画像処理装置及び画像処理方法
【課題】大局的な正反射光色付きを抑制することができる画像処理装置及び画像処理方法等を提供する。
【解決手段】記録媒体上において無色色材を有色色材上に記録して画像を形成するための画像処理装置であって、前記有色色材上に記録される無色色材の量を異ならせて形成される複数種類の画像における反射角度と反射光の色との関係を入力する入力手段と、入力画像データによって表される画像を構成する各領域の画像データを取得する取得手段と、前記入力画像データによって表される画像が観察される観察角度を前記反射角度として、前記入力手段によって入力された関係から当該観察角度における前記画像データ毎の前記無色色材の量と前記反射光の色との関係を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された関係に基づいて、前記画像データ毎の前記無色色材を記録する際の条件を決定する決定手段と、が設けられている。
【解決手段】記録媒体上において無色色材を有色色材上に記録して画像を形成するための画像処理装置であって、前記有色色材上に記録される無色色材の量を異ならせて形成される複数種類の画像における反射角度と反射光の色との関係を入力する入力手段と、入力画像データによって表される画像を構成する各領域の画像データを取得する取得手段と、前記入力画像データによって表される画像が観察される観察角度を前記反射角度として、前記入力手段によって入力された関係から当該観察角度における前記画像データ毎の前記無色色材の量と前記反射光の色との関係を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された関係に基づいて、前記画像データ毎の前記無色色材を記録する際の条件を決定する決定手段と、が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置等の画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
文字や画像等の情報を用紙やフィルム等シート状の記録媒体に記録を行う記録装置には様々な方式のものがある。その中で、記録媒体に記録剤(色材)を付着することで記録媒体上にテキストや画像を形成する方式が実用化されている。このような方式の代表例として、複数のインクの吐出口を備えた記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置が知られている。
近年、インクジェット記録装置で写真光沢紙に画像を記録する写真印刷が普及しており、この写真印刷に用いられるインクとして、水に溶解しやすい染料を色材として用いた染料インクが広く適用されてきた。染料インクは溶媒中に溶解した色材が記録媒体の繊維質の内部に浸透しやすい。従って、画像の記録後も記録媒体の表面形状が維持されやすいため、記録画像の光沢は記録媒体自体の光沢が維持される。つまり、光沢に優れた記録媒体に染料インクで記録を行えば、光沢に優れた記録画像を得ることが可能である。従って、染料インクを用いたインクジェット記録装置では、記録媒体自体の光沢を向上させることにより、画像の光沢付与の実現が可能であった。
一方、染料インクで発生する耐光性や耐水性の問題を解決するために、近年では、色材に顔料を用いた顔料インクの利用が増加している。顔料インクは、一般に色材粒子のサイズが染料インクと比べて大きいため、耐候性の高い印刷物を得られることが知られている。
【0003】
しかしながら、耐光性、耐水性の面で優れる一方、顔料インクを用いて形成される画像では、正反射光が色付くという画像品質上の課題が発生する。正反射光は試料面へ移り込んだ照明の像として画像観察者に認識される。この正反射光(及び、正反射近傍に拡散する光)に色付き(以下、正反射光色付きということがある)が発生すると、言い換えれば、印刷物に映り込んだ照明の像の色味が照明本来と異なる色味に観察されると、画像を観察する上で妨害要素となる。特に、写真印刷においては好ましくない画像として認識されやすい。正反射光が色付く原因としては、ブロンズ現象、薄膜干渉が一般的によく知られている。ブロンズ現象とは、印刷物の表面に露出している材料の特性により波長分散のある反射をすることで正反射光に色付きが発生する現象である。ブロンズ現象が発生すると、正反射光がインク固有の色付きになりやすいことが知られており、特にシアンインクでマゼンタに色付く。薄膜干渉とは、光の波長オーダーで形成されたインク薄膜において、表面からの反射光と異なる界面の反射光とに位相差が発生し、波長毎に光の強め合いや弱め合いが起こることで正反射光に波長分散を生じる。
ブロンズ現象や薄膜干渉は、印刷物表面の材質に依存しているとともに、構造によっても発生度合は異なる。この構造とは、例えば記録媒体表面を占めるインクの被覆率である。つまり、色毎あるいは階調毎に表面が異なる構造や材質で構成される印刷物は、色毎あるいは階調毎に正反射色の色味が異なる。このような印刷物では、複数の色によって構成される画像領域の正反射色が、画像の位置によって異なった色味に観察されるため、画像観察者に違和感を与えてしまう。
【0004】
上述した課題を解決する方法として、記録領域全域に着色材を含有しない無色透明なクリアインクをオーバーコートする技術が開示されている(特許文献1)。また、正反射光色付きを評価する技術が開示されている(特許文献2)。
ここで、特許文献2に記載された正反射光色付きを評価する技術について、図1を用いて以下に簡単に概要を説明する。光源102によって所定の角度θから測定試料101を照射し、測定試料101からの正反射光が受光器103によって検出される。すなわち、光源102及び受光器103を含む同一面内で、光源102及び受光器103は測定試料101の法線に対して反対側に角度θずつ傾いて配置されている。この試料の法線に対する正反射方向を示す反射角度θを本明細書では正反射角とよぶ。受光器103では、CIE XYZ表色系における三刺激値XxYxZxが検出される。予めブロンズの発生しない試料(例えば、屈折率の波長分散が小さい黒色研磨硝子板)の三刺激値XsYsZsを保持しておき、XxYxZxとXsYsZsからCIE L*a*b*表色系のa*b*をプロットする。ここで、XxYxZxは分光反射率が一定の仮想的な基準面としてもよい。上述したa*、b*から求めた彩度C*が正反射光色付きの度合を示す。C*が小さいほど正反射光色付きが少なく、正反射光色付きが無い試料ではC*が0になる。すなわち、a*b*平面上で原点に位置する。特許文献2には、a*b*平面で説明されているが、正反射光の色情報を表す情報であればよく、例えば、CIE xyY表色系におけるxy色度座標上でも正反射光色付きを表現可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−132350号公報
【特許文献2】特開2006−177797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1には、色再現に影響しないクリアインクを記録領域にオーバーコートする方法が開示されているが、この方法ではブロンズ現象を抑制できない場合がある。クリアインクをオーバーコートしてもブロンズ現象を抑制できない例を図2に示す。図2は、シアンインクで記録媒体表面を100%被覆した記録物に対して、異なるクリアインク記録量でオーバーコートした記録物の正反射光色付きを、CIE xyY表色系におけるxy色度座標にプロットしたグラフである。図2中の黒丸(●)は、シアンインクで記録媒体表面を100%被覆した記録物の上にクリアインク記録量を0%から100%まで10%ずつ増やして記録した記録物の正反射光色付きを示している。また、図2中の白抜きの四角(□)は、無彩色を示している。クリアインクが記録されていない(記録量0%)点は、シアンインクで形成された記録物自体のブロンズ現象による正反射光色付きである。図2を参照すると、いずれのクリアインク記録量でオーバーコートしても、xy色度座標上で無彩色にならないことがわかる。この原因は、クリアインク層の上層で反射する光と下層で反射する光との位相差から生じる薄膜干渉に起因していると考えられる。すなわち、クリアインクのオーバーコートでは、正反射光を抑制できない場合がある。図2には、クリアインクの記録量増加に伴い、正反射光色付きがxy色度座標上で無彩色の点を囲むようにして変化する例を示した。
【0007】
なお、クリアインクの記録量増加に対する正反射光色付きの挙動(色度の軌跡や色相変化量)は、記録媒体上に記録されているカラーインク(有色色材)の種類によって異なることが知られている。更に、記録物を観察する角度によっても正反射光色付きの挙動が異なる。図3を用いて、観察角度に対する正反射光色付きの挙動を説明する。図3は図2と同様に、シアンインクで記録媒体表面を100%被覆した記録物に対して、異なるクリアインク記録量でオーバーコートした記録物の正反射光色付きを、xy色度座標にプロットしたグラフである。図3中の線分(実線、破線、一点鎖線)でつないだ各系列は、各観察角度(図1における角度θ)を示している。図3中の黒丸(●)と実線で示した系列は、シアンインクで記録媒体表面を100%被覆した記録物の上にクリアインク記録量を0%から100%まで10%ずつ増やして記録した記録物を45度正反射で測定した正反射光色付きを示している。図3中の黒塗りの四角(■)と一点鎖線で示した系列は、上記試料を20度正反射で測定した正反射光色付きを示している。図3中の黒塗りの三角(▲)と点線で示した系列は、上記試料を60度正反射で測定した正反射光色付きを示している。図3に示した通り、正反射角によって正反射光色付きは異なる軌跡を描く。これは、同一の試料であっても、観察する角度によって正反射光の色が異なった色味を帯びて観察されることを示している。
【0008】
本発明は、大局的な正反射光色付きを抑制することができる画像処理装置及び画像処理方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像処理装置は、記録媒体上において無色色材を有色色材上に記録して画像を形成するための画像処理装置であって、前記有色色材上に記録される無色色材の量を異ならせて形成される複数種類の画像における反射角度と反射光の色との関係を入力する入力手段と、入力画像データによって表される画像を構成する各領域の画像データを取得する取得手段と、前記入力画像データによって表される画像が観察される観察角度を前記反射角度として、前記入力手段により入力された関係から当該観察角度における前記画像データ毎の前記無色色材の量と前記反射光の色との関係を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された関係に基づいて、前記画像データ毎の前記無色色材を記録する際の条件を決定する決定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大局的な正反射光色付きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】正反射色付きの測定方法を示す図である。
【図2】正反射光色付きをプロットしたグラフである。
【図3】正反射光色付きの角度依存性をxy色度座標上に示したグラフである。
【図4】試料の断面を模式的に示す図である。
【図5】正反射光色付きをプロットしたグラフである。
【図6】クリアインク記録量が相違する2領域を並置させた試料を示す図である。
【図7】画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図8】観察条件を入力するユーザインタフェースを示す図である。
【図9】カラー色分解LUT6004の例を示す図である。
【図10】解像度変換の例を示す図である。
【図11】クリアインク記録情報の例を示す図である。
【図12】格子パターンを示す図である。
【図13】1画素内を4×4マスに分割して配置した例を示す図である。
【図14】入力レベル0〜8に対する出力パターンを示す図である。
【図15】記録ヘッド及び記録パターンを示す図である。
【図16】マスクパターンの例を示す図である。
【図17】クリアインク記録情報を生成する処理を示すフローチャートである。
【図18】記録物のターゲットからの色度ベクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、以下に説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
本発明の実施形態に係る画像処理装置は、画素毎に異なる量のクリアインクを記録して局所的な正反射光色付きを制御し、大局的な正反射光色付きを抑制する。例えば、所定の画素にクリアインクを所定の量オーバーコート(記録媒体上で最上層に位置するように記録)した際の正反射光が緑色に色付くとする。この画素の周辺画素にクリアインクを異なる所定の量オーバーコートした際の正反射光が赤色に色付けば、補色の関係にある緑色と赤色が相殺され、局所的な色付きが発生しても大局的な色付きは無彩色になる。すなわち、局所的な正反射光色付きの色味が互いに相殺するように画素単位でオーバーコートするクリアインク記録量を決定することで、大局的な正反射光色付きを無彩色に近づけることが可能である。ここで、正反射光色付きを大局的と局所的とに分類して表現したのは、正反射光色付きが観測のスケールによるからである。大局的な正反射光色付きとは、人が正反射光色付きを解像できる範囲以上で平均化された色付きである。また、局所的な正反射光色付きとは、人が正反射光色付きを解像できない範囲である数10ミクロンオーダーで平均化された色付きである。
また、本明細書では、記録剤であるインクをCyan、Magenta、Yellow、Black、Clearなど英語表記又はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、クリア等の片仮名表記で表す。また、色又はそのデータ若しくは色相を、C、M、Y、K、CL等の英大文字の1字又はそれと英小文字1字との組み合わせで表す。すなわち、Cはシアン色又はそのデータ若しくは色相を表し、Mはマゼンタ色又はそのデータ若しくは色相を表し、Yはイエロー色又はそのデータ若しくは色相を表し、Kはブラック色又はそのデータ若しくは色相を表す。他も同様に、CLは透明又はそのデータ若しくは色相を表す。
更に、本明細書において「画素」とは、階調表現できる最少単位のことであり、複数ビットの多値データの画像処理(後述するカラーマッチング、色分解、γ補正、ハーフトーン等の処理)の対象となる最少単位である。なお、ハーフトーン処理では、1つの画素は2×4のマスで構成されるパターンに対応し、この1画素内の各マスはエリアと定義する。この「エリア」はドットのオン・オフが定義される最少単位である。これに関連して、上記カラーマッチング処理、色分解処理、γ補正にいう「画像データ」は処理対象である画素の集合を表しており、各画素が本実施形態では8ビットの階調値を内容とするデータである。また、ハーフトーン処理にいう「画素データ」は処理対象である画素データそのものを表している。本実施形態のハーフトーン処理では、上記の8ビットの階調値を内容とする画素データが4ビットの階調値を内容とする画素データ(インデックスデータ)に変換される。
【0013】
本実施形態では、複数の異なるクリアインク記録量でオーバーコートした記録物の正反射光色付きデータを予め保持しておき、このデータに基づいて画素毎のクリアインク記録量を決定することで、正反射光色付きを制御する。ここで、正反射光色付きを制御するとは、画像領域全体で正反射光を無彩色に近づけることのみならず、所定の目標色に近づけることを意味する。更には、特定の画像領域毎に正反射光を所定の目標色に近づけることも意味する。
【0014】
<正反射光色付きを制御する処理の概要>
ここで、正反射光色付きを制御する処理の概要について説明する。
先ず、正反射光色付きの発生原因について説明する。図4は、正反射光色付きの発生原因を説明するための、試料の断面を模式的に示す概念図である。記録媒体401上に、カラーインク(有色色材)402及びクリアインク(無色色材)403が重なっている状態を示している。クリアインク403は、着色剤を含まず、実質的に無色透明なインクである。この試料に対して、試料の法線方向からある角度θ傾いた方向から入射光404が照射されると、クリアインク403の表面で光が正反射方向に反射し(反射光405)、クリアインク403とカラーインク402との界面でも光が正反射方向に反射する(反射光406)。反射光405と反射光406との間には、2nd・cosθの光路差がある。ここで、nはクリアインク403の屈折率、dはクリアインク403の厚さである。このような光路差が存在するため、式(1)より、反射光405と反射光406との位相差は2π・2nd・cosθ/λとなる。ここで、λは入射光404、反射光405及び反射光406に共通の波長である。
位相差=2π/λ×光路差・・・(1)
【0015】
そして、反射光405及び406の一方の位相が0である場合、その反射光(光線)の振幅はcos0、つまり1であり、もう一方の反射光(光線)の振幅はcos(4nd・cosθπ/λ)で表される。従って、反射光405及び406の振幅の平均値は、(1/2)・{1+cos(4nd・cosθπ/λ)}で表される。また、反射光の強度は、振幅の二乗に比例するため、(1/4)・{1+cos(4nd・cosθπ/λ)}2に比例することになる。ここでは、入射光404の振幅を1と仮定しているため、上述した反射光の強度を反射率と言い換えることも可能である。従って、正反射光の三刺激値XYZ(CIE XYZ表色系)と膜厚dとの間には、式(2)の関係が成立する。
【0016】
【数1】
【0017】
ここで、S(λ)は光源の分光分布を示し、xバー(λ)、yバー(λ)、zバー(λ)はCIE XYZ表色系の等色関数を示す。また、積分範囲は可視光の波長範囲、例えば380nm〜780nmの範囲であり、Kは比例定数である。
式(2)からわかる通り、クリアインク403の膜厚dによって正反射光は異なる色味を発する。ここまで、説明を簡単にするため、多重反射の項、カラーインク内の反射光、屈折率の波長分散から生じる波長選択的な反射に関しては割愛したが、これらを考慮しても、膜厚dによって正反射光は異なる色味を発する。
【0018】
次に、このような正反射光色付きを制御する処理の概要について説明する。
図5は、図2と同様に、シアンインクで記録媒体表面を100%被覆した画像に対して、異なるクリアインク記録量でオーバーコートした画像の正反射光色付きを、CIE L*a*b*表色系におけるa*b*平面にプロットしたグラフである。図4を参照しながら説明したように、異なるクリアインク記録量でオーバーコートした画像の正反射光が、a*b*平面上で図5のような軌跡を描く原因は、クリアインクの膜厚がクリアインクの記録量に依存して変化するからである。そこで、反対の色相になるクリアインク記録量の領域を局所的に並置させることによって、局所的な正反射光同士の加法混色が成立し、大局的な正反射光の色味が無彩色(つまり、図5において無彩色を示す□の点W)になるように制御することが可能となる。
この制御の内容について、図5中の点P(クリアインク記録量:20%)と点Wとを結ぶ直線上に点Q(クリアインク記録量:70%)がある場合を例にとって説明する。ここでは、線分WPの長さと、線分WQの長さとの比が3:1であると仮定する。この場合、正反射光色付きがPとなるクリアインク記録量が20%の領域と、正反射光色付きがQとなるクリアインク記録量が70%の領域とを、クリアインク面積率が1:3となるように並置させると、点P及び点Qの色味が相殺される。この結果、大局的な正反射光の色味が無彩色となる。図6に、クリアインク記録量:20%の領域とクリアインク記録量:70%の領域とを、これらの領域の面積率の比が1:3となるように並置させた試料の断面を模式的に示す。記録媒体601上に、カラーインク602が重なり、その上に記録量:20%のクリアインク603と記録量:70%のクリアインク604とが並置されている。クリアインク603の領域からの反射光605の色付きは図5中の点Pに該当し、クリアインク604の領域からの反射光606の色付きは図5中の点Qに該当する。また、クリアインク603の領域のカラーインク602の面積に対する面積率は25%であり、クリアインク604の領域のカラーインク602の面積に対する面積率は75%である。従って、上述したように、反射光605と反射光606との色味が互いに相殺されて大局的な正反射光の色味が無彩色となる。
【0019】
これまでの説明では、点P及び点Qの2点を用いて正反射光の色味を相殺させる例を述べたが、この2点の選択は上述した例に限定されるものではない。例えば、a*b*平面内で点Wを内包するような多角形を形成できれば、3点以上によってこの処理を実現することも可能である。例えば、図5中のクリアインク記録量:0%の点R、クリアインク記録量:30%の点S、及びクリアインク記録量:60%の点Tを採用してもよい。つまり、これら3点から、適切な面積率でそれぞれのクリアインク記録量の領域を並置することで、上述した処理の効果を得ることが可能である。なお、各領域の面積率は式(3)より一意に決定することができる。
【0020】
【数2】
【0021】
ここで、a及びbは、それぞれクリアインク記録量:0%の面積率、クリアインク記録量:30%の面積率である。また、なお、本実施形態では、後述のように、観察角度に応じた正反射光色付きの制御を行う。
【0022】
<画像処理装置の概要>
次に、上述のような処理を実行することが可能な画像処理装置について説明する。図7は、本実施形態に係る画像処理装置(プリンタ)の構成を表すブロック図である。
図7に示すように、本実施形態の画像処理装置は、記録装置としてのプリンタ及びホスト装置としてのパーソナルコンピュータ(PC)を有して構成されるものである。そして、プリンタ(記録装置)は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの色材として顔料を含む基本色インク4種と、クリアインクによって印刷を行うものであり、そのためにこれら5種のインクを吐出する記録ヘッドが用いられる。
【0023】
ホスト装置のオペレーティングシステムで動作するプログラムとしてアプリケーションやプリンタドライバがある。画像入力部7001は、このアプリケーションによってプリンタで印刷する画像データの作成、印刷指示の処理を実行する。この画像データ又はその編集等がなされる前のデータは種々の媒体を介してPCに取り込むことができる。本実施形態のPCは、まずデジタルカメラで撮像した例えばJPEG形式の画像データをCFカードによって取り込むことができる。また、スキャナで読み取った、例えばTIFF形式の画像データやCD−ROMに格納されている画像データをも取り込むことができる。更には、インターネットを介してウエブ上のデータを取り込むことができる。これらの取り込まれたデータは、PCのモニタに表示されてアプリケーションを介した編集、加工等がなされ、例えばsRGB規格の画像データ(入力画像の信号値)R、G、Bが作成される。そして、印刷の指示に応じてこの画像データがプリンタドライバに渡される。
観察条件入力部7002では、観察角度に応じた正反射光色付き制御に関する処理内容がユーザによって指定される。観察条件入力部7002のユーザインタフェース(UI)の例を図8に示す。図8に示す例は画像入力部7001も一つのUIに実装されている場合の例である。ユーザによって、観察角度に応じた正反射光色付き制御の有無が選択される。観察角度に応じた正反射光色付き制御を行わないことが選択された場合、クリアインクが記録されないか、又は、光沢ムラ等その他の画質を制御するために適切なクリアインク記録量が選択される。観察角度に応じた正反射光色付き制御を行うことが選択された場合、更に「複数角度」、「特定角度のみ」、「優先角度指定」からいずれか一つがユーザに選択される。「特定角度のみ」、「優先角度指定」が選択された場合は、所定の角度が選択されるか、又は、任意の角度がユーザによって入力される。なお、上記から選択された各条件における処理内容の詳細は後述するが、「複数角度」が選択されると、後述のクリアインク記録情報7011から、いずれの角度から観察しても正反射光色付きが目立たなくなるようなクリアインク記録量が選択される。「特定角度のみ」が選択されると、選択された角度から観察した際に正反射光色付きが最も目立たなくなるようなクリアインク記録量が選択される。「優先角度指定」が選択されると、選択された角度から観察した際に正反射色付きが目立たず、かつ、その他の角度から観察した際にも正反射光色付きが比較的目立たないようなクリアインク記録量が選択される。
本実施形態のプリンタドライバはその処理として、カラーマッチング処理部7003、カラーインクの階調データに変換する処理、及びクリアインクの階調データに変換する処理を有している。カラーインクの階調データに変換する処理として、カラー色分解処理部7004、γ補正処理部7006、及びカラーHT(ハーフトーン)処理部7007を有している。また、クリアインクの階調データに変換する処理として、解像度変換処理部7008、クリア色分解処理部7009、クリア配置設定部7010、クリアHT処理部7012、及び印刷データ作成部7013を有している。また、カラー色分解処理部7004の処理において参照されるカラー色分解LUT(ルックアップテーブル)7005、並びにクリア色分解処理部7009及びクリア配置設定部7010の処理において参照されるクリアインク記録情報7011を有している。カラー色分解LUT7005とクリアインク記録情報7011は個別でなくてもよく、同一のファイルに記録されていても構わない。また、本実施形態における説明は、プリンタドライバにおける処理を印刷データ作成部7013までとしているが、プリンタドライバにおける処理と記録装置における処理の境界は特に限定されるものではない。
【0024】
カラーマッチング処理部7003は画像入力部7001から取得した入力画像データに対して、色域(Gamut)のマッピングを行う。本実施形態のカラーマッチング処理部7003は、sRGB規格などの画像データR、G、Bによって再現される色域を、本プリントシステムのプリンタによって再現される色域内に写像する。具体的には、写像関係を内容とする3次元ルックアップテーブル(LUT)を用い、これに補間演算を併用して8ビットの画像データR、G、Bをプリンタの色域内のデータR、G、Bに変換するデータ変換を行う。カラーマッチング処理は、sRGB等のモニタで表現された色をプリンタで再現した場合に色味を一致させるための処理である。CIE L*a*b*等の色空間にてモニタのGamutからプリンタのGamutへの色空間圧縮を行う。色空間圧縮の手法としては、Perceptualとよばれる知覚的な一致を優先したカラーマッチング、又はColorimetricとよばれる測色的な一致を優先したカラーマッチングを用いることができる。また、Saturationとよばれる鮮やかさを優先したカラーマッチング等を用いてもよい。
カラー色分解処理部7004は、カラーマッチング処理部7003にて上記色域のマッピングがなされたデータR、G、Bに基づき、このデータが表す色を再現するインクの組み合わせに対応した色分解データ(インク値)C、M、Y、Kを求める処理を行う。本実施形態では、この処理はカラーマッチング処理と同様、色域のマッピングがなされたデータR、G、Bとの対応関係が定められたカラー色分解LUT7005に補間演算を併用して行う。出力は各色8ビットで、C、M、Y、Kの色材量に対応した値に使用される。カラー色分解LUT7005の例を図9に示す。図9に示すように、色域のマッピングがなされた8ビットのデータR、G、Bに対して、C、M、Y、Kの対応が定められている。
γ補正処理部7006は、カラー色分解処理部7004にて求められた色分解データの各色のデータごとにその階調値変換を行う。具体的には、本画像処理装置で用いるプリンタの各色インクの階調特性に応じた1次元LUTを用いることにより、上記色分解データがプリンタの階調特性に線形的に対応づけられるような変換を行う。
カラーHT処理部7007は、8ビットの色分解データC、M、Y、Kそれぞれについて、例えば一般的に良く知られた誤差拡散法を用いて4ビットのデータに変換する量子化を行う。この4ビットのデータは、記録装置におけるドット配置パターン化処理部7014による処理における配置パターンを示すためのインデックスとなるデータである。誤差拡散法では処理対象となる画素の累積加算後の画素データと予め設定した閾値との上下関係を比較し、出力階調値を決定する。閾値との差分を誤差として周辺画素に伝播する。累積誤差加算後の画素データとは処理済の画素から伝播された誤差が加算されたデータである。累積加算後のデータをIとし、出力階調値をOとした際の量子化の例を(4)〜(12)式に示す。
O=0 (I<16) ・・・(4)
O=32 (16≦I<48) ・・・(5)
O=64 (48≦I<80) ・・・(6)
O=96 (80≦I<112) ・・・(7)
O=128 (112≦I<144)・・・(8)
O=160 (144≦I<176)・・・(9)
O=192 (176≦I<208)・・・(10)
O=224 (208≦I<240)・・・(11)
O=255 (I≧240) ・・・(12)
ここで、説明の都合上、各出力階調値Oに対し以下のような名称を与える。すなわち、O=0をレベル0、O=32をレベル1、O=64をレベル2、O=96をレベル3、O=128をレベル4、O=160をレベル5、O=192をレベル6、O=224をレベル7、そしてO=225をレベル8とそれぞれ称することにする。
【0025】
以上、プリンタドライバにおいて、画像入力部7001で入力された画像データR、G、Bからカラーインクのインク色毎のデータに変換するための処理について説明した。次に、プリンタドライバにおいて、画像入力部7001で入力された画像データR、G、Bからクリアインクのデータに変換するための処理を説明する。
解像度変換処理部7008は、上記色域のマッピングがなされたデータR、G、Bに基づき、入力された画像の解像度を下げて第2の画像とする処理を行う。本実施形態では、600dpiの画像データが入力された場合に150dpiの画像データに変換する場合を例にとって説明を行う。この処理は、上述の「正反射光色付きを制御する処理」を実行する際に、クリアインク記録量を決定するために必要となる。ここで、解像度変換の方法としては、バイリニア法、バイキュービック法、ニアレストネイバー法等の一般的に知られた方法を用いることができる。図10に、解像度変換の例を示す。図10(a)は、600dpiの画像データを示している。図10(a)中の各画素における括弧内の数字は、R、G、Bの8ビットのデータである。図10(b)は、図10(a)の600dpiの画像データに対してバイリニア法を用いて150dpiの画像データに変換した例である。
【0026】
クリア色分解処理部7009は、上記色域のマッピングがなされたデータR、G、Bに基づき、解像度変換処理部7008で解像度変換された各領域(150dpiの1画素毎)に記録するクリアインクのインク値の組み合わせを求める処理を行う。本実施形態では、色域のマッピングがなされたデータR、G、Bとのインク値の対応関係が定められたクリアインク記録情報7011に補間演算を併用して行う。上述の「正反射光色付きを制御する処理の概要」で説明したように、各領域に対して異なる記録量のクリアインクを並置することで正反射光色付きを抑制させるため、各R、G、Bに対して2種類以上のクリアインクのインク値を対応させることが重要である。本実施形態では、説明を簡単にするために、クリアインクは2種類のインク値CL1、CL2の組み合わせによって処理する場合を例にして説明を行う。また、詳細は後述するが、クリアインク記録情報7011には、クリアインクのインク値の他に、データR、G、Bとインク値(クリアインク量)CL1、CL2の面積率の比(面積比率)、及び、パス数との対応が定められている。図11に、クリアインク記録情報7011の例を示す。
図11(a)は、観察条件入力部7002でユーザによって、「複数角度」が選択された場合、すなわち、いずれの角度から観察しても正反射光色付きが目立たなくなるような記録物を得るための処理が選択された場合のLUTの例を示す。図11(a)に示すLUTは、色域のマッピングがなされた8ビットのデータR、G、Bとクリアインク記録量、面積比率の対応関係が記載されたLUTである。1列目には、観察角度タグが記載されており、1列目のタグ情報から観察条件入力部7002でユーザに選択された条件と対応するLUTが選択される。2〜4列目には、色域のマッピングがなされた8ビットのデータR、G、Bが記載されている。5〜6列目には、クリアインクの記録量を示すインク値が8ビットで記載されている。なお、後述するクリアHT処理部7012にて誤差拡散法を適用した際に誤差が発生しないように、CL1及びCL2は出力階調値(0、32、64、96、128、160、192、224、255)と同じ値になるように設定されている。
図11(b)は、観察条件入力部7002でユーザによって、「特定角度のみ」かつ「45度」が選択された場合、すなわち、45度から観察した際に正反射光色付きが最も目立たなくなるような記録物を得るための処理が選択された場合のLUTの例を示す。図11(a)の場合と同様、1列目に観察角度タグが記載されており、1列目のタグ情報から観察条件入力部7002でユーザに選択された条件と対応するLUTが選択される。同様に、「20度」の場合、「60度」の場合も予め作成されたLUTがクリアインク記録情報7011に格納されている。ここで、「特定角度のみ」について、予め作成しておくLUTの例として「20度」、「45度」、「60度」の例を示した。本発明の適用範囲は勿論この限りではなく、その他の角度で最も観察した際に正反射光色付きが最も目立たなくなるような記録物を得るためのLUTであってもよい。さらに、「特定角度のみ」には角度入力用のテキストボックスを用意しておき、予め用意してある角度のLUTから一般的な補間方法を用いて、入力された角度用のクリアインクのインク値、面積比率を算出してもよい。更に、「優先角度指定」が選択された場合も、図11(b)と同様に予め作成したLUTを選択する。そうすることで、選択された角度から観察した際に正反射光色付きが目立たず、かつ、その他の角度から観察した際にも正反射光色付きが比較的目立たないような記録物を得ることが可能となる。
【0027】
クリア配置設定部7010は、解像度変換処理部7008で解像度変換された画像の各画素内に、クリア色分解処理部7009で決定されたインク値CL1、CL2を、クリアインク記録情報7011を参照して配置する処理を実行する。ここで、この処理について、図10(b)に示した150dpiの1画素内を4×4マスに分割して、クリアインク量A、クリアインク量Bを配置する場合を例にとって説明する。なお、クリアインク量Aのインク値CL1は32、面積比率S_CL1は40%であるとし、クリアインク量Bのインク値CL2は192、面積比率S_CL2は60%であるとする。また、図12に、予めクリアインクの配置を決定する順序を定めた格子パターンを示す。本実施形態では1画素内を4×4マスに分割してクリアインクを記録する場合を例に説明を行うため、図12に示すように、同一サイズの格子パターンが必要となる。図13に、図12の順序でクリアインク量A、クリアインク量Bが配置された例を示す。図13中の斜線で示された「32」と書かれたマスにクリアインク量Aが配置され、網点で示された「192」と書かれたマスにクリアインク量Bが配置される。クリアインク量Aの面積比率S_CL1が40%のため、16マス中6マス分配置し、クリアインク量Bは残りの10マス分を配置する。すなわち、クリアインク量Aを図10の「0」〜「5」のマスに配置し、クリアインク量Bを図10の「6」〜「15」のマスに配置することになる。上記手順を一般化すると(13)式のようになる。
【0028】
【数3】
【0029】
ここで、NAはクリアインク量Aを記録するマスの数を示し、NBはクリアインク量Bを記録するマスの数を示し、Nallは格子パターンのマスの総数を示し、S_CL1はクリアインク量Aの面積比率を示す。なお、NAが整数ではない場合には、切り捨て又は四捨五入等の処理を行えばよい。また、図12には、ベイヤー配列の例を示したが、順序を決定することができればよく、渦巻型、網点型など一般的に知られたディザマトリックス等を使用することも可能である。クリア配置設定部7010は、クリアインクの8ビットの色分解データ(インク値)CL1、CL2に、クリアインクパス数の情報2ビットを付加して得られる10ビットのデータをクリアHT処理部7012に供給する。
【0030】
クリアHT処理部7012は、クリア配置設定部7010で設定されたクリアインクの8ビットの色分解データ(インク値)CL1、CL2それぞれについて4ビットのデータに変換する量子化を行う。この4ビットのデータは、記録装置におけるドット配置パターン化処理部7014における配置パターンを示すためのインデックスとなるデータである。クリアHT処理部7012は、カラーHT処理部7007と同様に、処理対象となる画素の画素データと予め設定した閾値との上下関係を比較し、出力階調値を決定する。上述のように、インク値CL1及びCL2は出力階調値(0、32、64、96、128、160、192、224、255)と同じ値になるように設定されている。このため、入力画素データをI、出力階調値をOとした際に、O=Iが成立する。そして、カラーHT処理部7007と同様に、O=0がレベル0、O=32がレベル1、O=64がレベル2、O=96がレベル3、O=128がレベル4、O=160がレベル5、O=192がレベル6、O=224がレベル7、そしてO=225がレベル8となる。クリアHT処理部7012は、このようにして量子化された4ビットのデータに、クリアインクパス数の情報2ビットを付加して得られる6ビットのデータを印刷データ作成部7013に供給する。
【0031】
そして、印刷データ作成部7013が、上記4ビットのインデックスデータにクリアインクのパス数2ビットを加えて得られる6ビットデータを内容とする印刷イメージデータに印刷制御情報を加えた印刷データを作成する。なお、印刷制御情報には、記録の対象となる普通紙、光沢紙、コート紙等の用紙の種類、及び、高速印刷、高品位印刷等の品位に関する情報が含まれている。なお、これらの印刷制御情報は、例えばホスト装置(PC)にてユーザが指定した内容に基づいて形成されるものである。更に、印刷イメージデータ(印刷イメージ情報)には、前述のハーフトーン処理(カラーHT処理部7007、クリアHT処理部7012における量子化処理)によって生成された画像データが記述されているものとする。以上のように、ハーフトーン処理が施され、印刷データの生成がなされた印刷データは、印刷データ作成部7013から記録装置本体のドット配置パターン化処理部7014へと供給される。
【0032】
なお、上記ハーフトーン処理及び印刷データの生成は、記録装置本体ではなくホスト装置にインストールされたプリンタドライバによって処理されることを前提としているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。ハーフトーン処理自体が記録装置内部で処理される構成であっても本発明の効果は同等に得られるものである。また、上述したアプリケーション及びプリンタドライバの処理は、それらのプログラムに従ってCPUにより行われる。その際、プログラムはROM又はハードディスクから読み出されて用いられ、また、その処理実行に際してRAMがワークエリアとして用いられる。
【0033】
記録装置では、先ず、データ処理に関してドット配置パターン化処理部7014及びマスクデータ変換処理部7015が動作する。
ドット配置パターン化処理部7014は、実際の印刷画像に対応する画素毎に、印刷イメージデータである4ビットのインデックスデータ(階調値情報)に対応したドット配置パターンに従ってドット配置を行う。上述したハーフトーン処理では、256値の多値濃度情報(8ビットデータ)を9値の階調値情報(4ビットデータ)までにレベル数を下げている。しかし、実際に本実施形態のプリンタ(インクジェット記録装置)が記録できる情報は、インクを記録するか否かの2値情報である。そこで、ドット配置パターン化処理部7014は、0〜8の多値レベルをドットの有無を決定する2値レベルまで低減する。具体的には、このドット配置パターン化処理部7014は、カラーHT処理部7007、クリアHT処理部7012からの出力値である4ビットデータで表現される各画素に、その画素の階調値(レベル0〜8)に対応したドット配置パターンを割当てる。この結果、1画素内の複数のエリアの各々にドットのオン・オフが定義され、1画素内の各エリアに「1」又は「0」の1ビットの吐出データが配置される。図14は、本実施形態のドット配置パターン化処理部7014が変換する、入力レベル0〜8に対する出力パターンを示している。図14の左側に示した各レベル値は、カラーHT処理部7007、クリアHT処理部7012からの出力値であるレベル0〜レベル8に相当する。また、図14の右側に配列した縦2エリア×横4エリアで構成される各マトリクスの領域は、カラーHT処理部7007、クリアHT処理部7012から出力された1画素の領域に対応する。また、1画素内の各エリアは、ドットのオン・オフが定義される最小単位に相当するものである。図14において、黒丸印を記入したエリアがドットの記録を行うエリアを示しており、レベル数が上がるに従って、記録するドット数も1つずつ増加している。本実施形態においては、最終的にこのような形でオリジナル画像の濃度情報が反映されていることになる。(4n)〜(4n+3)は、nに1以上の整数を代入することにより、入力画像の左端からの横方向の画素位置を示している。その下に示した各パターンは、同一の入力レベルにおいても画素位置に応じて互いに異なる複数のパターンが用意されていることを示している。すなわち、同一のレベルが入力された場合にも、記録媒体上では(4n)〜(4n+3)に示した4種類のドット配置パターンが巡回されて割当てられる構成となっている。図14においては、縦方向を記録ヘッドの吐出口が配列する方向、横方向を記録ヘッドの走査方向としている。よって、上述のように同一レベルに対しても様々なドット配列で記録できる構成にしておくことは、ドット配置パターンの上段に位置するノズルと下段に位置するノズルとの吐出回数の分散、記録装置特有の様々なノイズの分散という効果が得られる。以上説明したドット配列パターン化処理を終了した段階で、記録媒体に対するドットの配列パターンが全て決定される。
このようにして得られた1ビットの吐出データに対して、マスクデータ変換処理部7015によってマスク処理がなされ、記録ヘッド7017による所定幅の走査領域の記録を複数回の走査で完成するための各走査の吐出データが生成される。なお、マスクデータ変換処理部7015には、この1ビットの吐出データが供給される。
【0034】
ここで、マスク処理について説明する前に、マルチパス記録方式について説明する。インクジェット記録方式における記録ヘッドには、その記録形式において、ライン型のものとシリアル型のものとがある。ライン型の記録方式は、印刷領域幅分の記録ヘッドを用いて、記録媒体のみを副走査方向に移動させることにより記録する方式である。また、シリアル型の記録方式は、ライン型に比べ短い幅の記録ヘッドからインクを吐出させながら、記録主走査と副走査とを交互に繰り返すことにより記録媒体上に順次画像を形成していく方式である。記録主走査とは記録ヘッドを搭載したキャリッジを記録媒体に対して移動走査させることであり、副走査とは記録主走査と直行する方向に所定量ずつ搬送することである。この場合、記録ヘッドに構成されている複数のインク吐出口(以下、「記録素子」と称する)の配列密度及び数によって、1回の記録主走査で記録される領域の幅が決まる。よって、その幅に対する記録主走査とその幅相当の副走査を繰り返すことにより記録を進めれば、最短時間で画像を形成することができる。しかし、1回の記録走査で記録を行うと、インクを吐出させるノズルの製造誤差、記録ヘッドの記録主走査による気流等から、インクの記録位置にばらつきが発生し、画像品位を劣化させることがある。また、各記録主走査間の境界に濃度や色の差異、いわゆる「つなぎすじ」が発生することもある。そこで、より画像品位を高めるために、マルチパス記録方式を採用することが多い。
マルチパス方式では1回の記録主走査で記録可能な画像領域に対し、N回(N≧2)の記録走査を実行する。各記録主走査の間に行われる副走査の量は、記録ヘッドに配列する複数の記録素子をN個のブロックに分割した際の、各ブロックに含まれる記録素子の記録幅相当となる。すなわち、同一の画像領域はN個のブロックに含まれる記録素子によって、N回の記録主走査にて画像が形成される。
N個のブロックに分割する際、各ブロックに含まれる記録素子の数は、同数であることが一般的である。しかし、これは、特に限定されるものではない。例えば、記録素子の総数が、Nで割り切れない場合には、(N−1)番目までのブロックは、任意のM個で構成し、最後のN番目については、割り切れなかった残りの個数を用いてもよい。また、任意のM個、L個を順に繰り返すことにより、往方向(奇数走査)での記録幅と復方向(偶数走査)での記録幅を一定にする等の方法を採ってもよい。更に、例えば、10個の記録素子を有する記録ヘッドにおいて、2個、6個、2個から構成される3つの記録素子ブロックに分割し、両端に位置する2つの記録素子で記録される領域だけが2回のマルチパス方式による記録としてもよい。この場合、中央に位置する6個の記録素子によって記録される領域は、1回の記録主走査で画像が形成されることになり、マルチパス数としては、例えばN=1.5回と表現することも可能である。
このように、マルチパス方式では、異なるブロックによる複数回の記録主走査によって、初めて画像が完成されるので、1回の記録主走査では記録可能な画像データを全て記録しない。ここで、画像データを各ブロックに振り分けるために用いられるのが、いわゆるマスクである。このマスクは、画像信号とは独立して決定されることが多く、例えばマスクと各記録素子における画像信号とのアンド回路を設置しておくことにより、各記録走査で与えられた画像信号を記録するか否かを決定する構成を形成することができる。
この際、個々の画像データから見れば、1回の記録主走査で記録される確率がこのマスクによって決定されることになる。すなわち、記録されるべき画像データが、マスクによってある程度間引かれ、その間引く確率を本明細書では以下「間引き率」と称する。この「間引き率」は、各記録主走査において記録される確率(以下、「記録率」と称する)とは逆の事項を意味することになる。
【0035】
以上の構成に従ったマルチパス方式の一般的な具体例を1つ挙げる。100個の記録素子を用いて4回のマルチパス記録を行う場合、記録素子を25個ずつの4つのブロックに分割する。各記録主走査間に行われる副走査量は、25個の記録素子に相当する。また、各記録主走査で各ブロックに対応するマスクは、間引き率が75%で記録率が25%となる。このマスクパターンは4つのブロックで互いに補完し合う関係にあり、4つのマスクパターンをそれぞれ重ね合わせることにより、100%の記録が行われるように構成されている。なお、ここでは一般例として、記録素子の総数100がマルチパス数N=4によって等分されるような例で説明したが、マルチパス方式は無論これに限定されるものではない。先にも述べたように、マルチパス数Nは記録素子の総数に対し、割り切れる値でなくてもよい。要するに、同一の画像領域に対し、異なる複数のブロックによって記録主走査が行われる構成であれば、マルチパス方式は成立する。マルチパス方式を採用する理由は画像品位を良化させることにあると先に述べたが、この方式によると、各インク色に対するマスクパターンによって、インク記録順を決定することも可能になる。
図15は、マルチパス記録方法を説明するために、記録ヘッド及び記録パターンを模式的に示したものである。インクジェット記録装置では一般的に数100個のノズルが設けられているが、ここでは、説明を簡単なものとするために、記録ヘッド1501に、16個のノズルが設けられているものとする。ノズルは、図15に示すように、第1〜第4の4つのノズル群に分割され、各ノズル群には4つずつのノズルが含まれている。また、マスクパターン1502には、各ノズルが記録を行うエリアを黒塗りで示している。各ノズル群が記録するパターンは互いに補完の関係にあり、これらを重ね合わせると4×4のエリアに対応した領域の記録が完成される構成となっている。また、各パターン1503〜1506は、記録走査を重ねていくことによって画像が完成されていく様子を示している。各記録走査が終了するたびに、記録媒体は図15の矢印の方向にノズル群の幅分ずつ搬送される。よって、記録媒体の同一領域(各ノズル群の幅に対応する領域)は4回の記録走査によって初めて画像が完成される。以上のように、記録媒体の各同一領域が複数回の走査で複数のノズル群によって形成されることには、ノズル特有のばらつきや記録媒体の搬送精度のばらつき等を低減させる効果がある。
【0036】
図16は、カラーインクのマスクパターンとクリアインクのマスクパターンの例を模式的に示した図である。ここでは、記録ヘッド1601が24個のノズルを有し、6回の記録走査で画像の記録が完了する場合を例にとって説明する。図16に示すように、カラーインクのマスクパターン1602、クリアインクのマスクパターン1603が設定されている。カラーインクは前半の4回の記録走査で記録を完了する。クリアインクはカラーインクの記録が完了した後、後半の2回の記録走査で記録を完了する。なお、カラーインクを前半4回の記録走査、クリアインクを後半2回の記録走査で記録する場合を例に説明したが、本発明の適用範囲は勿論これに限定されるものではない。カラーインク以降にクリアインクの記録を行うことで、クリアインクがオーバーコートされる形態であれば、本発明の効果を得られる。
走査ごとの吐出データC、M、Y、K、CLは、適切なタイミングでヘッド駆動回路7016に送られ、これにより、記録ヘッド7017が駆動されて吐出データに従ってそれぞれのインクが吐出される。なお、記録装置における上述のドット配置パターン化処理部7014及びマスクデータ変換処理部7015の処理は、それらに専用のハードウエア回路を用い記録装置の制御部を構成するCPUの制御の下に実行される。なお、これらの処理がプログラムに従ってCPUにより行われてもよく、また、上記処理がPCにおける例えばプリンタドライバによって実行されるものでもよく、本発明を適用する上でこれら処理の形態が問われないことは以下の説明からも明らかである。
【0037】
このように、上述した例では、8ビットの画像が入力され、カラーHT処理部7007、クリアHT処理部7012で4ビットに量子化され、ドット配置パターン化処理部7014で1ビットに変換されるが、各処理部のビット数はこれらに限定されるものではない。すなわち、入力された多階調の画像データから、インク吐出のオン・オフの制御が可能な2階調(1ビット)への変換ができれば、ビット数が異なっても本発明の効果を限定するものではない。
【0038】
<クリアインク記録情報生成処理>
次に、クリアインク記録情報7011に格納されている、R、G、Bデータとクリアインクのインク値、面積比率との対応関係を記載したLUTを生成する処理について、図面を用いて詳細に説明する。
先ず、カラーマッチング処理部7003で色域がマッピングされたR、G、Bデータに対して、カラー色分解LUT7005に格納されている色分解データを利用して記録した有色色材上にクリアインク記録量を異ならせてオーバーコートした複数種類のパッチ画像を印刷する。オーバーコートするクリアインク記録量は、例えば0%から100%まで10%刻みとする。このパッチ画像の正反射光色付きを20度、45度、60度の複数の反射角度で測定しておき予め保持しているものとして、以下に処理の流れを説明する。なお、あるR、G、Bデータに対応する正反射光色付きの測定結果は図3の例に示す通りであるとする。
図17は、観察条件に応じて、R、G、Bデータとクリアインクのインク値、面積比率との対応関係を記載したLUTを生成する処理の流れを示すフローチャートである。なお、この処理をコンピュータが自動的に行ってもよく、人が実行してもよい。従って、以下の説明では、特に動作主体を省略する。
先ず、ステップS1701において、記録物の観察条件及び正反射光色付きのターゲット色(目標色)を設定する。図8のUIの例に示す通り、観察条件は「複数角度」、「特定角度のみ」、「優先角度指定」等である。図8に図示しないが、UIにはターゲット色を設定するためのUIを備えておくことが望ましい。なお、基本的に正反射光色付きは無彩色であることが望まれる場合が多いため、初期設定は無彩色とする。次いで、ステップS1702において、角度の初期値を設定する。予め正反射光色付きデータが測定された角度のいずれか(例えば20度など)が設定される。その後、ステップS1703において、第一のクリアインク量の初期値(例えば0%)を設定する。ここで、上述した色分解データCL1、CL2を生成するためのクリアインク量を第一のクリアインク量、第二のクリアインク量とよぶこととする。続いて、ステップS1704において、第二のクリアインク量の初期値(例えば10%)を設定する。クリアインク記録量に対しては全ての組み合わせを探索できればよいため、第二のクリアインク量は、第一のクリアインク量に対して次に多い量に設定すればよい。
次いで、ステップS1705において、第一のクリアインク量の正反射光色付きと第二のクリアインク量の正反射光色付きが反対の色相になっているかを判定する。ここで、色相が反対になっているかどうかの判定は、xy色度座標上で白色点等のターゲット色を中心に、角度差Δθが180±δ度の範囲に入っているかどうかで判定する。このδは予め所定の値に設定しておく。反対の色相になっていればステップS1706に進み、反対の色相でなければ、ステップS1709で第二のクリアインク量を全て探索済みかどうか判定する。そして、全て探索済みであればステップS1708に進み、探索済みでなければステップS1701で第二のクリアインク量を次に多い量に設定して処理を繰り返す。
ステップS1706では、第一のクリアインク量の正反射光色付きとターゲット色との色度の差ΔE1、第二のクリアインク量の正反射光色付きとターゲット色との色度の差ΔE2を計算する。次いで、ステップS1707において、ステップS1706で計算された2つの色度の差から面積率を求める。第一のクリアインク量の面積率は{ΔE1/(ΔE1+ΔE2)×100}%となり、第二のクリアインク量の面積率は{ΔE1/(ΔE1+ΔE2)×100}%となる。
ステップS1708では、第一のクリアインク量を全て探索済みかどうか判定する。全て探索済みであればステップS1711に進み、探索済みでなければステップS1712で第一のクリアインク量を次に多い量に設定して処理を繰り返す。
ステップS1711では、全ての角度を探索済みか判定する。全ての角度が探索済みであれば、ステップS1713に進み、探索済みでなければステップS1714で次の角度に設定して処理を繰り返す。
ここまでの処理で、予め正反射光色付きの測定された全ての角度において、正反射光色付きが反対色相となる第一のクリアインク量と第二のクリアインク量の全組み合わせが揃ったことになる。
【0039】
ステップS1713では、ターゲット色からの色度ベクトルEを計算する。色度ベクトルEは(14)式で表される。
【0040】
【数4】
【0041】
ここで、第一のクリアインク量の正反射光色付きを(x1,y1)、第二のクリアインク量の正反射光色付きを(x2,y2)とxy色度で表した。この色度ベクトルEは、ステップS1705で反対色相となる角度全てについて算出する。すなわち、所定の角度で反対色相となっているが異なる角度では反対色相とならない場合も含めて色度ベクトルEを算出する。
図18に、図3の正反射光色付きデータから上記フローで算出した色度ベクトルEをグラフに示す。Aθ、Bθ、Cθ、Dθの記号は異なる第一のクリアインク量、第二のクリアインク量、それぞれの面積率を示しており、添え字θは角度を示している。(14)式及び(15)式でターゲット色Wを原点にシフトしているため、Aθ、Bθ、Cθ、Dθは色度ベクトルを示しており、それぞれ次のように表記することができる。
【0042】
【数5】
【0043】
また、そのスカラー量は、それぞれ次のように表記することができる。
【0044】
【数6】
【0045】
そして、ステップS1713の次には、ステップS1715において、これらを用いて、ステップS1701で設定された観察角度に応じて、第一のクリアインク量、第二のクリアインク量、それぞれの面積率を決定する。これらを決定するために(15)式〜(18)式を用いる。
【0046】
【数7】
【0047】
PA、PB、PC、PDは観察角度によってクリアインク量の組み合わせを決定するためのスコアであり、α、β、γは重み係数である。
上記(15)式〜(18)式を用いて、PA、PB、PC、PDから最も小さくなるものを選択することで、画素毎(画像データ毎)に、第一のクリアインク量、第二のクリアインク量、それぞれの面積率が決定される。これを全てのR、G、Bに対して実行することでクリアインク記録情報7011に格納するLUTが生成される。
【0048】
次に、図8の「複数角度」が選択された場合に適用されるLUTの生成方法について説明する。いずれの角度から観察しても正反射光色付きの目立たないような記録物を得るため、α=β=γ=1(同じ重みであれば1でなくても構わない。)とする。「特定角度のみ」かつ「20度」が選択された場合、20度から観察した場合に正反射光色付きが最も目立たなければよいため、α=1、β=γ=0とする。「優先角度指定」かつ「20度」が選択された場合、20度から観察した場合に正反射光色付きが目立たず、かつ、その他の角度も考慮するため、例えばα=1、β=γ=0.5とする。
以上説明したように、重み係数を所定の数値に設定することで、観察角度に応じて、又は、観察角度によらずに、正反射光色付きの目立たない記録物を得るためのクリアインク記録情報を生成することができる。
【0049】
このように、本実施形態によれば、正反射光色付きを制御することができる。すなわち、画像領域全体で正反射光を無彩色に近づけることができ、所定の目標色に近づけることができる。更に、特定の画像領域毎に正反射光を所定の目標色に近づけることもできる。そして、複数の角度から観察した際に正反射光の色味の差を低減させることができ、指定した角度から観察した際の正反射光の色味を、無彩色を含む所定の目標色に近づけることができる。
【0050】
なお、本発明の各工程は、ネットワーク又は各種記憶媒体を介して取得したソフトウェア(プログラム)をパーソナルコンピュータ等の処理装置(CPU、プロセッサ)にて実行することでも実現できる。
【符号の説明】
【0051】
7002:観察条件入力部 7008:解像度変換処理部 7009:クリア色分解処理部 7010クリア配置設定部 7011:クリアインク記録情報 7012:クリアHT処理部 7014:ドット配置パターン化処理部 7015:マスクデータ変換処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置等の画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
文字や画像等の情報を用紙やフィルム等シート状の記録媒体に記録を行う記録装置には様々な方式のものがある。その中で、記録媒体に記録剤(色材)を付着することで記録媒体上にテキストや画像を形成する方式が実用化されている。このような方式の代表例として、複数のインクの吐出口を備えた記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置が知られている。
近年、インクジェット記録装置で写真光沢紙に画像を記録する写真印刷が普及しており、この写真印刷に用いられるインクとして、水に溶解しやすい染料を色材として用いた染料インクが広く適用されてきた。染料インクは溶媒中に溶解した色材が記録媒体の繊維質の内部に浸透しやすい。従って、画像の記録後も記録媒体の表面形状が維持されやすいため、記録画像の光沢は記録媒体自体の光沢が維持される。つまり、光沢に優れた記録媒体に染料インクで記録を行えば、光沢に優れた記録画像を得ることが可能である。従って、染料インクを用いたインクジェット記録装置では、記録媒体自体の光沢を向上させることにより、画像の光沢付与の実現が可能であった。
一方、染料インクで発生する耐光性や耐水性の問題を解決するために、近年では、色材に顔料を用いた顔料インクの利用が増加している。顔料インクは、一般に色材粒子のサイズが染料インクと比べて大きいため、耐候性の高い印刷物を得られることが知られている。
【0003】
しかしながら、耐光性、耐水性の面で優れる一方、顔料インクを用いて形成される画像では、正反射光が色付くという画像品質上の課題が発生する。正反射光は試料面へ移り込んだ照明の像として画像観察者に認識される。この正反射光(及び、正反射近傍に拡散する光)に色付き(以下、正反射光色付きということがある)が発生すると、言い換えれば、印刷物に映り込んだ照明の像の色味が照明本来と異なる色味に観察されると、画像を観察する上で妨害要素となる。特に、写真印刷においては好ましくない画像として認識されやすい。正反射光が色付く原因としては、ブロンズ現象、薄膜干渉が一般的によく知られている。ブロンズ現象とは、印刷物の表面に露出している材料の特性により波長分散のある反射をすることで正反射光に色付きが発生する現象である。ブロンズ現象が発生すると、正反射光がインク固有の色付きになりやすいことが知られており、特にシアンインクでマゼンタに色付く。薄膜干渉とは、光の波長オーダーで形成されたインク薄膜において、表面からの反射光と異なる界面の反射光とに位相差が発生し、波長毎に光の強め合いや弱め合いが起こることで正反射光に波長分散を生じる。
ブロンズ現象や薄膜干渉は、印刷物表面の材質に依存しているとともに、構造によっても発生度合は異なる。この構造とは、例えば記録媒体表面を占めるインクの被覆率である。つまり、色毎あるいは階調毎に表面が異なる構造や材質で構成される印刷物は、色毎あるいは階調毎に正反射色の色味が異なる。このような印刷物では、複数の色によって構成される画像領域の正反射色が、画像の位置によって異なった色味に観察されるため、画像観察者に違和感を与えてしまう。
【0004】
上述した課題を解決する方法として、記録領域全域に着色材を含有しない無色透明なクリアインクをオーバーコートする技術が開示されている(特許文献1)。また、正反射光色付きを評価する技術が開示されている(特許文献2)。
ここで、特許文献2に記載された正反射光色付きを評価する技術について、図1を用いて以下に簡単に概要を説明する。光源102によって所定の角度θから測定試料101を照射し、測定試料101からの正反射光が受光器103によって検出される。すなわち、光源102及び受光器103を含む同一面内で、光源102及び受光器103は測定試料101の法線に対して反対側に角度θずつ傾いて配置されている。この試料の法線に対する正反射方向を示す反射角度θを本明細書では正反射角とよぶ。受光器103では、CIE XYZ表色系における三刺激値XxYxZxが検出される。予めブロンズの発生しない試料(例えば、屈折率の波長分散が小さい黒色研磨硝子板)の三刺激値XsYsZsを保持しておき、XxYxZxとXsYsZsからCIE L*a*b*表色系のa*b*をプロットする。ここで、XxYxZxは分光反射率が一定の仮想的な基準面としてもよい。上述したa*、b*から求めた彩度C*が正反射光色付きの度合を示す。C*が小さいほど正反射光色付きが少なく、正反射光色付きが無い試料ではC*が0になる。すなわち、a*b*平面上で原点に位置する。特許文献2には、a*b*平面で説明されているが、正反射光の色情報を表す情報であればよく、例えば、CIE xyY表色系におけるxy色度座標上でも正反射光色付きを表現可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−132350号公報
【特許文献2】特開2006−177797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1には、色再現に影響しないクリアインクを記録領域にオーバーコートする方法が開示されているが、この方法ではブロンズ現象を抑制できない場合がある。クリアインクをオーバーコートしてもブロンズ現象を抑制できない例を図2に示す。図2は、シアンインクで記録媒体表面を100%被覆した記録物に対して、異なるクリアインク記録量でオーバーコートした記録物の正反射光色付きを、CIE xyY表色系におけるxy色度座標にプロットしたグラフである。図2中の黒丸(●)は、シアンインクで記録媒体表面を100%被覆した記録物の上にクリアインク記録量を0%から100%まで10%ずつ増やして記録した記録物の正反射光色付きを示している。また、図2中の白抜きの四角(□)は、無彩色を示している。クリアインクが記録されていない(記録量0%)点は、シアンインクで形成された記録物自体のブロンズ現象による正反射光色付きである。図2を参照すると、いずれのクリアインク記録量でオーバーコートしても、xy色度座標上で無彩色にならないことがわかる。この原因は、クリアインク層の上層で反射する光と下層で反射する光との位相差から生じる薄膜干渉に起因していると考えられる。すなわち、クリアインクのオーバーコートでは、正反射光を抑制できない場合がある。図2には、クリアインクの記録量増加に伴い、正反射光色付きがxy色度座標上で無彩色の点を囲むようにして変化する例を示した。
【0007】
なお、クリアインクの記録量増加に対する正反射光色付きの挙動(色度の軌跡や色相変化量)は、記録媒体上に記録されているカラーインク(有色色材)の種類によって異なることが知られている。更に、記録物を観察する角度によっても正反射光色付きの挙動が異なる。図3を用いて、観察角度に対する正反射光色付きの挙動を説明する。図3は図2と同様に、シアンインクで記録媒体表面を100%被覆した記録物に対して、異なるクリアインク記録量でオーバーコートした記録物の正反射光色付きを、xy色度座標にプロットしたグラフである。図3中の線分(実線、破線、一点鎖線)でつないだ各系列は、各観察角度(図1における角度θ)を示している。図3中の黒丸(●)と実線で示した系列は、シアンインクで記録媒体表面を100%被覆した記録物の上にクリアインク記録量を0%から100%まで10%ずつ増やして記録した記録物を45度正反射で測定した正反射光色付きを示している。図3中の黒塗りの四角(■)と一点鎖線で示した系列は、上記試料を20度正反射で測定した正反射光色付きを示している。図3中の黒塗りの三角(▲)と点線で示した系列は、上記試料を60度正反射で測定した正反射光色付きを示している。図3に示した通り、正反射角によって正反射光色付きは異なる軌跡を描く。これは、同一の試料であっても、観察する角度によって正反射光の色が異なった色味を帯びて観察されることを示している。
【0008】
本発明は、大局的な正反射光色付きを抑制することができる画像処理装置及び画像処理方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像処理装置は、記録媒体上において無色色材を有色色材上に記録して画像を形成するための画像処理装置であって、前記有色色材上に記録される無色色材の量を異ならせて形成される複数種類の画像における反射角度と反射光の色との関係を入力する入力手段と、入力画像データによって表される画像を構成する各領域の画像データを取得する取得手段と、前記入力画像データによって表される画像が観察される観察角度を前記反射角度として、前記入力手段により入力された関係から当該観察角度における前記画像データ毎の前記無色色材の量と前記反射光の色との関係を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された関係に基づいて、前記画像データ毎の前記無色色材を記録する際の条件を決定する決定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大局的な正反射光色付きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】正反射色付きの測定方法を示す図である。
【図2】正反射光色付きをプロットしたグラフである。
【図3】正反射光色付きの角度依存性をxy色度座標上に示したグラフである。
【図4】試料の断面を模式的に示す図である。
【図5】正反射光色付きをプロットしたグラフである。
【図6】クリアインク記録量が相違する2領域を並置させた試料を示す図である。
【図7】画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図8】観察条件を入力するユーザインタフェースを示す図である。
【図9】カラー色分解LUT6004の例を示す図である。
【図10】解像度変換の例を示す図である。
【図11】クリアインク記録情報の例を示す図である。
【図12】格子パターンを示す図である。
【図13】1画素内を4×4マスに分割して配置した例を示す図である。
【図14】入力レベル0〜8に対する出力パターンを示す図である。
【図15】記録ヘッド及び記録パターンを示す図である。
【図16】マスクパターンの例を示す図である。
【図17】クリアインク記録情報を生成する処理を示すフローチャートである。
【図18】記録物のターゲットからの色度ベクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、以下に説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
本発明の実施形態に係る画像処理装置は、画素毎に異なる量のクリアインクを記録して局所的な正反射光色付きを制御し、大局的な正反射光色付きを抑制する。例えば、所定の画素にクリアインクを所定の量オーバーコート(記録媒体上で最上層に位置するように記録)した際の正反射光が緑色に色付くとする。この画素の周辺画素にクリアインクを異なる所定の量オーバーコートした際の正反射光が赤色に色付けば、補色の関係にある緑色と赤色が相殺され、局所的な色付きが発生しても大局的な色付きは無彩色になる。すなわち、局所的な正反射光色付きの色味が互いに相殺するように画素単位でオーバーコートするクリアインク記録量を決定することで、大局的な正反射光色付きを無彩色に近づけることが可能である。ここで、正反射光色付きを大局的と局所的とに分類して表現したのは、正反射光色付きが観測のスケールによるからである。大局的な正反射光色付きとは、人が正反射光色付きを解像できる範囲以上で平均化された色付きである。また、局所的な正反射光色付きとは、人が正反射光色付きを解像できない範囲である数10ミクロンオーダーで平均化された色付きである。
また、本明細書では、記録剤であるインクをCyan、Magenta、Yellow、Black、Clearなど英語表記又はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、クリア等の片仮名表記で表す。また、色又はそのデータ若しくは色相を、C、M、Y、K、CL等の英大文字の1字又はそれと英小文字1字との組み合わせで表す。すなわち、Cはシアン色又はそのデータ若しくは色相を表し、Mはマゼンタ色又はそのデータ若しくは色相を表し、Yはイエロー色又はそのデータ若しくは色相を表し、Kはブラック色又はそのデータ若しくは色相を表す。他も同様に、CLは透明又はそのデータ若しくは色相を表す。
更に、本明細書において「画素」とは、階調表現できる最少単位のことであり、複数ビットの多値データの画像処理(後述するカラーマッチング、色分解、γ補正、ハーフトーン等の処理)の対象となる最少単位である。なお、ハーフトーン処理では、1つの画素は2×4のマスで構成されるパターンに対応し、この1画素内の各マスはエリアと定義する。この「エリア」はドットのオン・オフが定義される最少単位である。これに関連して、上記カラーマッチング処理、色分解処理、γ補正にいう「画像データ」は処理対象である画素の集合を表しており、各画素が本実施形態では8ビットの階調値を内容とするデータである。また、ハーフトーン処理にいう「画素データ」は処理対象である画素データそのものを表している。本実施形態のハーフトーン処理では、上記の8ビットの階調値を内容とする画素データが4ビットの階調値を内容とする画素データ(インデックスデータ)に変換される。
【0013】
本実施形態では、複数の異なるクリアインク記録量でオーバーコートした記録物の正反射光色付きデータを予め保持しておき、このデータに基づいて画素毎のクリアインク記録量を決定することで、正反射光色付きを制御する。ここで、正反射光色付きを制御するとは、画像領域全体で正反射光を無彩色に近づけることのみならず、所定の目標色に近づけることを意味する。更には、特定の画像領域毎に正反射光を所定の目標色に近づけることも意味する。
【0014】
<正反射光色付きを制御する処理の概要>
ここで、正反射光色付きを制御する処理の概要について説明する。
先ず、正反射光色付きの発生原因について説明する。図4は、正反射光色付きの発生原因を説明するための、試料の断面を模式的に示す概念図である。記録媒体401上に、カラーインク(有色色材)402及びクリアインク(無色色材)403が重なっている状態を示している。クリアインク403は、着色剤を含まず、実質的に無色透明なインクである。この試料に対して、試料の法線方向からある角度θ傾いた方向から入射光404が照射されると、クリアインク403の表面で光が正反射方向に反射し(反射光405)、クリアインク403とカラーインク402との界面でも光が正反射方向に反射する(反射光406)。反射光405と反射光406との間には、2nd・cosθの光路差がある。ここで、nはクリアインク403の屈折率、dはクリアインク403の厚さである。このような光路差が存在するため、式(1)より、反射光405と反射光406との位相差は2π・2nd・cosθ/λとなる。ここで、λは入射光404、反射光405及び反射光406に共通の波長である。
位相差=2π/λ×光路差・・・(1)
【0015】
そして、反射光405及び406の一方の位相が0である場合、その反射光(光線)の振幅はcos0、つまり1であり、もう一方の反射光(光線)の振幅はcos(4nd・cosθπ/λ)で表される。従って、反射光405及び406の振幅の平均値は、(1/2)・{1+cos(4nd・cosθπ/λ)}で表される。また、反射光の強度は、振幅の二乗に比例するため、(1/4)・{1+cos(4nd・cosθπ/λ)}2に比例することになる。ここでは、入射光404の振幅を1と仮定しているため、上述した反射光の強度を反射率と言い換えることも可能である。従って、正反射光の三刺激値XYZ(CIE XYZ表色系)と膜厚dとの間には、式(2)の関係が成立する。
【0016】
【数1】
【0017】
ここで、S(λ)は光源の分光分布を示し、xバー(λ)、yバー(λ)、zバー(λ)はCIE XYZ表色系の等色関数を示す。また、積分範囲は可視光の波長範囲、例えば380nm〜780nmの範囲であり、Kは比例定数である。
式(2)からわかる通り、クリアインク403の膜厚dによって正反射光は異なる色味を発する。ここまで、説明を簡単にするため、多重反射の項、カラーインク内の反射光、屈折率の波長分散から生じる波長選択的な反射に関しては割愛したが、これらを考慮しても、膜厚dによって正反射光は異なる色味を発する。
【0018】
次に、このような正反射光色付きを制御する処理の概要について説明する。
図5は、図2と同様に、シアンインクで記録媒体表面を100%被覆した画像に対して、異なるクリアインク記録量でオーバーコートした画像の正反射光色付きを、CIE L*a*b*表色系におけるa*b*平面にプロットしたグラフである。図4を参照しながら説明したように、異なるクリアインク記録量でオーバーコートした画像の正反射光が、a*b*平面上で図5のような軌跡を描く原因は、クリアインクの膜厚がクリアインクの記録量に依存して変化するからである。そこで、反対の色相になるクリアインク記録量の領域を局所的に並置させることによって、局所的な正反射光同士の加法混色が成立し、大局的な正反射光の色味が無彩色(つまり、図5において無彩色を示す□の点W)になるように制御することが可能となる。
この制御の内容について、図5中の点P(クリアインク記録量:20%)と点Wとを結ぶ直線上に点Q(クリアインク記録量:70%)がある場合を例にとって説明する。ここでは、線分WPの長さと、線分WQの長さとの比が3:1であると仮定する。この場合、正反射光色付きがPとなるクリアインク記録量が20%の領域と、正反射光色付きがQとなるクリアインク記録量が70%の領域とを、クリアインク面積率が1:3となるように並置させると、点P及び点Qの色味が相殺される。この結果、大局的な正反射光の色味が無彩色となる。図6に、クリアインク記録量:20%の領域とクリアインク記録量:70%の領域とを、これらの領域の面積率の比が1:3となるように並置させた試料の断面を模式的に示す。記録媒体601上に、カラーインク602が重なり、その上に記録量:20%のクリアインク603と記録量:70%のクリアインク604とが並置されている。クリアインク603の領域からの反射光605の色付きは図5中の点Pに該当し、クリアインク604の領域からの反射光606の色付きは図5中の点Qに該当する。また、クリアインク603の領域のカラーインク602の面積に対する面積率は25%であり、クリアインク604の領域のカラーインク602の面積に対する面積率は75%である。従って、上述したように、反射光605と反射光606との色味が互いに相殺されて大局的な正反射光の色味が無彩色となる。
【0019】
これまでの説明では、点P及び点Qの2点を用いて正反射光の色味を相殺させる例を述べたが、この2点の選択は上述した例に限定されるものではない。例えば、a*b*平面内で点Wを内包するような多角形を形成できれば、3点以上によってこの処理を実現することも可能である。例えば、図5中のクリアインク記録量:0%の点R、クリアインク記録量:30%の点S、及びクリアインク記録量:60%の点Tを採用してもよい。つまり、これら3点から、適切な面積率でそれぞれのクリアインク記録量の領域を並置することで、上述した処理の効果を得ることが可能である。なお、各領域の面積率は式(3)より一意に決定することができる。
【0020】
【数2】
【0021】
ここで、a及びbは、それぞれクリアインク記録量:0%の面積率、クリアインク記録量:30%の面積率である。また、なお、本実施形態では、後述のように、観察角度に応じた正反射光色付きの制御を行う。
【0022】
<画像処理装置の概要>
次に、上述のような処理を実行することが可能な画像処理装置について説明する。図7は、本実施形態に係る画像処理装置(プリンタ)の構成を表すブロック図である。
図7に示すように、本実施形態の画像処理装置は、記録装置としてのプリンタ及びホスト装置としてのパーソナルコンピュータ(PC)を有して構成されるものである。そして、プリンタ(記録装置)は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの色材として顔料を含む基本色インク4種と、クリアインクによって印刷を行うものであり、そのためにこれら5種のインクを吐出する記録ヘッドが用いられる。
【0023】
ホスト装置のオペレーティングシステムで動作するプログラムとしてアプリケーションやプリンタドライバがある。画像入力部7001は、このアプリケーションによってプリンタで印刷する画像データの作成、印刷指示の処理を実行する。この画像データ又はその編集等がなされる前のデータは種々の媒体を介してPCに取り込むことができる。本実施形態のPCは、まずデジタルカメラで撮像した例えばJPEG形式の画像データをCFカードによって取り込むことができる。また、スキャナで読み取った、例えばTIFF形式の画像データやCD−ROMに格納されている画像データをも取り込むことができる。更には、インターネットを介してウエブ上のデータを取り込むことができる。これらの取り込まれたデータは、PCのモニタに表示されてアプリケーションを介した編集、加工等がなされ、例えばsRGB規格の画像データ(入力画像の信号値)R、G、Bが作成される。そして、印刷の指示に応じてこの画像データがプリンタドライバに渡される。
観察条件入力部7002では、観察角度に応じた正反射光色付き制御に関する処理内容がユーザによって指定される。観察条件入力部7002のユーザインタフェース(UI)の例を図8に示す。図8に示す例は画像入力部7001も一つのUIに実装されている場合の例である。ユーザによって、観察角度に応じた正反射光色付き制御の有無が選択される。観察角度に応じた正反射光色付き制御を行わないことが選択された場合、クリアインクが記録されないか、又は、光沢ムラ等その他の画質を制御するために適切なクリアインク記録量が選択される。観察角度に応じた正反射光色付き制御を行うことが選択された場合、更に「複数角度」、「特定角度のみ」、「優先角度指定」からいずれか一つがユーザに選択される。「特定角度のみ」、「優先角度指定」が選択された場合は、所定の角度が選択されるか、又は、任意の角度がユーザによって入力される。なお、上記から選択された各条件における処理内容の詳細は後述するが、「複数角度」が選択されると、後述のクリアインク記録情報7011から、いずれの角度から観察しても正反射光色付きが目立たなくなるようなクリアインク記録量が選択される。「特定角度のみ」が選択されると、選択された角度から観察した際に正反射光色付きが最も目立たなくなるようなクリアインク記録量が選択される。「優先角度指定」が選択されると、選択された角度から観察した際に正反射色付きが目立たず、かつ、その他の角度から観察した際にも正反射光色付きが比較的目立たないようなクリアインク記録量が選択される。
本実施形態のプリンタドライバはその処理として、カラーマッチング処理部7003、カラーインクの階調データに変換する処理、及びクリアインクの階調データに変換する処理を有している。カラーインクの階調データに変換する処理として、カラー色分解処理部7004、γ補正処理部7006、及びカラーHT(ハーフトーン)処理部7007を有している。また、クリアインクの階調データに変換する処理として、解像度変換処理部7008、クリア色分解処理部7009、クリア配置設定部7010、クリアHT処理部7012、及び印刷データ作成部7013を有している。また、カラー色分解処理部7004の処理において参照されるカラー色分解LUT(ルックアップテーブル)7005、並びにクリア色分解処理部7009及びクリア配置設定部7010の処理において参照されるクリアインク記録情報7011を有している。カラー色分解LUT7005とクリアインク記録情報7011は個別でなくてもよく、同一のファイルに記録されていても構わない。また、本実施形態における説明は、プリンタドライバにおける処理を印刷データ作成部7013までとしているが、プリンタドライバにおける処理と記録装置における処理の境界は特に限定されるものではない。
【0024】
カラーマッチング処理部7003は画像入力部7001から取得した入力画像データに対して、色域(Gamut)のマッピングを行う。本実施形態のカラーマッチング処理部7003は、sRGB規格などの画像データR、G、Bによって再現される色域を、本プリントシステムのプリンタによって再現される色域内に写像する。具体的には、写像関係を内容とする3次元ルックアップテーブル(LUT)を用い、これに補間演算を併用して8ビットの画像データR、G、Bをプリンタの色域内のデータR、G、Bに変換するデータ変換を行う。カラーマッチング処理は、sRGB等のモニタで表現された色をプリンタで再現した場合に色味を一致させるための処理である。CIE L*a*b*等の色空間にてモニタのGamutからプリンタのGamutへの色空間圧縮を行う。色空間圧縮の手法としては、Perceptualとよばれる知覚的な一致を優先したカラーマッチング、又はColorimetricとよばれる測色的な一致を優先したカラーマッチングを用いることができる。また、Saturationとよばれる鮮やかさを優先したカラーマッチング等を用いてもよい。
カラー色分解処理部7004は、カラーマッチング処理部7003にて上記色域のマッピングがなされたデータR、G、Bに基づき、このデータが表す色を再現するインクの組み合わせに対応した色分解データ(インク値)C、M、Y、Kを求める処理を行う。本実施形態では、この処理はカラーマッチング処理と同様、色域のマッピングがなされたデータR、G、Bとの対応関係が定められたカラー色分解LUT7005に補間演算を併用して行う。出力は各色8ビットで、C、M、Y、Kの色材量に対応した値に使用される。カラー色分解LUT7005の例を図9に示す。図9に示すように、色域のマッピングがなされた8ビットのデータR、G、Bに対して、C、M、Y、Kの対応が定められている。
γ補正処理部7006は、カラー色分解処理部7004にて求められた色分解データの各色のデータごとにその階調値変換を行う。具体的には、本画像処理装置で用いるプリンタの各色インクの階調特性に応じた1次元LUTを用いることにより、上記色分解データがプリンタの階調特性に線形的に対応づけられるような変換を行う。
カラーHT処理部7007は、8ビットの色分解データC、M、Y、Kそれぞれについて、例えば一般的に良く知られた誤差拡散法を用いて4ビットのデータに変換する量子化を行う。この4ビットのデータは、記録装置におけるドット配置パターン化処理部7014による処理における配置パターンを示すためのインデックスとなるデータである。誤差拡散法では処理対象となる画素の累積加算後の画素データと予め設定した閾値との上下関係を比較し、出力階調値を決定する。閾値との差分を誤差として周辺画素に伝播する。累積誤差加算後の画素データとは処理済の画素から伝播された誤差が加算されたデータである。累積加算後のデータをIとし、出力階調値をOとした際の量子化の例を(4)〜(12)式に示す。
O=0 (I<16) ・・・(4)
O=32 (16≦I<48) ・・・(5)
O=64 (48≦I<80) ・・・(6)
O=96 (80≦I<112) ・・・(7)
O=128 (112≦I<144)・・・(8)
O=160 (144≦I<176)・・・(9)
O=192 (176≦I<208)・・・(10)
O=224 (208≦I<240)・・・(11)
O=255 (I≧240) ・・・(12)
ここで、説明の都合上、各出力階調値Oに対し以下のような名称を与える。すなわち、O=0をレベル0、O=32をレベル1、O=64をレベル2、O=96をレベル3、O=128をレベル4、O=160をレベル5、O=192をレベル6、O=224をレベル7、そしてO=225をレベル8とそれぞれ称することにする。
【0025】
以上、プリンタドライバにおいて、画像入力部7001で入力された画像データR、G、Bからカラーインクのインク色毎のデータに変換するための処理について説明した。次に、プリンタドライバにおいて、画像入力部7001で入力された画像データR、G、Bからクリアインクのデータに変換するための処理を説明する。
解像度変換処理部7008は、上記色域のマッピングがなされたデータR、G、Bに基づき、入力された画像の解像度を下げて第2の画像とする処理を行う。本実施形態では、600dpiの画像データが入力された場合に150dpiの画像データに変換する場合を例にとって説明を行う。この処理は、上述の「正反射光色付きを制御する処理」を実行する際に、クリアインク記録量を決定するために必要となる。ここで、解像度変換の方法としては、バイリニア法、バイキュービック法、ニアレストネイバー法等の一般的に知られた方法を用いることができる。図10に、解像度変換の例を示す。図10(a)は、600dpiの画像データを示している。図10(a)中の各画素における括弧内の数字は、R、G、Bの8ビットのデータである。図10(b)は、図10(a)の600dpiの画像データに対してバイリニア法を用いて150dpiの画像データに変換した例である。
【0026】
クリア色分解処理部7009は、上記色域のマッピングがなされたデータR、G、Bに基づき、解像度変換処理部7008で解像度変換された各領域(150dpiの1画素毎)に記録するクリアインクのインク値の組み合わせを求める処理を行う。本実施形態では、色域のマッピングがなされたデータR、G、Bとのインク値の対応関係が定められたクリアインク記録情報7011に補間演算を併用して行う。上述の「正反射光色付きを制御する処理の概要」で説明したように、各領域に対して異なる記録量のクリアインクを並置することで正反射光色付きを抑制させるため、各R、G、Bに対して2種類以上のクリアインクのインク値を対応させることが重要である。本実施形態では、説明を簡単にするために、クリアインクは2種類のインク値CL1、CL2の組み合わせによって処理する場合を例にして説明を行う。また、詳細は後述するが、クリアインク記録情報7011には、クリアインクのインク値の他に、データR、G、Bとインク値(クリアインク量)CL1、CL2の面積率の比(面積比率)、及び、パス数との対応が定められている。図11に、クリアインク記録情報7011の例を示す。
図11(a)は、観察条件入力部7002でユーザによって、「複数角度」が選択された場合、すなわち、いずれの角度から観察しても正反射光色付きが目立たなくなるような記録物を得るための処理が選択された場合のLUTの例を示す。図11(a)に示すLUTは、色域のマッピングがなされた8ビットのデータR、G、Bとクリアインク記録量、面積比率の対応関係が記載されたLUTである。1列目には、観察角度タグが記載されており、1列目のタグ情報から観察条件入力部7002でユーザに選択された条件と対応するLUTが選択される。2〜4列目には、色域のマッピングがなされた8ビットのデータR、G、Bが記載されている。5〜6列目には、クリアインクの記録量を示すインク値が8ビットで記載されている。なお、後述するクリアHT処理部7012にて誤差拡散法を適用した際に誤差が発生しないように、CL1及びCL2は出力階調値(0、32、64、96、128、160、192、224、255)と同じ値になるように設定されている。
図11(b)は、観察条件入力部7002でユーザによって、「特定角度のみ」かつ「45度」が選択された場合、すなわち、45度から観察した際に正反射光色付きが最も目立たなくなるような記録物を得るための処理が選択された場合のLUTの例を示す。図11(a)の場合と同様、1列目に観察角度タグが記載されており、1列目のタグ情報から観察条件入力部7002でユーザに選択された条件と対応するLUTが選択される。同様に、「20度」の場合、「60度」の場合も予め作成されたLUTがクリアインク記録情報7011に格納されている。ここで、「特定角度のみ」について、予め作成しておくLUTの例として「20度」、「45度」、「60度」の例を示した。本発明の適用範囲は勿論この限りではなく、その他の角度で最も観察した際に正反射光色付きが最も目立たなくなるような記録物を得るためのLUTであってもよい。さらに、「特定角度のみ」には角度入力用のテキストボックスを用意しておき、予め用意してある角度のLUTから一般的な補間方法を用いて、入力された角度用のクリアインクのインク値、面積比率を算出してもよい。更に、「優先角度指定」が選択された場合も、図11(b)と同様に予め作成したLUTを選択する。そうすることで、選択された角度から観察した際に正反射光色付きが目立たず、かつ、その他の角度から観察した際にも正反射光色付きが比較的目立たないような記録物を得ることが可能となる。
【0027】
クリア配置設定部7010は、解像度変換処理部7008で解像度変換された画像の各画素内に、クリア色分解処理部7009で決定されたインク値CL1、CL2を、クリアインク記録情報7011を参照して配置する処理を実行する。ここで、この処理について、図10(b)に示した150dpiの1画素内を4×4マスに分割して、クリアインク量A、クリアインク量Bを配置する場合を例にとって説明する。なお、クリアインク量Aのインク値CL1は32、面積比率S_CL1は40%であるとし、クリアインク量Bのインク値CL2は192、面積比率S_CL2は60%であるとする。また、図12に、予めクリアインクの配置を決定する順序を定めた格子パターンを示す。本実施形態では1画素内を4×4マスに分割してクリアインクを記録する場合を例に説明を行うため、図12に示すように、同一サイズの格子パターンが必要となる。図13に、図12の順序でクリアインク量A、クリアインク量Bが配置された例を示す。図13中の斜線で示された「32」と書かれたマスにクリアインク量Aが配置され、網点で示された「192」と書かれたマスにクリアインク量Bが配置される。クリアインク量Aの面積比率S_CL1が40%のため、16マス中6マス分配置し、クリアインク量Bは残りの10マス分を配置する。すなわち、クリアインク量Aを図10の「0」〜「5」のマスに配置し、クリアインク量Bを図10の「6」〜「15」のマスに配置することになる。上記手順を一般化すると(13)式のようになる。
【0028】
【数3】
【0029】
ここで、NAはクリアインク量Aを記録するマスの数を示し、NBはクリアインク量Bを記録するマスの数を示し、Nallは格子パターンのマスの総数を示し、S_CL1はクリアインク量Aの面積比率を示す。なお、NAが整数ではない場合には、切り捨て又は四捨五入等の処理を行えばよい。また、図12には、ベイヤー配列の例を示したが、順序を決定することができればよく、渦巻型、網点型など一般的に知られたディザマトリックス等を使用することも可能である。クリア配置設定部7010は、クリアインクの8ビットの色分解データ(インク値)CL1、CL2に、クリアインクパス数の情報2ビットを付加して得られる10ビットのデータをクリアHT処理部7012に供給する。
【0030】
クリアHT処理部7012は、クリア配置設定部7010で設定されたクリアインクの8ビットの色分解データ(インク値)CL1、CL2それぞれについて4ビットのデータに変換する量子化を行う。この4ビットのデータは、記録装置におけるドット配置パターン化処理部7014における配置パターンを示すためのインデックスとなるデータである。クリアHT処理部7012は、カラーHT処理部7007と同様に、処理対象となる画素の画素データと予め設定した閾値との上下関係を比較し、出力階調値を決定する。上述のように、インク値CL1及びCL2は出力階調値(0、32、64、96、128、160、192、224、255)と同じ値になるように設定されている。このため、入力画素データをI、出力階調値をOとした際に、O=Iが成立する。そして、カラーHT処理部7007と同様に、O=0がレベル0、O=32がレベル1、O=64がレベル2、O=96がレベル3、O=128がレベル4、O=160がレベル5、O=192がレベル6、O=224がレベル7、そしてO=225がレベル8となる。クリアHT処理部7012は、このようにして量子化された4ビットのデータに、クリアインクパス数の情報2ビットを付加して得られる6ビットのデータを印刷データ作成部7013に供給する。
【0031】
そして、印刷データ作成部7013が、上記4ビットのインデックスデータにクリアインクのパス数2ビットを加えて得られる6ビットデータを内容とする印刷イメージデータに印刷制御情報を加えた印刷データを作成する。なお、印刷制御情報には、記録の対象となる普通紙、光沢紙、コート紙等の用紙の種類、及び、高速印刷、高品位印刷等の品位に関する情報が含まれている。なお、これらの印刷制御情報は、例えばホスト装置(PC)にてユーザが指定した内容に基づいて形成されるものである。更に、印刷イメージデータ(印刷イメージ情報)には、前述のハーフトーン処理(カラーHT処理部7007、クリアHT処理部7012における量子化処理)によって生成された画像データが記述されているものとする。以上のように、ハーフトーン処理が施され、印刷データの生成がなされた印刷データは、印刷データ作成部7013から記録装置本体のドット配置パターン化処理部7014へと供給される。
【0032】
なお、上記ハーフトーン処理及び印刷データの生成は、記録装置本体ではなくホスト装置にインストールされたプリンタドライバによって処理されることを前提としているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。ハーフトーン処理自体が記録装置内部で処理される構成であっても本発明の効果は同等に得られるものである。また、上述したアプリケーション及びプリンタドライバの処理は、それらのプログラムに従ってCPUにより行われる。その際、プログラムはROM又はハードディスクから読み出されて用いられ、また、その処理実行に際してRAMがワークエリアとして用いられる。
【0033】
記録装置では、先ず、データ処理に関してドット配置パターン化処理部7014及びマスクデータ変換処理部7015が動作する。
ドット配置パターン化処理部7014は、実際の印刷画像に対応する画素毎に、印刷イメージデータである4ビットのインデックスデータ(階調値情報)に対応したドット配置パターンに従ってドット配置を行う。上述したハーフトーン処理では、256値の多値濃度情報(8ビットデータ)を9値の階調値情報(4ビットデータ)までにレベル数を下げている。しかし、実際に本実施形態のプリンタ(インクジェット記録装置)が記録できる情報は、インクを記録するか否かの2値情報である。そこで、ドット配置パターン化処理部7014は、0〜8の多値レベルをドットの有無を決定する2値レベルまで低減する。具体的には、このドット配置パターン化処理部7014は、カラーHT処理部7007、クリアHT処理部7012からの出力値である4ビットデータで表現される各画素に、その画素の階調値(レベル0〜8)に対応したドット配置パターンを割当てる。この結果、1画素内の複数のエリアの各々にドットのオン・オフが定義され、1画素内の各エリアに「1」又は「0」の1ビットの吐出データが配置される。図14は、本実施形態のドット配置パターン化処理部7014が変換する、入力レベル0〜8に対する出力パターンを示している。図14の左側に示した各レベル値は、カラーHT処理部7007、クリアHT処理部7012からの出力値であるレベル0〜レベル8に相当する。また、図14の右側に配列した縦2エリア×横4エリアで構成される各マトリクスの領域は、カラーHT処理部7007、クリアHT処理部7012から出力された1画素の領域に対応する。また、1画素内の各エリアは、ドットのオン・オフが定義される最小単位に相当するものである。図14において、黒丸印を記入したエリアがドットの記録を行うエリアを示しており、レベル数が上がるに従って、記録するドット数も1つずつ増加している。本実施形態においては、最終的にこのような形でオリジナル画像の濃度情報が反映されていることになる。(4n)〜(4n+3)は、nに1以上の整数を代入することにより、入力画像の左端からの横方向の画素位置を示している。その下に示した各パターンは、同一の入力レベルにおいても画素位置に応じて互いに異なる複数のパターンが用意されていることを示している。すなわち、同一のレベルが入力された場合にも、記録媒体上では(4n)〜(4n+3)に示した4種類のドット配置パターンが巡回されて割当てられる構成となっている。図14においては、縦方向を記録ヘッドの吐出口が配列する方向、横方向を記録ヘッドの走査方向としている。よって、上述のように同一レベルに対しても様々なドット配列で記録できる構成にしておくことは、ドット配置パターンの上段に位置するノズルと下段に位置するノズルとの吐出回数の分散、記録装置特有の様々なノイズの分散という効果が得られる。以上説明したドット配列パターン化処理を終了した段階で、記録媒体に対するドットの配列パターンが全て決定される。
このようにして得られた1ビットの吐出データに対して、マスクデータ変換処理部7015によってマスク処理がなされ、記録ヘッド7017による所定幅の走査領域の記録を複数回の走査で完成するための各走査の吐出データが生成される。なお、マスクデータ変換処理部7015には、この1ビットの吐出データが供給される。
【0034】
ここで、マスク処理について説明する前に、マルチパス記録方式について説明する。インクジェット記録方式における記録ヘッドには、その記録形式において、ライン型のものとシリアル型のものとがある。ライン型の記録方式は、印刷領域幅分の記録ヘッドを用いて、記録媒体のみを副走査方向に移動させることにより記録する方式である。また、シリアル型の記録方式は、ライン型に比べ短い幅の記録ヘッドからインクを吐出させながら、記録主走査と副走査とを交互に繰り返すことにより記録媒体上に順次画像を形成していく方式である。記録主走査とは記録ヘッドを搭載したキャリッジを記録媒体に対して移動走査させることであり、副走査とは記録主走査と直行する方向に所定量ずつ搬送することである。この場合、記録ヘッドに構成されている複数のインク吐出口(以下、「記録素子」と称する)の配列密度及び数によって、1回の記録主走査で記録される領域の幅が決まる。よって、その幅に対する記録主走査とその幅相当の副走査を繰り返すことにより記録を進めれば、最短時間で画像を形成することができる。しかし、1回の記録走査で記録を行うと、インクを吐出させるノズルの製造誤差、記録ヘッドの記録主走査による気流等から、インクの記録位置にばらつきが発生し、画像品位を劣化させることがある。また、各記録主走査間の境界に濃度や色の差異、いわゆる「つなぎすじ」が発生することもある。そこで、より画像品位を高めるために、マルチパス記録方式を採用することが多い。
マルチパス方式では1回の記録主走査で記録可能な画像領域に対し、N回(N≧2)の記録走査を実行する。各記録主走査の間に行われる副走査の量は、記録ヘッドに配列する複数の記録素子をN個のブロックに分割した際の、各ブロックに含まれる記録素子の記録幅相当となる。すなわち、同一の画像領域はN個のブロックに含まれる記録素子によって、N回の記録主走査にて画像が形成される。
N個のブロックに分割する際、各ブロックに含まれる記録素子の数は、同数であることが一般的である。しかし、これは、特に限定されるものではない。例えば、記録素子の総数が、Nで割り切れない場合には、(N−1)番目までのブロックは、任意のM個で構成し、最後のN番目については、割り切れなかった残りの個数を用いてもよい。また、任意のM個、L個を順に繰り返すことにより、往方向(奇数走査)での記録幅と復方向(偶数走査)での記録幅を一定にする等の方法を採ってもよい。更に、例えば、10個の記録素子を有する記録ヘッドにおいて、2個、6個、2個から構成される3つの記録素子ブロックに分割し、両端に位置する2つの記録素子で記録される領域だけが2回のマルチパス方式による記録としてもよい。この場合、中央に位置する6個の記録素子によって記録される領域は、1回の記録主走査で画像が形成されることになり、マルチパス数としては、例えばN=1.5回と表現することも可能である。
このように、マルチパス方式では、異なるブロックによる複数回の記録主走査によって、初めて画像が完成されるので、1回の記録主走査では記録可能な画像データを全て記録しない。ここで、画像データを各ブロックに振り分けるために用いられるのが、いわゆるマスクである。このマスクは、画像信号とは独立して決定されることが多く、例えばマスクと各記録素子における画像信号とのアンド回路を設置しておくことにより、各記録走査で与えられた画像信号を記録するか否かを決定する構成を形成することができる。
この際、個々の画像データから見れば、1回の記録主走査で記録される確率がこのマスクによって決定されることになる。すなわち、記録されるべき画像データが、マスクによってある程度間引かれ、その間引く確率を本明細書では以下「間引き率」と称する。この「間引き率」は、各記録主走査において記録される確率(以下、「記録率」と称する)とは逆の事項を意味することになる。
【0035】
以上の構成に従ったマルチパス方式の一般的な具体例を1つ挙げる。100個の記録素子を用いて4回のマルチパス記録を行う場合、記録素子を25個ずつの4つのブロックに分割する。各記録主走査間に行われる副走査量は、25個の記録素子に相当する。また、各記録主走査で各ブロックに対応するマスクは、間引き率が75%で記録率が25%となる。このマスクパターンは4つのブロックで互いに補完し合う関係にあり、4つのマスクパターンをそれぞれ重ね合わせることにより、100%の記録が行われるように構成されている。なお、ここでは一般例として、記録素子の総数100がマルチパス数N=4によって等分されるような例で説明したが、マルチパス方式は無論これに限定されるものではない。先にも述べたように、マルチパス数Nは記録素子の総数に対し、割り切れる値でなくてもよい。要するに、同一の画像領域に対し、異なる複数のブロックによって記録主走査が行われる構成であれば、マルチパス方式は成立する。マルチパス方式を採用する理由は画像品位を良化させることにあると先に述べたが、この方式によると、各インク色に対するマスクパターンによって、インク記録順を決定することも可能になる。
図15は、マルチパス記録方法を説明するために、記録ヘッド及び記録パターンを模式的に示したものである。インクジェット記録装置では一般的に数100個のノズルが設けられているが、ここでは、説明を簡単なものとするために、記録ヘッド1501に、16個のノズルが設けられているものとする。ノズルは、図15に示すように、第1〜第4の4つのノズル群に分割され、各ノズル群には4つずつのノズルが含まれている。また、マスクパターン1502には、各ノズルが記録を行うエリアを黒塗りで示している。各ノズル群が記録するパターンは互いに補完の関係にあり、これらを重ね合わせると4×4のエリアに対応した領域の記録が完成される構成となっている。また、各パターン1503〜1506は、記録走査を重ねていくことによって画像が完成されていく様子を示している。各記録走査が終了するたびに、記録媒体は図15の矢印の方向にノズル群の幅分ずつ搬送される。よって、記録媒体の同一領域(各ノズル群の幅に対応する領域)は4回の記録走査によって初めて画像が完成される。以上のように、記録媒体の各同一領域が複数回の走査で複数のノズル群によって形成されることには、ノズル特有のばらつきや記録媒体の搬送精度のばらつき等を低減させる効果がある。
【0036】
図16は、カラーインクのマスクパターンとクリアインクのマスクパターンの例を模式的に示した図である。ここでは、記録ヘッド1601が24個のノズルを有し、6回の記録走査で画像の記録が完了する場合を例にとって説明する。図16に示すように、カラーインクのマスクパターン1602、クリアインクのマスクパターン1603が設定されている。カラーインクは前半の4回の記録走査で記録を完了する。クリアインクはカラーインクの記録が完了した後、後半の2回の記録走査で記録を完了する。なお、カラーインクを前半4回の記録走査、クリアインクを後半2回の記録走査で記録する場合を例に説明したが、本発明の適用範囲は勿論これに限定されるものではない。カラーインク以降にクリアインクの記録を行うことで、クリアインクがオーバーコートされる形態であれば、本発明の効果を得られる。
走査ごとの吐出データC、M、Y、K、CLは、適切なタイミングでヘッド駆動回路7016に送られ、これにより、記録ヘッド7017が駆動されて吐出データに従ってそれぞれのインクが吐出される。なお、記録装置における上述のドット配置パターン化処理部7014及びマスクデータ変換処理部7015の処理は、それらに専用のハードウエア回路を用い記録装置の制御部を構成するCPUの制御の下に実行される。なお、これらの処理がプログラムに従ってCPUにより行われてもよく、また、上記処理がPCにおける例えばプリンタドライバによって実行されるものでもよく、本発明を適用する上でこれら処理の形態が問われないことは以下の説明からも明らかである。
【0037】
このように、上述した例では、8ビットの画像が入力され、カラーHT処理部7007、クリアHT処理部7012で4ビットに量子化され、ドット配置パターン化処理部7014で1ビットに変換されるが、各処理部のビット数はこれらに限定されるものではない。すなわち、入力された多階調の画像データから、インク吐出のオン・オフの制御が可能な2階調(1ビット)への変換ができれば、ビット数が異なっても本発明の効果を限定するものではない。
【0038】
<クリアインク記録情報生成処理>
次に、クリアインク記録情報7011に格納されている、R、G、Bデータとクリアインクのインク値、面積比率との対応関係を記載したLUTを生成する処理について、図面を用いて詳細に説明する。
先ず、カラーマッチング処理部7003で色域がマッピングされたR、G、Bデータに対して、カラー色分解LUT7005に格納されている色分解データを利用して記録した有色色材上にクリアインク記録量を異ならせてオーバーコートした複数種類のパッチ画像を印刷する。オーバーコートするクリアインク記録量は、例えば0%から100%まで10%刻みとする。このパッチ画像の正反射光色付きを20度、45度、60度の複数の反射角度で測定しておき予め保持しているものとして、以下に処理の流れを説明する。なお、あるR、G、Bデータに対応する正反射光色付きの測定結果は図3の例に示す通りであるとする。
図17は、観察条件に応じて、R、G、Bデータとクリアインクのインク値、面積比率との対応関係を記載したLUTを生成する処理の流れを示すフローチャートである。なお、この処理をコンピュータが自動的に行ってもよく、人が実行してもよい。従って、以下の説明では、特に動作主体を省略する。
先ず、ステップS1701において、記録物の観察条件及び正反射光色付きのターゲット色(目標色)を設定する。図8のUIの例に示す通り、観察条件は「複数角度」、「特定角度のみ」、「優先角度指定」等である。図8に図示しないが、UIにはターゲット色を設定するためのUIを備えておくことが望ましい。なお、基本的に正反射光色付きは無彩色であることが望まれる場合が多いため、初期設定は無彩色とする。次いで、ステップS1702において、角度の初期値を設定する。予め正反射光色付きデータが測定された角度のいずれか(例えば20度など)が設定される。その後、ステップS1703において、第一のクリアインク量の初期値(例えば0%)を設定する。ここで、上述した色分解データCL1、CL2を生成するためのクリアインク量を第一のクリアインク量、第二のクリアインク量とよぶこととする。続いて、ステップS1704において、第二のクリアインク量の初期値(例えば10%)を設定する。クリアインク記録量に対しては全ての組み合わせを探索できればよいため、第二のクリアインク量は、第一のクリアインク量に対して次に多い量に設定すればよい。
次いで、ステップS1705において、第一のクリアインク量の正反射光色付きと第二のクリアインク量の正反射光色付きが反対の色相になっているかを判定する。ここで、色相が反対になっているかどうかの判定は、xy色度座標上で白色点等のターゲット色を中心に、角度差Δθが180±δ度の範囲に入っているかどうかで判定する。このδは予め所定の値に設定しておく。反対の色相になっていればステップS1706に進み、反対の色相でなければ、ステップS1709で第二のクリアインク量を全て探索済みかどうか判定する。そして、全て探索済みであればステップS1708に進み、探索済みでなければステップS1701で第二のクリアインク量を次に多い量に設定して処理を繰り返す。
ステップS1706では、第一のクリアインク量の正反射光色付きとターゲット色との色度の差ΔE1、第二のクリアインク量の正反射光色付きとターゲット色との色度の差ΔE2を計算する。次いで、ステップS1707において、ステップS1706で計算された2つの色度の差から面積率を求める。第一のクリアインク量の面積率は{ΔE1/(ΔE1+ΔE2)×100}%となり、第二のクリアインク量の面積率は{ΔE1/(ΔE1+ΔE2)×100}%となる。
ステップS1708では、第一のクリアインク量を全て探索済みかどうか判定する。全て探索済みであればステップS1711に進み、探索済みでなければステップS1712で第一のクリアインク量を次に多い量に設定して処理を繰り返す。
ステップS1711では、全ての角度を探索済みか判定する。全ての角度が探索済みであれば、ステップS1713に進み、探索済みでなければステップS1714で次の角度に設定して処理を繰り返す。
ここまでの処理で、予め正反射光色付きの測定された全ての角度において、正反射光色付きが反対色相となる第一のクリアインク量と第二のクリアインク量の全組み合わせが揃ったことになる。
【0039】
ステップS1713では、ターゲット色からの色度ベクトルEを計算する。色度ベクトルEは(14)式で表される。
【0040】
【数4】
【0041】
ここで、第一のクリアインク量の正反射光色付きを(x1,y1)、第二のクリアインク量の正反射光色付きを(x2,y2)とxy色度で表した。この色度ベクトルEは、ステップS1705で反対色相となる角度全てについて算出する。すなわち、所定の角度で反対色相となっているが異なる角度では反対色相とならない場合も含めて色度ベクトルEを算出する。
図18に、図3の正反射光色付きデータから上記フローで算出した色度ベクトルEをグラフに示す。Aθ、Bθ、Cθ、Dθの記号は異なる第一のクリアインク量、第二のクリアインク量、それぞれの面積率を示しており、添え字θは角度を示している。(14)式及び(15)式でターゲット色Wを原点にシフトしているため、Aθ、Bθ、Cθ、Dθは色度ベクトルを示しており、それぞれ次のように表記することができる。
【0042】
【数5】
【0043】
また、そのスカラー量は、それぞれ次のように表記することができる。
【0044】
【数6】
【0045】
そして、ステップS1713の次には、ステップS1715において、これらを用いて、ステップS1701で設定された観察角度に応じて、第一のクリアインク量、第二のクリアインク量、それぞれの面積率を決定する。これらを決定するために(15)式〜(18)式を用いる。
【0046】
【数7】
【0047】
PA、PB、PC、PDは観察角度によってクリアインク量の組み合わせを決定するためのスコアであり、α、β、γは重み係数である。
上記(15)式〜(18)式を用いて、PA、PB、PC、PDから最も小さくなるものを選択することで、画素毎(画像データ毎)に、第一のクリアインク量、第二のクリアインク量、それぞれの面積率が決定される。これを全てのR、G、Bに対して実行することでクリアインク記録情報7011に格納するLUTが生成される。
【0048】
次に、図8の「複数角度」が選択された場合に適用されるLUTの生成方法について説明する。いずれの角度から観察しても正反射光色付きの目立たないような記録物を得るため、α=β=γ=1(同じ重みであれば1でなくても構わない。)とする。「特定角度のみ」かつ「20度」が選択された場合、20度から観察した場合に正反射光色付きが最も目立たなければよいため、α=1、β=γ=0とする。「優先角度指定」かつ「20度」が選択された場合、20度から観察した場合に正反射光色付きが目立たず、かつ、その他の角度も考慮するため、例えばα=1、β=γ=0.5とする。
以上説明したように、重み係数を所定の数値に設定することで、観察角度に応じて、又は、観察角度によらずに、正反射光色付きの目立たない記録物を得るためのクリアインク記録情報を生成することができる。
【0049】
このように、本実施形態によれば、正反射光色付きを制御することができる。すなわち、画像領域全体で正反射光を無彩色に近づけることができ、所定の目標色に近づけることができる。更に、特定の画像領域毎に正反射光を所定の目標色に近づけることもできる。そして、複数の角度から観察した際に正反射光の色味の差を低減させることができ、指定した角度から観察した際の正反射光の色味を、無彩色を含む所定の目標色に近づけることができる。
【0050】
なお、本発明の各工程は、ネットワーク又は各種記憶媒体を介して取得したソフトウェア(プログラム)をパーソナルコンピュータ等の処理装置(CPU、プロセッサ)にて実行することでも実現できる。
【符号の説明】
【0051】
7002:観察条件入力部 7008:解像度変換処理部 7009:クリア色分解処理部 7010クリア配置設定部 7011:クリアインク記録情報 7012:クリアHT処理部 7014:ドット配置パターン化処理部 7015:マスクデータ変換処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上において無色色材を有色色材上に記録して画像を形成するための画像処理装置であって、
前記有色色材上に記録される無色色材の量を異ならせて形成される複数種類の画像における反射角度と反射光の色との関係を入力する入力手段と、
入力画像データによって表される画像を構成する各領域の画像データを取得する取得手段と、
前記入力画像データによって表される画像が観察される観察角度を前記反射角度として、前記入力手段により入力された関係から当該観察角度における前記画像データ毎の前記無色色材の量と前記反射光の色との関係を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された関係に基づいて、前記画像データ毎の前記無色色材を記録する際の条件を決定する決定手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記条件として、記録する前記無色色材の量を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記条件として、記録する少なくとも2種類の前記無色色材の量及び前記無色色材の量に対応する面積率を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
記録媒体上において無色色材を有色色材上に記録して画像を形成するための画像処理方法であって、
入力画像データによって表される画像を構成する各領域の画像データを取得する取得ステップと、
前記有色色材上に記録される無色色材の量を異ならせて形成される複数種類の画像における反射角度と反射光の色との関係を入力し、前記関係から、前記入力画像データによって表される画像が観察される観察角度を前記反射角度として、当該観察角度における前記画像データ毎の前記無色色材の量と前記反射光の色との関係を特定する特定ステップと、
前記特定ステップにおいて特定した関係に基づいて、前記画像データ毎の前記無色色材を記録する際の条件を決定する決定ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
記録媒体上において無色色材を有色色材上に記録して画像を形成するための画像処理装置のコンピュータを制御するプログラムであって、
前記コンピュータに、
入力画像データによって表される画像を構成する各領域の画像データを取得する取得ステップと、
前記有色色材上に記録される無色色材の量を異ならせて形成される複数種類の画像における反射角度と反射光の色との関係を入力し、前記関係から、前記入力画像データによって表される画像が観察される観察角度を前記反射角度として、当該観察角度における前記画像データ毎の前記無色色材の量と前記反射光の色との関係を特定する特定ステップと、
前記特定ステップにおいて特定した関係に基づいて、前記画像データ毎の前記無色色材を記録する際の条件を決定する決定ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
記録媒体上において無色色材を有色色材上に記録して画像を形成するための画像処理装置であって、
前記有色色材上に記録される無色色材の量を異ならせて形成される複数種類の画像における反射角度と反射光の色との関係を入力する入力手段と、
入力画像データによって表される画像を構成する各領域の画像データを取得する取得手段と、
前記入力画像データによって表される画像が観察される観察角度を前記反射角度として、前記入力手段により入力された関係から当該観察角度における前記画像データ毎の前記無色色材の量と前記反射光の色との関係を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された関係に基づいて、前記画像データ毎の前記無色色材を記録する際の条件を決定する決定手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記条件として、記録する前記無色色材の量を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記条件として、記録する少なくとも2種類の前記無色色材の量及び前記無色色材の量に対応する面積率を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
記録媒体上において無色色材を有色色材上に記録して画像を形成するための画像処理方法であって、
入力画像データによって表される画像を構成する各領域の画像データを取得する取得ステップと、
前記有色色材上に記録される無色色材の量を異ならせて形成される複数種類の画像における反射角度と反射光の色との関係を入力し、前記関係から、前記入力画像データによって表される画像が観察される観察角度を前記反射角度として、当該観察角度における前記画像データ毎の前記無色色材の量と前記反射光の色との関係を特定する特定ステップと、
前記特定ステップにおいて特定した関係に基づいて、前記画像データ毎の前記無色色材を記録する際の条件を決定する決定ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
記録媒体上において無色色材を有色色材上に記録して画像を形成するための画像処理装置のコンピュータを制御するプログラムであって、
前記コンピュータに、
入力画像データによって表される画像を構成する各領域の画像データを取得する取得ステップと、
前記有色色材上に記録される無色色材の量を異ならせて形成される複数種類の画像における反射角度と反射光の色との関係を入力し、前記関係から、前記入力画像データによって表される画像が観察される観察角度を前記反射角度として、当該観察角度における前記画像データ毎の前記無色色材の量と前記反射光の色との関係を特定する特定ステップと、
前記特定ステップにおいて特定した関係に基づいて、前記画像データ毎の前記無色色材を記録する際の条件を決定する決定ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−81638(P2012−81638A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228968(P2010−228968)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]