説明

画像処理装置

【課題】 画質の劣化を防止することができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】 入力された現在のフレームを構成する画素が直前のフレームの対応する画素と同一の画素値を有する静止画画素であるか否かの判定を行う静止画判定部60が、上記直前のフレームを含む少なくとも1つの過去のフレームを構成する画素の画素値を示すデータの入力を受けたときに対応する画素について行なった、その過去のフレームの対応する画素が静止画画素であるか否かの判定に基づいて、オーバードライブの条件を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のフレームのそれぞれを構成する画素の画素値を示すデータの入力を、それらフレームの順に受け、その入力されたデータの補正処理を行う画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上述した画像処理装置を備えた画像表示装置が知られている。近年、このような画像表示装置として、フラットパネルディスプレイが急速に普及しており、中でも液晶ディスプレイが主流となっている。この液晶ディスプレイは、信号の変化に対する追従が遅いため、動画において残像が発生し、動きの速い映像などでは画像がぼやけてしまうことがある。そのため、液晶ディスプレイに備えられた画像処理装置において、画像を構成するフレーム間の印加電圧の差分に応じて、液晶へ印加する電圧を過剰にドライブする(オーバードライブをかける)ことで画像の改善を図っている。
【0003】
図6は、従来の、液晶ディスプレイに備えられた画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0004】
図6に示す画像処理装置100には、フレームメモリ(SDRAM)101と、ライトFIFO102と、リードFIFO103と、LUT(Look Up Table)アドレス生成部104と、ルックアップテーブル(LUT)105と、静止画判定部106と、セレクタ107と、加算器108とが備えられている。
【0005】
ライトFIFO102には、現在のフレームを構成する画素の画素値を示す、ビット幅nを有するフレームデータCFD(Current Frame Data)が入力される。ライトFIFO102は、このフレームデータCFDを、ビット幅2nを有するフレームデータCFDに変換してフレームメモリ101に記憶する。次いで、次のフレームを構成するフレームデータCFDが入力される時点で、リードFIFO103は、フレームメモリ101から上記ビット幅2nを有する、1フレーム前のフレームである過去のフレームを構成するフレームデータPFD(Previous Frame Data)を読み出す。さらに、このリードFIFO103は、この読み出されたフレームデータPFDを、ビット幅nを有するフレームデータPFDに変換して、LUTアドレス生成部104および静止画判定部106に向けて出力する。
【0006】
LUTアドレス生成部104は、現在のフレームを構成する画素の画素値と、直前のフレームを構成する画素の画素値であって、現在のフレームを構成する画素の画素値に対応する画素値との変化に応じたアドレスを生成する。
【0007】
ルックアップテーブル105には、予め、LUTアドレス生成部104で生成されるアドレスに対応するオーバードライブ量(以下、OD量と略記する)が格納されている。このルックアップテーブル105は、LUTアドレス生成部104で生成されたアドレスに対応するOD量をセレクタ107の一方の入力端子‘0’に出力する。セレクタ107の他方の入力端子‘1’にはデータ0(OD量=0)が入力されている。
【0008】
静止画判定部106は、現在のフレームデータCFDと1フレーム前の過去のフレームデータPFDとを比較して静止画か否かの判定を行なう。ここで、過去のフレームのデータPFDと現在のフレームのデータCFDとが一致しない場合は、動画と判定される。この場合は、静止画判定部106から‘L’レベルの判定信号JDが出力される。この‘L’レベルの判定信号JDは、セレクタ107の制御端子に入力される。すると、セレクタ107の入力端子‘0’に入力されているルックアップテーブル105からのOD量が選択され、加算器108の一方に入力される。加算器108の他方には、現在のフレームのデータCFDが入力されており、この加算器108からは現在のフレームのデータCFDに上記OD量が加算されたフレームデータが出力される。
【0009】
一方、静止画判定部106において、過去のフレームのデータPFDと現在のフレームのデータCFDとが一致した場合は、静止画と判定される。この場合は、静止画判定部106から‘H’レベルの判定信号JDが出力される。すると、セレクタ107の入力端子‘1’に入力されているデータ0(OD量=0)が選択される。このため、加算器108ではOD量として0が加算されることとなり、従って静止画と判定された場合は、現在のフレームのデータCFDがそのまま出力されることとなる。
【0010】
図7は、図6に示す画像処理装置を構成するフレームメモリ,リードFIFO,ライトFIFOへのアクセスのタイミングを示す図である。
【0011】
図7には、フレームを構成する複数のラインのうちの1つのラインのデータの書込み、読出しのためのアクセスのタイミングが代表して示されている。この1つのラインのデータは、データ有効信号が‘H’レベルである期間(アクティブ区間)に入力される。そして、データ有効信号が‘L’レベルである区間(ブランキング区間)をはさんで、次のラインのデータが入力される。
【0012】
図6を参照して説明したように、フレームメモリ101へのアクセスは、リードFIFO103,ライトFIFO102を介して行なわれる。具体的には、フレームメモリ101の読出し(ビット幅2nの読出し)は、対応するラインのデータが入力されるアクティブ区間の前半において、フレームメモリ101に記憶されている過去のフレームのデータPFDがビット幅2nでリードFIFO103に一旦書き込まれ、そのリードFIFO103から過去のフレームのデータPFDがビット幅nで読み出される。また、フレームメモリ101への書込みは、ビット幅nを有する現在のフレームのデータCFDがライトFIFO102に一旦書き込まれ、アクティブ区間の後半において、そのライトFIFO102から、現在のフレームのデータCFDがビット幅2nで読み出されてフレームメモリ101に書き込まれることとなる。
【0013】
図8は、従来の、図6に示す画像処理装置とは異なる画像処理装置の構成を示すブロック図、図9は、図8に示す画像処理装置を構成する2つのフレームメモリへのアクセスのタイミングを示す図である。
【0014】
尚、図6に示す画像処理装置100の構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付し、異なる点について説明する。
【0015】
図8に示す画像処理装置200は、図6に示す画像処理装置100と比較し、フレームメモリ201が追加されている点とライトFIFO102,リードFIFO103が削除されている点とが異なっている。
【0016】
フレームメモリが2つ(フレームメモリ201,101)備えられている場合は、FIFO(ライトFIFO102,リードFIFO103)は不要となり、図9に示すように、1つのラインのデータが入力されるアクティブ区間にはフレームメモリ201の読出しとフレームメモリ101への書込みが行なわれ、次のラインのデータが入力されるアクティブ区間にフレームメモリ101の読出しとフレームメモリ201への書込みが行なわれる。即ち、2つのフレームメモリ201,101に対してフレーム毎に交互に読出しと書込みが行なわれる。
【0017】
上述の静止画判定回路の例として、特許文献1に、1フレーム期間または1フィールド期間だけ隔てた映像信号の差信号の大きさがあらかじめ定められた値よりも小さい場合には、入力の映像信号をそのまま出力し、あらかじめ定められた値よりも大きな楊合には入力の映像信号に差信号を加算して出力する技術が提案されている(請求項2および図3参照)。
【0018】
また、特許文献2に、現在のフレーム階調データ信号と1個前のフレーム階調データ信号との差が所定値以下である場合には、オーバードライブの程度を小さくしてノイズを抑制する技術が提案されている(図8および段落[0015]〜[0017]参照)。
【特許文献1】特開平3−96993号公報
【特許文献2】特開2005−70582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従来の、図6,図8に示す画像処理装置は、現在のフレームのデータCFDと1フレーム前の過去のフレームのデータPFDとを比較し、比較結果が一致していない場合は動画であると判定して現在のフレームデータCFDにオーバードライブ量(OD量)を加算して出力する。一方、比較結果が一致している場合は静止画であると判定して現在のフレームデータCFDをそのまま出力する。しかし、フレームデータにノイズが生じた場合や、オーバードライブ量を生成する回路の前段にフレームレートコントロール(FRC:Frame Rate Control)などの画質調整回路が備えられている場合には、静止画であるものの微妙に信号値が変化してしまう。この場合、本来は、静止画であった画像に対して、意図しないオーバードライブがかかってしまう。すると、画質が劣化するという問題が発生する。
【0020】
本発明は、上記事情に鑑み、画質の劣化を防止することができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成する本発明の画像処理装置は、複数のフレームのそれぞれを構成する画素の画素値を示すデータの入力を、それらフレームの順に受け、その入力されたデータの補正処理を行う画像処理装置であって、
フレームメモリと、
入力された現在のフレームを構成する画素の画素値を示すデータを上記フレームメモリに記憶するとともに、そのフレームメモリに記憶されていた直前のフレームの対応する画素の画素値を示すデータを読み出すメモリアクセス部と、
上記入力された現在のフレームを構成する画素の画素値の上記読み出した直前のフレームの対応する画素の画素値から変化に応じて、その変化を強調した画素値を有する補正済みデータを生成する補正部と、
上記現在のフレームを構成する画素が上記直前のフレームの対応する画素と同一の画素値を有する静止画画素であるか否かの判定を行う静止画判定部とを有し、
上記静止画判定部が、上記直前のフレームを含む少なくとも1つの過去のフレームを構成する画素の画素値を示すデータの入力を受けたときに対応する画素について行った、その過去のフレームの対応する画素が静止画画素であるか否かの判定結果に基づいて、上記補正部が、上記補正の条件を変更することを特徴とする。
【0022】
本発明の画像処理装置は、入力された現在のフレームを構成する画素が直前のフレームの対応する画素と同一の画素値を有する静止画画素であるか否かの判定を行う静止画判定部が、上記直前のフレームを含む少なくとも1つの過去のフレームを構成する画素の画素値を示すデータの入力を受けたときに行った判定結果に基づいて、補正の条件を変更するものである。このため、ノイズ等の影響により、入力された現在のフレームを構成する静止画画素を示すデータが一時的に変化した場合であっても、過去のフレームの対応する画素が静止画画素であることをもって静止画素であると判定することにより、意図しない強調(オーバードライブ)がかかってしまうことを防止することができる。従って、画質の劣化を防止することができる。
【0023】
ここで、上記静止画判定部が、上記入力された現在のフレームを構成する画素が静止画画素であると判定したときに減少し、静止画画素で無いと判定したときに増大する、静止画からの距離を示す静止画データを生成し、
上記補正部が、上記静止画判定部が上記直前のフレームの対応する画素について判定したときに生成した直前の静止画データが示す静止画からの距離が所定の値以下であるときに、上記所定の値を超えるときに比較して、上記変化の強調量が小さくなるように上記補正の条件を変更することが好ましい。
【0024】
このようにすると、過去の複数のフレームの状態に応じて生成される静止画データによって、強調の大小を変更することができる。従って、ノイズ等の影響によって意図しない強調がかかってしまうことをより確実に防止することができる。
【0025】
また、上記メモリアクセス部が、上記静止画判定部が上記入力された現在のフレームを構成する画素についての判定に基づいて生成した現在の静止画データを、上記フレームメモリに記憶するとともに、上記フレームメモリに記憶されていた上記直前の静止画データを読み出すことも好ましい態様である。
【0026】
このようにすると、現在の静止画データのフレームメモリへの記憶と、直前の静止画データのフレームメモリからの読出しを、現在のフレームのデータの記憶および直前のフレームのデータの読出しとともに行なうことができる。
【0027】
さらに、上記所定の値を保持するとともに、外部から設定可能な静止画判定レジスタをさらに有することも好ましい。
【0028】
このようにすると、ユーザは、強調の大小を変更する静止画からの距離を自在に設定することができる。
【0029】
また、上記補正部が上記強調量が小さくなるように条件を変更したときに、上記メモリアクセス部が、上記フレームメモリから読み出した直前のフレームの対応する画素の画素値を示すデータを、上記現在のフレームの画素の画素値を示すデータとして上記フレームメモリに記憶することも好ましい。
【0030】
このようにすると、ノイズが含まれる現在のフレームのデータがフレームメモリに記憶されてしまうことを防止することができる。
【0031】
さらに、上記静止画判定部が、上記静止画画素であるか否かの判定を、画素ごとに行うか、もしくは、フレーム全体またはフレームを複数に分割した領域ごとに行うものであってもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、画質の劣化を防止することができる画像処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態の画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0035】
図1に示す画像処理装置1は、複数のフレームのそれぞれを構成する画素の画素値を示すデータの入力を、それらフレームの順に受け、その入力されたデータの補正処理を行う画像処理装置である。この画像処理装置1は、液晶ディスプレイに好適に備えられる。例えば、RGBそれぞれの輝度を示す画像データが入力される場合には、図1に示す回路を、R,G,Bそれぞれのために設ける。すなわち、RGBそれぞれの輝度を画素値として処理を行う。もしくは、輝度値Yと色差値UVが入力される揚合には、輝度値のみを処理対象の画素値として、図1に示す回路を設ける。
【0036】
図1に示す画像処理装置1は、フレームメモリ(SDRAM)10と、ライトFIFO20と、リードFIFO30と、遅延回路40とを有する。ここで、ライトFIFO20とリードFIFO30と遅延回路40とにより、本発明にいうメモリアクセス部の一例が構成されている。尚、遅延回路40は、詳細は後述するが、フレームメモリ10から読み出したフレームデータおよび静止画ビットを再びフレームメモリ10に書き込む場合があり、その場合、フレームメモリ10ヘの書き込みを待たせる必要があるために設けられている。
【0037】
また、画像処理装置1は、LUTアドレス生成部50と、静止画判定部60と、ルックアップテーブル70と、セレクタ80_1,80_2と、加算器90とを有する。ここで、LUTアドレス生成部50とルックアップテーブル70により、本発明にいう補正部の一例が構成されている。また、静止画判定部60は、静止画判定レジスタ61と静止画出力部62を有する。
【0038】
ライトFIFO20には、遅延回路30を経由して、現在のフレームを構成する、ビット幅nを有するフレームデータCFD(本発明にいう現在のフレームを構成する画素の画素値を示すデータに相当)、およびビット幅m(m<n)を有する後述する静止画ビットSBが入力される。このライトFIFO20は、ビット幅nを有するフレームデータCFDを2倍のビット幅2nを有するフレームデータCFDに変換するとともに、ビット幅mを有する静止画ビットSBを2倍のビット幅2mを有する静止画ビットSBに変換してフレームメモリ10に記憶する。
【0039】
次いで、次のフレームを構成するフレームデータCFDが入力される時点で、リードFIFO30は、フレームメモリ10から上記ビット幅2nを有するフレームデータCFDを、直前のフレームを構成するフレームデータPFDとして、上記ビット幅2mを有する静止画ビットSBとともに読み出す。さらに、このリードFIFO30は、これらの読み出されたフレームデータPFDおよび静止画ビットSBを、ビット幅nを有するフレームデータPFDおよびビット幅mを有する静止画ビットSBに変換して、LUTアドレス生成部50および静止画判定部60に出力する。
【0040】
LUTアドレス生成部50は、現在のフレームを構成する画素の画素値と、直前のフレームの対応する画素の画素値とに応じたアドレスを生成する。
【0041】
ルックアップテーブル70には、予め、LUTアドレス生成部50で生成されるアドレスのそれぞれに、対応するオーバードライブ量(以下、OD量と略記する)が格納されている。このルックアップテーブル70は、LUTアドレス生成部50で生成されたアドレスに対応するOD量をセレクタ80_1の一方の入力端子‘0’に出力する。セレクタ80_1の他方の入力端子‘1’にはデータ0(OD量=0)が入力されている。
【0042】
静止画判定部60は、現在のフレームを構成する画素が、直前のフレームの対応する画素と同一の画素値を有する静止画画素であるか否かを判定する。また、この判定は、それぞれのフレームを構成する画素の画素値を示すデータの入力を受けるたびに行なわれる。そして、静止画判定部60は、静止画からの距離を示すビット幅mを有する静止画ビットSB(本発明にいう静止画データに相当)を生成する。この静止画ビットSBは、入力された現在のフレームを構成する画素が静止画画素であると判定したときに減少(デクリメント)し、静止画でないと判定したときに増大(インクリメント)する。尚、静止画ビットSBの詳細については後述する。
【0043】
また、静止画判定部60は、静止画判定レジスタ61を有する。この静止画判定レジスタ61は、外部から静止画認識のレベルをユーザが設定可能なレジスタであり、この静止画判定レジスタ61には、静止画からの距離についての判断に使用する「所定の値」である設定値SetDが保持される。
【0044】
さらに、静止画判定部60は、静止画出力部62を有する。この静止画出力部62は、静止画ビットが示す静止画からの距離が所定の値以下である場合、リードFIFO30を介してフレームメモリ10から読み出した過去のフレームのデータPFDを静止画データSDとして出力する。
【0045】
図2は、図1に示す画像処理装置を構成するフレームメモリ,リードFIFO,ライトFIFOへのアクセスのタイミングを示す図である。
【0046】
図2には、フレームを構成する複数のラインのうちの1つのラインのデータの書込み、および、読出しのためのアクセスのタイミングが代表して示されている。
【0047】
フレームメモリ10の読出しは、対応するラインのデータが入力されるアクティブ区間の前半において、フレームメモリ10に記憶されている過去のフレームのデータPFDがビット幅2nで読み出され、リードFIFO30に一旦書き込まれ、そのリードFIFO30から過去のフレームのデータPFDがビット幅nで出力される。また、フレームメモリ10への書込みは、現在のフレームのデータCFDがビット幅nでライトFIFO20に一旦書き込まれ、アクティブ区間の後半において、そのライトFIFO20から現在のフレームのデータCFDがビット幅2nで読み出されてフレームメモリ10に書き込まれることとなる。尚、静止画ビットSBの書込み、読出し(タイミング)も、このフレームデータの書込み、読出しと同様である。
【0048】
図3は、静止画ビットの示す状態を説明するための図である。
【0049】
静止画ビットは、対象となる画素の画素値に対する静止画からの距離を示す情報である。この静止画ビットは、対象となる画素の画素値のビット幅nよりも小さいビット幅m(m≧2)を有する。このビット幅mの値に基づいて静止画か動画かの判定を行なう。例えば、この図3に示すように、静止画ビットの値が(m)−1である場合は、静止画からの距離は0であるとする。これは、静止画ビットが0の状態から過去の(m)−1フレームに渡って連続して静止画であったか、又は、過去のフレームにおいて距離0の状態があって、一旦、ノイズ等の影響により静止画データが途切れて距離が離れたものの、静止画ビットが0に戻る前に再び静止画が入力されて距離が0に戻った場合である。
【0050】
また、静止画ビットの値が(m)−2である場合は、静止画からの距離は1であるとする。これは、過去の(m)−2フレームに渡って連続して静止画であったか、又は、距離1の状態から静止画ビットが0に戻る前に再び静止画が入力されて距離1に戻った場合である。
【0051】
さらに、静止画ビットの値が(m)−3である場合は、静止画からの距離は2であるとする。これは、過去の(m)−3フレームに渡って連続して静止画であったか、又は、距離2の状態から静止画ビットが0に戻る前に再び静止画が入力されて距離2に戻った場合である。
【0052】
また、静止画ビットの値が2である場合は、静止画からの距離は(m)−3であるとする。これは、過去の2フレームの間は静止画であった状態か、又は、距離(m)−3の状態から静止画ビットが0に戻る前に再び静止画が入力されて距離が(m)−3に戻った場合である。
【0053】
さらに、静止画ビットの値が1である場合は、静止画からの距離は(m)−2であるとする。これは、過去の1フレームの間は静止画であった状態か、又は、距離(m)−2の状態から静止画ビットが0に戻る前に再び静止画が入力されて距離が(m)−2に戻った場合である。
【0054】
また、静止画ビットの値が0である場合は、静止画からの距離は(m)−1以上であるとする。これは、過去フレームが動画であった状態である。
【0055】
図4は、静止画ビットの遷移条件を示す図である。
【0056】
フレームが更新される毎に、現在のフレームのデータと過去のフレームのデータとの比較が行なわれる。即ち、ステップS1において現在のフレームのデータが入力され、ステップS2においてフレームメモリから過去のフレームのデータが読み出され、ステップS3においてこれら現在のフレームのデータと過去のフレームのデータとの比較が行なわれる。
【0057】
ステップS3において、現在のフレームのデータと過去のフレームのデータとが一致している(静止画の状態である)と判定された場合は、ステップS4に進む。ステップS4では、距離が0か否かが判定される。距離が0でないと判定された場合は、ステップS5に進む。ステップS5では、静止画ビットの値をインクリメント(+1)し、ステップS9に進み次のフレームに移行する。一方、距離が0であると判定された場合は、それ以上の静止画ビットの値をインクリメントすることができないため、ステップS6に進む。ステップS6では、静止画ビットの値をそのままにして(更新しない)、上述したステップS9に進む。
【0058】
また、ステップS3において、現在のフレームのデータと過去のフレームのデータとが一致していないと判定された場合は、ステップS7に進む。ステップS7では、距離が(m)−1以上か否か(動画の状態であるか否か)が判定される。距離が(m)−1未満であると判定された場合は、ステップS8に進み静止画ビットの値をデクリメント(−1)して、上述したステップS9に進む。一方、距離が(m)−1以上であると判定された場合は、それ以上静止画ビットの値をデクリメントすることができないため、ステップS6に進み、静止画ビットの値はそのままにして、上述したステップS9に進む。このように値が遷移する静止画ビットを用いて、フレームデータに対して静止画の処理を行なう。
【0059】
図5は、図1に示す画像処理装置における、静止画判定のアルゴリズムを含む処理を示す図である。
【0060】
フレームが切り替わると、このアルゴリズムが実行される。先ず、ステップS11において、図1に示すフレームメモリ10から過去(直前)のフレームのデータPFDおよび静止画ビットSBを読み出す。次に、ステップS12において、ユーザにより静止画判定レジスタ61に設定された、静止画の判定に使用する「所定の値」である設定値を読み出す。
【0061】
次に、ステップS13において、静止画判定部60により、読み出した静止画ビットが静止画を表わす情報であるか否かが判定される。即ち、読み出した静止画ビットの値が静止画判定レジスタ61に設定された設定値以上の値となっているか否かが判定される。静止画ビットの値が設定値以上の値となっている場合は静止画と判定される。この場合、ステップS16において、図4を参照して説明した静止画ビットの遷移演算を実行してから、ステップS14に進む。ステップS14では、フレームメモリ10から読み出した過去のフレームのデータPFDおよびステップS16において得られた静止画ビットSBを、遅延回路40を経由して再びフレームメモリ10に書き込む。また、読み出した過去のフレームのデータPFDを、静止画データSDとして静止画出力部62から出力する。さらに、静止画判定部60から、従来のデータパスと静止画出力部62からのデータパスとの選択を行なうためのパス選択信号SELを出力する。ここでは、パス選択信号SELとして、‘H’レベルを出力する。この‘H’レベルのパス選択信号SELは、セレクタ80_2の制御端子に入力される。このため、セレクタ80_2の入力端子‘1’に入力されている、静止画出力部62からのデータSDが出力される。
【0062】
このように、ステップS13において静止画と判定された場合、フレームメモリ10から読み出された過去のフレームのデータPFDが、そのまま出力される。ここで、ステップS13における判定は、静止画ビットの値による判定であり、図4のステップS3において行なわれる、過去のフレームのデータと現在のフレームのデータとが一致するか否かの判定とは異なる。従って、例えばノイズの混入によって過去のフレームのデータと現在のフレームのアータとが一致しない場合であっても、静止画ビットの値が所定値以上である場合には、ステップS13において静止画と判定され、過去のフレームのデータPFDが出力される。このため、ノイズの混入等によっても、意図しないオーバードライブがかかることは無い。
【0063】
また、ステップS13において、読み出した静止画ビットが静止画を表わす情報でないと判定された場合、即ち読み出した静止画ビットの値が静止画判定レジスタ61に設定された設定値未満の値となっていた場合は、ステップS15に進む。ステップS15では、現在のフレームのデータCFDと過去のフレームのデータPFDとが一致しているか否かが判定される。一致していると判定された場合はステップS16において、図4を参照して説明した静止画ビットの遷移演算を実行してから、ステップS17に進む。ステップS17では、静止画判定部60から‘H’レベルの判定信号JDを出力する。この‘H’レベルの判定信号JDは、セレクタ80_1の制御端子に入力される。すると、セレクタ80_1の入力端子‘1’に入力されているデータ0(OD量=0)が選択される。このため、加算器90にはOD量として0が入力される。さらに、ステップS18において、フレームメモリ10への書込みを行なう。即ち、フレームメモリ10に、現在のフレームのデータCFD(入力データ)およびステップS16において得られた静止画ビットSBの書込みを行なう。ここで、ステップS13での判定により、静止画判定部60から‘L’レベルのパス選択信号SELが出力され、セレクタ80_2の入力端子‘0’に入力されている。このため、加算器90からの現在のフレームのデータCFDが出力される。従って、オーバードライブがかかることなく現在のフレームのデータCFDが出力されることとなる。
【0064】
一方、ステップS15において、現在のフレームのデータと過去のフレームのデータとが一致していないと判定された場合は、ステップS16で、図4に示す静止画ビットの遷移演算を実行してから、ステップS19に進む。ステップS19では、静止画判定部60から‘L’レベルの判定信号JDを出力する。この‘L’レベルの判定信号JDは、セレクタ80_1の制御端子に入力される。このため、セレクタ80_1の入力端子‘0’に入力されているルックアップテーブル70からのOD量が選択され、加算器90では現在のフレームのデータCFDに上記OD量が加算される。さらに、ステップS18において、フレームメモリへの書込みを行なう。即ち、フレームメモリ10に、現在のフレームのデータCFDおよびステップS16において得られた静止画ビットSBの書込みを行なう。ここで、ステップS13での判定により、静止画判定部60からパス選択信号SELとして、‘L’レベルが出力される。この‘L’レベルのパス選択信号SELは、セレクタ80_2の制御端子に入力される。このため、セレクタ80_2の入力端子‘0’に入力されている、加算器90からの現在のフレームデータCFDにOD量が加算されたデータが、このセレクタ80_2から出力される。結果として、オーバードライブがかかった動画が出力されることとなる。
【0065】
上述した動作を毎フレーム繰り返すことで、静止画判定にヒステリシスを持たせる効果を奏することができる。従って、静止画が続いた状態から、ノイズなどで画像が乱れた場合であっても、画像を乱すことなく静止画を出力することができる。
【0066】
すなわち、静止画が続いて、静止画ビットの値が設定値以上になった(静止画からの距離が所定の値以下になった)場合、その後、ノイズなどで画像が乱れ、現在のフレームのデータCFDと過去のフレームのデータPFDとが一致しない状態になっても、ステップS13において静止画と判定され、オーバードライブがかかることは無い。言いかえると、ノイズなどで乱れた画像が入力された場合、静止画ビットが示す静止画からの距離が所定の値以下であるときには、静止画からの距離が所定の値を超えるときに比較して、オーバードライブ(変化の強調)の量が小さく(図1の実施形態の揚合であれぱ、ゼロに)なる。このように、オーバードライブの量が小さい状態は、静止画ビットの値が設定値以上である限り続く。そして、静止画ビットの値が設定値未満となったときには、ステップS13において動画と判定され、現在のフレームのデータCFDと過去のフレームのデータPFDとの差異に応じたオーバードライブが行われる。
【0067】
尚、ここでは、ステップS13において読み出した静止画ビットが静止画を表わす情報であると判定された場合は、ステップS14に進んだ後に静止画出力部62,セレクタ80_2を経由してフレームメモリ10から読み出された過去のフレームのデータPFDを出力する例で説明した。しかし、これに限られるものではなく、ステップS13において読み出した静止画ビットが静止画を表わす情報であると判定された場合に、ステップS17に進み、セレクタ80_1に入力されているデータ0(OD量=0)を選択し、加算器90,セレクタ80_2を経由して現在のフレームのデータCFDを出力してもよい。この場合、現在のフレームのデータCFDにノイズが含まれた場合、その、ノイズが含まれたデータによる表示が行われる。しかし、オーバードライブは行われないため、画像の劣化は許容範囲内である場合が多い。なお、この場合には、セレクタ80_2を省略することが可能である。
【0068】
本実施形態の画像処理装置1では、ユーザが設定可能な過去の数フレーム間にわたって監視した結果の情報である静止画ビットSBを基に、現在のフレームのデータが静止画か否かを判定する。従って、ノイズ等の影響によって意図されないオーバードライブがかかってしまうことが防止され、安定した表示を実現することが可能である。また、静止画ビットの状態に基づいて静止画と判定したときに、フレームメモリ10から読み出した過去のフレームのデータPFDをそのまま出力することで、ノイズが含まれない静止画を出力することができる。静止画ビットSBは、フレームメモリ10にデータを書き込む際に一緒にフレームメモリ10に書き込まれ、読み出しの際にはデータと一緒に読み出される。従って、静止画ビットSBの記憶と利用を容易に行うことができる。
【0069】
一致/不一致の判定は、各画素の画素値のnビット全体について行うことも可能である。nビットの一部の、上位のビットのみについて行うことも可能である。また、静止画ビットの生成、および、静止画か否かの判定を、画素ごとに行うのではなく、フレーム全体について行うことも可能である。具体的には、例えば、フレーム全体についての静止画ビットを記憶するレジスタを設け、一致する画素の割合が閾値を超えた場合に、フレーム全体として一致したと判断してインクリメントすることが可能である。そして、この、フレーム全体についての静止画ビットが所定値以上になった場合に、静止画であると判定し、次のフレームにおいてオーバードライブを行わない処理を行うことが可能である。また、フレームを複数に分割した領域ごとに、静止画ビットの生成および静止画か否かの判定を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態の画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す画像処理装置を構成するフレームメモリ,リードFIFO,ライトFIFOへのアクセスのタイミングを示す図である。
【図3】静止画ビットの示す状態を説明するための図である。
【図4】静止画ビットの遷移条件を示す図である。
【図5】図1に示す画像処理装置における、静止画判定のアルゴリズムを含む処理を示す図である。
【図6】従来の、液晶ディスプレイに備えられた画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示す画像処理装置を構成するフレームメモリ,リードFIFO,ライトFIFOへのアクセスのタイミングを示す図である。
【図8】従来の、図6に示す画像処理装置とは異なる画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図9】図8に示す画像処理装置を構成する2つのフレームメモリへのアクセスのタイミングを示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 画像処理装置
10 フレームメモリ(SDRAM)
20 ライトFIFO
30 リードFIFO
40 遅延回路
50 LUTアドレス生成部
60 静止画判定部
61 静止画判定レジスタ
62 静止画出力部
70 ルックアップテーブル
80_1,80_2 セレクタ
90 加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフレームのそれぞれを構成する画素の画素値を示すデータの入力を、該フレームの順に受け、該入力されたデータの補正処理を行う画像処理装置であって、
フレームメモリと、
入力された現在のフレームを構成する画素の画素値を示すデータを前記フレームメモリに記憶するとともに、該フレームメモリに記憶されていた直前のフレームの対応する画素の画素値を示すデータを読み出すメモリアクセス部と、
前記入力された現在のフレームを構成する画素の画素値の前記読み出した直前のフレームの対応する画素の画素値から変化に応じて、該変化を強調した画素値を有する補正済みデータを生成する補正部と、
前記現在のフレームを構成する画素が前記直前のフレームの対応する画素と同一の画素値を有する静止画画素であるか否かの判定を行う静止画判定部とを有し、
前記静止画判定部が、前記直前のフレームを含む少なくとも1つの過去のフレームを構成する画素の画素値を示すデータの入力を受けたときに対応する画素について行った、該過去のフレームの対応する画素が静止画画素であるか否かの判定結果に基づいて、前記補正部が、前記補正の条件を変更することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記静止画判定部が、前記入力された現在のフレームを構成する画素が静止画画素であると判定したときに減少し、静止画画素で無いと判定したときに増大する、静止画からの距離を示す静止画データを生成し、
前記補正部が、前記静止画判定部が前記直前のフレームの対応する画素について判定したときに生成した直前の静止画データが示す静止画からの距離が所定の値以下であるときに、前記所定の値を超えるときに比較して、前記変化の強調量が小さくなるように前記補正の条件を変更することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記メモリアクセス部が、前記静止画判定部が前記入力された現在のフレームを構成する画素についての判定に基づいて生成した現在の静止画データを、前記フレームメモリに記憶するとともに、前記フレームメモリに記憶されていた前記直前の静止画データを読み出すことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記所定の値を保持するとともに、外部から設定可能な静止画判定レジスタをさらに有することを特徴とする請求項2または3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記補正部が前記強調量が小さくなるように条件を変更したときに、前記メモリアクセス部が、前記フレームメモリから読み出した直前のフレームの対応する画素の画素値を示すデータを、前記現在のフレームの画素の画素値を示すデータとして前記フレームメモリに記憶することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記静止画判定部が、前記静止画画素であるか否かの判定を、画素ごとに行うか、もしくは、フレーム全体またはフレームを複数に分割した領域ごとに行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−66384(P2010−66384A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231014(P2008−231014)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(501285133)川崎マイクロエレクトロニクス株式会社 (449)
【Fターム(参考)】