説明

画像処理装置及び制御プログラム

【課題】搬送経路途中に残留する原稿や用紙などの残留シートを排出するためだけに搬送機構が駆動されることを抑制することが可能な技術を開示する。
【解決手段】画像処理装置1は、指示受付部11が画像読取の開始指示を受け付けたことに基づき搬送機構28駆動を開始させ、搬送機構28の駆動開始から搬送機構28により搬送されてシートセンサ27に検知されるまでの経過時間Trが基準時間Tiよりも短いシートに関する画像処理を画像処理部24に実行させずに、経過時間が基準時間以上であるシートに関する画像処理を画像処理部24に実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送経路中に存在するシートを排出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、搬送機構を有し、例えば電源オン時に搬送経路途中に存在する用紙を装置外に自動で排紙する印刷装置がある。具体的には、この印刷装置は、搬送経路途中に用紙が有るか無いかを検知するセンサと、電源オフ時に用紙ジャムが発生しているか否かに関するジャム情報を記憶する記憶手段とを有する。そして、印刷装置は、電源オン時に、ジャム情報が、用紙ジャムが発生していない旨を示し、且つ、センサが、搬送経路途中の用紙を検知した場合に、その用紙を装置外に排紙する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−66969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の印刷装置では、電源オン時に、用紙ジャムが発生せず、且つ、搬送経路途中の用紙が検知されない場合には、常に、その用紙を排出するためだけに搬送機構が駆動される。このため、消費電力低下の障害になったり、搬送機構の性能が早期に低下したりするという問題があった。なお、このような問題は、印刷装置に限らず、原稿を自動で搬送する原稿読取装置などでも生じ得る。
【0005】
本明細書では、搬送経路途中に残留する原稿や用紙などの残留シートを排出するためだけに搬送機構が駆動されることを抑制することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される画像処理装置は、シートが配置されるシート配置位置から、シートを装置外部に排出するシート排出位置まで延びる搬送経路を有し、当該搬送経路上に存在するシートを搬送する搬送機構と、前記搬送経路途中でシートの有無を検知するシートセンサと、前記シートセンサの検知位置よりも前記搬送経路の下流側に搬送されたシートに関する画像処理を実行する画像処理部と、前記画像処理の開始指示を受け付ける指示受付部と、前記搬送機構及び前記画像処理部を制御する制御部と、前記搬送機構の駆動を開始してから、前記シート配置位置にあったシートが搬送されて前記シートセンサにより検知されるまでの基準時間が記憶されるメモリと、を備え、前記制御部は、前記指示受付部が前記開始指示を受け付けたことに基づき前記搬送機構の駆動を開始させ、前記搬送機構の駆動開始から前記搬送機構により搬送されて前記シートセンサに検知されるまでの経過時間が前記基準時間よりも短いシートに関する画像処理を前記画像処理部に実行させずに、前記経過時間が前記基準時間以上であるシートに関する画像処理を前記画像処理部に実行させる。
【0007】
画像処理装置では、前記経過時間が前記基準時間よりも短い場合、前記搬送経路途中に前記残留シートが有ったことを通知する通知部を備えてもよい。
【0008】
上記画像処理装置では、前記画像処理部は、前記シート上の画像を読み取る画像読取部であって、前記制御部は、前記搬送機構の駆動開始から前記搬送機構により搬送されて前記シートセンサに検知されるまでの経過時間が、前記基準時間よりも短い場合、前記画像読取部による読み取りを開始せず、前記経過時間が前記基準時間以上である場合、前記画像読取部による読み取りを開始してもよい。
【0009】
上記画像処理装置の前記制御部は、前記画像処理装置の電源オン時、前記残留シートが有っても、少なくとも前記指示受付部が前記開始指示を受け付けることを条件として、前記搬送機構を駆動させてもよい。
【0010】
上記画像処理装置の前記制御部は、前記搬送機構の駆動開始から前記搬送機構により搬送されて前記シートセンサに検知されるまでの経過時間が、前記基準時間よりも短い場合、前記搬送機構の駆動を継続して行い、前記搬送機構の駆動開始から前記シートセンサによる検知しなくなった後に再び前記シートセンサに検知されるまでの経過時間が、前記基準時間よりも短い場合、前記画像読取部による読み取りを開始せず、前記経過時間が前記基準時間以上である場合、前記画像読取部による読み取りを開始してもよい。
【0011】
なお、この発明は、画像処理装置、画像処理制御方法、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬送経路途中に残留する原稿や用紙などの残留シートを排出するためだけに搬送機構が駆動されることを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画像読取装置の外観を示す斜視図
【図2】画像読取装置の概略的な内部構成図(搬送状態A)
【図3】画像読取装置の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図4】画像読取装置1のメインフローチャート
【図5】画像読取装置の概略的な内部構成図(搬送状態B)
【図6】画像読取装置の概略的な内部構成図(搬送状態C)
【図7】画像読取装置の概略的な内部構成図(搬送状態D)
【図8】画像読取処理を示すフローチャート
【図9】各搬送状態におけるフロントセンサの検知結果等を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
本明細書が開示する発明の一実施形態を図1〜図9を参照しつつ説明する。以下の説明では、図1,2,5から7中の符号Xが付された方向が画像読取装置1の前方向であり、符号Yが付された方向が右方向であり、符号Zが付された方向が上方向であるものとして説明する。なお、画像読取装置1は画像処理装置の一例である。
【0015】
1.画像読取装置の機械的構成
図1は画像読取装置1の外観を示す斜視図であり、図2は画像読取装置1の概略的な内部構成図である。画像読取装置1は、原稿トレイ2と、本体部3と、排出トレイ4と、を含む。この画像読取装置1は、原稿トレイ2に載置された原稿M(図2参照)を本体部3内に搬送しつつ、その搬送中の原稿M上の画像を、本体部3内に設けられた画像読取部24(図2参照)により読み取り、その画像が読み取られた原稿Mを排出トレイ4に排出するシートフィードスキャナである。なお、原稿トレイ2の前端位置がシート配置位置の一例であり、排出トレイ4の後端位置がシート排出位置の一例である。また、原稿Mは、シートの一例であり、紙やOHPシートなどでもよい。
【0016】
原稿トレイ2は、前側が下方に傾斜した状態で、本体部3の後側に設けられている。原稿トレイ2の左右の両端部には、ガイド7A、7Bが左右方向に移動可能に設けられている。ガイド7A、7Bは、例えばユーザにより押し広げられ、又は押し狭められることにより、ガイド7A、7Bの間の距離が原稿の左右方向の幅と等しくなるよう調整可能である。それらのガイド7A、7Bの間に1または複数の原稿Mが配置される。
【0017】
図2に示すように、本体部3の内部には、原稿トレイ2の前端から排出トレイ4の後端まで延びる搬送経路22が設けられている。この搬送経路22の周辺に、ピックアップローラ20と、分離パッド21と、フィードローラ23と、画像読取部24と、排出ローラ25と、フロントセンサ26、リヤセンサ27とが設けられている。リヤセンサ27はシートセンサの一例である。
【0018】
ピックアップローラ20は、原稿トレイ2の前側に配置され、摩擦力により、原稿トレイ2に載置された1または複数枚の原稿Mを本体部3の内部へと引き込む。分離パッド21は、ピックアップローラ20に対向するように配置され、摩擦力により、複数枚の原稿Mを1枚ずつ分離する。これにより、原稿Mが1枚ずつ本体部3の内部へと搬送される。
【0019】
フィードローラ23は、ピックアップローラ20等よりも搬送経路22の下流側に設けられ、図示しないモータにより駆動される。フィードローラ23は、搬送経路22上に存在する原稿Mを前方へと搬送する。画像読取部24は、フィードローラ23よりも搬送経路22の下流側に設けられ、そのフィードローラ23による搬送中の原稿Mの画像を読み取る。画像読取部24は、搬送経路22を挟んで対向配置された一対の読取デバイス30、40を含んで構成されている。読取デバイス30は、光源31と、受光部32とを有し、搬送経路22の上側に配置されている。
【0020】
光源31から照射された光が原稿Mによって反射され、その反射された光を受光部32で受光することにより、読取デバイス30は、原稿Mの一面、換言すれば上面の画像を読み取る。読取デバイス40も、光源41と、受光部42とを有し、搬送経路22の下側に配置されている。読取デバイス40は、原稿Mの他面、換言すれば下面の画像を読み取る。読取デバイス30,40は、CIS(Conact Image sensor)や、CCD(Charge Coupled Drive Image Sensor)であることが好ましい。なお、画像読取部24は画像処理部の一例である。
【0021】
排出ローラ25は、画像読取部24よりも搬送経路22の下流側に設けられ、画像読取部24にて画像が読み取られた原稿Mを、本体部3の外部に送り出す。排出トレイ4は本体部3の前側に設けられ、その排出トレイ4に、本体部3の外部に送り出された原稿Mが積層される。なお、搬送経路22、ピックアップローラ20、フィードローラ23、排出ローラ25が搬送機構28を構成する。また、この搬送機構28は、ピックアップローラ20、フィードローラ23、排出ローラ25を、例えば共通のモータにより連動して回転することが好ましい。この場合、搬送経路22中に存在する複数の原稿Mは、同時に搬送されることになる。
【0022】
フロントセンサ26は、原稿トレイ2の前端側に設けられ、原稿トレイ2上に配置されている原稿Mの有無を検知し、その検知結果に応じた検知信号SG1を出力する。リヤセンサ27は、搬送経路22上のフロントセンサ26より下流側に設けられている。リヤセンサ27は、設けられた位置における原稿Mの有無を検知し、その検知結果に応じた検知信号SG2を出力する。
【0023】
また、図1に示すように、本体部3には、この他に、電源スイッチや各種設定ボタンからなり、ユーザからの操作指令等を受け付ける操作部5や、液晶ディスプレイからなり、画像読取装置1の状況や画像読取部24が原稿を読み取った画像を表示する表示部6を含む。
【0024】
2.画像読取装置の電気的構成
図3は画像読取装置1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。画像読取装置1は、画像読取装置1の各部を制御する制御回路10を含む。制御回路10は、中央処理装置(以下、CPU)11、ROM12、RAM13を備え、これらにバス14を介して操作部5、表示部6、アナログフロントエンド(以下、AFE)15、点灯回路16、搬送機構28に含まれる各ローラを駆動する駆動回路17、読取デバイス30、40、フロントセンサ26、リヤセンサ27などが接続されている。
【0025】
ROM12には、画像読取装置1の動作を制御するための制御プログラムなど、各種のプログラムが記憶されており、CPU11は、ROM12から読み出した制御プログラムに従って各部の制御を行う。
【0026】
点灯回路16は、読取デバイス30、40に各々接続されており、CPU11からの命令に基づいて、光源31、41の点灯及び点灯時間を制御する信号を読取デバイス30、40に送信する。読取デバイス30、40は、点灯回路16から信号を受け取ると、光源31、41を点灯し、照射時間に亘って光源31、41を発光させる。その際、読取デバイス30、40は、受光部32、42が受光した受光量に応じたアナログ信号である読取電圧をAFE15に出力する。
【0027】
AFE15は、読取デバイス30、40に各々接続されており、読取デバイス30、40から出力される読取電圧をデジタル信号である読取データに変換するA/D変換回路を有している。AFE15は、読取デバイス30、40から出力された読取電圧を8ビット(0〜255)の読取データにA/D変換を行う。そして、AFE15によってA/D変換された読取データは、バス14を介してRAM13に記憶される。
【0028】
3.画像読取処理
図4は、電源投入時の画像読取装置1のメインフローチャートである。図5から図7は、図2と同様、画像読取装置1の概略的な内部構成図を示している。図2、図5、図6、図7の各図は、画像読取の開始指示を受け付けたときからの原稿M及び残留シートNの各搬送状態AからDをそれぞれ示している。以下の説明では、原稿Mは、原稿トレイ2上に配置されていたシートであり、残留シートNは、上記開始指示を受け付ける前に既に搬送経路22途中に残留しているシートであるものとする。
【0029】
ここで、例えばユーザによる操作部5での操作により画像読取装置1に電源が投入される。すると、CPU11は、ユーザによる操作部5での操作により、画像読取の開始指示を受け付けたかどうかを判断する(S1)。CPU11は、画像読取の開始指示を受け付けていない場合(S1:NO)、S2に進む。CPU11は、ユーザによる操作部5での操作により、画像読取装置1の電源がオフされたかどうかを判断する(S2)。CPU11は、ユーザによる操作部5での操作により、画像読取装置1の電源がオフされると(S2:YES)、本処理を終了する。CPU11は、画像読取装置1の電源がオフされない場合(S2:NO)であって、画像読取の開始指示を受け付けていない場合(S1:NO)は、CPU11は、ユーザによる画像読取の開始指示がなされるまで待機する。
【0030】
CPU11は、例えばユーザによる操作部5での操作に基づき、画像読取の開始指示を受け付けると(S1:YES)、S3の処理に進む。CPU11は、まずフロントセンサ26からの検出信号SG1に基づき原稿トレイ2上に原稿Mが有るかどうかを判断する(S3)。原稿Mが無いと判断した場合(S3:NO)、原稿トレイ2に原稿Mをセットすることを促すメッセージや、原稿Mがセットされていないことを示すエラーメッセージなどを表示部6に表示させるなどの第1通知処理を実行し(S4)、S1の処理に戻る。
【0031】
CPU11は、原稿トレイ2に原稿Mが有ると判断した場合(S3:YES)、駆動回路17を介して搬送機構28の駆動を開始させる(S5)。これにより、原稿トレイ2上に配置された原稿Mが1枚、搬送経路22に沿って搬送される。このとき、搬送経路22途中に残留シートNが存在する場合には、この残留シートNも搬送される。
【0032】
図2に示す搬送状態Aでは、例えば名刺などの残留シートNが、搬送方向においてリヤセンサ27の検知位置の手前に存在し、原稿トレイ2上の原稿Mが1枚、フロントセンサ26の検知位置に存在していることを示している。
【0033】
例えば、画像読取装置1の電源がオンされた際に、図2に示す搬送状態Aであったとすると、CPU11は、残留シートNが存在するかどうかにかかわらず、画像読取の開始指示を受け付けていない場合(S1:NO)は、搬送機構28に対して駆動指示をしない。CPU11は、画像読取の開始指示を受け付け(S1:YES)、かつ、原稿トレイ2上に原稿Mが有る場合(S3:YES)に、駆動回路17を介して搬送機構28の駆動を開始させている(S5)。
【0034】
即ち、残留シートNが存在するかどうかにかかわらず、CPU11は、画像読取の開始指示を受け付けたことを条件に搬送機構28を駆動させる。この画像読取装置1では、電源投入時に、従来の画像読取装置や画像形成装置のように、残留シートNを排出するためだけに搬送機構28が駆動されることが抑制される。
【0035】
CPU11は、搬送機構28に対して駆動するように指示する(S5)と同時に、経過時間Trの計測を開始する(S6)。そして、CPU11は、画像読取処理(S7)に移行する。
【0036】
図8は、図4のS7の画像読取処理を示すフローチャートである。まず、CPU11は、リヤセンサ27からの検出信号SG2に基づき、搬送経路22上のリヤセンサ27が設けられた位置に、シートが検知されたかどうかを判断する(S111)。CPU11は、シートが無いと判断した場合(S111:NO)、シートが検知された判断するまで待機する。
【0037】
CPU11は、リヤセンサ27にてシートが検知されたと判断した場合(S111:YES)、上記図4のS6での経過時間Trの計測の開始から、リヤセンサ27にてシートが検知されるまでの経過時間Trを算出し、RAM13に記憶する(S112)。なお、上記画像読取の開始指示の受付時や、フロントセンサ26が原稿Mを検知した時を、搬送機構28の駆動開始時とみなして経過時間Trを算出してもよい。
【0038】
次に、CPU11は、RAM13から基準時間Tiを読み出して、算出した経過時間Trが基準時間Ti以上であるかどうかを判断する(S113)。基準時間Tiは、例えば搬送経路22途中に残留シートNが存在しない状態で、搬送機構28の駆動開始時から、リヤセンサ27にてシートが検知されるまでの経過時間である。基準時間Tiを、換言すれば、同駆動開始時から、原稿トレイ2上の原稿Mがリヤセンサ27にて検知されるまでの経過時間であることが好ましい。なお、基準時間Tiは、搬送機構28の経年変化等によって変化し得る。このため、搬送経路22途中に残留シートNが存在しない状態で、搬送機構28の駆動開始させて経過時間Trを算出し、これを最新の基準時間Tiとして書き換え更新するモードが、画像読取装置1に備えられていることが好ましい。また、RAM13はメモリの一例である。なお、メモリとしては、RAM13以外に、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、CD−ROMなどの記憶媒体でもよい。
【0039】
そして、CPU11は、経過時間Trが基準時間Tiよりも短いシートに対する画像読取を画像読取部24に実行させずに、経過時間Trが基準時間Ti以上であるシートに対する画像読取を画像読取部24に実行させる制御処理を実行する。以下、具体的に説明する。
【0040】
3−1.残留シートが存在しない場合
図4のS5において搬送機構28の駆動開始時に残留シートNが存在しない場合、即ち、図2の搬送状態Aに対して残留シートNが無い状態では、原稿Mについて経過時間Trは基準時間Ti以上になるため(S113:YES)、CPU11は、リヤセンサ27が原稿Mを検知した時点をトリガーとして、画像読取部24に当該原稿Mについて画像の読取動作を開始させる(S114)。
【0041】
CPU11は、ユーザによる操作部5での操作により片面読み取りモードが設定されていれば、読取デバイス30,40のいずれか一方に読取動作を実行させ、両面読み取りモードが設定されていれば、読取デバイス30,40の両方に読取動作を実行させる。CPU11は、リヤセンサ27の検知結果がシート有りのとき(S115:NO)、読取動作を継続し、同検知結果がシート無しになったときに(S115:YES)、1枚分の原稿Mについて画像読取が完了したとして、画像読取部24に読取動作を終了させる(S116)。CPU11は、図4のS7の画像読取処理を終了する。
【0042】
3−2.残留シートが存在する場合
図9は、各搬送状態におけるフロントセンサ26の検知結果等を示すタイムチャートを示している。図2に示す搬送状態Aでは、例えば名刺などの残留シートNが、搬送方向においてリヤセンサ27の検知位置の手前に存在し、原稿トレイ2上の原稿Mが1枚、フロントセンサ26の検知位置に存在している。S5の搬送機構28の駆動開始時に搬送状態Aである場合、残留シートNは、未だフロントセンサ26に検知されていない。次に図5に示す搬送状態Bでは、原稿Mはフロントセンサ26の検知位置よりも下流側に進むとともに、残留シートNはリヤセンサ27にて検知される。このとき、搬送機構28の駆動開始時(S6の経過時間Tr計測開始時)から、残留シートNがリヤセンサ27にて検知されるまでの経過時間TrNは、上記基準時間Tiよりも短くなる(図9参照)。
【0043】
従って、CPU11は、残留シートNについて経過時間TrNが基準時間Tiよりも短い場合(S113:NO)、例えば残留シートNが存在したことを表示部6に表示させる第2通知処理を実行する(S117)。なお、通知方法としては、音声による通知や、通信による外部機器への通知でもよい。このときCPU11は通知部として機能する。また、後続の原稿Mを排出トレイ4に排出したときにも同通知を継続して行ってもよい。これにより、ユーザは、排出された原稿M内に残留シートNが紛れていることを知ることができる。
【0044】
CPU11は、第2通知処理を実行後、リヤセンサ27の検知結果がシート有りのときは(S118:NO)待機し、残留シートNについて画像の読取動作を画像読取部24に実行させない。そして、同検知結果がシート無しになったときに(S118:YES)、S111に戻る。即ち、図6に示す搬送状態Cのように、残留シートNについては、画像読取装置1は、画像読取を実行せずに排出トレイ4に排出される(図8参照)。
【0045】
その後、搬送状態Cから図7に示す搬送状態Dになると、原稿Mがリヤセンサ27により検知される(S111:YES)。すると、CPU11は、S5の搬送機構28の駆動開始時(S6:経過時間Tr計測開始時)から、原稿Mがリヤセンサ27にて検知されるまでの経過時間TrMを算出し(S112)、この経過時間TrMは基準時間Ti以上になる(S113:YES、図9参照)。このため、CPU11は、原稿Mについて画像の読取動作を画像読取部24に開始させる(S114)。
【0046】
CPU11は、読取動作の終了後、フロントセンサ26からの検知信号SG1に基づき原稿トレイ2に原稿Mがまだ有ると判断した場合(S8:NO)、S7の画像読取処理を引きつつき実行し、原稿Mが無いと判断した場合(S8:YES)、CPU11は、搬送機構28に対して駆動を停止するように指示する(S9)。そして、S1の処理に戻って、画像読取の開始指示を受け付けていない場合(S1:NO)は、CPU11は、ユーザによる画像読取の開始指示がなされるまで待機する。
【0047】
4.本実施形態の効果
上述したように、画像読取の開始指示が受け付けられたことに基づき搬送機構28の駆動が開始されたときに、残留シートNが無ければ、その搬送機構28の駆動開始から、原稿トレイ2上にあった原稿Mがリヤセンサ27に検知されるまでの経過時間TrNは基準時間Ti以上になる。一方、搬送経路22途中に残留シートNが有れば、搬送機構28の駆動開始から、残留シートNがリヤセンサ27に検知されるまでの経過時間TrMは基準時間Tiよりも短くなる。
【0048】
そこで、本実施形態によれば、画像読取の開始指示が受け付けられたことに基づき搬送機構28の駆動が開始され(S5)、その駆動開始から搬送機構28により搬送されリヤセンサ27に検知されるまでの経過時間Trが基準時間Tiよりも短いシートは(S113:NO)、残留シートNとみなすことができる。このため、その残留シートNは、画像読取が実行されず排出される。一方、経過時間Trが基準時間Ti以上であるシートは(S113:YES)、残留シートNではなく、原稿トレイ2から搬送された原稿Mとみなすことができる。このため、その原稿Mは、画像読取が実行された後に排出される(S114、S116)。
【0049】
このように、原稿Mを搬送するために搬送機構28を駆動する過程で、残留シートNを排出することができる。これにより、電源オン時に画像読取の開始指示を受け付けることを条件として搬送機構28を駆動させることによって、残留シートを排出するためだけに搬送機構28が駆動されることを抑制することができる。しかも、残留シートNに対して無駄な画像読み取りを抑制することができる。
【0050】
また、経過時間Trが基準時間Tiよりも短い場合(S6:NO)、搬送経路22途中に残留シートNが有ったことが、画像読取装置1の外部に通知される(S11)。これにより、画像処理装置の使用者などに残留シートがあったことを知らせることができる。
【0051】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0052】
(1)上記実施形態では、画像読取装置1を例に挙げた。しかし、シートが配置される配置トレイから排出トレイまで延びる搬送経路を有し、搬送中のシートに画像を形成する印刷装置やファクシミリ装置でもよい。印刷装置の場合、上記画像読取処理(S7の代わりに印刷処理)を実行することにより、残留シートを排出するためだけに搬送機構が駆動されることを抑制することができる。要するに、シート配置位置からシート排出位置まで延びる搬送経路を有する搬送機構を備え、搬送中のシートに関する画像処理を実行する画像処理装置であればよい。
【0053】
(2)上記実施形態では、複数のローラを有する搬送機構28を例に挙げた。しかし、回転駆動されるベルトを備える搬送機構などでもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、一対の読取デバイス30,40は搬送経路22を挟んで対向配置されていた。しかし、一対の読取デバイス30,40が、搬送経路22の搬送方向において互いにずれた位置に配置された構成でもよい。また、読取デバイスを1つだけ備える画像読取装置でもよい。但し、上記実施形態では、2つの読取デバイス30,40を備えてシートの両面の画像を読み取ることが可能な画像読取装置1に対して、上記効果を得ることができる。
【0055】
(4)上記実施形態では、制御回路10は、1つのCPU11を備え、その1つのCPU11により画像読取処理が実行される構成であった。しかし、複数のCPU11により画像読取処理が実行される構成でもよい。例えば指示受付処理、通知処理、制御処理を別々のCPUに実行させる構成でもよい。また、制御回路10は、汎用性のあるCPUで構成したものに限らず、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)や、FPGA(Field−Programmable Gate Array)などの専用回路で構成したものでもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:画像読取装置 11:CPU 13:RAM 22:搬送経路 24:画像読取部 27:リヤセンサ 30,40:読取デバイス M:原稿 N:残留シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが配置されるシート配置位置から、シートを装置外部に排出するシート排出位置まで延びる搬送経路を有し、当該搬送経路上に存在するシートを搬送する搬送機構と、
前記搬送経路途中でシートの有無を検知するシートセンサと、
前記シートセンサの検知位置よりも前記搬送経路の下流側に搬送されたシートに関する画像処理を実行する画像処理部と、
前記画像処理の開始指示を受け付ける指示受付部と、
前記搬送機構及び前記画像処理部を制御する制御部と、
前記搬送機構の駆動を開始してから、前記シート配置位置にあったシートが搬送されて前記シートセンサにより検知されるまでの基準時間が記憶されるメモリと、を備え、
前記制御部は、前記指示受付部が前記開始指示を受け付けたことに基づき前記搬送機構の駆動を開始させ、前記搬送機構の駆動開始から前記搬送機構により搬送されて前記シートセンサに検知されるまでの経過時間が前記基準時間よりも短いシートに関する画像処理を前記画像処理部に実行させずに、前記経過時間が前記基準時間以上であるシートに関する画像処理を前記画像処理部に実行させる、画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記経過時間が前記基準時間よりも短い場合、前記搬送経路途中に残留シートが有ったことを通知する通知部を備える、画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記画像処理部は、前記シート上の画像を読み取る画像読取部であって、
前記制御部は、
前記搬送機構の駆動開始から前記搬送機構により搬送されたシートが前記シートセンサに検知されるまでの経過時間が、前記基準時間よりも短い場合、前記画像読取部による読み取りを開始せず、前記経過時間が前記基準時間以上である場合、前記画像読取部による読み取りを開始する、
画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置であって、
前記制御部は、前記画像処理装置の電源オン時、前記搬送機構を駆動させず少なくとも前記指示受付部が前記開始指示を受け付けることを条件として、前記搬送機構を駆動させること、画像処理装置。
【請求項5】
請求項3に記載の画像処理装置であって、
前記制御部は、
前記搬送機構の駆動開始から前記搬送機構により搬送されたシートが前記シートセンサに検知されるまでの経過時間が、前記基準時間よりも短い場合、前記搬送機構の駆動を継続して行い、前記搬送機構の駆動開始から前記シートセンサによるシートが検知しなくなった後に再び前記シートセンサにシートが検知されるまでの経過時間が、前記基準時間よりも短い場合、前記画像読取部による読み取りを開始せず、前記経過時間が前記基準時間以上である場合、前記画像読取部による読み取りを開始する、
画像処理装置。
【請求項6】
シートが配置されるシート配置位置から、シートを装置外部に排出するシート排出位置まで延びる搬送経路を有し、当該搬送経路上に存在するシートを搬送する搬送機構と、
前記搬送経路途中でシートの有無を検知するシートセンサと、
前記シートセンサの検知位置よりも前記搬送経路の下流側に搬送されたシートに関する画像処理を実行する画像処理部と、
前記搬送機構の駆動を開始してから、前記シート配置位置にあったシートが搬送されて前記シートセンサにより検知されるまでの基準時間が記憶されるメモリと、を備える画像読取装置が有するコンピュータに、
前記画像処理の開始指示を受け付ける指示受付処理と、
前記開始指示を受け付けたことに基づき前記搬送機構の駆動を開始させ、前記搬送機構の駆動開始から前記搬送機構により搬送されて前記シートセンサに検知されるまでの経過時間が前記基準時間よりも短いシートに関する画像処理を前記画像処理部に実行させずに、前記経過時間が前記基準時間以上であるシートに関する画像処理を前記画像処理部に実行させる制御処理と、を実行させる制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−213147(P2012−213147A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−52933(P2012−52933)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】