説明

画像形成方法、定着方法及び磁性トナー

【課題】オンデマンド性、低温定着性に優れ、長期使用においても定着ローラ汚れや巻きつきが生じない画像形成方法を提供する。
【解決手段】加圧部材と回転可能な像加熱部材とでニップ部を形成し、加熱加圧定着する定着工程を有する画像形成方法において、前記像加熱部材は内部に弾性層を、その外側に熱容量が100J/m2K以上600J/m2K以下の蓄熱層を有しており、前記像加熱部材は、熱伝導率5.0W/mK以上の熱伝導フィラーを含有し、前記フィラーはAl及び/又はZn化合物であり、前記トナーは、結着樹脂、磁性体、及び結着樹脂に相溶可能な離型剤を1種以上、結着樹脂に非相溶な離型剤を1種以上を含有する磁性トナーであり、前記磁性トナーのフローテスター測定による軟化温度をTn[℃]、流出開始温度をTr[℃]とした時のそれぞれのプランジャー位置をPn[mm]、Pr[mm]とすると、1.1≦Pn/Pr≦1.5を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真法、静電記録法、磁気記録法などに用いられる画像形成方法、定着方法及び磁性トナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置において、記録材上に形成担持させた未定着トナー画像を永久固着画像として加熱定着する装置としては接触加熱型の装置が汎用されている。この接触加熱型の定着装置は、記録材に接触する表面の温度を所定の定着温度に加熱した回転部材(以下、定着ローラと記す)を記録材に対してニップ部にて接触させて、記録材上の未定着トナー画像を永久固着画像として加熱定着するものである。
【0003】
定着ローラの加熱方式の一つとしては、従来から内部加熱方式がある。これは、定着ローラの内部に加熱手段(加熱源:ヒータ等)を配設し、定着ローラを内側から加熱して定着ローラの表面を所定の定着温度に加熱するものである。しかし、内部加熱方式では、ローラ全体を加熱する必要があるため、オンデマンド性には劣る。
【0004】
オンデマンド性に対応するために、種々の検討がなされており、中でもフィルム加熱定着方式は有用な定着方式である。これは、フィルムを介してヒータが直接加熱する方式であるため、ヒータの熱を効率良く記録材に付与することが出来る。しかし、フィルム加熱定着は、長期使用の際にフィルムが破れる、という不具合が生じることがある。
【0005】
こうした懸念点を払拭する新たな定着方法として、外部加熱方式(表面加熱方式)が検討されている。
【0006】
外部加熱方式の装置は、セラミックヒータやハロゲンヒータを内蔵した小径の加熱ローラなどの低熱容量の加熱手段により定着ローラを外側より加熱するため、定着ローラの表面を急激に昇温させることが可能である。そのため、内部加熱方式の装置に比べてウォームアップ時間や、プリント信号を受信してから未定着トナー画像が形成された記録材を加熱定着するまでの時間(以後、ファーストプリントアウトタイムと記す)を短縮できる。それらに伴ってオンデマンド性も高まるため、好ましい。
【0007】
このような外部加熱方式に関する技術として例えば、定着ローラの内部を断熱化し、且つ最表層は熱伝導フィラーをいれることで高熱伝導化するものがある(特許文献1,2参照)。しかし、この技術によってウォームアップタイムの短縮がなされオンデマンド性は高まり、低温定着性は向上するものの、記録材の定着ローラへの巻きつきや定着ローラ汚れに対して、改善の余地を残している。
【0008】
低温定着性を向上させるためのトナーの検討は、従来から多くなされている。例えば結晶性ポリエステルを含有する小粒径トナーが報告されており、定着性に優れ、解像度の高い画像を形成することが出来るトナーが提案されている(特許文献3参照)。
【0009】
また、定荷重押出し形細管式レオメーター(フローテスター)による流出開始温度、流出終了温度を調整することで耐オフセット性と低温定着性の両立を図ることが出来るトナーが提案されている(特許文献4参照)。
【0010】
更には、結晶性ポリエステル及び2種類のワックスを含むトナーにおいてそれぞれの融点を規定することで低温定着性を達成することが可能であるトナーが提案されている(特許文献5参照)。
【0011】
しかしながら、このようなトナーを用いても、上記のようなオンデマンド性の高い画像形成方法においては、低温定着性、巻きつき、定着ローラ汚れの課題を全て克服することは難しく、まだまだ改善の余地があった。
【0012】
【特許文献1】特開2004−317788号公報
【特許文献2】特開2007−121441号公報
【特許文献3】特開平4−184358号公報
【特許文献4】特開2002−215756号公報
【特許文献5】特開2005−234046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
オンデマンド性、低温定着性に優れ、長期使用においても定着ローラ汚れや巻きつきが生じない画像形成方法、定着方法及び磁性トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の画像形成方法、定着方法及び磁性トナーは、以下の構成を特徴としている。
(1)静電潜像担持体を帯電手段により帯電する帯電工程、前記帯電された静電潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光工程、前記静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像工程、前記トナー像を中間転写体を介して、又は介さずに記録材へ転写する転写工程、前記トナー像を担持する記録材を加圧部材と回転可能な像加熱部材とで形成されるニップ部を通過させることにより加熱加圧定着する定着工程を有する画像形成方法において、
前記像加熱部材は内部に弾性層を有し、その外側に像加熱部材の単位面積あたりの熱容量が、100J/m2K以上600J/m2K以下の蓄熱層を有しており、
前記像加熱部材は、熱伝導率5.0W/mK以上の熱伝導フィラーを含有し、
前記熱伝導フィラーはAl及び/又はZn化合物であり、
前記像加熱部材の表面をEPMA(電子線マイクロアナライザー)により測定した際の前記熱伝導フィラーに由来するアルミニウム元素および/または亜鉛元素の割合が、EPMAで検出される全元素量に対して5.0質量%以上45.0質量%以下であり、
前記像加熱装置に適用されるトナーは、少なくとも結着樹脂、磁性体、及び結着樹脂に相溶可能な離型剤を1種以上、結着樹脂に非相溶な離型剤を1種以上含有する磁性トナーであり、前記磁性トナーのフローテスター測定による軟化温度をTn[℃]、流出開始温度をTr[℃]とした時のそれぞれのプランジャー位置をPn[mm]、Pr[mm]とすると、1.1≦Pn/Pr≦1.5を満たすことを特徴とする画像形成方法。
(2)前記像加熱部材のRzが2.0μm以上20.0μm以下であることを特徴とする(1)に記載の画像形成方法。
(3)前記蓄熱層を形成するゴム100質量部に対し、前記熱伝導フィラーを7質量部以上60質量部以下含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の画像形成方法。
(4)前記蓄熱層の厚みが50.0μm以上500.0μm以下であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の画像形成方法。
(5)前記弾性層は熱伝導率が0.15W/mK以下であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の画像形成方法。
(6)前記像加熱部材は、外側から加熱される手段が具備されていることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の画像形成方法。
(7)前記磁性トナーは結着樹脂100質量部に対して、架橋剤を0.2質量部以上1.0質量部以下含有することを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の画像形成方法。
(8)前記磁性トナーの平均円形度が0.960以上であることを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載の画像形成方法。
(9)前記結着樹脂に相溶可能な離型剤の1種の融点をTm1[℃]、結着樹脂に非相溶な離型剤の1種の融点をTm2[℃]とした時に、Tm1が50℃以上であり、かつTm1≦Tm2+10を満たすことを特徴とする(1)乃至(8)のいずれかに記載の画像形成方法。
(10)前記トナーは結着樹脂100質量部に対し、結着樹脂に相溶可能な離型剤を2質量部以上30質量部以下、結着樹脂に非相溶な離型剤を2質量部以上30質量部以下含有することを特徴とする(1)乃至(9)のいずれかに記載の画像形成方法。
(11)前記非相溶な離型剤が結晶性ポリエステルであることを特徴とする(1)乃至(10)のいずれかに記載の画像形成方法。
(12)前記結晶性ポリエステルは直鎖のジカルボン酸と直鎖の脂肪族系ジアルコールの重縮合物であることを特徴とする(11)に記載の画像形成方法。
(13)前記結晶性ポリエステルの酸価が5[mgKOH/g]以下であることを特徴とする(11)又は(12)に記載の画像形成方法。
(14)前記結晶性ポリエステルの数平均分子量が2000以上7000以下であることを特徴とする(11)乃至(13)のいずれかに記載の画像形成方法。
(15)記録材上に形成されているトナー画像を加圧部材と回転可能な像加熱部材とで形成されるニップ部を通過させることにより加熱加圧定着する定着方法において、
前記像加熱部材は内部に弾性層を有し、その外側に像加熱部材の単位面積あたりの熱容量が、100J/m2K以上600J/m2K以下の蓄熱層を有しており、
前記像加熱部材は、熱伝導率5.0W/mK以上の熱伝導フィラーを含有し、
前記熱伝導フィラーはAl及び/又はZn化合物であり、
前記像加熱部材の表面をEPMA(電子線マイクロアナライザー)により測定した際の前記熱伝導フィラーに由来するアルミニウム元素および/または亜鉛元素の割合が、EPMAで検出される全元素量に対して5.0質量%以上45.0質量%以下であり、
前記トナーは、結着樹脂、磁性体、及び結着樹脂に相溶可能な離型剤を1種以上、結着樹脂に非相溶な離型剤1種以上を少なくとも含有する磁性トナーであり、前記磁性トナーのフローテスター測定による軟化温度をTn[℃]、流出開始温度をTr[℃]とした時のそれぞれのプランジャー位置をPn[mm]、Pr[mm]とすると、1.1≦Pn/Pr≦1.5を満たすことを特徴とする定着方法。
(16)静電潜像担持体を帯電手段により帯電する帯電工程、前記帯電された静電潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光工程、前記静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像工程、前記トナー像を中間転写体を介して、又は介さずに記録材へ転写する転写工程、前記トナー像を担持する記録材を加圧部材と回転可能な像加熱部材とで形成されるニップ部を通過させることにより加熱加圧定着する定着工程を有する画像形成方法に用いられる磁性トナーにおいて、
前記像加熱部材は内部に弾性層を有し、その外側に像加熱部材の単位面積あたりの熱容量が、100J/m2K以上600J/m2K以下の蓄熱層を有しており、
前記像加熱部材は、熱伝導率5.0W/mK以上の熱伝導フィラーを含有し、
前記熱伝導フィラーはAl及び/又はZn化合物であり、
前記像加熱部材の表面をEPMA(電子線マイクロアナライザー)により測定した際の前記熱伝導フィラーに由来するアルミニウム元素および/または亜鉛元素の割合が、EPMAで検出される全元素量に対して5.0質量%以上45.0質量%以下であり、
前記磁性トナーは、結着樹脂、磁性体、及び結着樹脂に相溶可能な離型剤を1種以上、結着樹脂に非相溶な離型剤1種以上を少なくとも含有する磁性トナーであり、前記磁性トナーのフローテスター測定による軟化温度をTn[℃]、流出開始温度をTr[℃]とした時のそれぞれのプランジャー位置をPn[mm]、Pr[mm]とすると、1.1≦Pn/Pr≦1.5を満たすことを特徴とする磁性トナー。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低温定着性、定着ローラ汚れ、及び耐巻きつき性に優れる画像形成方法、定着方法及び磁性トナーを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明は、画像形成方法、定着方法及び磁性トナーに関するものであり、像担持体を一様に帯電する帯電工程、帯電した像担持体を露光することで潜像を形成する潜像形成工程、静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像工程、現像画像を記録材上に転写する転写工程に関しては、従来公知の電子写真プロセスが適用でき、特に限定されるものではない。
【0018】
本発明者らは、静電潜像担持体を帯電手段により帯電する帯電工程、前記帯電された静電潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光工程、前記静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像工程、前記トナー像を中間転写体を介して、又は介さずに記録材へ転写する転写工程、前記トナー像を担持する記録材を加圧部材と回転可能な像加熱部材とで形成されるニップ部を通過させることにより加熱加圧定着する定着工程を有する画像形成方法において、
前記像加熱部材は内部に弾性層を有し、その外側に像加熱部材の単位面積あたりの熱容量が、100J/m2K以上600J/m2K以下の蓄熱層を有しており、
前記像加熱部材は、熱伝導率5.0W/mK以上の熱伝導フィラーを含有し、
前記熱伝導フィラーはAl及び/又はZn化合物であり、
前記像加熱部材の表面をEPMA(電子線マイクロアナライザー)により測定した際の前記熱伝導フィラーに由来するアルミニウム元素および/または亜鉛元素の割合が、EPMAで検出される全元素量に対して5.0質量%以上45.0質量%以下であり、
前記像加熱装置に適用される磁性トナーは、少なくとも結着樹脂、磁性体、及び結着樹脂に相溶可能な離型剤を1種以上、結着樹脂に非相溶な離型剤を1種以上含有する磁性トナーであり、前記磁性トナーのフローテスター測定による軟化温度をTn[℃]、流出開始温度をTr[℃]とした時のそれぞれのプランジャー位置をPn[mm]、Pr[mm]とすると、1.1≦Pn/Pr≦1.5を満たすことを満たすことで、オンデマンド性の高い画像形成方法においても巻きつきや定着ローラ汚れが発生せず、優れた低温定着性が得られることを見出し、本発明に至った。
【0019】
本発明の像加熱装置は、像加熱部材が、内部に低熱伝導弾性層を有し、その外部に像加熱部材の単位表面積あたりの熱容量が100J/m2K以上600J/m2K以下の蓄熱層を有する像加熱装置である。
【0020】
定着時の熱効率を考えると、定着熱を記録材に熱量ロスなく伝えることが重要であるが、芯金を伝わって蓄熱層の熱量が失われることがある。しかしながら、本発明者らの検討によると、蓄熱層の下層に低熱伝導弾性層を配置することで、そうした熱量ロスは大幅に低減されることが分かった。また、蓄熱層は高い熱容量を持つと、定着時に記録材へ十分な熱量を付与出来るため、より低い温度での定着が可能になる。しかし、過剰な熱量はエネルギーロスに繋がってしまう。こうした熱量のロスも抑えつつ、十分な熱量を記録材へ付与するためには、蓄熱層の熱容量を100J/m2K以上600J/m2K以下に制御することが重要であった。
【0021】
蓄熱層の熱容量が100J/m2K未満になると、放熱量が多くなると共に記録材に熱を奪われ易くなる。そのため、像加熱部材を加熱するための熱エネルギーが増大するため、同一定着温度で比較した際、低温定着性が損なわれてしまう。一方、蓄熱層の熱容量が600J/m2Kを超えると像加熱部材の温度上昇速度が低下し、ウォームアップタイムが延びるなどしてオンデマンド性に劣るため好ましくない。
【0022】
さらに、本発明者らが検討していく中で、像加熱部材の表面近傍の状態を制御することでさらに低温定着性を良化できることが分かった。
【0023】
すなわち、蓄熱層中のフィラーの分散性に傾斜を持たせ、像加熱部材の表面近傍にフィラーを多く存在させるようにすることが重要であった。
【0024】
具体的には、前記像加熱部材の表面をEPMA(電子線マイクロアナライザー)により測定した際の前記熱伝導フィラーに由来するアルミニウム元素および/または亜鉛元素の割合が、EPMAで検出される全元素量に対して5.0質量%以上45.0質量%以下とすることである。より好ましくは、10.0質量%以上40.0質量%以下である。
【0025】
アルミニウム及び亜鉛を含有させることで、フィラーは高い熱伝導性を得やすく、かつ本発明の像加熱部材に対して適用しやすかったため、本発明ではアルミニウムおよび/または亜鉛元素を用いている。このとき、熱伝導フィラーの検出方法としては、EPMAを用いた。EPMAは表面から数μmの深さまでに存在する元素を測定するものであり、検出されるアルミニウムや亜鉛元素は表面から数μmまでの深さに存在する熱伝導フィラー量と対応する。これにより、蓄熱層表面近傍の熱伝導フィラー量を測定することが出来る。
【0026】
EPMAにより測定した際の像加熱部材の表面近傍に存在するアルミニウム元素および/または亜鉛元素の割合が5.0質量%未満であると、像加熱部材の表面近傍の熱伝導率が低い。このために、像加熱部材表面を高温に維持するには加熱手段より高い熱量を付与し続ける必要があり、熱量ロスが大きくなる。また、比較的低い定着熱量では、熱量ロスのために、充分な低温定着性が得られないこととなる。一方、EPMAにより測定した際の像加熱部材の表面近傍に存在するアルミニウム元素および/または亜鉛元素の割合が45.0質量%より多くなると、一般的にアルミニウム元素および/または亜鉛元素を含有する熱伝導フィラーは、定着ローラを形成するゴムよりもトナーとの親和性が高いため、定着ローラとトナーの付着性が高まり、低温オフセットが発生する。
【0027】
本発明の像加熱部材構成における熱伝導フィラーは、オンデマンド性を向上させるために、高い熱伝導率を有する必要があり、具体的には5.0W/mK以上である。5.0W/mK未満であると熱伝達効率の低下に伴って熱量ロスが増大し、定着温度は高まってしまうため好ましくない。
【0028】
本発明の像加熱部材は、上記のような構成をとることで、熱応答性が良化し低温定着性を向上させることが可能となる。しかしながら、一般的にアルミニウム元素および/または亜鉛元素を含有する熱伝導フィラーは、前述のとおり定着ローラを形成するゴムよりもトナーとの親和性が高い。そのため、定着のための熱が像加熱部材に加えられた際、記録材上のトナーが像加熱装置と融着を引き起こす。その結果、定着後の印字後の記録材がカールしてしまう、いわゆる巻きつきが生じる他、像加熱装置がトナーにより汚染される、定着ローラ汚れが特に長期使用時に発生するという新たな課題が生じた。
【0029】
そこで、巻きつき性及び定着ローラ汚れを改善し、かつ低温定着性を向上させるために、トナーについて種々の検討を行った。
【0030】
定着プロセスについて考えると、トナーは定着部材からの熱を受け、トナー内部に熱が伝わる。そして、含有する離型剤が溶融すると共にトナーが可塑・変形することで定着画像が得られる。その際の離型剤の挙動としては、溶融することで結着樹脂への染み込みが起こり、トナー外部へと染み出すことにより離型効果を発揮する。この時わずかではあるが、離型剤の溶融によりトナーの体積膨張が起こることが知られている。
【0031】
この時、結着樹脂に相溶可能な離型剤1種以上と結着樹脂に非相溶な離型剤1種以上がトナー中に存在することで、離型剤が1種類存在するのみでは達成できない大きな体積膨張変化が起こることを本発明者らは発見した。そして、その効果により優れた離型効果により巻きつきと定着ローラ汚れを防ぎ、かつ優れた低温定着性が発揮されることを見出した。これは以下の理由と考えている。
【0032】
定着時の挙動を考えてみると、結着樹脂に相溶可能な離型剤は溶融した後、結着樹脂に染み出していく。一方、結着樹脂に非相溶の離型剤は、融点付近の温度領域では相溶可能な離型剤、結着樹脂のいずれとも相溶せず、トナー中でドメインとして存在し、トナーは液芯構造に近い状態となっていると考えられる。また、この時、相溶、非相溶の離型剤は双方とも体積膨張するが、結着樹脂に非相溶な離型剤は先に述べたとおり、結着樹脂や他の離型剤と相溶しないために、トナー内部に留まり、トナー内部から結着樹脂に相溶可能な離型剤を押し出すものと考えられる。この押し出し効果により、結着樹脂に相溶可能な離型剤は染み出しが促進され、結果としてより早くトナー表面に相溶可能な離型剤が運ばれ、離型効果を素早く発揮できると考えられる。それにより、記録材上のトナーが離型効果を発揮して巻きつきを防ぐとともに、定着ローラ汚れを防ぐことができると考えられる。また、定着の熱を受けた際、トナーは液芯構造であるがために、圧力により素早く変形し、メディアにアンカーリングすることで優れた低温定着性が得られると考えられる。
【0033】
ここで、非相溶な離型剤とは、前記離型剤の融点の温度において、結着樹脂に対して相溶しない、もしくは、極めて相溶し難い離型剤のことをいう。
【0034】
この時、1.1≦Pn/Pr≦1.5の範囲となるようにトナーの体積膨張を制御することが重要である。Pn/Prが1.1よりも小さいと、即ちそれは体積膨張が低いことを意味しており、非相溶の離型剤の押し出しが弱いため、定着時の離型効果が瞬時には得られ難く、定着時の熱により定着ローラ汚れを生じる。一方、Pn/Prが1.5よりも大きいと、体積膨張は非常に大きくなるが、体積膨張を引き起こすために離型剤量を増加させる必要が生じるため、結果として長期使用において画像濃度が低下する問題が生じる。以上の結果より、1.1≦Pn/Pr≦1.5の範囲となるようにトナーの体積膨張を制御することが必須である。
【0035】
上記の範囲にトナーの体積膨張を制御するためには、トナー中の離型剤の分散の程度を変えることが重要である。具体的には、内包する成分としては、例えば離型剤の酸価、水酸基価を調整することで相溶もしくは、非相溶の離型剤のトナー中での存在状態を調整し、離型剤の膨張程度を変えることが可能である。その他、磁性体に疎水化処理を施すことで、例えば本発明に好適に用いられる懸濁重合(後述)でトナーを製造した場合、磁性体のトナー中の存在状態を変えることができ、その結果離型剤の存在状態を変えることも出来る。また、トナーを所謂粉砕法で製造するときは、混練加熱温度、冷却温度や速度、粒子形状など、また所謂重合法で作る際には、重合温度、冷却温度、樹脂の疎水化処理などで調整可能である。
【0036】
本発明のトナーは磁性体を含有することが必須要件である。非相溶な離型剤はトナー中でドメインを形成するが、本発明のトナーの好適な製造方法である懸濁重合法(後述)においては、離型剤と馴染まない磁性体はよりトナーの表層近傍へと押し出されることとなり、磁性体がトナー表層近傍に数多く存在することで長期使用時における耐ストレス性が向上する。さらに、懸濁重合で製造した場合、内部に結着樹脂に非相溶な離型剤と、相溶する離型剤の2種がトナー内部で近接して存在する状態となるため、上述の押し出し効果がより一層得られやすくなる。
【0037】
磁性体は一般的にその比熱の高さ及びフィラー効果から定着性を悪化させる傾向であるが、ドメインを形成する非相溶の離型剤は磁性体の他に結着樹脂とも馴染まず、先に述べたように溶融時に液芯構造のような状態となるためにトナーの変形が非常に生じやすく、磁性体がトナー表層近傍に存在してもその影響をあまり受けず、良好な低温定着が可能となる。
【0038】
よって、本発明では、少なくとも結着樹脂、磁性体、及び結着樹脂に相溶可能な離型剤を1種以上、結着樹脂に非相溶な離型剤を1種以上含有するトナーであり、前記トナーのフローテスター測定による軟化温度をTn[℃]、流出開始温度をTr[℃]とした時のそれぞれのフランジャー位置をPn[mm]、Pr[mm]とした時に、1.1≦Pn/Pr≦1.5を満たすことが重要である。
【0039】
その際、像加熱装置の単位面積あたりの熱容量が、100J/m2K以上600J/m2K以下であり、かつ像加熱部材の表面近傍に存在するアルミニウム元素および/または亜鉛元素の割合は、5.0質量部以上45.0質量部以下に制御することで過不足の無い適切な熱量がトナーに与えられ、より1.1≦Pn/Pr≦1.5を満たしやすい相乗効果も生じる。これにより、巻きつきや長期使用時の定着ローラ汚れを防ぎ、かつ低温定着性を得ることが出来る。
【0040】
次に、本発明の像加熱装置(以下、定着ローラ、とも記載する)について説明する。
【0041】
本発明の像加熱装置においては、記録材上の未定着トナー画像を熱により溶融定着させる加熱部材は内部に熱源を持たず、その表面より加熱手段から受けた蓄熱をトナー溶融に用いる外部加熱定着装置が好ましく用いられる。これは、内部に断熱性の高い弾性層を有するため、外部から加熱する方が熱量ロスが少ないためである。
【0042】
図1に示すように、本発明の像加熱部材30は、芯金31の外周に、熱伝導率が低く、弾性を持つ低熱伝導弾性層(以下、断熱弾性層もしくは弾性層と記す)32を形成し、さらに、その外側に、蓄熱層を形成したものである。
【0043】
本発明の像加熱部材の芯金31は、例えば、アルミや鉄、SUM材等の金属材料、セラミック等の他の剛体材料によりより形成される。芯金31は、断熱弾性層32によって定着ローラ表面から断熱される為、低熱伝導性、低熱容量であっても良い。また、その形態は中空の筒状であっても良い。
【0044】
芯金31の外周に形成する断熱弾性層32は低熱伝導化したゴム層であり、熱伝導率は蓄熱層33より小さくなるよう配合調整される。本発明において、弾性層は熱伝導率が0.15W/mK以下であると、蓄熱層の熱量は芯金に逃げにくく、熱量のロスがなくなるため好ましい。
【0045】
断熱弾性層32の厚さは特に制限されないが、有効な断熱性を有し、かつ熱容量が大きくなりすぎず、小径の定着ローラ30を構成するためには、1.0mm以上5.0mm以下、好ましくは2.0mm以上4.0mm以下とするのが良い。
【0046】
断熱弾性層は、耐久性や断熱性の観点から、オルガノポリシロキサン組成物に中空フィラーを配合した配合物、あるいは、オルガノポリシロキサン組成物に吸水性ポリマーおよび水を配合した配合物を形成後に焼成および硬化して形成されたものが好ましい。
【0047】
断熱弾性層32の形成方法を以下に例示する。
【0048】
例えば、シリコーンゴム組成物であり、熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物100質量部に平均粒子径が500μm以下の中空フィラーを0.1質量部以上200.0質量部以下配合してなるシリコーンゴム組成物を加熱硬化して形成されるバルーンゴム層とする。
【0049】
ここで、中空フィラーとしては、硬化物内に気体部分を持つことでスポンジゴムのように熱伝導率を低下させるもので、マイクロバルーン材等がある。このような材料としては、ガラスバルーン、シリカバルーン、カーボンバルーン、フェノールバルーン、アクリロニトリルバルーン、塩化ビニリデンバルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーン、シラスバルーンなど、いかなるものでもかまわない。
【0050】
上記の中空フィラーの配合量は、熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物100質量部に対し0.1質量部以上200.0質量部以下であり、好ましくは0.2質量部以上150.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上100.0質量部以下である。この場合、中空フィラーの定着ローラ用シリコーンゴム組成物中での含有量が体積比で10%以上80%以下、特に15%以上75%以下となるように配合することが好ましい。体積割合が少なすぎると熱伝導率の低下が不十分となりやすく、また多すぎると成形、配合が難しいだけでなく成形物もゴム弾性のない脆いものとなってしまう恐れがある。
【0051】
また、例えば、吸水性ポリマーおよび水を添加する方法で、シリコーンゴム断熱層32を形成したものでも良い。かかるシリコーンゴム組成物としては、オルガノポリシロキサン組成物100質量部に吸水性ポリマーを0.1質量部以上50.0質量部以下、水を10質量部以上200質量部以下、その他、白金化合物触媒のような硬化触媒、SiHポリマーのような架橋剤を添加した組成物を形成する。その後、これを加熱成形して断熱弾性層32としても良い。
【0052】
また、この場合には、以下の3段階あるいは2段階に分けて加熱する。即ち、第一段階では、シリコーンベースポリマーの実質的な硬化が起こらず、しかも水分が蒸発しない100℃以下、好ましくは50℃以上80℃以下のもとで10時間以上30時間以下加熱して型成型する。次いで、第二段階では、前記型成形物を120℃以上250℃以下、好ましくは120℃以上180℃以下で1時間から5時間加熱して、含まれている水及び水を含んだ不純物中の水分を蒸発させる。そして、最後の第三段階では、得られた気泡体を180℃以上300℃以下、好ましくは200℃以上250℃以下で2時間から8時間加熱して、硬化を進めることにより、所望の多孔質ゴム状弾性体のシリコーンゴム層を完成させる。
【0053】
よって、断熱弾性層32は、マイクロバルーン等のバルーンや吸水性ポリマーが含有されたオルガノポリシロキサンを主成分とする液状シリコーン組成物より形成されたものが望ましい。このようにして得られた断熱弾性層は、スポンジシリコーンゴム断熱層や、ソリッドゴム断熱層に比べ、断熱性と耐久性に優れ、また、熱膨張も少ない。
【0054】
次に、断熱弾性層32の外周に形成する蓄熱層33について説明する。蓄熱層33は、例えばシリコーンゴム、あるいはフッ素ゴムなどに、粉末状の熱伝導フィラー(以下、単に「フィラー」とも呼ぶ)を混入させた層を断熱弾性層32の上に形成したソリッドゴム層が好適な形態として挙げられる。蓄熱層が上記のような形態であると、離型層を介して蓄熱層に付与された熱量が素早く蓄熱層全体に拡散するため、好ましい。
【0055】
前記蓄熱層の熱伝導率は、断熱弾性層32よりも高いことが重要である。好ましくは、一般的なソリッドゴムよりも熱伝導率を高め、0.30W/m・K以上とするのが望ましい。
【0056】
内部の断熱層の熱伝導率を、蓄熱層の熱伝導率よりも低くすることで、定着ローラ表面から伝達された熱を、表面近傍の蓄熱層に偏在させ、保ちやすくする。また、蓄熱層の熱伝導率を高くすることで、蓄熱層での熱の吸収と放出を迅速に行うことができる。
【0057】
蓄熱層33の厚みは50.0μm以上500.0μm以下で形成されていることが望ましい。
【0058】
フィラーを分散し、高熱容量化された蓄熱層33は、弾性は持つものの硬度が高くなる。そのため、蓄熱層が500.0μmを超えると定着ローラ表面も硬くなり、記録材への密着性が悪くなる。そのため、熱の伝達が行なわれにくくなる傾向があり、低温オフセットなどの問題を生じる。
【0059】
また蓄熱層が50.0μm未満であると、フィラーを均一に分散し、均一な熱容量、熱伝導率とすることが難しくなる。そして、記録材上の磁性トナーへの熱が不均一にかかる原因となり、トナーにかかる熱量にムラが生じることからトナー同士の融着が起こりにくく、低温定着性を損ねやすい。
【0060】
本発明は、蓄熱層を形成するゴム100質量部に対して、熱伝導フィラーが7質量部以上60質量部以下含有することも好ましい。熱伝導フィラーの混入量が7質量部未満であると、蓄熱層の熱容量が少なく、低温定着性が劣る傾向にある。一方、60質量部を超えると、蓄熱層の熱容量が過剰になるため、同熱量に対しての昇温速度が低下することでウォームアップタイムが延び、オンデマンド性が損なわれる傾向にある。
【0061】
蓄熱層33は、例えば以下の方法により形成されるが、何ら本発明を限定するものではない。特に、シリコーンゴム、あるいはフッ素ゴムなどに、粉末状の熱伝導フィラーを7質量部以上60質量部混入させた層を断熱弾性層32の上に形成したソリッドゴム層であることが好ましい。
【0062】
本発明の蓄熱層の製造方法としては、任意の手法を用いることが出来る。例えば、ディッピング塗工、スプレー塗工、および円柱状の芯金周囲に円筒形状の塗工ヘッドを用いて液状樹脂を被覆形成するリング塗工などの方法が挙げられる。特に、リング塗工は蓄熱層を均一に塗布できるため、好ましく用いることが出来る。
【0063】
図3にリング塗工装置の例を示す。架台71の上に垂直にコラム72が取り付けられ、さらに架台71とコラム72の上部に精密ボールネジ73が垂直に取り付けられている。また、精密ボールネジ73と平行に2本のリニアガイド84がコラム72に取り付けている。LMガイド74はリニアガイド84及び精密ボールネジ73と連結し、サーボモータ75よりプーリ76を介して回転運動が伝達され昇降できるようになっている。コラム72には、円筒状の芯体85の外周面に塗布液を吐出するリング形状の塗工ヘッド78が取り付けられている。さらにLMガイド74上にブラケット7が取り付けられ、このブラケット77には芯体85を保持し固定するワーク下保持具79が垂直に取り付けられ、また逆側の芯体85を保持するワーク上保持具80の中心軸がブラケット77の上部に取り付けられ、ワーク上保持具はワーク下保持具79に対向して同芯になるように配置して芯体85を保持している。
【0064】
リング形状の塗工ヘッド78の中心軸は、ワーク下保持具79とワーク上保持具80の移動方向と平行となるように支持されている。また、ワーク下保持具79及びワーク上保持具80が昇降移動時において、塗工ヘッド78の内側に開口した環状スリットになっている吐出口の中心軸と、ワーク下保持具79及びワーク上保持具80の中心軸が同芯になるように調節してある。このような構成により塗工ヘッド78の環状スリットになっている吐出口の中心軸を芯体85の中心軸に同芯に合わせることができ、リング形状の塗工ヘッドの内周面と芯体85の外周面との間に均一な隙間が形成される。
【0065】
また、塗布液の供給口81は、塗布液搬送用の配管82を介して材料供給弁83に接続されている。材料供給弁83は、その手前に混合ミキサー、材料供給ポンプ、材料定量吐出装置、材料タンク等を備え、定量(単位時間当たりの量が一定)の塗布液を吐出可能なものとしている。
【0066】
芯体の外周上に形成された未加硫の液状ゴムを半硬化する工程と、半硬化した液状ゴム及び塗布積層後の樹脂液の硬化接着工程では、周方向の温度を一定に保つためにゴムローラを回転させながら加熱する方法を用いることが好ましい。熱源としては、ゴムローラに非接触で加熱できる遠赤外セラミックヒータ、近赤外線ヒータ、ランプ加熱ヒータ、UVヒータ、マイクロヒータ等が望ましい。
【0067】
これらの熱源は、ゴムローラの両端部から中央部に向かって連続的に加熱温度を変化させるために、ゴムローラの長手方向に一定間隔で複数配置される。熱源の数はゴムローラの長手方向における加熱温度の変化パターンに合わせて適宜に決定されることになるが、その数が多いほど、ゴムローラの長手方向における温度変化を微妙にかつ正確に制御することが可能となる。
【0068】
蓄熱層は、少なくともアルミニウム元素および/または亜鉛元素を含有する粉末状の熱伝導フィラーを含有する。本発明の要件を満たす限りは、アルミニウム元素および/または亜鉛元素の熱伝導フィラー以外にも、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、チッ化アルミ、チッ化亜鉛、金属アルミ、金属亜鉛、アルミ含有合金、亜鉛含有合金等の粉末状の熱伝導フィラーを含んでいても良い。
【0069】
本発明において、像加熱部材の表面のRzが2.0μm以上20.0μm以下、であることが好ましい。より好ましくはRzが5.0μm以上15.0μm以下である。Rzが2.0μm以上20.0μm以下であると像加熱部材の表面の比表面積が大きくなり、外側からの加熱の際に効率的に像加熱部材に蓄熱することができる。また、適度に凹凸が存在しているため、優れた熱伝導性を保持しつつ、離型性を向上することができる。
【0070】
像加熱部材の表面のRzが2.0μm未満であると、トナーと像加熱装置の接触面積が大きくなるために、低温オフセットが悪くなる傾向となるため好ましくない。一方、像加熱部材の表面のRzが20.0μmより大きくなると、像加熱部材の表面の凹凸が大きくなりすぎるため、トナーに均一に熱が加わりにくくなり、トナー同士の融着が起こり難く、低温定着性が劣るものとなる。
【0071】
Rzの制御の方法として、表面を機械的に研磨する方法を挙げることができる。粗面化方法としては、研磨粒子や、研磨粒子をテープ及び紙等に接着させそれを押し当てることで研磨する等の公知の研磨方法を使用することができる。また、研磨粒子を表面にぶつけるサンドブラスト法なども用いることができる。中でも、研磨ペーパーを用いて研磨するとRzの制御が容易であり、好ましく用いることが出来る。
【0072】
本発明の像加熱部材は、ヒータから熱量を受け取ったあと速やかに記録材へ熱付与できる構成であると良い。したがって、定着ローラ30は小径であることが望ましく、外径5mm以上20mm以下の範囲が好ましい。
【0073】
本発明において、磁性トナーは結着樹脂100質量部に対して、架橋剤を0.2質量部以上1.0質量部以下含有することが好ましい。この場合、適度な結着樹脂の架橋が得られやすく、低温定着性を損なわず、長期耐久時の画像濃度安定性にも優れる。
【0074】
ここで、架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が単独もしくは混合物として用いられる。
【0075】
本発明において、トナーの平均円形度が0.960以上であることが好ましい。球形のトナーは紙等のメディア上でも密に詰まって存在すると考えられる。定着工程においてトナーは紙へのアンカーリングの他に、他のトナー粒子との融着も重要な要素であり、密に詰まって存在する球形トナーであることの点も有利に働き、前述のトナーの体積膨張との相乗効果により定着性が非常に良好となるものと考えている。また、トナーの円形度分布において、モード円形度が0.98以上であることが好ましい。モード円形度が0.98以上であるということは、トナー粒子の多くが真球に近い形状を有することを意味しており、上記作用が一層顕著となり好ましい。
【0076】
トナーが含有する結着樹脂に相溶可能な離型剤の1種の融点をTm1[℃]、結着樹脂に非相溶の離型剤の1種の融点をTm2[℃]とした時、Tm1が50℃以上かつTm1≦Tm2+10であることもまた好ましい。より好ましくはTm1≦Tm2である。この条件範囲であると、定着時に相溶可能な離型剤が先にトナー中で溶けるため、相溶する離型剤を非相溶の離型剤が内部からトナー表面へと、より押し出すこととなり、相溶する離型剤の染み出しを促進し、また液芯構造のような状態となることでトナーは速やかに変形し、良好な低温定着性が得られるようになると考えられる。
【0077】
なお、Tm1とTm2は示差走査熱量計(DSC)測定における相溶する離型剤、及び非相溶の離型剤のそれぞれのピークトップ温度であり、各吸熱ピークのピークトップ温度の測定は、「ATSM D 3417−99」に準じて行う。
【0078】
本発明のトナーは、Tm1≦Tm2+10の関係を満たさない離型剤(その他の離型剤)をさらに含有することもできる。より高融点の離型剤は、トナーの高温オフセットを改良することができる。
【0079】
本発明のトナーにおける離型剤の含有量は、結着樹脂に相溶可能な離型剤が結着樹脂100質量部に対して2質量部以上30質量部以下、結着樹脂に非相溶な離型剤が結着樹脂100質量部に対して2質量部以上30質量部以下であることが、更に低温定着性に優れる他、定着ローラー汚染の発生も起こり難く好ましい。
【0080】
本発明のトナーに含まれる離型剤の具体例には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス及びその誘導体;モンタンワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体;カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス及びその誘導体;さらには、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、あるいはその化合物;酸アミドワックス;エステルワックス;ケトン;硬化ヒマシ油及びその誘導体;植物系ワックス;動物性ワックスなどが含まれる。
【0081】
誘導体には、酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が含まれる。
【0082】
これらの離型剤の中から、結着樹脂に相溶可能な離型剤1種以上と、非相溶な離型剤1種以上が選択される。
【0083】
また、本発明のトナーはTm1≦Tm2+10の関係を満たす離型剤を少なくても2種類含有していればよく、この他に結着樹脂の可塑性向上のためにより低融点の離型剤や、高温オフセット改良のためにより高融点の離型剤を併用することが可能であり、併用する離型剤の種類は1種類でも、複数種併用してもよい。
【0084】
なお、本発明における非相溶な離型剤とは、スチレン−アクリル樹脂への溶解度が3%未満、かつスチレンモノマーへの溶解度が5%未満である離型剤を指す。
【0085】
本発明において、結着樹脂に非相溶な離型剤としては、結晶性ポリエステルを用いることが好ましい。結晶性ポリエステルは、結晶性が高いことから結着樹脂に非常に相溶し難く、前述の体積膨張の効果が得られやすい。また、結晶性ポリエステルは示差走査熱量計(DSC)測定において鋭い融点ピークを有しており、定着時の熱で瞬時にトナー中で液芯構造を取るため、より離型剤の押し出し効果が強く得られる。
【0086】
本発明のトナーに含まれる結晶性ポリエステルは、特に限定されないが、「直鎖のジカルボン酸と直鎖の脂肪族系ジアルコールとの重縮合物」であることが好ましく、直鎖のジカルボン酸と直鎖の脂肪族系ジアルコール由来のポリエステル構造単位であることが好ましい。
【0087】
本発明における結晶性ポリエステルの末端は、モノカルボン酸などによりキャップされていてもよい。また、主たる構造単位が直鎖のジカルボン酸と直鎖脂肪族系ジアルコール由来のポリエステル構造単位であれば、多価カルボン酸由来のポリエステル構造単位を含んでいてもよい。多価カルボン酸由来のポリエステル構造単位は、ポリエステルの酸価を高めることができる。
【0088】
本発明における結晶性ポリエステルは、その単量体成分(アルコール成分およびカルボン酸成分)を適切に選択し、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。
【0089】
例えば、ジカルボン酸成分とジアルコ−ル成分をエステル化反応、またはエステル交換反応せしめた後、減圧下または窒素ガス雰囲気下において、常法に従って重縮合反応させて、結晶性ポリエステルを得る。
【0090】
エステル化反応またはエステル交換反応は、必要に応じて通常のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いて行われる。エステル化触媒またはエステル交換触媒の例には、硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどが含まれる。
【0091】
また重縮合反応は、通常の重縮合触媒を用いて行われうる。重縮合触媒の例には、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなどを公知のものが含まれる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、必要に応じて任意に選択すればよい。
【0092】
前記のとおり、本発明における結晶性ポリエステルは、アルコール単量体とカルボン酸単量体との重縮合反応により製造され得る。
【0093】
重縮合されるアルコール単量体の主成分は、直鎖の脂肪族系ジアルコール単量体であることが好ましい。
【0094】
直鎖の脂肪族系ジアルコール単量体の例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタジエングリコールなどが含まれる。
【0095】
重縮合されるアルコール単量体の主成分は、前記直鎖の脂肪族系ジアルコール単量体であること好ましいが、さらにポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の分岐鎖のジアルコール;1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価のアルコール;などを含んでいてもよい。
【0096】
また、本発明における結晶性ポリエステルを得るために重縮合されるカルボン酸単量体の主成分は直鎖のジカルボン酸であることが好ましい。
【0097】
直鎖のジカルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ならびにこれらの酸の無水物または、低級アルキルエステルなどが挙げられる。
【0098】
重縮合されるカルボン酸単量体の主成分は、前記直鎖のジカルボン酸を主成分とすることが好ましいが、非直鎖状のジカルボン酸を含んでいてもよい。
【0099】
非直鎖状のジカルボン酸の例には、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ならびにこれらの酸の無水物または、低級アルキルエステルなどが挙げられる。
【0100】
重縮合されるカルボン酸単量体の主成分は、前記直鎖のジカルボン酸を主成分とすることが好ましいが、さらに3価以上の多価カルボン酸を含んでいてもよい。3価以上の多価カルボン酸の例には、トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、及びこれらの酸無水物または低級アルキルエステル等の誘導体等が含まれる。
【0101】
本発明において、結晶性ポリエステルの酸価が5mgKOH/g以下とすることが好ましい。5mgKOH/g以下であれば、本発明に好適なトナーの製造方法である懸濁重合法(後述)でトナーを製造する場合、結晶性ポリエステルがトナー内部へと導かれやすく、先述したトナーの押し出し効果により低温定着性により優れ好ましい。また、酸価が低く、吸湿しにくいため、長期使用時の現像安定性も得られやすく好ましい。
【0102】
本発明において、示差走査熱量計(DSC)測定において、結晶性ポリエステルは60〜90℃に吸熱ピークを有することが好ましい。この範囲であれば、低温定着性を損なうことなく、長期使用時の濃度低下も生じない。また、本発明において好適なトナーの製造方法である懸濁重合法(後述)で製造する際も、重合性単量体への溶解性に優れ、トナー中への分散性を制御しやすく好ましい。
【0103】
また、結晶性ポリエステルの数平均分子量は2000以上7000以下であることが好ましい。この範囲であれば、トナー製造時に結晶性ポリエステルが結着樹脂への相溶が生じ難く、トナー中で結晶性を保ちやすい。それにより、先述の押し出し効果を引き出しやすくなり、低温定着性に優れ好ましい。
【0104】
本発明において結晶性ポリエステルとは、示差走査熱量計(DSC)測定において昇温時に吸熱ピークがあり、降温時に発熱ピークを有するポリエステルを指し、その測定は「ASTM D 3417−99」測定法に準じて行う。
【0105】
本発明では荷電制御剤を用いても良く、荷電制御剤としては特に制限されること無く公知のものを用いることができる。この中でも特に帯電スピードが速く、且つ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
【0106】
また、トナーを直接重合法を用いて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。具体的には、ネガ系荷電制御剤としてサリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体の如き有機金属化合物;ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等が挙げられる。ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。
【0107】
荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法と、懸濁重合を行う場合には、水中での油液滴の形成時、あるいは水中で油液滴を形成し、重合を行っている最中に添加する方法が一般的であり、または、重合後に荷電制御剤を溶解、懸濁させた重合性単量体を加える事によりシード重合を行うことも可能である。また、荷電制御剤として有機金属化合物を用いる場合は、トナー粒子にこれら化合物を外部添加し、シェアをかけ混合・攪拌することにより導入することも可能である。
【0108】
これらの荷電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、内部添加する場合は、結着樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下使用することが好ましい。しかしながら、本発明の画像形成方法に関わる現像剤は、荷電制御剤の添加は必須ではなく、現像剤の層圧規制部材や現像剤担持体との摩擦帯電を積極的に利用することでトナーに充分な帯電性を付与できれば、トナー中に必ずしも荷電制御剤を含む必要はない。
【0109】
本発明の磁性体は、結着樹脂100質量部に対して、20質量部以上150質量部以下を用いることが好ましい。この範囲であれば、着色力、カブリの抑制にも優れ、低温定着性を損なうことなく用いることが出来る。
【0110】
なお、トナー中の磁性体の含有量の測定は、パーキンエルマー社製熱分析装置、TGA7を用いて測定することができる。測定方法は、窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃まで、トナーを加熱し、100℃から750℃まで間の減量質量部を結着樹脂量とし、残存重量を近似的に磁性体量とする。
【0111】
本発明において重合法を用いてトナーを製造する場合、磁性体の水相移行性に注意を払う必要があり、好ましくは、表面改質、例えば、重合阻害のない物質による疎水化処理を施しておいたほうが良い。
【0112】
本発明の磁粉体は、四三酸化鉄、γ−酸化鉄の如き酸化鉄を主成分とするものであり、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素などの元素を含んでもよい。これら磁性体は、窒素吸着法によるBET比表面積が2m2/g以上30m2/g以下であることが好ましく、特に3m2/g以上28m2/g以下であることがより好ましい。また、モース硬度が5以上7以下のものが好ましい。磁性体の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが画像濃度を高める上で好ましい。
【0113】
次に磁性体の平均粒径であるが、平均粒径は0.10μm以上0.40μm以下であることが好ましい。一般に磁性体の粒径は小さい方が着色力は上がるものの磁性体が凝集しやすくなり、トナー中での磁性体の均一分散性が劣るものとなり好ましくない。また、0.10μm以下では磁性体自身が赤味を帯びた黒となるために特にハーフトーン画像において赤味の目立つ画像となり、高品位な画像とは言えず好ましくない。
【0114】
一方、平均粒径が0.40μm以上ではトナーの着色力が不足すると共に、本発明の好適なトナーの製造方法である懸濁重合法(後述)においては均一分散が難しくなり好ましくない。
【0115】
なお、磁性体の体積平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を、ミクロトームにより薄片上のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万倍ないしは4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性体粒子径を測定する。そして、磁性体の投影面積に等しい円の相当径をもとに、体積平均粒径の算出を行う。また、画像解析装置により粒径を測定することも可能である。
【0116】
本発明のトナーに用いられる磁性体は、例えば下記の方法で製造することが出来る。
【0117】
第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量または当量以上の水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応をおこない、磁性酸化鉄粉体の芯となる種晶をまず生成する。
【0118】
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを5以上10以下に維持しながら空気を吹込みながら水酸化第一鉄の反応をすすめ種晶を芯にして磁性酸化鉄粉体を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、攪拌条件を選択することにより、磁性体の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応がすすむにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは5未満にしない方が好ましい。このようにして得られた磁性体は定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより磁性体を得ることが出来る。
【0119】
また、本発明において重合法にてトナーを製造する場合、磁性体表面を疎水化処理することが非常に好ましい。乾式にて表面処理をする場合、洗浄・ろ過・乾燥した磁性体にカップリング剤処理を行う。湿式にて表面処理を行う場合、酸化反応終了後、乾燥させたもの再分散させる、あるいは、酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄体を乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させ、再分散液のpHを酸性領域にし、十分攪拌しながらシランカップリング剤を添加し、加水分解後温度を上げる、あるいは、アルカリ域にpHをすることでカップリング処理を行うこともできる。この中でも、均一な表面処理を行うと言う観点から、酸化反応終了後、ろ過、洗浄後に乾燥させずそのままリスラリーし、表面処理を行うことが好ましい。
【0120】
磁性体の表面処理として湿式、すなわち水系媒体中でカップリング剤で処理するには、まず水系媒体中で磁性体を一次粒径となるよう十分に分散させ、沈降、凝集しないように攪拌羽根等で撹拌する。次いで任意量のカップリグ剤を投入しカップリング剤を加水分解しながら表面処理するが、この時も攪拌を行いつつピンミル、ラインミルの如き装置を使いながら凝集しないように十分に分散させつつ表面処理をすることがより好ましい。
【0121】
ここで、水系媒体とは、水を主要成分としている媒体である。具体的には、水そのもの、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調整剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したものが挙げられる。界面活性剤としては、ポリビニルアルコールの如きノンイオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、水に対して0.1質量部以上5.0質量部以下添加するのが良い。pH調整剤としては、塩酸等無機酸が挙げられる。有機溶剤としてはアルコール類等が挙げられる。
【0122】
本発明に係わる磁性体の表面処理において使用できるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、一般式(ア)で示されるものである。
【0123】
RmSiYn (ア)
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基の如き炭化水素基を示し、nは1〜3の整数を示す。ただし、m+n=4である。]
一般式(ア)で示されるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0124】
この中で、高い疎水性を得るという観点では下記一般式(イ)で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を用いることが好ましい。
p2p+1−Si−(OCq2q+13 (イ)
[式中、pは2以上20以下の整数を示し、qは1以上3以下の整数を示す。]
【0125】
上記式におけるpが2より小さいと、疎水性を十分に付与することが困難であり、また、pが20より大きいと疎水性は十分になるが、磁性体同士の合一が多くなり好ましくない。
【0126】
さらに、qが3より大きいとシランカップリング剤の反応性が低下して疎水化が十分に行われにくくなるため、式中のpが2以上20以下の整数(より好ましくは、1以上15以下の整数)を示し、qが1以上3以下の整数(より好ましくは、1又は2の整数)を示すアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用するのが良い。
【0127】
上記シランカップリング剤を用いる場合、単独で処理する、あるいは複数の種類を併用して処理することが可能であり、併用する場合、それぞれのカップリング剤を個別に処理する、あるいは同時に処理することが出来る。
【0128】
用いるカップリング剤の総処理量は磁性体100質量部に対して0.9質量部以上3.0質量部であることが好ましく、磁性体の表面積、カップリング剤の反応性等に応じて処理剤の量を調整することが重要である。
【0129】
本発明では、磁性体以外に他の着色剤を併用しても良い。併用し得る着色剤としては、磁性あるいは非磁性無機化合物、公知の染料及び顔料が挙げられる。具体的には、例えば、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属粒子、またはこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素などを加えた合金、ヘマタイトなどの粒子、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニン等が挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いることが好ましい。
【0130】
本発明のトナーは、公知のいずれの方法によっても製造することが可能である。まず、粉砕法により製造する場合は、例えば、結着樹脂、離型剤、磁性体等のトナーとして必要な成分及び、荷電制御剤、その他の添加剤等をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合器により十分混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練してトナー材料を分散又は溶解させ、冷却固化、粉砕後、分級、必要に応じて表面処理を行ってトナー粒子を得ることが出来る。分級及び表面処理の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
【0131】
粉砕工程は、機械衝撃式、ジェット式等の公知の粉砕装置を用いた方法により行うことができる。本発明で好ましく用いられるトナーの平均円形度0.960を有するトナーを得るためには、さらに熱をかけて粉砕したり、あるいは補助的に機械的衝撃を加える処理をすることなどで達成可能である。
【0132】
機械的衝撃力を加える手段としては、例えば川崎重工社製のクリプトロンシステムやターボ工業社製のターボミル等の機械衝撃式粉砕機を用いる方法、また、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムや奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステム等の装置のように、高速回転する羽根によりトナーをケーシングの内側に遠心力により押しつけ、圧縮力、摩擦力等の力によりトナーに機械的衝撃力を加える方法が挙げられる。
【0133】
機械的衝撃法を用いる場合においては、処理温度をトナーのガラス転移点Tg付近の温度(Tg±10℃)を加える熱機械的衝撃が、凝集防止、生産性の観点から好ましい。
【0134】
本発明に関わるトナーを粉砕法により製造する場合の結着樹脂としては、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂を用いることが出来、これらは単独或いは複数種併用することが出来る。この中でも特にスチレン系共重合体及びポリエステル樹脂が現像特性、定着性等の点で好ましい。
【0135】
本発明のトナーは、上述のように粉砕法によって製造することも可能であるが、この粉砕法で得られるトナー粒子は一般に不定形のものである。本発明に好ましく用いられる平均円形度0.960以上という物性を得る為には、上述のような機械的・熱的あるいは何らかの特殊な処理を行うことが必要となり、生産性が劣るものとなる。そこで、本発明のトナーは分散重合法、会合凝集法、懸濁重合法等、湿式媒体中でトナーを製造することが好ましく、特に懸濁重合法は本発明の好適な物性を満たしやすく非常に好ましい。
【0136】
懸濁重合法とは、重合性単量体および着色剤(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解または分散させて重合性単量体組成物とした後、この重合性単量体組成物を分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な撹拌器を用いて分散し同時に重合反応を行なわせ、所望の粒径を有するトナーを得るものである。この懸濁重合法で得られるトナー(以後、重合トナー)は、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、平均円形度が0.960以上というトナーが得られやすい。さらにこういったトナーは帯電量の分布も比較的均一となるために画質の向上が期待できる。
【0137】
次に本発明のトナーの製造に好適である懸濁重合法による製造方法を説明する。本発明に係わる重合トナーは、トナー組成物、即ち結着樹脂となる重合性単量体中に、離型剤、磁性体、場合によって、可塑剤、荷電制御剤、架橋剤、着色剤等トナーとして必要な成分及びその他の添加剤、例えば、非晶質ポリエステルなどの高分子重合体、分散剤等を適宜加えて、分散機等に依って均一に溶解または分散させた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁して製造できる。本発明の重合トナーの製造において、重合性単量体組成物を構成する重合性単量体としては以下の物が挙げられる。
【0138】
重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の単量体が挙げられる。これらの単量体は単独、または混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレンまたはスチレン誘導体を単独で、あるいは他の単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
【0139】
また、材料の分散性や定着性、あるいは画像特性の改良等を目的として上述以外の樹脂を単量体組成物中に添加しても良い。用いられる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テンペル樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが単独或いは混合して使用できる。これら樹脂の添加量としては、重合性単量体100質量部に対し1質量部以上20質量部以下が好ましい。1質量部未満では添加効果が小さく20質量部超で添加すると重合トナーの種々の物性設計が難しくなる。
【0140】
本発明のトナーでは、重合開始剤として従来公知のアゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤などを用いることができる。アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が例示される。過酸化物系重合開始剤としては、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ−t−プチルパーオキシブタンなどのパーオキシケタール、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド、その他としてt−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート等が挙げられる。必要に応じてこれらの開始剤を2種以上用いることもできる。
【0141】
本発明のトナーを重合法で製造する方法では、一般に上述の重合性単量体、離型剤、結晶性ポリエステルを少なくとも含む組成物を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等の分散機に依って均一に溶解または分散させた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになりやすい。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることも出来る。
【0142】
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行なえば良い。
【0143】
本発明のトナーを重合法で製造する場合には、分散安定剤として公知の界面活性剤や有機分散剤・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いので、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛等の燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナ等の無機酸化物が挙げられる。
【0144】
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2質量部以上20質量部以下を単独で又は2種類以上組み合わせて使用することが好ましい。さらに、0.001質量部以上0.1質量部以下の界面活性剤を併用してもよい。
【0145】
これらの無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用してもよいが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて前記無機分散剤粒子を生成させることができる。例えば、燐酸カルシウムの場合、高速攪拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウムが副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合に依る超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。無機分散剤は、重合終了後酸あるいは、アルカリで溶解して、ほぼ完全に取り除くことができる。
【0146】
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。
【0147】
前記重合工程においては、重合温度は40℃以上、一般には50℃以上90℃以下の温度に設定して重合を行なう。この温度範囲で重合を行なうと、内部に封じられるべき離型剤が、相分離により析出して内包化がより完全となる。また、重合性単量体の転化率が50%以上100%以下の時点で反応温度を、結着樹脂に非相溶な離型剤の融点以上にまで上げることが好ましい。これは、懸濁重合法においてトナーを製造した場合、非相溶の離型剤はトナー粒子内部でドメインを形成したり、微分散した状態で存在するものと考えられる。そのため、非相溶の離型剤の融点以上に温度を上げることで、トナー中に微分散している離型剤がきちんとしたドメインを形成することにより、これまで述べてきた体積膨張効果が発揮され、良好な低温定着性を得ることが可能となる。これは、結晶性ポリエステルを用いた場合も同様である。結晶性ポリエステルに関しては、重合性単量体重合時にきちんとした結晶を形成しきれなかった結晶性ポリエステルも融点以上に昇温することにより結晶化度を上げることができ、長期使用においてもトナー劣化を生じ難くなる。
【0148】
重合トナー粒子は重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、必要により無機微粉体を混合し表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。また、製造工程に分級工程を入れ、粗粉や微粉をカットすることも可能である。
【0149】
さらに、本発明においてトナーは、流動化剤として個数平均1次粒径4nm以上80nm以下、より好ましくは6nm以上40nm以下の無機微粉体が添加されることも好ましい形態である。無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のために添加されるが、無機微粉体を疎水化処理するなどの処理によってトナーの帯電量の調整、環境安定性の向上等の機能を付与することも好ましい形態である。
【0150】
無機微粉体の個数平均1次粒径が80nmよりも大きい場合、或いは80nm以下の無機微粉体が添加されていない場合には良好なトナーの流動性が得られない。このため、トナー粒子への帯電付与が不均一になり易く、カブリの増大、画像濃度の低下、消費量の増大等の問題を避けられない。一方、無機微粉体の個数平均1次粒径が4nmよりも小さい場合には、無機微粉体の凝集性が強まり、1次粒子ではなく解砕処理によっても解れ難い強固な凝集性を持つ粒度分布の広い凝集体として挙動し易い。このため、凝集体の現像、像担持体或いは磁性トナー担持体等を傷つけるなどによる画像欠陥を生じ易くなり好ましくない。
【0151】
本発明において、無機微粉体の個数平均1次粒径の測定法は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真で、更に走査型電子顕微鏡に付属させたXMA等の元素分析手段によって無機微粉体の含有する元素でマッピングされたトナーの写真を対照しつつ、トナー表面に付着或いは遊離して存在している無機微粉体の1次粒子を100個以上測定し、個数基準の平均1次粒径、個数平均1次粒径を求めることで測定出来る。
【0152】
本発明で用いられる無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナなどが使用できる。ケイ酸微粉体としては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能であるが、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO32-等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。
【0153】
個数平均1次粒径が4nm以上80nm以下の無機微粉体の添加量は、トナー粒子に対して0.1質量部以上3.0質量部以下であることが好ましい。添加量が0.1質量部未満ではその効果が十分ではなく、3.0質量部超では定着性が悪くなる。
【0154】
また、無機微粉体の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
【0155】
本発明において無機微粉体は、疎水化処理された物であることが環境安定性が向上し好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナー粒子の帯電量が著しく低下し、帯電量が不均一になり易く、トナー飛散が起こり易くなる。
【0156】
疎水化処理に用いる処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物等の処理剤を単独で或いは併用して処理しても良い。
【0157】
その中でも、シリコーンオイルにより処理したものが好ましく、より好ましくは、無機微粉体をシラン化合物で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイルにより処理したものが高湿環境下でもトナー粒子の帯電量を高く維持し、トナー飛散を防止する上でよい。
【0158】
そのような無機微粉体の処理方法としては、例えば第一段反応として、シラン化合物でシリル化反応を行ないシラノール基を化学結合により消失させた後、第二段反応としてシリコーンオイルにより表面に疎水性の薄膜を形成することができる。
【0159】
上記シリコーンオイルは、25℃における粘度が10mm2/s以上200,000mm2/s以下のものが、さらには3,000mm2/s以上80,000mm2/s以下のものが好ましい。10mm2/s未満では、無機微粉体に安定性が無く、熱および機械的な応力により、画質が劣化する傾向がある。200,000mm2/sを超える場合は、均一な処理が困難になる傾向がある。
【0160】
使用されるシリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が特に好ましい。
【0161】
無機微粉体をシリコーンオイルで処理する方法としては、例えば、シラン化合物で処理された無機微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合してもよいし、無機微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法を用いてもよい。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散させた後、無機微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法でもよい。無機微粉体の凝集体の生成が比較的少ない点で噴霧機を用いる方法がより好ましい。
【0162】
シリコーンオイルの処理量は、無機微粉体100質量部に対し1質量部以上40質量部以下、好ましくは3質量部以上35質量部以下が良い。シリコーンオイルの量が少なすぎると良好な疎水性が得られず、多すぎるとカブリ発生等の不具合が生ずる傾向がある。
【0163】
本発明で用いられる無機微粉体は、トナーに良好な流動性を付与させる為に、窒素吸着によるBET法で測定した比表面積が20m2/g以上350m2/g以下の範囲内のものが好ましく、より好ましくは25m2/g以上300m2/g以下のものが更に良い。
【0164】
比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出する。
【0165】
本発明のトナーは、クリーニング性向上等の目的で、さらに一次粒径30nmを超える(好ましくは比表面積が50m2/g未満)、より好ましくは一次粒径50nm以上(好ましくは比表面積が30m2/g未満)の無機又は有機の球状に近い微粒子をさらに添加することも好ましい形態のひとつである。例えば球状シリカ粒子、球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子、球状樹脂粒子等が好ましく用いられる。
【0166】
本発明に用いられるトナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末、あるいは酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤、あるいは例えば酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末などの流動性付与剤、ケーキング防止剤、また、逆極性の有機微粒子、及び無機微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。これらの添加剤も表面を疎水化処理して用いることも可能である。
【0167】
次に、本発明の画像形成方法を実施するための画像形成装置について説明する。
【0168】
(1)画像形成装置例
図4は、本実施形態の画像形成装置を好適に示す一例たるレーザビームプリンタ(以下、プリンタと略称する)1の概略構成を示す模式的断面図である。
【0169】
このプリンタ1には、プリンタ本体の外部に設けられたホストコンピュータ等の画像情報提供装置(図示せず)から画像情報が入力する。そして、プリンタ1は、入力した画像情報に応じた画像をシート状の記録材(記録媒体)Pに形成して記録するという一連の画像形成プロセスを公知の電子写真方式に則り行う。
【0170】
プリンタ1は、潜像担持体としてのドラム状の回転自在な電子写真感光体(以下、感光体と略記する)2と、一次帯電機構8と、現像装置3と、を保持するプロセスカートリッジ4を備えている。また、画像情報提供装置から入力した画像情報に応じた露光処理工程により感光体2の外周面に前記画像情報に応じた静電潜像を形成するレーザスキャナユニット(以下、スキャナと略記する)5を備えている。また、記録材Pに画像を転写する処理を施すロール状の回転自在な転写体6と、画像転写処理済みの記録材Pに加熱及び加圧により定着処理を施す像加熱装置としての定着装置7を備えている。
【0171】
プロセスカートリッジ4はプリンタ本体に対して着脱自在に支持されている。感光体2の修理及び現像装置3への現像剤補給等のメンテナンスが必要であるときには、前記本体にて開閉自在に支持されているカバー9を開いたのち、プロセスカートリッジ4ごと交換することによりメンテナンスの迅速化及び簡易化等が図られている。
【0172】
一次帯電機構8は、スキャナ5による露光処理工程前において規定のバイアスを印加されることにより、回転している感光体2の外周面を規定電位分布に帯電せしめるようになっている。
【0173】
スキャナ5は、画像情報提供装置からの画像情報に応じたレーザLaを出力する。そして、そのレーザLaにより、プロセスカートリッジ本体に設けられた窓4aを通して、感光体2の帯電処理済みの外周面が走査及び露光される。これにより、前記画像情報に応じた静電潜像が感光体2の外周面に形成されようになっている。
【0174】
次に、プリンタ1における一連の画像形成プロセスに関して説明する。プリンタ本体に設けられたスタートボタン等(図示せず)が押されるなどにより、感光体2の回転駆動が開始される。感光体2は矢印K1の時計方向に規定の周速度にて回転駆動される。これと共に、規定のバイアスが印加されている一次帯電機構8により感光体2の外周面が規定の電位分布に帯電せしめられる。
【0175】
次に、画像情報提供装置からの画像情報に応じて感光体2の外周面の帯電処理済みの部位がスキャナ5により走査及び露光される。これにより、前記画像情報に応じた静電潜像が感光体2の前記部位に形成される。その静電潜像が現像装置3の現像剤により現像されてトナー画像として可視像化される。
【0176】
一方、所定のタイミングにて駆動された給紙ローラ12により給紙カセット11から記録材Pが給送される。給紙カセット11から給送された記録材Pはレジストローラ対12aにより所定の制御タイミングにて感光体2と転写体6との間に形成された転写ニップ部へと給送され、転写ニップ部を挟持搬送されていく。この挟持搬送過程において感光体2側の前記トナー画像が転写体6により記録材P側に順次に転写される。
【0177】
そして、転写処理済みの記録材Pは、定着装置7によりトナー画像の加熱定着処理が施されたのち、プリンタ本体にて回転自在に支持された定着排紙部10を経由してプリンタ排紙部13により機外へと排紙される。排紙された記録材Pは、プリンタ本体の上面に取り付けられたトレイ14上に積載される。以上により、一連の画像形成プロセスが終了することとなる。
【0178】
(2)定着装置7
図2は本実施形態を好適に示す一例たる外部加熱方式の像加熱装置である定着装置7の模式的断面図である。
【0179】
30は記録材上の画像をニップ部にて加熱する回転可能な加熱部材としての定着ローラ(定着用回転体)である。63は加圧部材としての回転可能な加圧ローラである。なお、加圧部材63は固定されたパッドであっても良い。
【0180】
定着ローラ30と加圧ローラ63は、上下にほぼ並行に配列され、且つ端部の加圧バネ(図示せず)により圧接されている。これにより、両者間に記録材搬送方向において所定幅の定着ニップ部(圧接ニップ部)Ntを形成させている。
【0181】
定着ローラ30は駆動手段(図示せず)によって矢印の時計方向に規定の周速度で回転駆動される。加圧ローラ63は定着ローラ30の回転に従動して回転する。なお、定着ローラ30と、加圧ローラ63を別途、回転駆動しても良い。
【0182】
21は定着ローラ30をその外側から加熱する加熱手段(加熱源)である。本実施例において、この加熱手段21は板状ヒータ(以下、ヒータと略記する)である。このヒータ21は、ヒータホルダ24に固定して保持させて、定着ローラ30上側に並行に配列してある。そして、ホルダ24を加圧機構(図示せず)により一定圧力で加圧し、ヒータ21が定着ローラ30の上面に所定の圧力で圧接するように調整している。ヒータ21は定着ローラ30に対して常に同じ部位で接触して、定着ローラ30との間に定着ローラ30の回転方向において所定幅の加熱ニップ部Nhを形成している。
【0183】
回転する定着ローラ30は、加熱ニップ部Nhにおいてヒータ21により外側から加熱されて、定着ニップ部Ntにて記録材P上の未定着トナー画像Tを定着するのに必要・十分な熱量が与えられる。
【0184】
記録材Pは前述したように画像形成部にてトナー画像Tが形成されたあと、定着装置7へ送られ、定着ローラ30と加圧ローラ63とで形成される定着ニップ部Ntへ導入されて挟持搬送される。記録材Pはこの定着ニップ部Ntを挟持搬送されていく過程において、定着ローラ30で加熱され、またニップ部圧を受けて、未定着トナー画像Tが記録材P面に永久固着画像として熱圧定着される。
【0185】
次に、本発明に係る各物性の測定方法に関して記載する。
【0186】
(1)定着ローラ表面のEPMA(電子線マイクロアナライザー)による元素量
本発明では、定着ローラの表面を電子線マイクロアナライザー(EPMA)により測定した際の検出される全元素量に対するAl及び/又はZn元素の存在割合を規定している。この時、Al元素やZn元素は熱伝導フィラーに由来するものである。EPMAは表面から数μmの深さまでに存在する元素を測定するものであり、全元素量に対するAlやZnの存在割合は表面から数μmまでの深さに存在する熱伝導フィラー量と対応する。したがって、AlやZnの存在割合が高い場合、表面部分により多く熱伝導フィラーが存在することを示す。
【0187】
<測定条件>
装置:電子線マイクロアナライザー EPMA−1610(島津製作所製)
加速電圧:15kV
照射電流:20nA
計測時間:500msec
ビーム径:10μm
【0188】
(2)熱伝導フィラー、蓄熱層、断熱弾性層の熱伝導率測定及び蓄熱層の単位面積あたりの熱容量
○蓄熱層の単位面積あたりの熱容量測定
本発明では、蓄熱層の単位面積あたりの熱容量を規定している。ここで、蓄熱層の表面積とは、離型層を全て剥離した際に現れる蓄熱層表面の面積を指す。したがって、「試験片の表面積」も上述のように剥離した際に現れる面の面積のみを表している。
【0189】
蓄熱層の単位面積あたりの熱容量は、以下の式で求められる。
【0190】
定着ローラの単位面積あたりの熱容量
=試験片の体積×体積熱容量÷試験片の表面積
または、
=体積熱容量×比熱容量×蓄熱層33厚み 式(Z)
【0191】
したがって、蓄熱層の単位面積あたりの熱容量を算出するには、まず比熱容量及び体積熱容量を測定する必要がある。比熱容量及び体積熱容量は以下のように求めた。
【0192】
まず、定着ローラ30の蓄熱層33より、縦5mm、横5mmの試験片を切り出し、上記試験片を、乾式自動密度計(型番AccuPyc1330 株式会社 島津製作所)にて測定し、質量密度を求める。
【0193】
次に、上記試験片を、示差走査熱量計(型番DSC8240、株式会社リガク製)にて測定し、比熱容量を求める。
【0194】
体積熱容量は、下式から求められるため、上記により得られた値から計算される。
体積熱容量=質量密度×比熱容量
【0195】
こうして得られた比熱容量と体積熱容量を式(Z)に代入することで蓄熱層の単位面積あたりの熱容量を算出した。
【0196】
○熱伝導フィラー/蓄熱層/断熱弾性層の熱伝導率の測定
熱伝導率はフーリエ変換型温度熱拡散率測定装置(型番FTC−1、アルバック理工株式会社製)にて熱拡散率を測定する。蓄熱層や断熱弾性層を測定する場合、厚み方向の測定を行う。そして、下記の式から、熱伝導フィラーの熱伝導率、及び蓄熱層又は断熱弾性層の厚み方向の熱伝導率を求める。
熱伝導率=熱拡散率×質量密度×比熱容量
【0197】
(3)像加熱部材表面のRz測定方法
サーフコーダーSE−3300(小坂研究所製)にて、測定距離4mmで測定した。測定箇所は、像加熱部材のゴム端部から30〜40mmの位置の両端部及び、ゴム端部から110〜120mmの位置の中央部とした。それぞれの箇所で軸方向と周方向について測定し、6点の測定値の平均値をRzとした。
【0198】
(4)トナーの軟化温度Tn[℃]及び流出開始温度Tr[℃]とその時のフランジャー位置Pn[mm]とPr[mm]
本発明のトナーの軟化温度Tn及び流出開始温度TrはフローテスターCFT−500D型(島津製作所製)にて測定した。トナーは60メッシュパス品を約1.5g秤量し、これを成形器を使用し、10MPaの加重で1分間加圧する。
【0199】
このサンプルに5kgfの荷重をかけ、昇温温度4.0℃/min、ダイ直径1.0mm、ダイ長さ1.0mmとして昇温法にてフローテスターのプランジャー降下量を測定し、トナーの軟化温度Tn[℃]及び流出開始温度Tr[℃]及び、プランジャー降下量をmm単位で計測し、プランジャー位置Pn[mm]とPr[mm]を求める。
【0200】
(5)平均円形度
トナーの平均円形度及び、モード円形度は、フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(シスメックス社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出する。
先ず、円形度を次式より算出する。
円形度=(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0201】
ここで、「粒子投影面積」とは二値化された粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは前記粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さである。測定は、512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子像の周囲長を用いる。
【0202】
本発明における円形度は粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、粒子が完全な球形の場合に1.00を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
【0203】
また、円形度頻度分布の平均値を意味する平均円形度Cは、粒度分布の分割点iでの円形度をci、測定粒子数をmとすると、下記式(1)から算出される。
【0204】
【数1】

【0205】
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約10mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.1ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。超音波分散器としては、発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150型」(日科機バイオス社製)を用いる。尚、超音波分散器の水槽内には、所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。その際、前記分散液の温度が40℃以上とならない様に適宜冷却する。また、円形度のバラツキを抑えるため、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100の機内温度が26℃以上27℃以下になるよう装置の設置環境を23℃±0.5℃にコントロールする。また、一定時間おきに、好ましくは2時間おきに2μmの標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。
【0206】
トナー粒子の円形度測定には、前記フロー式粒子像測定装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、測定時のトナー粒子濃度が約5000個/μlとなる様に前記分散液濃度を再調整して計測する。計測後、このデータを用いて、円相当径2.00μm以上40.02未満の範囲のトナーの平均円形度を求める。尚、円相当径は、以下のようにして算出される値である。
円相当径=(粒子投影面積/π)1/2×2
【0207】
本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、従来トナーの形状を観察するために用いられていた「FPIA−1000」と比較して、シースフローの薄層化(7μm→4μm)及び処理粒子画像の倍率が向上した装置である。また、取り込んだ画像の処理解像度を向上(256×256→512×512)させた装置であり、トナーの形状測定の精度が向上した装置である。
【0208】
(6)トナーの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)
トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
【0209】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0210】
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なった。
【0211】
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
【0212】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0213】
具体的な測定法は以下の通りである。
(A)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(B)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(C)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(D)前記(B)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(E)前記(D)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(F)サンプルスタンド内に設置した前記(A)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(E)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(G)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
【0214】
(7)相溶可能な離型剤、及び非相溶な離型剤の融点[℃]
離型剤、結晶性ポリエステルの融点、離型剤、結晶性ポリエステルの吸熱ピークトップの測定はASTM D 3417−99に準じて行う。また、トナー及び非晶質ポリエステルのガラス転移温度(Tg)の測定は、ASTM D 3418−99に準じて行い、例えばパーキンエルマー社製DSC−7、TAインストルメント社製DSC2920、TAインストルメント社製Q1000を用いることが出来る。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし測定する。
なお、本発明のトナーにおいてはモジュレーティッドモードを用い、以下の条件にて測定し、相溶可能な離型剤及び非相溶な離型剤の融点を求めた。
【0215】
(モジュレーティッドモード測定条件)
・20℃で1分間平衡を保つ。
・1.5℃/分のモジュレーションをかけ、180℃まで2℃/分で昇温。
・180℃で10分間平衡に保つ。
・1.5℃/分のモジュレーションをかけ、2℃/分で20℃まで降温。
【0216】
(8)結晶性ポリエステルの酸価
<酸価>
酸価は以下のように求められる。基本操作は、JIS−K0070に準ずる。試料1g中に含有されている遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を酸価といい、以下に示す方法によって試験を行う。
【0217】
(A)試薬
(a)溶剤は、エチルエーテル−エチルアルコール混液(1+1または2+1)またはベンゼン−エチルアルコール混液(1+1または2+1)を用い、これらの溶液は使用直前にフェノールフタレインを指示薬として0.1mol/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液で中和しておく。
(b)フェノールフタレイン溶液:フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95vol%)100mlに溶かす。
(c)0.1mol/リットル水酸化カリウム−エチルアルコール溶液:水酸化カリウム7.0gをできるだけ少量の水に溶かしエチルアルコール(95vol%)を加えて1リットルとし、2〜3日放置後ろ過する。標定はJIS K8006(試薬の含量試験中滴定に関する基本事項)に準じて行う。
【0218】
(B)操作:試料(トナーまたは結着樹脂)1〜20gを正しくはかりとり、これに溶剤100mlと、指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴を加え、試料が完全に溶けるまで十分に振る。固体試料の場合は水浴上で加温して溶かす。冷却後これを0.1mol/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いたときを中和の終点とする。
【0219】
(C)計算式 次式によって酸価を算出する。
【0220】
【数2】

【0221】
ここで、
A:酸価(mgKOH/g)
B:0.1mol/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:0.1mol/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g)
【0222】
(9)結晶性ポリエステルの数平均分子量
結晶性ポリエステル0.03gをo−ジクロロベンゼン10mlに分散し溶解後、135℃において24時間振投機で振投を行い、0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。
【0223】
[分析条件]
分離カラム:Shodex (TSK GMHHR−H HT20)×2
カラム温度:135℃
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
移動相流速:1.0ml/min.
試料濃度 :約0.3%
注入量 :300μl
検出器 :示差屈折率検出器 Shodex RI−71
【0224】
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500)により作成した分子量校正曲線を使用する。
【0225】
(10)離型剤のスチレン−アクリル樹脂への溶解度
離型剤のスチレン−アクリル樹脂への溶解度の測定は以下のように行なう。
・スチレン−アクリル樹脂(スチレン74質量部とブチルアクリレート26質量部を重合 して得た樹脂。ガラス転移温度(Tg)=54.0℃、数平均分子量(Mn)=200 00、重量平均分子量(Mw)=200000): 0.10g
・離型剤: 0.01g
上記をメノウ乳鉢にて混合し、試料1とする。
【0226】
測定装置としては、示差走査熱量分析装置である「Q1000」(TA Instruments社製)や「DSC2920」(TA Instruments社製)を用いることができ、ASTM D3418−82に準じて測定する。
【0227】
例えば「Q1000」を用いて、試料1を約10mg精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いて、以下のシーケンスで吸熱量の測定を行う。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
【0228】
そして、2サイクル目の吸熱ピーク熱量をΔH1、4サイクル目の吸熱ピーク熱量をΔH2とし、下記式により溶解度を求める。なお、吸熱ピーク熱量は、昇温過程での温度30〜120℃の範囲におけるDSC曲線での最大の吸熱ピークの熱量とする。
溶解度=(1−ΔH2/ΔH1)×100
【0229】
<シーケンス>
1サイクル目:・30℃にて1分間保持
・2℃/分で60℃まで昇温。昇温後、10分間保持
・10℃/分で30℃まで降温。
2サイクル目:・30℃にて1分間保持
・10℃/分で120℃まで昇温。昇温後、10分間保持
・10℃/分で30℃まで降温。
3サイクル目:・30℃にて1分間保持
・2℃/分で60℃まで昇温。昇温後、10分間保持
・10℃/分で30℃まで降温。
4サイクル目:・30℃にて1分間保持
・10℃/分で120℃まで昇温。昇温後、10分間保持
・10℃/分で30℃まで降温。
【0230】
尚、上記したスチレン−アクリル樹脂を用いることが好ましいが、調製が困難である場合には、ガラス転移温度54.0℃±1.0℃、数平均分子量20000±2000、重量平均分子量200000±20000のスチレン−アクリル樹脂を用いて測定しても良い。上記の範囲内であれば、溶解度としてはほぼ同様の値が得られる。
【0231】
(11)離型剤のスチレンモノマーへの溶解度
40℃のスチレンモノマー100gに離型剤を10g添加し、3時間攪拌した後の溶解量を求める。
【実施例】
【0232】
以下、本発明を製造例及び実施例を挙げて具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。なお、実施例中で用いられる部数又は%は、質量部又は質量%を示す。
【0233】
<1>磁性体の製造
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄イオンに対して1.0当量以上1.1当量以下の苛性ソーダ溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調整した。水溶液のpHを10に保ちながら、空気を吹き込み、80℃以上90℃以下で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリーを調製した。
【0234】
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9当量以上1.2当量以下となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH9に維持して、空気を吹き込みながら酸化反応を進め、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。濾過、洗浄をした後、この含水スラリー液を一旦取り出した。次に、この含水サンプルを乾燥せずに別の水系媒体に再分散させた後、再分散液のpHを約4.3に調整し、十分に攪拌しながらシランカップリング剤(n−C1021Si(OCH33)を磁性酸化鉄100質量部に対して1.9質量部添加し、加水分解を行った。その際、分散液のpHを約10にし、縮合反応を行い、カップリング処理を行った。生成した疎水性磁性紛体を常法により洗浄、濾過、乾燥し、得られた粒子を十分解砕処理し、平均粒径が0.18μmの球形の磁性体1を得た。
【0235】
<2>結晶性ポリエステルの製造
(結晶性ポリエステル1の製造)
攪拌器、温度計、流出用冷却機を備えた反応装置に1,4−デカンジカルボン酸230質量部とエチレングリコール68質量部、テトラブチルチタネート0.40質量部、安息香酸13質量部を入れ、190℃でエステル化反応を4時間行った。その後、220℃に昇温しつつ系内を徐々に減圧し、150Paで重縮合反応を6時間行い、数平均分子量が6000、融点83℃の結晶性ポリエステル1を得た。得られた結晶性ポリエステル1の物性を表1に示す。
【0236】
(結晶性ポリエステル2の製造)
結晶性ポリエステル1の製造において、安息香酸を6.5質量部に変え、トリメリット酸8質量部を加えたこと以外は結晶性ポリエステル1の製造と同様にして、数平均分子量が6000、融点83℃の結晶性ポリエステル2を得た。得られた結晶性ポリエステル2の物性を表1に示す。
【0237】
(結晶性ポリエステル3の製造)
攪拌器、温度計、流出用冷却機を備えた反応装置にアジピン酸146質量部(1.0モル部)とジエチレングリコール117質量部(1.1モル部)、テトラブチルチタネート0.40質量部、安息香酸13質量部を入れ、結晶性ポリエステル1の製造と同様の製法にて数平均分子量が6000、融点59℃の結晶性ポリエステル3を得た。得られた結晶性ポリエステル3の物性を表1に示す。
【0238】
(結晶性ポリエステル4の製造)
結晶性ポリエステル1の製造において、テトラブチルチタネートを0.65質量部に変え、重縮合反応の時間を短くしたこと以外は結晶性ポリエステル1の製造と同様にして、数平均分子量が1900、融点83℃の結晶性ポリエステル4を得た。得られた結晶性ポリエステル4の物性を表1に示す。
【0239】
(結晶性ポリエステル5の製造)
結晶性ポリエステル1の製造において、テトラブチルチタネートを0.37質量部に変え、重縮合反応の時間を長くしたこと以外は結晶性ポリエステル1の製造と同様にして、数平均分子量が7200、融点83℃の結晶性ポリエステル5を得た。得られた結晶性ポリエステル5の物性を表1に示す。
【0240】
【表1】

【0241】
(蓄熱層用塗工液の製造)
シリコーンゴム原料組成物として、付加型シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製(商品名:DY35−561A/B))70.0質量部に対し、フィラーとしてアルミナ(昭和電工(株)製(商品名:アルミナビーズCB−A50S))を30.0質量部配合した。これを固形分濃度10%となるように、メチルエチルケトンで希釈し、蓄熱層用塗工液1を得た。液粘度は3.0×10-2Pa・sであった。また、表2のようにフィラー種及び配合比を調整し、蓄熱層用塗工液2乃至6及び比較用塗工液を得た。なお、表中の「アルミナ」は昭和電工(株)製アルミナ(商品名:アルミナビーズCB−A50S)、「酸化亜鉛」は境化学工業(株)製酸化亜鉛(商品名:LPZINC−11)、「ジルコニア」はアスザック(株)製ジルコニア(商品名:AZI)を示す。
【0242】
【表2】

【0243】
(定着ローラ1の製造方法)
弾性層の製造
信越化学工業製の付加硬化型液状シリコーンゴム材料KE1218A液(主剤)/B液(硬化剤)各50質量部に、中空フィラーとして松本油脂製薬製のマイクロバルーンF80S(材質:アクリロニトリル製、軟化温度:160℃以上170℃以下)を3質量部、ポリエチレングリコール1質量部を添加し、15分撹拌を続け、シリコーンゴムを得た。
【0244】
外径8mmのSUM芯金上に、上記で得たシリコーンゴムを注型し、150℃で1時間、一次加硫を行った後、型から脱型して取り出した。次に、200℃で4時間、2次加硫を行った後、更に、230℃で4時間の加熱処理を施すことで、厚み2.0mmの低熱伝導弾性層を有する定着ローラ前駆体を形成した。この低熱伝導弾性層はバルーンゴムであり、熱伝導率0.12W/mKであった。
【0245】
蓄熱層の製造
次に前記蓄熱層用塗工液1をリング塗工装置を用いて、定着ローラ前駆体に塗布した。塗布は、リング形状塗布手段の移動速度15mm/s、材料吐出量2100mm3/secの条件で、厚さが150μmとなるまで塗布を行なった。その後300℃の温風循環加熱炉で60分加熱し、その後、表面を研磨ペーパーを用いて研磨(研磨機:松田精機製スーパーフィニッシャー、研磨紙:3Mインペリアルラッピングフィルム15micシリコンカーバイド砥粒タイプ)を行い、蓄熱層を得た。得られた物性を表3に示す。
【0246】
なお、表中の「表面存在割合」とは、定着ローラをEPMAで測定した際に得られる全元素量に対するアルミニウム及び/又は亜鉛の存在割合を示す。ここで、アルミニウム、亜鉛元素は熱伝導フィラーに由来するものである。
【0247】
(定着ローラ2の製造方法)
定着ローラ1の製造方法において、弾性層に用いるシリコーンゴムを付加型シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製(商品名:DY35−561A/B))に変え、研磨を(研磨機:松田精機製スーパーフィニッシャー、研磨紙:3Mインペリアルラッピングフィルム5micシリコンカーバイド砥粒タイプ)に変更し、定着ローラ表面のRzが4.0μmになるまで研磨したこと以外は定着ローラ1と同様に製造し、定着ローラ2を得た。弾性層の熱伝導率は0.20W/mKであった。作製したローラの概要は表3のとおりである。
【0248】
(定着ローラ3の製造方法)
定着ローラ2の製造方法において、研磨を(研磨機:松田精機製スーパーフィニッシャー、研磨紙:3Mインペリアルラッピングフィルム30micシリコンカーバイド砥粒タイプ)に変更し、定着ローラ表面のRzが16.0μmとなるまで研磨したこと以外は定着ローラ2と同様に製造し、定着ローラ3を得た。作製したローラの概要は表3のとおりである。
【0249】
(定着ローラ4の製造方法)
定着ローラ2の製造方法において、研磨を(研磨機:松田精機製スーパーフィニッシャー、研磨紙:3Mインペリアルラッピングフィルム5micシリコンカーバイド砥粒タイプ)に変更し、定着ローラ表面のRzが1.4μmとなるまで研磨したこと以外は、定着ローラ2と同様に製造し、定着ローラ4を得た。作製したローラの概要は表3のとおりである。
【0250】
(定着ローラ5の製造方法)
定着ローラ2の製造方法において、研磨を(研磨機:松田精機製スーパーフィニッシャー、研磨紙:3Mインペリアルラッピングフィルム30micシリコンカーバイド砥粒タイプ)に変更し、定着ローラ表面のRzが21.0μmとなるまで研磨したこと以外は定着ローラ2と同様に製造し、定着ローラ5を得た。作製したローラの概要は表3のとおりである。
【0251】
(定着ローラ6の製造方法)
弾性層の製造は、定着ローラ1と同様にして製造を行なった。
【0252】
蓄熱層の製造
次に前記蓄熱層用塗工液8をリング塗工装置を用いて、定着ローラ前駆体に塗布した。塗布は、リング形状塗布手段の移動速度15mm/s、材料吐出量3000mm3/secの条件で行なった。その後300℃の温風循環加熱炉で60分加熱し、その後、表面を研磨ペーパーを用いて研磨(研磨機:松田精機製スーパーフィニッシャー、研磨紙:3Mインペリアルラッピングフィルム15micシリコンカーバイド砥粒タイプ)を行い、蓄熱層の厚さが495μmの定着ローラ前駆体2を得た。この定着ローラ前駆体2に、前記蓄熱層用塗工液9をリング塗工装置を用いて塗布した。塗布は、リング形状塗布手段の移動速度25mm/s、材料吐出量1500mm3/secの条件で行なった。その後、表面を研磨ペーパーを用いて研磨(研磨機:松田精機製スーパーフィニッシャー、研磨紙:3Mインペリアルラッピングフィルム15micシリコンカーバイド砥粒タイプ)を行い、重ねて塗布された蓄熱層の厚さが10μm(トータルの蓄熱層の厚みが505μm)となるまで研磨を行い、定着ローラ6を得た。得られた物性を表3に示す。
【0253】
(定着ローラ7の製造方法)
弾性層の製造は、定着ローラ1と同様にして製造を行なった。
【0254】
蓄熱層の製造
次に前記蓄熱層用塗工液10をリング塗工装置を用いて、定着ローラ前駆体に塗布した。塗布は、リング形状塗布手段の移動速度35mm/s、材料吐出量1500mm3/secの条件で行なった。その後300℃の温風循環加熱炉で60分加熱し、その後、表面を研磨ペーパーを用いて研磨(研磨機:松田精機製スーパーフィニッシャー、研磨紙:3Mインペリアルラッピングフィルム15micシリコンカーバイド砥粒タイプ)を行い、蓄熱層の厚さが38μmの定着ローラ前駆体2を得た。その後、定着ローラ6の製造と同様にして前期蓄熱層用塗工液9をリング塗工装置を用いて塗布し、重ねて塗布された蓄熱層の厚さが10μm(トータルの蓄熱層の厚みが48μm)となるまで研磨を行い、定着ローラ7を得た。得られた物性を表3に示す。
【0255】
(定着ローラ8の製造方法)
弾性層の製造は、定着ローラ1と同様にして製造を行なった。
【0256】
蓄熱層の製造
次に前記蓄熱層用塗工液1を定着ローラ1の製造と同様の条件により塗布・研磨し、蓄熱層の厚さが150μmの定着ローラ前駆体2を得た。その後、定着ローラ6の製造と同様にして前期蓄熱層用塗工液2をリング塗工装置を用いて塗布し、重ねて塗布された蓄熱層の厚さが10μm(トータルの蓄熱層の厚みが160μm)となるまで研磨を行い、定着ローラ8を得た。得られた物性を表3に示す。
【0257】
(定着ローラ9の製造方法)
定着ローラ8の製造において、蓄熱層用塗工液2の代わりに蓄熱層用塗工液3を用いた以外は定着ローラ8と同様にして、定着ローラ9を得た。得られた物性を表3に示す。
【0258】
(定着ローラ10の製造方法)
定着ローラ1の製造方法において、蓄熱層用塗工液1の代わりに蓄熱層用塗工液4を用い、リング塗工装置の代わりにディッピング塗工装置を用いた以外は、定着ローラ1と同様にして、定着ローラ10を得た。得られた物性を表3に示す。
【0259】
(定着ローラ11の製造方法)
定着ローラ10の製造方法において、蓄熱層用塗工液4の代わりに蓄熱層用塗工液5を用いた以外は、定着ローラ1と同様にして、定着ローラ11を得た。得られた物性を表3に示す。
【0260】
(定着ローラ12の製造方法)
定着ローラ6の製造方法において、蓄熱層用塗工液8の代わりに蓄熱層用塗工液6を用いたこと以外は、定着ローラ6の製造方法と同様にして定着ローラ12を得た。得られた物性を表3に示す。
【0261】
(定着ローラ13の製造方法)
定着ローラ7の製造方法において、蓄熱層用塗工液10の代わりに蓄熱層用塗工液7を用いたこと以外は、定着ローラ6の製造方法と同様にして定着ローラ13を得た。得られた物性を表3に示す。
【0262】
(定着ローラ14の製造方法)
定着ローラ10の製造方法において、蓄熱層用塗工液4の代わりに蓄熱層用塗工液11を用いたこと以外は、定着ローラ10の製造方法と同様にして定着ローラ14を得た。得られた物性を表3に示す。
【0263】
なお、定着ローラ14に関してのみは、表中の「表面元素割合」はEPAM測定で検出された全元素量に対するジルコニウムの存在割合を示している。
【0264】
【表3】

【0265】
<3>磁性トナーの製造
(磁性トナー1の製造)
イオン交換水720質量部に0.1M−Na3PO4水溶液450質量部を投入し60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7質量部を添加して分散安定剤を含む水系媒体を得た。
【0266】
スチレン 79.0質量部
n−ブチルアクリレート 21.0質量部
ジビニルベンゼン 0.48質量部
負荷電制御剤(モノアゾ染料系Fe化合物) 1.5質量部
結晶性ポリエステル1 10質量部
表面処理磁性体1 85.0質量部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合した。この単量体組成物を60℃に加温し、そこにパラフィンワックス(融点78℃)15質量部を添加溶解し、これに重合開始剤2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)7質量部を溶解した。
【0267】
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてクレアミックス(エム・テクニック社製)にて15000rpmで10分間攪拌し、造粒した。その後パドル攪拌翼で攪拌しつつ70℃で5時間反応させた後、そのまま2時間攪拌した。反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて酸洗浄し、濾過・水洗した後に乾燥してトナー粒子1を得た。
【0268】
このトナー粒子1を100質量部と、個数平均1次粒径9nmの微粉体をヘキサメチルジシラザンで処理した後シリコーンオイルで処理し、処理後のBET値が200m2/gの疎水性シリカ微紛体1.2質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、重量平均粒径が6.5μmの磁性トナー1を得た。得られた磁性トナー1の物性を表4に示す。
【0269】
(磁性トナー2の製造)
磁性トナー1の製造において、結晶性ポリエステル1の代わりに結晶性ポリエステル3を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー2を得た。磁性トナー2の物性を表4に示す。
【0270】
(磁性トナー3の製造)
磁性トナー1の製造において、結晶性ポリエステル1の部数を10質量部から1質量部、パラフィンワックス(融点78℃)の部数を15質量部から1質量部に変更したこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー3を得た。磁性トナー3の物性を表4に示す。
【0271】
(磁性トナー4の製造)
磁性トナー1の製造において、結晶性ポリエステル1の部数を10質量部から31質量部、パラフィンワックス(融点78℃)の部数を15質量部から31質量部に変更したこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー4を得た。磁性トナー4の物性を表4に示す。
【0272】
(磁性トナー5の製造)
磁性トナー1の製造において、パラフィンワックスの代わりにエステルワックス(融点63℃)を用い、結晶性ポリエステル1の代わりに結晶性ポリエステル2を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー5を得た。磁性トナー5の物性を表4に示す。
【0273】
(磁性トナー6の製造)
磁性トナー1の製造において、結晶性ポリエステル1の代わりに結晶性ポリエステル4を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー6を得た。磁性トナー6の物性を表4に示す。
【0274】
(磁性トナー7の製造)
磁性トナー1の製造において、結晶性ポリエステル1の代わりに結晶性ポリエステル5を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー7を得た。磁性トナー7の物性を表4に示す。
【0275】
(磁性トナー8の製造)
磁性トナー1の製造において、離型剤を含有しなかったこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー8を得た。磁性トナー8の物性を表4に示す。
【0276】
(磁性トナー9の製造)
磁性トナー1の製造において、結晶性ポリエステル1を用いなかったこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー9を得た。磁性トナー9の物性を表4に示す。
【0277】
(磁性トナー10の製造)
磁性トナー1の製造において、結晶性ポリエステル1の部数を10質量部から35質量部、パラフィンワックス(融点78℃)の部数を10質量部から35質量部に変更し、さらに反応終了後に再度反応容器を90℃まで昇温し、2時間攪拌した後に冷却したこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー10を得た。磁性トナー10の物性を表4に示す。
【0278】
(磁性トナー11の製造)
磁性トナー1の製造において、ジビニルベンゼンを0.18質量部用いた以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー11を得た。磁性トナー11の物性を表4に示す。
【0279】
(磁性トナー12の製造)
磁性トナー1の製造において、ジビニルベンゼンを1.03質量部用いた以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー12を得た。磁性トナー12の物性を表4に示す。
【0280】
【表4】

【0281】
<実施例1>
磁性トナー1と定着ローラ1を用いて、図2に示す定着装置7を備えた図4に示す画像形成装置1を用いて、定着特性の評価を行った。
【0282】
定着特性の評価は、定着装置7に未定着トナー画像Tを形成した記録材Pを通紙して行い、ヒータ21及び定着ローラ30、定着装置全体の温度が、雰囲気温度になじんだ状態から実験を開始する(以下、この条件をコールドスタートと称する)。実験時の環境は、常温常湿環境(23℃、60%RH)下で行った。
【0283】
定着ローラ30の表面温度は、図2のように、定着ローラ30の回転方向において加熱ニップ部Nhから定着ニップ部Ntに至る中間部位置Dの定着ローラの表面温度を非接触の放射温度計103を用いて測定する。
【0284】
コールドスタートから、定着ローラ30の回転駆動開始と同時に、セラミックヒータ21に500Wの電力を投入し、セラミックヒータを発熱させて、定着ローラ30を加熱し、定着ローラを目標の温度まで立ち上げる。
【0285】
定着ローラ30は、放射温度計103を用いて温度制御され、所望の定着ローラ温度に達した後は、目標温度を維持するようセラミックヒータの電力を制御される。
【0286】
20秒のウォームアップ時間の後、未定着トナー画像Tを形成した記録材Pを通紙する。
【0287】
定着ローラの表面温度を変える場合は、セラミックヒータの温調温度を変えることにより制御した。
【0288】
画像形成評価を行ったトナーとローラの組み合わせ、及び評価結果を表5に記載する。
【0289】
上記条件にて定着評価を行なった結果、優れた低温定着性を示した。また、記録材の巻きつきも発生しなかった。
【0290】
また、市販のレーザービームプリンターLBP−3210を改造し、本発明の定着部材の交換を行なった。また、CRG内のトナーを抜き取り、磁性トナー1を充填したもので長期使用の耐久試験を実施した。具体的には、常温常湿環境下(温度23℃、湿度60%)において、4000枚の通紙耐久試験を行なった。原稿は画像比率8%のチャートを使用した。常温常湿環境下においては、画像濃度及び定着ローラ汚れを下記評価基準に基づき評価を行なった。その結果、画出し評価初期及び4000枚耐久後において、全く問題の無い画像濃度が得られた。また、2000枚耐久後及び、4000枚耐久後においても定着ローラ汚れの発生が見られなかった。結果を表5に示す。
【0291】
以下に本発明の画像評価方法および評価基準について説明する。
【0292】
(1)画像濃度
Xerox社製Business4200(75g/m2)を用いて、初期及び4000枚のプリントアウトを終了した後、ベタ画像部を形成し評価した。尚、画像濃度は画像濃度測定装置である「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。画像濃度は、1.30以上であれば実用的に問題がない画像である。
【0293】
(2)低温定着性
メディアとしてはExtra80g紙を用い、ハーフトーン画像の画像濃度が0.6〜0.65となるように現像バイアスを設定した。次いで、定着器を常温常湿もしくは、高温高湿環境下の温度となるまで冷却し、定着器のヒーター温度を設定し(以後、定着温度と呼ぶ)、通電したのち8秒後に画像を通紙し、定着させた。その後、50g/cm2の加重をかけたシルボン紙で定着画像を10回摺擦し、摺擦後の定着画像の濃度低下率が10%となる温度を定着開始温度とした。
A:最低定着可能温度が150℃以上170℃以下で、安定した定着画像が得られる。
B:最低定着可能温度が170℃より高く190℃以下で、安定した定着画像が得られる 。
C:最低定着可能温度が190℃より高く200℃以下で、安定した定着画像が得られる 。
D:最低定着可能温度が200℃より高い、又は定着可能温度を有さない。
【0294】
(3)巻きつきレベル
記録材の先端部から3mmの位置に幅60mmのベタ黒未定着画像をBADGER BOND(60g/m2)紙上に出力した。その後、(2)の定着試験において摺擦後の定着画像の濃度低下率が10%となる定着温度において、10秒1枚間欠で100枚通紙し、定着ローラヘの巻きつきについて、下記の基準で評価した。
A:巻きつきが起こらない。
D:巻きつきが起こる。
【0295】
(4)定着ローラ汚れ
記録材の先端部から3mmの位置に幅60mmのベタ黒未定着画像をBADGER BOND(60g/m2)紙上に出力した。その後、(2)の定着試験において摺擦後の定着画像の濃度低下率が10%となる定着温度において、10秒1枚間欠で10枚通紙し、定着ローラ汚れについて、下記の基準で評価した。
A:定着ローラ汚れが見られず、問題の無い定着画像が得られる。
B:定着ローラ汚れがやや見られるが、問題の無い定着画像が得られる。
C:定着ローラ汚れが見られるが、実用上問題の無い定着画像が得られる。
D:定着ローラ汚れが多く見られ、良好な定着画像が得られない。
【0296】
<実施例2乃至17>
磁性トナー2、3、4、5、6、7、11、12、定着ローラ1、2、3、4、5、6、7を表4のように使用し、実施例1と同様の条件で画出し試験及び耐久性評価を行った。その結果、常温常湿環境下での画出し評価において、4000枚画出し耐久後でも実用上問題の無い結果が得られた。常温常湿環境下での評価結果を表5に示す。
【0297】
<比較例1乃至8>
磁性トナーの1、8、9、10、または13、定着ローラの1、8、9、10を表4のように使用し、実施例1と同様の条件で画出し試験及び耐久性評価を行った。その結果、いずれも前述の体積膨張効果の不足により、低温定着性や定着ムラが悪い結果であった。結果を表5に示す。
【0298】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0299】
【図1】本発明における像加熱部材の模式図である。
【図2】本発明における定着装置の模式図である。
【図3】好ましく用いられるリング塗工装置を説明する模式図である。
【図4】本発明に用いることのできる画像形成装置例の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体を帯電手段により帯電する帯電工程、前記帯電された静電潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光工程、前記静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像工程、前記トナー像を中間転写体を介して、又は介さずに記録材へ転写する転写工程、前記トナー像を担持する記録材を加圧部材と回転可能な像加熱部材とで形成されるニップ部を通過させることにより加熱加圧定着する定着工程を有する画像形成方法において、
前記像加熱部材は内部に弾性層を有し、その外側に像加熱部材の単位面積あたりの熱容量が、100J/m2K以上600J/m2K以下の蓄熱層を有しており、
前記像加熱部材は、熱伝導率5.0W/mK以上の熱伝導フィラーを含有し、
前記熱伝導フィラーはAl及び/又はZn化合物であり、
前記像加熱部材の表面をEPMA(電子線マイクロアナライザー)により測定した際の前記熱伝導フィラーに由来するアルミニウム元素および/または亜鉛元素の割合が、EPMAで検出される全元素量に対して5.0質量%以上45.0質量%以下であり、
前記像加熱装置に適用されるトナーは、結着樹脂、磁性体、及び結着樹脂に相溶可能な離型剤を1種以上、結着樹脂に非相溶な離型剤を1種以上を少なくとも含有する磁性トナーであり、前記磁性トナーのフローテスター測定による軟化温度をTn[℃]、流出開始温度をTr[℃]とした時のそれぞれのプランジャー位置をPn[mm]、Pr[mm]とすると、1.1≦Pn/Pr≦1.5を満たすことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記像加熱部材のRzが2.0μm以上20.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記蓄熱層を形成するゴム100質量部に対し、前記熱伝導フィラーを7質量部以上60質量部以下含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記蓄熱層の厚みが50.0μm以上500.0μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記弾性層は熱伝導率が0.15W/mK以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記像加熱部材は、外側から加熱される手段が具備されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記磁性トナーは結着樹脂100質量部に対して、架橋剤を0.2質量部以上1.0質量部以下含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記磁性トナーの平均円形度が0.960以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記結着樹脂に相溶可能な離型剤の1種の融点をTm1[℃]、結着樹脂に非相溶な離型剤の1種の融点をTm2[℃]とした時に、Tm1が50℃以上であり、かつTm1≦Tm2+10を満たすことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記トナーは結着樹脂100質量部に対し、結着樹脂に相溶可能な離型剤を2質量部以上30質量部以下、結着樹脂に非相溶な離型剤を2質量部以上30質量部以下で含有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記非相溶な離型剤が結晶性ポリエステルであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記結晶性ポリエステルは直鎖のジカルボン酸と直鎖の脂肪族系ジアルコールの重縮合物であることを特徴とする請求項11に記載の画像形成方法。
【請求項13】
前記結晶性ポリエステルの酸価が5[mgKOH/g]以下であることを特徴とする請求項11又は12に記載の画像形成方法。
【請求項14】
前記結晶性ポリエステルの数平均分子量が2000以上7000以下であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項15】
静電潜像担持体を帯電手段により帯電する帯電工程、前記帯電された静電潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光工程、前記静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像工程、前記トナー像を中間転写体を介して、又は介さずに記録材へ転写する転写工程、前記トナー像を担持する記録材を加圧部材と回転可能な像加熱部材とで形成されるニップ部を通過させることにより加熱加圧定着する定着工程を有する定着方法において、
前記像加熱部材は内部に弾性層を有し、その外側に像加熱部材の単位面積あたりの熱容量が、100J/m2K以上600J/m2K以下の蓄熱層を有しており、
前記像加熱部材は、熱伝導率5.0W/mK以上の熱伝導フィラーを含有し、
前記熱伝導フィラーはAl及び/又はZn化合物であり、
前記像加熱部材の表面をEPMA(電子線マイクロアナライザー)により測定した際の前記熱伝導フィラーに由来するアルミニウム元素および/または亜鉛元素の割合が、EPMAで検出される全元素量に対して5.0質量%以上45.0質量%以下であり、
前記トナーは、結着樹脂、磁性体、及び結着樹脂に相溶可能な離型剤を1種以上、結着樹脂に非相溶な離型剤1種以上を少なくとも含有する磁性トナーであり、前記磁性トナーのフローテスター測定による軟化温度をTn[℃]、流出開始温度をTr[℃]とした時のそれぞれのプランジャー位置をPn[mm]、Pr[mm]とすると、1.1≦Pn/Pr≦1.5を満たすことを特徴とする定着方法。
【請求項16】
静電潜像担持体を帯電手段により帯電する帯電工程、前記帯電された静電潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光工程、前記静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像工程、前記トナー像を中間転写体を介して、又は介さずに記録材へ転写する転写工程、前記トナー像を担持する記録材を加圧部材と回転可能な像加熱部材とで形成されるニップ部を通過させることにより加熱加圧定着する定着工程を有する画像形成方法に用いられる磁性トナーにおいて、
前記像加熱部材は内部に弾性層を有し、その外側に像加熱部材の単位面積あたりの熱容量が、100J/m2K以上600J/m2K以下の蓄熱層を有しており、
前記像加熱部材は、熱伝導率5.0W/mK以上の熱伝導フィラーを含有し、
前記熱伝導フィラーはAl及び/又はZn化合物であり、
前記像加熱部材の表面をEPMA(電子線マイクロアナライザー)により測定した際の前記熱伝導フィラーに由来するアルミニウム元素および/または亜鉛元素の割合が、EPMAで検出される全元素量に対して5.0質量%以上45.0質量%以下であり、
前記磁性トナーは、結着樹脂、磁性体、及び結着樹脂に相溶可能な離型剤を1種以上、結着樹脂に非相溶な離型剤1種以上を少なくとも含有する磁性トナーであり、前記磁性トナーのフローテスター測定による軟化温度をTn[℃]、流出開始温度をTr[℃]とした時のそれぞれのプランジャー位置をPn[mm]、Pr[mm]とすると、1.1≦Pn/Pr≦1.5を満たすことを特徴とする磁性トナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−288394(P2009−288394A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139238(P2008−139238)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】