2)には、コントラストの弱いカラー画像を濃く制御して、見やすく見栄えの良い画像にする装置が開示されている。また、特開2000−301887号公報(特許文献3)には、赤色や青色などの色のマーカペンで書込みを行った用紙の画像を形成すると、濃度が低く判読が困難であるので、単色フィルタまたは帯域フィルタを通して光を照射し、赤色や青色の濃度を黒色と同程度の濃度にする装置が開示されている。
【特許文献1】特開平8−44818号公報
【特許文献2】特開2000−287090号公報
【特許文献3】特開2000−301887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された装置では、用紙に識別マークが付加されている場合にのみ、濃度を調整することができるが、用紙に識別マークが付加されていない場合は、濃度を調整することができないという問題点があった。
【0008】
また、特許文献2に記載された装置では、コントラストの弱い部分を濃く制御するので、風景画のような画像の場合にも、コントラストの弱い部分を濃く制御し、不適切な画像に補正するという問題点があった。
【0009】
また、特許文献3に記載された装置でも同様に、赤色や青色などが濃く制御され、風景画のような画像の場合にも、赤色や青色を濃く制御し、不適切な画像に補正するという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、簡単な構成で原稿の種類を判別し、その種類に応じた適切な濃度補正を行うことができる画像処理装置および画像処理プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明の請求項1記載の画像処理装置は、原稿に記録された画像を読み取り、画像データを取得する読取手段と、その読取手段により取得された画像データを構成する各画素の濃度値が所定の範囲の値に含まれるか否かを判断する濃度判断手段と、その濃度値判断手段により前記濃度値が所定の範囲に含まれると判断された画素群により形成される、所定の長さ以上の直線を検出する直線検出手段と、その直線検出手段により検出された直線の情報に基づいて、前記画像中に直線により形成される所定の書式が存在するか否かを判断する書式判断手段と、その書式判断手段により前記画像中に所定の書式が存在すると判断された場合は、前記読取手段により読み取られた画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更して出力し、前記書式判断手段により前記画像中に所定の書式が存在しないと判断された場合は、前記読取手段により読み取られた画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更せずに出力する出力手段とを備えている。
【0012】
請求項2記載の画像処理装置は、請求項1記載の画像処理装置において、前記画像データはカラー画像データであり、前記画素の濃度値は、R値、G値およびB値であって、前記濃度判断手段は、R値、G値およびB値の各濃度値が所定の範囲であるか否かを判断することにより濃度の薄い画素を判断する。
【0013】
請求項3記載の画像処理装置は、請求項1または2に記載の画像処理装置において、前記読取手段により読み取られる画像が記録された原稿のサイズを検出する原稿サイズ検出手段を備え、前記所定の長さは、前記原稿サイズ検出手段により検出された原稿のサイズに応じて設定される。
【0014】
請求項4記載の画像処理装置は、請求項1から3のいずれかに記載の画像処理装置において、前記直線検出手段により検出された所定の長さ以上の直線の数を計数する直線数計数手段を備え、前記書式判断手段は、前記直線数検出手段により検出された直線の数に基づいて読み取られた原稿の画像が所定の書式を含むか否かを判断する。
【0015】
請求項5記載の画像処理装置は、請求項1から3のいずれかに記載の画像処理装置において、前記直線検出手段により検出された直線が形成する枠を検出する枠検出手段を備え、前記書式判断手段は、前記枠検出手段により検出された枠に基づいて読み取られた原稿の画像が所定の書式を含むか否かを判断する。
【0016】
請求項6記載の画像処理装置は、請求項5記載の画像処理装置において、前記枠検出手段が検出した枠の内側の面積を求める面積算出手段を備え、前記書式判断手段は、前記面積算出手段により算出された枠の内側の面積に基づいて読み取られた原稿の画像が所定の書式を含むか否かを判断する。
【0017】
請求項7記載の画像処理装置は、請求項6記載の画像処理装置において、前記面積算出手段により算出された枠の内側の面積が、所定の面積以上である枠の数を計数する枠数計数手段を備え、前記書式判断手段は、前記枠数計数手段により計数された枠の数に基づいて読み取られた原稿の画像が所定の書式を含むか否かを判断する。
【0018】
請求項8記載の画像処理装置は、請求項1から7のいずれかに記載の画像処理装置において、前記読取手段は、カラー読取りにより所定の解像度で画像の画像データを取得するプレスキャン手段と、モノクロ読取りにより前記所定の解像度より高い解像度で前記画像の画像データを取得する本スキャン手段とを備え、前記濃度判断手段は、前記プレスキャン手段により取得された画像データを構成する各画素の濃度値が所定の範囲の値に含まれるか否かを判断し、前記出力手段は、前記書式判断手段により前記画像中に所定の書式が存在すると判断された場合は、前記本スキャン手段により取得された画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更して出力し、前記書式判断手段により前記画像中に所定の書式が存在しないと判断された場合は、前記本スキャン手段により取得された画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更せずに出力する。
【0019】
請求項9記載の画像処理プログラムは、画像を読み取る読取装置により取得された画像データを入力し、その画像データを処理するコンピュータにおいて実行されるものであり、前記入力された画像データを構成する各画素の濃度値が所定の範囲の値に含まれるか否かを判断する濃度判断ステップと、その濃度値判断ステップにより前記濃度値が所定の範囲に含まれると判断された画素群により形成される、所定の長さ以上の直線を検出する直線検出ステップと、その直線検出ステップにより検出された直線の情報に基づいて、前記画像中に直線により形成される所定の書式が存在するか否かを判断する書式判断ステップと、その書式判断ステップにより前記画像中に所定の書式が存在すると判断された場合は、前記画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更して出力し、前記書式判断手段により前記画像中に所定の書式が存在しないと判断された場合は、前記画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更せずに出力する出力ステップとを備えている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の画像処理装置によれば、読取手段は、原稿に記録された画像の画像データを取得し、濃度判断手段は、読取手段により取得された画像データを構成する各画素の濃度値が所定の範囲の値に含まれるか否かを判断し、直線検出手段は、濃度値判断手段により濃度値が所定の範囲に含まれると判断された画素群により形成される、所定の長さ以上の直線を検出し、書式判断手段は、直線検出手段により検出された直線の情報に基づいて、画像中に直線により形成される所定の書式が存在するか否かを判断し、出力手段は、書式判断手段により画像中に所定の書式が存在すると判断された場合は、画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更して出力し、書式判断手段により画像中に所定の書式が存在しないと判断された場合は、読取手段により読み取られた画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更せずに出力する。
したがって、比較的薄い濃度の画素群から成る直線を含み、それらの直線により構成される所定の書式を含むような原稿をコピーした場合に、濃度が濃くなるように自動的に調整が行われて印刷されるため、画像の内容を識別できなくなることを防止することができる。
【0021】
請求項2記載の画像処理装置によれば、請求項1記載の画像処理装置の奏する効果に加え、画像データはカラー画像データであり、画素の濃度値は、R値、G値およびB値であって、濃度判断手段は、R値、G値およびB値の各濃度値が所定の範囲であるか否かを判断することにより濃度の薄い画素を判断するので、読み取った画像データの中から濃度の薄い画素を正確に判別することができ、また、その薄いと判別され画素について直線が形成されているか否かを検出することができる。
【0022】
請求項3記載の画像処理装置によれば、請求項1または2に記載の画像処理装置の奏する効果に加え、読取手段により読み取られる画像が記録された原稿のサイズを検出する原稿サイズ検出手段を備え、所定の長さは、原稿サイズ検出手段により検出された原稿のサイズに応じて設定される。通常、原稿サイズに応じて、書式を構成する直線の長さは変わり、原稿のサイズが大きいほど直線の長さも長くなり、原稿のサイズが小さいほど直線の長さも短くなると考えられる。原稿サイズにかかわらず所定の長さを一定にすると、誤って所定の書式が存在するか否かを判別することになるが、原稿サイズに応じて所定の長さを設定することにより、正確に所定の書式が存在するか否かを判別することができる。
【0023】
請求項4記載の画像処理装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の画像処理装置の奏する効果に加え、直線検出手段により検出された所定の長さ以上の直線の数を計数する直線数計数手段を備え、書式判断手段は、直線数検出手段により検出された直線の数に基づいて読み取られた原稿の画像が所定の書式を含むか否かを判断する。通常、所定の書式は、複数の直線から構成されることが多いため、薄い画素から構成される直線の数が少ない場合は、所定の書式を含まないと判断し、必要以上に画像の濃度が濃くなるように調整が行われることを防止できる。
【0024】
請求項5記載の画像処理装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の画像処理装置の奏する効果に加え、直線検出手段により検出された直線が形成する枠を検出する枠検出手段を備え、書式判断手段は、枠検出手段により検出された枠に基づいて読み取られた原稿の画像が所定の書式を含むか否かを判断する。通常、所定の書式は、記入欄となる枠を含むことが多いため、薄い画素から構成される枠が検出されない場合は、所定の書式を含まないと判断し、必要以上に画像の濃度が濃くなるように調整が行われることを防止できる。
【0025】
請求項6記載の画像処理装置によれば、請求項5記載の画像処理装置の奏する効果に加え、枠検出手段が検出した枠の内側の面積を求める面積算出手段を備え、書式判断手段は、面積算出手段により算出された枠の内側の面積に基づいて読み取られた原稿の画像が所定の書式を含むか否かを判断する。通常、所定の書式は、記入欄となる枠を含むことが多く、かつ、その枠も文字等が書き込めるようにある程度の大きさが確保されている。そのため、仮に薄い画素から構成される枠が検出されたとしても、その枠の面積が文字の記入等に不適切なサイズである場合は、所定の書式を含まないと判断し、必要以上に画像の濃度が濃くなるように調整が行われることを防止できる。
【0026】
請求項7記載の画像処理装置によれば、請求項6記載の画像処理装置の奏する効果に加え、面積算出手段により算出された枠の内側の面積が、所定の面積以上である枠の数を計数する枠数計数手段を備え、書式判断手段は、枠数計数手段により計数された枠の数に基づいて読み取られた原稿の画像が所定の書式を含むか否かを判断する。
【0027】
通常、所定の書式は、記入欄となる枠を含むことが多く、かつ、その枠も文字等が書き込めるようにある程度の大きさが確保されている。さらに、その数も複数用意されていることが多いため、仮に薄い画素から構成され、所定面積以上のサイズの枠であったとしても、その枠の数が少ない場合には、所定の書式を含まないと判断し、必要以上に画像の濃度が濃くなるように調整が行われることを防止できる。
【0028】
請求項8記載の画像処理装置によれば、請求項1から7のいずれかに記載の画像処理装置の奏する効果に加え、読取手段は、カラー読取りにより所定の解像度で画像の画像データを取得するプレスキャン手段と、モノクロ読取りにより所定の解像度より高い解像度で画像の画像データを取得する本スキャン手段とを備え、濃度判断手段は、プレスキャン手段により取得された画像データを構成する各画素の濃度値が所定の範囲の値に含まれるか否かを判断し、出力手段は、書式判断手段により画像中に所定の書式が存在すると判断された場合は、本スキャン手段により取得された画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更して出力し、書式判断手段により画像中に所定の書式が存在しないと判断された場合は、本スキャン手段により取得された画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更せずに出力する。よって、画像データを記憶するメモリの容量を少なくすることができ、メモリを効率よく使用することができる。
【0029】
即ち、高解像で原稿の画像データを取得して、画像メモリに記憶し、画像中に所定の書式が存在するか否かを判断して、所定の書式が存在する場合は、画像メモリの画像データの濃度値を濃く変換し、所定の書式が存在しない場合は、画像メモリの画像データをそのまま出力すれば、一度のスキャンで処理を完了することができるが、使用する画像メモリの容量を大きく確保する必要があり、例えば、他の処理に使用する画像メモリの容量が制限されることになる。そこで、プレスキャンは、低い解像度でスキャンして原稿の全画像を画像メモリに記憶して、所定の書式が存在するか否かを判断し、その判断後は、高い解像度で本スキャンを行い、数ラインずつ順次画像メモリに記憶して必要な処理を行って出力することができる。このようにすることで、使用する画像メモリの容量を少なくすることができる。
【0030】
請求項9記載の画像処理プログラムによれば、入力された画像データを構成する各画素の濃度値が所定の範囲の値に含まれるか否かを判断する濃度判断ステップと、その濃度値判断ステップにより濃度値が所定の範囲に含まれると判断された画素群により形成される、所定の長さ以上の直線を検出する直線検出ステップと、その直線検出ステップにより検出された直線の情報に基づいて、画像中に直線により形成される所定の書式が存在するか否かを判断する書式判断ステップと、その書式判断ステップにより画像中に所定の書式が存在すると判断された場合は、入力された画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更して出力し、書式判断手段により画像中に所定の書式が存在しないと判断された場合は、入力された画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更せずに出力する出力ステップとを備えているので、よって、本画像処理プログラムをコンピュータ等にインストールして実行することにより、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態における多機能周辺装置(以下、「MFP(Multi Function Peripheral)もしくは(Multi Function Printer)」と略す)1の外観構成を示す斜視図である。図1に示すように、本MFP1は、下部に設けられたプリンタ部2と、上部に設けられたスキャナ部3と、スキャナ部3の正面側に設けられた操作パネル4とを一体的に備え、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能及びファクシミリ機能を有する。
【0032】
MFP1は、不図示のコンピュータと接続されて、そのコンピュータから送信された画像データや文書データに基づいて、記録用紙(被記録媒体)に画像や文書を記録したり、デジタルカメラ等の外部機器と接続されてデジタルカメラから出力される画像データを記録用紙に記録したり、メモリカード等の各種記憶媒体を装填して、その記憶媒体に記憶された画像データ等を記録用紙に記録することが可能である。なお、言うまでもないが、本MFP1は、記録用紙だけに限らず、OHP用の透明フィルムシートや布など(いずれも被記録媒体の一例)にも画像を記録することが可能である。
【0033】
スキャナ部3は、FBS(Flatbed Scanner)として機能する原稿読取台6に対して、自動原稿搬送機構(ADF:Auto Document Feeder、以下「ADF」という。)7を備えた原稿カバー8が、背面側の蝶番を支点として開閉自在に取り付けられている。
【0034】
原稿読取台6の上面は大きく開口されており、その開口部にプラテンガラスが嵌め込まれ、原稿読取台6の内部には、上記画像読取ユニットの移動スペースや、画像読取ユニット、それを支持する部材および駆動させる機構などを配設するスペースが確保されている。
【0035】
ADF7は、原稿トレイ9から原稿排出トレイ10へ原稿搬送路を通じて原稿を搬送するものである。プリンタ部2は、スキャナ部3で読み取られた画像データ或いは外部から入力された画像データに基づいて、選択的にインク滴を吐出することによって、記録用紙上に画像を記録する所謂インクジェット方式の画像記録装置(インクジェット記録装置)である。このプリンタ部2は、上述したように、スキャナ部3の下方に配設されている。 MFP1の正面側、換言すれば、プリンタ部2の正面側には開口5が形成されている。この開口5内に給紙トレイ14及び排紙トレイ15が完全に内包されるように設けられている。給紙トレイ14と排紙トレイ15は上下二段となるように配設されており、上段に排紙トレイ15が設けられ、その下方に給紙トレイ14が設けられている。
【0036】
MFP1の正面側には、図1に示すように横長形状の操作パネル4が設けられている。操作パネル4は、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するためのものであり、各種操作キー40と液晶表示部(LCD:Liquid Crystal Display)41(以下、表示画面と称す)とを具備する。この表示画面41は、縦横比が3:4の画面を横に2個並べ、縦横比が3:8のものである。
【0037】
使用者は、操作パネル4を用いて、所望の指令を入力することができる。MFP1に所定の指令が入力されると、その入力された情報に基づいて該MFP1の動作が制御部20(図2参照)によって制御される。操作パネル4に備えられる操作キー40には、十字キー40aや、テンキー40bなどが備えられている。
【0038】
なお、MFP1は、操作パネル4から入力された指令のほか、コンピュータに接続されて該コンピュータからプリンタドライバやスキャナドライバ等を介して送信される指令に基づいて動作するようにシステム構成されている。
【0039】
プリンタ部2の上記開口5の上側には、接続パネル70が設けられている。この接続パネル70には、その左端側にUSB端子71が配設されている。USB端子71は、外部機器とUSB接続することにより該外部機器と本MFP1とを通信可能に接続するコネクタ端子である。また、接続パネル70の右端側にはスロット部72が配設されている。スロット部72はカード型メモリを装填可能な複数のカードスロットが設けられている。カードスロットにカード型メモリが装填され、該装填されたカード側メモリから画像データが後述の制御部20により読み出されると、その読み出された画像データや該画像データに関する情報が制御部20によって表示画面41に表示される。或いは、選択された任意の画像がプリンタ部2において記録用紙に記録される。
【0040】
次に、図2を参照してMFP1の電気的構成の概略について説明する。図2は、MFP1の電気的構成を示すブロック図である。制御部20は、プリンタ部2、スキャナ部3及び操作パネル4を含むMFP1の動作を統括的に制御するものである。制御部20は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、フラッシュメモリ24を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス25を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)26に接続されている。
【0041】
ROM22には、FAX機能、コピー機能、スキャナ機能などをそれぞれ制御する各種制御プログラム、制御プログラムで用いられる定数やテーブルおよび後述する画像処理プログラム22aなどが記憶されている。
【0042】
RAM23は、ランダムにアクセス可能なメモリであり、CPU21が各種機能を実行する際に、一次的に変数やパラメータを記憶するものである。このRAM23には、ファクシミリ送信を行う場合や、コピー印刷を行う場合に、スキャナ部3により読み取られたカラー画像データを記憶する画像メモリ23aと、その画像メモリ23aに記憶されたカラー画像データに基づいて、読み取られた画像中に所定の長さ以上の直線が検出され、その直線の本数を計数するための直線カウントメモリ23bと、その直線が複数存在する場合に、それらの直線が矩形の枠を形成するか否かが判断され、その枠の数を計数するためのメモリである枠カウントメモリ23cとが備えられている。直線の検出、及び枠の検出については、後に説明する。
【0043】
ASIC26は、CPU21からの指令に従い、プリンタ部2、スキャナ部3、操作パネル4、及びスロット部72の動作制御を行う。ASIC26には、MFP1に所望の指令を入力するための操作キー40を制御するパネルゲートアレイ27が接続されている。パネルゲートアレイ27は、操作キー40の押下を検出して、所定のキーコードをASIC26へ出力する。
【0044】
ASIC26には、表示画面41の画面表示を制御するLCDコントローラ28が接続されている。LCDコントローラ28は、CPU21の指令に基づいて、表示画面41にプリンタ部2又はスキャナ部3の動作に関する情報や、読取画像或いは入力画像を画面に表示させる。
【0045】
ASIC26には、コンピュータとパラレルケーブル又はUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース29及びUSB端子71が接続されている。さらに、ASIC26には、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)31、モデム32およびスロット部72が接続されている。
【0046】
スロット部72にはカード型メモリを装填可能な複数のカードスロットが設けられている。カードスロットにカード型メモリが装填され、該装填されたカード側メモリから画像データが制御部20により読み出されると、その読み出された画像データや該画像データに関する情報が制御部20によって表示画面41に表示される。或いは、操作キー40によって選択された任意の画像がプリンタ部2において記録用紙に記録される。
【0047】
次に、図3を参照して、各種原稿の例について説明する。図3は、3種類の原稿を示すものである。後述する処理により、図3(a)および(b)は、所定の書式を含む原稿であると判断され、(c)は、所定の書式を含む原稿でないと判断される。図3(a)および(b)は、例えば、カーボン紙から成る原稿、あるいは、カーボン紙を用いて文字が記入された原稿(以下、カーボン紙原稿とする)であると判断される。
【0048】
具体的に、図3(a)は、矢印で示すように記入欄が、例えば緑色の直線で描かれている原稿を示す例である。カーボン紙を用いて記入される帳票等には、この図3(a)に示すように、各種の色で記入欄を示す直線が複数描かれているものがある。これらの直線は、例えば、名前や住所等が記入できる程度の所定の長さ以上の長さを有している。また、スキャンする際に使用する光源が例えば、緑であったとすると、緑色の直線は薄い濃度の画像データとして出力される。よって、所定の濃度として比較的薄い濃度の画素群から成る直線を含み、その所定の濃度で所定の長さ以上の長さの直線が複数描かれている画像は、帳票等に予め印刷されている所定の書式(記入欄)であると判断される。そして、これらの直線のうちいくつかの直線は、同一長さで同一方向(図では、横方向)であることが多い。
【0049】
また、図3(b)は、直線により記入欄が示されている部分(日付と氏名を記入する欄)と、横方向およびそれに直交する縦方向の罫線により仕切られた長方形の枠が多数描かれた部分とがある原稿を示す例である。例えば、商品の注文書の書式では、注文したい商品の番号や、名称を記入するための多数の枠が描かれた書式が頻繁に使用されており、カーボン紙を用いて複写形式で、原本と、控えとが同時に記入できるものが知られている。この場合、控えとなる用紙は、カーボン紙を介して文字が記入されるため、薄くなる可能性が高く、このような控えをコピーすると、文字が不鮮明になる。よって、この図3(b)に示すように、所定の濃度として比較的薄い濃度の画素群から成る直線、及び多数の枠が描かれている画像についても、所定の書式(記入枠)であると判断される。
【0050】
この罫線により仕切られた枠は、大きな外側の長方形を縦方向および横方向に仕切るものであり、縦方向の仕切は、同一間隔であり、横方向の仕切は、異なる長さに仕切られている。したがって、同一の長方形が、縦方向に複数配列される。
【0051】
また、図3(c)は、文章や写真などが紙面の大部分に記載され、長方形の枠が1つ記載されている原稿を示す例である。このように、枠の数が少ない場合は、カーボン紙などを用いて記入を行うカーボン紙原稿ではないと判断される。
【0052】
次に、図4を参照して、直線を検出する方法について説明する。画像処理により画像中に形成される直線を検出する方法は、Hough変換などの各種方法が提案されているが、ここでは、チェインコードを用いる方法の概略を説明する。
【0053】
チェインコードは、図4(b)に示す、平面上の方向を8種類に分け、右横方向を「0」として反時計回りに「7」までのコードを割り当てている。これは、画素が、横方向とその横方向に直交する縦方向にそれぞれ等間隔の平行線が引かれた格子の交点(以下、格子点と称す)に配置され、ある画素(注目画素)に隣接する画素は、この8種類の方向のいずれかに存在するからである。
【0054】
図4(a)は、画像の一例を示す図であり、格子点を小さいドットで示し、画像の輪郭を形成する画素を黒丸で、その輪郭の内部の画素を白丸で示したものである。この直線検出方法では、画像の輪郭が直線を形成しているか否かを検出する。ここで、第m行、第n列の格子点を(m,n)として表すものとする。
【0055】
まず、この図において、矢印が示すように画面の左上の格子点から右方向へ順に走査すると、第2行目、第3列の格子点(2,3)に黒丸が存在する。次に、その右隣の格子点(2,4)にも黒丸が存在するので、コードは、「0」に設定される。同様にその右隣の格子点(2,5)にも、黒丸が存在するので、コード「0」が設定され、先のコードに連結されて、チェインコードは、「00」となる。更にその隣の格子点(2,6)にも黒丸が存在するので、チェインコードは「000」となる。つぎに、この格子点に隣接する格子点で黒丸が存在するのは、下方の格子点(3,6)であり、下方を示すコードは、「6」である。したがって、チェインコードは、「0006」となる。
【0056】
この格子点に隣接する黒丸は、格子点(4,7)に存在するので、その格子点の方向は、右下方向であり、そのコードは7である。したがって、チェインコードは、「00067」となる。
【0057】
以下、同様に、隣接する黒丸の方向を表すコードを順次並べることにより、輪郭に対応するチェインコードが形成される。図4(a)の場合は、「00067666452344222」となる。
【0058】
このようにして、チェインコードが形成されると、次に、同一のコードが並んでいる部分を検出し、同一コードが所定の数以上並んでいる場合に、所定の長さ以上の直線であると判定することができる。
【0059】
また、検出された直線の両端の座標を求めることにより、複数の直線の長さだけでなく、原稿におけるその直線の位置や方向を検出することができる。なお、直線の座標は、全て上記チェインコードから求めることができ、本実施形態においては、原稿の主走査方向をx軸、副走査方向をy軸として説明する。そして、複数の直線の長さが同一である場合に、例えば、それら複数の直線の両端の(x、y)座標のうちx座標がそれぞれ共通で、y座標が等間隔で異なる値となっている場合には、同じ長さの直線が同じ方向に、同じ間隔で複数存在していると判断できる。
さらに、x座標が共通であってもy座標の間隔が極端に小さい値の場合は、文字などを記入することが難しいことから、上記したような所定の書式ではないと判断する場合にも、座標の情報は有効である。例えば、バーコードのように同じ長さの直線が平行に複数配列されている場合、直線の長さのみで上記したような所定の書式の判断を行った場合、バーコードの直線の長さが条件を満たすものであったとすると、所定の書式であると判断されてしまう。しかし、長さだけでなく、直線同士の間隔についても座標に基づいて検出することで、極端に間隔が狭い場合は、所定の書式と判断しないように構成することもできる。
【0060】
また、検出した複数の直線が直交し、矩形などの閉じた枠を形成するか否かを検出することもできる。この場合も直線の座標を使用し、検出された直線について、主走査方向と副走査方向とで交わる座標があるか否かを検出する。例えば、主走査方向に平行な2本の直線と、副走査方向に平行な2本の直線が交わることにより枠が形成されるが、この場合、4つの交点(座標)が検出される。仮に、交点をA,B,C,Dとし、それぞれの座標をA=(x1,y1)、B=(x2,y2)、C=(x3,y3),D=(x4,y4)とした場合に、x1とx2が等しく、x3とx4が等しく、y1とy4が等しく、さらにy2とy3が等しい値である場合、交点A,B,C,Dを4隅とする枠と判断することができる。
【0061】
更に、その枠を形成する4つの直線の長さを求め、演算を行うことで、枠の内部の面積を算出することができる。算出された面積が極端に小さい値の場合は、枠自体が小さいことになるので、文字等の記入を行うための枠ではないと判断することができる。
【0062】
次に、図5を参照してCPU21が実行する印刷処理について説明する。この処理は、ROM22に記憶された印刷処理プログラム22aに記述されている。この処理は、使用者により画像が記録された原稿を読み込み、モノクロで印刷するように指示された場合に、実行される処理である。まず、プレスキャンにより、原稿の画像データが読み込まれ、画像データを参照することにより、濃度が薄くなっている画素を検出する。濃度に問題が無ければ、そのまま出力することが可能である。一方、濃度が薄い画素が検出され、かつその画素が画像中において直線や枠を形成しているものであるか否かにより、カーボン紙原稿であるか否かが判断される。次に、本スキャンを行い、先の判断の結果、カーボン紙原稿であると判断された場合は、画像の濃度を濃くして印刷を行い、カーボン紙原稿ではないと判断された場合は、画像の濃度を変更せずに印刷が行われる。
【0063】
フローチャートに従って、順次説明する。まず、使用者により設定された用紙の画像をスキャナ部3により読み取り、各画素の濃度値であるRGB値を画像メモリ23aに一旦記憶する(S1)。このプレスキャンは、解像度を通常の場合より低くし、原稿の全面の画像を画像メモリ23aに記憶する。通常の解像度は、例えば、600dpiであり、プレスキャン時の解像度は、例えば100dpi程度とする。解像度を低くすることにより、取得される画像データの量が少なくなるので、記憶容量が小さくてよい。
【0064】
次に、画像メモリ23aに記憶された画像データに基づいて、原稿のサイズを検出する(S2)。原稿は、厚みのある紙などの記録媒体であり、原稿の縁では、光源から照射される光が乱反射し、陰影が形成されるので、画像データから原稿のサイズを検出することができる。なお、原稿のサイズは、使用者が操作パネルのスイッチなどを操作して、指定するようにしてもよい。
【0065】
原稿のサイズが検出されると、次に、その原稿のサイズに応じて、直線として検出する所定の長さを設定する(S3)。本発明では、画像に含まれる直線を検出し、その直線の長さが所定の長さより長い場合に、その直線に基づいて所定の書式が存在するか否かを判断する。この所定の長さは、原稿のサイズによって異なる。すなわち、原稿のサイズが大きいほど、この所定の長さも長くなる。そこで、例えば、原稿のサイズに対応して所定の長さを予めテーブルとしてROM22に記憶しておき、そのテーブルを参照することにより原稿のサイズに応じた所定の長さを設定する。ROM22に記憶される長さは、一例として原稿の主走査方向に対して50%以上とする。また、50%をデフォルトとして、使用者が設定変更できるように構成されてもよい。
【0066】
次に、画像メモリ23aに記憶された各画素のRGB値から、各画素の濃度値が所定の範囲の値であるか否かを判断し、所定の範囲の画素を「1」、所定の範囲ではない画素を「0」とする(S4)。以下、この画素に対して設定される「1」あるいは「0」を画素値とする。
この濃度値の範囲とは、本スキャンを行ってモノクロ印刷を行った場合に、薄く印刷される画素を画素値「1」と設定するために、予めR値、G値、B値それぞれに濃度値の範囲を設定したものである。そして、R値、G値、B値がいずれも所定の範囲に属する濃度値を有する画素が「1」と設定される。これらの範囲の値は、スキャンを行う場合に原稿に照射される光の色や、センサの種類などに応じて異なる値である。なお、濃度が濃いと判断する方の値の範囲を定め、その範囲以外は、薄いと判断するようにしてもよい。
【0067】
次に、S4の処理により変換された画素値に基づいて濃度が薄い画素が所定数以上存在するか否かを判断する(S5)。この判断は、画素値が「1」である画素の数、またはその数の全画素に対する割合が所定の値以上存在するか否かを判断する。
【0068】
画素値が「1」である画素が所定数以上存在すると判断された場合は(S5:Yes)、「1」に変換された画素が直線を形成するかを検出する(S6)。この検出は、先に説明したように、画像の輪郭を構成する画素が直線を形成するか否かを検出するものであり、直線が検出された場合には、その直線の長さを検出し、検出した長さがS3の処理により設定された所定の長さ以上の直線について、さらに、先に詳述したチェインコードに基づいて座標位置、直線の方向などの直線に関する情報を検出し、RAM23に順次記憶する。次に、原稿の全面に存在する所定の長さ以上の直線の数を計数し、直線カウントメモリ23bに記憶する(S7)。
【0069】
次に、直線カウントメモリ23bに記憶された計数値が所定の数M以上(例えば、Mを「5」と設定)であるか否かを判断する(S8)。検出された直線の数が所定数M以上である場合は(S8:Yes)、図3(a)に示されるような複数の直線が平行に印刷された所定の書式が存在し、カーボン紙原稿と判断し、本スキャン時には、原稿全体の濃度が濃くなるように各画素の濃度値を変更してプリンタ部2に出力する(S12)。
【0070】
S8の判断処理において、直線の数が所定数M以上存在しない場合は(S8:No)、複数の直線が矩形などの枠を形成するか否かを判断する(S9)。複数の直線が枠を形成するか否かの判断は上記した直線の交点を検出することにより行われる。検出の結果、枠を形成する場合は、さらに、その枠の内部の面積を算出し、その面積が所定の値以上の枠の数を計数しRAM23の枠カウントメモリ23cに記憶する(S10)。
【0071】
次に、その枠の数が所定数N以上(例えば、Nを「3」と設定)であるか否かを判断する(S11)。枠の数が所定数N以上存在する場合は(S11:Yes)、図3(a)に示されるような複数の枠が印刷された所定の書式が存在し、S12の処理に進み、カーボン紙原稿と判断し、本スキャン時には、原稿全体の濃度が濃くなるように各画素の濃度値を変更してプリンタ部2に出力する。
【0072】
一方、S5の判断処理において、濃度が薄い画素が所定数以上存在しないと判断した場合(S5:No)、または、S9の判断処理において複数の直線は、枠を形成しないと判断した場合(S9:No)、またはS11の判断処理において、所定の面積以上の枠の数が所定数N以上存在しないと判断した場合(S11:No)は、読み取った画像データの濃度に問題がない、あるいは原稿が所定の書式を含むようなカーボン紙原稿ではないと判断し、本スキャンを行い、濃度の変更を行わずにプリンタ部2に出力する(S13)。
【0073】
S12またはS13の処理を終了した場合は、プリンタ部2により印刷を行い(S14)、印刷処理を終了する。
【0074】
以上、実施形態に基づいて説明したように、取得された画像データに所定範囲の濃度の画素(濃度が薄い画素)が存在し、さらに、その画素が複数の直線を形成すると共に、各直線により上記したような各種条件が満たされる場合に、所定の書式が形成されていると判断する。
【0075】
特に、その直線が所定数以上存在し、等間隔の平行線であったり、矩形の枠を形成している場合に、記入欄や記入枠などの所定の書式が含まれていると判断し、カーボン用紙を介して文字等が記入された原稿であると判断する。
【0076】
よって、カーボン紙から成る原稿、あるいは、カーボン紙を用いて文字が記入された原稿(カーボン紙原稿)は、一般的にコピーした場合に、その出力結果の画像の濃度が薄くなることが多い。また、カーボン紙は、帳票、申し込み用紙、発注書等によく使用されており、名前や住所等を記入するための直線部分や、枠が予め印刷されているという書式に特徴がある。このような書式は、画像中に所定の長さ以上の直線がいくつか存在するので、読み取った画像データから直線を検出し、その直線に基づいて所定の書式が存在するか否かを判断することができる。そのため、読み取った画像データが比較的濃度がうすく、所定の書式を含むような場合には、カーボン紙原稿であると判断し、使用者が濃度調整を指示することなく、画像データに基づく画像を出力する際の濃度を自動的に適宜変更する。よって、画像の種類に応じた適切な濃度調整処理を行うことができる。
また、カーボン紙原稿は、通常、記入欄を示す所定の長さの直線が複数本形成され、直線の数が少ない場合は、所定の書式が存在しないと判別することができる。よって、直線の数により、より正確に所定の書式が存在するか否かを判別することができる。
また、カーボン紙原稿は、通常、記入欄を示す枠が複数の所定の長さの直線により形成される。よって、枠を検出することにより所定の書式が含まれているか否かを判別することができる。
また、カーボン紙原稿は、通常、記入欄を示す枠が所定の面積を有する。よって、枠の面積を検出することにより所定の書式が含まれているか否かを判別することができる。
さらに、カーボン紙原稿は、通常、記入欄を示す枠が形成され、その枠は、所定の面積を有するとともに、その所定の面積の枠が複数形成されている。よって、所定の面積の枠の数を検出することにより所定の書式が含まれているか否かを判別することができる。
以上のような複数の条件により、濃度値が所定の範囲であり薄い画素であると判断された画素群により、所定の書式が形成されていると判断された場合は、読み取った原稿が、所定の書式が印刷された用紙にカーボン紙を介して文字などの記入が行われた原稿と認識される。したがって、その記入された文字等が薄い場合であっても、複写の際には、自動的に濃く変換されて出力されるので、識別できない画像出力を防止することができる。一方、直線や枠などを含まない自然画などの場合は、所定の書式として検出されず、画像データは濃くなるように変換されないので、画質の劣化を防止することができる。
【0077】
なお、請求項に記載の読取手段は、図5に記載のフローチャートのS1、S12およびS13の処理が該当し、濃度判断手段および濃度判断ステップは、図5に記載のフローチャートのS4およびS5の処理が該当する。直線検出手段および直線検出ステップは、図5に記載のフローチャートのS6の処理が該当し、書式判断手段および書式判断ステップは、図5に記載のフローチャートのS5、S8、S9およびS11の処理が該当する。出力手段および出力ステップは、図5に記載のフローチャートのS12およびS13の処理が該当し、原稿サイズ検出手段は、図5に記載のフローチャートのS2の処理が該当する。面積算出手段は、図5に記載のフローチャートのS10の処理が該当し、プレスキャン手段は、図5に記載のフローチャートのS1の処理が該当し、本スキャン手段は、図5に記載のフローチャートのS12およびS13の処理が該当する。
【0078】
以上実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0079】
例えば、上記実施形態では、多機能周辺装置における処理について説明したが、プリンタや、ファクシミリ装置などの単機能の装置における処理としてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、スキャナ部3により読み取った画像データについて処理を行うものとしたが、他の装置により形成された画像データを入力し、その入力された画像データを処理するようにしてもよい。
【0081】
また、逆に原稿の画像を読み取り出力する機能だけを備えたスキャナ装置により読み取られた画像データを入力し、パーソナルコンピュータに、画像処理プログラムをインストールして本発明の処理を行い、プリンタなどの装置に出力するようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、プレスキャンは、カラー画像を読み取るものとしたが、原稿がカラーであるかモノクロであるかを問わず、モノクロ画像を読み取るものとしてもよい。この場合には、画像メモリ23aには、モノクロ画像の輝度値が記憶され、その輝度値に基づいて濃度が薄い画素が検出されるようにする。
【0083】
また、上記実施形態では、所定の長さの直線が所定数M以上存在する場合に、所定の書式が存在するものとしたが、直線の方向が同一方向である直線の数を検出し、その数が所定の数以上である場合に、所定の書式が存在するものとしてもよい。また、その際に方向が同一であるとともに、直線の長さが同一である直線の数を検出し、その数が所定の数以上である場合に、所定の書式が存在するものとしてもよい。また、その際に、複数の直線の間隔を検出して、等間隔に記載されている直線の数を検出し、その数が所定の数以上である場合に、所定の書式が存在するものとしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、所定の面積以上の枠が所定数N以上存在する場合に、所定の書式が存在するものとしたが、枠が矩形である場合に、その長辺の方向が同一方向である枠の数を検出し、その数が所定の数以上である場合に、所定の書式が存在するものとしてもよい。また、その際に長辺の方向が同一であるとともに、枠の面積が同一である枠の数を検出し、その数が所定の数以上である場合に、所定の書式が存在するものとしてもよい。
【0085】
さらに、上記実施形態では、プレスキャン時に、カラーセンサで読み取ったRGB3色それぞれの濃度値を取得する場合を説明したが、スキャナの仕様によっては、例えば、単色(「G」のみ等)のセンサにより読み取りを行うことも可能であり、その場合は、予め記憶されているR値、G値、B値の濃度値の範囲を設定したものの中から「G」のみを用いて、濃度の薄い画素を判断するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施形態における画像処理装置を有する多機能周辺装置の外観を示す斜視図である。
【図2】多機能周辺装置の電気的構成を示すブロック図である
【図3】複数の画像を示し、(a)は、複数の直線が描かれてる画像、(b)は、複数の直線により多数の枠が描かれている画像、(c)は、写真などとともに、小さい枠が描かれている画像である。
【図4】直線を検出する方法を説明するための図であり、(a)は、画像の例を示し、(b)は、チェインコードを示す図である。
【図5】CPUにより実行される印刷処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
1 多機能周辺装置(MFP)
2 プリンタ部(出力手段)
3 スキャナ部(読取手段)
21 CPU
22 ROM
23
RAM
23a 画像メモリ(画像記憶手段)
23b 直線カウントメモリ(直線数計数手段)
23c 枠カウントメモリ(枠数計数手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿に記録された画像を読み取り、画像データを取得する読取手段と、
その読取手段により取得された画像データを構成する各画素の濃度値が所定の範囲の値に含まれるか否かを判断する濃度判断手段と、
その濃度値判断手段により前記濃度値が所定の範囲に含まれると判断された画素群により形成される、所定の長さ以上の直線を検出する直線検出手段と、
その直線検出手段により検出された直線の情報に基づいて、前記画像中に直線により形成される所定の書式が存在するか否かを判断する書式判断手段と、
その書式判断手段により前記画像中に所定の書式が存在すると判断された場合は、前記読取手段により読み取られた画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更して出力し、
前記書式判断手段により前記画像中に所定の書式が存在しないと判断された場合は、前記読取手段により読み取られた画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更せずに出力する出力手段とを備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像データはカラー画像データであり、
前記画素の濃度値は、R値、G値およびB値であって、
前記濃度判断手段は、R値、G値およびB値の各濃度値が所定の範囲であるか否かを判断することにより濃度の薄い画素を判断することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記読取手段により読み取られる画像が記録された原稿のサイズを検出する原稿サイズ検出手段を備え、
前記所定の長さは、前記原稿サイズ検出手段により検出された原稿のサイズに応じて設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記直線検出手段により検出された所定の長さ以上の直線の数を計数する直線数計数手段を備え、
前記書式判断手段は、前記直線数検出手段により検出された直線の数に基づいて読み取られた原稿の画像が所定の書式を含むか否かを判断することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記直線検出手段により検出された直線が形成する枠を検出する枠検出手段を備え、
前記書式判断手段は、前記枠検出手段により検出された枠に基づいて読み取られた原稿の画像が所定の書式を含むか否かを判断することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記枠検出手段が検出した枠の内側の面積を求める面積算出手段を備え、
前記書式判断手段は、前記面積算出手段により算出された枠の内側の面積に基づいて読み取られた原稿の画像が所定の書式を含むか否かを判断することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記面積算出手段により算出された枠の内側の面積が、所定の面積以上である枠の数を計数する枠数計数手段を備え、
前記書式判断手段は、前記枠数計数手段により計数された枠の数に基づいて読み取られた原稿の画像が所定の書式を含むか否かを判断することを特徴とする請求項6記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記読取手段は、カラー読取りにより所定の解像度で画像の画像データを取得するプレスキャン手段と、モノクロ読取りにより前記所定の解像度より高い解像度で前記画像の画像データを取得する本スキャン手段とを備え、
前記濃度判断手段は、前記プレスキャン手段により取得された画像データを構成する各画素の濃度値が所定の範囲の値に含まれるか否かを判断し、
前記出力手段は、前記書式判断手段により前記画像中に所定の書式が存在すると判断された場合は、前記本スキャン手段により取得された画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更して出力し、前記書式判断手段により前記画像中に所定の書式が存在しないと判断された場合は、前記本スキャン手段により取得された画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更せずに出力することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
画像を読み取る読取装置により取得された画像データを入力し、その画像データを処理するコンピュータにおいて実行される画像処理プログラムであって、
前記入力された画像データを構成する各画素の濃度値が所定の範囲の値に含まれるか否かを判断する濃度判断ステップと、
その濃度値判断ステップにより前記濃度値が所定の範囲に含まれると判断された画素群により形成される、所定の長さ以上の直線を検出する直線検出ステップと、
その直線検出ステップにより検出された直線の情報に基づいて、前記画像中に直線により形成される所定の書式が存在するか否かを判断する書式判断ステップと、
その書式判断ステップにより前記画像中に所定の書式が存在すると判断された場合は、前記画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更して出力し、
前記書式判断手段により前記画像中に所定の書式が存在しないと判断された場合は、前記画像データを構成する各画素の濃度値を濃度が濃くなるように変更せずに出力する出力ステップとを備えていることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−141384(P2008−141384A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324355(P2006−324355)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】