説明

画像形成装置、その制御方法、及びプログラム

【課題】ユーザが部品交換の必要性を判断することなく、画像形成装置を可及的長期間に亘って使用できるようにする。
【解決手段】複合機15は、ユーザが設定したジョブで消耗度が規定値を超えた搬送ローラ等の部品が使用される場合は、その部品を使用しないで済む代替パスに係る代替ジョブ、及び低速処理に係る代替ジョブを、ユーザに表示(提示)する。この代替パスの選定は、ジャム発生率が低い順に選定されるように設定された重み付け情報に基づいて行う。また、ジャム発生率の情報は、監視サーバ11から取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に記録用のシート材のジャム対策に係る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、消耗部品毎の稼働量を部品カウンタによりカウントし、そのカウントに係る稼動量に基づいて最適な画像形成動作を実行させるものが知られている。
【0003】
例えば、ジョブ実行前に部品カウンタを確認し、ユーザが所望する出力形態に係る部品のうち使用頻度が最も低い部品を優先して使用することで、装置全体としての寿命を延ばす画像形成装置が考案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、ジョブ実行前に当該ジョブを完遂できるか否かを判断し、完遂できない場合はその旨を操作部に表示させる技術も提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
さらに、部品カウンタの情報に加えて、ジャム、アラーム、エラー等の情報を監視サーバに通知する画像形成装置も知られている。この場合、監視サーバ側では、これら通知の内容を蓄積して画像形成装置の稼働状況を判断すると共に、画像形成装置で発生した障害への対処なども行う。
【0006】
また、画像形成装置側にて自機内の消耗部品の消耗度を判断し、その消耗度を表示部に表示したり監視サーバに通知したりするシステムも提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2003−15482号公報
【特許文献2】特開2001−63188号公報
【特許文献3】特開2003−316555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1〜3に係る技術は、サービスマン等により消耗部品が定期的に交換されるような状況では、問題は少ない。しかしながら、今後、メンテナンス・コストの低減化を図るため、サービスマン等が定期的にメンテナンスを行うことなく、ユーザ自身が簡単にメンテナンスできるようにすることが望まれている。
【0008】
しかし、ユーザ自身がメンテナンスを行う場合、ユーザは、消耗部品の消耗度を常に意識しているわけではない。このため、ユーザが部品交換の必要性に気づかず、そのまま使用し続けることでジャム等の不具合が多発してしまう可能性がある。
【0009】
この場合、単純に不具合の状況を検出し、その不具合に係る部品を使用不能にしただけでは、一箇所の要交換部品の存在で、装置全体、或いは関連する機能を利用できなくなり、利便性が著しく損なわれる。
【0010】
さらに、使用不能に係る部品の交換が行われる迄の間、ユーザ自身が、これから実行させるジョブが使用不能に係る消耗部品を用いるジョブであるか否かを判断することは困難である。
【0011】
本発明は、このような技術的な背景の下になされたもので、その目的は、ユーザが部品交換の必要性を判断することなく、画像形成装置を可及的長期間に亘って使用できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、シート材を搬送するための複数の搬送路それぞれにおける搬送用の部品の消耗度を計数する計数手段と、前記複数の搬送路それぞれにおける前記シート材の搬送エラーの統計的な発生情報を取得する取得手段と、前記複数の搬送路のうち、操作部の操作で設定された設定ジョブを実行する際に使用される搬送路の搬送用の部品の消耗度が規定値を超えているか否かを前記計数手段での処理結果に基づいて判定する判定手段と、前記判定手段により前記消耗度が規定値を超えていると判定された場合に、前記取得手段により取得された前記搬送エラーの発生情報に基づいて、前記設定ジョブに対する代替ジョブの候補を選定する選定手段と、前記選定手段により選定された代替ジョブを提示する提示手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、部品交換の必要性を判断することなく、画像形成装置を可及的長期間に亘って使用することが可能となり、利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置を含む画像形成システムのシステム構成図である。
【0015】
図1に示した画像形成システムでは、監視サーバ11と、複数のイントラネット12がインターネット13で接続されている。各イントラネット12には、LAN14を介して複合機等の複数の画像形成装置15が接続されている。なお、監視サーバ11は、複数の拠点にそれぞれ1台ずつ配備され、自己に割当てられた各イントラネット12内の各画像形成装置15の稼動状態を一元的に監視する。
【0016】
この監視サーバ11は、画像形成装置15の販売会社のイントラネット(図示省略)に接続され、当該販売会社のパーソナルコンピュータ(図示省略)から各画像形装置のプリンタエンジンのタイプ、画像形成速度、通紙パス等の情報を取得する。監視サーバ11は、これら取得した情報を用いて、後述する図5のジャム発生率テーブルT2の項目(通紙パス、エンジン速度)を作成する。
【0017】
なお、監視サーバ11と複数のイントラネット12は、ルータ(図示省略)を介してインターネット13に接続されている。また、各イントラネット12内の複数の画像形成装置15には、プリント機能やファクシミリ機能やコピー機能を統合したデジタル複合機(以下、複合機という)やプリンタ、スキャナ、ファクシミリ装置などが含まれる。
【0018】
ただし、本実施の形態では、複合機を用いることを想定している。これら複合機15には、機械的な構成は同一だが、基本的な画像形成速度(エンジン速度)が異なるものも混在している。
【0019】
各複合機15は、管理ソフトウェアを有し、この管理ソフトウェアにより、監視サーバ11に対して、自装置の動作モード、後述する部品管理テーブルT1の情報、稼働ログなどの稼動情報を定期的に送信する。この定期的な送信においては、サービスコール、ジャム(搬送エラー)、アラームなどの障害情報も送信される。
【0020】
一方、監視サーバ11は、各複合機15に対し、後述するジャム発生率テーブルT2の情報を送信する。このような各複合機15と監視サーバ11との通信においては、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)などのプロトコルが使用される。
【0021】
図2は、複合機15のハードウェア構成を示す断面図である。図2に示したように、複合機15は、印刷処理を行うプリンタエンジンとしての装置本体100と、原稿情報を読み取るスキャナ102、及び自動原稿給送装置(ADF)150を有している。また、装置本体100には、オプションのシート後処理装置としてのZ折り機165、製本機166、排紙処理装置160が連結されている。
【0022】
自動原稿給送装置(ADF)150は、原稿セット部150aにセットされた原稿を、原稿ピックアップローラ151により最終頁から順に1枚ずつピックアップしてプラテンガラス101上へ搬送する。そして、自動原稿給送装置(ADF)150は、スキャナ102による原稿画像の読取動作が終了した後に、当該原稿をプラテンガラス101から排出トレイ150bに排出する。
【0023】
なお、原稿の両面の画像を読取る場合は、片面の原稿画像が読取れられた原稿は、直ちに排出トレイ150bに排出されることなく、原稿反転ローラ152により表裏反転されて、再度、プラテンガラス101上へ搬送される。
【0024】
スキャナ102は、原稿照明ランプ103、走査ミラー104を搭載し、これら原稿照明ランプ103、走査ミラー104は、一体となって図2の左右方向に往復駆動される。この往復駆動の過程で原稿上の画像が光学的に読み取られる。すなわち、原稿照明ランプ103により原稿に光が照射されると、その反射光(画像光)は、走査ミラー104、反射ミラー105,106、及びレンズ107を介してイメージセンサ108に結像する。イメージセンサ108は、入射された画像光を光電変換して、電気的な画像信号として後述の制御部180に出力する。
【0025】
制御部180は、画像信号に対して所定の画像処理を施し、プリンタ制御部197(図3参照)に出力する。このプリンタ制御部197は、図1に示した露光制御部109を有している。この露光制御部109は、不図示のレーザ、ポリゴンミラーを制御することにより、画像信号に基づいて変調されたレーザ光119を感光体ドラム111上に露光走査する。
【0026】
感光体ドラム111の周囲には、1次帯電器112、現像器113、転写帯電器116、前露光ランプ114、クリーニング装置115が配備されている。感光体ドラム111は、不図示のモータにより図2の矢印方向に回転しており、1次帯電器112により所望の電位に帯電された後、露光制御部109からのレーザ光119により露光走査される。
【0027】
この露光走査により、感光体ドラム111の表面に静電潜像が形成される。感光体ドラム111上に形成された静電潜像は、現像器113により、トナー像として可視化(現像)される。
【0028】
一方、シート材は、右給紙カセット121、左給紙カセット122、上段カセット123、或いは下段カセット124から、ピックアップローラ125〜128によりピップアップされる。なお、ピックアップローラ125〜128、及び後述の分離ローラ129〜132が存在する搬送パス(通紙パスとも称する)の領域は、給紙パスと呼ばれる。
【0029】
ピックアップ(給紙)されたシート材は、分離ローラ129〜132、搬送ローラ201,202、レジストローラ133により転写ベルト134へ搬送される。なお、図2では、搬送ローラについては、搬送路中に1対の小さい○印で示しているが、図の煩雑化を回避するため、2つだけに符号を付している。また、分離ローラ129〜132、搬送ローラ201,202、レジストローラ133が存在する搬送パスの領域は、給送パスと呼ばれる。
【0030】
このシート材の搬送の過程で、感光体ドラム111上のトナー像が、転写帯電器116により当該シート材に転写される。また、トナー像転写後の感光体ドラム111上の残留トナーは、クリーナー装置115により清掃される。さらに、感光体ドラム111上の残留電荷は、前露光ランプ114により消去される。なお、シート材は、マルチ手差し155から給紙することも可能である。
【0031】
トナー像の転写処理が施されたシート材は、分離帯電器117によって感光体ドラム111から分離され、転写ベルト134によって定着器135へ搬送される。定着器135は、加圧・加熱作用によってトナー像をシート材上に定着させる。この定着処理が施されたシート材は、通常は、排出ローラ136,144により、排出パス143を経由して複合機15の機外へ排出される。この場合、シート材は、印刷面が上になった状態で機外に排出される。
【0032】
片面印刷で印刷面が下になった状態で機外に排出する場合、及び両面印刷の場合は、排出ローラ136により送り出されたシート材は、排紙フラッパ137のパス切換え動作により、搬送パス138に導かれる。
【0033】
すなわち、片面印刷で印刷面が下になった状態でシート材を機外に排出する場合は、排紙フラッパ137を上方へ上げ、反転ローラ145により、その後端が搬送パス138に残り、先端が反転パス139の入り口に架かる位置までシート材を引き込む。そして、反転ローラ145を逆転させることで、シート材は表裏反転状態で排出ローラ144側に送り出される。
【0034】
両面印刷時には、排紙フラッパ137を上方に上げて、反転ローラ145により、シート材を搬送パス138、反転パス139、下搬送パス140を経由して再給紙パス141に導く。この場合、シート材は、その後端が搬送パス138から全て抜け出し、その先端部分が反転ローラ145に挟まれた状態の位置まで反転パス139に引き込まれる。
【0035】
その後、反転ローラ145を逆転させることで、シート材は下搬送パス140、再給紙パス141に送り出される。再給紙パス141に送り出されたシート材は、再給紙ローラ142により、レジストローラ133に向けて搬送される。シート材は、レジストローラ133に搬送された際には、表裏反転され、片面印刷済みの面が下側となっている。
【0036】
なお、再給紙パス141には、左給紙カセット122からピックアップローラ126によりピックアップしたシート材を、分離ローラ130を介して送り込むことも可能である。
【0037】
排紙処理装置160は、複合機15の装置本体100から排出された複数のシート材を
揃えたり、綴じたりする機能を有している。すなわち、排紙処理装置160は、1枚単位で排出されてくるシート材を処理トレイ164に順次積載して揃える。そして、 排紙処理装置160は、一部の分(一部単位)の画像形成処理(印刷処理)が終了すると、一部単位のシート束をステイプル処理して排紙トレイ162又は163に排出する。
【0038】
排紙トレイ163は、不図示のモータにより上下動が可能となっている。排紙トレイ163は、画像形成動作の開始前には、処理トレイ164の位置に移動し、処理トレイ164からのシート束が積載されていく。この際、排紙トレイ163は、積載されたシート束の最上面の高さが処理トレイ164の位置になるように下方向に、移動制御される。
【0039】
この排紙トレイ163の下方向への移動量は、トレイ下限センサ168により規制される。すなわち、トレイ下限センサ168は、排紙トレイ163に約2000枚のシート材が積載された時点でONするようになっており、これ以上、排紙トレイ163が下方向へ移動して破損することが防止される。
【0040】
用紙トレイ161は、処理トレイ164に順次排紙されるシート材の間に挿入する区切り紙を積載するために利用される。Z折り機165は、装置本体100から排出されたシート材をZ字状に折り畳むZ折り処理を行う。
【0041】
また、製本機166は、装置本体100から排出されたシート材の束を一部単位で纏めてセンタ折りし、ステイプル処理を施すことによって製本を行う。この製本されたシート束は、排出トレイ167に排出される。
【0042】
なお、複合機15の各所には不図示の各種センサが配備されており、トナー切れ、原稿のジャム、シート材の残量、シート材のジャム、原稿照明ランプ切れ、等の各種の障害を検知することができる。さらに、本実施の形態では、後述するように、ピックアップローラ125〜128、分離ローラ129〜132、搬送ローラ201,202等の各種ローラ、定着器135等の消耗品の消耗度を管理することも可能である。
【0043】
なお、分離ローラ129〜132は、例えば、1対のローラの相対的な回転速度が異なるように回転駆動する、或いは一方のローラを摩擦係数の高い部材で構成する等の処置が施されている。これにより、ピックアップローラ125〜128により複数枚のシート材が同時にピックアップされた場合でも、1枚単位に分離してシート材を給紙することができる。また、ピックアップローラ125〜128、分離ローラ129〜132、搬送ローラ201,202等のローラは、一般のユーザが交換し易い形態となっている。
【0044】
次に、複合機15内の制御部180の構成を図3のブロック図に基づいて説明する。
制御部180の各構成要素は、システムバス181又は画像バス182に接続されている。
【0045】
ROM183には、複合機15の制御プログラムが格納されており、この制御プログラムは、CPU186により実行される。この制御プログラムには、後述する図6〜図9の処理に係る指令が組み合わされたプログラムも含まれる。RAM184は、プログラムを実行するためのワークメモリエリア、画像データを一時記憶する画像メモリ等として利用される。
【0046】
蓄積メモリ185は、不揮発性メモリであり、複合機15が電源OFFされた後も記憶しておく必要のある各種データ等が記憶される。具体的には、蓄積メモリ185には、後述する図4の部品管理テーブルT1、図10の優先度判定テーブルT3が保存される。また、蓄積メモリ185には、稼働ログ、サービスコールエラー、ジャムエラー、アラーム警告などの障害情報も記憶される。
【0047】
操作部188は、各種の機能キー、置数キーの他に不図示の表示部を有している。操作者は、これらキーを操作することにより、スキャナ読取り、プリント出力に関する各種設定指示、作動の開始/停止等を指示することができる。
【0048】
この各キーの操作信号はCPU186に入力され、CPU186は、そのキーに応じた処理を行う。また、CPU186は、操作部188の表示部に、例えば、後述する図11,12のような情報を表示する。以上の構成要素がシステムバス181に接続されている。
【0049】
Network I/F189は、図1に示したLAN14と接続するためのインタフェース部であり、LAN14を介して監視サーバ11との通信が行われる。回線I/F部190は、ISDNや公衆電話網に接続され、遠隔のファクシミリ装置等の端末との間でデータの送受信を行う。
【0050】
IO制御部197は、システムバス181と画像バス182とを接続するためのバスブリッジとして機能する。以上の各デバイスが、システムバス181に接続されている。画像バス182は、画像データを高速で転送するバスであり、PCIバス又はIEEE1394で構成されている。画像バス182には、以下のデバイスが接続されている。
【0051】
デジタルI/F部193は、複合機15のリーダ制御部196やプリンタ制御部197と制御部180とを接続し、画像データの同期系/非同期系の変換を行う。前述の複合機15の各所に配備された不図示の各種センサからの検知信号は、デジタルI/F部193を介して制御部180のCPU186に送出される。
【0052】
リーダ制御部196は、図1のスキャナ102の駆動制御等を行う。また、プリンタ制御部197は、図1の露光制御部109の制御、感光体ドラム111等を含むプリンタエンジンの駆動制御等を行う。
【0053】
画像処理部191は、入力及び出力画像データに対し補正、加工、編集の各処理を行う。画像回転部192は、画像データの回転処理を行う。圧縮伸長部194は、多値画像データについてはJPEG、2値画像データについてはJBIG、MMR、MR、MH等の圧縮伸張処理を行う。画素密度変換部195は、出力画像データに対して解像度、即ち画素密度の変換処理を行う。
【0054】
上記の蓄積メモリ185には、図4に示す部品管理テーブルT1が記憶されている。この部品管理テーブルT1には、当該蓄積メモリ185を搭載した複合機15のプリンタエンジンの型式情報、当該複合機のID情報、プリンタエンジンのエンジン速度、給紙カセット毎の紙サイズ情報・用紙種別などの情報が登録されている。
【0055】
なお、複合機15のプリンタエンジンのエンジン速度については、当該プリンタエンジンが複数のエンジン速度、例えば30ppm(Pages Per Minute)、25ppmを持つ場合は、それら複数のエンジン速度が登録されている。
【0056】
部品管理テーブルT1には、消耗部品である搬送用部品毎に、その消耗部品の「部品コード」、「現在カウンタ値」、「規定寿命」、「消耗度」、「100枚当りのジャム率(ジャム発生率)」が登録されている。ここでは、消耗部品としては、ピックアップローラ125〜128、分離ローラ129〜132、搬送ローラ201,202等のローラ、定着器135を想定している。例えば、図4の「部品コード」としての「10000001」は、ピックアップローラ125を示している。
【0057】
「現在カウンタ値」は、当該部品で処理した回数を示している。例えば、図4の部品コード「10000001」のピックアップローラ125は、現在迄に「248972」回、シート材のピックアップ動作を行ったことを示している。この「現在カウンタ値」の計数処理(カウント処理)は、CPU186により行われ、そのカウント処理の処理結果としての「現在カウント値」は、ユーザ設定に係る設定ジョブをそのまま実行するか否かを判定するための情報として利用される。
「規定寿命」は、当該部品で処理可能な処理回数の限度値(寿命値)を示している。「消耗度」は、当該部品の「規定寿命」に対する「現在カウンタ値」の割合を示している。
【0058】
「100枚当りのジャム発生率」は、当該部品で100枚のシート材を処理した場合のジャム(紙詰まり)の発生率を示している。なお、「100枚当りのジャム発生率」は、当該型式のプリンタエンジンが複数のエンジン速度を有する場合は、それらエンジン速度別に複数登録されている。
【0059】
部品管理テーブルT1上の各部品の「現在カウンタ」、「規定寿命」、「消耗度」、「100枚当りのジャム発生率」の値は、当該部品が使用される毎に、CPU186により更新される。なお、各「部品コード」に係る部品について、当該部品が存在する通紙パスのパス名等の識別情報を対応付けて部品管理テーブルT1に登録するようにしても良い。これら部品管理テーブルT1の登録データは、CPU186により、定期的に監視サーバ11に送信される。
【0060】
監視サーバ11は、図5に示したジャム発生率テーブルT2を保持している。このジャム発生率テーブルT2は、プリンタエンジンの型式別に作成されるものであり、プリンタエンジンの型式名(図5ではX307)、当該型式に係る統計母数が登録されている。
【0061】
そして、実際のジャム発生率データとしては、当該型式のプリンタエンジンのエンジン速度、及び通紙パス(搬送路)別に、ジャム発生率(エラー発生率)が登録されている。この場合、通紙パスは、シート材を収納する給紙カセット、フィニッシャ装置などのオプション装置の組合せにより、全ての複合機15が同一の通紙パスを有しているわけではない。
【0062】
しかし、本実施の形態では、ユーザがオプション装置を如何なる組合せで使用した場合にも対応できるように、全てのオプション装置の組合せを網羅した通紙パスを想定している。すなわち、全てのオプション装置の組合せを考慮した各通紙パスに通紙パスIDを割当て、それら通紙パスIDをジャム発生率テーブルT2に登録している。
【0063】
この場合、或る通紙パスIDに対応する部品コードは、常に一意である。この通紙パスIDと部品コードとの対応関係は、監視サーバ11から当該型式のプリンタエンジンを搭載した各複合機15に通知される。
【0064】
エンジン速度、及び通紙パス別のジャム発生率は、次のようにして算出されるものである。例えば、PathA上に消耗部品A1と消耗部品A2が存在する場合は、図4における消耗部品A1,A2の100枚当たりのジャム発生率を、エンジン速度別に加算して、部品点数(この例では2)で割って平均値を求める。
【0065】
このエンジン速度別の平均値を、それぞれ同一型式のプリンタエンジンの統計母数の台数分だけ合計し、その合計値を統計母数で割って、複数のプリンタエンジン間でのエンジン速度別のジャム発生率の平均値を求める。これら統計に係るエンジン速度別の平均値を、PathAにおけるエンジン速度別のジャム発生率とする。
【0066】
この場合、プリンタエンジン毎の事情を加味して重み付けをして、ジャム発生率を算出してもよい。例えば、実際に計測されたジャム発生率だけでなく、部品管理テーブルT1上の部品毎の「消耗度」、複合機15の設置場所や湿度・温度などの環境値、用紙(シート材)の種別などを加味して重み付けし、ジャム発生率を算出してもよい。
【0067】
図4の部品管理テーブルT1と図5のジャム発生率テーブルT2の登録データは、図6に示したように、各複合機15と監視サーバ11の間で相互に通知される。すなわち、 監視サーバ11は、各複合機15の各通紙パスについて、各複合機15から搬送エラーの発生情報を取得し、その統計的な搬送エラー発生情報を各複合機15に送信する。
【0068】
この場合、本実施の形態では、各複合機15の方から自発的・定期的に部品管理テーブルT1の登録データを送信している。そして、それに応答して監視サーバ11は、当該複合機15が搭載しているプリンタエンジンの型式に係るジャム発生率テーブルT2の登録データを返信している。
【0069】
ただし、監視サーバ11が、各複合機15に対して当該複合機15が搭載しているプリンタエンジンの型式に係るジャム発生率テーブルT2の登録データを定期的に送信し、それに応答して各複合機15が部品管理テーブルT1の登録データを返信してもよい。
【0070】
次に、各複合機15におけるジョブの処理の概要を、図7のフローチャートに基づいて説明する。なお、このジョブとしては、単に画像読取り又は印刷処理だけを行うスキャナ処理又は印刷処理、スキャナ処理と印刷処理を行う複写処理、スキャナ処理と印刷処理の他に製本処理等のシート後処理も併せて行う各ジョブがあるものとする。
【0071】
CPU186は、ユーザが操作部188を操作してユーザ設定ジョブの開始を要求すると(ステップS701)、部品管理テーブルT1に登録されている全ての消耗部品の消耗度のうち、閾値以上の消耗度の消耗部品が存在するか否かを判別する(ステップS702)。
【0072】
その結果、閾値以上の消耗度の消耗部品が存在しない場合は、CPU186は、通常通り、当該ユーザ設定ジョブを実行する(ステップS706)。そして、CPU186は、当該ユーザ設定ジョブの実行状況に応じて、部品管理テーブルT1の登録データを更新する(ステップS707)。
【0073】
一方、閾値以上の消耗度の消耗部品が存在する場合は、CPU186は、ジャム発生率テーブルT2に基づいて当該ユーザ設定ジョブを実行するのに適切な代替通紙パス(代替ジョブ)を選定する(ステップS703)。CPU186は、この代替通紙パスの選定処理の過程で、必要に応じて通紙パスに対する重み付けを行い、代替通紙パス等の候補を表示する(ステップS704)。
【0074】
この代替通紙パスの選定処理においては、可及的に印刷速度を減速しなくても済む範囲でジャム発生率が低い順に選定できるようにしている。ステップS703,S704の処理の詳細は後述する。
【0075】
次に、CPU186は、ステップS704での上記候補の表示に対するユーザの操作に応じて、適宜、適切なエンジン速度を選定する(ステップS705)。このエンジン速度の選定処理においては、後述するように、ジャム発生率が一定以下になる最速のエンジン速度を選定するようにしている。
【0076】
そして、CPU186は、ステップS706のジョブ実行、ステップS707の部品管理テーブルT1の登録データの更新処理を順次行う。この場合、ステップS706では、ステップ704での代替パス等の表示に対するユーザの応答結果、又はステップS705でのエンジン速度の選択状況に応じて、ジョブが実行される。
【0077】
次に、複合機15がジョブを実行する前に行う処理の詳細を、図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0078】
ユーザが操作部188を操作してジョブを設定し、その実行を指示すると、CPU186は、現在接続されているオプション装置を含む当該複合機15に係る全てのローラの現在カウンタ値、即ち消耗度をチェックする(ステップS801)。この消耗度のチェックは、図4の部品管理テーブルT1を参照することにより行う。
【0079】
次に、CPU186は、全てのローラの消耗度が規定値以下であるか否かを判別する(ステップS802)。CPU186は、全てのローラの消耗度が規定値以下である場合は、ユーザが設定した設定ジョブをその設定の通りに実行してもジャムが発生する可能性は低いので、当該設定ジョブをその設定通りに実行する通常の形態でのジョブ処理を行う(ステップS803)。
【0080】
なお、ステップS803では、当然ながら、印刷速度が変更されることはない。この印刷速度の不変更は、後述するステップS806からステップS803に進んだ場合、ステップS812からステップS803に進んだ場合も同様である。
【0081】
一方、当該複合機15に係るローラのうち、1つでも消耗度が規定値を超えている場合は、CPU186は、当該設定ジョブを確認し、その設定ジョブで使用される全ての通紙パス(搬送パス)を選択する(ステップS804)。なお、通紙パスとしては、給紙パス、給送パス、反転パス、排出パス等が有る。
【0082】
次に、CPU186は、当該設定ジョブで使用される全ての通紙パスのジャム発生率を、図5のジャム発生率テーブルT2から取得する(ステップS805)。そして、CPU186は、当該設定ジョブで使用される全ての通紙パスのジャム発生率が、上限値(例えば1%)以下であるか否かを判別する(ステップS806)。
【0083】
その結果、使用される全ての通紙パスのジャム発生率が、上限値以下であれば、ユーザ設定に係る設定ジョブをその設定の通りに実行してもジャムが発生する可能性は低い。そこで、この場合は、CPU186は、前述のステップS803に進み、ジョブ設定通りに設定ジョブを実行する通常の形態で当該ジョブを実行する。
【0084】
一方、当該設定ジョブで使用される通紙パスのうち、1つでもジャム発生率が上限値を超えている場合は、当該設定ジョブをその設定の通りに実行するとジャムが発生する可能性が高い。そこで、この場合は、CPU186は、当該上限値を超えている通紙パスの代替としての代替パス(代替ジョブ)の候補を選択する(ステップS807)。この場合、CPU186は、選択した代替パスには、そのジャム発生率が低いほど大きな値で重み付けする形態で重み付けをしておく。
【0085】
次に、CPU186は、選択した代替通紙パスの候補について、ユーザが設定したジョブに対して給紙カセットの変更を伴わない候補を大きな値で重み付けする形態で重み付けする(ステップS808)。次に、CPU186は、上記代替通紙パスの候補について、ユーザが設定したジョブに対して両面設定・裏面排紙などの変更を伴わない候補を大きな値で重み付けする形態で重み付けする(ステップS809)。
【0086】
更に、CPU186は、上記代替通紙パスの候補について、ユーザが設定したジョブに対してステイプル処理、排紙トレイ設定等のシート後処理の変更を伴わない候補を大きな値で重み付けする形態で重み付けする(ステップS810)。なお、上記の重み付け処理の詳細は、後述する。
【0087】
次に、CPU186は、上記代替通紙パスの候補の中から、重み付けの合計値が大きな候補を所定数選択し、当該選択した代替通紙パス候補を使用する場合の設定変更、強制実行等の選択肢、即ち代替ジョブを操作部188の表示画面に表示する(ステップS811)。
【0088】
この場合、図11,12に示したように、CPU186は、ステップS802で消耗度が規定値以下であると判別したローラの名称、そのローラを交換すべきである旨のガイダンス情報、「CANCEL」ボタン、「OK」ボタンも併せて表示する。
【0089】
また、代替通紙パスを使用する場合の設定変更については、ユーザは、一般に、通紙パスの名称や位置を知らないので、それらを表示されてもどのように対処したら良いのか判らない。そこで、本実施の形態では、代替通紙パスの名称や位置を表示するのではなく、消耗度が規定値以下の搬送ローラの使用を回避するための設定変更用のボタンを表示し、ユーザの便宜を図っている。
【0090】
なお、設定変更用のボタンとしては、例えば図11の「両面→手差し両面」ボタン1102、「両面→片面」ボタン1103、図12の「カセット選択→二段」ボタン1201、「カセット選択→手差し」ボタン1202、「カセット選択→二段」ボタン1203が有る。
【0091】
なお、図11、図12の「CANCEL」ボタン1104,1205は、上記の設定変更の選択の取消し、当該ジョブそれ自体の取消し等を指示するボタンである。また、図11、図12の「OK」ボタン1104,1206は、上記の設定変更、強制実行の選択を確定するボタンである。
【0092】
次に、CPU186は、消耗度が規定値以下のローラの使用を回避するための通紙パスの設定変更に係るボタンが、ユーザにより押下されたか否かを判別する(ステップS812)。その結果、通紙パスの設定変更に係るボタンが、ユーザにより押下された場合は、CPU186は、その押下されたボタンに係る代替通紙パスを用いる形態で、ユーザが設定した設定ジョブを実行する(ステップS803)。この場合、「強制実行(低速)」ボタンは押下されていないので、前述のように、印刷速度が変更されることはない。
【0093】
一方、設定変更ではなく強制実行が選択・確定された場合は、CPU186は、印刷速度を低下させて当該ジョブを実行する(ステップS813)。なお、ここで言う印刷速度とは、狭義のエンジン速度、即ち、感光体ドラム上での画像形成速度、給紙速度(感光体ドラム、各種ローラ等の駆動モータの回転速度)だけでなく、紙間距離の相違による印刷速度を含んでいる。
【0094】
次に、ステップS813の低速印刷処理の詳細を、図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0095】
CPU186は、当該複合機15がそのエンジン速度を変更可能であるか否かを判別する(ステップS901)。その結果、エンジン速度を変更可能であれば、CPU186は、今回のユーザ設定に係るジョブを実行する際に用いるエンジン速度を、ジャム発生率テーブルT2に基づいて決定する(ステップS902)。
【0096】
この場合、CPU186は、設定ジョブで使用され、消耗度が規定値を超えているローラを含む通紙パスに関し、ジャム発生率が上限値を超えず、且つジョブ設定に係るエンジン速度より遅い範囲で最速のエンジン速度を選択する。本実施の形態では、上記の上限値は、1%としている。
【0097】
例えば、図5に示した通紙パス「PathA」に存在するローラの消耗度が規定値を超えており、現在のエンジン速度が「30ppm」に設定されているものとする。この場合、ジャム発生率テーブルT2では、エンジン速度「30ppm」,「25ppm」,[15ppm]での「PathA」のジャム発生率は、それぞれ「5.10%」,「2.10%」,「0.02%」となっている。
【0098】
即ち、「PathA」では、エンジン速度「30ppm」,「25ppm」の何れにおいてもジャム発生率は上限値である「1%」を超え、エンジン速度「15ppm」でのジャム発生率だけが上限値「1%」以下となっている。
【0099】
従って、この場合は、CPU186は、エンジン速度「15ppm」を選択する。なお、ユーザ設定に係るジョブで使用され、消耗度が規定値を超えているローラを含む通紙パスに関し、全てのエンジン速度においてジャム発生率が上限値を超えている場合は、最低速のエンジン速度を選択する。
【0100】
次に、CPU186は、ステップS902で選択したエンジン速度でユーザ設定に係るジョブを実行すべく、まず、シート材の給紙速度を変更する(ステップS903)。なお、ここで言う「給紙速度」とは、カセットデッキ等からのシート材のピックアップ動作、その後のシート材の搬送速度、すなわちローラの回転速度に依存する速度を指し、前後のシート材の間隔、即ち紙間距離を含む概念ではない。
【0101】
次に、CPU186は、ステップS902で選択したエンジン速度でユーザ設定に係るジョブを実行する(ステップS904)。この場合、ステップS902で選択したエンジン速度は、大抵の場合、通常のエンジン速度よりも低速となり、各種のローラは、低速で回転駆動される。従って、通紙パス上に消耗したローラが存在していたとしても、シート材は、低速回転のローラで搬送されるため、シート搬送の安定度が増大し、ジャムの発生が可及的に抑制される。
【0102】
一方、エンジン速度を変更できない場合は、CPU186は、ピックアップローラ125〜128を含む給紙パスのジャム発生率が上限値を超えているのか否かを判別する(ステップS905)。この判別処理は、図8のステップS806での判別処理の結果に基づいて行う(ステップS907も同様)。その結果、給紙パスのジャム発生率が上限値を超えていなければ、CPU186は、ステップS907に進む。
【0103】
一方、給紙パスのジャム発生率が上限値を超えていれば、CPU186は、ピックアップローラ125〜128によるシート材のピックアップのリトライ回数の上限値を大きくして(ステップS906)、ステップS907に進む。このように、リトライ回数の上限値を大きくすることにより、シート材のピックアップのリトライが発生しても、エラー発生、すなわちジャム発生と認定される確率が低くなる。
【0104】
ステップS907では、CPU186は、搬送パス又は排紙パスのジャム発生率が上限値を超えているのか否かを判別する。その結果、搬送パス又は排紙パスのジャム発生率が上限値を超えていなければ、CPU186は、ステップS909に進む。
【0105】
一方、搬送パス又は排紙パスのジャム発生率が上限値を超えていれば、CPU186は、各ジャム検知センサ(図示省略)からのシート検知信号に基づくジャム判定マージン時間を増加して(ステップS908)、ステップS909に進む。ステップS908の処理により、ジャム発生と認定される確率が低くなる。
【0106】
ステップS909では、CPU186は、紙間距離を大きくとって給紙するように給紙タイミングを変更する。この給紙タイミングの変更処理としては、例えば、ピックアップローラ125〜128によるシート材のピックアップ動作のインターバルを大きくすること等が考えられる。
【0107】
なお、本実施の形態では、制御の簡易化を図るべくステップS909における紙間距離は、実質的な印刷速度が例えば最低速の15ppmとなるように一意に設定することを想定している。ただし、これに限定されることなく、例えば、当該複合機15の機種、消耗度が規定値を超えているローラを含む通紙パス等を考慮して、ジャム発生の抑制効果を或る程度以上確保し得る範囲で最速の印刷速度となるように紙間距離を大きくしてもよい。
【0108】
次に、CPU186は、紙間距離を大きくとった低速の印刷速度でユーザ設定に係るジョブを実行する(ステップS910)。このように、エンジン速度を変更できない場合にも、実質的に低速で印刷を行うことにより、ジャム発生と認定される確率が低くなる。
【0109】
図8のステップS807〜S811の処理、特に重み付け処理を、図10の優先度判定テーブルT3に基づいて詳細に説明する。この優先度判定テーブルT3には、原稿ピックアップローラ151、原稿反転ローラ152、ピックアップローラ125〜128、分離ローラ129〜132等のシート材の搬送用部品と対応して、それら搬送用部品が存在する搬送路(通紙パス)に付与された重み値(重み情報)が登録されている。
【0110】
すなわち、図10の優先度判定テーブルT3に示した「0」、「0.5」、「1」等の数値が、代替パス(代替ジョブ)を選択する場合の優先度を決定するために行う重み付けの値(重み値)を示している。この重み値は、「1」を最大、「0」を最小とし、値が大きい程、優先度が高いことを示している。また、重み値「0.5」は、ユーザが所望する形態で印刷出力を得られる限界値であり、重み値「0.4」以下では、ユーザが所望する形態での印刷出力が得られなくなることを意味している。更に、低速ジョブ実行の重み値は、一律に「0.4」となっている。
【0111】
例えば、自動原稿給送装置(ADF)150の原稿ピックアップローラ151の消耗度が規定値を超えている状態で、両面読み取りに係るジョブが設定されたとする。この場合は、当該ジョブをそのまま実行すると、ジャム発生の可能性が高く、ジョブ実行が無駄になる虞がある。
【0112】
そこで、このような場合は、CPU186は、図10の優先度判定テーブルT3に基づいて、消耗度が規定値を超えている原稿ピックアップローラ151を使用しない代替パスとしての圧板・両面読みに係る通紙パスに、上記の限界値の「0.5」の重みを与える。
【0113】
また、CPU186は、原稿ピックアップローラ151に係る通紙パスのうち、ジョブ設定(両面読み)とは無関係な他の2つの通紙パスには、優先度が最も低い「0」の重みを与える。この場合は、本実施の形態では、図8のステップS811において、圧板両面>低速ジョブの優先度で代替案が表示される。
【0114】
同様に、原稿ピックアップローラ151の消耗度が規定値を超えている状態で、混載原稿読み取りに係るジョブが設定されたとする。この場合は、原稿ピックアップローラ151は、原稿セット部150aにセットされたサイズの異なる原稿を順次給紙する必要があり、上記の例の場合よりもジャム発生の可能性が高くなる。
【0115】
そこで、この場合は、CPU186は、消耗度が規定値を超えている原稿ピックアップローラ151を使用しない代替パスとしての圧板読み・混載読みに係る通紙パスに対して、上記の「0.5」よりも優先度の低い「0.5」の重みを与える。
【0116】
また、CPU186は、原稿ピックアップローラ151に係る通紙パスのうち、ジョブ設定(混載読み)とは無関係な他の2つの通紙パスには、優先度が最も低い「0」の重みを与える。この場合は、本実施の形態では、図8のステップS811において、低速ジョブ>圧板読みの優先度で代替案が表示される。
【0117】
また、原稿ピックアップローラ151の消耗度が規定値を超えている状態で、長尺又は不定形原稿読み取りに係るジョブが設定されたとする。この場合は、原稿ピックアップローラ151は、原稿セット部150aにセットされた長尺又は不定形の原稿を順次給紙する必要があり、上記の2番目の例の場合よりも、更にジャム発生の可能性が高くなる。
【0118】
そこで、この場合は、CPU186は、消耗度が規定値を超えている原稿ピックアップローラ151を使用しない代替パスとしての圧板読み・長尺/不定形読みに係る通紙パスに対して、上記の「0.3」よりも優先度の低い「0.1」の重みを与える。
【0119】
また、CPU186は、原稿ピックアップローラ151に係る通紙パスのうち、ジョブ設定(長尺/不定形読み)とは無関係な他の2つの通紙パスには、優先度が最も低い「0」の重みを与える。この場合は、本実施の形態では、図8のステップS811において、低速ジョブ>圧板読みの優先度で代替案が表示される。
【0120】
自動原稿給送装置(ADF)150の原稿反転ローラ152の消耗度が規定値を超えている状態で、両面読み取りに係るジョブが設定されたとする。この場合は、当該ジョブをそのまま実行すると、ジャム発生の可能性が高く、ジョブ実行が無駄になる虞がある。
【0121】
そこで、このような場合は、CPU186は、図10の優先度判定テーブルT3に基づいて、消耗度が規定値を超えている原稿反転ローラ152を使用しない代替パスとしての圧板・両面読みに係る通紙パスに、上記の限界値の「0.5」の重みを与える。
【0122】
また、CPU186は、原稿反転ローラ152に係る通紙パスのうち、ジョブ設定(両面読み)とは無関係な他の2つの通紙パスには、優先度が最も低い「0」の重みを与える。この場合は、本実施の形態では、図8のステップS811において、圧板読み>低速ジョブ>片面読みの優先度で代替案が表示される。
【0123】
同様に、自動原稿給送装置(ADF)150の原稿反転ローラ152の消耗度が規定値を超えている状態で、片面読み取り(混載読み又は長尺/不定形読みが同時に設定されていても良い)に係るジョブが設定されたとする。
【0124】
この場合は、原稿反転ローラ152が使用されないジョブ設定であり、当該ジョブをそのまま実行しても、原稿反転ローラ152が原因でジョブが発生する虞は全くない。従って、この場合は、CPU186は、他のローラに問題が無い限り、ユーザ設定に係るジョブをそのまま実行する。
【0125】
また、装置本体(プリンタエンジン)100のピックアップローラ125〜128、分離ローラ129〜132の何れかの消耗度が規定値を超えている状態で、その消耗度が規定値を超えたローラに対応する上下左右のカセット121〜124が指定されたジョブが設定されたとする。この場合は、当該ジョブをそのまま実行すると、ジャム発生の可能性が高く、ジョブ実行が無駄になる虞がある。
【0126】
この場合は、CPU186は、同一サイズ・同一メディアタイプに係る他のカセットに対応する通紙パスに、「0.9」の重みを与える。なお、「メディアタイプ」とは、普通紙、厚紙、色紙、ボンド紙、OHPなど、シート材の種類を示している。
【0127】
また、CPU186は、同一サイズ・異なるメディアタイプに係る他のカセットに対応する通紙パスには、優先度の低い「0.3」の重みを与え、異なるサイズに係る他のカセットに対応する通紙パスには、更に優先度の低い「0.2」の重みを与える。
【0128】
この場合は、本実施の形態では、図8のステップS811において、同一メディアカセットから給紙>低速ジョブ>異なるメディアカセットからの給紙の優先度で表示される。
【0129】
また、原稿混載とカセットの自動選択が選択されたジョブ設定が行われた場合は、このジョブでは、各カセット121〜124だけでなく、手差し給紙部155からも給紙される可能性がある。従って、この場合、CPU186は、各カセット121〜124、手差し給紙部155に係る通紙パスに、等しく「0.3」の重みを与える。
【0130】
この場合は、本実施の形態では、図8のステップS811において、低速ジョブ>カセット段選択の優先度で表示される。
【0131】
また、出力サイズが指定され、この指定に係る出力サイズのシート材が収納されていないカセットが指定されてなるジョブが設定された場合は、この指定に係るカセットから指定に係る出力サイズのシート材を給紙することはできない。この場合、CPU186は、指定に係るカセットとは別のカセットに指定に係る出力サイズのシート材が収納されている場合には、この別のカセットに係る通紙パスに「1」の重みを与える。また、CPU186は、当該別のカセット以外のカセットに係る通紙パスには、「0.3」又は「0.2」の重みを与える。
【0132】
この場合、本実施の形態では、図8のステップS811において、低速ジョブ>カセット選択の優先度で表示される。
【0133】
また、プリンタエンジンの反転ローラ145、下搬送パス140上の搬送ローラ、再給紙パス141上の搬送ローラの何れかの消耗度が規定値を超えている状態で、両面印刷、製本出力が指定されたジョブが設定されたとする。この場合は、当該ジョブをそのまま実行しても、シート材を反転した状態で搬送することはできない。
【0134】
そこで、CPU186は、手差しによる両面印刷に係る通紙パスに「0.4」の重みを与え、手差しによる片面印刷に係る通紙パスに「0.1」の重みを与え、その他の通紙パスには「0」の重みを与える。この場合、本実施の形態では、図8のステップS811において、手差し両面印刷=低速ジョブ>片面印刷の優先度で表示される。
【0135】
また、例えば排紙パス170〜172、製本パス173上の消耗部品のいずれかの消耗度が規定値を超えている状態で、当該パスを使用するジョブが設定されたとする。この場合は、当該ジョブをそのまま実行しても、指定に係る排紙トレイに出力することはできない。
【0136】
そこで、CPU186は、上記の設定ジョブで指定されていない、即ちフィニッシング設定がなされていない排紙トレイに優先に「0.6」の重みを与え、フィニッシング設定に係る排紙トレイに、「0.5」の重みを与える。この場合、本実施の形態では、図8のステップS811において、フィニッシング出力段(排紙トレイ)>低速ジョブの優先度で表示される。
【0137】
なお、上記の「フィニッシング設定」とは、ステイプル処理、パンチ処理、トリミング処理、製本処理、Z折り処理などの出力設定を意味する。また、フィニッシング設定に係る消耗部品のうちの複数の消耗部品について消耗度が規定値を超えている場合は、上流側のフィニッシング出力段から順にユーザ逐次選択が行なわれるものとする。
【0138】
図11は、代替ジョブの表示画面(提示画面)例を示す図である。この表示画面例は、両面出力の設定に対して、必要な通紙パス上に消耗部品が存在している例である。この画面例に表示された反転ローラは、図2における反転ローラ145を指し示すものである。
【0139】
この図11の代替ジョブの表示画面では、優先度判定テーブルT3では片面パスが代替通紙パスとなっているが、この片面パスでは、ユーザの所望の印刷物を得ることができないため、低速実行を最優先の代替ジョブとして自動的に選定した旨を表示している。
【0140】
図12は、他の代替ジョブの表示画面(提示画面)例を示す図である。この表示画面例は、カセット段指定出力の設定に対して、必要な通紙パス上に消耗部品が存在している例である。この画面例に表示された給紙ローラは、図2における給紙ローラ128を指し示すものである。
【0141】
この図12の代替ジョブの表示画面では、優先度判定テーブルT3に基づいて、同一サイズの給紙パスが最優先の代替通紙パスとして自動的に選定された旨を示している。この同一サイズの代替通紙パスでは、ユーザの所望の印刷物を得ることができるために最優先に表示される。
【0142】
なお、本発明の目的は、上述した各実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体によっても達成される。すなわち、この記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出して実行することによって達成される。
【0143】
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した各実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0144】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、次のものを用いることができる。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク等を用いることができる。また、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。または、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
【0145】
また、本発明は、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、上記の各実施の形態の機能が実現される場合だけに限定されるものではない。その他、例えば、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0146】
さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれることにより各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。この場合、当該書込みの後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行うこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置を含む画像形成システムのシステム構成図である。
【図2】複合機のハードウェア構成を示す断面図である。
【図3】複合機内の制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】複合機が保持する部品管理テーブルの登録データを示すである。
【図5】監視サーバが保持するジャム発生率テーブルの登録データを示す図である。
【図6】複合機と監視サーバの間で行われる部品管理テーブルとジャム発生率テーブルの登録データの送受信を説明するための図である。
【図7】複合機におけるジョブの処理の概要を示すフローチャートである。
【図8】複合機におけるジョブの処理の詳細示すフローチャートである。
【図9】図8のステップS813の低速印刷処理の詳細を示すフローチャートである。
【図10】優先度判定テーブルの情報例を示す図である。
【図11】代替ジョブの表示例(提示例)を示す図である(両面印刷指定に係るジョブ設定時)。
【図12】代替ジョブの表示例(提示例)を示す図である(給紙段指定に係るジョブ設定時)。
【符号の説明】
【0148】
11…監視サーバ
15…画像形成装置(複合機)
125,126,127,128…ピックアップローラ
129,130,131,132…分離ローラ
201,202…搬送ローラ
138…搬送パス
139…反転パス
140…下搬送パス
143…排出パス
145…反転ローラ
183…ROM
186…CPU
T1…部品管理テーブル
T2…ジャム発生率テーブル
T3…優先度判定テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を搬送するための複数の搬送路それぞれにおける搬送用の部品の消耗度を計数する計数手段と、
前記複数の搬送路それぞれにおける前記シート材の搬送エラーの統計的な発生情報を取得する取得手段と、
前記複数の搬送路のうち、操作部の操作で設定された設定ジョブを実行する際に使用される搬送路の搬送用の部品の消耗度が規定値を超えているか否かを前記計数手段での処理結果に基づいて判定する判定手段と、
前記判定手段により前記消耗度が規定値を超えていると判定された場合に、前記取得手段により取得された前記搬送エラーの発生情報に基づいて、前記設定ジョブに対する代替ジョブの候補を選定する選定手段と、
前記選定手段により選定された代替ジョブを提示する提示手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記複数の搬送路それぞれにおける前記シート材の搬送エラーの発生情報をサーバ装置に送信する送信手段を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記送信手段は、前記搬送エラーの発生情報として、少なくとも前記画像形成装置の型式情報、前記計数手段での処理によって得られた消耗度、エラー発生率を定期的に前記サーバ装置に送信することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記サーバ装置から前記複数の搬送路それぞれにおける前記シート材の搬送エラーの統計的な発生情報を取得することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記選定手段は、前記代替ジョブの候補として複数の候補を選定することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記選定手段は、前記代替ジョブの候補として、部品の消耗度が規定値を超えていない搬送路を使用する代替ジョブを選定することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記選定手段は、部品の消耗度が規定値を超えていない搬送路を使用する前記代替ジョブを選定する場合、前記搬送路に付与された重み付け情報を用いることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記選定手段は、前記代替ジョブの候補として、前記シート材の搬送速度が低速となる代替ジョブを選定することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
シート材を搬送するための複数の搬送路それぞれにおける搬送用の部品の消耗度を計数する計数工程と、
前記複数の搬送路それぞれにおける前記シート材の搬送エラーの統計的な発生情報を取得する取得工程と、
前記複数の搬送路のうち、操作部の操作で設定された設定ジョブを実行する際に使用される搬送路の搬送用の部品の消耗度が規定値を超えているか否かを前記計数工程での処理結果に基づいて判定する判定工程と、
前記判定工程により前記消耗度が規定値を超えていると判定された場合に、前記取得工程により取得された前記搬送エラーの発生情報に基づいて、前記設定ジョブに対する代替ジョブの候補を選定する選定工程と、
前記選定工程により選定された代替ジョブを提示する提示工程と、
を有することを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項10】
シート材を搬送するための複数の搬送路それぞれにおける搬送用の部品の消耗度を計数する計数工程と、
前記複数の搬送路それぞれにおける前記シート材の搬送エラーの統計的な発生情報を取得する取得工程と、
前記複数の搬送路のうち、操作部の操作で設定された設定ジョブを実行する際に使用される搬送路の搬送用の部品の消耗度が規定値を超えているか否かを前記計数工程での処理結果に基づいて判定する判定工程と、
前記判定工程により前記消耗度が規定値を超えていると判定された場合に、前記取得工程により取得された前記搬送エラーの発生情報に基づいて、前記設定ジョブに対する代替ジョブの候補を選定する選定工程と、
前記選定工程により選定された代替ジョブを提示する提示工程と、
をコンピュータが実行するように指令が組み合わされたことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−276446(P2009−276446A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125934(P2008−125934)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】